JP4291151B2 - シアン廃液の処理方法 - Google Patents
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Description
一段反応:pH10〜12、酸化還元電位300〜350mV
二段反応:pH7〜8 酸化還元電位600〜650mV
水質汚濁防止法で有害物質に指定されているシアンは錯シアンをも含めた全シアンと規定されているため、これらの安定なシアノ錯体を含むシアン廃液の処理法の開発が進められた。
この方法による分解生成物質であるギ酸は排水のCOD成分であり、アンモニアは窒素規制の対象であるため二次処理が必要となる。
二次処理を必要としない方法として、上記と同様の圧力容器内での反応に酸化工程を付加した湿式酸化法が開発された。(特開平7−116672号公報)この方法ではシアン化物は炭酸と窒素に酸化分解される。
上記の2方式は物理化学的な反応によるため、シアン化物の無毒化処理としての信頼性において優れている。しかしながら、これらの2方式はいずれも高圧処理であるため設備費が高額となる。
特開昭50−118962号で提案されている方法は、鉄シアノ錯体を含む廃液のpH値を約10〜11に調整して、酸化剤(次亜塩素酸塩)を添加し約80〜95℃の液温を維持し反応させる。鉄シアン錯体は上記pH及び温度条件下で酸化鉄となって沈殿し、シアンは炭酸と窒素に分解されるとされている。
本発明者らはこの方法が普及しなかった原因について、次のように推定した。
(1)特開昭50−118962号は、常に酸化剤過剰の条件で酸化分解処理する過剰塩素処理法であるために、反応の終点が明確でなく、シアン化物の無毒化処理としての信頼性に欠ける。
(2)過剰に存在する次亜塩素酸塩が80℃以上の温度で自己分解し薬品の使用量が過大となる。
(2) 酸化還元電位
(3) 反応の温度依存性
(4) pH範囲
(5) 酸化還元電位と温度の検出
(6) 二段階法
(7) 一段階法
(8) 次亜塩素酸ナトリウムの理論量
(9) 排水規制値
(10) 固形廃棄物の無害化
(11) 有価金属シアノ錯体の分解
(12) 発明を実施するための最良の形態
(a)実施例1(二段階法;塩浴窒化処理ラインの洗浄廃液)
(b)実施例2(二段階法;塩浴窒化処理ラインの洗浄廃液)
(c)実施例3(二段階法;除滓スラッジ)
(d)参考例1(二段階法:銀めっき廃液)
(e)比較例1(従来法−過剰塩素処理法)
(f)比較例2(同上)
(g)比較例3(同上)
(h)実施例4(一段階法:塩浴窒化処理ラインの洗浄廃液)
(i)実施例5(一段階法:除滓スラッジ)
(j)参考例2、実施例6、7(一段階法:銅めっき廃液、銅めっき廃液とタフトライド廃液の混合廃液、低濃度廃液)
(k)比較例4,5,6(次亜塩素酸ナトリウムの添加法:加温直後に理論量全量投入、加温前に理論量全量投入、理論量の2倍投入)
(l)参考例3(銅めっき廃液の処理)
(m)実施例8(エージング)
(13)産業上の利用可能性
塩浴窒化処理は580℃前後に加熱されたシアン酸アルカリと炭酸アルカリを主成分とする溶融塩浴に鉄系部材を浸漬し、鉄系部材の表面に窒化層を形成させる表面硬化法である。鉄系部材を上記塩浴に浸漬すると塩浴中のシアン酸が鋼表面の触媒作用により下記の反応に従って分解し、生成する発生期の窒素が鋼中に固体内拡散して窒化が進行する。
処理に伴い(3)式の反応で生成したシアン化物は塩浴中に蓄積する。
従って、塩浴窒化処理において排出される洗浄廃液に次亜塩素酸塩を作用させると以下のような反応が想定されている。
(2) (5)式により生じたシアン酸塩の分解
(2)’ (4)式の未反応シアン酸塩の分解
(3) フェロシアン化物からフェリシアン化物への酸化
2Na4Fe(CN)6+NaOCl+H2O→2Na3Fe(CN)6+2NaOH
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(7)
(4) フェリシアン化物からシアン酸塩への分解
(5)(8)式により生じたシアン酸塩の分解
(6) アンモニアの分解
本発明者らはORP計による薬注制御の基礎データを得るために上記(5)〜(9)式の反応の酸化還元電位曲線を測定した。NaCN,NaCNO,Na4Fe(CN)6,(NH4)2SO4の単独の溶液を調製しpHを11.5とし液温を80℃に維持して、次亜塩素酸ナトリウム溶液で滴定しそれぞれの酸化還元電位曲線を得た。これを図1に示す。その変曲点を表1に示す。(測定電極は白金電極、照合電極はAg/AgCl電極を使用)
NaCNの第2変曲点(550〜700mV)は(6)式のシアン酸塩が炭酸ガスと窒素と水に分解される反応の終点である。
NaCNOの第1変曲点(600〜740mV)は(6)式すなわちNaCNの第2変曲点と同じくシアン酸塩が炭酸ガスと窒素に分解される反応の終点であり、反応が終了すると次亜塩素酸塩が小過剰になりその酸化還元電位が表われる。
Na4[Fe(CN)6]の第1変曲点(0〜220mV)は(7)式のフェロシアン化物がフェリシアン化物に酸化される反応の終点である。
Na4[Fe(CN)6]の第2変曲点(250〜450mV)は(8)式のフェリシアン化物がシアン酸塩と水酸化第二鉄に分解される反応の終点である。
Na4[Fe(CN)6]の第3変曲点(550〜600mV)は(6)式すなわちNaCNの第2変曲点ならびにNaCNOの第1変曲点と同じ、シアン酸塩が炭酸ガスと窒素に分解される反応の終点である。反応が終了すると次亜塩素酸塩が小過剰になりその酸化還元電位が表われる。
(NH4)2SO4の第1変曲点(300〜400mV)は(9)式のアンモニアが窒素と水に酸化分解される反応の終点である。
次いで実廃液を想定してNaCN,NaCNO,Na4Fe(CN)6,(NH4)2SO4の各試薬を混合した溶液を調製、pHを11.5とし温度85℃で次亜塩素酸ナトリウム水溶液により滴定し、そのときの酸化還元電位を測定した。その結果を図2に示す。
(1) 0〜200mV、(2) 300〜420mV、(3)570〜650mV
の3ヶ所に変曲点が認められた。それぞれの変曲点は次の反応に相当する。
変曲点(1):フェロシアン化物からフェリシアン化物への酸化とシアン化物のシアン酸塩への酸化。
変曲点(2):アンモニアの分解。
変曲点(3):シアン酸塩の分解。
(5)式の反応は室温で容易に進行する。
(6)式の反応はアルカリ側においては、室温では極めて遅い反応である。従っていわゆるシアン化物の最も一般的な無毒化法であるアルカリ塩素法ではpH>10で(1)式,(5)式の反応を終了させた後、pHを7〜8に調整して(2),(6)式の酸化反応を行うことからアルカリ塩素2段法と呼ばれている。pH>10のままの場合、温度を上昇させれば(80℃以上)反応は進行する。
(7)式の反応は室温で容易に進行する。
(8)式の反応は室温では全く起こらない。80℃以上で反応は進行する。
(9)式の反応はアルカリ性室温では次亜塩素酸が解離し、効率低下するが、60℃以上で反応は進行する。
錯シアンを含む排水を次亜塩素酸ソーダで分解する場合排水のpHはアルカリ側に維持されなければならない。排水が酸性の場合には次亜塩素酸ソーダが分解して塩素ガスを発生し危険である。
錯シアンを含む排水は大抵の場合遊離シアンを含んでいる。遊離シアンを含む水溶液は有毒なHCN(シアンガス)の発生を避けるため,アルカリ性(pH8〜14望ましくはpH9〜14)でなければならない。
以上の理由から本発明によって処理される原水は必ずアルカリ性を維持していなければならない。
この電位に到達した時点で次亜塩素酸ソーダ−の薬注を停止することでORP計による薬注制御が可能となる。
この反応の酸化還元電位曲線はpHによって影響を受けpH9〜13.5の範囲で明らかな変曲点を示す。PHが9未満では電位がハンチングして安定せず、13.5超では電位の変化が乏しく変曲点が不明瞭となり薬注制御が困難となる。
従って処理される排水はpH9〜13.5の範囲に維持されるべきである。
本発明においては、以上の考察に基いて、シアン化物、フェロシアン化物及びアンモニアを含む廃液について、低温で進行する(5)式の反応−シアン化物のシアン酸塩への酸化;反応終了酸化還元電位=約250mV−、(7)式の反応−フェロシアン化物のフェリシアン化物への酸化;反応終了酸化還元電位=約200mV−、及び(9)式の反応−アンモニアの分解;反応終了酸化還元電位=約400mV−を80℃未満で十分に進行させる。これにより、蒸散するおそれがあるアンモニアと遊離シアンを予め低温域で分解し、高温に加熱されたアルカリ性廃液からの未反応のままのアンモニアやシアンガスの蒸散を防止することができる。上記した低温段階では、上記した複数の酸化還元電位の1又は2以上を設定電位とし、測定電位が設定電位を下回った時に次亜塩素酸塩を添加するように、酸化還元電位の検出と次亜塩素酸塩の添加を制御することができる。
本発明においては、上記昇温及び高温域での温度保持の過程で被処理廃液の酸化還元電位を検出し、次亜塩素酸塩の酸化還元電位が検出された時点以降において、次亜塩素酸塩の添加を終了する。
また、高温域での保持は80℃〜沸点の温度範囲に廃液の温度を維持することであるが、具体的には例えば95℃で1時間保持することにより行う。
本発明においては、(5),(7),(9)式の反応を80℃以下で実質的に完了させる低温段階を行い、その後液温を80℃以上に昇温し、(6),(8)式の反応を行う二段階法を行うことができる。この方法ではアンモニアは低温段階で分解される。
加熱型アルカリ塩素法における分解反応槽の上部は開放型となっているが、本発明法では80℃未満の反応においても、未分解アンモニア蒸散の可能性は皆無とは言えないので、反応槽は外部に気体が漏れないような構造にしておくことが必要である。
本発明の二段階法においては,まず最初に低温モードでの設定温度と設定電位が入力され、反応槽中の洗浄廃液が室温から設定温度まで加温される。
まず最初に、酸化還元電位の設定値を(5)、(7)、(9)式の低温域反応の中で変曲点電位の最も高い(9)式のアンモニア分解反応の電位(通常は約400mVであるが、廃液によっては必ずしもこの値になるとは限らないので予め確認する必要がある)に設定する。(5)式の反応は室温で進行し、(9)の反応は室温では遅いが温度の上昇に伴い速い反応となることから、分解処理時間の短縮,有害ガスの蒸散防止の観点から、次亜塩素酸塩の注入は室温からスタートすることが望ましい。
低温域の反応が進行して、測定電位が安定的に設定電位に到達した時点で低温域から高温域へのモード切換え、すなわち設定温度が高温域の値に変更され、同時に設定電位も高温域の値、すなわち(6)、(8)式の高温域反応の中で変曲点電位のより高い(6)式のシアン酸分解反応終了後現われる次亜塩素酸塩の電位(通常は約650mV前後であるが、廃液によっては必ずしもこの範囲に入るとは限らないので予め確認する必要がある)に変更される。高温域での反応が進行し、その結果測定電位が設定電位に到達した時点で次亜塩素酸塩の注入が停止される。
本発明においては、シアン化物、フェロシアン化物及びアンモニアを含む、室温の廃液について(5),(7),(9)式及び(6),(8)式の反応を室温から80℃以上沸点以下の高温への昇温及び保持段階で逐次行うことができる。
第3〜4図は一段階法の実施態様を示し、図3の横軸は処理時間(分)、縦軸(左側)は酸化還元電位(mV)、縦軸(右側)は温度(℃)である。図4の横軸は処理時間(分)であり、縦軸(左側)はCN,NH3,Fe濃度(mg/L)、縦軸(右側)はpHである。次亜塩素酸ナトリウムの添加は、合計で理論値の1.05倍となるように連続的に添加した。
(2)NH3:5分以降45分までの期間において温度が約45℃弱から沸点まで昇温されるに伴って連続的減少した。これは反応式(9)に相当する。
(3)フェロシアン化鉄からフェリシアン化鉄への酸化反応:これは反応(7)式に相当し、Fe濃度の変化となっては現われなかった。
(4)フェリシアン化鉄の分解反応:この反応(8)式に相当し、25分以降の処理期間内で進行し、Fe濃度の変化をもたらした。
(5)酸化還元電位(ORP)の変化:酸化還元電位は次第に上昇し、50分以降で一定値になった。本実験においては予め次亜塩素酸塩の酸化還元電位(670mV)を求めておき、50分まで次亜塩素酸塩の添加を継続した。なお別法として、酸化還元電位が50〜60分で一定になったことを確認し、60分で次亜塩素酸塩の添加を終了してもよい。この場合、50〜60分の期間で添加された次亜塩素酸塩は(9)式に対して過剰になった。
(6)廃液の色の変化:10分経過後から褐色への着色が始まり、20分経過後に赤褐色の沈殿が生じた。その後、赤色、褐色及び黄色を経て50分で完全に脱色し、透明になった。
(7)pHの変化:酸化還元電位の変化とほぼ対応して10.5から低下し、9.5で一定化した。
(8)温度:室温から約95℃まで40分間で昇温し、その後は一定温度で保持した。
遊離シアン、シアン酸、アンモニア、フェロシアンイオンなどの塩浴窒化処理廃液の主成分の分解に要する次亜塩素酸ナトリウムの理論量は(5)〜(9)式より第2表に示すようになる。本発明においては、例えば60〜120分の処理時間範囲内で、添加合計量が理論量の1.01〜1.05倍になるように、次亜塩素酸ナトリウムを処理開始から処理終了までに連続的もしくは断続的に添加することができる。
排水基準における全シアンの規制値は国により異なる。欧米の各国ならびに日本では1ppm以下とされている場合が殆どであるが、アジア地域では中国が0.5ppm以下、タイは0.2ppm以下、インドネシアでは0.04ppm以下とされている。
上記の状況から、アジア地域での実施を想定した場合、少なくとも0.1ppmを保証できる排水処理方法の確立が急務となる。
塩浴窒化処理においては洗浄排水の他に、処理に伴い塩浴中に増加してくる不溶性の鉄化合物を定期的に除滓する必要があり、これに伴いシアン化物を含む固形廃棄物が発生する。この固形廃棄物(以下「除滓スラッジ」と呼ぶ)は特定管理産業廃棄物として通常外部に委託処理されており、有害物を排出しない工場達成への障害となっていた。除滓スラッジは塩浴から汲み出されるため、塩浴成分が大半を占めそれは水溶性である。
Au,Ag,Cu,Zn等の有価金属は現在でもシアンめっき浴を用いてめっきされている。これらの金属シアノ錯体はいずれも第3表に示すようにCN解離定数が鉄シアノ錯体より高いのでアルカリ性で高温でNaClOによりCN分解が可能である。
反応式は通常のアルカリ塩素法と殆ど同じであり、シアンがシアン酸になる第1酸化−(10),(13),(17),(21)式−、及びシアン酸が窒素ガスと炭酸塩になる第2酸化−(11),(14),(18),(23)式−からなる。これらの反応は高温下では多くの場合連続して起こっている。
(10)〜(12)式はAgシアノ錯体が上述のように反応してAgClとなって沈殿析出することを示す。それぞれ1価金属及び2価金属は、それぞれ(16)及び(20)式に示すように、高温下、酸化剤共存のため、それぞれ金属酸化物となる。
(12)、(15)式及び(19)式よりCN 4モルに対してNaClO 10モルが反応するのでCN 1gに対しNaClO 7.16gが必要である。
以下実施例により本発明について説明する。
図中、1は原廃液貯槽、2は薬剤槽(次亜塩素酸塩溶液)、3は薬剤槽(硫酸溶液)、4は反応槽、5は処理液貯槽兼中和槽(但し撹拌機、pHセンサーは図示せず)、6は制御盤、7は加熱器で処理液を加温する。本例ではヒーター7で加熱しているが、蒸気でもガスでも設置場所で効率的に用いられる加熱装置ならば特に問わない。8は撹拌機、9は発生アンモニアガスを回収するスクラバーに接続されたダクト、10,11,12はセンサーでそれぞれ温度、pH,ORPを測定する。13、14,16〜18は送液ポンプであり、ポンプ18は好ましくは定量ポンプが良い。反応槽4は密閉構造となっている。
図5にフロー図を示した装置を用いて、塩浴窒化処理ラインから排出された洗浄廃液について本発明の二段階法を実施した。
洗浄廃液は分析の結果を表4に示す。
上記の廃液1m3を図5の反応槽4に入れ、設定温度を79℃、設定電位を350mVとして処理を開始した。スタート時の液温と酸化還元電位(ORP)は、それぞれ25℃と−71mVであった。
測定電位が設定電位を下回る場合に、薬剤槽2から次亜塩素酸ナトリウム10%水溶液が、10L/分の能力を持つ定量ポンプ18により断続的に反応槽4へ注入された。
スタート後25分で液温は設定温度の79℃に到達した。酸化還元電位(ORP)はスタート後30分で設定電位に到達した。
測定電位が設定電位に到達した時点で、高温モードに移行するため、設定温度を95℃、設定電位を600mVに変更した。次亜塩素酸ナトリウム10%水溶液を定量ポンプ18により断続的に添加した。スタート時から通算95分で酸化還元電位(ORP)は600mVに達した。小過剰存在する次亜塩素酸ナトリウムの分解を待つため、加温を止めて25分間撹拌だけを続けた。その後ポンプ16により液を中和槽5に移送し、10%硫酸を薬剤槽3から中和槽5に注入してpHを8.5とし、分析のため上澄液を採取した。実験の結果を表4に記載する。
分析の結果、上記の方法で処理された液の全シアンは0.1mg/L未満であり、アンモニア態窒素は検出されなかった。次亜塩素酸ナトリウムの注入量も、廃液の分析値から計算した理論値の1.03倍であった。
図5にフロー図を示した装置を用いて、塩浴窒化処理ラインから排出された洗浄廃液を、本発明の二段階法により処理した。洗浄廃液は分析の結果を表4に示す。
上記の廃液1m3を図5の反応槽4に入れ、設定温度を75℃、設定電位を400mVとして処理を開始した。スタート時の液温と酸化還元電位(ORP)は、それぞれ24℃と−65mVであった。
測定電位が設定電位を下回る場合に、薬剤槽2から次亜塩素酸ナトリウム10%水溶液が、10L/分の能力を持つ定量ポンプ18により断続的に反応槽4へ注入された。
スタート後23分で液温は設定温度の75℃に到達した。酸化還元電位(ORP)はスタート後35分で設定電位に到達した。
測定電位が設定電位に到達した時点で、高温モードに移行するため、設定温度を95℃、設定電位を600mVに変更した。スタート時から通算100分で酸化還元電位(ORP)は600mVに達した。小過剰存在する次亜塩素酸ナトリウムの分解を待つため、加温を止めて20分間撹拌だけを続けた。その後ポンプ16により液を中和槽5に移送し10%硫酸を薬剤槽3から中和槽5に注入しpHを8.5とし、分析のため上澄液を採取した。実験の結果を表3に記載する。
分析の結果、上記の方法で処理された液の全シアンは0.1mg/L未満であり、アンモニア態窒素は検出されなかった(表中ではNDと表わす)。次亜塩素酸ナトリウムの注入量も、廃液の分析値から計算した理論値の1.05倍であった。
塩浴窒化浴で発生する除滓スラッジ50kgを塩浴窒化処理の洗浄工程の廃液で溶解して廃液1m3とし、本発明の二段階法を実施した。その液の分析結果を表4に示す。
この廃液1m3を図5の反応槽4に入れ設定温度を70℃、設定電位を330mVとして処理を開始した。スタート時の液温と酸化還元電位は、それぞれ25℃と−52mVであった。
測定電位が設定電位を下回る場合に、薬剤槽2から次亜塩素酸ナトリウム10%水溶液が、10L/分の能力を持つ定量ポンプ18により断続的に反応槽4へ注入された。
スタート後20分で液温は設定温度の70℃に到達した。測定電位が設定電位に到達した時点で、高温モードに移行するため、設定温度を85℃、設定電位を650mVに変更した。スタート時から通算93分で酸化還元電位は650mVに達した。小過剰存在する次亜塩素酸ナトリウムの分解を持つため、加温を止めて7分間攪拌だけを続けた。その後ポンプ16により液を中和槽5に移送し、10%硫酸を薬剤槽3から中和槽5に注入しpHを7.7とし、分析のための上澄液を採取した。実験の結果を表4に記載する。
分析の結果、上記の方法で処理された液の全シアンは検出限界未満であった。アンモニア態窒素は検出されなかった。次亜塩素酸ナトリウムの注入量は、廃液の分析値から計算した理論値の1.05倍であった。
めっき工場から排出されるシアン化銀めっき廃液を本発明の二段階法により無害化処理した。表5に示された組成のめっき廃液1m3を、図5の反応槽4に入れ、設定温度を79℃、設定電位を250mVとして処理を開始した。スタート時の液温と電位はそれぞれ23℃と−92mVであった。
測定電位が設定電位を下回る場合に、薬剤槽2から次亜塩素酸ナトリウム10%水溶液が、10L/分の能力を持つ定量ポンプ18により断続的に反応槽4へ注入された。
スタート後26分で液温は設定温度79℃に到達した。酸化還元電位はスタート後30分で設定電位に達した。
測定電位が設定電位に到達した時点で、高温モードに移行するため、設定温度を95℃、設定電位を660mVに変更した。次亜塩素酸ナトリウム10%水溶液を定量ポンプ18で連続的に添加した。スタート時から通算95分で酸化還元電位は660mVに達した。小過剰存在する次亜塩素酸ナトリウムの分解を待つため、加温を止めて25分間、撹拌だけを続けた。その後中和のために10%硫酸を中和槽5に注入しpHを8.0とし、分析のため上澄液を採取した。実験の結果を表5に記載する。
分析の結果、上記の方法で処理された液の全シアンは0.1mg/L未満であり、アンモニア態窒素は検出されなかった。次亜塩素酸ナトリウムの注入量も、廃液の分析値から計算した理論値の1.02倍であった。
比較例として、塩浴窒化処理ラインから排出された洗浄廃液を従来例の方法、すなわち前掲「公害防止の技術と法規」で謂う過剰塩素処理法(理論値より過剰の酸化剤を最初に定量薬注する方法)により処理した。
10リッターのステンレスビーカーに,実施例1で使用したのと同ロットの廃液を5L入れ、攪拌機で攪拌しながら分析値から計算された必要量の1.05倍の次亜塩素酸ナトリウム水溶液(10%溶液)を投入した。それから昇温を開始し、20分後に所定温度の90℃に達した。その後100分間維持して酸化分解を行った(反応時間120分)。
酸化分解処理終了後、分析のための上澄液を採取した。処理液の分析結果を表6に示す。
分析の結果、上記の方法で処理された液の全シアンは26.0mg/Lと排水規制値である1mg/Lを超える値であった。アンモニア態窒素は検出されなかったが、処理中にアンモニア臭がしていたことから、一部が大気中に蒸散したことは明らかである。
10リッターのステンレスビーカーに,実施例1で使用したのと同ロットの廃液を5L入れ、攪拌機で攪拌しながら分析値から計算された必要量の1.5倍の次亜塩素酸ナトリウム水溶液(10%溶液)を投入した。それから昇温を開始し、20分後に所定温度の90℃に達した。その後100分間維持して酸化分解を行った。
酸化分解処理終了後、分析のための上澄液を採取した。処理液の分析結果を表6に示す。
分析の結果、上記の方法で処理された液の全シアンは3.0mg/Lと排水規制値である1mg/Lを超える値であった。アンモニア態窒素は検出されなかったが、処理中にアンモニア臭がしていたことから一部が大気中に蒸散したことが明らかである。
10リッターのステンレスビーカーに,実施例1で使用したのと同ロットの廃液を5L入れ、攪拌機で攪拌しながら分析値から計算された必要量の2.0倍の次亜塩素酸ナトリウム水溶液(10%溶液)を投入した。それから昇温を開始し、20分後に所定温度の90℃に達した。その後100分間維持して酸化分解を行った。
酸化分解処理終了後、分析のための上澄液を採取した。処理液の分析結果を表6に示す。
分析の結果、上記の方法で処理された液の全シアン0.1mg/Lと排水規制値である1mg/Lを下回った。アンモニア態窒素は検出されなかったが、処理中にアンモニア臭がしていたことから一部が大気中に蒸散したことが明らかである。
しかしながら次亜塩素酸ナトリウムの注入量は計算値の2倍量を投入しており本発明に比較して経済的に不利であるばかりでなく、このまま排水された場合、塩素の殺菌作用による生態系への影響が懸念される。
この実施例では、塩浴窒化処理タフトライド処理した鉄系部品の水洗水(以下「タフトライド洗浄水」と言う)(pH10.4)を本発明の一段階処理法により処理した。この水洗水は遊離シアン700mg/L、全シアン1,160mg/L、シアン酸990mg/L、N−NH3470mg/L、全N520mg/L含んでいるものであった。全シアンと遊離シアンの差のシアン化合物は殆どフェロシアン錯体として存在していた。この廃液1m3を反応槽5に入れ1.5℃/分の昇温速度で加熱しながら12%次亜塩素酸ナトリウム溶液100kg/hの投入速度でORP電位640mVになるまで投入した(約1.2時間)。約45分後温度が95℃に達した時点で保温を行った。以下実施例1と同様に25分間撹拌、上澄液搾取の操作を行い、処理水を得る。処理後の液量は1.1m3であった。その結果を表7に示した。
塩浴窒化時に発生するスラッジ(遊離CN約5%、シアン酸約30%)をタフトライド洗浄水に10%で溶解した液について本発明の一段階法により処理した。被処理液中には全CN880mg/L(殆どが遊離CN)、シアン酸CNO3320mg/L、N−NH3300mg/Lを含有している。この廃液1m3を反応槽4に入れ1.5℃/分の昇温速度で加熱しながら12%次亜塩素酸ナトリウム水溶液を100kg/hの投入速度で投入し、約1.5時間後ORP電位が640mVに達したら送液ポンプ2をストップした。その後30分間85℃を保持撹拌した。以下実施例1と同様な操作を行い、処理水を得た。処理後の液量は1.12m3であった。その結果を表7に示した。
ロッシェル塩を含有するシアン化銅めっき廃液について、同様に本発明の方法で無毒化処理した結果を参考例2に示す。実施例6は調整廃液としてシアン化銅めっき廃液と実施例1のタフトライド廃液の混合液の例で、いずれも表8に示すようにシアンの無毒化が達成された。特に有機物が混入しても無毒化への影響はみられない。
実施例7は低濃度シアンへの適用として上記タフトライド廃液の10倍希釈液について同様に無毒化処理を行った例である。低濃度鉄シアノ錯体シアン分解も満足結果を得た。
以上参考例2,実施例6,7の固液分離は凝集沈殿法によった。
比較例として、次亜塩素酸ナトリウム溶液を加温後初期に理論量の全量を投入した比較例4、加温前に理論量の全量を投入し、処理温度を90℃とした比較例5、処理温度90℃でCNが検出されなくなるまで次亜塩素酸ナトリウム溶液を投入した比較例6を示した。反応時間はいずれも90℃に昇温後120分とした。但しこれらの比較例は開放系反応槽で行なった。なお、加温初期に次亜塩素酸塩を添加した比較例4,及び加温前に次亜塩素酸塩を添加した比較例5において昇温時にアンモニア臭がしたのは、未反応アンモニアが反応槽でストリッピングしたためと考えられる。この結果、作業環境に悪影響を及ぼし、大気中にアンモニアガスを揮散している。
比較例4,5とも目標である排水規制値の全CN1mg/Lをクリアーすることができず、かつ処理後ORPより次亜塩素酸塩が残留していることが確かめられた。比較例6は次亜塩素酸ナトリウムを理論量の2倍近く投入しないと処理が出来なかった。
シアン系銅めっき液200Lをそのまま反応器に入れ、約95℃に加温後、10%次亜塩素酸ナトリウム溶液を40kg/hの投入速度で投入してORP電位を測定した。図6に示すようにORP電位は500〜800mVで変化した。予め、このORP変化曲線を求めた上で、設定電位を600mVとし、同じめっき液につき同一の条件で次亜塩素酸ナトリウムを、設定電位に達するまで連続添加した。その後30分間撹拌した。3時間静置後上澄み液を分析すると、CNは完全に分解され、黒色沈殿物が析出した。析出物をXRDにより分析したところCu2Oが同定され、Cuの回収率は99.8%以上であり、析出物中のCu2O比率は93.5%であった。
図5に示した処理フロー図に概ね準じた実験装置を用いて、塩浴窒化処理ラインから排出された洗浄排水を本発明の処理方法により無毒化処理を実施した。塩浴窒化処理ラインから排出された洗浄排水の分析結果が表10中に示されている。
この排水100Lを攪拌機8のついた反応槽4に入れ加熱器7により加熱し室温から設定温度の95℃に40分で昇温した。室温(25℃)でのORP電位は28mVであったが、昇温に伴い電位は低下し、設定温度の95℃では、−88mVを示した。設定温度に達したところで、貯槽2からの次亜塩素酸ソーダ(有効塩素12%)の定量ポンプ22による注入を開始した。注入開始後、5〜6分で0〜100mVの第1変曲点を、10〜12分で300〜420mVの第2変曲点を40〜45分で530〜590mVの第3変曲点を経過し、600mVで電位の上昇が終了したと判断されたので次亜塩素酸ソーダの注入を止めた。この時点で分析のためのサンプリングをし、液温を95℃に維持し攪拌を継続して更に10分後と30分後にエイジングの効果を調べるための液をサンプリングし加熱と攪拌を停止した。
槽の底部に堆積した酸化第二鉄とみられる赤褐色のスラッジを引抜いた後、残液を中和沈殿槽に移した。中和沈殿槽内の熱交換器で液温を60℃以下まで冷却し、ORP電位が250mV以下になるまで図示されない薬剤槽から重亜硫酸ソーダ液(10%溶液)を注入して残留塩素を分解後、薬剤槽3の稀硫酸を注入してpHを7〜8に調整、次いで図示されない薬剤槽の高分子凝集剤を注入,攪拌を止めてフロック形成を進め、底部よりスラッジを引抜いた後、残液を別の処理水貯槽に移した。処理水の全シアン分析を行い規制値以内であることが確認された後に,処理水は図示されない濾過塔を通過して図示されない放流槽に導かれ処理を完了した。表10に実験の結果を記載した。
ORP電位上昇が終了した時点で次亜塩素酸ソーダの注入を停止した後、一定時間温度の維持と攪拌を続けるエイジングの効果について調べた結果、エイジング工程が大きく寄与することが明らかとなった。
エイジングなしの場合、全シアンは6.8ppmと規制値の1ppmを超える結果となった。エイジング10分で0.9ppm、30分では検出限界(0.1ppm)未満となった。
次亜塩素酸ソーダ注入量が、理論値を下回った結果となったが、これは、室温から95℃に昇温する間に、アンモニアがストリッピングされたためと推定された。
反応槽の底部より引抜いたスラリーを乾燥炉で乾燥したスラッジを0.2g秤量し、JIS K 0102/38の全シアン分析の手法に基本的には準じて(但し蒸留の際に加える燐酸を、スラッジを完全に溶解させるため50mlと通常より40ml過剰に加えた)分析した結果、全シアンは検出限界未満であった。
この結果から判断して、本発明の処理に伴って発生するスラッジは通常の産業廃棄物として処置することができる。
Claims (6)
- シアノ錯体を含む廃液にアルカリ性条件下で次亜塩素酸塩を添加して酸化分解処理する方法において、鉄および金の少なくとも1種のシアノ錯体を含む前記廃液を室温から80℃〜沸点の範囲内に昇温し且つ前記範囲内で温度を維持し、室温から前記廃液の酸化還元電位を測定し、前記範囲内において該廃液の酸化還元電位が次亜塩素酸塩の酸化還元電位に達するまで、前記次亜塩素酸塩を室温から連続的もしくは断続的に添加することを特徴とするシアン廃液の処理方法。
- さらにアンモニア及び遊離シアンの少なくとも1種を含む前記廃液に、80℃未満の温度域にて、前記次亜塩素酸塩を該廃液の酸化還元電位が400mVに達するまで連続的もしくは断続的に添加した後、80℃〜沸点の範囲内の温度に昇温し、該廃液の酸化還元電位が次亜塩素酸塩の酸化還元電位に達するまで、前記次亜塩素酸塩を添加することを特徴とする請求項1項記載のシアン廃液の処理方法。
- 前記廃液を室温から80℃〜沸点の温度範囲内の温度の昇温し、次いで温度を維持するとともに、室温から前記廃液の酸化還元電位を測定することを特徴とする請求項1または2記載のシアン廃液の処理方法。
- 80℃〜沸点の温度範囲内において前記次亜塩素酸塩の酸化還元電位が検出された後に、前記温度範囲内において前記廃液の温度を保持するエージングを行うことを特徴とする請求項1から3までの何れか1項記載のシアン廃液の処理方法。
- 前記廃液が塩浴窒化処理された鉄鋼部品の洗浄廃液である請求項1から4までの何れか1項記載のシアン廃液の処理方法。
- 前記廃液がシアン系めっき廃液である請求項1から4までの何れか1項記載のシアン廃液の処理方法。
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