以下、本発明の実施の形態による塗装方法を用いて被塗物を塗装する場合を例に挙げ、添付図面に従って詳細に説明する。
まず、図1ないし図8は本発明の第1の実施の形態を示す。第1の実施の形態では、例えば比較的大きな家具、電化製品等の外面を構成するパネルに対し、ロボット装置に取付けられた回転霧化型噴霧機により塗装を行う場合を例に挙げて説明する。
図1において、1は塗装ブース2内に配設された塗装装置で、該塗装装置1は、後述のコンベア装置3、ロボット装置4,5、回転霧化型噴霧機6,7によって大略構成されている。
3は塗装ブース2内の天井側に設けられた搬送手段としてのコンベア装置を示している。該コンベア装置3は、図2等に示すように、ハンガ3Aを用いて後述するパネル9を吊下げると共に、この状態で、パネル9を例えば矢示A方向(図2中の右方向から左方向)に所定の速度をもって搬送するものである。
4,5は噴霧機用動作装置を構成する多軸型のロボット装置を示している。該ロボット装置4,5は、コンベア装置3の途中に位置して該コンベア装置3の側方に配設されている。また、2台のロボット装置4,5は、コンベア装置3の搬送方向(矢示A方向)に対して間隔をもって後側と前側とにそれぞれ配置され、後述の回転霧化型噴霧機6,7を移動して塗装作業を実行するものである。
そして、ロボット装置4は、基台4Aと、該基台4A上に回転可能かつ揺動可能に設けられた垂直アーム4Bと、該垂直アーム4Bの先端に揺動可能に設けられた水平アーム4Cと、該水平アーム4Cの先端に設けられた手首4Dとにより大略構成されている。ロボット装置5も、ロボット装置4とほぼ同様に、基台5A、垂直アーム5B、水平アーム5C、手首5Dによって大略構成されている。
なお、ロボット装置4は、コンベア装置3に平行に設けられたトラッキング機構(図示せず)に取付ける構成としてもよい。この場合、トラッキング機構は、コンベア装置3の搬送方向と平行に伸長し、ロボット装置4,5を搬送方向または反搬送方向に任意の速度で独立的に移動させるようになっている。これにより、トラッキング機構は、コンベア装置3で搬送されるパネル9に対するロボット装置4,5(噴霧機6,7)の移動速度を調整するものである。
また、ロボット装置4,5は、手首4D,5Dに回転霧化型噴霧機6,7を支持している。そして、ロボット装置4,5は、コンベア装置3によって後述のパネル9が塗装位置に搬送されてくると、垂直アーム4B,5B、水平アーム4C,5C等を揺動させ、最大ストローク幅Smaxの範囲内で噴霧機6,7をパネル9に沿って搬送方向とほぼ平行に往復動させるものである。
6,7は2台のロボット装置4,5の手首4D,5Dにそれぞれ取付けられた回転霧化型噴霧機を示している。該噴霧機6,7は、先端側に高速で回転駆動される回転霧化頭6A,7Aを有している。そして、噴霧機6,7は、塗料を回転霧化頭6A,7Aに向け吐出することにより、該回転霧化頭6A,7Aの遠心力の作用により塗料を微粒化し、前方に配置されたパネル9に向けて塗料を噴霧するものである。
また、噴霧機6,7には、回転霧化頭6A,7Aの外周側の周囲に位置してシェーピングエア噴出口(図示せず)が設けられている。このシェーピングエア噴出口は、回転霧化頭6A,7Aから噴霧された噴霧塗料を取囲むように後側からシェーピングエアを吹付ける。これにより、シェーピングエアは、回転霧化頭6A,7Aから噴霧された噴霧塗料が遠心力により径方向に広がろうとするのを抑え、所望の径寸法をもった円形状の噴霧パターンP(スプレーパターン)に整形するものである。
8はロボット装置4,5(噴霧機6,7)に接続して設けられた制御装置で、該制御装置8は、例えば塗装ラインを制御する制御室等に配設されている。ここで、制御装置8は、ロボット装置4,5、噴霧機6,7、エア制御弁、塗料制御弁(いずれも図示せず)等の制御を行うプログラムをもったコンピュータ等により構成されている。そして、制御装置8は、ロボット装置4,5の動作(噴霧機6,7の移動速度)、噴霧機6,7の塗料の吐出量、シェーピングエアの噴出圧力等を制御している。
9は被塗物となるパネルを示している。該パネル9は、例えばスチール製の家具、電化製品の外面板等をなす略四角形状の板体で、コンベア装置3に吊下げられた状態で順次矢示A方向に搬送される。また、パネル9は、搬送方向(矢示A方向)に対して例えば噴霧機6,7の最大ストローク幅Smaxよりも大きな長さ寸法L1を有している(図2参照)。そして、パネル9の塗装面は、例えば搬送方向の後側(上流側)と前側(下流側)とに位置する2つの塗装領域CAa,CAbとに区分けされ、各塗装領域CAa,CAbは、搬送方向後側の噴霧機6と搬送方向前側の噴霧機7とによってそれぞれ塗装されるものである。
第1の実施の形態による塗装装置1は前述のように構成されるが、本実施の形態による塗装方法について、パネル9を塗装する場合を例に挙げ、図2ないし図8を参照して説明する。
初めに、図2ないし図8において、パネル9の塗装面に左,右方向に往復動するように描かれた実線と点線(破線)は、パネル9の塗装面に対する噴霧機6,7(回転霧化頭6A,7A)の塗装軌跡Ta,Tb(移動軌跡)を示している。また、塗装軌跡Ta,Tbの実線は、噴霧機6,7が左,右方向に沿って平行に移動する平行移動部Ta1〜Ta8,Tb1〜Tb8を示している。塗装軌跡Ta,Tbの点線は、噴霧機6,7が折返して移動する折返し部Ta0,Tb0を示している。さらに、噴霧機6,7は、例えば平行移動部Ta1〜Ta8,Tb1〜Tb8では塗料を噴霧し、折返し部Ta0,Tb0では塗料の噴霧を停止する構成となっている。また、2台の噴霧機6,7は、いずれもパネル9(被塗物)との相対速度を保ちつつ塗装軌跡Ta,Tbに沿って後述する一連の塗装動作を行うものである。
まず、第1の塗装工程について図2ないし図5を用いて説明する。この第1の塗装工程では、パネル9がコンベア装置3を用いて搬送されてくると、該パネル9は、搬送方向の上流側(後側)に位置する噴霧機6の近傍を通過する。このとき、制御装置8は、後側のロボット装置4および噴霧機6を用いて、パネル9の塗装面のうち搬送方向後側の塗装領域CAaに対する塗装を開始する。このとき、噴霧機6は、図3に示すように、塗装軌跡Taの開始位置Tasとしてパネル9のうち右上側の角隅に移動して、塗料の噴霧を開始する。これにより、噴霧機6は、噴霧パターンPを形成すると共に、塗料の噴霧を継続した状態で第1の平行移動部Ta1に沿ってパネル9の上側を左方向に向けて移動する。
次に、噴霧機6がパネル9の左,右方向の中央側に移動して平行移動部Ta1の終端Eafに到達すると、噴霧機6は第1の折返し部Ta0の始端に配置される。このため、噴霧機6は、図4に示すように、塗料の噴霧を一旦停止すると共に、第1の折返し部Ta0に沿ってパネル9の下方向に向けて移動する。
そして、噴霧機6は、平行移動部Ta1に対して噴霧パターンPの直径寸法よりも小さい距離寸法だけ下方向に移動し、折返し部Ta0の終端に到達する。このとき、噴霧機6は、第2の平行移動部Ta2の始端Easに配置される。このため、噴霧機6は、塗料の噴霧を再開すると共に、塗料の噴霧を継続した状態で第2の平行移動部Ta2に沿ってパネル9の右方向に向けて移動する。
そして、噴霧機6がパネル9の右端側に位置して平行移動部Ta2の終端Eafに到達すると、噴霧機6は第2の折返し部Ta0の始端に配置される。このため、噴霧機6は、塗料の噴霧を一旦停止すると共に、第2の折返し部Ta0に沿ってパネル9の下方向に向けて移動する。
次に、噴霧機6が第2の折返し部Ta0の終端に到達すると、噴霧機6は第3の平行移動部Ta3の始端Easに配置される。このため、噴霧機6は、塗料の噴霧を再開し、第3の平行移動部Ta3に沿ってパネル9の左方向に向けて移動する。そして、平行移動部Ta3の終端Eafに到達すると、噴霧機6は、第1の折返し部Ta0と同様に、塗料の噴霧を一旦停止して、第3の折返し部Ta0に沿ってパネル9の下方向に向けて移動する。
このとき、平行移動部Ta3,Ta4間を接続する第3の折返し部Ta0は、平行移動部Ta1,Ta2間を接続する第1の折返し部Ta0と同様に2つの塗装領域CAa,CAb間の境界付近に配置されている。しかし、第3の折返し部Ta0は、第1の折返し部Ta0よりも搬送方向(矢示A方向)の後側に位置して、これら2つの折返し部Ta0は搬送方向に対して間隔寸法ΔLだけ互いに離間している(図2参照)。
そして、第1の折返し部Ta0と同様に、噴霧機6は、平行移動部Ta3に対して例えば第1の折返し部Ta0と同じ距離寸法だけ下方向に移動し、第3の折返し部Ta0の終端に到達する。そこで、噴霧機6は、塗料の噴霧を再開すると共に、塗料の噴霧を継続した状態で第4の平行移動部Ta4に沿ってパネル9の右方向に向けて移動する。
このように、噴霧機6は、平行移動部Ta1から平行移動部Ta4までの塗装動作と同様に、以降の塗装動作を繰返す。即ち、第5〜第8の平行移動部Ta5〜Ta8では、塗料の噴霧を行いつつ搬送方向と平行に移動し、第5〜第7の折返し部Ta0では、塗料の噴霧を停止して搬送方向と直交した下方向に移動する。このとき、第5,第7の折返し部Ta0は、第1,第3の折返し部Ta0と同様に、搬送方向の前側から後側に向けて間隔寸法ΔLをもって順次位置がずれている(図2参照)。
最終的に、図5に示すように、噴霧機6が平行移動部Ta8の終端Eafに移動すると、噴霧機6が塗装軌跡Taの終了位置Tafとしてパネル9のうち図2中の右下側の角隅に配置される。これにより、噴霧機6は、この位置で塗料の噴霧を停止し、パネル9に対する塗装を終了する。
次に、第2の塗装工程について、図2と、図6ないし図8とを用いて説明する。この第2の塗装工程では、パネル9がコンベア装置3を用いて搬送方向前側(下流側)の噴霧機7の近傍に移動すると、制御装置8は、前側のロボット装置5および噴霧機7(図1中の左側の噴霧機7)を用いて、パネル9の塗装面のうち搬送方向前側の塗装領域CAbに対する塗装を開始する。このとき、噴霧機7は、図6に示すように、塗装軌跡Tbの開始位置Tbsとしてパネル9のうち左上側の角隅に移動して、塗料の噴霧を開始する。これにより、噴霧機7は、噴霧パターンPを形成すると共に、塗料の噴霧を継続した状態で第1の平行移動部Tb1に沿ってパネル9の上側を右方向に向けて移動する。
次に、噴霧機7がパネル9の左,右方向の中央側に移動して平行移動部Tb1の終端Ebfに到達すると、噴霧機7は第1の折返し部Tb0の始端に配置される。このため、噴霧機7は、図7に示すように、塗料の噴霧を一旦停止すると共に、第1の折返し部Tb0に沿ってパネル9の下方向に向けて移動する。このとき、平行移動部Tb1の終端Ebfは、左,右方向に対して隣合う平行移動部Ta1の終端Eafの近傍に位置して、これらの平行移動部Tb1,Ta1は略直線状に配置されている。また、第1の折返し部Tb0も、左,右方向に対して隣合う第1の折返し部Ta0の近傍に位置して、互いに略平行な上,下方向に延びている。
そして、噴霧機7が平行移動部Tb1に対して噴霧パターンPの直径寸法よりも小さい距離寸法だけ下方向に移動し、第1の折返し部Tb0の終端に到達すると、噴霧機7は第2の平行移動部Tb2の始端Ebsに配置される。このため、噴霧機6は、塗料の噴霧を再開すると共に、塗料の噴霧を継続した状態で第2の平行移動部Tb2に沿ってパネル9の左方向に向けて移動する。
そして、噴霧機7がパネル9の左端側に位置して平行移動部Tb2の終端Ebfに到達すると、噴霧機7は第2の折返し部Tb0の始端に配置される。このため、噴霧機7は、塗料の噴霧を一旦停止すると共に、第2の折返し部Tb0に沿ってパネル9の下方向に向けて移動する。
次に、噴霧機7が第2の折返し部Tb0の終端に到達すると、噴霧機7は第3の平行移動部Tb3の始端Ebsに配置される。このため、噴霧機7は、塗料の噴霧を再開し、第3の平行移動部Tb3に沿ってパネル9の右方向に向けて移動する。そして、平行移動部Tb3の終端Ebfに到達すると、噴霧機7は、第1の折返し部Tb0と同様に、塗料の噴霧を一旦停止して、第3の折返し部Tb0に沿ってパネル9の下方向に向けて移動する。
このとき、第3の折返し部Tb0は、第1の折返し部Tb0と同様に2つの塗装領域CAa,CAb間の境界付近に配置されている。しかし、第3の折返し部Tb0は、第1の折返し部Tb0よりも搬送方向(矢示A方向)の後側に位置して、これら2つの折返し部Tb0は搬送方向に対して間隔寸法ΔLだけ互いに離間している(図2参照)。
そして、第1の折返し部Tb0と同様に、噴霧機7は、平行移動部Tb3に対して例えば第1の折返し部Tb0と同じ距離寸法だけ下方向に移動して第3の折返し部Tb0の終端に到達する。そこで、噴霧機7は、塗料の噴霧を再開すると共に、塗料の噴霧を継続した状態で第4の平行移動部Tb4に沿ってパネル9の左方向に向けて移動する。
このように、噴霧機7は、平行移動部Tb1から平行移動部Tb4までの塗装動作と同様に、以降の塗装動作を繰返す。即ち、第5〜第8の平行移動部Tb5〜Tb8では、塗料の噴霧を行いつつ搬送方向と平行に移動し、第5〜第7の折返し部Tb0では、塗料の噴霧を停止して搬送方向と直交した下方向に移動する。このとき、第5,第7の折返し部Tb0は、第1,第3の折返し部Tb0と同様に、搬送方向の前側から後側に向けて間隔寸法ΔLをもって順次位置ずれしている。
最終的に、図8に示すように、噴霧機7が平行移動部Tb8の終端Ebfに移動すると、噴霧機7が塗装軌跡Tbの終了位置Tbfとしてパネル9のうち図2中の左下側の角隅に配置される。これにより、噴霧機7は、この位置で塗料の噴霧を停止し、パネル9に対する塗装を終了する。
なお、搬送方向の前側(下流側)の噴霧機7は、搬送方向後側(上流側)の噴霧機6が塗装領域CAaの塗装作業を終了した後に、塗装領域CAbの塗装作業を開始する構成としてもよく、塗装領域CAaの塗装作業の途中に、塗装領域CAbの塗装作業を開始する構成としてもよい。即ち、2台の噴霧機6,7が干渉しない状態であれば、2台の噴霧機6,7が同時に塗装作業を行う構成としてもよい。
かくして、本実施の形態によれば、噴霧機6,7の往復動の折返し部Ta0,Tb0を搬送方向と逆向きの一定方向に順次位置をずらし、当該折返し部Ta0,Tb0の塗装軌跡Ta,Tbを階段状に形成する構成としている。このため、塗装領域CAaの塗装軌跡Taのうち例えば平行移動部Ta3,Ta4間に位置する第3の折返し部Ta0は、第2の平行移動部Ta2に隣接して配置される。従って、平行移動部Ta2に沿って塗装を行うと、そのときの噴霧パターンPが第3の折返し部Ta0にも重なり合う。
また、他方の塗装領域CAbのうち第5の平行移動部Tb5も、第3の折返し部Ta0に隣接して配置されるから、他方の塗装領域CAbの第5の平行移動部Tb5に沿って塗装を行うときにも、そのときの噴霧パターンPが第3の折返し部Ta0に重なり合う。
同様に、2つの塗装領域CAa,CAb間の境界部分に位置する折返し部Ta0,Tb0は、隣接する平行移動部Ta1〜Ta8,Tb1〜Tb8を塗装するときの噴霧パターンPが重なるから、平行移動部Ta1〜Ta8,Tb1〜Tb8の塗装を行うときに、この塗装に伴う全ての噴霧パターンPを折返し部Ta0,Tb0に重ね合わせることができる。
この結果、折返し部Ta0,Tb0に対する噴霧パターンPの塗り重ね回数、塗装膜の厚さ等を他の部位(平行移動部Ta1〜Ta8,Tb1〜Tb8)に近付けることができ、折返し部Ta0,Tb0の色むらを緩和して塗装仕上がり性を向上することができる。
そこで、この塗装仕上がり性について、図1ないし図8に示す本実施の形態の場合と、図9、図10に示す第1,第2の比較例の場合とを比較する。
まず、図9は第1の比較例を示している。この第1の比較例の場合、例えば折返し部Ta0′,Tb0′をパネル9の左,右方向に対してほぼ同じ位置に配置して塗装軌跡Ta′,Tb′を形成している。この場合には、折返し部Ta0′,Tb0′がパネル9の左,右方向の中央部の1箇所に集中的に配置される。このため、第1の比較例では、図9中に一点鎖線Oで示すように、色むら部分が1列に亘って生じる傾向がある。
一方、図10は第2の比較例を示している。この第2の比較例の場合、例えば折返し部Ta0″,Tb0″をパネル9の左,右方向の中央部に交互に移動させて塗装軌跡Ta″,Tb″を櫛歯状(ジグザグ状)に形成している。この場合にも、折返し部Ta0″,Tb0″が左,右方向の2箇所に集中的に配置される。このため、第2の比較例でも、図10中に一点鎖線O1,O2で示すように、色むら部分が2列に亘って生じ易い。
これに対し、第1の実施の形態では、塗装軌跡Ta,Tbを階段状に形成したから、折返し部Ta0,Tb0の位置を一定方向にずらすことができる。この結果、折返し部Ta0,Tb0をパネル9に対して分散して配置することができ、塗装面全体の色むらを緩和し、塗装仕上がり品質を高めることができる。
また、互いに隣合う塗装領域CAa,CAbでは、ほぼ平行な方向に向けて噴霧機6,7を往復動させる構成としたから、一方の塗装領域CAaを塗装したときの塗装軌跡Taの平行移動部Ta1〜Ta8と他方の塗装領域CAbを塗装したときの塗装軌跡Tbの平行移動部Tb1〜Tb8とを直線状に繋げて連続させることができる。このため、パネル9の塗装面全体を単一の塗装領域とした場合と同様の塗装仕上がり品質を得ることができる。
また、第1の実施の形態では、平行移動部Ta1〜Ta8,Tb1〜Tb8では噴霧機6,7から塗料を噴霧し、折返し部Ta0,Tb0では噴霧機6,7からの塗料の噴霧を停止する構成としている。このため、折返し部Ta0,Tb0でも塗料の噴霧を継続した場合に比べて、折返し部Ta0,Tb0の塗装膜を薄くすることができる。
この結果、折返し部Ta0,Tb0の塗装膜の厚さを平行移動部Ta1〜Ta8,Tb1〜Tb8の塗装膜の厚さに近付けることができる。これにより、隣合う2つの塗装領域CAa,CAbで塗装軌跡Ta,Tbのうち平行移動部Ta1〜Ta8,Tb1〜Tb8を繋ぎ合わせることができ、この繋ぎ合わせ部分で色むらを防止でき、2つの塗装領域CAa,CAbからなるパネル9の塗装面全体の塗装仕上がり品質を高めることができる。
さらに、噴霧機6,7をパネル9の搬送方向とほぼ平行な方向に往復動させると共に、折返し部Ta0,Tb0をパネル9の搬送方向の前側(下流側)から後側(上流側)に向けて順次位置をずらす構成としたから、折返し部Ta0,Tb0の位置を固定した場合に比べて、1台の噴霧機6,7の塗装可能な範囲を実質的に広げることができる。
即ち、パネル9の搬送に伴ってパネル9は噴霧機6,7の正面位置から次第に前側(下流側)に遠ざかるから、噴霧機6,7が往復動を重ねるにつれて、次第に塗装可能な範囲がパネル9のうち搬送方向の(下流側)にずれてしまう。このため、各塗装領域CAa,CAbの塗装開始時に塗装可能な範囲と塗装終了時に塗装可能な範囲とは、必然的に位置ずれすることになる。
そこで、本実施の形態による場合と、図9のように折返し部の位置をずらさない場合とについて、比較してみる。図9に示す第1の比較例では、往復動の折返し部Ta0′,Tb0′の位置をずらさずに固定するためには、塗装開始時に塗装可能な範囲と塗装終了時に塗装可能な範囲とが重複する範囲に限られる。この結果、1台の噴霧機で塗装可能な範囲は、この噴霧機の最大ストローク幅Smaxよりも狭い範囲に限定され、塗装可能な範囲は狭くなる。
これに対し、本実施の形態では、隣合う塗装領域CAa,CAbでは噴霧機6,7の往復動の折返し部Ta0,Tb0をパネル9の搬送方向の前側から後側に向けて順次その位置をずらす構成としている。これにより、パネル9が噴霧機6,7から次第に遠ざかっても噴霧機6,7が往復動を重ねるにつれて、往復動の範囲は次第にパネル9の搬送方向の後側(上流側)に位置ずれすることになる。
この結果、塗装開始時に塗装可能な範囲と塗装終了時に塗装可能な範囲とが重複する範囲に制限されず、噴霧機6,7の塗装可能な範囲を実質的に広げることができる。このため、塗装装置1(塗装ライン全体)に対して必要な噴霧機6,7の台数を減少させることができ、塗装装置1の設備費用、噴霧機6,7の整備費用等を低減することができる。
次に、図11は本発明の第2の実施の形態を示している。本実施の形態の特徴は、パネルの搬送方向に対して直交する方向に噴霧機を往復動させる塗装軌跡を形成したことにある。なお、本実施の形態では、前述した第1の実施の形態と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略するものとする。
まず、第2の実施の形態では、噴霧機用動作装置として第1の実施の形態で使用した2台のロボット装置4,5が用いられ、各ロボット装置4,5に取り付けられた回転霧化型噴霧機6,7は上,下方向に往復動する構成としている。また、第2の実施の形態では、被塗物として、第1の実施の形態で用いたパネル9を長辺が上,下方向と平行になるように縦置きした状態で使用している。
次に、第2の実施の形態による塗装方法について、縦置き状態のパネル9を塗装する場合を例に挙げ、図11を参照して説明する。
初めに、図11において、パネル9の塗装面に上,下方向に往復動するように描かれた実線と点線(破線)は、第1の実施の形態と同様に、パネル9の塗装面に対する噴霧機6,7の塗装軌跡Ta,Tb(移動軌跡)を示している。また、塗装軌跡Ta,Tbの実線は、噴霧機6,7が上,下方向に沿って平行に移動する平行移動部Ta1〜Ta8,Tb1〜Tb8を示し、塗装軌跡Ta,Tbの点線は、噴霧機6,7が折返して移動する折返し部Ta0,Tb0を示している。さらに、噴霧機6,7は、例えば平行移動部Ta1〜Ta8,Tb1〜Tb8では塗料を噴霧し、折返し部Ta0,Tb0では塗料の噴霧を停止する構成となっている。また、2台の噴霧機6,7は、いずれもパネル9(被塗物)との相対速度を保ちつつ塗装軌跡Ta,Tbに沿って後述する一連の塗装動作を行うものである。
まず、第1の塗装工程では、パネル9がコンベア装置3を用いて搬送方向の後側(上流側)の噴霧機6の近傍に移動すると、制御装置8は、搬送方向後側のロボット装置4(噴霧機6)を用いて、パネル9の塗装面のうち例えば上側の塗装領域CAaに対する塗装を開始する。このとき、噴霧機6は、塗装軌跡Taの開始位置Tasとしてパネル9のうち図11中の左上側の角隅に移動して、塗料の噴霧を開始する。そして、噴霧機6は、塗料の噴霧を継続した状態で第1の平行移動部Ta1に沿ってパネル9の左側を下方向に向けて移動する。
次に、噴霧機6がパネル9の上,下方向の中央側に移動して平行移動部Ta1の終端Eafに到達すると、噴霧機6は第1の折返し部Ta0の始端に配置される。このため、噴霧機6は、塗料の噴霧を一旦停止すると共に、第1の折返し部Ta0に沿ってパネル9の右方向に向けて移動する。
そして、噴霧機6が平行移動部Ta1に対して噴霧パターンPの直径寸法よりも小さい距離寸法だけ右方向に移動して第1の折返し部Ta0の終端に到達すると、噴霧機6は、第2の平行移動部Ta2の始端Easに配置される。このため、噴霧機6は、塗料の噴霧を再開すると共に、塗料の噴霧を継続した状態で第2の平行移動部Ta2に沿ってパネル9の上方向に向けて移動する。
このように、噴霧機6は、上,下方向の往復動を繰返しながらパネル9の搬送方向に対して後側に向けて徐々に移動する。従って、第2の実施の形態では、塗装領域CAa,CAb間の境界側に位置する折返し部Ta0は、上,下方向のうち例えば上側に向けて順次位置がずれている。これにより、塗装軌跡Taのうち塗装領域CAa,CAb間の境界側は、階段状に形成されている。
最終的に、噴霧機6が第8の平行移動部Ta8の終端Eafに移動すると、噴霧機6が塗装軌跡Taの終了位置Tafとしてパネル9のうち図11中の右上側の角隅に配置される。そして、噴霧機6は、この位置で塗料の噴霧を停止し、パネル9に対する塗装を終了する。
一方、第2の塗装工程では、パネル9がコンベア装置3を用いて搬送方向前側(下流側)の噴霧機7の近傍に移動すると、制御装置8は、搬送方向前側のロボット装置5(噴霧機7)を用いて、パネル9の塗装面のうち例えば下側の塗装領域CAbに対する塗装を開始する。このとき、噴霧機7は、塗装軌跡Tbの開始位置Tbsとしてパネル9のうち図11中の左下側の角隅に移動して、塗料の噴霧を開始する。そして、噴霧機7は、塗料の噴霧を継続した状態で第1の平行移動部Tb1に沿ってパネル9の左側を上方向に向けて移動する。
次に、噴霧機7がパネル9の上,下方向の中央側に移動して平行移動部Tb1の終端Ebfに到達すると、噴霧機7は第1の折返し部Tb0の始端に配置される。このため、噴霧機7は、塗料の噴霧を一旦停止すると共に、第1の折返し部Tb0に沿ってパネル9の右方向に向けて移動する。このとき、平行移動部Tb1の終端Ebfは、上,下方向に対して隣合う平行移動部Ta1の終端Eafの近傍に位置して、これらの平行移動部Tb1,Ta1は略直線状に配置されている。また、第1の折返し部Tb0は上,下方向に対して隣合う折返し部Ta0の近傍に位置し、折返し部Tb0,Ta0は互いに略平行な左,右方向に延びている。
そして、噴霧機7が平行移動部Tb1に対して噴霧パターンPの直径寸法よりも小さい距離寸法だけ右方向に移動して第1の折返し部Tb0の終端に到達すると、噴霧機7は、塗料の噴霧を再開すると共に、塗料の噴霧を継続した状態で第2の平行移動部Tb2に沿ってパネル9の下方向に向けて移動する。
このように、噴霧機7は、上,下方向の往復動を繰返しながらパネル9の搬送方向に対して後側に向けて徐々に移動する。従って、第2の実施の形態では、塗装領域CAa,CAb間の境界側に位置する折返し部Tb0は、上,下方向のうち例えば上側に向けて順次位置がずれている。これにより、塗装軌跡Tbのうち塗装領域CAa,CAb間の境界側は、階段状に形成されている。
最終的に、噴霧機7が第8の平行移動部Tb8の終端Ebfに移動すると、噴霧機7が塗装軌跡Tbの終了位置Tbfとしてパネル9のうち図11中の右下側の角隅に配置される。これにより、噴霧機7は、この位置で塗料の噴霧を停止し、パネル9に対する塗装を終了する。
かくして、このように構成された第2の実施の形態でも、前述した第1の実施の形態とほぼ同様の作用効果を得ることができる。
次に、図12および図13は本発明の第3の実施の形態を示している。本実施の形態の特徴は、パネルを3つの塗装領域に区分して塗装を行ったことにある。なお、本実施の形態では、前述した第1の実施の形態と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略するものとする。
まず、第3の実施の形態では、図12に示すように、噴霧機用動作装置として第1の実施の形態で使用したロボット装置4,5とほぼ同様のロボット装置11を1台追加し、合計3台のロボット装置4,5,11を用いる。また、各ロボット装置4,5,11に取り付けられた回転霧化型噴霧機6,7,12は左,右方向(搬送方向)に往復動する構成としている。
また、第3の実施の形態では、被塗物として、第1の実施の形態で用いたパネル9よりも左,右方向の長さ寸法が大きいパネル13を使用している。そして、パネル13の塗装面は、例えば搬送方向の後側、中間側、前側に位置する3つの塗装領域CAa,CAb,CAcとに区分けされ、各塗装領域CAa,CAb,CAcは、搬送方向後側、中間側、前側に配置された噴霧機6,7,12によってそれぞれ塗装されるものである。
次に、第3の実施の形態による塗装方法について、大型パネル13を塗装する場合を例に挙げ、図13を参照して説明する。
初めに、図13において、パネル13の塗装面に左,右方向に往復動するように描かれた実線と点線(破線)は、第1の実施の形態と同様に、パネル13の塗装面に対する噴霧機6,7,12の塗装軌跡Ta,Tb,Tc(移動軌跡)を示している。また、塗装軌跡Ta,Tb,Tcの実線は、噴霧機6,7,12が左,右方向に沿って平行に移動する平行移動部Ta1〜Ta8,Tb1〜Tb8,Tc1〜Tc8を示している。塗装軌跡Ta,Tb,Tcの点線は、噴霧機6,7,12が折返して移動する折返し部Ta0,Tb0,Tc0を示している。さらに、噴霧機6,7,12は、例えば平行移動部Ta1〜Ta8,Tb1〜Tb8,Tc1〜Tc8では塗料の噴霧を行い、折返し部Ta0,Tb0,Tc0では塗料の噴霧を停止する構成となっている。また、3台の噴霧機6,7,12は、いずれもパネル13(被塗物)との相対速度を保ちつつ塗装軌跡Ta,Tb,Tcに沿って後述する一連の塗装動作を行うものである。
まず、第1の塗装工程では、パネル13がコンベア装置3を用いて搬送方向の後側(最上流側)の噴霧機6の近傍に移動すると、制御装置8は、搬送方向後側のロボット装置4を用いて、パネル13の塗装面のうち例えば搬送方向後側の塗装領域CAaに対する塗装を開始する。このとき、噴霧機6は、塗装軌跡Taの開始位置Tasとして、パネル13の上側うち第1の平行移動部Tb1の終端Ebf近傍となる図13中の左,右方向の中央側に移動して、塗料の噴霧を開始する。そして、噴霧機6は、塗料の噴霧を継続した状態で第1の平行移動部Ta1に沿ってパネル13の上側を右方向に向けて移動する。
次に、噴霧機6がパネル13の右端側に移動して平行移動部Ta1の終端Eafに到達すると、噴霧機6は、塗料の噴霧を一旦停止すると共に、第1の折返し部Ta0に沿ってパネル13の下方向に向けて移動する。
そして、噴霧機6が平行移動部Ta1に対して噴霧パターンPの直径寸法よりも小さい距離寸法だけ下方向に移動すると、噴霧機6は、折返し部Ta0の終端に到達する。そこで、噴霧機6は、塗料の噴霧を再開すると共に、塗料の噴霧を継続した状態で第2の平行移動部Ta2に沿ってパネル13の左方向に向けて移動する。
このように、噴霧機6は、左,右方向の往復動を繰返しながらパネル13の下側に向けて徐々に移動する。従って、第3の実施の形態でも、塗装領域CAa,CAb間の境界側に位置する折返し部Ta0は、搬送方向の前側から後側に向けて順次位置がずれている。これにより、塗装軌跡Taのうち塗装領域CAa,CAb間の境界側は、階段状に形成されている。
最終的に、噴霧機6が第8の平行移動部Ta8の終端Eafに移動すると、噴霧機6が塗装軌跡Taの終了位置Tafとしてパネル13の下側うち図13中の左,右方向の中央側に配置される。これにより、噴霧機6は、この位置で塗料の噴霧を停止し、パネル13に対する塗装を終了する。
次に、第2の塗装工程では、パネル13がコンベア装置3を用いて3台の噴霧機6,7,12のうち搬送方向の中間側に位置する噴霧機7の近傍に移動すると、制御装置8は、中間側のロボット装置5を用いて、例えばパネル13の塗装面のうち搬送方向の中間側に位置する塗装領域CAbに対する塗装を開始する。このとき、噴霧機7は、塗装軌跡Tbの開始位置Tbsとして、パネル13の上側うち第1の平行移動部Tc1の終端Ecf近傍となる図13中の左,右方向の中央側に移動して、塗料の噴霧を開始する。そして、噴霧機7は、塗料の噴霧を継続した状態で第1の平行移動部Tb1に沿ってパネル13の上側を右方向に向けて移動する。
次に、噴霧機7が所定のストローク幅だけ移動して平行移動部Tb1の終端Ebfに到達すると、噴霧機7は、平行移動部Ta1の始端Eas近傍に配置される。このため、噴霧機7は、塗料の噴霧を一旦停止すると共に、第1の折返し部Tb0に沿ってパネル13の下方向に向けて移動する。
そして、噴霧機7が平行移動部Tb1に対して例えば第1の折返し部Ta0と同じ距離寸法だけ下方向に移動すると、噴霧機7は、第1の折返し部Tb0の終端に到達する。そこで、噴霧機7は、塗料の噴霧を再開すると共に、塗料の噴霧を継続した状態で第2の平行移動部Tb2に沿ってパネル13の左方向に向けて移動する。このように、噴霧機7は、左,右方向の往復動を繰返しながらパネル13の下側に向けて徐々に移動する。
このとき、2つの塗装領域CAa,CAb間の境界側に位置する4回の折返し部Tb0は、搬送方向の前側から後側に向けて順次位置がずれると共に、塗装領域CAb,CAc間の境界側に位置する3回の折返し部Tb0も搬送方向の前側から後側に向けて順次位置がずれている。これにより、塗装軌跡Tbのうち、2つの塗装領域CAa,CAb間の境界側は階段状に形成されると共に、塗装領域CAb,CAc間の境界側も階段状に形成され、塗装軌跡Tbは全体として平行四辺形状をなしている。
最終的に、噴霧機7が第8の平行移動部Tb8の終端Ebfに移動すると、噴霧機7が塗装軌跡Tbの終了位置Tbfとしてパネル13の下側のうち第8の平行移動部Tc8の始端Ecs近傍に位置して図13中の左,右方向の中央側に配置される。これにより、噴霧機7は、この位置で塗料の噴霧を停止し、パネル13に対する塗装を終了する。
一方、第3の塗装工程では、パネル13がコンベア装置3を用いて搬送方向前側(下流側)の噴霧機6の近傍に移動すると、制御装置8は、搬送方向前側のロボット装置4を用いて、例えばパネル13の塗装面のうち搬送方向前側の塗装領域CAcに対する塗装を開始する。このとき、噴霧機6は、塗装軌跡Tcの開始位置Tcsとしてパネル13のうち図13中の左上側の角隅に移動して、塗料の噴霧を開始する。そして、噴霧機6は、塗料の噴霧を継続した状態で第1の平行移動部Tc1に沿ってパネル13の上側を右方向に向けて移動する。
次に、噴霧機6がパネル13の左,右方向の中央側に移動して平行移動部Tc1の終端Ecfに到達すると、噴霧機6は、平行移動部Tb1の始端Ebs近傍に配置される。そこで、噴霧機6は、塗料の噴霧を一旦停止すると共に、第1の折返し部Tc0に沿ってパネル13の下方向に向けて移動する。
そして、噴霧機6が平行移動部Tc1に対して例えば第1の折返し部Ta0,Tb0と同じ距離寸法だけ下方向に移動すると、第1の折返し部Tc0の終端に到達する。そこで、噴霧機6は、塗料の噴霧を再開すると共に、塗料の噴霧を継続した状態で第2の平行移動部Tc2に沿ってパネル13の左方向に向けて移動する。
このように、噴霧機6は、左,右方向の往復動を繰返しながらパネル13の下側に向けて徐々に移動する。従って、2つの塗装領域CAb,CAc間の境界側に位置する折返し部Tc0は、搬送方向の前側から後側に向けて順次位置がずれている。これにより、塗装軌跡Tcのうち塗装領域CAb,CAc間の境界側は、階段状に形成されている。
最終的に、噴霧機6が第8の平行移動部Tc8の終端Ecfに移動すると、噴霧機6が塗装軌跡Tcの終了位置Tcfとしてパネル13のうち図13中の左下側の角隅に配置される。これにより、噴霧機6は、この位置で塗料の噴霧を停止し、パネル13に対する塗装を終了する。
かくして、このように構成された第3の実施の形態でも、前述した第1の実施の形態とほぼ同様の作用効果を得ることができる。
次に、図14および図15は本発明の第4の実施の形態を示し、本実施の形態の特徴は、1台の噴霧機を用いて複数の塗装領域を塗装する構成としたことにある。なお、本実施の形態では、前述した第1の実施の形態と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略するものとする。
まず、第4の実施の形態では、噴霧機用動作装置として第1の実施の形態で使用したロボット装置4が1台用いられ、ロボット装置4に取り付けられた回転霧化型噴霧機6は左,右方向に往復動する構成としている。また、第4の実施の形態では、被塗物として、第1の実施の形態で用いたパネル9を使用している。
次に、第4の実施の形態による塗装方法について、パネル9を塗装する場合を例に挙げ、図15を参照して説明する。本実施の形態では、第1の実施の形態と異なり、第1の塗装工程では塗装領域CAbの塗装を行い、第2の塗装工程では塗装領域CAbの塗装を行うものである。
初めに、図15において、パネル9の塗装面に左,右方向に往復動するように描かれた実線と点線(破線)は、第1の実施の形態と同様に、パネル9の塗装面に対する噴霧機6の塗装軌跡Ta,Tb(移動軌跡)を示している。また、塗装軌跡Ta,Tbの実線は、噴霧機6が左,右方向に沿って平行に移動する平行移動部Ta1〜Ta8,Tb1〜Tb8を示している。塗装軌跡Ta,Tbの点線は、噴霧機6が折返して移動する折返し部Ta0,Tb0を示している。さらに、噴霧機6は、例えば平行移動部Ta1〜Ta8,Tb1〜Tb8では塗料の噴霧を行い、折返し部Ta0,Tb0では塗料の噴霧を停止する構成となっている。また、噴霧機6は、パネル9(被塗物)との相対速度を保ちつつ塗装軌跡Ta,Tbに沿って後述する一連の塗装動作を行うものである。
まず、第1の塗装工程では、塗装領域CAbに塗装を施すものである。このため、パネル9がコンベア装置3を用いて噴霧機6の近傍に移動すると、制御装置8は、1台のロボット装置4を用いて、パネル9の塗装面のうち搬送方向前側の塗装領域CAbに対する塗装を開始する。このとき、噴霧機6は、塗装軌跡Tbの開始位置Tbsとしてパネル9のうち図15中の左上側の角隅に移動して、塗料の噴霧を開始する。そして、噴霧機6は、塗料の噴霧を継続した状態で第1の平行移動部Tb1に沿ってパネル9の上側を右方向に向けて移動する。
次に、噴霧機6がパネル9の左,右方向の中央側に移動すると、噴霧機6は、平行移動部Tb1の終端Ebfに到達する。そこで、噴霧機6は、塗料の噴霧を一旦停止すると共に、第1の折返し部Tb0に沿ってパネル9の下方向に向けて移動する。
そして、噴霧機6が平行移動部Tb1に対して噴霧パターンPの直径寸法よりも小さい距離寸法だけ下方向に移動すると、噴霧機6は、第1の折返し部Tb0の終端に到達する。そこで、噴霧機6は、塗料の噴霧を再開すると共に、塗料の噴霧を継続した状態で第2の平行移動部Tb2に沿ってパネル9の左方向に向けて移動する。
このように、噴霧機6は、左,右方向の往復動を繰返しながらパネル9の下側に向けて徐々に移動する。従って、塗装領域CAa,CAb間の境界側に位置する折返し部Tb0は、搬送方向の前側から後側に向けて順次位置がずれている。これにより、塗装軌跡Tbのうち塗装領域CAa,CAb間の境界側は、階段状に形成されている。
そして、噴霧機6が平行移動部Tb8の終端Ebfに移動すると、噴霧機6が塗装軌跡Tbの終了位置Tbfとしてパネル9のうち図15中の左下側の角隅に配置される。これにより、噴霧機6は、この位置で塗料の噴霧を停止し、次なる塗装領域CAaの塗装軌跡Taの開始位置Tasに向けて移動する。
次に、第2の塗装工程では、塗装領域CAaに塗装を施すものである。このため、塗装領域CAbの塗装が終了すると、噴霧機6は、パネル9の塗装面のうち搬送方向後側の塗装領域CAaに対する塗装を開始する。このとき、パネル9がコンベア装置3を用いて搬送されているから、塗装領域CAbの塗装作業中にパネル9が搬送方向の前側に移動してパネル9のうち搬送方向後側の部位が噴霧機6の近傍に移動している。これにより、噴霧機6は搬送方向後側の塗装領域CAaに対する塗装が可能となっている。
そして、塗装領域CAaに対する塗装を開始するときには、噴霧機6は、塗装軌跡Taの開始位置Tasとしてパネル9のうち図15中の右上側の角隅に移動して、塗料の噴霧を開始する。その後、噴霧機6は、塗料の噴霧を継続した状態で第1の平行移動部Ta1に沿ってパネル9の上側を左方向に向けて移動する。
次に、噴霧機6がパネル9の左,右方向の中央側に移動すると、噴霧機6は、平行移動部Ta1の終端Eafに到達する。そこで、噴霧機6は、塗料の噴霧を一旦停止すると共に、第1の折返し部Ta0に沿ってパネル9の下方向に向けて移動する。このとき、平行移動部Ta1の終端Eafは、左,右方向に対して隣合う平行移動部Tb1の終端Ebfの近傍に位置して、これらの平行移動部Tb1,Ta1は略直線状に配置されている。また、第1の折返し部Ta0は左,右方向に対して隣合う折返し部Tb0の近傍に位置し、折返し部Ta0,Tb0は互いに略平行な上,下方向に延びている。
そして、噴霧機6が平行移動部Ta1に対して例えば第1の折返し部Tb0と同じ距離寸法だけ下方向に移動すると、噴霧機6は、第1の折返し部Ta0の終端に到達する。そこで、噴霧機6は、塗料の噴霧を再開すると共に、塗料の噴霧を継続した状態で第2の平行移動部Ta2に沿ってパネル9の右方向に向けて移動する。
このように、噴霧機6は、左,右方向の往復動を繰返しながらパネル9の下側に向けて徐々に移動する。従って、塗装領域CAa,CAb間の境界側に位置する折返し部Ta0は、搬送方向の前側から後側に向けて順次位置がずれている。これにより、塗装軌跡Taのうち塗装領域CAa,CAb間の境界側は、階段状に形成されている。
最終的に、噴霧機6が第8の平行移動部Ta8の終端Eafに移動すると、噴霧機6が塗装軌跡Taの終了位置Tafとしてパネル9のうち図15中の右下側の角隅に配置される。これにより、噴霧機6は、この位置で塗料の噴霧を停止し、パネル9に対する塗装を終了する。
かくして、このように構成された第4の実施の形態でも、前述した第1の実施の形態とほぼ同様の作用効果を得ることができる。特に、第4の実施の形態では、1台の噴霧機6を用いて複数の塗装領域CAa,CAbを塗装する構成としたから、例えばパネル9の搬送速度が比較的遅いときには、1台の噴霧機6を用いて大きな塗装面を塗装することができ、噴霧機6の台数を減少させて、塗装装置1(塗装ライン全体)の設備コスト、メンテナンスコスト等を低減することができる。
なお、第4の実施の形態では、噴霧機6を1台だけ使用する構成としたが、例えば、第1の実施の形態と同様に、搬送方向に沿って2台の噴霧機6,7を配置したときには、2台の噴霧機6,7がいずれも複数の塗装領域CAa,CAbを塗装する構成としてもよい。これにより、パネル9の塗装面全体を2回に亘って塗装することができる。
次に、図16は本発明の第5の実施の形態を示している。本実施の形態の特徴は、1台の噴霧機を用いて複数の塗装領域を塗装すると共に、噴霧機の塗装対象を一方の塗装領域から他方の塗装領域に切換えるときに、一方の塗装軌跡の終了位置と他方の塗装軌跡の開始位置とを近付けて、塗装の噴霧を停止する時間を短縮する構成としたことにある。なお、本実施の形態では、前述した第1の実施の形態と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略するものとする。
まず、第5の実施の形態では、噴霧機用動作装置として第1の実施の形態で使用したロボット装置4が1台用いられ、ロボット装置4に取り付けられた回転霧化型噴霧機6は左,右方向に往復動する構成としている。また、第5の実施の形態では、被塗物として、第1の実施の形態で用いたパネル9を使用している。
次に、第5の実施の形態による塗装方法について、パネル9を塗装する場合を例に挙げ、図16を参照して説明する。本実施の形態では、第1の実施の形態と異なり、第1の塗装工程では塗装領域CAbの塗装を行い、第2の塗装工程では塗装領域CAbの塗装を行うものである。
初めに、図16において、パネル9の塗装面に左,右方向に往復動するように描かれた実線と点線(破線)は、第1の実施の形態と同様に、パネル9の塗装面に対する噴霧機6の塗装軌跡Ta,Tb(移動軌跡)を示している。また、塗装軌跡Ta,Tbの実線は、噴霧機6が左,右方向に沿って平行に移動する平行移動部Ta1〜Ta7,Tb1〜Tb7を示している。塗装軌跡Ta,Tbの点線は、噴霧機6が折返して移動する折返し部Ta0,Tb0を示している。さらに、噴霧機6は、例えば平行移動部Ta1〜Ta7,Tb1〜Tb7では塗料の噴霧を行い、折返し部Ta0,Tb0では塗料の噴霧を停止する構成となっている。また、噴霧機6は、パネル9(被塗物)との相対速度を保ちつつ塗装軌跡Ta,Tbに沿って後述する一連の塗装動作を行うものである。
まず、第1の塗装工程では、塗装領域CAbに塗装を施すものである。このため、パネル9がコンベア装置3を用いて噴霧機6の近傍に移動すると、制御装置8は、1台のロボット装置4を用いて、パネル9の塗装面のうち搬送方向前側の塗装領域CAbに対する塗装を開始する。このとき、噴霧機6は、塗装軌跡Tbの開始位置Tbsとしてパネル9のうち図16中の左上側の角隅に移動して、塗料の噴霧を開始する。そして、噴霧機6は、塗料の噴霧を継続した状態で第1の平行移動部Tb1に沿ってパネル9の上側を右方向に向けて移動する。
次に、噴霧機6がパネル9の左,右方向の中央側に移動して平行移動部Tb1の終端Ebfに到達すると、噴霧機6は、塗料の噴霧を一旦停止すると共に、第1の折返し部Tb0に沿ってパネル9の下方向に向けて移動する。
そして、噴霧機6が平行移動部Tb1に対して噴霧パターンPの直径寸法よりも小さい距離寸法だけ下方向に移動すると、噴霧機6は、第1の折返し部Tb0の終端に到達する。そこで、噴霧機6は、塗料の噴霧を再開すると共に、塗料の噴霧を継続した状態で第2の平行移動部Tb2に沿ってパネル9の左方向に向けて移動する。
このように、噴霧機6は、左,右方向の往復動を繰返しながらパネル9の下側に向けて徐々に移動する。この場合、塗装領域CAa,CAb間の境界側に位置する3回の折返し部Tb0は、搬送方向の前側から後側に向けて順次位置がずれている。これにより、塗装軌跡Tbのうち塗装領域CAa,CAb間の境界側は、階段状に形成されている。
そして、噴霧機6が第7の平行移動部Tb7の終端Ebfに移動すると、噴霧機6が塗装軌跡Tbの終了位置Tbfとしてパネル9の下側のうち図16中の左,右方向の中央側に配置される。このため、噴霧機6は、この位置で塗料の噴霧を停止し、次なる塗装領域CAaの塗装軌跡Taの開始位置Tasに向けて移動する。
次に、第2の塗装工程では、塗装領域CAaに塗装を施すものである。このため、塗装領域CAbの塗装が終了すると、噴霧機6は、パネル9の塗装面のうち上流側の塗装領域CAaに対する塗装を開始する。このとき、パネル9がコンベア装置3を用いて搬送されているから、塗装領域CAbの塗装作業中にパネル9が搬送方向の前側に移動してパネル9のうち搬送方向後側の部位が噴霧機6の近傍に移動している。これにより、噴霧機6は搬送方向後側の塗装領域CAaに対する塗装が可能となっている。
そして、塗装領域CAaに対する塗装を開始するときには、噴霧機6は、塗装軌跡Taの開始位置Tasとしてパネル9の上側のうち平行移動部Tb1の終端Ebf近傍に移動して、塗料の噴霧を開始する。その後、噴霧機6は、塗料の噴霧を継続した状態で第1の平行移動部Ta1に沿ってパネル9の上側を右方向に向けて移動する。
次に、噴霧機6がパネル9の左端側に移動すると、噴霧機6は、平行移動部Ta1の終端Eafに到達する。そこで、噴霧機6は、塗料の噴霧を一旦停止すると共に、第1の折返し部Ta0に沿ってパネル9の下方向に向けて移動する。
そして、噴霧機6が平行移動部Ta1に対して例えば第1の折返し部Tb0と同じ距離寸法だけ下方向に移動すると、噴霧機6は、第1の折返し部Ta0の終端に到達する。そこで、噴霧機6は、塗料の噴霧を再開すると共に、塗料の噴霧を継続した状態で第2の平行移動部Ta2に沿ってパネル9の左方向に向けて移動する。
このように、噴霧機6は、左,右方向の往復動を繰返しながらパネル9の下側に向けて徐々に移動する。従って、塗装領域CAa,CAb間の境界側に位置する折返し部Ta0は、搬送方向の前側から後側に向けて順次位置がずれている。これにより、塗装軌跡Taのうち塗装領域CAa,CAb間の境界側は、階段状に形成されている。
最終的に、噴霧機6が平行移動部Ta7の終端Eafに移動すると、噴霧機6が塗装軌跡Taの終了位置Tafとしてパネル9のうち図16中の右下側の角隅に配置されるから、噴霧機6は、この位置で塗料の噴霧を停止し、パネル9に対する塗装を終了する。
かくして、このように構成された第5の実施の形態でも、前述した第1,第4の実施の形態とほぼ同様の作用効果を得ることができる。特に、第5の実施の形態では、最初の塗装軌跡Tbの終了位置Tbfと次なる塗装軌跡Taの開始位置Tasとをパネル9の左,右方向の中央側に配置して、終了位置Tbfと開始位置Tasとの距離寸法を短縮している。このため、終了位置Tbfと開始位置Tasとの間を噴霧機6が移動するときに塗装の噴霧を停止する時間が生じるのに対し、このような塗料の噴霧の停止時間を短縮することができ、塗装時間を短縮し、生産性を高めることができる。
なお、第5の実施の形態では最初の塗装軌跡Tbの終了位置Tbfと次なる塗装軌跡Taの開始位置Tasとをいずれもパネル9の左,右方向の中央側に配置する構成とした。しかし、本発明はこれに限らず、終了位置Tbfと開始位置Tasとの距離寸法が短縮できるのであれば、終了位置Tbfをパネル9の左,右方向の中央側に配置するのに対し、開始位置Tasをパネル9の右上側の角隅に配置する構成としてもよい。
また、前記第1,第2の実施の形態では、塗装軌跡Ta,Tbは例えば平行移動部Ta1,Tb1のように互いに逆方向に向けて移動する構成とした。しかし、本発明はこれに限らず、例えば第5の実施の形態と同様に、塗装軌跡Taに対して塗装軌跡Tbを互いに同じ方向に向けて移動させる構成としてもよい。
また、前記第1,第3〜第5の実施の形態では、塗装軌跡Ta,Tb,Tcはパネル9,13の上側から下側に向けて形成するものとしたが、例えばパネルの下側から上側に向けて塗装軌跡を形成する構成としてもよい。この場合も、隣合う塗装領域の境界側に位置する折返し部は、搬送方向の前側から後側に向けて順次位置をずらす構成とするのが好ましい。
また、前記各実施の形態では、塗装軌跡Ta,Tb,Tcのうち折返し部Ta0,Tb0,Tc0では塗料の噴霧を停止する構成とした。しかし、本発明はこれに限らず、例えば塗装軌跡の折返し部でも塗料の噴霧を継続する構成としてもよい。この場合、隣合う2つの塗装領域の境界側では、例えば一方の塗装領域の折返し部と他方の塗装領域の折返し部との間に所定の間隔を設け、塗装領域の境界側で塗装膜が厚くなるのを防ぐ構成とするものである。
また、前記各実施の形態では、板状のパネル9,13を塗装する構成としたが、塗装面が広くて塗装面を複数の塗装領域に区分するものであればよく、例えば自動車の車体等にも適用可能である。
また、前記各実施の形態では、コンベア装置3を用いて搬送している状態のパネル9,13に対して塗装を行う構成とした。しかし、本発明はこれに限らず、例えば、停止した状態のパネルに対して塗装を行う構成としてもよい。
さらに、前記各実施の形態では、回転霧化型噴霧機6,7,12を用いる構成としたが、スプレーガン型の噴霧機を用いてもよく、静電塗装に限らず、他の塗装装置を用いてもよい。