JP7454096B1 - 廃水の処理方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】アンモニア、チオシアン酸イオン、及びシアン化合物を含有する廃水について、塩化シアンの生成を抑制しつつ、全窒素の排水基準を満足し、かつ全シアンの排水基準を高いレベルで満足する水質に処理することが可能な方法を提供する。【解決手段】上記廃水をアルカリ酸化反応槽に導入し、廃水のpHを9.0以上11.5以下に調整するとともに、廃水に次亜塩素酸塩を添加して反応させ、少なくとも廃水中のチオシアン酸イオンを酸化分解してアルカリ酸化反応液を得る工程1Aと、アルカリ酸化反応液を還元反応槽に導入し、アルカリ酸化反応液のpHを6.0以上8.0以下に調整するとともに、アルカリ酸化反応液に還元剤を添加して反応させ、アルカリ酸化反応液中の残留塩素化合物を分解して還元反応液を得る工程1Cとを含む、廃水の処理方法である。工程1Aでは、ORPが350+59×(11-pH)~700+59×(11-pH)mVのアルカリ酸化反応液を得る。工程1Cでは、ORPが400mV以下の還元反応液を得る。【選択図】なし

Description

本発明は、アンモニア、チオシアン酸イオン、及びシアン化合物を含有する廃水の処理方法に関する。
例えば排出ガスの洗浄廃水のように、水中にアンモニア(アンモニウムイオンを含む)、チオシアン酸イオン、及びシアン化合物(シアン化物イオン及びシアノ錯体等)を含有する廃水がある(例えば特許文献1及び2参照)。そのような廃水の化学的酸素要求量(COD)、全窒素(T-N)、及び全シアン(T-CN)のそれぞれの環境基準値を満足するためには、アンモニア、チオシアン酸イオン、及びシアン化合物をいずれも十分に除去する必要がある。特に、シアン化合物については、国の排水基準よりも厳しい基準である上乗せ基準が都道府県の条例で定められることもあり、より高度な除去が求められることもある。
特開2018-069227号公報 特開2020-025955号公報
アンモニア、チオシアン酸イオン、及びシアン化合物はいずれも含窒素化合物であり、廃水の全窒素濃度を十分に低減するためには、これらのいずれをも十分に除去する必要がある。
ここで、廃水中のアンモニアの分解には、次亜塩素酸を好適に用いることができる。その一方で次亜塩素酸は、シアン化合物及びチオシアン酸イオンとの反応により塩化シアンを生成しうる。塩化シアンは、揮発性の有毒化合物であり、さらに全シアンとして測定されることから、高度なシアンの除去と安全性の観点から、塩化シアンの生成を最小限に抑えることが望ましい。
本発明は、アンモニア、チオシアン酸イオン、及びシアン化合物を含有する廃水について、塩化シアンの生成を抑制しつつ、全窒素の排水基準を満足し、かつ、全シアンの排水基準を高いレベルで満足する水質に処理することが可能な方法を提供しようとするものである。
本発明によれば、以下に示す廃水の処理方法が提供される。
[1]アンモニア、チオシアン酸イオン、及びシアン化合物を含有する廃水の処理方法であって、
前記廃水をアルカリ酸化反応槽に導入し、前記廃水のpHを9.0以上11.5以下に調整するとともに、前記廃水に次亜塩素酸塩を添加して反応させ、少なくとも前記廃水中の前記チオシアン酸イオンを酸化分解してアルカリ酸化反応液を得る工程と、
前記アルカリ酸化反応液を還元反応槽に導入し、前記アルカリ酸化反応液のpHを6.0以上8.0以下に調整するとともに、前記アルカリ酸化反応液に還元剤を添加して反応させ、前記アルカリ酸化反応液中の残留塩素化合物を分解して還元反応液を得る工程と、を含み、
前記アルカリ酸化反応液を得る工程は、前記廃水中の前記次亜塩素酸塩の反応によって、酸化還元電位が350+59×(11-pH)mV以上700+59×(11-pH)mV以下の前記アルカリ酸化反応液を得る工程であり、
前記還元反応液を得る工程は、前記アルカリ酸化反応液中の前記還元剤の反応によって、酸化還元電位が400mV以下の前記還元反応液を得る工程である、廃水の処理方法。
[2]アンモニア、チオシアン酸イオン、及びシアン化合物を含有する廃水の処理方法であって、
前記廃水をアルカリ酸化反応槽に導入し、前記廃水のpHを9.0以上11.5以下に調整するとともに、前記廃水に次亜塩素酸塩を添加して反応させ、少なくとも前記廃水中の前記チオシアン酸イオンを酸化分解してアルカリ酸化反応液を得る工程と、
前記アルカリ酸化反応液を中性酸化反応槽に導入し、前記アルカリ酸化反応液のpHを6.0以上8.0以下に調整するとともに、前記アルカリ酸化反応液中に残留する前記次亜塩素酸塩、又は前記アルカリ酸化反応液にさらに添加される次亜塩素酸塩を反応させて、中性酸化反応液を得る工程と、
前記中性酸化反応液を還元反応槽に導入し、前記中性酸化反応液に還元剤を添加して反応させ、前記中性酸化反応液中の残留塩素化合物を分解して還元反応液を得る工程と、を含み、
前記アルカリ酸化反応液を得る工程は、前記廃水中の前記次亜塩素酸塩の反応によって、酸化還元電位が350+59×(11-pH)mV以上700+59×(11-pH)mV以下の前記アルカリ酸化反応液を得る工程であり、
前記中性酸化反応液を得る工程は、前記アルカリ酸化反応液中の前記次亜塩素酸塩の反応によって、酸化還元電位が650+59×(7-pH)mV以上950+59×(7-pH)mV以下の前記中性酸化反応液を得る工程であり、
前記還元反応液を得る工程は、前記中性酸化反応液中の前記還元剤の反応によって、酸化還元電位が400mV以下の前記還元反応液を得る工程である、廃水の処理方法。
本発明によれば、アンモニア、チオシアン酸イオン、及びシアン化合物を含有する廃水について、塩化シアンの生成を抑制しつつ、全窒素の排水基準を満足し、かつ、全シアンの排水基準を高いレベルで満足する水質に処理することが可能な方法を提供することができる。
本発明の第一実施形態の廃水の処理方法を実行し得る水処理装置及び処理フローの一例を表す概略構成図である。 本発明の第二実施形態の廃水の処理方法を実行し得る水処理装置及び処理フローの一例を表す概略構成図である。 第一実施形態の廃水の処理方法を実行し得る水処理装置及び処理フローの別の一例を表す概略構成図である。 第一実施形態の廃水の処理方法を実行し得る水処理装置及び処理フローのまた別の一例を表す概略構成図である。 第二実施形態の廃水の処理方法を実行し得る水処理装置及び処理フローの別の一例を表す概略構成図である。 第二実施形態の廃水の処理方法を実行し得る水処理装置及び処理フローのまた別の一例を表す概略構成図である。 予備実験例1における次亜塩素酸ナトリウムの添加量と、酸化還元電位(ORP)及びチオシアン酸イオン(SCN)濃度との関係を示すグラフである。
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態について説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではない。なお、図面における各図で共通する部分については同一の符号を付し、その説明を省略することがある。また、図1~6中の矢印は、物質の流れを表し、当該矢印の線を当該物質の流路として示すこともある。
[第一実施形態]
図1に、本発明の第一実施形態の廃水の処理方法(以下、単に「処理方法」と記載することがある。)を実行し得る水処理装置11及び処理フローの一例を表す概略構成図を示す。第一実施形態の処理方法で用いることが可能な水処理装置11は、アルカリ酸化反応槽22、及び還元反応槽26を備える。第一実施形態の処理方法は、アンモニア、チオシアン酸イオン、及びシアン化合物を含有する廃水Wを処理対象とする。
[アルカリ酸化反応液を得る工程]
第一実施形態の処理方法は、アルカリ酸化反応槽22において、アルカリ酸化反応液Wを得る工程(本明細書において、「工程1A」と記載することがある。)を含む。この工程1Aは、廃水Wをアルカリ酸化反応槽22に導入して行われる。そして、アルカリ酸化反応槽22において、廃水WのpHを9.0以上11.5以下に調整する。廃水WのpHの調整には、後述するpH調整剤を用いることができる。アルカリ酸化反応槽22には、廃水WにpH調整剤を添加するための装置(以下、「pH調整剤添加装置」と記載することがある。)42や、廃水WのpHを測定するためのpH計62を設けてもよい。
工程1Aでは、アルカリ酸化反応槽22において、廃水Wに次亜塩素酸塩を添加して反応させ、少なくとも廃水W中のチオシアン酸イオンを酸化分解してアルカリ酸化反応液Wを得る。この際、廃水W中の次亜塩素酸塩の反応によって、酸化還元電位(ORP)が350+59×(11-pH)mV以上700+59×(11-pH)mV以下のアルカリ酸化反応液Wを得る。すなわち、工程1Aでは、ORPが上記特定の範囲内となるように、次亜塩素酸塩を廃水Wに添加する。それにより、廃水W中のチオシアン酸イオンを十分に酸化分解することができる。廃水Wに次亜塩素酸塩を上記のように添加して反応させることによって、シアン化物イオン等の易分解性のシアン化合物やアンモニア態窒素も酸化分解することが可能である。廃水Wへの次亜塩素酸塩の添加は、塩化シアンの生成をより抑制しやすい観点から、好ましくは廃水WのpHを9.0以上11.5以下に調整後に行うが、調整しながら行ってもよい。アルカリ酸化反応槽22には、廃水Wに次亜塩素酸塩を添加するための装置(以下、「次亜塩素酸塩添加装置」と記載することがある。)32や、アルカリ酸化反応槽22中の液のORPを測定するためのORP計52を設けてもよい。
工程1Aで得るアルカリ酸化反応液WのORPが「350+59×(11-pH)mV以上700+59×(11-pH)mV以下」であることは、アルカリ酸化反応槽22中の液のpHが11.0の場合のORP測定値が350mV以上700mV以下であることを意味する。水系のORPはpHによって変動し、pHが1減少するとORPが+59mV変動し、逆にpHが1増加するとORPが-59mV変動することが知られている。そのため、工程1Aにおいて調整する廃水W(アルカリ酸化反応槽22中の液)のpH(9.0~11.5の値)を考慮して、ORPが350+59×(11-pH)mV以上700+59×(11-pH)mV以下のアルカリ酸化反応液Wを得る。
[還元反応液を得る工程]
また、第一実施形態の処理方法は、還元反応槽26において、還元反応液Wを得る工程(本明細書において、「工程1C」と記載することがある。)を含む。この工程1Cは、上記工程1Aで得られたアルカリ酸化反応液Wを還元反応槽26に導入して行われる。そして、還元反応槽26において、アルカリ酸化反応液WのpHを6.0以上8.0以下に調整するとともに、アルカリ酸化反応液Wに還元剤を添加して反応させ、アルカリ酸化反応液W中の残留塩素化合物を分解して還元反応液Wを得る。この際、アルカリ酸化反応液W中の還元剤の反応によって、酸化還元電位(ORP)が400mV以下の還元反応液Wを得る。すなわち、工程1Cでは、ORPが400mV以下となるように、還元剤をアルカリ酸化反応液Wに添加する。それにより、アルカリ酸化反応液W中の残留塩素化合物を十分に分解することができる。アルカリ酸化反応液Wへの還元剤の添加は、好ましくはアルカリ酸化反応液WのpHを6.0以上8.0以下に調整しながら(すなわち、pH調整と同時に)行うが、pH調整後に行ってもよい。
pHを6.0以上8.0以下に調整した後のアルカリ酸化反応液Wに還元剤を添加する場合、工程1Cでは、アルカリ酸化反応液WのpHを6.0以上8.0以下に調整後、すぐに還元剤を添加する。例えば、このpH調整後、10分以内(より好ましくは5分以内)に、還元剤の添加を行うことが好ましい。また、pHを6.0以上8.0以下に調整した後、還元剤を添加する前に、ORPが650+59×(7-pH)mV以上950+59×(7-pH)mV以下のアルカリ酸化反応液Wに、還元剤を添加することが好ましい。
還元反応槽26には、導入されたアルカリ酸化反応液Wに還元剤を添加するための装置(以下、「還元剤添加装置」と記載することがある。)36や、還元反応槽26中の液のORPを測定するためのORP計56を設けてもよい。また、アルカリ酸化反応液WのpHの調整には、後述するpH調整剤を用いることができ、還元反応槽26には、pH調整剤添加装置46やpH計66を設けてもよい。
[第二実施形態]
図2に、本発明の第二実施形態の処理方法を実行し得る水処理装置12及び処理フローの一例を表す概略構成図を示す。第二実施形態の処理方法で用いることが可能な水処理装置12は、アルカリ酸化反応槽22、中性酸化反応槽24、及び還元反応槽26を備える。第二実施形態の処理方法も、第一実施形態の処理方法と同様、アンモニア、チオシアン酸イオン、及びシアン化合物を含有する廃水Wを処理対象とする。第二実施形態の処理方法は、第一実施形態の処理方法における「アルカリ酸化反応液を得る工程」と「還元反応液を得る工程」との間に、後述する「中性酸化反応液を得る工程」を含む点が、第一実施形態の処理方法とは異なる。
[アルカリ酸化反応液を得る工程]
第二実施形態の処理方法は、第一実施形態の処理方法と同様に、アルカリ酸化反応槽22において、アルカリ酸化反応液Wを得る工程(本明細書において、「工程2A」と記載することがある。)を含む。この工程2Aは、廃水Wをアルカリ酸化反応槽22に導入して行われる。そして、アルカリ酸化反応槽22において、廃水WのpHを9.0以上11.5以下に調整する。廃水WのpHの調整には、後述するpH調整剤を用いることができる。アルカリ酸化反応槽22には、pH調整剤添加装置42やpH計62を設けてもよい。
工程2Aでは、アルカリ酸化反応槽22において、廃水Wに次亜塩素酸塩を添加して反応させ、少なくとも廃水W中のチオシアン酸イオンを酸化分解してアルカリ酸化反応液Wを得る。この際、廃水W中の次亜塩素酸塩の反応によって、酸化還元電位(ORP)が350+59×(11-pH)mV以上700+59×(11-pH)mV以下のアルカリ酸化反応液Wを得る。すなわち、工程2Aでは、ORPが上記特定の範囲内となるように、次亜塩素酸塩を廃水Wに添加する。それにより、廃水W中のチオシアン酸イオンを十分に酸化分解することができる。廃水Wに次亜塩素酸塩を上記のように添加して反応させることによって、シアン化物イオン等の易分解性のシアン化合物やアンモニア態窒素も酸化分解することが可能である。廃水Wへの次亜塩素酸塩の添加は、塩化シアンの生成をより抑制しやすい観点から、好ましくは廃水WのpHを9.0以上11.5以下に調整後に行うが、調整しながら行ってもよい。アルカリ酸化反応槽22には、次亜塩素酸塩添加装置32やORP計52を設けてもよい。
工程2Aで得るアルカリ酸化反応液WのORPは、工程1Aと同様、350+59×(11-pH)mV以上700+59×(11-pH)mV以下である。この式中のpHは、上述の通り、工程2Aにおいて調整する廃水W(アルカリ酸化反応槽22中の液)のpH(9.0~11.5の値)である。例えば、工程2Aにおいて、廃水WのpHを9.0に調整する場合はORPが468mV以上818mV以下、廃水WのpHを11.5に調整する場合はORPが320.5mV以上670.5mV以下であるアルカリ酸化反応液Wを得る。
[中性酸化反応液を得る工程]
また、第二実施形態の処理方法は、中性酸化反応槽24において、中性酸化反応液Wを得る工程(本明細書において、「工程2B」と記載することがある。)を含む。この工程2Bは、上記工程2Aで得られたアルカリ酸化反応液Wを中性酸化反応槽24に導入して行われる。そして、中性酸化反応槽24において、アルカリ酸化反応液WのpHを6.0以上8.0以下に調整する。アルカリ酸化反応液WのpHの調整には、後述するpH調整剤を用いることができる。中性酸化反応槽24には、pH調整剤添加装置44やpH計64を設けてもよい。
工程2Bでは、中性酸化反応槽24において、アルカリ酸化反応液W中に残留する次亜塩素酸塩、又はアルカリ酸化反応液Wにさらに添加される次亜塩素酸塩を反応させて、中性酸化反応液Wを得る。この際、アルカリ酸化反応液W中の次亜塩素酸塩の反応によって、酸化還元電位(ORP)が650+59×(7-pH)mV以上950+59×(7-pH)mV以下の中性酸化反応液Wを得る。すなわち、工程2Bでは、ORPが上記特定の範囲内となるように、次亜塩素酸塩を反応させる。それにより、チオシアン酸イオンに起因する全窒素を十分に低減することが可能である。工程2Bでは、アルカリ酸化反応液W中に、ORPが上記特定の範囲内となる量の次亜塩素酸塩が残留していれば、中性酸化反応槽24で次亜塩素酸塩を添加しなくてもよい。中性酸化反応槽24には、次亜塩素酸塩添加装置34やORP計54を設けてもよい。
工程2Bで得る中性酸化反応液WのORPが「650+59×(7-pH)mV以上950+59×(7-pH)mV以下」であることは、中性酸化反応槽24中の液のpHが7.0の場合のORP測定値が650mV以上950mV以下であることを意味する。pHが1減少するとORPが+59mV変動し、pHが1増加するとORPが-59mV変動する。そのため、工程2Bにおいて、調整するアルカリ酸化反応液W(中性酸化反応槽24中の液)のpH(6.0~8.0の値)を考慮して、ORPが650+59×(7-pH)mV以上950+59×(7-pH)mV以下の中性酸化反応液Wを得る。
[還元反応液を得る工程]
さらに、第二実施形態の処理方法は、還元反応槽26において、還元反応液Wを得る工程(本明細書において、「工程2C」と記載することがある。)を含む。この工程2Cは、上記工程2Bで得られた中性酸化反応液Wを還元反応槽26に導入して行われる。そして、還元反応槽26において、中性酸化反応液Wに還元剤を添加して反応させ、中性酸化反応液W中の残留塩素化合物を分解して還元反応液Wを得る。この際、中性酸化反応液W中の還元剤の反応によって、酸化還元電位(ORP)が400mV以下の還元反応液Wを得る。すなわち、工程2Cでは、ORPが400mV以下となるように、還元剤を中性酸化反応液Wに添加する。それにより、中性酸化反応液W中の残留塩素化合物を十分に分解することができる。工程2Cにおいて、還元剤が添加される中性酸化反応液Wは、上述の工程2BでpH6.0以上8.0以下に調整されているが、pH調整剤を用いて中性酸化反応液WのpHを上記範囲に維持しながら還元剤を添加してもよい。
還元反応槽26には、導入された中性酸化反応液Wに還元剤を添加するための還元剤添加装置36や、還元反応槽26中の液のORPを測定するためのORP計56を設けてもよい。また、中性酸化反応液WのpHの調整には、後述するpH調整剤を用いることができ、還元反応槽26には、pH調整剤添加装置46やpH計66を設けてもよい。
第一実施形態及び第二実施形態の処理方法をまとめて、上述した工程毎(工程1A及び2A;工程2B;工程1C及び2C)における想定される代表的な反応例について、次に述べる。
[工程1A及び2Aでの反応例]
第一及び第二実施形態の処理方法におけるアルカリ酸化反応液Wを得る工程(工程1A及び2A)では、次の反応が生じると考えられる。
(A-1)下記反応式(1)で表される推定機構のように、チオシアン酸イオン(SCN)の次亜塩素酸イオン(ClO)との反応によるシアン酸(CNO)への酸化が生じると考えられる。
SCN + 4ClO + 2OH
→ SO 2- + CNO + 4Cl + HO (1)
(A-2)下記反応式(2)で表される推定機構のように、アンモニアと次亜塩素酸イオンとの反応によるクロラミン(代表的なクロラミンとしてモノクロラミン(NHCl))の生成が考えられる。
NH +ClO → NHCl + OH (2)
(A-3)下記反応式(3)で表される推定機構のように、クロラミンの分解が生じると考えられる。
3NHCl → N + NHCl + 2HCl (3)
(A-4)下記反応式(4)で表される推定機構のように、後述するシアン化合物のうち、易分解性のシアン化合物(シアン化物イオンや、シアンと金属との結合が比較的弱い金属シアノ錯体(亜鉛シアノ錯体及び銅シアノ錯体等))のシアン酸への酸化が生じると考えられる。なお、ペンタシアノモノカルボニル鉄(II)イオンやテトラシアノジカルボニル鉄(II)イオンも、この工程1A及び2Aで一部分解する可能性があると考えられる。
CN + ClO → CNO + Cl (4)
[工程2Bでの反応例]
第二実施形態の処理方法における中性酸化反応液Wを得る工程(工程2B)では、次の反応が生じると考えられる。
(B-1)下記反応式(5)で表される推定機構のように、アンモニアと次亜塩素酸(HOCl)との反応によるクロラミン類(NHCl、NHCl、NCl)の生成が考えられる。
NH + HOCl → NHCl + H
NHCl + HOCl → NHCl + H
NHCl + HOCl → NCl + HO (5)
(B-2)また、下記反応式(6)で表される代表的な推定機構のように、クロラミン類の窒素ガスへの分解が生じると考えられる。
NHCl+NHCl → N + 3HCl (6)
(B-3)また、下記反応式(7)で表される推定機構のように、シアン酸の分解が生じると考えられる。
2CNO + 3OCl + H
→ N + 3Cl + 2HCO (7)
仮に、pH9.0以上11.5以下の条件のアルカリ酸化反応液Wを得る工程(工程1A及び2A)を実行しない場合、中性酸化反応槽24において、液中にチオシアン酸イオンが分解されずに残存する。その場合にpH6.0以上8.0以下の条件の中性酸化反応液Wを得る工程を行うと、(i)チオシアン酸イオンと次亜塩素酸との反応による塩化シアン(ClCN)の生成、(ii)易分解性シアン化合物と次亜塩素酸との反応による塩化シアンの生成が考えられる。そのため、第一及び第二実施形態の処理方法では、アルカリ酸化反応液Wを得る工程を行って、まずチオシアン酸イオンを分解する。
[工程1C及び2Cでの反応例]
第一及び第二実施形態の処理方法における還元反応液Wを得る工程(工程1C及び2C)では、還元剤によって、次亜塩素酸(HOCl)、次亜塩素酸イオン(ClO)、及び結合残留塩素(クロラミン類等)の残留塩素化合物が分解され、除去される。
上記第一及び第二実施形態の処理方法によれば、アンモニア、チオシアン酸イオン、及びシアン化合物を含有する廃水Wについて、塩化シアンの生成を抑制することができる。なおかつ、本処理方法によれば、全窒素の排水基準・上乗せ基準(排出する事業者の業種や地域により異なるが、例えば東京湾流域の大規模工場では20mg/Lの上乗せ基準を満たすことが必要な場合がある)及び全シアンの排水基準(1mg/L)を満足し、さらに全シアンの上乗せ基準(例えば、0.2mg-CN/L)のような高いレベルを満足する水質の処理水Wを得ることができる。
以下、第一及び第二実施形態の処理方法をまとめて、上述した各工程(工程1A及び2A;工程2B;工程1C及び2C)における構成要素等に関して、詳細に述べる。第一及び第二実施形態の処理方法をまとめて「本実施形態の処理方法」と記載することがある。
[廃水]
本実施形態の処理方法は、アンモニア、チオシアン酸イオン、及びシアン化合物を含有する廃水Wを処理対象とする。これらの成分を含有する可能性が高いことから、排出ガスを処理する際に生じた廃水Wに対して、本実施形態の処理方法を好適に適用することができる。そのような廃水Wとしては、懸濁物質を含む排出ガスを湿式集塵処理して得られた集塵水や、その集塵水から懸濁物質を除去するための固液分離処理がなされた集塵廃水等を挙げることができる。排出ガスとしては、例えば、発電所から発生する排出ガス、コークス炉から発生する排出ガス、溶融炉(精錬炉)等の金属精錬設備や製鉄所から生じる排出ガス、セメント製造設備から生じる排出ガス、及び各種ごみ等の廃棄物を焼却する廃棄物焼却施設から生じる排出ガス等が挙げられる。廃水Wの水温としては、15℃以上80℃以下が好ましく、30℃以上60℃以下がより好ましい。
本明細書におけるアンモニアは、水中に含まれる成分であることから、アンモニア(NH)及びアンモニウムイオン(NH )を含み、これらを併せてアンモニアと表記する。廃水W中のアンモニア濃度は、25mg-N/L以上300mg-N/L以下であることが好ましく、35mg-N/L以上200mg-N/L以下であることがより好ましい。
廃水W中のチオシアン酸イオン(SCN)濃度は、3mg/L以上300mg/L以下であることが好ましく、5mg/L以上100mg/L以下であることがより好ましい。廃水W中のアンモニア濃度とチオシアン酸イオンの比率としては、チオシアン酸イオン濃度(モル濃度)に対するアンモニア態窒素濃度(モル濃度)の比(モル比)が、4以上であることがさらに好ましい。
本明細書におけるシアン化合物は、水中に含まれる成分であることから、シアン化物イオン(CN)及びシアノ錯体等を総称する用語である。これは、JIS K0102:2019にも規定されている。すなわち、本明細書におけるシアン化合物とは、JIS K0102:2019に規定される全シアンの測定方法において、全シアンとして測定されうる化合物である。
シアン化合物としては、例えば、シアン化物イオン、シアン化水素、塩化シアン、及びシアノ錯体等が挙げられる。シアノ錯体としては、主に鉄シアノ錯体が挙げられる。鉄シアノ錯体としては、例えば、フェロシアン化物イオン([Fe(CN)4-、ヘキサシアノ鉄(II)酸イオン)及びその塩;フェリシアン化物イオン([Fe(CN)3-、ヘキサシアノ鉄(III)酸イオン)及びその塩;並びにペンタシアノモノカルボニル鉄(II)イオン([Fe(CO)(CN)3-)、テトラシアノジカルボニル鉄(II)イオン([Fe(CO)(CN)2-)等の[Fe(CO)(CN)p-イオン(m=1~5、n=6-m、p=m-2又はm-3を表す。)及びそれらの塩が挙げられる。鉄シアノ錯体以外のシアノ錯体としては、亜鉛シアノ錯体([Zn(CN)2-)、銅シアノ錯体([Cu(CN)2-)、ニッケルシアノ錯体、及びマンガンシアノ錯体等が挙げられる。
本実施形態の処理方法では、シアン化合物として少なくともシアン化物イオンを含有する廃水Wが好適である。また、本実施形態の処理方法のより好ましい一態様においては、シアン化合物として、少なくともシアン化物イオン及び鉄シアノ錯体を含有する廃水Wがより好適である。廃水W中のシアン化合物濃度(全シアン濃度)は、1mg-CN/L以上40mg-CN/L以下であることが好ましく、1mg-CN/L以上20mg-CN/L以下であることがより好ましい。
また、本実施形態の処理方法が実行される前に、廃水Wが貯留設備に貯留されている場合には、この貯留時にシアン化水素が揮散する懸念があるため、廃水W中の溶存性シアン濃度を低下させる簡便な処理又は廃水WのpHを上昇させる等の処理を行ってもよい。このような処理をアルカリ酸化反応槽22への廃水Wの導入に先立って行うことができる。上記の簡便な処理としては、これまでに報告されている種々の方法(例えば、過酸化水素を添加する方法;過酸化水素及び第二銅塩を添加する方法;過酸化水素及び次亜塩素酸塩を添加する方法;過酸化水素及び二酸化塩素を添加する方法;アルデヒド類を添加する方法;銅塩を添加する方法;並びに第一鉄塩を添加する方法;等)のうち、適用しやすい方法を選択すればよい。この際にどの程度までシアン濃度を低下させればよいかは、周辺の環境や人の立ち入りの状況等を勘案して適宜決定すればよい。例えば、廃水W中の溶存性の全シアン濃度が、好ましくは10mg-CN/L以下、より好ましくは5mg-CN/L以下になるように簡便な処理をしておくのがよい。
なお、廃水Wは、炭酸イオン又は重炭酸イオンを含有してよく、それらの総濃度は1000mg-C/L以下であることが好ましく、300mg-C/L以下であることがより好ましい。また、廃水Wは、未燃カーボン、金属、金属酸化物、金属水酸化物、及び鉱物等の懸濁性物質を含有してもよい。懸濁性物質の総濃度は、1000mg/L以下であることが好ましく、300mg/L以下であることがより好ましく、100mg/L以下であることがさらに好ましい。さらに、廃水Wは、金属イオン(例えば、Fe2+、Zn2+、Cu、Cu2+、Mn2+等);銅アンミン錯体等の水溶性金属錯体又はその塩;塩化物イオン、カルシウムイオン、カリウムイオン等の塩類;スケール生成の抑制のためのスケール防止剤;等を含有してもよい。
廃水Wに含有されていてもよい上記成分のなかでも、廃水Wは、Cu、Cu2+、及びZn2+のうちの少なくともいずれかを含有することが好ましい。換言すると、廃水W中に、Cu、Cu2+、及びZn2+からなる群より選択される少なくとも1種の金属イオンの存在下で、前述のアルカリ酸化反応液を得る工程(工程1A又は工程2A)を行うことが好ましい。すなわち、廃水W中に上記特定の金属イオンの存在下で、アルカリ酸化反応槽22において、廃水WのpHを9.0以上11.5以下に調整し、かつ、廃水Wに次亜塩素酸塩を添加して反応させることが好ましい。廃水W中の上記特定の金属イオンの含有量は、1mg/L以上20mg/L以下であることが好ましく、1mg/L以上10mg/L以下であることがより好ましく、2.5mg/L以上10mg/L以下であることがさらに好ましい。廃水W中に上記特定の金属イオンの存在下で前述の工程1A又は工程2Aを行うことで前述の第一又は第二実施形態の処理方法が実行されると、廃水W中に鉄シアノ錯体が含有されている場合でも、鉄シアノ錯体をある程度酸化分解し得る。その結果、鉄シアノ錯体が含有されている廃水に対しても、全シアン濃度が低減された処理水を得ることが可能である。
したがって、第一及び第二実施形態の処理方法は、アルカリ酸化反応液を得る工程の前に、廃水Wに、Cu、Cu2+、及びZn2+からなる群より選択される少なくとも1種の金属イオンを含有させる工程をさらに含むことが好ましい。廃水Wに上記特定の金属イオンを含有させるには、廃水Wに上記特定の金属イオンを供給することが可能な銅化合物及び/又は亜鉛化合物を用いることができる。例えば、銅化合物及び/又は亜鉛化合物を溶媒に溶解させたことで当該化合物から生じた上記特定の金属イオンを含有するイオン含有溶液を用いることができる。また、例えば、廃水Wに添加することで上記特定の金属イオンを生じる粉末状等の固体の銅化合物及び/又は亜鉛化合物を用いることができる。これらのなかでも、使用しやすい観点から、上記特定の金属イオンを含有するイオン含有溶液を廃水Wに添加することがさらに好ましい。イオン含有溶液に用いる溶媒としては、例えば、水;希塩酸及び希硫酸等の酸;アンモニア水等の塩基;等を挙げることができる。
銅化合物としては、例えば、塩化銅(I)、酸化銅(I)(亜酸化銅)、臭化銅(I)、酢酸銅(I)、及び硫化銅(I)等の銅(I)化合物;並びに塩化銅(II)、硫酸銅(II)、酢酸銅(II)、酸化銅(II)、及び硝酸銅(II)等の銅(II)化合物;を挙げることができる。これらの1種又は2種以上を用いることができる。また、亜鉛化合物としては、例えば、硫酸亜鉛、酢酸亜鉛、硝酸亜鉛、塩化亜鉛、炭酸亜鉛、及び亜硫酸亜鉛等を挙げることができる。これらの1種又は2種以上を用いることができる。
[各反応槽]
第一実施形態の処理方法では、アルカリ酸化反応槽22、及び還元反応槽26を用い、第二実施形態の処理方法では、それらの反応槽22、26に加えてさらに、それらの間で中性酸化反応槽24を用いる。各反応槽22、24、26は、一定以上の滞留時間が確保できるものであれば特に限定はないが、滞留時間が1~120分であるものが好ましく、滞留時間が3~60分であるものがより好ましい。また、各反応槽22、24、26は、撹拌機構70を備えることが好ましい。撹拌の方式としては、特に制限はなく、例えば、撹拌翼による方式、バッフルによる方式、気体吹込みによる方式、水中ポンプによる方式、及び水中モータによる方式等が挙げられる。
上述の通り、アルカリ酸化反応槽22及び中性酸化反応槽24には、次亜塩素酸塩添加装置32、34を設けることができ、還元反応槽26には、還元剤添加装置36を設けることができる。また、各反応槽22、24、26には、pH調整剤添加装置42、44、46を設けることができる。それらの添加装置は、例えば、それらの装置において使用される各材料を貯留するためのタンク、並びに各材料を供給するためのポンプ及び供給管等を備えることができる。さらに、各反応槽22、24、26には、pH計62、64、66、ORP計52、54、56を設けることができる。また、各反応槽22、24、26は、配管で接続することができ、配管には送液を可能とするポンプを接続することができる。
[pH調整剤]
本実施形態の処理方法におけるアルカリ酸化反応液Wを得る工程(工程1A及び2A)において、廃水WのpHを9.0以上11.5以下に調整する際には、pH調整剤を用いることができる。pH調整剤としては、水処理の技術分野で用いられているものを好適に用いることができ、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化マグネシウム、及び水酸化カルシウム等の塩基を用いることができる。これらのなかでも、入手の容易さの観点から、水酸化ナトリウムが好ましい。また、アルカリ酸化反応槽22における廃水WのpHをより厳密に調整するために酸をpH調整剤として併用することも可能である。この酸としては、硫酸水溶液、及び塩酸等を挙げることができる。
アルカリ酸化反応槽22におけるpH調整剤の添加は、ポンプを用いて自動的及び省力的に行うことが好ましい。この観点から、pH調整剤は水溶液の形態であることが好ましい。その水溶液の濃度としては、例えば5~50質量%濃度の水溶液を用いることができる。
アルカリ酸化反応槽22では、廃水WのpHをアルカリ性にすることから、炭酸カルシウム等のカルシウムスケールやその他の金属化合物に由来するスケールが生じる可能性がある。そのような場合は、アルカリ酸化反応槽22への廃水Wの導入に先立って、又は、廃水Wの導入と同時にスケール防止剤を添加しておくことが好ましい。スケール防止剤の種類は特に限定されないが、リンゴ酸、クエン酸、及びそれらの塩等の有機酸系スケール防止剤;ニトリロ三酢酸、エチレンジアミン四酢酸、及びそれらの塩等のアミノカルボン酸系スケール防止剤;ホスホノブタントリカルボン酸、ジエチレントリアミンペンタキスメチレンホスホン酸、アミノトリメチレンホスホン酸、及びそれらの塩等のホスホン酸系スケール防止剤;ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、アクリル酸・マレイン酸共重合体、及びそれらの塩等のポリカルボン酸系スケール防止剤;等を挙げることができる。これらのなかでも、ポリカルボン酸系スケール防止剤が好ましい。
第二実施形態の処理方法における中性酸化反応液Wを得る工程(工程2B)、及び第一実施形態の処理方法における還元反応液Wを得る工程(工程1C)において、アルカリ酸化反応液WのpHを6.0以上8.0以下に調整する際にも、pH調整剤を用いることができる。この際のpH調整剤にも特に限定はないが、ここでもポンプを用いてpH調整剤の添加を自動的及び省力的に行うことが好ましい。この観点から、ここでのpH調整剤は硫酸又は塩酸の水溶液であることが好ましい。その水溶液の濃度としては、例えば、10~85質量%濃度の硫酸水溶液、5~35質量%濃度の塩酸水溶液を用いることができる。
[次亜塩素酸塩の種類]
本実施形態の処理方法におけるアルカリ酸化反応液Wを得る工程(工程1A及び2A)では、次亜塩素酸塩を用いる。また、第二実施形態の処理方法における中性酸化反応液Wを得る工程(工程2B)では、工程2Aで得られるアルカリ酸化反応液W中に次亜塩素酸塩が残留していない場合、アルカリ酸化反応液Wにさらに次亜塩素酸塩を添加する。これらの工程で用いる次亜塩素酸塩としては、次亜塩素酸ナトリウム、次亜塩素酸カリウム、及び次亜塩素酸カルシウム等を挙げることができる。これらのなかでも、取り扱い及び入手の容易さの観点から、次亜塩素酸ナトリウムを用いることが好ましく、水溶液の形態で用いることがより好ましい。その水溶液中の次亜塩素酸塩の濃度は、1~20質量%であることが好ましく、例えば、12質量%濃度の次亜塩素酸ナトリウム水溶液を好ましく用いることができる。
[次亜塩素酸塩の添加量]
アンモニアの次亜塩素酸塩による分解過程での副産物として硝酸イオンが生じることが知られている。硝酸イオンの生成量が極力低くなり、かつアンモニアの十分な除去効果が得られるように、アルカリ酸化反応槽22及び中性酸化反応槽24のそれぞれでの次亜塩素酸塩の添加量を調整するとよい。この際の次亜塩素酸塩の添加量は、予備実験等で適当な量な把握しておき、その把握結果に基づいて調整することが好ましい。また、シアン酸の残留の程度もアルカリ酸化反応槽22と中性酸化反応槽24での次亜塩素酸塩の添加量に依存することから、この観点からも、次亜塩素酸塩の適当な添加量を把握しておき、その把握結果に基づいて調整することが好ましい。
[次亜塩素酸塩の添加量の制御]
本実施形態の処理方法では、次亜塩素酸塩の添加量は、廃水W中のチオシアン酸イオンを酸化分解し得る量として、次亜塩素酸塩を添加する対象の液の酸化還元電位(ORP)を指標に調整する。すなわち、アルカリ酸化反応液Wを得る工程(工程1A及び2A)では、次亜塩素酸塩の添加量は、アルカリ酸化反応槽22内の液のORPが350+59×(11-pH)mV以上700+59×(11-pH)mV以下となる量とする。それにより、廃水W中のチオシアン酸イオンを十分に酸化分解することができる。アルカリ酸化反応液Wを得る工程では、廃水WのpHを9.0以上11.5以下に調整するため、上記ORPは、pH11.5の場合に最小で320.5mVであり、pH9.0の場合に最大で818.0mVとなる。
また、第二実施形態の処理方法における中性酸化反応液Wを得る工程(工程2B)では、中性酸化反応槽24内の液のORPが650+59×(7-pH)mV以上950+59×(7-pH)mV以下となるように、次亜塩素酸塩を反応させる。中性酸化反応液Wを得る工程では、アルカリ酸化反応液WのpHを6.0以上8.0以下に調整するため、上記ORPは、pH8.0の場合に最小で591.0mVであり、pH6.0の場合に最大で1009.0mVとなる。
上述したアルカリ酸化反応槽22や中性酸化反応槽24での次亜塩素酸塩の添加量の調整及び制御は、以下に述べる他の指標を用いて行うことも検討し得るが、本処理方法では、実際の水処理現場での実行のしやすさ及びコストの観点から、ORPを指標として行う。ORPに加えて、他の指標を併用してもよい。他の指標としては、例えば、アンモニア濃度、アンモニウムイオン濃度、硝酸イオン濃度、シアン酸濃度、シアン化物イオン濃度、及びチオシアン酸イオン濃度等を挙げることができ、これらのうちの1種又は2種以上を用いることができる。
例えば、アルカリ酸化反応液Wを得る工程における次亜塩素酸塩の添加量については、アルカリ酸化反応槽22に流入する廃水Wの、アンモニア濃度、アンモニウムイオン濃度、シアン化物イオン濃度、及びチオシアン酸イオン濃度等を指標に加えてもよい。また、アルカリ酸化反応液Wの、アンモニア濃度、アンモニウムイオン濃度、硝酸イオン濃度、シアン酸濃度、シアン化物イオン濃度、チオシアン酸イオン濃度、及び全窒素濃度等を指標に加えてもよい。
また例えば、中性酸化反応液Wを得る工程で次亜塩素酸塩を添加する場合のその添加量については、中性酸化反応槽24に流入するアルカリ酸化反応液Wの、アンモニア濃度、アンモニウムイオン濃度、シアン酸濃度、シアン化物イオン濃度、及びチオシアン酸イオン濃度等を指標に加えてもよい。また、中性酸化反応液Wの、アンモニア濃度、アンモニウムイオン濃度、硝酸イオン濃度、シアン酸濃度、シアン化物イオン濃度、チオシアン酸イオン濃度、及び全窒素濃度等を指標に加えてもよい。
上述した各種濃度の測定は、バッチ式で行ってもよいし、連続式で行ってもよく、自動測定装置を用いることもできる。測定対象液を自動測定装置に導入する場合には、測定装置に至るまでの流路及び測定装置におけるスケールの生成を抑制する目的でスケール防止剤を添加してもよい。この場合に用いるスケール防止剤は特に限定されず、例えば上述したスケール防止剤の具体例のなかから、効果が高く、測定値に正又は負の妨害を与えないものを適宜選択して使用すればよい。複数のスケール防止剤を用いてもよい。
[還元剤]
本実施形態の処理方法における還元反応液Wを得る工程(工程1C及び2C)では、還元剤を用いる。還元剤としては、亜硫酸水素ナトリウム及び亜硫酸ナトリウム等の亜硫酸塩;チオ硫酸ナトリウム等のチオ硫酸塩;塩化第一鉄及び硫酸第一鉄等の第一鉄塩;硫化ナトリウム等の硫化物塩;アスコルビン酸及びその塩;システイン等のチオール類;ジエチルジチオカルバミン酸等のジチオカルバミン酸類;等を挙げることができる。これらの1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらのなかでも、安全性や取り扱いやすさ、入手のしやすさの観点から、亜硫酸塩、チオ硫酸塩、及び第一鉄塩からなる群より選ばれる少なくとも1種が好ましい。なかでも、CODを上昇させにくい観点から、亜硫酸塩及び第一鉄塩からなる群より選ばれる少なくとも1種がより好ましい。還元剤も水溶液の形態で用いることが好ましい。その水溶液中の還元剤の濃度は、10~50質量%であることが好ましい。
[還元状態の把握]
本実施形態の処理方法では、還元反応槽26中の液の還元状態を把握する方法として、酸化還元電位(ORP)を指標とする。つまり、還元反応液Wを得るに当たり、還元剤の添加量は、還元反応槽26に導入された液中の残留塩素化合物を分解し得る量として、還元反応槽26中の液のORPを指標に調整する。すなわち、還元反応液Wを得る工程(工程1C及び2C)では、還元剤の添加量は、還元反応槽26内の液のORPが400mV以下となる量とする。それにより、液中の残留塩素化合物を十分に還元除去することができる。
上述した還元反応槽26での還元剤の添加量の調整及び制御は、以下に述べる他の指標を用いて行うことも検討し得るが、本処理方法では、実際の水処理現場での実行のしやすさ及びコストの観点から、ORPを指標として行う。ORPに加えて、他の指標を併用してもよい。他の指標としては、例えば、残留塩素濃度、及び溶存酸素濃度等を挙げることができ、これらのうちの1種又は2種以上を用いることができる。これらの濃度の測定は、バッチ式で行ってもよく、連続式で行ってもよい。測定は、測定の簡便性の観点から、電極法で行うことが好ましい。
[銅化合物添加工程・固液分離工程]
図3に、第一実施形態の処理方法を実行し得る水処理装置13及び処理フローの別の一例を表す概略構成図を示す。図4に、第一実施形態の処理方法を実行し得る水処理装置14及び処理フローのまた別の一例を表す概略構成図を示す。また、図5に、第二実施形態の処理方法を実行し得る水処理装置15及び処理フローの別の一例を表す概略構成図を示す。図6に、第二実施形態の処理方法を実行し得る水処理装置16及び処理フローのまた別の一例を表す概略構成図を示す。
図3及び図4に示す通り、第一実施形態の水処理装置13、14は、アルカリ酸化反応槽22、還元反応槽26、及び固液分離設備80を備え、水処理装置14は、還元反応槽26と固液分離設備80との間にさらに銅化合物添加槽28を備える。また、図5及び図6に示す通り、第二実施形態の水処理装置15、16は、アルカリ酸化反応槽22、中性酸化反応槽24、還元反応槽26、及び固液分離設備80を備え、水処理装置16は、還元反応槽26と固液分離設備80との間にさらに銅化合物添加槽28を備える。
図3~6に示すように、本実施形態の処理方法は、上述の還元反応液Wを得る工程(工程1C及び2C)を経た分離対象液Wを固液分離設備80に導入し、固液分離処理を行う工程(本明細書において、「固液分離工程」と記載することがある。)を含むことが好ましい。この固液分離工程を行う場合、固液分離処理を行う前に、廃水Wから分離対象液Wまでのいずれかの液に銅化合物を添加する工程(本明細書において、「銅化合物添加工程」と記載することがある。)をさらに含むことが好ましい。これによって、廃水中の鉄シアノ錯体等のシアン化合物と銅化合物とを反応させ、鉄シアノ錯体等のシアン化合物を難溶化させることが可能となる。そのため、固液分離工程において、銅化合物の添加によって難溶化された鉄シアノ錯体等のシアン化合物を分離対象液Wから分離除去することができる。
本明細書において、鉄シアノ錯体等のシアン化合物の難溶化とは、廃水中に存在する鉄シアノ錯体等のシアン化合物が、処理後に処理前よりも廃水に溶け難くなることをいう。また、鉄シアノ錯体等のシアン化合物の難溶化には、鉄シアノ錯体等のシアン化合物が廃水に溶けなくなる不溶化も含まれる。
固液分離設備80に導入される分離対象液Wは、還元反応液Wを得る工程を経た液であることから、還元反応液Wであってもよい。ただし、後述する通り、固液分離工程前に、還元反応液Wに凝集剤や第4級アンモニウム化合物を添加してもよいことから、固液分離設備80に導入される液を固液分離の対象であることを示す「分離対象液」と記載する。
[銅化合物]
銅化合物としては、銅(I)化合物及び銅(II)化合物の少なくとも1種を用いることができる。銅(I)化合物は1価の銅化合物(第一銅化合物)である。銅(I)化合物としては、例えば、塩化銅(I)、酸化銅(I)(亜酸化銅)、及び硫酸銅(I)等を挙げることができ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。また、銅(II)化合物は2価の銅化合物(第二銅化合物)である。銅(II)化合物としては、例えば、塩化銅(II)、酸化銅(II)、及び硫酸銅(II)等を挙げることができ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。
銅化合物を添加する際の銅化合物の形態としては、粉末状や溶媒に溶かした溶液状等を挙げることができ、溶液状が好ましい。なかでも、酸化銅(I)を塩酸等で溶液としたもの、酸化銅(II)を塩酸等で溶液としたもの、硫酸銅(II)水溶液等を用いることがより好ましい。
[銅化合物の添加量]
銅化合物の添加量は、廃水W中の全シアン濃度、及び目標とする処理水Wの全シアン濃度等に応じて適宜設定すればよいが、1~300mg-Cu/Lが好ましく、3~100mg-Cu/Lがより好ましい。また、アルカリ酸化反応液Wを得る工程以後で銅化合物添加工程前の液中のシアン含有量を予め測定し、その含有量に対して0.1モル等量以上の銅化合物を添加することも好ましい。
廃水W中の(重)炭酸イオン濃度が高い場合、(重)炭酸イオンと銅化合物とが反応及び難溶化して、銅化合物が消費されることから、シアン化合物の除去に必要な量の過剰量の銅化合物を添加するとよい。この場合、廃水W中の(重)炭酸イオン濃度を測定し、その(重)炭酸イオン濃度、及び必要に応じてpHとから好適な銅化合物の過剰添加分量を求めるとよい。(重)炭酸イオン濃度の測定方法は、特に限定されないが、無機炭素濃度(IC=Inorganic Carbon)によることもできるし、イオン電極法によることもできる。
[銅化合物の添加位置]
銅化合物の添加位置は、固液分離処理を行う前に、廃水Wから分離対象液Wまでのいずれかの液に銅化合物が添加される位置であればよい。銅(I)化合物は次亜塩素酸と反応すると銅(II)化合物に酸化され、鉄シアノ錯体を難溶化する能力を低減する可能性があるが、還元剤と反応すれば鉄シアノ錯体を難溶化する能力を回復すると考えられる。そのため、銅化合物は、廃水Wが処理される過程の廃水Wから分離対象液Wまでのどの位置に添加してもよい。
銅化合物の添加位置としては、図3及び図5に示すように、還元反応槽26から固液分離設備80の手前までの流路における任意の位置が好ましい。この場合、水処理装置13、15は、還元反応槽26で得られた還元反応液Wに銅化合物を添加するための装置(以下、「銅化合物添加装置」と記載することがある。)38を備えてもよい。また、銅化合物の添加位置としては、図4及び図6に示すように、還元反応槽26の後段に別途設けられた銅化合物添加槽28であることも好ましい。この場合、水処理装置14、16は、銅化合物添加槽28において、導入された還元反応液Wに銅化合物を添加するための銅化合物添加装置38を備えてもよい。
銅化合物添加工程は、分離対象液Wへの銅化合物の添加によって行われることがより好ましい。銅化合物と分離対象液Wとの混合が十分に行われる状態を実現できればよい。確実な撹拌状態の実現の観点からは、還元反応槽26内の分離対象液(還元反応液W)や、還元反応槽26の後段に別途設けられた銅化合物添加槽28内の分離対象液Wがさらに好ましく、設備構成の単純化の観点からは、還元反応槽26から固液分離設備80の手前までの流路における分離対象液Wがさらに好ましい。なお、銅化合物添加工程では、銅化合物とともに、還元剤を添加してもよい。この際に用いる還元剤としては、前述の還元反応槽26で用いる還元剤と同様のものを用いることができ、なかでも、亜硫酸塩、チオ硫酸塩、及び第一鉄塩が好ましい。
[固液分離処理の手法]
固液分離工程では、上述の通り、鉄シアノ錯体等のシアン化合物の難溶化物を分離除去することができるが、廃水や銅化合物添加工程で得られた分離対象液Wに、他の懸濁物質(SS)が含有されている場合、固液分離工程でSSを除去することもできる。固液分離工程における固液分離処理の手法としては、沈殿処理、膜分離処理、及びろ過処理等を挙げることができ、これらのなかでも、実際の廃水処理現場における処理のしやすさの観点から、沈殿処理が好ましい。
固液分離処理は、分離対象液Wに凝集剤を存在させた状態で行ってもよい。本実施形態の処理方法は、固液分離処理を行う前に、廃水Wから分離対象液Wまでのいずれかの液に、銅化合物の添加と同時又はその後に、凝集剤を添加することをさらに含むことが好ましい。より好ましくは、分離対象液Wに対して、銅化合物の添加と同時又はその後に、凝集剤を添加する。凝集剤としては、例えば、アルミニウム化合物(ポリ塩化アルミニウム及び硫酸アルミニウム等)及び第二鉄化合物(ポリ硫酸第二鉄及び塩化第二鉄等)等の無機凝集剤;並びに高分子凝集剤等を挙げることができ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。これらのなかでも、アルミニウム化合物及び第二鉄化合物のうちの1種又は2種以上の無機凝集剤がさらに好ましい。
また、固液分離工程後の処理水W中の水溶性銅濃度をさらに低減するため、固液分離処理を行う際に、水溶性銅を不溶化しうる薬剤を加えてもよい。具体的には、ジエチルジチオカルバミン酸等のジチオカルバミン酸化合物;硫化ナトリウム等の硫化物水溶性塩;並びにベンゾトリアゾール、及びトリルトリアゾール等のトリアゾール類;等を挙げることができる。
[第四級アンモニウム化合物]
本実施形態の処理方法は、固液分離処理を行う前に、還元反応槽26内の液、還元反応液W、又は分離対象液Wに、第4級アンモニウム化合物を添加することをさらに含むことが好ましい。それにより、シアノ錯体の除去性能をより高めることが可能である。第4級アンモニウム化合物は、還元反応槽26内の液、還元反応液W、又は分離対象液Wに添加するのであれば、銅化合物の添加よりも前に行ってもよいし、その後に行ってもよい。また、図示を省略するが、上述のように第4級アンモニウム化合物を添加するための装置を水処理装置13~16に設けてもよい。
第4級アンモニウム化合物は、第4級アンモニウムカチオンを有する化合物であり、モノマーでもよいし、ポリマーでもよい。第4級アンモニウム化合物としては、テトラアルキルアンモニウム化合物、及びカチオン性ポリマー等を好適に用いることができる。第4級アンモニウム化合物を添加する際の形態としては、粉末状や溶媒に溶かした溶液状等を挙げることができ、溶液状が好ましい。複数の種類の第4級アンモニウム化合物を用いてもよい。
テトラアルキルアンモニウム化合物としては、ジデシルジメチルアンモニウム塩、ヘキサデシルトリメチルアンモニウム塩、ジオクチルジメチルアンモニウム塩、ジドデシルジメチルアンモニウム塩、トリオクチルメチルアンモニウム塩、及びベンジルドデシルジメチルアンモニウム塩が好ましい。さらに、これらにおける第4級アンモニウムカチオンと対となる陰イオンが、ハロゲン化物イオンであるものが好ましく、塩化物イオン及び臭化物イオンであるものがより好ましい。
カチオン性ポリマーとしては、第4級アンモニウムカチオンを有するポリマーであればよく、例えば、ポリアクリル酸エステル系化合物、ポリメタクリル酸エステル系化合物、ポリアミン系化合物、ポリジアリルジアルキルアンモニウム塩系化合物、ジアリルジアルキルアンモニウム塩-アクリルアミド共重合体系化合物、ジメチルアミンとエピクロロヒドリンの重縮合物、並びにジメチルアミン、エピクロロヒドリン及びアンモニアの重縮合物等を挙げることできる。
[処理水性状の把握]
液中のシアン濃度が十分に低下しているかを確認するために、還元反応液Wを得る工程又は銅化合物添加工程を経た液をろ過して得られたろ液等の固液分離工程後の処理水Wについて、その処理水W中のシアン濃度をバッチ式又は連続式の測定装置を用いて測定することが好ましい。固液分離工程には一定程度の滞留時間があるため、即時に処理の状態を薬剤添加量等の処理条件に反映するためには、還元反応液Wを得る工程及び銅化合物添加工程後、固液分離工程前の分離対象液Wをろ過して得られたろ液を測定対象とすることが好ましい。銅化合物添加工程後の分離対象液Wを測定装置に導入する場合には、測定装置に至るまでの流路及び測定装置内におけるスケールの生成を防止する目的でスケール防止剤を添加してもよい。この場合に用いるスケール防止剤は特に限定されないが、窒素分(シアン濃度測定過程で副次的にシアンを生成することがあり、測定に正の妨害を生じることが知られている)を含まないものが好ましい。具体的には、ポリカルボン酸系スケール防止剤や有機酸系スケール防止剤が好ましい。複数のスケール防止剤を用いてもよい。
なお、本発明の一実施形態の廃水の処理方法は、次の構成をとることが可能である。
[1]アンモニア、チオシアン酸イオン、及びシアン化合物を含有する廃水の処理方法であって、
前記廃水をアルカリ酸化反応槽に導入し、前記廃水のpHを9.0以上11.5以下に調整するとともに、前記廃水に次亜塩素酸塩を添加して反応させ、少なくとも前記廃水中の前記チオシアン酸イオンを酸化分解してアルカリ酸化反応液を得る工程と、
前記アルカリ酸化反応液を還元反応槽に導入し、前記アルカリ酸化反応液のpHを6.0以上8.0以下に調整するとともに、前記アルカリ酸化反応液に還元剤を添加して反応させ、前記アルカリ酸化反応液中の残留塩素化合物を分解して還元反応液を得る工程と、を含み、
前記アルカリ酸化反応液を得る工程は、前記廃水中の前記次亜塩素酸塩の反応によって、酸化還元電位が350+59×(11-pH)mV以上700+59×(11-pH)mV以下の前記アルカリ酸化反応液を得る工程であり、
前記還元反応液を得る工程は、前記アルカリ酸化反応液中の前記還元剤の反応によって、酸化還元電位が400mV以下の前記還元反応液を得る工程である、廃水の処理方法。
[2]アンモニア、チオシアン酸イオン、及びシアン化合物を含有する廃水の処理方法であって、
前記廃水をアルカリ酸化反応槽に導入し、前記廃水のpHを9.0以上11.5以下に調整するとともに、前記廃水に次亜塩素酸塩を添加して反応させ、少なくとも前記廃水中の前記チオシアン酸イオンを酸化分解してアルカリ酸化反応液を得る工程と、
前記アルカリ酸化反応液を中性酸化反応槽に導入し、前記アルカリ酸化反応液のpHを6.0以上8.0以下に調整するとともに、前記アルカリ酸化反応液中に残留する前記次亜塩素酸塩、又は前記アルカリ酸化反応液にさらに添加される次亜塩素酸塩を反応させて、中性酸化反応液を得る工程と、
前記中性酸化反応液を還元反応槽に導入し、前記中性酸化反応液に還元剤を添加して反応させ、前記中性酸化反応液中の残留塩素化合物を分解して還元反応液を得る工程と、を含み、
前記アルカリ酸化反応液を得る工程は、前記廃水中の前記次亜塩素酸塩の反応によって、酸化還元電位が350+59×(11-pH)mV以上700+59×(11-pH)mV以下の前記アルカリ酸化反応液を得る工程であり、
前記中性酸化反応液を得る工程は、前記アルカリ酸化反応液中の前記次亜塩素酸塩の反応によって、酸化還元電位が650+59×(7-pH)mV以上950+59×(7-pH)mV以下の前記中性酸化反応液を得る工程であり、
前記還元反応液を得る工程は、前記中性酸化反応液中の前記還元剤の反応によって、酸化還元電位が400mV以下の前記還元反応液を得る工程である、廃水の処理方法。
[3]前記還元剤は、亜硫酸塩、チオ硫酸塩、及び第一鉄塩からなる群より選ばれる少なくとも1種である上記[1]又は[2]に記載の廃水の処理方法。
[4]前記アルカリ酸化反応液を得る工程は、前記廃水中に、Cu、Cu2+、及びZn2+からなる群より選択される少なくとも1種の金属イオンの存在下で行われる上記[1]~[3]のいずれかに記載の廃水の処理方法。
[5]前記アルカリ酸化反応液を得る工程の前に、前記廃水に、Cu、Cu2+、及びZn2+からなる群より選択される少なくとも1種の金属イオンを含有させる工程をさらに含む上記[1]~[4]のいずれかに記載の廃水の処理方法。
[6]前記還元反応液を得る工程を経た分離対象液を固液分離設備に導入し、固液分離処理を行う工程と、
前記固液分離処理を行う前に、前記廃水から前記分離対象液までのいずれかの液に銅化合物を添加する工程と、をさらに含み、
前記固液分離処理を行う工程は、前記銅化合物の添加によって難溶化されたシアン化合物を前記分離対象液から分離除去する工程である、上記[1]~[5]のいずれかに記載の廃水の処理方法。
[7]前記銅化合物を添加する工程は、前記分離対象液への前記銅化合物の添加によって行われる上記[6]に記載の廃水の処理方法。
[8]前記固液分離処理を行う前に、前記還元反応槽内の液、前記還元反応液、又は前記分離対象液に、第4級アンモニウム化合物を添加することをさらに含む、上記[6]又は[7]に記載の廃水の処理方法。
[9]前記固液分離処理を行う前に、前記廃水から前記分離対象液までのいずれかの液に、前記銅化合物の添加と同時又はその後に、凝集剤を添加することをさらに含む、上記[6]~[8]のいずれかに記載の廃水の処理方法。
以下、実施例を挙げて、本発明の一実施形態の廃水の処理方法を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
<測定方法>
以下の実験例及び実施例等に示される、チオシアン酸イオン(SCN)濃度はイオンクロマトグラフ法(参考文献:平木ら,分析化学,52(11),1019-1024)により、測定した。また、全シアン(T-CN)濃度、シアン化物イオン(F-CN)濃度、全窒素(T-N)、及びアンモニア態窒素(NH -N)濃度は、JIS 0102:2019に規定される方法により、測定した。塩化シアン(ClCN)濃度は、「水質基準に関する省令の規定に基づき厚生労働大臣が定める方法(平成15年厚生労働省告示第261号)」に基づいて、イオンクロマトグラフ-ポストカラム法により測定した。酸化還元電位(ORP)の測定には、ORP計(商品名「RM-30P」、東亜ディーケーケー社製。これに接続して用いるORP電極には「PST-2729C」(東亜ディーケーケー社製)を使用。)を用いた。
<予備実験例1>
予備実験例1では、アルカリ酸化反応槽におけるアルカリ酸化反応液を得る工程によって、廃水中のチオシアン酸イオン(SCN)を十分に除去し得るかを確認する実験を行った。予備実験例1では、廃水として、水温が35℃、pHが7.8、チオシアン酸イオン(SCN)濃度が40mg/L、全シアン(T-CN)濃度かつシアン化物イオン(CN;F-CN)濃度が3mg/L、アンモニア態窒素(NH -N)濃度が140mg/Lである模擬廃水(以下、単に「廃水」と記載することがある。)を用いた。
(実験方法)
廃水の適量をアルカリ酸化反応槽に見立てたビーカーに分取した。ビーカー内の廃水に、下記表1に示すpHとなる量の水酸化ナトリウムを添加するとともに、12質量%濃度の次亜塩素酸ナトリウム(NaClO)水溶液を、表1のアルカリ酸化反応槽の欄に示す酸化還元電位(ORP)となる量にて添加し、15分間撹拌した。その後、上記ビーカーを還元反応槽に見立て、そのビーカー内の液に、還元剤として、35質量%濃度の亜硫酸水素ナトリウム(NaHSO)水溶液を、ORPが330mVとなる量にて添加し、このとき、pH7.5になるように硫酸又は水酸化ナトリウムでpH調整を行いながら、15分間撹拌して、処理水を得た。この処理水のSCN濃度を測定した。その結果を表1の処理水の欄及び図7に示す。
Figure 0007454096000001
pH10.0の場合に、ORPが350mVとなるような次亜塩素酸塩の添加量では、チオシアン酸イオンがわずかに残存した。pH10.0の場合に、ORPが500mVとなるような次亜塩素酸塩の添加量においては、チオシアン酸イオンは1mg/L未満となった。ORPが350~500mVの間に、チオシアン酸イオンが完全に除去された際に到達するORPがあると考えられ、その程度を目標として次亜塩素酸塩を添加すれば、十分にチオシアン酸イオンを除去することができると考えられる。同様に、pH9.0の場合にORPが510mV、pH11.5の場合にORPが400mVとなるような次亜塩素塩の添加量において、チオシアン酸イオンは1mg/L未満となった。pH9.0の場合にORPが510mV、pH11.5の場合にORPが400mV程度を目標として次亜塩素酸塩を添加すれば十分にチオシアン酸イオンを除去することができると考えられる。
<実施例1>
〔廃水〕
実施例1シリーズ(実施例1-1~1-10及び比較例1-1~1-4)では、廃水として、水温が50℃、pHが7.8、チオシアン酸イオン(SCN)濃度が40mg/L、全シアン(T-CN)濃度かつシアン化物イオン(CN)濃度が5mg/L、全窒素(T-N)濃度が160mg/L、アンモニア態窒素(NH -N)濃度が140mg/Lである模擬廃水を用いた。
〔実験方法〕
(アルカリ酸化反応液を得る工程又はその比較工程)
廃水の適量をアルカリ酸化反応槽に見立てたビーカーに分取した。次いで、アルカリ酸化反応液を得る工程、又はそれと比較するための工程を行った。具体的には、ビーカー内の廃水に、下記表2-1のアルカリ酸化反応槽の欄に示すpHとなる量の水酸化ナトリウムを添加した。その後、ブランク試験である比較例1-1を除く例では、12質量%濃度の次亜塩素酸ナトリウム(NaClO)水溶液を、表2-1のアルカリ酸化反応槽の欄に示すORPとなる量にて添加し、硫酸又は水酸化ナトリウムでpHを維持しながら15分間撹拌した。ここで、SCN濃度及びF-CN濃度を測定した。その結果を表2-1のアルカリ酸化反応槽の欄の処理水質の欄に示す。
(中性酸化反応液を得る工程又はその比較工程)
上記アルカリ酸化反応槽での工程に次いで、実施例1-4、1-8、及び1-10を除く例(実施例1-1~1-3、1-5~1-7、及び1-9、並びに比較例1-1~1-4)では、中性酸化反応液を得る工程、又はそれと比較するための工程を行った。具体的には、上記ビーカーを中性酸化反応槽に見立て、そのビーカー内の液に、表2-1の中性酸化反応槽の欄に示すpHとなる量の硫酸を添加した。その後、比較例1-1及び比較例1-4を除く例(実施例1-1~1-3、1-5~1-7、及び1-9、並びに比較例1-2及び1-3)では、12質量%濃度の次亜塩素酸ナトリウム(NaClO)水溶液を、表2-1の中性酸化反応槽の欄に示すORPとなる量にて添加した。そして、硫酸又は水酸化ナトリウムでpHを維持しながら15分間撹拌した。比較例1-1及び比較例1-4では、この工程においてはNaClO水溶液を添加せずにORPを測定し、硫酸又は水酸化ナトリウムでpHを維持しながら15分間撹拌した。
一方、実施例1-4、1-8、及び1-10では、上記の中性酸化反応液を得る工程、又はそれと比較するための工程を行わず、上記アルカリ酸化反応槽での工程後すぐに(5分以内に)以下に述べる還元反応液を得る工程を行った。
(還元反応液を得る工程又はその比較工程)
その後、上記ビーカーを還元反応槽に見立て、そのビーカー内の液に、還元剤としての亜硫酸水素ナトリウム(NaHSO)水溶液を、表2-1の還元反応槽の欄に示すORPとなる量にて添加した。このとき、pHが7.5になるように硫酸又は水酸化ナトリウムでpH調整を行いながら、上記還元剤の添加を行い、15分間撹拌して、処理水を得た。ただし、比較例1-1では、亜硫酸水素ナトリウム水溶液の添加を行わなかった。得られた処理水の全シアン(T-CN)濃度、シアン化物イオン(F-CN)濃度、塩化シアン(ClCN)濃度、全窒素(T-N)濃度、アンモニア態窒素(NH -N)濃度を測定した。その結果を表2-2に示す。
Figure 0007454096000002
Figure 0007454096000003
pH9.0以上11.5以下で、ORPが350+59×(11-pH)mV以上700+59×(11-pH)mV以下となる量の次亜塩素酸塩を廃水に添加し、反応させたことで、F-CN濃度及びSCN濃度が低減したアルカリ酸化反応液を得ることができた(実施例1-1~1-10及び比較例1-4)。この結果より、ORPが上記範囲内となるように次亜塩素酸塩を廃水に添加することで、廃水中のシアン化物イオン及びチオシアン酸イオンを酸化分解することができると考えられた。なお、アルカリ酸化反応液を得る際の上記ORPの範囲は、具体的には、pH9.0の場合にORPが468~818mV、pH10.5の場合(後記実施例2及び3シリーズ参照)にORPが379.5~729.5mV、pH11.0の場合にORPが350~700mV、pH11.5の場合にORPが320.5~670.5mVである。
シアン化物イオン及びチオシアン酸イオンが十分に除去されていない場合に、pHを6.0以上8.0以下の範囲内の中性条件で次亜塩素酸塩を添加し、反応させた場合、塩化シアン(ClCN)が生成すると考えられた(比較例1-2及び1-3)。ClCNの生成を抑制するためには、上述の特定のアルカリ酸化反応液を得る工程が必要であることがわかった。
実施例1-1~1-3、1-5~1-7及び1-9では、比較例1-4に比べて、全窒素(T-N)濃度が低減した処理水を得ることができた。この結果、pH6.0以上8.0以下で中性酸化反応液を得る場合、ORPが650+59×(7-pH)mV以上950+59×(7-pH)mV以下となるように、アルカリ酸化反応液に残留又は添加する次亜塩素酸塩を反応させる必要があると考えられた。なお、中性酸化反応液を得る際の上記ORPの範囲は、具体的には、pH6.0の場合にORPが709~1009mV、pH7.0の場合(後記実施例2及び3シリーズ参照)にORPが650~950mV、pH7.5の場合にORPが620.5~920.5mV、pH8.0の場合にORPが591~891mVである。
また、実施例1-4、1-8、及び1-10の結果より、中性酸化反応液を得る工程を行わなくても、全窒素(T-N)濃度を低減することができた。一方、中性酸化反応液を得る工程を行った方が、T-N濃度をさらに低減することが可能であることがわかった(実施例1-1~1-3、1-5~1-7、及び1-9)。全窒素の除去の原因は、チオシアン酸イオンの分解により生じたシアン酸(CNO)中の窒素(N)が中性酸化反応槽で分解されたことによると考えられた。
アルカリ酸化反応槽では、チオシアン酸イオンを除去できる量の次亜塩素酸塩を添加し、アルカリ酸化反応槽と中性酸化反応槽の次亜塩素酸塩添加量の合計量がT-Nを十分に除去しうる量になるようにするとよいと考えられる。
<実施例2>
〔廃水〕
実施例2シリーズ(実施例2-1~2-6)では、廃水として、水温が50℃、pHが7.8、チオシアン酸イオン(SCN)濃度が40mg/L、全シアン(T-CN)濃度が5.0mg/L、全窒素(T-N)濃度が160mg/L、アンモニア態窒素(NH -N)濃度が140mg/Lである模擬廃水を用いた。
実施例2シリーズで用いる模擬廃水(廃水)中のT-CN濃度の内訳は、シアン化物イオン(F-CN)濃度が3mg/L、鉄シアノ錯体が2mg-CN/Lであった。この鉄シアノ錯体の内訳は、フェロシアン化物イオン濃度が0.8mg-CN/L、フェリシアン化物イオン濃度が0.1mg-CN/L、ペンタシアノモノカルボニル鉄(II)イオン濃度が0.6mg-CN/L、テトラシアノジカルボニル鉄(II)イオン濃度が0.5mg-CN/Lであった。これらの鉄シアノ錯体濃度は、液体クロマトグラフィー(LC;商品名「Alliance 2695」、日本ウォーターズ社製)に、誘導結合プラズマ質量分析計(ICP-MS;商品名「ICP-MS7500」、アジレント・テクノロジー社製)を検出器として結合させた装置(LC-ICP-MS)を用いて分析した(例えば特許文献2参照)。
〔実験方法〕
(廃水への金属イオンの添加)
上記廃水に表3-1の金属イオン欄に示す種類及び濃度にて金属イオンを含有させた。廃水へのCuの供給源としては、5質量%濃度の酸化銅(I)の塩酸溶液を用いた。廃水へのCu2+の供給源としては、5質量%濃度の硫酸銅(II)5水和物の水溶液を用いた。廃水へのZn2+の供給源としては、5質量%濃度の硫酸亜鉛7水和物の水溶液を用いた。
(アルカリ酸化反応液を得る工程)
Cu、Cu2+、又はZn2+を含有させた廃水の適量をアルカリ酸化反応槽に見立てたビーカーに分取した。次いで、アルカリ酸化反応液を得る工程を行った。具体的には、ビーカー内の廃水に、表3-1のアルカリ酸化反応槽の欄に示すpHとなる量の水酸化ナトリウムを添加した。その後、12質量%濃度の次亜塩素酸ナトリウム(NaClO)水溶液を、表3-1のアルカリ酸化反応槽の欄に示すORPとなる量にて添加し、硫酸又は水酸化ナトリウムでpHを維持しながら15分間撹拌した。なお、実施例1シリーズにおいて、アルカリ酸化反応液を得る工程により、F-CN濃度及びSCN濃度の低減が確認されたため、実施例2シリーズでは、アルカリ酸化反応液のF-CN濃度及びSCN濃度の測定を省略した。
(中性酸化反応液を得る工程)
上記アルカリ酸化反応槽での工程に次いで、中性酸化反応液を得る工程を行った。具体的には、上記ビーカーを中性酸化反応槽に見立て、そのビーカー内の液に、表3-1の中性酸化反応槽の欄に示すpHとなる量の硫酸を添加した。その後、12質量%濃度の次亜塩素酸ナトリウム(NaClO)水溶液を、表3-1の中性酸化反応槽の欄に示すORPとなる量にて添加し、硫酸又は水酸化ナトリウムでpHを維持しながら15分間撹拌した。
(還元反応液を得る工程)
その後、上記ビーカーを還元反応槽に見立て、そのビーカー内の液に、還元剤としての亜硫酸水素ナトリウム(NaHSO)水溶液を、表3-1の還元反応槽の欄に示すORPとなる量にて添加した。このとき、pHが7.0になるように硫酸又は水酸化ナトリウムでpH調整を行いながら、上記還元剤の添加を行い、15分間撹拌して、処理水を得た。この処理水の全シアン(T-CN)濃度、シアン化物イオン(F-CN)濃度、塩化シアン(ClCN)濃度、全窒素(T-N)濃度、アンモニア態窒素(NH -N)濃度を測定した。その結果を表3-2に示す。
Figure 0007454096000004
Figure 0007454096000005
実施例2-1~2-6の結果より、廃水にCu、Cu2+、又はZn2+を含有させ、それらの金属イオンの存在下でアルカリ酸化反応液を得る工程を行ったことにより、鉄シアノ錯体を含有する廃水に対しても、T-CN濃度を低減することができた。処理水のF-CN濃度は0.1mg/L未満であったことから、廃水中の上記特定の金属イオンの存在下でアルカリ酸化反応液を得る工程によって、鉄シアノ錯体の除去がより進むことがわかった。
<実施例3>
〔廃水〕
実施例3シリーズ(実施例3-1~3-6及び比較例3-1~3-3)では、廃水として、水温が50℃、pHが7.8、チオシアン酸イオン(SCN)濃度が40mg/L、全シアン(T-CN)濃度が19.5mg/L、全窒素(T-N)濃度が160mg/L、アンモニア態窒素(NH -N)濃度が140mg/Lである模擬廃水を用いた。
実施例3シリーズで用いる模擬廃水(廃水)中のT-CN濃度の内訳は、シアン化物イオン(F-CN)濃度が17mg/L、鉄シアノ錯体が2.5mg-CN/Lであった。この鉄シアノ錯体の内訳は、フェロシアン化物イオン濃度が1mg-CN/L、フェリシアン化物イオン濃度が0.2mg-CN/L、ペンタシアノモノカルボニル鉄(II)イオン濃度が0.7mg-CN/L、テトラシアノジカルボニル鉄(II)イオン濃度が0.6mg-CN/Lであった。これらの鉄シアノ錯体濃度は、実施例2シリーズで述べた方法と同様の方法で分析した。
〔実験方法〕
(アルカリ酸化反応液を得る工程又はその比較工程)
廃水の適量をアルカリ酸化反応槽に見立てたビーカーに分取した。次いで、アルカリ酸化反応液を得る工程、又はそれと比較するための工程を行った。具体的には、ビーカー内の廃水に、下記表4-1のアルカリ酸化反応槽の欄に示すpHとなる量の水酸化ナトリウムを添加した後、12質量%濃度の次亜塩素酸ナトリウム(NaClO)水溶液を、表4-1のアルカリ酸化反応槽の欄に示すORPとなる量にて添加し、硫酸又は水酸化ナトリウムでpHを維持しながら15分間撹拌した。ただし、比較例3-2では、この工程を行わなかった。なお、実施例1シリーズにおいて、アルカリ酸化反応液を得る工程により、F-CN濃度及びSCN-濃度の低減が確認されたため、実施例3シリーズでは、アルカリ酸化反応液のF-CN濃度及びSCN-濃度の測定を省略した。
(中性酸化反応液を得る工程又はその比較工程)
次いで、実施例3-5及び3-6を除く例(実施例3-1~3-4及び比較例3-1~3-3)において、中性酸化反応液を得る工程、又はそれと比較するための工程を行った。具体的には、上記ビーカーを中性酸化反応槽に見立て、そのビーカー内の液に、表4-1の中性酸化反応槽の欄に示すpHとなる量の硫酸を添加した後、12質量%濃度の次亜塩素酸ナトリウム(NaClO)水溶液を、表4-1の中性酸化反応槽の欄に示すORPとなる量にて添加し、硫酸又は水酸化ナトリウムでpHを維持しながら15分間撹拌した。
一方、実施例3-5及び3-6では、上記の中性酸化反応液を得る工程、又はそれと比較するための工程を行わず、上記アルカリ酸化反応槽での工程後すぐに(5分以内に)以下に述べる還元反応液を得る工程を行った。
(還元反応液を得る工程)
その後、上記ビーカーを還元反応槽に見立て、そのビーカー内の液に、還元剤としての亜硫酸水素ナトリウム(NaHSO)水溶液を、表4-1の還元反応槽の欄に示すORPとなる量にて添加した。このとき、pHが7.0になるように硫酸又は水酸化ナトリウムでpH調整を行いながら、上記還元剤の添加を行い、15分間撹拌し、還元反応液を得た。
そして、上記ビーカーを銅化合物添加槽に見立て、そのビーカー内の液(還元反応液)に、5質量%濃度の酸化銅(I)の(1+1)塩酸溶液を、CuOとしての添加量が表4-1の銅化合物添加槽の欄に示す量にて添加し、5分間撹拌した。ただし、実施例3-6では、銅化合物添加槽に見立てた反応は行わずに、上記の還元反応液を得る際に、還元反応槽に上記の酸化銅(I)の塩酸溶液を添加した。
また、実施例3-2では、銅化合物添加槽において、さらに第4級アンモニウム化合物であるジデシルジメチルアンモニウムクロリド(DDAC)の50質量%濃度の水溶液を、DDACとして30mg/L添加した。実施例3-3では、銅化合物添加槽において、さらに、無機凝集剤としてポリ塩化アルミニウム水溶液(10質量%Al)を20mg-Al/L添加した。実施例3-4では、銅化合物添加槽において、さらに、無機凝集剤としてポリ硫酸第二鉄水溶液(11質量%Fe)を20mg-Fe/L添加した。
その後、ビーカー内の液をろ紙(No.5C)でろ過し、得られたろ液を処理水として得た。その処理水の全シアン(T-CN)濃度、シアン化物イオン(F-CN)濃度、全窒素(T-N)濃度、アンモニア態窒素(NH -N)濃度、及びチオシアン酸イオン(SCN)濃度を測定した。その結果を表4-2に示す。
Figure 0007454096000006
Figure 0007454096000007
実施例3-1~3-6では、ClCNの生成を抑制しつつ、全窒素(T-N)及び全シアン(T-CN)の排水基準を高いレベルで満足する水質に処理できることが確認された。実施例3-2では、固液分離処理を行う前に、分離対象液に、銅化合物の添加に加えて、さらに第4級アンモニウム化合物を添加したことにより、処理水のT-CN濃度をさらに低減できたことが確認された。実施例3-3及び3-4では、固液分離処理を行う前に、分離対象液に、銅化合物の添加に加えて、さらに無機凝集剤(アルミニウム化合物、又は第二鉄化合物)を添加したことにより、目視にて凝集沈降性の向上が確認された。実施例3-5及び3-6の結果より、中性酸化反応液を得る工程を行わなくても、T-N及びT-CNの排水基準を高いレベルで満足する処理水が得られることが確認された。一方、中性酸化反応液を得る工程を行うことで、T-N濃度をさらに低減できることが確認された。なお、実施例3-6では、還元性物質である銅化合物を、還元反応槽に添加していることから、還元反応槽のORPが低い値となった。
比較例3-1の結果より、アルカリ酸化反応槽において、ORPが350+59×(11-pH)mVに満たない程度の次亜塩素酸塩の添加量では、全シアン及び全窒素を十分に除去できないことが確認された。比較例3-2の結果より、アルカリ酸化反応液を得る工程を行わずに、中性酸化反応液を得る工程を行う場合、全シアンを十分に除去できないことが確認されたことから、塩化シアンが生成したと考えられる。比較例3-3の結果より、還元反応槽におけるORPが400mVを超える場合、全シアンを十分に除去できないことが確認された。
実施例3-1~3-6において、アルカリ酸化処理から還元反応処理までの工程でペンタシアノニトロシル鉄(III)イオン[Fe(NO)(CN)2-が生成され得るが、銅化合物添加工程において、CuO添加により、又はCuO及びDDAC添加により全シアンが十分に低減されることが確認された。
11、12、13、14、15、16 水処理装置
22 アルカリ酸化反応槽
24 中性酸化反応槽
26 還元反応槽
28 銅化合物添加槽
32、34 次亜塩素酸塩添加装置
36 還元剤添加装置
38 銅化合物添加装置
42、44、46 pH調整剤添加装置
52、54、56 ORP計
62、64、66 pH計
70 撹拌機構
80 固液分離設備
廃水
アルカリ酸化反応液
中性酸化反応液
還元反応液
分離対象液
処理水

Claims (9)

  1. アンモニア、チオシアン酸イオン、及びシアン化合物を含有する廃水の処理方法であって、
    前記廃水をアルカリ酸化反応槽に導入し、前記廃水のpHを9.0以上11.5以下に調整するとともに、前記廃水に次亜塩素酸塩を添加して反応させ、少なくとも前記廃水中の前記チオシアン酸イオンを酸化分解してアルカリ酸化反応液を得る工程と、
    前記アルカリ酸化反応液を還元反応槽に導入し、前記アルカリ酸化反応液のpHを6.0以上8.0以下に調整するとともに、前記アルカリ酸化反応液に還元剤を添加して反応させ、前記アルカリ酸化反応液中の残留塩素化合物を分解して還元反応液を得る工程と、を含み、
    前記アルカリ酸化反応液を得る工程は、前記廃水中の前記次亜塩素酸塩の反応によって、酸化還元電位が350+59×(11-pH)mV以上700+59×(11-pH)mV以下の前記アルカリ酸化反応液を得る工程であり、
    前記還元反応液を得る工程は、前記アルカリ酸化反応液中の前記還元剤の反応によって、酸化還元電位が400mV以下の前記還元反応液を得る工程である、廃水の処理方法。
  2. アンモニア、チオシアン酸イオン、及びシアン化合物を含有する廃水の処理方法であって、
    前記廃水をアルカリ酸化反応槽に導入し、前記廃水のpHを9.0以上11.5以下に調整するとともに、前記廃水に次亜塩素酸塩を添加して反応させ、少なくとも前記廃水中の前記チオシアン酸イオンを酸化分解してアルカリ酸化反応液を得る工程と、
    前記アルカリ酸化反応液を中性酸化反応槽に導入し、前記アルカリ酸化反応液のpHを6.0以上8.0以下に調整するとともに、前記アルカリ酸化反応液中に残留する前記次亜塩素酸塩、又は前記アルカリ酸化反応液にさらに添加される次亜塩素酸塩を反応させて、中性酸化反応液を得る工程と、
    前記中性酸化反応液を還元反応槽に導入し、前記中性酸化反応液に還元剤を添加して反応させ、前記中性酸化反応液中の残留塩素化合物を分解して還元反応液を得る工程と、を含み、
    前記アルカリ酸化反応液を得る工程は、前記廃水中の前記次亜塩素酸塩の反応によって、酸化還元電位が350+59×(11-pH)mV以上700+59×(11-pH)mV以下の前記アルカリ酸化反応液を得る工程であり、
    前記中性酸化反応液を得る工程は、前記アルカリ酸化反応液中の前記次亜塩素酸塩の反応によって、酸化還元電位が650+59×(7-pH)mV以上950+59×(7-pH)mV以下の前記中性酸化反応液を得る工程であり、
    前記還元反応液を得る工程は、前記中性酸化反応液中の前記還元剤の反応によって、酸化還元電位が400mV以下の前記還元反応液を得る工程である、廃水の処理方法。
  3. 前記還元剤は、亜硫酸塩、チオ硫酸塩、及び第一鉄塩からなる群より選ばれる少なくとも1種である請求項1又は2に記載の廃水の処理方法。
  4. 前記アルカリ酸化反応液を得る工程は、前記廃水中に、Cu、Cu2+、及びZn2+からなる群より選択される少なくとも1種の金属イオンの存在下で行われる請求項1又は2に記載の廃水の処理方法。
  5. 前記アルカリ酸化反応液を得る工程の前に、前記廃水に、Cu、Cu2+、及びZn2+からなる群より選択される少なくとも1種の金属イオンを含有させる工程をさらに含む請求項1又は2に記載の廃水の処理方法。
  6. 前記還元反応液を得る工程を経た分離対象液を固液分離設備に導入し、固液分離処理を行う工程と、
    前記固液分離処理を行う前に、前記廃水から前記分離対象液までのいずれかの液に銅化合物を添加する工程と、をさらに含み、
    前記固液分離処理を行う工程は、前記銅化合物の添加によって難溶化されたシアン化合物を前記分離対象液から分離除去する工程である、請求項1又は2に記載の廃水の処理方法。
  7. 前記銅化合物を添加する工程は、前記分離対象液への前記銅化合物の添加によって行われる請求項6に記載の廃水の処理方法。
  8. 前記固液分離処理を行う前に、前記還元反応槽内の液、前記還元反応液、又は前記分離対象液に、第4級アンモニウム化合物を添加することをさらに含む、請求項6に記載の廃水の処理方法。
  9. 前記固液分離処理を行う前に、前記廃水から前記分離対象液までのいずれかの液に、前記銅化合物の添加と同時又はその後に、凝集剤を添加することをさらに含む、請求項6に記載の廃水の処理方法。

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