JP4286934B2 - 金属ダイヤフラム型バルブ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば半導体製造プラント等の流体輸送ラインに設けられる金属ダイヤフラム型バルブに関するものであり、特に金属ダイヤフラムの内周縁部のシール構造に特徴を有するものである。
【0002】
【従来の技術】
金属ダイヤフラム型バルブに於ける金属ダイヤフラムの内周縁部のシール構造としては、例えば米国特許第4,750,709号公報や特開平8−114265号に開示された構造のものが知られている。
即ち、米国特許第4,750,709号公報にあっては、図6及び図7に示す如く、ダイヤフラム40の内周縁部の端部をシートホルダー78へ溶接80すると共に、溶接80から距離Dだけ離れたダイヤフラムの内周縁部94を、押え金具82の下面とシートホルダー78の上面とで挾圧支持することによって、ダイヤフラム40の作動時に、ダイヤフラム40の端部の溶接80に曲げ応力が加わるのを防止するようにしている。
尚、図6及び図7に於いて、100はボディ、100aは弁室、100bは弁座、100cは流体通路、50はボンネット、160はシート、88はステム、86はステムの下端部に形成したネジ部、94は挾圧部分である。
【0003】
また、特開平8−114265号公報にあっては、図8及び図9に示すように、ダイヤフラム93の取付け孔93aへシートホルダー91のシャフト部91aを挿通させ、次に、溶接金具90をシャフト部91aへ挿着する。そして、ダイヤフラム93の内周縁部を、溶接金具90の下面に形成した環状のフラット部90aとシートホルダー91の上面に形成した環状のフラット部91bとで挟み、金属製ダイヤフラム93の内周縁の端部と、溶接金具90及びシートホルダー91の前記金属製ダイヤフラム93の内周縁の端部に当接する部分とをその全周に亘って溶接Wし、これら三者を固着一体化している。
【0004】
前記特開平8−11426号公報では、ダイヤフラム93の溶接部Wの外側の内周縁部を、溶接金具90の下面のフラット部90aとシートホルダー91の上面のフラット部91bとによって密着状態に支持することにより、ダイヤフラム93の作動時に、ダイヤフラム93の溶接部Wに曲げ応力がかからないようにしている。また、ダイヤフラム93の内周縁部とシートホルダー91の上面との間隙G内へ、流体が噛み込むのを防止するようにしている。
尚、図8及び図9に於いて、100はボディ、100aは弁室、100bは弁座、100cは流体通路、50はボンネット、160はシート、51はブッシング、52はボール、53はステム、54はボンネットインサートである。
【0005】
前記米国特許第4,750,709号公報のバルブは、図6及び図7に示すように、ダイヤフラム40の溶接部80から距離Dの箇所94を環状の押え金具82の下面と、上面が全て曲面に形成されたシートホルダー78とで挾圧支持するようにしている為、ダイヤフラム40の下面とシートホルダー78の上面との間に、奥行きのある環状の間隙Goが形成されることになる。
その結果、前記間隙Go内へ流体が噛み込み易く、また、間隙Go内へ一旦流体が噛み込むと、噛み込んだ流体を簡単には追い出し難いと云う問題があった。その為、従前のシール構造を用いたバルブは、所謂流体の置換性に劣ると云う問題があった。
尚、半導体の製造に於いては、半導体の集積度が上昇するのに伴って、半導体の製造に用いる流体の純度に対する要求が強くなりつつあり、上記間隙内に噛み込んだ極く微量の流体であっても、製品である半導体の品質や不良品の発生頻度に、大きな影響を及ぼすことになる。
【0006】
また、米国特許第4,750,709号公報のバルブでは、ダイヤフラム40の溶接部80から距離Dだけ離れた箇所94を、ネジ構造を用いて押え金具82とシートホルダー78とで線接触の状態で締め付けるようにしている為、長期間の使用によってネジの締め込みが弛むことがあり、この場合には、ダイヤフラム40の内周縁部の挾圧支持状態が解除されることになる。
その結果、前記の状態でシートホルダー78が上・下動すると、ダイヤフラム40の内周縁部の線接触状態の挾圧支持が解除されていることとも相俟って、ダイヤフラム40の溶接部80に大きな曲げ応力が掛かることになり、ダイヤフラム40の内周の縁部に亀裂を生じると云う問題があった。
【0007】
更に、米国特許第4,750,709号公報のバルブでは、ダイヤフラム40の溶接部80から距離Dだけ外方の箇所94を、押さえ金具82の下面とシートホルダー78の上面とで挾圧しているため、ダイヤフラム40の外周縁部の距離Dに相当する部分の下面と、シートホルダー78の上面との間隙G内へは流体が入り込まないと考えられている。
しかし、バルブの開閉作動によってダイヤフラム40の上下動が繰り返されると、ダイヤフラム40の厚みの変化等によって前記挾圧部分94の気密性が低下することになる。その結果、距離Dの部分に相当する間隙G内へ流体が噛み込むことになり、流体の置換性が低下すると云う問題がある。
【0008】
加えて、米国特許第4,750,709号公報のバルブでは、ダイヤフラム40の溶接部80から距離Dだけ離れた箇所94を線接触の状態で上・下から押え金具82とシートホルダー78とによって挾圧しているため、ダイヤフラム40が上・下方向に作動したときのダイヤフラムの曲げ応力が、前記挾圧箇所94の一点へ集中的にかかることになる。
その結果、ダイヤフラム40が繰返し作動を重ねると、前記挾圧箇所94の近傍が、最も早く金属疲労による亀裂や破損を生ずることになり、ダイヤフラムの寿命の延伸を図り難いと云う問題がある。
【0009】
一方、前記特開平8−114265号公報のバルブに於いては、ダイヤフラム93の内周縁部が、溶接金具90に形成した環状のフラット部90aと、シートホルダー91に形成した環状のフラット部91bとで保持されている為、ダイヤフラム93の下面とシートホルダー91の上面との間に形成される間隙Goは、数値的には明確に表わすことができないが、米国特許第4750709号の場合に比較して奥行きの小さいものとなることは明らかである。。その結果、ダイヤフラム93とシートホルダー91との間へは、流体が米国特許第4750709号の場合に比較して噛み込み難くなる。
【0010】
又、ダイヤフラム93の内周縁部と溶接金具90とシートホルダー91の三者を溶接により固着一体化している為、ダイヤフラム93の内周縁の端部から流体が漏洩する虞れは、米国特許第4750709号の場合よりも少なくなり、シール性が極めて高くなる。
【0011】
更に、ダイヤフラムの内周縁部を、溶接金具90のフラット部90aとシートホルダー91のフラット部91bとで面接触状態で保持している為、シャフト部91aのネジが弛んでシートホルダー91が若干上下動しても、ダイヤフラム90の溶接部Wに大きな曲げ応力が集中的に直接に掛かることがない。
その結果、米国特許第4750709号の場合よりもダイヤフラム90の溶接部Wに亀裂が生じ難くなる。
【0012】
しかし、この特開平8−114265号公報のバルブに於いても、図8及び図9からも明らかなように、ダイヤフラム93が上・下方向へ作動したときに、ダイヤフラム93の曲げ応力が、ダイヤフラム93を保持する溶接金具90の平面状の下面90aと、シートホルダー91の平面状の上面91bの最外方位置94の部分へ、集中的にかかることになる。その結果、ダイヤフラム40が繰り返し作動されると、前記箇所の最外部94の近傍が、最も早く疲労による亀裂や破損を生じることになり、ダイヤフラム93の寿命の延伸を図り難いという欠点がある。
【0013】
また、特開平8−114265号公報のバルブに於いては、ダイヤフラム93の下面とシートホルダー91の平面状の上面91bとの間は、ほぼ気密状に近い状態となっており、従って、この間隙G内へは、流体が入り込まないと考えられている。しかし、ダイヤフラム93の作動による上・下動が繰り返されると、ダイヤフラム93の厚みが徐々に減少することになり、その結果、前記間隙Gが僅かに大きくなってその気密性が低下し、ここへ流体が噛み込むことにより、バルブの流体置換性が低下すると云うことになる。
尚、前記シートホルダー91の上面フラット部91b、はその長さ寸法lが比較的大きく選定されているため、万一、間隙Gの気密性が低下すると、流体の噛み込み量が多量となり、前記流体置換性の低下の問題が一層大きな問題となる。
【0014】
更に、特開平8−114265号公報の金属ダイヤフラム型バルブに於いては、ボール52やブッシング51、ボンネットインサート54、溶接金具90等の部材を必要とし、部品点数が多いうえに、その組立も複雑且つ困難で、組立完成までに多数の時間と工数を必要とすると云う問題がある。
【0015】
【発明が解決しようとする課題】
本願発明は、前記米国特許第4,750,709号公報や特開平8−114265号公報の金属ダイヤフラム型バルブに於ける上記の如き問題、即ち、▲1▼ダイヤフラムの作動時の歪み応力(曲げ応力)が、ダイヤフラム内周縁部のシートホルダーと押え金具(又は溶接金具)とによる挾圧部へ集中的にかかることになり、早期にダイヤフラムに亀裂等を生じることになること、▲2▼ダイヤフラムの溶接部とクランプ部との距離D(又は距離l)が比較的大きく、且つクランプ部の気密性が比較的低いため、ダイヤフラム外周縁部とシートホルダー上面間の間隙G内へ、流体が噛み込み易いこと、及び▲3▼多数の部品点数を必要とするうえ、組立にも手数がかかり、バルブの製造コストが高くなること、等の問題を解決せんとするものである。
そして、本願発明は、上記▲1▼、▲2▼及び▲3▼の問題を解決することにより、流体の置換性や内部の洗浄性に優れ、しかも構造が簡単で、組立も容易にでき、製造コストの大幅な引き下げを可能とした金属ダイヤフラム型バルブを提供するものである。
【0016】
【課題を解決するための手段】
本願の請求項1に記載の発明は、中央に取付孔(7a)を設けた弾性を有する金属ダイヤフラム(7)と、前記金属ダイヤフラム(7)の外周縁部を挾持する保持手段と、中央部に挿通孔(6a)を設けたデフレクションリミッター(6)と、前記金属ダイヤフラム(7)の取付孔(7a)及びデフレクションリミッター(6)の挿通孔(6a)を通って上方へ伸びる支持軸部(5a)を有し、前記金属ダイヤフラム(7)を垂直方向へ移動させるシートホルダー(5)と、前記金属ダイヤフラム(7)をデフレクションリミッター(6)及びシートホルダー(5)へ固着する溶接部(W)と、からの組み合せより成る金属ダイヤフラム型バルブに於いて、前記シートホルダー(5)はダイヤフラム支持段部(5c)を有し、且つ当該ダイヤフラム支持段部(5c)は金属ダイヤフラム(7)の下面側と接当する環状フラット部(5d)と、金属ダイヤフラム(7)の中央部が上方へ湾曲したときに金属ダイヤフラム(7)を支持するための前記環状フラット部(5d)に連続する円弧状肩部(5e)とを備え、また、前記デフレクションリミッター(6)は直径方向の長さ寸法(l)で薄い厚み(t)を有していて溶接部(W)が施される内周縁部(6b)と、前記内周縁部(6b)の下面側に形成されていて前記金属ダイヤフラム(7)の上面側と接当する環状のフラット部(6c)と、金属ダイヤフラム(7)の中央部が下方へ湾曲したときに金属ダイヤフラム(7)を支持するための前記環状のフラット部(6c)に連続する湾曲部(6d)と、を備え、更に、前記シートホルダー(5)の環状のフラット部(5d)とデフレクションリミッター(6)の環状のフラット部(6c)とは、夫々異なる直径方向の長さ寸法(l 1 )、(l 0 )を有し、前記金属ダイヤフラム(7)の中央部が上方又は下方の何れかへ湾曲されることにより、金属ダイヤフラム(7)の第1領域(A)又は第2領域(B)に曲げ応力がかかるようにされ、前記デフレクションリミッター(6)の内周縁部(6b)の長さ寸法(l)が前記シートホルダー(5)の環状のフラット部(5d)の直径方向の長さ寸法(l 1 )より大きくなっており、溶接部(W)が、少なくともシートホルダー(5)の環状のフラット部(5d)の外側領域に於いて金属ダイヤフラム(7)をシートホルダー(5)へ固着する円環状の溶接部としたことを特徴とするものである。
【0030】
バルブの開閉操作によって金属ダイヤフラム7が作動すると、金属ダイヤフラム7の内周縁部には、曲げ応力がかかることになる。しかし、バルブの閉鎖時に金属ダイヤフラム7の内周縁部にかかる曲げ応力は、主としてデフレクションリミッター6の下面側によって受け止められる。また、バルブの開放時に前記内周縁部にかかる曲げ応力は、シートホルダー5のダイヤフラム支持段部5cの円弧状の肩部5eによって受け止められる。その結果、金属ダイヤフラム7の内周縁部の溶接部Wへは直接に曲げ応力がかからなくなり、従って溶接部Wに亀裂等が生じない。
【0031】
また、金属ダイヤフラム7の曲げ応力を受ける領域(金属ダイヤフラム7が作動によって彎曲する部分)が、開弁時と閉弁時とで異なり、二箇の領域に分散される。そのため、従前のように、金属ダイヤフラム7を1箇所で上・下からクランプする場合に比較して、金属ダイヤフラム7の破損がより少なくなる。
【0032】
更に、従前のようなシートホルダーとシャフトとをネジ機構によって連結し、このネジ機構を利用して金属ダイヤフラム7を一箇所でクランプ(挾圧保持)するものに比較して、バルブを形成する部品点数が減少すると共に、バルブの組立等が容易になり、バルブ製造コストの引き下げが可能となる。
【0033】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
図1は、本発明の第1実施形態に係る金属ダイヤフラム型バルブの縦断面図であり、金属ダイヤフラム7の内周縁部と、デフレクションリミッター6の内周縁部と、シートホルダー5とを溶接により固着一体化し、ネジ機構による金属ダイヤフラムの内周縁部のクランプ(挾圧)を一切省略するようにしたものである。
【0034】
金属ダイヤフラム型バルブは、流体入口通路1a、流体出口通路1b、弁室1c及び弁座1dを形成したボディ1と、ボディ1に螺着されたボンネットナット2と、ボンネットナット2に昇降自在に螺挿支持されたステム3と、ステム3の上端部に取付けられたハンドル4と、ステム3の下端部に昇降自在に取付けられたシートホルダー5と、シートホルダー5の上方へ突出せしめた支持軸5aを挿通せしめて支持軸5aの下方部分に設けたデフレクションリミッター6と、外周縁部が、ボディ1とボンネットナット2との間に挾圧支持され、且つ内周縁部が、シートホルダー5とデフレクションリミッター6に溶接された金属ダイヤフラム7と、から構成されている。
【0035】
尚、図1に於いて8は合成樹脂製又は金属製のシート、9はOリング、10はステム3の下方に設けた係止用の凹部、11は支持軸5aに挿着した保持用のリングワッシャー、12は支持軸5aに固定した止めキー、13はベアリング、14はハンドル止めねじである。
【0036】
具体的には、前記ステム3はステンレス鋼(SUS304)によりほぼ円柱状に形成されており、その下方部には、中間部に拡径部10aを設けた係止用の凹部10が形成されている。
また、ステム3の外周面には外ネジ3aが設けられており、この外ネジ3aをボンネットナット2の内ネジ2aへ螺着することにより、ステム3はボンネットナット2へ上・下動自在に支持されている。
【0037】
前記シートホルダー5は、ステンレス鋼(SUS316L)等の金属材により形成されて居り、上方へ突出する円柱状の支持軸5aと台形部5bと両者の境界部に形成した金属ダイヤフラムを溶接支持するダイヤフラム支持段部5cとを備えている。
【0038】
尚、支持軸5aの上方は、前記ステム3の係止用凹部10内へ挿入されており、保持用リングワッシャ11及び止めキー12を介して凹部10の拡径部10aへ、ステム3が自由に回転可能な状態で係止されている。
また、支持軸5aの上端面とステム3の凹部10の天井面との間にはベアリング13が配設されており、ステム3の回転時の回転抵抗を少なくするようにしている。
更に、前記ダイヤフラム支持段部5cは、後述する図3に示す如く、環状のフラット部5dとこれに連続する滑らかな円弧状の肩部5eとから形成されている。
【0039】
前記デフレクションリミッター6は、図2に示す如く、ステンレス鋼(SUS316L)等の金属材により円形の皿形に形成されており、その中央部にはシートホルダー5の支持軸5aを挿通せしめる挿通孔6aが穿設されている。
又、デフレクションリミッター6の内周縁部6bは、厚みtが約2mm程度に形成されており、この厚みtの部分の長さlの部分が後述するように溶接部Wとなる。
更に、デフレクションリミッター6の下面側には、前記長さlよりも大きいか若しくはこれとほぼ同じ長さloのフラット部6cと、フラット部6cの外端Pより連続する上方へのゆるやかな彎曲部6dとが形成されている。
【0040】
前記金属ダイヤフラム7は、ステンレス鋼(SUS316L)やCo−Ni合金鋼(エルジロイ・米国ELGILOY COMPANYの登録商標)等により皿状に形成された極薄金属板(厚さ:0.1〜0.2mm程度)を、複数枚(2〜3枚)重ねて形成されており、その中央部にはシートホルダー5の軸部5aを挿通せしめる取付孔7aが形成されている。本実施例にあっては、ダイヤフラム7の外径は約38mmに選定されている。
【0041】
尚、前記Co−Ni合金鋼であるエルジロイは、C=0.15、Mn=1.5〜2.5、Ni=14〜16、Cr=19〜21、Mo=6〜8、Be=0.1以下、Co=39〜41、Fe=残部の成分(何れもwt%)を有するものである。
【0042】
前記金属ダイヤフラム7の内周縁部は、図3に示すように、デフレクションリミッター6のフラット部6cと、シートホルダー5のダイヤフラム支持段部5cのフラット部5dとの間に位置しており、前記両者に溶接されている。
即ち、図3に示す如く、金属ダイヤフラム7の内周縁部と、デフレクションリミッター6の金属ダイヤフラム7の内周縁部に当接するフラット部6cと、シートホルダー5の金属ダイヤフラム7の内周縁部に当接するフラット部5dとは、デフレクションリミッター6の厚さがtの長さlの部分に於いて、その全周に亘ってリング状に溶接Wされており、これによって、ダイヤフラム7の内周縁部と、デフレクションリミッター6の内周縁部と、シートホルダー5のフラット部5dの三者は、気密状に固着一体化されている。
【0043】
又、前記金属ダイヤフラム7の外周縁部は、ボディ1とボンネットナット2との間に挟まれ、ボンネットナット2をボディ1に締め込むことによって挾圧支持されている。
【0044】
次に、本発明に係る金属ダイヤフラム型バルブの作動について説明する。図1及び図3を参照して、ハンドル4の回転操作によりステム3を上昇又は下降させると、シートホルダー5が上昇又は下降し、シート8が弁座1dへ当接又は弁座1dから離れて、流体通路1aは開又は閉となる。
【0045】
そして、バルブの流体通路1aが開放されているときには、金属ダイヤフラム7は、図1に示すように、上方へ彎曲した初期の形状に復帰しており、金属ダイヤフラム7の内周縁部にはほとんど曲げ応力がかからない。しかし、もしも、金属ダイヤフラム7が、バルブの開放時に上方へ引き上げられた場合には、金属ダイヤフラム7の内周縁部には、図1からも明らかなように、下向きの曲げ応力がかかることになり、この金属ダイヤフラム7の内周縁部にかかる下向きの曲げ応力による彎曲は、シートホルダー5のダイヤフラム支持段部5cの円弧状の肩部5eによって支持される。即ち、金属ダイヤフラム7の下面側のAの領域が、肩部5eによって支持されることになる。
【0046】
また、バルブの流体通路1aが閉鎖されているときには、金属ダイヤフラム7の内周縁部には、図1の場合とは逆に、上向きの曲げ応力がかかり、金属ダイヤフラムの内周縁部の上面側が、デフレクションリミッター6の彎曲部6dによって支持されることになる。即ち、金属ダイヤフラム7の上面側のBの領域が、前記彎曲部6dにより支持されることになる。
【0047】
上記のように、本発明の金属ダイヤフラム型バルブでは、従前の金属ダイヤフラム型バルブのように、ネジ機構によってダイヤフラム7の内周縁部をクランプすることはしていないが、ダイヤフラムの内周縁部は、ダイヤフラムの彎曲時に、デフレクションリミッター6の彎曲部6d又はシートホルダー5の円弧状彎曲部5eによって支持される。そのため、ダイヤフラム内周縁端部の溶接部Wに、曲げ応力が直接にかかることが無い。その結果、前記溶接部Wに亀裂等を生ずることもない。
【0048】
また、ダイヤフラム7が作動したときのダイヤフラム内周縁部の彎曲部は、下面側がAの領域で、また、上面側がBの領域で夫々支持される。即ち、ダイヤフラム7は、A及びBの場所の異なる二箇所で彎曲することになり、従前のクランプ部のみで上・下方向へ彎曲する場合に比較して、金属ダイヤフラム7の耐久力が大幅に延びることになる。
【0049】
更に、溶接部Wが、図3に示すように、シートホルダー5のダイヤフラム支持段部5cのフラット部5dのほぼ全域に亘っているため、ダイヤフラム7とダイヤフラム支持段部5cとを一体化する溶接部Wの外側と金属ダイヤフラム7の下面側との間にできる隙間G1 の奥行きが小さくなって、流体の置換性が大幅に向上する。
【0050】
加えて、ダイヤフラム7の内周縁部と、デフレクションリミッター6と、シートホルダー5の三者を溶接Wにより気密状に固着一体化している為、弁室1c内の流体が、ダイヤフラム7の内周端縁部分から漏洩する虞れはなく、シール性が極めて高くなる。
【0051】
図4は、本発明の第2実施形態を示す拡大部分図である。この第2実施形態に於いては、金属ダイヤフラム7の作動時に於けるダイヤフラム下面側の彎曲領域Aと、ダイヤフラム上面側の彎曲領域Bとが、第1実施態様(図3)の場合よりもより近接するように、デフレクションリミッター6の下面側のフラット部6cの長さl0 が図3の場合よりも短か目に選定されている。
【0052】
図5は、本発明の第3実施形態に係る金属ダイヤフラム型バルブの要部を示す部分拡大図である。この第3実施形態に於いては、デフレクションリミッター6の下面側のフラット部6cの長さl0 が、第1実施例(図3)の場合より長く選定されており、且つ前記フラット部6cに凹部6eを形成して、金属ダイヤフラム7との非接触部を設けるようにしたものである。
【0053】
この第3実施形態では、金属ダイヤフラム7の作動時に於ける下面側の彎曲領域Aと、上面側の彎曲領域Bとの間の間隔が広くなり、金属ダイヤフラム7の耐用年数がより延長されることになる。
【0054】
開閉耐久試験の結果によれば、流体圧力375psiでもって本発明の金属ダイヤフラム型バルブを1回/secの速度で開閉作動させたとき、実施形態1のバルブでは16470回作動させても、ダイヤフラム7(エルジロイ製、外径38mm、厚さ0.1〜0.2mmのもの2枚)に破損を生じないことが確認されている。
【0055】
これに対して、従前の図8に示す金属ダイヤフラム型バルブの場合、同じ条件下に於けるテストでは、約3000回の作動でダイヤフラムに亀裂を生じる場合があり、本発明のバルブの方がはるかに優れていることが実証されている。
【0056】
【発明の効果】
本発明の金属ダイヤフラム型バルブでは、バルブの閉鎖時に金属ダイヤフラム7の内周縁部にかかる曲げ応力は、主としてデフレクションリミッター6の下面側によって、また、バルブの開放時に前記内周縁部にかかる曲げ応力は、シートホルダー5のダイヤフラム支持段部5cの円弧状の肩部5eによって受け止められる。
その結果、金属ダイヤフラム7の内周縁部の溶接部Wへは、直接に曲げ応力にかからなくなり、溶接部Wに亀裂等が生じない。
【0057】
また、金属ダイヤフラム7の曲げ応力を受ける領域(金属ダイヤフラム7が作動によって彎曲する部分)が、開弁時と閉弁時とで半径方向に異なる位置となり、二箇所の領域に分散される。その結果、従前の金属ダイヤフラム7を1箇所で上・下からクランプするようにした構造のバルブに比較して、金属ダイヤフラム7の破損が、より少なくなる。
【0058】
更に、従前のシートホルダーとシャフトとをネジ機構によって連結し、このネジ機構を利用して金属ダイヤフラム7を一箇所でクランプ(挾圧保持)するようにした従前のバルブに比較して、バルブを形成する部品点数が減少すると共に、バルブの組立等が容易になる。
【0059】
加えて、ネジ機構を用いてクランプする構造でないため、金属ダイヤフラム7の下面側とシートホルダー5の上面側との間に、奥行の深かい間隙G1 が形成されることが無いため、流体の噛み込みを生ずる恐れも殆んどない。その結果、流体の置換性やバルブ内部の洗浄性が、著しく向上する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施形態に係る金属ダイヤフラム型バルブの一例を示す縦断面図である。
【図2】本発明で使用をするデフレクションリミッターの一例を示す縦断面図である。
【図3】図1の金属ダイヤフラムの内周縁部の拡大部分縦断面図である。
【図4】本発明の第2実施形態に係るバルブの金属ダイヤフラムの内周縁部の拡大部分縦断面図である。
【図5】本発明の第3実施形態に係るバルブの金属ダイヤフラムの内周縁部の拡大部分縦断面図である。
【図6】米国特許4750709号公報のバルブの部分縦断面図である。
【図7】図6の金属ダイヤフラムの内周縁部の拡大部分縦断面図である。
【図8】特開平8−114265号公報のバルブの縦断面図である。
【図9】図8の金属ダイヤフラムの内周縁部の拡大部分縦断面図である。
【符号の説明】
1 : ボディ 6b : 内周縁部
1a : 流体入口通路 6c : フラット部
1b : 流体出口通路 6d : 湾曲部
1c : 弁室 6e : 凹部
1d : 弁座 t : 内周縁部の厚さ
2 : ボンネットナット l : 厚さtの部分の長さ
2a : 内ねじ 7 : 金属ダイヤフラム
3 : ステム 7a : 取付孔
3a : 外ねじ 8 : シート
4 : ハンドル 9 : Oリング
5 : シートホルダー 10 : 係止用凹部
5a : 支持軸 10a: 拡径部
5b : 台形部 11 : 保持用リングワッシャー
5c : ダイヤフラム支持段部 12 : 止めキー
5d : 溶接支持部のフラット部 13 : ベアリング
5e : 円弧状肩部 14 : ハンドル止めねじ
6 : デフレクションリミッター W : 溶接部。
6a : 挿通孔
Claims (1)
- 中央に取付孔(7a)を設けた弾性を有する金属ダイヤフラム(7)と、前記金属ダイヤフラム(7)の外周縁部を挾持する保持手段と、中央部に挿通孔(6a)を設けたデフレクションリミッター(6)と、前記金属ダイヤフラム(7)の取付孔(7a)及びデフレクションリミッター(6)の挿通孔(6a)を通って上方へ伸びる支持軸部(5a)を有し、前記金属ダイヤフラム(7)を垂直方向へ移動させるシートホルダー(5)と、前記金属ダイヤフラム(7)をデフレクションリミッター(6)及びシートホルダー(5)へ固着する溶接部(W)と、からの組み合せより成る金属ダイヤフラム型バルブに於いて、前記シートホルダー(5)はダイヤフラム支持段部(5c)を有し、且つ当該ダイヤフラム支持段部(5c)は金属ダイヤフラム(7)の下面側と接当する環状フラット部(5d)と、金属ダイヤフラム(7)の中央部が上方へ湾曲したときに金属ダイヤフラム(7)を支持するための前記環状フラット部(5d)に連続する円弧状肩部(5e)とを備え、また、前記デフレクションリミッター(6)は直径方向の長さ寸法(l)で薄い厚み(t)を有していて溶接部(W)が施される内周縁部(6b)と、前記内周縁部(6b)の下面側に形成されていて前記金属ダイヤフラム(7)の上面側と接当する環状のフラット部(6c)と、金属ダイヤフラム(7)の中央部が下方へ湾曲したときに金属ダイヤフラム(7)を支持するための前記環状のフラット部(6c)に連続する湾曲部(6d)と、を備え、更に、前記シートホルダー(5)の環状のフラット部(5d)とデフレクションリミッター(6)の環状のフラット部(6c)とは、夫々異なる直径方向の長さ寸法(l1)、(l0)を有し、前記金属ダイヤフラム(7)の中央部が上方又は下方の何れかへ湾曲されることにより、金属ダイヤフラム(7)の第1領域(A)又は第2領域(B)に曲げ応力がかかるようにされ、前記デフレクションリミッター(6)の内周縁部(6b)の長さ寸法(l)が前記シートホルダー(5)の環状のフラット部(5d)の直径方向の長さ寸法(l 1 )より大きくなっており、溶接部(W)が、少なくともシートホルダー(5)の環状のフラット部(5d)の外側領域に於いて金属ダイヤフラム(7)をシートホルダー(5)へ固着する円環状の溶接部としたことを特徴とする金属ダイヤフラム型バルブ。
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