JP4180955B2 - 塗装方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば自動車の車体、家具、電化製品等の被塗物に塗装機に用いて塗装を行なう塗装方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、自動車の車体、家具、電化製品等の比較的大きな塗装面を有する被塗物に噴霧塗装を行なう塗装装置は、被塗物を搬送するコンベア装置と、該コンベア装置の途中に位置して該コンベア装置の側方に配設され、多軸型の塗装用ロボット、レシプロケータ等の塗装機用動作装置と、該塗装機用動作装置の可動部に取付けられ、被塗物に向け塗料を噴霧する塗装機等により大略構成されている。
【0003】
また、塗装機としては、高速で回転する回転霧化頭の遠心力の作用によって液体塗料を噴霧する回転霧化型塗装機、圧縮エアを利用して塗料を噴霧するエア霧化型塗装機等が知られている。そして、通常回転霧化型塗装機はほぼ円形状のスプレーパターンが多用されるが、横長なほぼ楕円形状のものも用いられている。また、通常エア霧化型塗装機は楕円形状のスプレーパターンが多用されるが、円形状のスプレーパターンも用いられている。ここで、スプレーパターンとは、塗装機を静止した状態で塗料を噴霧したときに塗装面に付着した塗料が形成する形状をいう。
【0004】
また、塗装機には静電型と非静電型とがあり、通常、回転霧化型塗装機には塗料の霧化機構から静電型が採用されている。一方、エア霧化型塗装機は静電型と非静電型とがあるが、被塗物に対する塗料の塗着効率を高めるために静電型が多く用いられている。これら静電型を採用した塗装機は一般に静電塗装機と呼ばれている。
【0005】
ここで、静電塗装機とは、塗料を高電圧に帯電させ、アースに接続された被塗物との間に形成される電気力線に沿って噴霧塗料を飛行させて被塗物に塗着させる形式のものである。
【0006】
そして、塗装装置は、コンベア装置によって被塗物が塗装開始位置に搬送されてくると、前記塗装機用動作装置により塗装機を被塗物の塗装面に沿って適宜移動し、このときに塗装機から塗料を噴霧することにより被塗物の塗装面に塗装を施すことができる。
【0007】
また、上述した塗装方法では、塗装機を被塗物の塗装面に沿って往復動させて塗料を噴霧することによって、塗装面の何れの箇所に対しても同じように塗装機からの噴霧塗料が形成するスプレーパターンを複数回通過させる。このように塗装面に対してスプレーパターンを複数回通過させることにより、塗装面に付着する噴霧塗料を均一に分散しつつ積層して、塗膜の厚さの均一化を図り高品質な塗装仕上がりを得ようとしている。
【0008】
従って、このスプレーパターンの通過回数(以下、塗重ね回数という)は高品質な塗装仕上がりを得るための重要な要素である。例えば、アルミニウム粉やマイカ紛等の高輝度顔料を含むメタリック塗料等を塗装する場合、塗膜の厚さが均一であっても塗重ね回数が不均一であれば、高輝度顔料の分散密度が不均一になり塗装品質が損なわれることになる。また、一般には、塗重ね回数を多く確保したほうが塗装面における顔料の分散性がよく、塗膜の厚さも均一化できるとされており、少なくとも4,5回以上の塗重ね回数を確保することが望ましいとされている。
【0009】
ここで、従来技術では、塗装機は、通常一定の大きさのスプレーパターンで塗料を噴霧している。そして、被塗物の塗装面の何れの箇所においても等しい塗重ね回数を得るために、スプレーパターンの全部が被塗物の端縁部を越えるように塗装機を往復動させて塗料を噴霧している(以下、これをオーバースプレーという)。このように、オーバースプレーしながら塗装機を往復動さて塗装する塗装方法は広く知られている(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。
【0010】
【特許文献1】
特開平4−187264号公報
【特許文献2】
特開平4−371252号公報
【0011】
しかし、オーバースプレーしながら塗装した場合には、塗装面の塗装に寄与しない廃棄塗料の量が増大してしまう。そこで、このオーバースプレーの量を低減するために、スプレーパターンの全部が被塗物の端縁部を超えないようにして塗装機を往復動させたり、被塗物の端縁部近傍で塗料の噴霧を停止しながら塗装機を往復動させている。このようにして塗装を行なう場合には、端縁部およびその近傍の塗重ね回数と塗膜の厚さとが中央部側に比べて小さくなるから、塗装仕上がり品質が大いに損なわれている。
【0012】
また、静電塗装機を用いた静電塗装の場合、被塗物の端縁部には、静電界の電気力線が強く作用するから、オーバースプレーとして噴霧された塗料が端縁部に集中して塗着する。これにより、被塗物の端縁部は、過剰な塗膜の厚さとなるから、塗料ダレ、塗料溜り等の塗装品質を低下せしめる大きな要因が発生してしまう。
【0013】
そこで、静電塗装機による塗装では、上述のように、スプレーパターンの全部が被塗物の端縁部を超えないように、この端縁部で塗料の噴霧を停止しながら塗装することにより、端縁部側に塗料が集中して塗着するのを回避している。しかし、端縁部の塗料ダレ、塗料溜りは解消できるものの塗重ね回数が不足することになり、塗装品質を損なう要因となっている。
【0014】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上述した従来技術による塗装方法のように、一定の大きなスプレーパターンを用いた塗装では多量のオーバースプレーが生じる。このため、塗装機から噴霧された塗料は、その多くが塗装面に形成される塗膜に寄与することなく、塗装ブース内に廃棄されることになるから、廃棄塗料が多量に発生するという問題がある。
【0015】
また、オーバースプレーを回避しようとすると、塗膜の厚さと塗重ね回数の均一化とを両立して行なうことが困難になるため、高い塗装仕上がり品質を得ることができないという問題がある。
【0016】
また、静電塗装機を用いた静電塗装の場合には、オーバースプレーによって被塗物の端縁部近傍に噴霧塗料が集中して付着し塗膜が厚くなるから、塗装仕上がり品質を大いに損なうという問題がある。
【0017】
また、オーバースプレーによって塗装ブース内に廃棄される塗料は、塗料ミストとなって塗装ブース内を浮遊し、塗装ブース内にある塗装前、塗装中、塗装後の各被塗物に付着して、塗装品質を損なうという問題がある。
【0018】
また、オーバースプレーによって塗装室内に廃棄された廃棄塗料は、塗装ブース内の壁面等に付着するから、塗装ブースの頻繁な清掃が必要になり、清掃コストが増大するという問題がる。また、廃棄塗料の処理コストも増大するという問題がある。
【0019】
さらに、オーバースプレーの量を低減するために、比較的小さなスプレーパターンを有した塗装機の使用も考えられる。しかし、小さなスプレーパターンによる塗装では、必要な塗重ね回数を確保するためには、スプレーパターンを小さくした割合に応じて速い速度で塗装機を往復動させなければならない。このため、塗装用ロボット、レシプロケータ等の塗装機用動作装置は常時高速度で動作しなければならないから、過大な負荷がかかり、塗装機用動作装置の耐久性の低下、故障の頻度が高くなる等の問題が生じる。
【0020】
また、このように塗装機を常時速い速度で往復動させると、塗装機から噴霧された塗料は、空気の抵抗を強く受けるから、所望のスプレーパターンが得られず、塗装品質を大いに損なう問題がある。
【0021】
本発明は上述した従来技術の問題に鑑みなされたもので、本発明の目的は、オーバースプレーにより廃棄される塗料の量を低減させると共に、被塗物の塗装品質、特に端縁部側の塗装品質を向上することができるようにした塗装方法を提供することにある。
【0022】
【課題を解決するための手段】
本発明による塗装方法は、塗料を噴霧するときのスプレーパターンの大きさを大きなスプレーパターンから小さなスプレーパターンまで切換可能な1台の塗装機を用いて被塗物の塗装面に塗装を行なうものである。
【0023】
そして、上述した課題を解決するために、請求項1の発明が採用する塗装方法の特徴は、塗装機を複数回往復動させて噴霧した塗料の大部分が前記被塗物の塗装面から逸脱しないで塗着するように形成されるスプレーパターンの大きさを、塗装面の大きさに応じた大きなスプレーパターンを選択し前記塗装機を往復動させながら塗装を行ない、前記塗装機を往復動させながら塗装を行なうときの隣合うスプレーパターンの移動軌跡の間隔を、大きなスプレーパターンを選択したときには広く設定し、前記大きなスプレーパターンよりも小さなスプレーパターンを選択したときには狭く設定して塗装を行ない、前記大きなスプレーパターンを選択して塗装を行なうときには前記塗装機の移動速度を遅く設定し、前記小さなスプレーパターンを選択して塗装を行なうときには前記塗装機の移動速度を速く設定して塗装を行ない、前記被塗物の端縁部近傍および狭幅な部位は、オーバースプレーにより廃棄される塗料の量を少なくするために、前記小さなスプレーパターンを選択し前記塗装機を往復動させながら塗装を行ない、前記塗装機を往復動させながら塗装を行なうとき、隣合うスプレーパターンの移動軌跡の折返し部では前記小さなスプレーパターンを選択して塗装を行なう構成としたことにある。
【0024】
このように構成したことにより、大きなスプレーパターンで塗装することができる被塗物の中央部側は、大きなスプレーパターンを選択し、そのスプレーパターンを用いて塗装機を往復動させて塗装を行なう。また、被塗物の端縁部近傍および被塗物の狭幅な部位では小さなスプレーパターンを選択し、そのスプレーパターンを用いて塗装を行なう。これにより、塗装膜の厚さを均一にできるから、塗装面の何れの箇所においても高い塗装仕上がり品質を得ることができる。
【0025】
また、端縁部近傍および狭幅な部位に塗装を施すときには、小さなスプレーパターンを選択し塗装機を往復動させながら塗装を行なうことにより、オーバースプレーにより無駄に噴霧される廃棄塗料の量を大幅に少なくすることができる。
【0026】
一方、被塗物の中央部側では、大きなスプレーパターンを選択して塗装を行なうことにより、塗装機を往復動させるときの移動速度は、無理な負荷が作用しない遅い速度に設定できるから、塗装機用動作装置に多大な負荷をかけることなく塗装することができる。
【0027】
また、塗装機を往復動させながら塗装を行なうとき、往復動の折返し部では小さなスプレーパターンを選択して塗装を行なう構成としている。
【0028】
このように構成したことにより、往復動の折返し部では塗装機が被塗物の端縁部に移動するが、このときには小さなスプレーパターンが選択されているから、折返し部でのオーバースプレーによる廃棄塗料の量を大幅に削減することができる。
また、請求項1の発明では、塗装機を往復動させながら塗装を行なうときのスプレーパターンの移動軌跡の間隔を、大きなスプレーパターンを選択したときには広く設定し、小さなスプレーパターンを選択したときには狭く設定している。このように構成したことにより、塗料の塗重ね回数、塗膜の厚さ寸法は、大きなスプレーパターンで塗装するときと小さなスプレーパターンで塗装するときとでほぼ同じにすることができる。
さらに、請求項1の発明では、大きなスプレーパターンを選択して塗装を行なうときには塗装機の移動速度を遅く設定し、小さなスプレーパターンを選択して塗装を行なうときには塗装機の移動速度を速く設定して塗装を行なう構成としている。このように構成したことにより、大きなスプレーパターンの塗重ね回数と小さなスプレーパターンの塗重ね回数とをほぼ同じにすることができる。この結果、噴霧塗料を均等に分散することができ、また塗膜の厚さを全体に亘って均一に仕上げることができ、塗装品質を向上することができる。
【0029】
請求項2の発明によると、スプレーパターンは円形状に形成しているので、塗装機として回転霧化型塗装機を用いて塗装を行なうことができる。
【0030】
請求項3の発明によると、スプレーパターンは楕円形状に形成しているので、塗装機として例えばエア霧化型塗装機を用いて塗装をすることができる。また、楕円形状のスプレーパターンは、パターンの大きさにより長径寸法が大きく変化する。しかし、短径寸法は殆ど変化せずほぼ同じ寸法のままである。これにより、短径側に位置する被塗物の端縁部では、大きなスプレーパターンのままでもオーバースプレーを小さく抑えて塗装することができる。
【0031】
また、楕円形状のスプレーパターンは、塗装機の往復動方向が短径となる楕円形状に形成している。従って、塗装機の往復動方向に位置する被塗物の端縁部を塗装するときには、スプレーパターンを切換えなくてもオーバースプレーを小さく抑えることができる。
また、請求項3の発明では、大きなスプレーパターンを選択して塗装を行なうときには塗装機の移動速度を遅く設定し、小さなスプレーパターンを選択して塗装を行なうときには塗装機の移動速度を速く設定して塗装を行なう構成としている。このように構成したことにより、大きなスプレーパターンの塗重ね回数と小さなスプレーパターンの塗重ね回数とをほぼ同じにすることができる。この結果、噴霧塗料を均等に分散することができ、また塗膜の厚さを全体に亘って均一に仕上げることができ、塗装品質を向上することができる。
【0032】
さらに、請求項3の発明では、塗装機を往復動させながら塗装を行なうときの隣合うスプレーパターンの移動軌跡の間隔を、大きなスプレーパターンを選択したときには広く設定し、小さなスプレーパターンを選択したときには狭く設定して塗装を行なう構成としている。
【0033】
このように構成したことにより、塗料の塗重ね回数、塗膜の厚さ寸法は、大きなスプレーパターンで塗装するときと小さなスプレーパターンで塗装するときとでほぼ同じにすることができる。
【0034】
請求項4の発明では、塗装機は連続して往復動することにより被塗物を塗装し、塗装機のスプレーパターンは連続塗装の途中で往復動の動作を止めることなく切換える構成としている。
【0035】
このように構成したことにより、例えば順次搬送されてくる被塗物に対して塗装用ロボット、レシプロケータ等の塗装機用動作装置に取付けられた塗装機で自動的に塗装を行なう場合でも、連続して行なっている塗装作業の途中であっても、塗装機の往復動作を止めることなく塗装機のスプレーパターンを所望の大きさに切換えることができる。
【0038】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態による塗装方法を用いて被塗物を塗装する場合を例に挙げ、添付図面に従って詳細に説明する。
【0039】
まず、図1ないし図7は本発明の第1の実施の形態を示す。第1の実施の形態では、例えば比較的大きな家具、電化製品等の外面を構成するパネルに対し、塗装用ロボットに取付けられた回転霧化型塗装機により塗装を行なう場合を例に挙げて説明する。
【0040】
図1において、1は塗装ブース(図示せず)内に配設された塗装装置で、該塗装装置1は、後述のコンベア装置2、塗装用ロボット3、回転霧化型塗装機4によって大略構成されている。
【0041】
2は塗装ブース内の天井側に設けられたコンベア装置で、該コンベア装置2は、図2等に示すように、後述するパネル6等を吊下げた状態で、矢示A方向に所定の速度をもって搬送するものである。
【0042】
3はコンベア装置2の途中に位置して該コンベア装置2の側方に配設され、塗装機用動作装置を構成する多軸型の塗装用ロボットで、該塗装用ロボット3は、後述の回転霧化型塗装機4を移動して塗装作業を実行するものである。また、塗装用ロボット3は、基台3Aと、該基台3A上に回転可能かつ揺動可能に設けられた垂直アーム3Bと、該垂直アーム3Bの先端に揺動可能に設けられた水平アーム3Cと、該水平アーム3Cの先端に設けられた手首3Dとにより大略構成されている。
【0043】
そして、塗装用ロボット3は、手首3Dに回転霧化型塗装機4を支持している。また、塗装用ロボット3は、コンベア装置2によって後述の各パネル6,7が塗装位置に搬送されてくると、垂直アーム3B、水平アーム3C等を揺動させ、塗装機4をパネル6,7に沿って上,下方向に往復動させるように移動するものである。
【0044】
4は塗装用ロボット3の手首3Dに取付けられた回転霧化型塗装機で、該塗装機4は、先端側に高速で回転駆動される回転霧化頭4Aを有している。そして、塗装機4は、塗料を回転霧化頭4Aに向け吐出することにより、該回転霧化頭4Aの遠心力の作用により塗料を微粒化し、前方に配置されたパネル6,7に向けて塗料を噴霧するものである。
【0045】
また、塗装機4には、回転霧化頭4Aの外周側の周囲に位置してシェーピングエア噴出口(図示せず)が設けられている。このシェーピングエア噴出口は、回転霧化頭4Aから噴霧された噴霧塗料を取囲むように後側からシェーピングエアを吹付けるものである。そして、シェーピングエアは、回転霧化頭4Aから噴霧された噴霧塗料が遠心力により径方向に広がろうとするのを抑え、所望の径寸法をもった円形状のスプレーパターンに整形するものである。
【0046】
ここで、シェーピングエアは、通常はスプレーパターンを整形するものである。しかし、シェーピングエアは、後述の塗装制御装置5によって噴出圧力を制御することにより、回転霧化頭4Aから噴霧された塗料のスプレーパターンを収束させたり、広げたりすることができる。
【0047】
このように、塗装機4のスプレーパターンは、シェーピングエアを調整することにより、その大きさ(パターンの直径寸法)をディジタル的に複数段階に切換え、またはアナログ的に無段階に切換えることができる。しかし、本実施の形態では、塗装方法について簡便に説明するために、複数段階あるパターンの直径寸法のうち、大きさの異なる3種類のパターンにディジタル的に切換えて塗装する場合を例に挙げて説明する。
【0048】
具体的には、各シェーピングエア噴出口から噴出されるシェーピングエアの圧力を高くしたときには、塗装機4から噴霧された塗料は、収束して直径寸法D1の小さなスプレーパターンとなる小パターンS1(図3参照)を形成する。また、シェーピングエアの圧力を低くしたときには、塗料は広がって直径寸法D2の大きなスプレーパターンとなる大パターンL1(図4参照)を形成する。さらに、シェーピングエアの圧力をスプレーパターンS1とスプレーパターンL1との間の中間圧力としたときには、直径寸法D3を有する中間の大きさのスプレーパターンとなる中パターンM1(図7参照)を形成する。
【0049】
即ち、小パターンS1の直径寸法D1よりも中パターンM1の直径寸法D3が大きく、中パターンM1の直径寸法D3よりも大パターンL1の直径寸法D2が大きく形成されている(D2>D3>D1)。
【0050】
そして、塗装機4は、シェーピングエアの噴出圧力を高、中、低と選択的に調整することにより、回転霧化頭4Aから噴霧された塗料のパターンを小パターンS1、中パターンM1、大パターンL1に切換えることができる。
【0051】
また、スプレーパターンS1,M1,L1の切換えは、主としてシェーピングエアの圧力調整であるから、パネル6,7に対し連続して塗装している途中でも、塗装機4の往復動作を止めることなく容易かつ素早く切換えることができる。
【0052】
5は塗装用ロボット3(塗装機4)に接続して設けられた塗装制御装置で、該塗装制御装置5は、例えば塗装ラインを制御する制御室等に配設されている。ここで、塗装制御装置5は、塗装用ロボット3、塗装機4、エア制御弁、塗料制御弁(いずれも図示せず)等の制御を行なうプログラムをもったコンピュータ等により構成されている。そして、塗装制御装置5は、塗装用ロボット3の動作(塗装機4の移動速度)、塗装機4の塗料の吐出量、シェーピングエアの噴出圧力等を制御するものである。
【0053】
次に、6は被塗物となる大形パネルで、該大形パネル6は、塗装機4のスプレーパターンを大パターンL1とし、この大パターンL1を複数回往復動作させながら塗料を噴霧した場合でも、噴霧塗料の大部分が塗装面から逸脱しないで塗着するような広い面積、即ち、大きな縦幅寸法、横幅寸法をもった四角形状の板体として形成されている。ここで、大形パネル6は、縦方向と横方向に広幅に形成されているから、後述する塗装方法では塗装機4のスプレーパターンを小パターンS1と大パターンL1とに切換えて塗装を行なう。
【0054】
また、7は被塗物となる小形パネルで、該小形パネル7は、塗装機4のスプレーパターンを大パターンL1として往復動作させながら塗装する大形パネル6よりも狭い面積、即ち、小さな縦幅寸法、横幅寸法をもった四角形状の板体として形成されている。具体的には、小形パネル7は、その中央部側に中パターンM1のスプレーパターンを複数回往復動作させて塗装したときに、噴霧塗料の大部分が塗装面から逸脱しないで塗着する面積となっている。ここで、小形パネル7は、大形パネル6よりも小さく形成されているから、小パターンS1と中パターンM1とに切換えて塗装を行なう。
【0055】
そして、大形パネル6、小形パネル7は、例えばスチール製の家具、電化製品の外面板等が適用される。そして、各パネル6,7はコンベア装置2に吊下げられた状態で順次矢示A方向に搬送される。
【0056】
次に、大形パネル6、小形パネル7を塗装するときの塗装方法について、図2ないし図7を参照して説明する。
【0057】
まず、大形パネル6の塗装方法について図2ないし図4に従って説明する。図2において、大形パネル6の塗装面に上,下方向に往復動するように描かれた細点線と太実線は、大形パネル6の塗装面に対する塗装機4(回転霧化頭4A)の移動軌跡を示している。また、細点線は、小パターンS1で塗装を行なうときの塗装機4の移動軌跡で、大形パネル6の端縁部近傍に位置している。
【0058】
具体的には、小パターンS1で塗装する範囲は、図3中にハッチングで示すように、塗り始めとなる左端縁部の1往復、塗り終わりとなる右端縁部の1往復、上端縁部の折返し部分および下端縁部の折返し部分となっている。これにより、小パターンS1を用いた塗装では、大形パネル6から外れた位置に塗料を噴霧するオーバースプレーを最小限に抑えることができる。
【0059】
また、細点線は、小パターンS1で塗装を行なうときの塗装機4の移動軌跡であるから、往復動作したときの横幅方向の間隔は狭い寸法P1(図2参照)に設定されている。
【0060】
一方、大形パネル6の塗装面に描かれた太実線は、大パターンL1で塗装を行なうときの塗装機4の移動軌跡を示している。この太実線は、スプレーパターンを大パターンL1として塗料を噴霧したときに、噴霧塗料の大部分が塗装面から逸脱しないで塗着する部位、例えば大形パネル6の中央部側に位置している。
【0061】
具体的に述べると、大パターンL1で塗装する範囲は、図4中にハッチングで示すように、塗り始めとなる左端縁部の2往復目から塗り終わりとなる右端縁部の1往復手前で、かつ上端縁部と下端縁部の折返し部分を除く範囲となっている。これにより、大パターンL1を用いた塗装では、オーバースプレーにより廃棄される塗料を削減することができる。
【0062】
また、太実線は、大パターンL1で塗装を行なうときの塗装機4の移動軌跡であるから、往復動作したときの横幅方向の間隔は、小パターンS1の間隔寸法P1よりも広い間隔寸法P2に設定されている(P2>P1)。
【0063】
そして、大形パネル6を塗装するときには、スプレーパターンを小パターンS1に切換え、例えば左下の位置から細点線に沿って塗装機4を移動して塗装を行なう。このときに塗装制御装置5は、小パターンS1による塗料の噴霧範囲が狭いことから、例えば塗装機4の移動速度を速くする制御、往復動作の間隔寸法P1を狭くする制御等を行ない、大パターンL1による塗装と同じ塗重ね回数、均一な塗膜厚さ等を得るようにしている。
【0064】
次に、細点線に沿って塗装機4を2回折返したら、細点線から太実線に変わるため、これに合わせて小パターンS1から大パターンL1に切換えて塗装を行なう。このときに塗装制御装置5は、大パターンL1による塗料の噴霧範囲が広いことから、例えば塗装機4の移動速度を遅くする制御、往復動作の間隔寸法P2を広くする制御等を行ない、所望の塗重ね回数(例えば4,5回)、均一な塗膜厚さ等を得るようにしている。
【0065】
このように、塗装機4は、大形パネル6の端縁部側に描かれた細点線による小パターンS1と中央部側に描かれた太実線による大パターンL1とに切換えることにより、大形パネル6の何れの塗装箇所でも塗膜の厚さ寸法を一定にし、かつ塗重ね回数を等しくして塗装の仕上がり品質を高めることができる。また、オーバースプレーによって大形パネル6から逸脱した位置に無駄に噴霧される廃棄塗料(塗料ミスト)の量を最小限に抑えることができる。
【0066】
次に、小形パネル7の塗装方法について図5ないし図7に従って説明する。小形パネル7の塗装面に描かれた細点線と丸点線は、小形パネル7の塗装面に対する塗装機4の移動軌跡を示している。また、細点線は、小形パネル7を小パターンS1で塗装するときの塗装機4の移動軌跡で、小形パネル7の端縁部近傍に位置している。
【0067】
具体的に述べると、小パターンS1で塗装する範囲は、図6中にハッチングで示すように、塗り始めとなる左端縁部の1往復、塗り終わりとなる右端縁部の1往復、上端縁部の折返し部分および下端縁部の折返し部分となっている。
【0068】
一方、小形パネル7の塗装面に描かれた丸点線は、中パターンM1で塗装を行なうときの塗装機4の移動軌跡を示している。この丸点線は、スプレーパターンを中パターンM1として塗料を噴霧したときに、噴霧塗料の大部分が塗装面から逸脱しないで塗着する部位、例えば小形パネル7の中央部側に位置している。
【0069】
具体的には、中パターンM1で塗装する範囲は、図7中にハッチングで示すように、塗り始めとなる左端縁部の2往復目から塗り終わりとなる右端縁部の1往復手前で、かつ上端縁部と下端縁部の折返し部分を除く範囲となっている。これにより、中パターンM1を用いた塗装では、オーバースプレーにより廃棄される塗料を削減することができる。
【0070】
また、丸点線は、中パターンM1で塗装を行なうときの塗装機4の移動軌跡であるから、往復動作したときの横幅方向の間隔は、小パターンS1の間隔寸法P1よりも広く、大パターンL1の間隔寸法P2よりも狭い間隔寸法P3に設定されている(P2>P3>P1)。
【0071】
そして、小形パネル7を塗装するときには、図6に示すように端縁部側に描かれた細点線に沿って小パターンS1で塗装を行なう。また、図7に示すように中央部側に描かれた丸点線に沿って中パターンM1で塗装を行なう。これにより、大形パネル6の塗装と同様に、オーバースプレーを小さく抑えると共に、高品質で、塗料に無駄のない塗装を行なうことができる。
【0072】
かくして、第1の実施の形態による塗装方法によれば、大形パネル6、小形パネル7の端縁部近傍を塗装するときには小パターンS1に切換えて塗装を行なうことができ、中央部側を塗装するときには大パターンL1、中パターンM1に切換えて塗装を行なうことができる。
【0073】
従って、各パネル6,7の端縁部側を塗装するときには、小パターンS1によりオーバースプレーを最小限に抑えることができるから、各パネル6,7を逸脱して無駄に噴霧される廃棄塗料の量を削減することができる。また、オーバースプレーが少ない中央部側を塗装するときには、大パターンL1または中パターンM1により塗装することができるから、塗装品質を向上することができる。
【0074】
この結果、オーバースプレーによって廃棄される塗料の量を大幅に削減することができるから、塗料の使用量を削減して塗装コストを低減することができる。しかも、塗装面以外に噴霧される廃棄塗料を削減することにより、塗装ブース内に廃棄された塗料ミストが例えば塗装前、塗装中、塗装後の塗装面に付着するのを防止でき、塗装仕上り品質を向上することができる。
【0075】
また、塗装ブース内に廃棄される塗料ミストを少なくすることにより、塗装ブース内の清掃作業に関わる清掃コスト、廃棄塗料の処理コスト等を低減することができる。
【0076】
また、大形パネル6、小形パネル7の端縁部近傍は、小さな小パターンS1を用い、例えば移動軌跡の往復動間隔を狭いP1とし、塗装機4の移動速度を速くして塗装を行なう。これにより、小パターンS1の塗重ね回数と大パターンL1、中パターンM1の塗重ね回数とをほぼ同じにすることができる。この結果、噴霧塗料に含まれる顔料を均等に分散することができ、また塗膜厚さを全体に亘って均一に仕上げることができ、塗装品質を向上することができる。
【0077】
また、大形パネル6、小形パネル7の中央部側を大パターンL1、中パターンM1で塗装を行なうようにしているから、塗装用ロボット3による塗装機4の移動速度を遅く設定することができる。これにより、塗装機4を速い速度で動作するのは、端縁部側だけとすることができるから、塗装用ロボット3の負荷を軽減して、耐久性を向上でき、また塗装品質を良好にすることができる。
【0078】
一方、塗装機4のスプレーパターンを小パターンS1、中パターンM1、大パターンL1に切換える手段として、シェーピングエアを利用し、その噴出圧力を塗装制御装置5によって調整することにより切換えるようにしている。従って、スプレーパターンの大きさを簡単かつ安価に切換えることができる。
【0079】
さらに、塗装機4のスプレーパターンは、例えば3種類以上の大きさに切換えることができるから、大形パネル6、小形パネル7に限らず種々の大きさ、形状を有する被塗物に広く適用することができる。
【0080】
次に、図8ないし図15は本発明の第2の実施の形態を示している。本実施の形態の特徴は、被塗物としての自動車の車体に塗装を施したことにある。
【0081】
図8において、11は塗装ブース内に配設された塗装装置で、該塗装装置11は、後述のコンベア装置12、塗装用ロボット14、回転霧化型塗装機15によって大略構成されている。
【0082】
12は塗装ブース内の床面上に設けられたコンベア装置で、該コンベア装置12は、後述する自動車の車体16を支持台(図示せず)上に搭載した状態で、矢示B方向に所定の速度をもって搬送するものである。
【0083】
13,13はコンベア装置12の左,右両側に設けられた左,右のトラッキング装置で、該各トラッキング装置13は、後述の回転霧化型塗装機15を車体16に追従させるために、移動台13Aをコンベア装置12と平行に移動するものである。
【0084】
14,14はトラッキング装置13の移動台13Aに搭載され、第2の実施の形態による塗装機用動作装置を構成する左,右の塗装用ロボットを示している。そして、各塗装用ロボット14は、第1の実施の形態による塗装用ロボット3とほぼ同様に、移動台13A上に回転可能かつ揺動可能に設けられた垂直アーム14Aと、該垂直アーム14Aの上端側に回動可能に取付けられた水平アーム14Bと、該水平アーム14Bの先端に取付けられた手首14Cとによって大略構成されている。
【0085】
15,15は塗装用ロボット14の手首14Cに取付けられた第2の実施の形態による左,右の回転霧化型塗装機で、該塗装機15は、第1の実施の形態による塗装機4とほぼ同様に、先端側に高速で回転駆動される回転霧化頭15Aを有している。そして、塗装機15には、回転霧化頭15Aの外周側の周囲に位置してシェーピングエア噴出口(図示せず)が設けられている。
【0086】
ここで、シェーピングエア噴出口は、回転霧化頭15Aから噴霧された塗料のスプレーパターンを整形するシェーピングエアを吹付けるものである。また、シェーピングエアは、その噴出圧力を塗装制御装置(図示せず)によって調整することにより、スプレーパターンの大きさを、第1の実施の形態と同様に、小パターンS2、中パターンM2、大パターンL2の3種類に切換えることができる。
【0087】
16は被塗物となる自動車の車体で、該車体16は、コンベア装置12の支持台上に搭載されて搬送される。ここで、車体16は、図9、図10に示す如く、左,右の前フェンダ16A、左,右の前ピラー16B、左,右の前ドア16C、左,右の中央ピラー16D、左,右の後ドア16E、左,右の後ピラー16F、左,右の後フェンダ16G、ボンネット16H、ルーフ16J、トランクリッド16K等によって大略構成されている。
【0088】
次に、自動車の車体16を塗装するときの塗装方法について、図9ないし図15を参照して説明する。
【0089】
まず、車体16の塗装面のうち左側面部、即ち、左前フェンダ16A、左前ピラー16B、左前ドア16C、左中央ピラー16D、左後ドア16E、左後ピラー16F、左後フェンダ16Gの塗装方法について、図9、図11、図12、図13に従って説明する。
【0090】
図9は車体16の左側面部を塗装するときの塗装機15の全体的な動きを表す移動軌跡を示している。即ち、図9において、車体16の左側面部の塗装面に描かれた細点線、丸点線、太実線および罰点線(×点線)は、塗装機15(回転霧化頭15A)の移動軌跡に従ったスプレーパターンの変化を示している。
【0091】
そして、車体16の左側面部の細点線は、小パターンS2で塗装を行なうときの塗装機15の移動軌跡を示している。この細点線は、左前フェンダ16A、左前ドア16C、左後ドア16E、左後フェンダ16Gの端縁部側と、狭幅な部位である左前ピラー16B、左中央ピラー16Dに描かれている。
【0092】
ここで、小パターンS2で塗装する範囲は、図11中にハッチングで示すように、左前フェンダ16A、左前ドア16C、左後ドア16E、左後フェンダ16Gの端縁部近傍と、狭幅な左前ピラー16B、左中央ピラー16Dの部位となっている。これにより、小パターンS2を用いた塗装では、オーバースプレーを最小限に抑えることができる。また、細点線は、小パターンS2で塗装を行なうために、往復動作の間隔は狭い寸法P4(図9、図10参照)に設定されている。
【0093】
また、車体16の左側面部の丸点線は、中パターンM2で塗装を行なうときの塗装機15の移動軌跡を示している。この丸点線は、大パターンL2を用いて塗装を行なうには狭幅な塗装範囲となる左前フェンダ16A、左後ピラー16F、左後フェンダ16G等の中央部側に描かれている。
【0094】
ここで、中パターンM2で塗装する範囲は、図12中にハッチングで示すように、左前フェンダ16A、左後フェンダ16Gの中央部側を主とする部位と左後ピラー16Fの全体となっている。また、丸点線は、小パターンS2よりも大きな中パターンM2で塗装を行なうために、往復動作の間隔は細点線の間隔寸法P4よりも大きな寸法P5に設定されている(P5>P4)。
【0095】
さらに、車体16の左側面部の太実線は、大パターンL2で塗装を行なうときの塗装機15の移動軌跡を示している。この太実線は、広幅な塗装範囲となる左前ドア16C、左後ドア16Eの中央部側に描かれている。
【0096】
ここで、大パターンL2で塗装する範囲は、図13中にハッチングで示すように、左前ドア16Cと左後ドア16Eとを合わせた範囲の中央部側を主とする部位となっている。また、太実線は、大パターンL2で塗装を行なうために、往復動作の間隔は丸点線の間隔寸法P5よりも大きな寸法P6に設定されている(P6>P5)。
【0097】
なお、車体16の左側面部には、左後ドア16Eの後部側に×点線が描かれている。この×点線は、塗料の噴霧を停止した状態で塗装機15を移動するときの軌跡を示している。
【0098】
次に、車体16の左側面部を塗装するときの塗装順序、スプレーパターンS2,M2,L2の切換え位置等について説明する。
【0099】
まず、車体16の左側面部を塗装するときには、小パターンS2に切換え、例えば左前フェンダ16Aの前部下側から細点線に沿って塗装機15を移動して塗装を行なう。
【0100】
次に、細点線は左前フェンダ16Aの中央部側で丸点線に変わるため、これに合わせて塗装機15は小パターンS2を中パターンM2に切換えて塗装を行なう。
【0101】
次に、丸点線は左前フェンダ16Aの後部上側で細点線に変わるため、これに合わせて塗装機15は中パターンM2を小パターンS2に切換えて塗装を行なう。このときに塗装機15は、細点線に沿って左前ピラー16B、左前フェンダ16Aの後縁部、左前ドア16Cの下縁部の順で移動させる。
【0102】
次に、細点線は左前ドア16Cの中央部側で太実線に変わるため、これに合わせて塗装機15は小パターンS2を大パターンL2に切換え、左前ドア16Cの中央部側を塗装する。そして、左前ドア16Cの上部側では、大パターンL2から再度小パターンS2に切換えて塗装する。
【0103】
このように車体16の左側面部の前側半分を塗装したら、左後ドア16Eの中央部側は大パターンL2で塗装し、左後ピラー16Fと左後フェンダ16Gの中央部側は中パターンM2で塗装し、その他の端縁部側は小パターンS2によって塗装することにより、車体16の左側面部全体を塗装することができる。
【0104】
次に、車体16の上面部左半分、即ち、ボンネット16H、ルーフ16J、トランクリッド16Kの左半分の塗装方法について、図10、図14、図15に従って説明する。
【0105】
図10は車体16の上面部左半分を塗装するときの塗装機15の移動軌跡の全体的な動きを示している。即ち、図10において、車体16の上面部左半分の塗装面に描かれた細点線、太実線および×点線は、塗装機15の移動軌跡に従ったスプレーパターンの変化を示している。
【0106】
ここで、車体16の上面部左半分の細点線は、小パターンS2で塗装を行なうときの塗装機15の移動軌跡を示している。この細点線は、ボンネット16H、ルーフ16J、トランクリッド16Kの端縁部近傍に位置して描かれている。また、太実線は、ボンネット16H、ルーフ16J、トランクリッド16Kの中央部側に描かれている。
【0107】
そして、ボンネット16H、ルーフ16J、トランクリッド16Kの左半分の端縁部側を塗装する場合には、塗装機15は、細点線に沿って小パターンS2で塗料を噴霧することにより、図14中にハッチングで示す範囲を塗装することができる。
【0108】
また、ボンネット16H、ルーフ16J、トランクリッド16Kの左半分の中央部側を塗装する場合には、塗装機15は、太実線に沿って大パターンL2で塗料を噴霧することにより、図15中にハッチングで示す範囲を塗装することができる。
【0109】
一方、車体16の右半分の塗装方法は、前述した左側面部、上面部の左半分の塗装方法と左,右対称となる点以外は同様であるため、その説明を省略するものとする。
【0110】
かくして、このように構成された第2の実施の形態でも、前述した第1の実施の形態とほぼ同様の作用効果を得ることができる。特に、本実施の形態によれば、塗装面が複雑に形成された自動車の車体16を塗装する場合でも、オーバースプレーにより廃棄される塗料を少なくして高品質な塗装を行なうことができ、また塗料の使用量を削減することができる。
【0111】
次に、図16ないし図18は本発明の第1の参考例を示している。本参考例の特徴は、例えばレシプロケータ(図示せず)を用いて回転霧化型塗装機を上,下方向にのみ往復動させて塗装を行なう構成としたことにある。なお、本参考例では、前述した第1の実施の形態と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略するものとする。
【0112】
まず、第1の参考例では、塗装機用動作装置として第1の実施の形態で使用した塗装用ロボット3またはアーム部を上,下方向に往復動作するレシプロケータが用いられ、回転霧化型塗装機4は固定されたストローク幅をもって上,下方向にのみ往復動作する構成としている。また、第1の参考例では、被塗物として、第1の実施の形態で用いた大形パネル6を使用している。
【0113】
次に、第1の参考例による大形パネル6の塗装方法について、図16ないし図18を参照して説明する。
【0114】
図16は、大形パネル6の塗装面に描かれた細点線、太実線および罰点線(×点線)は、塗装機4の移動軌跡を示している。また、細点線、太実線および×点線は、矢示A方向に搬送される大形パネル6に対し、レシプロケータにより塗装機4を上,下方向に往復動させているだけであるから、大形パネル6に斜めの軌跡として描かれている。
【0115】
ここで、細点線は、小パターンS3で塗装を行なうときの塗装機4の移動軌跡で、大形パネル6の端縁部近傍に位置している。即ち、細点線は、塗り始めとなる左端縁部のほぼ1往復部分と、塗り終りとなる右端縁部のほぼ1往復部分と、上端縁部の範囲aで示す部分と、下端縁部の範囲aで示す部分とに描かれている。なお、第1の参考例では、第1の実施の形態で中パターンM1として用いたスプレーパターンの大きさを小パターンS3として使用している。
【0116】
また、太実線は、大パターンL3で塗装を行なうときの塗装機4の移動軌跡で、大形パネル6の中央部側に位置している。詳しくは、太実線は塗り始めとなる左端縁部の2往復目から塗り終りとなる右端縁部の1往復手前で、上端縁部と下端縁部の折返し部分を除く細点線に挟まれた範囲bで示す部分に描かれている。なお、第1の参考例による大パターンL3は、第1の実施の形態による大パターンL1と同じ大きさを使用している。
【0117】
さらに、×点線は、塗料の噴霧を停止させた状態の塗装機4が移動するときの軌跡で、大形パネル6から上,下方向に外れた範囲cで示す部分に折返し部として描かれている。
【0118】
また、細点線は、小さな小パターンS3で塗装を行なうために、図16に示す如く、任意の位置における往復動作の間隔は狭い寸法P7に設定されている。一方、太実線は、大きな大パターンL3で塗装を行なうために、間隔寸法P7と同様の位置における往復動作の間隔は細点線の間隔寸法P7よりも大きな寸法P8に設定されている(P8>P7)。
【0119】
そして、大形パネル6を塗装するときには、スプレーパターンを小パターンS3に切換え、細点線に沿って下側から上側に向け塗装機4を移動して塗装を行なう。そして、上側位置で細点線が×点線に変わるため、塗装機4は回転霧化頭4Aへの塗料の供給を停止し、この状態で塗装機4を×点線に沿って折返す。さらに、×点線は細点線に戻るから、回転霧化頭4Aに塗料を供給して小パターンS3の塗装を行なう。
【0120】
この小パターンS3による塗装と塗料の噴霧停止とを繰返すことにより、図17中にハッチングで示すように、大形パネル6の端縁部側にオーバースプレーを小さく抑えた塗装を施すことができる。
【0121】
また、細点線に沿って塗装機4を2回折返したら、細点線から太実線に変わるため、これに合わせて小パターンS3から大パターンL3に切換えて塗装を行なう。そして、大パターンL3による塗装を繰返すことにより、図18中にハッチングで示すように大形パネル6の中央部側に塗装を施すことができる。
【0122】
かくして、このように構成された第1の参考例でも、前述した第1の実施の形態とほぼ同様の作用効果を得ることができる。特に、本参考例によれば、例えば安価なレシプロケータを用いて塗装を行なう場合でも、オーバースプレーを小さく抑えて、塗料に無駄のない良好な品質の塗装を行なうことができる。
【0123】
次に、図19ないし図21は本発明の第2の参考例を示している。本参考例の特徴は、スプレーパターンを、塗装機の往復動方向が短径となる楕円形状に形成したことにある。なお、本参考例では、前述した第1の実施の形態と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略するものとする。
【0124】
まず、第2の参考例では、第1の実施の形態で使用した塗装用ロボット3またはアーム部を上,下方向に往復動作するレシプロケータ(図示せず)が用いられている。また、前記アーム先端に取付けられた塗装機は、圧縮エアを利用して塗料を噴霧するエア霧化型塗装機(図示せず)として構成されている。そして、塗装機は、塗装用ロボット等により固定されたストローク幅をもって上,下方向にのみ往復動作する構成となっている。また、第2の参考例では、被塗物として、第1の実施の形態で用いた大形パネル6を使用している。
【0125】
ここで、エア霧化型塗装機のスプレーパターンについて説明する。この塗装機の噴霧ノズルは、例えば大形パネル6の搬送方向(矢示A方向)となる横幅方向に大きく広がり、これにほぼ直交する縦幅方向には少し広がるだけである。従って、エア霧化型塗装機のスプレーパターンは横幅方向に長い楕円形状をなしている。
【0126】
次に、第2の参考例による大形パネル6の塗装方法について、図19ないし図21を参照して説明する。
【0127】
図19において、大形パネル6の塗装面に描かれた細点線、太実線および罰点線(×点線)は、エア霧化型塗装機の移動軌跡を示している。ここで、細点線は、小さなスプレーパターンとなる小パターンS4(図20参照)で塗装を行なうときの塗装機の移動軌跡で、この小パターンS4は、大形パネル6の左端縁部近傍と右端縁部近傍とに位置している。
【0128】
具体的には、細点線は塗り始めとなる左端縁部のほぼ1往復部分と、塗り終りとなる右端縁部のほぼ1往復部分とに描かれている。なお、第2の参考例では、塗装機としてエア霧化型塗装機を用いているから、小パターンS4は横長な楕円形状に形成されている。即ち、小パターンS4は、長径寸法(横幅寸法)D4、短径寸法(縦幅寸法)D5をもって形成されている。
【0129】
また、太実線は、大きなスプレーパターンとなる大パターンL4(図21参照)で塗装を行なうときの塗装機の移動軌跡で、この大パターンL4は、大形パネル6の左,右方向の中央部側に位置している。詳しくは、太実線は塗り始めとなる左端縁部の2往復目から塗り終りとなる右端縁部の1往復手前の位置までの部分に描かれている。なお、第2の参考例による大パターンL4は、小パターンS4よりも大きな楕円形状に形成されている。
【0130】
即ち、大パターンL4の長径寸法D6は、小パターンS4の長径寸法D4に比較して大きく形成されている(D6>D4)。しかし、大パターンL4の短径寸法D7は、小パターンS4の短径寸法D5に比較して僅かに大きいか、またはほぼ同じ寸法に形成されている(D7≒D5)。
【0131】
さらに、×点線は、塗料の噴霧を停止させた状態で塗装機が折返し動作を行なうときの軌跡で、大形パネル6から上,下方向に外れた部分に描かれている。
【0132】
また、細点線は、小パターンS4で塗装を行なうために、図19に示す如く、任意の位置における往復動作の間隔は狭い寸法P9に設定されている。一方、太実線は、大きな大パターンL4で塗装を行なうために、間隔寸法P9と同様の位置における往復動作の間隔は細点線の間隔寸法P9よりも大きな寸法P10に設定されている(P10>P9)。
【0133】
そして、大形パネル6を塗装するときには、スプレーパターンの長径側となる左,右方向の端縁部では、スプレーパターンを小パターンS4に切換え、細点線に沿って下側から上側に向け塗装機を移動して塗装を行なう。そして、上側位置で細点線が×点線に変わるため、塗装機への塗料の供給を停止し、この状態で塗装機を×点線に沿って折返す。さらに、×点線は細点線に戻るから、塗装機に塗料を供給して小パターンS4の塗装を行なう。
【0134】
この小パターンS4による塗装と塗料の噴霧停止とを塗り始めと塗り終りで2回ずつ繰返すことにより、図20中にハッチングで示すように、大形パネル6の左,右方向の端縁部側にオーバースプレーを小さく抑えた塗装を施すことができる。
【0135】
次に、塗り始めから細点線、×点線に沿って塗装機を2回折返したら、細点線から太実線に変わるため、これに合わせて小パターンS4から大パターンL4に切換えて塗装を行なう。そして、大パターンL4による塗装を繰返すことにより、図21中にハッチングで示すように大形パネル6の中央部側に塗装を施すことができる。
【0136】
ここで、エア霧化型塗装機のスプレーパターンは横長な楕円形状であるから、大パターンL4の短径寸法D7は、小パターンS4の短径寸法D5よりも僅かに大きいだけでほぼ同じ寸法となっている。このため、大形パネル6の中央部側を大パターンL4で塗装するときには、スプレーパターンの短径側の端縁部、即ち、大形パネル6の上,下方向の端縁部は、小パターンS4に切換えることなく、大パターンL4のままで塗装しても、オーバースプレーを小さく抑えることができる。
【0137】
かくして、このように構成された第2の参考例でも、前述した第1の実施の形態とほぼ同様の作用効果を得ることができる。特に、本参考例によれば、エア霧化型塗装機のスプレーパターンが楕円形状である特徴を利用しているから、折返し位置でのオーバースプレーを小さく抑えることができ、スプレーパターンの切換え回数を少なくすることができる。これにより、スプレーパターンの制御を容易に行なうことができる。
【0138】
次に、図22ないし図24は本発明の第3の実施の形態を示している。本実施の形態の特徴は、例えば第1の実施の形態と同様の塗装用ロボットを用い、楕円形状のスプレーパターンを小パターンと大パターンの2種類に切換えて塗装したことにある。なお、本実施の形態では、前述した第1の実施の形態と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略するものとする。
【0139】
まず、第3の実施の形態では、第1の実施の形態で使用した塗装用ロボット3が用いられている。また、塗装用ロボット3に取付けられた塗装機は、圧縮エアを利用して塗料を噴霧するエア霧化型塗装機(図示せず)として構成されている。また、第3の実施の形態では、被塗物として、第1の実施の形態で用いた大形パネル6を使用している。さらに、エア霧化型塗装機のスプレーパターンは、横幅方向が長径となり、縦幅方向(塗装機の往復動方向)が短径となる楕円形状に形成されている。
【0140】
次に、第3の実施の形態による大形パネル6の塗装方法について、図22ないし図24を参照して説明する。
【0141】
図22において、大形パネル6の塗装面に描かれた細点線と太実線は、エア霧化型塗装機の移動軌跡を示している。ここで、細点線は、小さなスプレーパターンとなる小パターンS5(図23参照)で塗装を行なうときの塗装機の移動軌跡を示している。この小パターンS5は、長径寸法(横幅寸法)D8と短径寸法(縦幅寸法)D9とを有する横長な楕円形状をなし、大形パネル6の左端縁部近傍と右端縁部近傍とを塗装するときに用いられる。
【0142】
また、太実線は、大きなスプレーパターンとなる大パターンL5(図24参照)で塗装を行なうときの塗装機の移動軌跡で、この大パターンL5は、小パターンS5よりも大きな楕円形状をなし、大形パネル6の左,右方向(搬送方向A)の中央部側を塗装するときに用いられる。
【0143】
また、大パターンL5の長径寸法D10は、小パターンS5の長径寸法D8に比較して大きく形成されている(D10>D8)。しかし、大パターンL5の短径寸法D11は、小パターンS5の短径寸法D9に比較して僅かに大きいか、またはほぼ同じ寸法に形成されている(D11≒D9)。
【0144】
一方、細点線は、小パターンS5で塗装を行なうために、図22に示す如く、往復動作の間隔は狭い寸法P11に設定されている。一方、太実線は、大パターンL5で塗装を行なうために、往復動作の間隔は細点線の間隔寸法P11よりも大きな寸法P12に設定されている(P12>P11)。
【0145】
そして、大形パネル6を塗装するときには、その左,右方向の端縁部では、スプレーパターンを小パターンS5に切換え、細点線に沿って塗装機を往復移動させることにより、図23中にハッチングで示すように、大形パネル6の左,右方向の端縁部側にオーバースプレーを小さく抑えた塗装を施すことができる。
【0146】
次に、大形パネル6の中央部側では、小パターンS5を大パターンL5に切換えて塗装を行なうことにより、図24中にハッチングで示すように大形パネル6の中央部側に塗装を施すことができる。
【0147】
ここで、エア霧化型塗装機のスプレーパターンは、第2の参考例と同様に横長な楕円形状であるから、スプレーパターンの短径側の端縁部、即ち、大形パネル6の上,下方向の端縁部は、大パターンL5のままで塗装することができ、この場合でもオーバースプレーを小さく抑えることができる。
【0148】
かくして、このように構成された第3の実施の形態でも、前述した第2の参考例とほぼ同様の作用効果を得ることができる。
【0149】
次に、図25ないし図28は本発明の第4の実施の形態を示している。本実施の形態の特徴は、例えば第1の実施の形態と同様の塗装用ロボットを用い、楕円形状のスプレーパターンを小パターン、中パターン、大パターンの3種類に切換えて塗装したことにある。なお、本実施の形態では、前述した第1の実施の形態と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略するものとする。
【0150】
まず、第4の実施の形態では、第1の実施の形態で使用した塗装用ロボット3を用い、エア霧化型塗装機(図示せず)により第1の実施の形態で用いた大形パネル6に塗装を行なう。このときの噴霧パターンは、大形パネル6の搬送方向(矢示A方向)が長径となり、塗装機の往復動方向が短径となる横長な楕円形状となる。
【0151】
次に、第4の実施の形態による大形パネル6の塗装方法について、図25ないし図28を参照して説明する。
【0152】
図25において、大形パネル6の塗装面に描かれた細点線、太実線および太点線は、エア霧化型塗装機の移動軌跡を示している。ここで、細点線は、小さなスプレーパターンとなる小パターンS6(図26参照)で塗装を行なうときの塗装機の移動軌跡を示している。この小パターンS6は、長径寸法(横幅寸法)D12と短径寸法(縦幅寸法)D13とを有する横長な楕円形状をなし、大形パネル6の左端縁部近傍と右端縁部近傍とを塗装するものである。
【0153】
また、太実線は、大きなスプレーパターンとなる大パターンL6(図27参照)で塗装を行なうときの塗装機の移動軌跡で、この大パターンL6は、小パターンS6よりも大きな楕円形状をなし、大形パネル6の左,右方向(搬送方向A)の中央部側を塗装するものである。
【0154】
また、大パターンL6の長径寸法D14は、小パターンS6の長径寸法D12に比較して大きく形成されている(D14>D12)。また、短径寸法D15も小パターンS6の短径寸法D13に比較して大きく形成されている(D15>D13)。
【0155】
さらに、太点線は、中間のスプレーパターンとなる中パターンM6(図28参照)で塗装を行なうときの塗装機の移動軌跡で、この中パターンM6は、小パターンS6よりも大きく大パターンL6よりも小さな楕円形状をなし、大形パネル6の上端縁部と下端縁部で左,右方向(搬送方向A)の中央部側を塗装するものである。
【0156】
また、中パターンM6の長径寸法D16は、小パターンS6の長径寸法D12よりも大きく、大パターンL6の長径寸法D14よりも小さく形成されている(D14>D16>D12)。また、短径寸法D17も小パターンS6の短径寸法D13よりも大きく、大パターンL6の短径寸法D15よりも小さく形成されている(D15>D17>D13)。
【0157】
一方、細点線は、小パターンS6で塗装を行なうために、図25に示す如く、往復動作の間隔は狭い寸法P13に設定されている。一方、太実線は、大パターンL6で塗装を行なうために、往復動作の間隔は細点線の間隔寸法P13よりも大きな寸法P14に設定されている(P14>P13)。なお、太点線の間隔は、太実線の間隔寸法P14と同じ寸法になっている。これは太点線が太実線の折返し位置を塗装するときの軌跡となっているためで、中パターンM6と大パターンL6との大きさには無関係である。
【0158】
そして、大形パネル6を塗装するときには、その左,右方向の端縁部では、スプレーパターンを小パターンS6に切換え、細点線に沿って塗装機を往復移動させることにより、図26中にハッチングで示すように、大形パネル6の左,右方向の端縁部側にオーバースプレーを小さく抑えた塗装を施すことができる。
【0159】
次に、大形パネル6の中央部側では、細点線から太実線に変わるため、これに合わせて小パターンS6から大パターンL6に切換えて塗装を行なう。これにより、図27中にハッチングで示すように大形パネル6の全体に塗装を施すことができる。
【0160】
また、大パターンL6の折返し位置では、太点線に沿って中パターンM6で塗装を行なう。これにより、上,下方向の折返し位置に、図28中にハッチングで示すように塗装を施すことができる。
【0161】
かくして、このように構成された第4の実施の形態でも、前述した各実施の形態とほぼ同様の作用効果を得ることができる。特に、第4の実施の形態によれば、一般的な噴霧ノズルを用いた場合でも、オーバースプレーを小さく抑え、塗装品質を向上することができる。
【0162】
なお、第1の実施の形態では、大形パネル6は、小パターンS1と大パターンL1との2種類のスプレーパターンを用い、端縁部側は細点線に沿って小パターンS1で塗装し、中央部側は太実線に沿って大パターンL1で塗装した場合を例に挙げて説明した。
【0163】
しかし、本発明はこれに限るものではなく、例えば図29に示す変形例のように、3種類のスプレーパターンを用いて塗装を施してもよい。この場合には、図29において、大形パネル6の端縁部側は細点線に沿って小パターンS1で塗装し、この小パターンS1の内側に隣接する部分は丸点線に沿って中パターンM1で塗装し、この中パターンM1の内側となる中央部側は太実線に沿って大パターンL1で塗装するようにしてもよい。この塗装方法は他の実施の形態にも同様に適用することができるものである。
【0164】
また、図25ないし図28に示す第4の実施の形態では、中パターンM6の長径寸法D16、短径寸法D17は、大パターンL6の長径寸法D14、短径寸法D15よりも小さく形成した場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限らず、例えば中パターンM6の長径寸法D16を、大パターンL6の長径寸法D14とほぼ同じ寸法に設定し、塗装する構成としてもよい。
【0165】
また、第1の実施の形態では、塗装機4のスプレーパターンは、小パターンS1、中パターンM1、大パターンL1の3種類を段階的(ディジタル的)に切換えて塗装した場合を例に挙げて説明した。
【0166】
しかし、本発明はこれに限らず、例えばスプレーパターンの大きさを4種類以上に切換えて塗装するようにしてもよい。また、スプレーパターンの大きさを連続的(アナログ的)に変化させて塗装するようにしてもよい。これらの塗装方法は他の実施の形態にも同様に適用することができるものである。
【0167】
さらに、第1および第2の実施の形態では、回転霧化型塗装機4,15を用いて円形状のスプレーパターンで塗料を噴霧した場合を例示している。また、第3および第4の実施の形態では、エア霧化型塗装機を用いて楕円形状のスプレーパターンで塗料を噴霧した場合を例示している。
【0168】
しかし、本発明はこれらの構成に限るものではなく、シェーピングエアの噴出方向、噴出圧力等を制御することにより、回転霧化型塗装機から楕円形状のスプレーパターンで塗料を噴霧する構成としてもよい。また、噴霧ノズルの形状を変更し、エア霧化型塗装機から円形状のスプレーパターンで塗料を噴霧する構成としてもよい。このように各実施の形態では、回転霧化型塗装機、エア霧化型塗装機の何れを適用してもよい。
【0169】
【発明の効果】
以上詳述した通り、請求項1の発明によれば、塗料を噴霧するときのスプレーパターンの大きさを大きなスプレーパターンから小さなスプレーパターンまで切換可能な1台の塗装機を用いる。そして、スプレーパターンを大きくしても噴霧した塗料の大部分が塗装面からほぼ逸脱しないで塗着する部位は、塗装面の許容できる広さに応じて比較的大きなスプレーパターンを選択し、塗装機を塗装面に沿って往復動させながら塗装を行なう。一方、被塗物の端縁部近傍および狭幅な部位は、オーバースプレーにより廃棄される塗料を少なくするために、比較的小さなスプレーパターンを選択し塗装機を往復動させながら塗装を行なう。
【0170】
従って、被塗物の端縁部近傍および狭幅な部位に塗装を施すときには、小さなスプレーパターンを選択することにより、オーバースプレーにより無駄に噴霧される廃棄塗料の量を大幅に少なくすることができる。従って、廃棄された噴霧塗料が塗装面に付着するのを防止でき、塗装仕上り品質を向上することができる。また、塗料の使用量を削減して塗装コストを低減することができる。さらに、廃棄塗料を削減することにより、清掃作業に関わる清掃コスト、廃棄塗料の処理コストを低減することができる。
【0171】
一方、被塗物の中央部側では、大きなスプレーパターンを選択して塗装を行なうことにより、塗装機を往復動させるときの移動速度は、無理な負荷が作用しない遅い速度に設定することができる。これにより、塗装機用動作装置に作用する負荷を軽減することができ、耐久性を向上し、塗装品質を良好にすることができる。
【0172】
また、塗装機を往復動させながら塗装を行なうとき、往復動の折返し部では小さなスプレーパターンを選択して塗装を行なうようにしている。これにより、往復動の折返し部では塗装機が被塗物の端縁部まで移動するが、このときには小さなスプレーパターンが選択されているから、折返し部でのオーバースプレーによる廃棄塗料を大幅に削減することができる。従って、浮遊する塗料ミストの発生を抑えて塗装仕上り品質を向上することができ、また塗料の使用量を削減して塗装コストを低減することができる。
また、請求項1の発明によれば、塗装機を往復動させながら塗装を行なうときのスプレーパターンの移動軌跡の間隔を、大きなスプレーパターンを選択したときには広く設定し、小さなスプレーパターンを選択したときには狭く設定した。これにより、塗料の塗重ね回数、塗膜の厚さ寸法は、大きなスプレーパターンで塗装するときと小さなスプレーパターンで塗装するときとでほぼ同じにすることができる。
さらに、請求項1の発明によれば、大きなスプレーパターンを選択して塗装を行なうときには塗装機の移動速度を遅く設定し、小さなスプレーパターンを選択して塗装を行なうときには塗装機の移動速度を速く設定して塗装を行なう構成としたから、大きなスプレーパターンの塗重ね回数と小さなスプレーパターンの塗重ね回数とをほぼ同じにすることができる。この結果、噴霧塗料を均等に分散することができ、また塗膜の厚さを全体に亘って均一に仕上げることができ、塗装品質を向上することができる。
【0173】
請求項2の発明によれば、スプレーパターンは円形状に形成しているので、塗装機として回転霧化型塗装機を用いて塗装することができる。
【0174】
請求項3の発明によれば、スプレーパターンは楕円形状に形成しているので、塗装機としてエア霧化型塗装機を用いて塗装することができる。また、楕円形状のスプレーパターンは、パターンの大きさにより長径寸法が大きく変化する。しかし、短径寸法は殆ど変化せずほぼ同じ寸法のままであるから、短径側に位置する被塗物の端縁部を塗装するときには、小さなスプレーパターンに切換えず大きなスプレーパターンのままで塗装することができる。
【0175】
また、スプレーパターンは塗装機の往復動方向が短径となる楕円形状に形成しているから、塗装機の往復動方向に位置する被塗物の端縁部を塗装するときには、大きなスプレーパターンをそのまま使用しても、オーバースプレーを小さく抑えることができ、スプレーパターンの制御を簡略化することができる。
【0176】
請求項3の発明によれば、塗装機を往復動させながら塗装を行なうときのスプレーパターンの移動軌跡の間隔を、大きなスプレーパターンを選択したときには広く設定し、小さなスプレーパターンを選択したときには狭く設定している。従って、塗料の塗重ね回数、塗膜の厚さ寸法は、大きなスプレーパターンで塗装するときと小さなスプレーパターンで塗装するときとでほぼ同じにすることができ、塗装仕上り品質を良好にすることができる。
さらに、請求項3の発明によれば、大きなスプレーパターンを選択して塗装を行なうときには塗装機の移動速度を遅くし、小さなスプレーパターンを選択して塗装を行なうときには塗装機の移動速度を速くする構成としたから、大きなスプレーパターンの塗重ね回数と小さなスプレーパターンの塗重ね回数とをほぼ同じにすることができる。この結果、噴霧塗料を均等に分散することができ、また塗膜の厚さを全体に亘って均一に仕上げることができ、塗装品質を向上することができる。
【0177】
請求項4の発明によれば、塗装機は連続して往復動することにより被塗物を塗装し、塗装機のスプレーパターンは連続塗装の途中で往復動の動作を止めることなく切換えている。これにより、例えば順次搬送されてくる被塗物に対して塗装用ロボット、レシプロケータ等の塗装機用動作装置に取付けられた塗装機で自動的に塗装を行なう場合、連続して行なっている塗装作業の途中であっても、塗装機の往復動作を止めることなく塗装機のスプレーパターンを所望の大きさに切換えることができる。この結果、効率のよい塗装を行なうことができ、生産性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の第1の実施の形態に係る塗装方法に用いられる塗装装置を示す正面図である。
【図2】 大形パネルを塗装するときの回転霧化型塗装機の移動軌跡を示す正面図である。
【図3】 細点線に沿って小パターンで大形パネルを塗装したときの塗装範囲を示す正面図である。
【図4】 太実線に沿って大パターンで大形パネルを塗装したときの塗装範囲を示す正面図である。
【図5】 小形パネルを塗装するときの回転霧化型塗装機の移動軌跡を示す正面図である。
【図6】 細点線に沿って小パターンで小形パネルを塗装したときの塗装範囲を示す正面図である。
【図7】 丸点線に沿って中パターンで小形パネルを塗装したときの塗装範囲を示す正面図である。
【図8】 本発明の第2の実施の形態に係る塗装方法に用いられる塗装装置を示す斜視図である。
【図9】 車体の左側面部を塗装するときの回転霧化型塗装機の移動軌跡を示す正面図である。
【図10】 車体の上面部の左半分を塗装するときの回転霧化型塗装機の移動軌跡を示す平面図である。
【図11】 細点線に沿って小パターンで車体の左側面部を塗装したときの塗装範囲を示す正面図である。
【図12】 丸点線に沿って中パターンで車体の左側面部を塗装したときの塗装範囲を示す正面図である。
【図13】 太実線に沿って大パターンで車体の左側面部を塗装したときの塗装範囲を示す正面図である。
【図14】 細点線に沿って小パターンで車体の上面部の左半分を塗装したときの塗装範囲を示す正面図である。
【図15】 太実線に沿って大パターンで車体の上面部の左半分を塗装したときの塗装範囲を示す正面図である。
【図16】 本発明の第1の参考例に係る塗装方法で大形パネルを塗装するときの回転霧化型塗装機の移動軌跡を示す正面図である。
【図17】 細点線に沿って小パターンで大形パネルを塗装したときの塗装範囲を示す正面図である。
【図18】 太実線に沿って大パターンで大形パネルを塗装したときの塗装範囲を示す正面図である。
【図19】 本発明の第2の参考例に係る塗装方法で大形パネルを塗装するときのエア霧化型塗装機の移動軌跡を示す正面図である。
【図20】 細点線に沿って小パターンで大形パネルを塗装したときの塗装範囲を示す正面図である。
【図21】 太実線に沿って大パターンで大形パネルを塗装したときの塗装範囲を示す正面図である。
【図22】 本発明の第3の実施の形態に係る塗装方法で大形パネルを塗装するときのエア霧化型塗装機の移動軌跡を示す正面図である。
【図23】 細点線に沿って小パターンで大形パネルを塗装したときの塗装範囲を示す正面図である。
【図24】 太実線に沿って大パターンで大形パネルを塗装したときの塗装範囲を示す正面図である。
【図25】 本発明の第4の実施の形態に係る塗装方法で大形パネルを塗装するときのエア霧化型塗装機の移動軌跡を示す正面図である。
【図26】 細点線に沿って小パターンで大形パネルを塗装したときの塗装範囲を示す正面図である。
【図27】 太実線に沿って大パターンで大形パネルを塗装したときの塗装範囲を示す正面図である。
【図28】 太点線に沿って中パターンで大形パネルを塗装したときの塗装範囲を示す正面図である。
【図29】 本発明の変形例による塗装方法で大形パネルを塗装するときの回転霧化型塗装機の移動軌跡を示す正面図である。
【符号の説明】
1,11 塗装装置
2,12 コンベア装置
3,14 塗装用ロボット(塗装機用動作装置)
4,15 回転霧化型塗装機
4A,15A 回転霧化頭
6 大形パネル(被塗物)
7 小形パネル(被塗物)
16 車体(被塗物)
S1,S2,S3,S4,S5,S6 小パターン
M1,M2,M6 中パターン
L1,L2,L3,L4,L5,L6 大パターン
D1,D2,D3 スプレーパターンの直径寸法
D4,D6,D8,D10,D12,D14,D16 スプレーパターンの長径寸法
D5,D7,D9,D11,D13,D15,D17 スプレーパターンの短径寸法
P1〜P14 往復動作の間隔寸法
Claims (4)
- 塗料を噴霧するときのスプレーパターンの大きさを大きなスプレーパターンから小さなスプレーパターンまで切換可能な1台の塗装機を用いて被塗物の塗装面に塗装を行なう塗装方法において、
前記塗装機を複数回往復動させて噴霧した塗料の大部分が前記被塗物の塗装面から逸脱しないで塗着するように形成されるスプレーパターンの大きさを、塗装面の大きさに応じた大きなスプレーパターンを選択し前記塗装機を往復動させながら塗装を行ない、
前記塗装機を往復動させながら塗装を行なうときの隣合うスプレーパターンの移動軌跡の間隔を、大きなスプレーパターンを選択したときには広く設定し、前記大きなスプレーパターンよりも小さなスプレーパターンを選択したときには狭く設定して塗装を行ない、
前記大きなスプレーパターンを選択して塗装を行なうときには前記塗装機の移動速度を遅く設定し、前記小さなスプレーパターンを選択して塗装を行なうときには前記塗装機の移動速度を速く設定して塗装を行ない、
前記被塗物の端縁部近傍および狭幅な部位は、オーバースプレーにより廃棄される塗料の量を少なくするために、前記小さなスプレーパターンを選択し前記塗装機を往復動させながら塗装を行ない、
前記塗装機を往復動させながら塗装を行なうとき、隣合うスプレーパターンの移動軌跡の折返し部では前記小さなスプレーパターンを選択して塗装を行なう構成としたことを特徴とする塗装方法。 - 前記スプレーパターンは円形状に形成してなる請求項1に記載の塗装方法。
- 塗料を噴霧するときのスプレーパターンの大きさを大きなスプレーパターンから小さなスプレーパターンまで切換可能な1台の塗装機を用いて被塗物の塗装面に塗装を行なう塗装方法において、
前記スプレーパターンは前記塗装機の往復動方向が短径となる楕円形状に形成し、
前記塗装機を複数回往復動させて噴霧した塗料の大部分が前記被塗物の塗装面から逸脱しないで塗着するように形成されるスプレーパターンの大きさを、塗装面の大きさに応じた大きなスプレーパターンを選択し前記塗装機を往復動させながら塗装を行ない、
前記塗装機を往復動させながら塗装を行なうときの隣合うスプレーパターンの移動軌跡の間隔を、大きなスプレーパターンを選択したときには広く設定し、前記大きなスプレーパターンよりも小さなスプレーパターンを選択したときには狭く設定して塗装を行ない、
前記大きなスプレーパターンを選択して塗装を行なうときには前記塗装機の移動速度を遅く設定し、前記小さなスプレーパターンを選択して塗装を行なうときには前記塗装機の移動速度を速く設定して塗装を行ない、
前記被塗物の端縁部近傍および狭幅な部位は、オーバースプレーにより廃棄される塗料の量を少なくするために、前記小さなスプレーパターンを選択し前記塗装機を往復動させながら塗装を行なう構成としたことを特徴とする塗装方法。 - 前記塗装機は連続して往復動することにより被塗物を塗装し、前記塗装機のスプレーパターンは連続塗装の途中で往復動の動作を止めることなく切換えてなる請求項1,2または3に記載の塗装方法。
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