JP2020025955A - シアン含有水の処理方法 - Google Patents

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隼人 天田
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亨 西内
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宏拓 竹内
康平 市川
Kohei Ichikawa
康平 市川
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Abstract

【課題】鉄カルボニルシアノ錯体を含有する被処理水に適用することで、被処理水中で鉄カルボニルシアノ錯体を分解することが可能なシアン含有水の処理方法を提供する。【解決手段】[Fe(CN)5(CO)]3−及び[Fe(CN)4(CO)2]2−のいずれか一方又は両方の鉄カルボニルシアノ錯体を含有する被処理水に、酸化剤を含有させ、かつ、紫外線及び可視光線のいずれか一方又は両方の電磁波を照射した条件下で反応させる、シアン含有水の処理方法を提供する。【選択図】なし

Description

本発明は、シアン含有水の処理方法に関する。
メッキを行う工場、石炭工場、コークス工場、及びコークスを大量に使用する工場等から排出される廃水には、シアン成分が含有されている場合がある。そのシアン成分は、シアン化ナトリウム等のシアン化物、シアン化物イオン(遊離シアン;CN)、並びにフェロシアン化物イオン([Fe(CN)4−)及びフェリシアン化物イオン([Fe(CN)3−)等の鉄シアノ錯体(錯イオン)等を含む。
シアン含有廃水中のシアン化物イオンの処理方法としては、アルカリ塩素法等に代表される酸化分解法が古くから行われてきている。そのアルカリ塩素法では、一般的に次亜塩素酸ナトリウムをシアン含有廃水にアルカリ性下で添加することで、廃水中のシアン化物、シアン化物イオン、亜鉛シアノ錯体、銅シアノ錯体、及び銀シアノ錯体等を処理することができる。その一方、例えば鉄シアノ錯体等のように、金属イオンと大きな結合力をもって錯体化したシアン化合物の分解は難しい。
上述のアルカリ塩素法では分解が困難な鉄シアノ錯体を含有する廃水を処理する方法について、種々の検討及び提案がなされている。例えば、特許文献1では、シアン化物イオン及びシアノ錯体を含有する被処理水に次亜塩素酸ナトリウムを添加する工程、被処理水に亜硫酸ナトリウムを添加して被処理水中に残存する次亜塩素酸ナトリウムを分解する工程、及び酸を添加して酸性にした被処理水に第一鉄塩を添加して不溶性の鉄シアノ錯体を得る工程等を含む排水処理方法が提案されている。また、特許文献2では、シアン化合物を含有する被処理水に、硫酸銅、及び重亜硫酸ナトリウムを添加して難溶性塩を生成させて分離する工程と、その工程の処理水にアルカリ性条件下にて次亜塩素酸ナトリウムを添加して該処理水中のシアン化合物を酸化する工程とを有する処理方法が提案されている。
さらに、シアン含有廃水に、フェロシアン化物イオン及びフェリシアン化物イオン以外の他の鉄−シアン化合物が含有されている場合、そのような鉄−シアン化合物を有効に除去しきれない場合があり、シアンの除去処理がより困難となる。そのような鉄−シアン化合物を含有する廃水に対しても、有効に処理を行うことが可能な方法が特許文献3及び4に提案されている。特許文献3には、シアン化物イオン、フェロシアン化物イオン、フェリシアン化物イオン、及び鉄カルボニルシアノ錯体を含有する廃水に、銅化合物、還元剤、及び第4級アンモニウム化合物を添加し、廃水中のシアン成分を難溶化する工程と、難溶化されたシアン成分を固液分離する工程と、を含む廃水の処理方法が開示されている。特許文献4には、シアン化物イオン、フェロシアン化物イオン、フェリシアン化物イオン、及び鉄カルボニルシアノ錯体を含有する廃水に、過酸化水素、銅化合物、及び還元剤を添加して反応させた後、その反応液を固液分離し、反応液中に生じた難溶性シアン化合物を分離除去する廃水の処理方法が開示されている。
特開2009−254959号公報 特開2008−036608号公報 特開2018−039004号公報 特開2018−069227号公報
特許文献3及び4で提案されたような処理方法によれば、それらで提案されるまでの従来の不溶化処理技術によってはシアン含有廃水中から除去困難であった鉄カルボニルシアノ錯体を有効に除去処理することができる。一方、シアン含有廃水中の分解処理が困難な鉄シアノ錯体や鉄カルボニルシアノ錯体を不溶化処理した後、固液分離処理により不溶化処理物を除去するという不溶化技術においては、不溶化処理物のスラッジ(シアン含有スラッジ)が発生し、二次処分が必要となる。また、シアン含有スラッジからの溶出による二次汚染が発生する可能性もある。
上述のような実情から、分解処理や不溶化処理が困難であった鉄カルボニルシアノ錯体を含有する被処理水に対して、その鉄カルボニルシアノ錯体を被処理水中で分解及び無害化し得る技術も望まれている。
そこで、本発明は、鉄カルボニルシアノ錯体を含有する被処理水に適用することで、被処理水中で鉄カルボニルシアノ錯体を分解することが可能なシアン含有水の処理方法を提供しようとするものである。
本発明は、[Fe(CN)(CO)]3−及び[Fe(CN)(CO)2−のいずれか一方又は両方の鉄カルボニルシアノ錯体を含有する被処理水に、酸化剤を含有させ、かつ、紫外線及び可視光線のいずれか一方又は両方の電磁波を照射した条件下で反応させる、シアン含有水の処理方法を提供する。
本発明によれば、鉄カルボニルシアノ錯体を含有する被処理水に適用することで、被処理水中で鉄カルボニルシアノ錯体を分解することが可能なシアン含有水の処理方法を提供することができる。
本発明の一実施形態のシアン含有水の処理方法を実行し得る処理システムの一例の概略構成を表す説明図である。 本発明の一実施形態のシアン含有水の処理方法を適用することを想定した場合の排出ガスの洗浄廃水の処理システムの一例の概略構成を表す説明図である。 本発明の一実施形態のシアン含有水の処理方法を実行し得る処理システムの別の一例の概略構成を表す説明図である。 試験例Aにおいて測定された全シアン(T−CN)濃度(mg/L)と反応時間(分)との関係を表したグラフである。 試験例Bにおいて測定された全シアン(T−CN)濃度(mg/L)と反応時間(分)との関係を表したグラフである。 試験例Bにおいて、被処理水、並びに紫外線の照射開始から30分後及び60分後に得られた処理水のそれぞれについて、液体クロマトグラフィー−誘導結合プラズマ質量分析(LC−ICP−MS)により測定された、鉄化合物のクロマトグラムである。
以下、本発明の実施の形態について説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではない。
本発明の一実施形態のシアン含有水の処理方法は、[Fe(CN)(CO)]3−及び[Fe(CN)(CO)2−のいずれか一方又は両方の鉄カルボニルシアノ錯体を含有する被処理水に、酸化剤を含有させ、かつ、紫外線及び可視光線のいずれか一方又は両方の電磁波を照射した条件下で反応させる。
上記被処理水に、酸化剤を含有させることと、紫外線及び/又は可視光線を照射することのうちのいずれか一方の処理のみであると、被処理水中の上記鉄カルボニルシアノ錯体をほとんど分解することができない。それに対して、本発明の一実施形態の処理方法では、上記被処理水に、酸化剤を含有させ、かつ、紫外線及び/又は可視光線を照射した条件下で反応させることにより、上記被処理水中で上記鉄カルボニルシアノ錯体を分解することができ、無害化することが可能となる。
また、従来、分解処理が困難な鉄シアノ錯体を不溶化処理した後、固液分離処理により不溶化処理物を除去するという不溶化技術においては、不溶化処理物のスラッジ(シアン含有スラッジ)が発生し、二次処分が必要である。それに対し、本発明の一実施形態の処理方法では、上述の通り、被処理水中で、上記鉄カルボニルシアノ錯体を分解できるため、二次汚染の可能性を低減でき、また、二次処分を不要にできる可能性があり、事業展開上、有利な方法として期待できる。
本明細書において、「被処理水」とは、本発明の一実施形態の処理方法による処理が行われる対象となる液体であって、少なくとも水と、[Fe(CN)(CO)]3−及び[Fe(CN)(CO)2−のいずれか一方又は両方を含有する液体をいう。この被処理水は、上記鉄カルボニルシアノ錯体のほか、シアン成分として、シアン化物イオン(CN;遊離シアン)、フェロシアン化物イオン([Fe(CN)4−;ヘキサシアノ鉄(II)酸イオン)、及びフェリシアン化物イオン([Fe(CN)3−;ヘキサシアノ鉄(III)酸イオン)からなる群より選択される1種又は2種以上を含有していてもよい。また、被処理水は、上述の各錯体(錯イオン)の塩(錯塩)及びその水和物等を含有してもよい。上記のような被処理水についても、本発明の一実施形態の処理方法によって、被処理水中でシアン化物イオン、フェロシアン化物イオン、及びフェリシアン化物イオン等を分解することが可能である。
上記鉄カルボニルシアノ錯体は、ペンタカルボニル鉄(Fe(CO))等の鉄カルボニル錯体と、シアン化水素(HCN)又はCNとが共存する環境;鉄(II)イオン(Fe2+)、一酸化炭素(CO)、及びHCN又はCNが共存する環境;[Fe(CN)4−及びCOが共存する環境;等のような環境下でそれらが反応して生成すると考えられる。例えば、メッキを行う工場から排出される廃水では、CNと鉄塩が共存する可能性はあるものの、COやペンタカルボニル鉄が存在する可能性は低いと考えられ、上述のような環境はまれであると考えられる。それゆえ、従来のシアン含有水の処理技術においては、上述のような環境から生じ得る鉄カルボニルシアノ錯体が処理対象となることもまれであったと考えられる。本発明者らの検討により、コークスを燃料とする炉から発生する排出ガス中にペンタカルボニル鉄が含有されていたことが確認され、それは、炉の操業状態に応じて大きく変動し得ることがわかった。ペンタカルボニル鉄は100℃以下の低温領域で分解を開始する性質があるとされているため、炉内の温度分布によってペンタカルボニル鉄の排出ガス中の含有量が変動するものと考えられる。この温度分布はコークスの性状(及びコークス原料である石炭の性状)が支配因子の一つとなっている可能性がある。上述のようなことから、好適な被処理水の一例としては、排出ガスの洗浄廃水を挙げることができる。
被処理水中の[Fe(CN)(CO)]3−及び[Fe(CN)(CO)2−の存在は、液体クロマトグラフィー−誘導結合プラズマ質量分析(LC−ICP−MS)装置を用いた分析により、確認することができる。このLC−ICP−MS装置は、液体クロマトグラフィー(LC)の検出器として、金属を種類別に定量可能な分析装置である誘導結合プラズマ質量分析(ICP−MS)装置を備えるため、金属の種類ごとにクロマトグラムを得ることができるものである。前述の特許文献3及び4に開示されているように、LC−ICP−MSにより、以下の測定条件で測定される、被処理水中の鉄化合物のクロマトグラムにおいて、[Fe(CN)(CO)]3−は保持時間460〜520秒の間に、[Fe(CN)(CO)2−は保持時間540〜600秒の間に検出される。また、[Fe(CN)4−は保持時間390〜410秒の間に、[Fe(CN)3−は保持時間600〜620秒の間に検出される。
LC−ICP−MSの測定条件は次の通りである。
カラム;ODSカラム(粒子径5μm、内径4.6mm、カラム長150mm、2連)
移動相;アセトニトリルと25mMリン酸緩衝液(pH7.0、イオンペア試薬として15mMリン酸二水素テトラブチルアンモニウムを含む)との体積比40:60の混合物
流速;0.8mL/分
カラム温度;40℃
注入量;50〜100μL
上記被処理水に含有させる酸化剤は、過酸化水素、次亜塩素酸塩、次亜臭素酸塩、及びオゾンからなる群より選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。酸化剤として、過酸化水素、次亜塩素酸塩、及び次亜臭素酸塩を用いる場合には、水溶液等の溶液状として、被処理水に含有させることが好ましい。酸化剤として、オゾンを用いる場合には、オゾンを含む気体として、被処理水に含有させることが好ましい。次亜塩素酸塩及び次亜臭素酸塩における塩を形成する陽イオンとしては、例えば、ナトリウムイオン、カリウムイオン、カルシウムイオン、アンモニウムイオン、及び有機アンモニウムイオン等を挙げることができる。次亜塩素酸塩の好適例としては、次亜塩素酸ナトリウム、及び次亜塩素酸カルシウム等を挙げることができる。次亜臭素酸塩の好適例としては、次亜臭素酸ナトリウム等を挙げることができる。酸化剤の中でも過酸化水素を用いることがさらに好ましい。
本方法では、被処理水に酸化剤を含有させ、被処理水に含有させた酸化剤を、紫外線及び可視光線のいずれか一方又は両方の電磁波を照射した条件下で反応させ、被処理水中の上記鉄カルボニルシアノ錯体と酸化剤とを反応させる。酸化剤の添加量は、被処理水に対して、1〜10000mg/Lであることが好ましく、5〜2500mg/Lであることがより好ましく、10〜1000mg/Lであることがさらに好ましい。
可視光線については、JIS Z 8120:2001において「一般に可視放射の波長範囲の短波長限界は360〜400nm、長波長限界は760〜830nmにあると考えてよい。」と定義されている。この定義を考慮して、本明細書においては、波長が380nm以上795nm以下の範囲内にある電磁波を可視光線ということとする。また、紫外線については、JIS Z 8120:2001において「単色光成分の波長が可視放射の波長より短く、およそ1nmより長い放射。」と定義されている。この定義を考慮して、本明細書においては、波長が1nmを超えて380nm未満の範囲内にある電磁波を紫外線ということとする。
本方法において、被処理水に照射する電磁波(紫外線及び/又は可視光線)の波長は、被処理水中の鉄カルボニルシアノ錯体の分解能の観点から、420nm以下であることが好ましく、400nm以下であることがより好ましく、370nm以下であることがさらに好ましい。したがって、電磁波としては、波長が380nm以上420nm以下の可視光線や、紫外線を用いることがより好ましく、波長が10nm以上370nm以下の紫外線を用いることがさらに好ましい。
被処理水に対する電磁波(紫外線及び/又は可視光線)の照射時間(反応時間)としては、3〜240分が好ましく、5〜120分がより好ましい。また、被処理水への電磁波(紫外線及び/又は可視光線)の照射条件下で被処理水に酸化剤を反応させる際の被処理水の温度(反応温度)は、5〜80℃であることが好ましく、10〜60℃であることがより好ましく、20〜50℃であることがさらに好ましい。
酸化剤を含有させた被処理水に紫外線及び/又は可視光線を照射した条件で酸化剤を反応させる際には、酸化剤を含有させた被処理水のpHを6以上にすることが好ましい。この際、上記被処理水のpHを監視しながら、pHを6以上に維持することが好ましい。その際、pH調整剤として、酸(例えば塩酸及び硫酸等)やアルカリ(例えば水酸化ナトリウム及び炭酸ナトリウム等)を用いることができる。上記被処理水のpHとしては、6〜12の範囲にすることがより好ましく、6.5〜9.5の範囲にすることがさらに好ましい。
上記被処理水に酸化剤を紫外線及び/又は可視光線の照射条件下で反応させて、被処理水中の上記鉄カルボニルシアノ錯体を分解し、被処理水中に水酸化鉄を生成させることができる。被処理水中に生成された水酸化鉄は、固液分離処理により、除去することが好ましい。固液分離処理としては、例えば、沈殿処理、凝集・沈殿処理、膜分離処理、砂ろ過処理などを挙げることができる。水酸化鉄は沈殿物として生じやすいこと、また、連続的に処理を行いやすいことから、沈殿処理が好ましい。
図1に本発明の一実施形態のシアン含有水の処理方法を実行し得る処理システム及び処理フローの一例の概略構成を表す説明図を示す。このシアン含有水の処理システム10は、上記被処理水Wに酸化剤を添加し、かつ、紫外線及び/又は可視光線の照射条件下で反応させる反応槽16を備える。この反応槽16において、上記鉄カルボニルシアノ錯体を分解することができる。反応槽16には、酸化剤を添加するための酸化剤添加装置(例えば、タンク、ポンプ、及び供給管等)や、反応槽16内で紫外線を照射する紫外線照射装置、反応槽16内で可視光線を照射する可視光線照射装置等を設けることができる。紫外線照射装置や可視光線照射装置は、反応槽16内で紫外線及び可視光線のうちの少なくとも一方を照射することが可能な電磁波照射装置であってもよく、紫外線及び/又は可視光線の照射機構を備えた装置であればよい。これらの装置は、被処理水に対して、紫外線及び可視光線のうちの少なくとも一方を、反応槽16の上部から照射するものであってもよく、反応槽16の下部(底部)から照射するものであってもよく、反応槽16内の液(被処理水)中で照射するものであってもよい。
また、図1に示すように、上記被処理水Wを反応槽16に送る前の段階において、被処理水Wを貯留させる調整槽14を設けてもよい。この調整槽14を設けることによって、被処理水Wの性状が変動する場合のその性状の平均化、及び被処理水Wの流入量が変動する場合に反応槽16に安定して一定程度の量を送る効果が期待できる。さらに、反応槽16において、酸化剤を反応させた被処理水(酸化剤による反応水)においては、上述の通り、水酸化鉄が生じ得ることから、その被処理水(反応水)から水酸化鉄を除去するための固液分離部18を設けてもよい。固液分離部18として、シックナー等の沈殿槽を用いることができるほか、各種のろ過器及び膜分離機等を用いることもできる。
固液分離部18によって、例えば上述の水酸化鉄等の固体とは分離された処理水Wを得ることができ、この処理水Wを放流することができる。また、シアン含有水の処理システム10は、固液分離部18により処理水Wとは分離されたスラリー(例えば沈殿物)Sを脱水処理し、脱水ケーキCを得る脱水機5を備えていてもよい。そして、脱水機5にて生じた脱離液(脱水ろ液)Wを、上述した調整槽14に戻してもよい。このようにして、連続的な処理を行うことが好ましい。
前述の通り、被処理水Wとしては、排出ガスの洗浄廃水が好適であることから、本発明の一実施形態のシアン含有水の処理方法を、排出ガスの洗浄廃水の処理システムに適用することもできる。図2は、本発明の一実施形態のシアン含有水の処理方法を適用することを想定した場合の排出ガスの洗浄廃水の処理システム及び処理フローの一例の概略構成を表す説明図である。なお、図面における各図で共通する部分については同一の符号を付し、その説明を省略することがある。
図2に示す排出ガスGの洗浄廃水の処理システム20は、排出ガスGを連続的に洗浄する湿式集塵機(ベンチュリスクラバー)2と、湿式集塵機2から得られた集塵水Wを沈降分離処理する沈殿槽3と、沈降分離により得られた上澄み液Wを一次処理水として貯留する一次処理水槽4とを備える。また、一次処理水槽4に送られた上澄み液Wの一部は、循環水Wとして、補給水Wが加えられつつ湿式集塵機2に戻されて、排出ガスGの洗浄に循環使用されてもよい。さらに、沈殿槽3で沈降分離により得られた沈殿物Sを脱水処理する脱水機5を設けてもよく、脱水機5により処理された一部は脱水ケーキCとして処理され、また別の一部は脱離液(脱水ろ液)Wとして沈殿槽3に再送されてもよい。
上述の一次処理水槽4における一次処理水に上記鉄カルボニルシアノ錯体が含有されている場合に、その一次処理水を、本発明の一実施形態のシアン含有水の処理方法における処理対象である被処理水Wとすることができる。図2に示す処理システム20では、一次処理水槽4における被処理水Wをブロー水として、前述と同様の反応槽16に送り、反応槽16で紫外線及び/又は可視光線の照射条件下で酸化剤を反応させた被処理水(反応水)を、前述と同様の固液分離部18に送る場合が例示されている。なお、図2では、反応槽16と固液分離部18との間に、中継槽17を設けた場合を例示するが、中継槽17は設けなくてもよい。
本発明の一実施形態のシアン含有水の処理方法は、従来のいわゆる不溶化処理と組み合わせることもできる。すなわち、[Fe(CN)(CO)]3−及び/又は[Fe(CN)(CO)2−を含む廃水(シアン含有廃水)中のシアン成分を難溶化処理した後に固液分離処理して得られた、鉄カルボニルシアノ錯体の難溶化物を含有するスラリーを、前述の被処理水として、処理することができる。この方法は、上記鉄カルボニルシアノ錯体を含む廃水(シアン含有廃水)について難溶化処理を行う工程と、その工程により得られた、上記鉄カルボニルシアノ錯体の難溶化物を含む難溶化処理水を固液分離処理する工程と、その工程により得られた、鉄カルボニルシアノ錯体の難溶化物を含有するスラリーに酸化剤を含有させ、かつ、紫外線及び/又は可視光線を照射した条件下で反応させる工程とを含むことができる。図3に、その処理方法を実行し得るシアン含有廃水の処理システム及び処理フローの一例の概略構成を表す説明図を示す。
図3に示す処理システム30は、シアン含有廃水W中のシアン成分を難溶化する難溶化処理槽19と、難溶化処理槽19で得られた難溶化処理水Wを固液分離する固液分離部18と、固液分離部18で得られた難溶化物含有スラリーSに酸化剤を含有させ、かつ、紫外線及び/又は可視光線を照射した条件下で反応させる反応槽16とを備える。本明細書において、シアン成分の難溶化とは、廃水(原水)中に存在するシアン成分が、処理後に処理前よりも廃水に溶け難くなることをいう。また、シアン成分の難溶化には、シアン成分が廃水に溶けなくなる不溶化(シアン成分の不溶化)も含まれる。
難溶化処理を行う工程(難溶化処理槽19)では、上記シアン含有廃水W中の上記鉄カルボニルシアノ錯体等のシアン成分を難溶化する。例えば、いわゆる紺青法のように、シアン含有廃水Wに、硫酸鉄(II)等の鉄塩を添加して難溶化物を生成させる方法をとることができる。また、例えば、いわゆる還元銅塩法のように、シアン含有廃水Wに、硫酸銅(II)等の第二銅塩とともに還元剤を添加して、第一銅塩を生成させ、その第一銅塩によって難溶化物を生成させる方法をとることができる。難溶化処理を行う工程では、シアン含有廃水Wに、特許文献3で提案されているように、銅化合物、還元剤、及び第4級アンモニウム化合物の組み合わせを添加することや、特許文献4で提案されているように、過酸化水素、銅化合物、及び還元剤の組み合わせを添加することが好ましい。
銅化合物としては、例えば、塩化銅(I)、酸化銅(I)、及び硫酸銅(I)等の1価の銅化合物(第一銅化合物)、並びに塩化銅(II)、及び硫酸銅(II)等の2価の銅化合物(第二銅化合物)等を挙げることができ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。また、難溶化処理を行う工程(難溶化処理槽19)では、鉄塩等の鉄化合物を用いてもよい。鉄化合物としては、例えば、塩化鉄(II)、硫酸鉄(II)、及び硝酸鉄(II)等の2価の鉄化合物(第一鉄化合物)、並びに塩化鉄(III)、硫酸鉄(III)、及び硝酸鉄(III)等の3価の鉄化合物(第二鉄化合物)等を挙げることができ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。
還元剤としては、チオ硫酸塩、亜硫酸塩、重亜硫酸塩、塩化第一鉄、並びに硫化ナトリウム及び四硫化ナトリウム等のアルカリ金属硫化物等を挙げることができる。チオ硫酸塩、亜硫酸塩、及び重亜硫酸塩における塩を形成する陽イオンとしては、例えば、ナトリウムイオン、カリウムイオン、カルシウムイオン、アンモニウムイオン、及び有機アンモニウムイオン等を挙げることができる。また、第4級アンモニウム化合物は、モノマー及びポリマーのいずれを用いてもよく、例えば、テトラアルキルアンモニウム化合物、及びカチオン性ポリマー等を用いることができる。
難溶化処理槽19で得られた難溶化処理水Wを固液分離処理する工程(固液分離部18)では、難溶化処理水W中の難溶化された鉄カルボニルシアノ錯体等を含む難溶化物と処理水W10とを分離することができる。固液分離の処理としては、沈殿処理、凝集・沈殿処理、膜分離処理、及びろ過処理等を用いることができる。この際、難溶化処理水W中の難溶化物の凝集性の改善を目的として、必要に応じて、凝集剤を添加することができる。凝集剤としては、例えば、ポリ塩化アルミニウム、硫酸アルミニウム、ポリ硫酸第二鉄、及び塩化第二鉄等の無機凝集剤、並びに高分子凝集剤等を挙げることができる。
固液分離部18で得られた難溶化物を含有するスラリーSに酸化剤を含有させ、かつ、紫外線及び/又は可視光線を照射した条件下で反応させる工程(反応槽16)では、スラリーS中の鉄カルボニルシアノ錯体の難溶化物を分解することができる。その後、酸化剤と、紫外線及び/又は可視光線の照射とにより処理されたスラリーSを脱水機5にて脱水処理することが好ましい。この脱水処理により、脱水ケーキCとして処理することができるとともに、生じた脱離液(脱水ろ液)W11を調整槽14に戻して、連続的な処理を行うことができる。
以上の通り、本発明の一実施形態のシアン含有水の処理方法は、次の構成をとることが可能である。
[1][Fe(CN)(CO)]3−及び[Fe(CN)(CO)2−のいずれか一方又は両方の鉄カルボニルシアノ錯体を含有する被処理水に、酸化剤を含有させ、かつ、紫外線及び可視光線のいずれか一方又は両方の電磁波を照射した条件下で反応させる、シアン含有水の処理方法。
[2]前記電磁波の波長が、420nm以下である上記[1]に記載のシアン含有水の処理方法。
[3]前記酸化剤が、過酸化水素、次亜塩素酸塩、次亜臭素酸塩、及びオゾンからなる群より選択される少なくとも1種を含む上記[1]又は[2]に記載のシアン含有水の処理方法。
[4]前記被処理水に前記条件下で前記酸化剤を反応させる際に前記被処理水のpHを6以上にする上記[1]〜[3]のいずれかに記載のシアン含有水の処理方法。
[5]前記被処理水に前記条件下で前記酸化剤を反応させて、前記鉄カルボニルシアノ錯体を分解し、前記被処理水中に水酸化鉄を生成させた後、固液分離処理により、前記被処理水から前記水酸化鉄を除去する上記[1]〜[4]のいずれかに記載のシアン含有水の処理方法。
[6]前記被処理水は、前記鉄カルボニルシアノ錯体を含有する廃水について難溶化処理を行った後に固液分離処理して得られた、前記鉄カルボニルシアノ錯体の難溶化物を含有するスラリーを含む上記[1]〜[5]のいずれかに記載のシアン含有水の処理方法。
[7]前記被処理水は、排出ガスの洗浄廃水である上記[1]〜[6]のいずれかに記載のシアン含有水の処理方法。
以下、試験例を挙げて、本発明の一実施形態のシアン含有水の処理方法の効果等をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の試験例に限定されるものではない。
<試験例A>
(被処理水)
排出ガスの洗浄設備から排出された廃水を採取し、これを被処理水とした。その被処理水について、性状の分析を行った。具体的には、5種Cろ紙を用いて、被処理水をろ過して得られたろ液について、液体クロマトグラフィー(LC;商品名「Alliance 2695」、日本ウォーターズ社製)に、誘導結合プラズマ質量分析計(ICP−MS;商品名「ICP−MS7500」、アジレント・テクノロジー社製)を検出器として結合させた装置(LC−ICP−MS)を用い、前述の測定条件(後記試験例Bと同様の測定条件)にて、[Fe(CN)4−、[Fe(CN)3−、[Fe(CN)(CO)]3−、及び[Fe(CN)(CO)2−のそれぞれの濃度を分析した。
また、上記ろ液について、JIS K0102:2013における全シアンの測定方法により、全シアン(T−CN)濃度を測定し、JIS K0102:2013におけるシアン化物の測定法のうちの通気法により、遊離シアン(F−CN)濃度を測定した。さらに、アンモニウムイオン(NH −N)、pH、懸濁物質(SS)、CODMnについても、JIS K0102:2013に記載の方法により測定した。このとき、pH及び懸濁物質(SS)以外については、5種Cろ紙を用いてろ過して得られたろ液について分析を行った。加えて、同じくろ液について、高速液体クロマトグラフィーを用いて、チオシアン酸イオン(SCN)を分析した。
以上の分析結果を表1に示す。表1に示す通り、被処理水には、シアン成分として、CN(F−CN)、[Fe(CN)4−、[Fe(CN)3−、[Fe(CN)(CO)]3−、及び[Fe(CN)(CO)2−が含まれていた。
Figure 2020025955
(試験例A1)
上記廃水のうちの100mLを100mL容量のビーカーに採った。次に、そのビーカーに、88mg−H/Lとなるように、35質量%過酸化水素水を添加し、その後、ビーカー内の液のpHを7.5に調整した。そして、そのビーカーを、UV照射装置として、UV照射機構を備えた装置(商品名「Mupid−Scope WD」、ミューピッド社製)内に移し、波長314nmの紫外線を照射しながら、廃水中のシアン成分と過酸化水素とを最大60分間反応させる処理を行った。このときの反応温度は、22〜24℃であった。60分間の処理の間、紫外線の照射開始から10分後、30分後、60分後において、ビーカーから適量の反応液(処理廃水)を採取し、採取した反応液(処理廃水)を5種Cろ紙を用いてろ過した。この際、反応液(処理廃水)中に酸化剤を反応させたことにより水酸化鉄が生成していたものは、水酸化鉄が除去された。得られたろ液を処理水として、この処理水について、JIS K0102:2013に規定される全シアンの分析方法に基づいて、全シアン(T−CN)濃度を測定した。
(試験例A2)
上記試験例A1と比較して、過酸化水素水を添加しなかったこと以外は上記試験例A1と同様の手順にて、処理及びT−CN濃度の測定を行った。
(試験例A3)
上記試験例A1と比較して、紫外線を照射しなかったこと以外は、上記試験例A1と同様の手順にて、処理及びT−CN濃度の測定を行った。なお、試験例A3では、紫外線を照射しなかったことから、T−CN濃度の測定は、上述のUV照射装置内にビーカーを移してから10分後、30分後、60分後において行った。
上記の試験例A1〜A3の処理条件及びT−CN濃度の測定結果を表2及び図4に示す。なお、表2において、T−CN濃度の欄における「<0.1」は、測定下限値(0.1mg/L)未満であったことを表す(後記表4及び表5においても同様である)。
Figure 2020025955
試験例Aの結果より、鉄カルボニルシアノ錯体等のシアン成分を含有する被処理水に、酸化剤(過酸化水素)を含有させ、かつ、紫外線を照射した条件下で反応させる処理を行うことにより、T−CN濃度を有効に低減できることが確認された。試験例A1で得られた反応液(処理水)中のT−CN濃度は、被処理水中の鉄カルボニルシアノ錯体([Fe(CN)(CO)]3−及び[Fe(CN)(CO)2−)の濃度よりも低かったことから、酸化剤及び紫外線照射の併用によって、鉄カルボニルシアノ錯体を分解できたことがわかった。
<試験例B>
前述の試験例Aで使用した廃水とは、採取日時のみが異なる廃水を被処理水として用いた。この廃水について、試験例Aで述べた方法と同様に分析した結果を表3に示す。表3に示す通り、この廃水にも、シアン成分として、CN(F−CN)、[Fe(CN)4−、[Fe(CN)3−、[Fe(CN)(CO)]3−、及び[Fe(CN)(CO)2−が含まれていた。
Figure 2020025955
(試験例B1及びB2)
試験例B1及びB2では、前述の試験例Aで使用した廃水とは採取日時のみが異なる廃水を用いたこと以外は、それぞれ、上述の試験例A1及びA2と同様の手順にて、処理及びT−CN濃度の測定を行った。なお、T−CN濃度の測定は、紫外線の照射開始から5分後についての測定も追加した。試験例B1及びB2の処理条件を表4に示すとともに、T−CN濃度の測定結果を表4及び図5に示す。
Figure 2020025955
また、被処理水と、紫外線の照射開始から30分後(反応時間30分)及び60分後(反応時間60分)に得られた処理水のそれぞれについて、液中の鉄化合物(鉄錯体)のクロマトグラムを測定した。この測定により得られたクロマトグラムを図6に示す。この測定には、上記LC−ICP−MSを用い、測定条件を以下の通りとした。また、予め、フェロシアン化カリウム、フェリシアン化カリウム、及びトリシアノ銅(I)酸ジカリウムのそれぞれの標準試料について、同条件でクロマトグラムを測定し、標準試料における保持時間と、被処理水中の鉄化合物のクロマトグラムの保持時間とを比較することで、それらを同定した(図6参照)。なお、図6に示すクロマトグラムにおいて、保持時間650〜700秒の間にみられるピークは、シアンを含有しない水溶性の鉄化合物に由来するものである。
(測定条件)
カラム;ODSカラム(商品名「L−Column2」;粒子径5μm、内径4.6mm、カラム長150mm、2連;化学物質評価研究機構製)
移動相;アセトニトリルと25mMリン酸緩衝液(pH7.0、イオンペア試薬として15mMリン酸二水素テトラブチルアンモニウムを含む)との体積比40:60の混合物
流速;0.8mL/分
カラム温度;40℃
検出器;ICP−MS及びフォトダイオードアレイ(PDA)(検出波長:210〜400nm)
ICP−MSにおける検出対象元素:Fe(原子量56)、Cu(原子量63)、Ni(原子量60)、Co(原子量59)、Zn(原子量66)
注入量;50〜100μL
上記表4、図5、及び図6に示す通り、被処理水に、酸化剤(過酸化水素)を含有させ、かつ、紫外線を照射した条件下で反応させる処理を行うことにより、その処理の時間経過とともに、フェロシアン化物イオン及びフェリシアン化物イオンに加えて、鉄カルボニルシアノ錯体([Fe(CN)(CO)]3−及び[Fe(CN)(CO)2−)も低減したことが確認された。反応時間60分後には、それらのシアノ錯体がほとんど分解されたことがわかった。
<試験例C〜E>
後述の通り、試験例C〜Eでは、試験例Bで使用した被処理水について、試験例Bで使用した過酸化水素を他の酸化剤に代えて、試験例A1(紫外線照射有り)及びA3(紫外線照射無し)と同様の手順にて、処理及び60分後のT−CN濃度の測定を行った。なお、試験例C〜Eにおける酸化剤の添加量(添加濃度)は、試験例A1及びB1で使用した過酸化水素のモル濃度(2.6mmol/L)と同等となるようにした。試験例C〜Eの処理条件及びT−CN濃度の測定結果を表5に示す。
(試験例C1及びC2)
試験例C1では、試験例B1で使用した被処理水について、試験例B1で使用した過酸化水素88mg−H/Lを、次亜塩素酸ナトリウム(NaClO)193mg/Lに変更したこと以外は、試験例B1と同様の手順にて、処理を行った。試験例C2では、試験例B1で使用した被処理水について、試験例B1で使用した過酸化水素88mg−H/Lを次亜塩素酸ナトリウム(NaClO)193mg/Lに変更したこと、及び紫外線を照射しなかったこと以外は、試験例B1と同様の手順にて、処理を行った。上記次亜塩素酸ナトリウム(NaClO)には、有効塩素濃度が約5質量%である次亜塩素酸ナトリウム水溶液を用いた。
(試験例D1及びD2)
試験例D1では、試験例B1で使用した被処理水について、試験例B1で使用した過酸化水素88mg−H/Lを、次亜臭素酸ナトリウム(NaBrO)341mg/Lに変更したこと以外は、試験例B1と同様の手順にて、処理を行った。試験例D2では、試験例B1で使用した被処理水について、試験例B1で使用した過酸化水素88mg−H/Lを次亜臭素酸ナトリウム(NaBrO)341mg/Lに変更したこと、及び紫外線を照射しなかったこと以外は、試験例B1と同様の手順にて、処理を行った。上記次亜臭素酸ナトリウム(NaBrO)には、有効臭素濃度が約5質量%である次亜臭素酸ナトリウム水溶液を用いた。
(試験例E1及びE2)
試験例E1では、試験例B1で使用した被処理水について、試験例B1で使用した過酸化水素88mg−H/Lを、オゾン124mg/Lに変更したこと以外は、試験例B1と同様の手順にて、処理を行った。試験例E2では、試験例B1で使用した被処理水について、試験例B1で使用した過酸化水素88mg−H/Lをオゾン124mg/Lに変更したこと、及び紫外線を照射しなかったこと以外は、試験例B1と同様の手順にて、処理を行った。被処理水へのオゾンの添加は、酸素ガスを原料として、オゾン発生装置(「EO−302」、岡野製作所社製)を用いて、15.3mg/Lのオゾンを含有する酸素・オゾン混合気体を得た後、その混合気体を被処理水100mLに対して0.81L吹き込むことによって行った。
Figure 2020025955
表5に示す通り、酸化剤として、過酸化水素のほか、次亜塩素酸塩や、次亜臭素酸塩、オゾンを紫外線照射と併用した場合においても、被処理水中のT−CN濃度を有効に低減でき、被処理水中の鉄カルボニルシアノ錯体([Fe(CN)(CO)]3−及び[Fe(CN)(CO)2−)を分解できたことがわかった。
<試験例F>
前述の試験例Aで使用した廃水とは、採取日時のみが異なる廃水(pH7.9)を被処理水として用いた。この廃水について、試験例Aで述べた方法と同様に分析した結果を表6に示す。表6に示す通り、この廃水にも、シアン成分として、CN(F−CN)、[Fe(CN)4−、[Fe(CN)(CO)]3−、及び[Fe(CN)(CO)2−が含まれていた。
Figure 2020025955
(試験例F1)
上記廃水のうちの100mLを100mL容量のビーカーに採った。次に、そのビーカーに、88mg−H/L(2.6mmol/L)となるように、35質量%過酸化水素水を添加し、その後、ビーカー内の液のpHを7.5に調整した。また、ビーカー内の液面から上方5cmの高さの位置にUV照射装置(「LED光源コントローラーCL−1501」及び「365nmLEDヘッドユニット(CL−H1−365−9−1)」、朝日分光社製)を固定した。そして、そのUV照射装置により、波長365nmの紫外線(光量544mW/cm)をビーカー内の液に照射しながら、ウォーターバスにビーカーを浸漬し、マグネチックスターラー及び撹拌子を用いて、廃水中のシアン成分と過酸化水素とを最大120分間反応させる処理を行った。このときの反応温度は、24〜26℃であった。120分間の処理の間、紫外線の照射開始から30分後、60分後、120分後において、ビーカーから適量の反応液(処理廃水)を採取し、採取した反応液(処理廃水)を5種Cろ紙を用いてろ過した。この際、反応液(処理廃水)中に酸化剤を反応させたことにより水酸化鉄が生成していたものは、水酸化鉄が除去された。得られたろ液を処理水として、この処理水について、JIS K0102:2013に規定される全シアンの分析方法に基づいて、全シアン(T−CN)濃度を測定した。
(試験例F2)
上記試験例F1と比較して、UV照射装置におけるLEDヘッドユニットを、「365nmLEDヘッドユニット」から「405nmLEDヘッドユニット(CL−H1−405−9−1)」(朝日分光社製)に変更したこと、それに伴い、廃水に照射する電磁波を、波長365nmの紫外線から、波長405nmの可視光線(光量527mW/cm)に変更したこと以外は、上記試験例F1と同様の手順にて、処理及びT−CN濃度の測定を行った。
(試験例F3)
上記試験例F1と比較して、廃水に紫外線を照射しなかったこと以外は上記試験例F1と同様の手順にて、処理及びT−CN濃度の測定を行った。
(試験例F4)
上記試験例F1と比較して、廃水に過酸化水素水を添加しなかったこと以外は上記試験例F1と同様の手順にて、処理及びT−CN濃度の測定を行った。
上記試験例F(F1〜F4)の処理条件及びT−CN濃度の測定結果を表7に示す。
Figure 2020025955
試験例Fの結果より、鉄カルボニルシアノ錯体等のシアン成分を含有する被処理水に、過酸化水素を含有させ、かつ、波長365nmの紫外線や波長405nmの可視光線を照射した条件下で反応させる処理を行うことにより、T−CN濃度を有効に低減できることが確認された(試験例F1及びF2)。試験例F1及びF2で得られた120分後の反応液(処理水)中のT−CN濃度は、被処理水中の鉄カルボニルシアノ錯体([Fe(CN)(CO)]3−及び[Fe(CN)(CO)2−の合計)の濃度よりも低かったことから、酸化剤(過酸化水素)及び電磁波照射の併用によって、鉄カルボニルシアノ錯体を分解できたことがわかった。また、被処理水中の鉄カルボニルシアノ錯体の分解能の観点から、電磁波としては、紫外線がより好ましいことがわかった。
<試験例G>
特開2019−111528号公報の[実施例](試験例1〜3)に記載された「気液固混合物の調製方法」の内容を参考にした合成によって、[Fe(CN)4−、[Fe(CN)(CO)]3−、及び[Fe(CN)(CO)2−を含有する水(pH9.0)を得た。これを模擬廃水として、試験例Gで用いる被処理水とした。この模擬廃水について、試験例Aで述べた方法と同様に分析した結果を表8に示す。表8に示す通り、この模擬廃水にも、シアン成分として、CN(F−CN)、[Fe(CN)4−、[Fe(CN)(CO)]3−、及び[Fe(CN)(CO)2−が含まれていたことが確認された。
Figure 2020025955
(試験例G1及びG2)
試験例G1及びG2では、それぞれ上記試験例F1及びF2と比較して、過酸化水素水88mg−H/Lを、次亜塩素酸ナトリウム(NaClO)193mg/L(2.6mmol/L)に変更したこと、及び最大反応時間を120分から60分に変更したこと以外は、それぞれ上記試験例F1及びF2と同様の手順にて、上記模擬廃水に対して、処理及びT−CN濃度の測定を行った。
(試験例G3)
上記試験例G1と比較して、上記模擬廃水に紫外線を照射しなかったこと以外は上記試験例G1と同様の手順にて、処理及びT−CN濃度の測定を行った。
(試験例G4)
上記試験例G1と比較して、上記模擬廃水に次亜塩素酸ナトリウムを添加しなかったこと以外は上記試験例G1と同様の手順にて、処理及びT−CN濃度の測定を行った。
(試験例G5及びG6)
試験例G5及びG6では、それぞれ上記試験例G1及びG3と比較して、上記模擬廃水に、次亜塩素酸ナトリウム(NaClO)を添加する前に予め塩化アンモニウム(NHCl)を535mg/L(NH −N換算で140mg/L)添加したこと以外は、それぞれ上記試験例G1及びG3と同様の手順にて、処理及びT−CN濃度の測定を行った。
上記試験例G(G1〜G6)の処理条件及びT−CN濃度の測定結果を表9に示す。
Figure 2020025955
試験例Gの結果より、鉄カルボニルシアノ錯体等のシアン成分を含有する被処理水に、次亜塩素酸ナトリウム(NaClO)を含有させ、かつ、波長365nmの紫外線や波長405nmの可視光線を照射した条件下で反応させる処理を行うことにより、T−CN濃度を有効に低減できることが確認された(試験例G1、G2、及びG5)。試験例G1、G2、及びG5で得られた60分後の反応液(処理水)中のT−CN濃度は、被処理水中の鉄カルボニルシアノ錯体([Fe(CN)(CO)]3−及び[Fe(CN)(CO)2−の合計)の濃度よりも低かったことから、酸化剤(次亜塩素酸ナトリウム)及び電磁波照射の併用によって、鉄カルボニルシアノ錯体を分解できたことがわかった。さらに、実際の廃水に含有されていることの多いNH が被処理水中に存在する場合、NaClOがNH と反応して消費されるようにも考えられたが、電磁波照射との併用により、NaClOも酸化剤として有用であることが認められた。

Claims (7)

  1. [Fe(CN)(CO)]3−及び[Fe(CN)(CO)2−のいずれか一方又は両方の鉄カルボニルシアノ錯体を含有する被処理水に、酸化剤を含有させ、かつ、紫外線及び可視光線のいずれか一方又は両方の電磁波を照射した条件下で反応させる、シアン含有水の処理方法。
  2. 前記電磁波の波長が、420nm以下である請求項1に記載のシアン含有水の処理方法。
  3. 前記酸化剤が、過酸化水素、次亜塩素酸塩、次亜臭素酸塩、及びオゾンからなる群より選択される少なくとも1種を含む請求項1又は2に記載のシアン含有水の処理方法。
  4. 前記被処理水に前記条件下で前記酸化剤を反応させる際に前記被処理水のpHを6以上にする請求項1〜3のいずれか1項に記載のシアン含有水の処理方法。
  5. 前記被処理水に前記条件下で前記酸化剤を反応させて、前記鉄カルボニルシアノ錯体を分解し、前記被処理水中に水酸化鉄を生成させた後、固液分離処理により、前記被処理水から前記水酸化鉄を除去する請求項1〜4のいずれか1項に記載のシアン含有水の処理方法。
  6. 前記被処理水は、前記鉄カルボニルシアノ錯体を含有する廃水について難溶化処理を行った後に固液分離処理して得られた、前記鉄カルボニルシアノ錯体の難溶化物を含有するスラリーを含む請求項1〜5のいずれか1項に記載のシアン含有水の処理方法。
  7. 前記被処理水は、排出ガスの洗浄廃水である請求項1〜6のいずれか1項に記載のシアン含有水の処理方法。

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