JP4281534B2 - セレンテルル白金族含有物の処理方法 - Google Patents

セレンテルル白金族含有物の処理方法 Download PDF

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Description

本発明は、セレンテルル白金族含有物について、効率よくセレンテルルと白金族とを分離することができる処理方法に関する。本発明の処理方法は、銅電解スライムから貴金属を回収するプロセスにおいて、金抽出後液を還元処理して得た還元滓からセレンテルルと白金族とを分離回収する方法として好適である。なお、本発明においてセレンテルル白金族含有物(液)とは、少なくともセレンとテルルの何れかと白金族元素の何れかを含有するものをいう。また、セレンテルルとはセレンおよび/またはテルルをいう。
銅製錬の銅電解工程では、電解液に不溶な不純物が残渣として副生する。この副生物中にはPt、Rh、Irなどの白金族元素、セレン、テルル、金、銀、銅がかなりの量含まれており、これらの金属を分離回収する方法がこれまで多数提案されている。例えば、白金族元素は、銀精錬工程からでる銀アノードスライムやこのスライムに硝酸を加えて金以外の金属成分を浸出した後に還元して得たスライムなどから回収されている。従来、これらのスライムを溶解するには、王水による溶解、塩酸と過酸化水素による溶解または塩酸と塩素ガス吹き込みによる溶解が利用されている。
ところが、白金族元素と共にセレンやテルルが共存しているセレンテルル白金族含有物の場合、これを還元して沈殿させると白金族元素がセレンテルルと化合物を形成してしまい、王水や塩酸および過酸化水素では溶解し難くなって分離回収ができなくなる欠点がある。とくに過酸化水素はセレン化物等の化合物表面で分解するため酸化剤としての効果を殆ど発揮することができない。また、このような化合物を焙焼して酸化セレンや酸化テルルの形で気化分離する方法があるが、その毒性による環境汚染の問題がある。
銅電解澱物の金抽出後液に含まれる白金族元素とセレンテルルを分離する方法として、液中の塩素イオン濃度を1.5モル/L以下とし、60〜90℃の温度下で8〜12%濃度の亜硫酸ガスを液中に吹込み、白金族元素を還元して沈殿させる方法(特許文献1)や、銅電解スライムの塩酸浸出液から溶媒抽出によって金および白金族を回収した抽出残液に二酸化イオウを導入し、セレンテルルを還元して沈殿させる方法(特許文献2、特許文献3)などが知られている。
しかし、これらの方法では、塩酸濃度、温度、亜硫酸ガス濃度、亜硫酸ガス量などのセレン還元時に制御するパラメータが多いため制御が難しく、白金族元素とセレンテルルの回収率が低下するなどの問題がある。さらに、二酸化イオウによる二段階還元処理は工程の管理が非常に難しく、しかも何れの沈殿においてもセレンテルルまたは白金族元素の混入が避けられず、二酸化イオウによる還元だけでは分離が不十分である。また、溶媒抽出によって白金族とセレンテルルとを分離する方法はコスト高であり、抽出後の回収処理も煩雑で手間がかかる欠点がある。
さらに、銅電解スライムに対して塩酸および二酸化イオウ処理する代わりに硫酸酸性溶液で酸素富化ガス加圧条件下浸出処理する方法(特許文献4)、銅電解スライムに硫酸酸性溶液で酸素富化ガス加圧条件下浸出処理した後、塩素イオン、チオ硫酸ナトリウム溶液処理して脱銀した後、銅を添加する方法(特許文献5)も提案されている。しかし、このような酸素富化ガス加圧条件下に銅を使用する方法は工程管理が難しく、非常なコスト高になり、実用性は乏しいという欠点がある。
この他に、酸化剤を用いて金属セレンを酸化し、これをアルカリ金属の炭酸塩または水酸化物で中和してアルカリ金属セレン酸塩を製造する方法(特許文献6)、セレン含有物をアルカリ金属炭酸塩と反応させて水溶性スラリーにし、これを酸化雰囲気下でばい焼してペレットにした後に水浸出する方法(特許文献7)、含テルル銅スライムを酸化剤の存在下に鉱酸に溶解し、これにアルカリを加えて銅を沈殿分離した後に中和してテルルを沈殿下する方法(特許文献8)、銅電解スライム等の原料に塩酸などの強酸処理し、化合物を含むものについては塩素などの酸化剤を併用し、テルルの抽出溶媒としてブチルカルビトールを使用する方法(特許文献9)などが知られている。しかし、これらの方法は工程数が多く、しかも、セレンテルルのの回収効率が低い。
特開2001−316735号公報 特許第3087758号公報 特開2001−207223号公報 特開平05−311258号公報 特開平05−311264号公報 特開昭60−176908号公報 特開昭56−5306号公報 特開昭56−84428号公報 特開2000−239753号公報
本発明は、従来の上記処理方法の問題を解決したものであり、セレンテルル白金族含有物について、アルカリ溶融処理とアルカリ浸出処理とを組み合わせることによって、容易にかつ効率よくセレンテルルと白金族元素とを分離することができるようにした処理方法を提供する。
本発明は以下の構成からなるセレンテルル白金族含有物の処理方法に関する。
〔1〕 セレンテルル白金族含有物からセレンテルルと白金族とを分離する処理方法において、セレンテルル白金族含有溶物として脱銅電解スライムの貴金属回収処理系における金抽出後液を用い、(イ)該金抽出後液の該還元処理によって生成した主にテルルを含む還元滓をアルカリ溶液に混合してアルカリ浸出し、セレンテルルを含む浸出液と白金族を含む浸出残渣とに分離するアルカリ浸出工程と、(ロ)上記還元処理によって生成した主にセレンを含む還元滓を蒸留し、この蒸留残物に苛性ソーダと硝酸ソーダの混合物を加え、該混合物の溶融温度以上に加熱してセレンテルルを溶解し、これを水浸出してセレンテルルを含む浸出液と白金族を含む浸出残渣とに分離するアルカリ溶融工程とを有すること〔2〕 脱銅電解スライムの貴金属回収処理系における金抽出後液に亜硫酸ガスを導入して還元処理し、先に沈澱したセレン滓を蒸留して高純度のセレンを分離した残物をアルカリ溶融処理し、後に沈澱したテルル滓をアルカリ浸出処理する上記[1]に記載する処理方法。
〔3〕 テルル滓をアルカリ濃度5〜8モル/Lの強アルカリ溶液に混合し、60〜90℃の温度下でアルカリ浸出を行う上記[2]に記載する処理方法。
〔4〕 セレン滓の蒸留残物に苛性ソーダと硝酸ソーダの混合物を加え、350〜450℃に加熱してアルカリ溶融を行う上記[2]に記載する処理方法。
を特徴とするセレンテルル白金族含有物の処理方法。
〔5〕 アルカリ溶融工程の水浸出で得た浸出液をアルカリ浸出工程に循環し、セレンテルル白金族含有物と共にアルカリ浸出を行う上記[1]〜上記[4]の何れかに記載する処理方法。
〔6〕 アルカリ浸出工程で得た浸出液に硫酸または塩酸を加えて中和し、セレンテルルを沈殿させる上記[1]〜上記[5]の何れかに記載する処理方法。
〔7〕アルカリ浸出工程およびアルカリ溶融工程において生じた浸出残渣に酸化剤の存在下で塩酸を加えて白金族を溶解させる上記[1]〜上記[6]の何れかに記載する処理方法。
〔8〕 上記[7]の処理工程において得た白金族浸出液に塩化アンモニウムを添加して塩化白金酸アンモニウムを沈澱させ、これを濾別回収して洗浄後、800℃以上に加熱してスポンジ状の高純度白金を得る工程を含む処理方法。
〔9〕 上記[8]の処理工程において、塩化白金酸アンモニウムを分離した濾液にアンモニアを添加してジクロロジアミンパラジウムを沈澱させ、これを濾別回収して洗浄後、800℃以上に加熱してスポンジ状の高純度パラジウムを得る工程を含む処理方法。
〔発明の具体的な説明〕
以下、本発明を具体的に説明する。
本発明の処理方法の概略を図1に示す。図示するように、本処理方法は、セレンテルル白金族含有物からセレンテルルと白金族とを分離する処理方法において、セレンテルル白金族含有溶物として脱銅電解スライムの貴金属回収処理系における金抽出後液を用い、(イ)該金抽出後液の該還元処理によって生成した主にテルルを含む還元滓をアルカリ溶液に混合してアルカリ浸出し、セレンテルルを含む浸出液と白金族を含む浸出残渣とに分離するアルカリ浸出工程と、(ロ)上記還元処理によって生成した主にセレンを含む還元滓を蒸留し、この蒸留残物に苛性ソーダと硝酸ソーダの混合物を加え、該混合物の溶融温度以上に加熱してセレンテルルを溶解し、これを水浸出してセレンテルルを含む浸出液と白金族を含む浸出残渣とに分離するアルカリ溶融工程とを有する。

セレンテルル白金族含有物
上記セレンテルル白金族含有物としては、例えば脱銅電解精錬スライムの塩酸浸出液から溶媒抽出によって金を分離した抽出残液の還元処理滓などを用いることができる。この脱銅電解スライムにはロジウム、ルテニウム、パラジウム、イリジウム、白金などの白金族元素、金、銀、セレン、テルルなどの有価金属が多量に含まれている。具体的には、セレンテルル白金族含有物は、例えば脱銅精錬スライムを次のように処理して得られる。まず、脱銅精錬スライムを塩酸および過酸化水素によってスラリーにし、これを濾過して主に銀を含む浸出滓と、金、白金族元素およびセレン、テルルを含む浸出液とに分離する。次に、この浸出液の液性を調整し、DBC等を用いた溶媒抽出によって浸出液から金を分離する。このようにして金を分離した抽出残液には白金族元素およびセレン、テルルが液中に溶存している。そこで、この抽出残液に二酸化イオウ、具体的には例えば亜硫酸ガスを液中のセレン濃度を3g/L以上に保つ量で導入し、セレンを還元して沈殿させ、抽出残液から分離する。セレンを分離した濾液にさらに二酸化イオウを導入し、残りのセレンと共にテルルを還元して沈澱させ、濾別する。
本発明はセレンテルル白金族含有物として上記金抽出後液を用いることができる。さらに、セレンテルル白金族含有物として上記金抽出後液の還元処理滓や、これをさらに蒸留処理した蒸留滓を用いることができる。この他に、セレンテルル白金族含有液として、例えばメッキ工場の排水や製錬排水などのセレンテルルおよび白金族を含有する溶液を用いることができる。
なお、上記金抽出後液の還元処理において、セレンとテルルを還元して沈澱させる際、テルルはセレンより還元電位が低く、セレンが沈澱した後にテルルが沈澱するので、セレン沈澱を濾別した後に、この濾液にさらに二酸化イオウを添加してテルルを沈澱化することによってセレンとテルルを分離回収することができる。この還元により白金族元素はセレン、テルルと共に沈殿する。
このようにして得たセレンテルル白金族含有物を次のアルカリ浸出工程およびアルカリ溶融工程において処理する。この場合、上記抽出残液の還元によって先に沈澱したセレン滓を蒸留して高純度のセレンを回収し、残物(蒸留残)をアルカリ溶融処理し、その後に沈澱したテルル滓をアルカリ浸出処理するのが好ましい。この蒸留残はセレン化パラジウム等の化合物を形成しており、安定であるためアルカリ浸出してもセレンの溶出が進まない。一方、蒸留滓をアルカリ溶融処理することによってセレンを効率よく処理することができる。なお、テルル滓中のロジウムおよびルテニウムはセレン滓中に含まれる場合よりも相対的に品位が高く、このためアルカリ溶融すると難溶性の酸化物になりやすく、後の塩酸浸出が難しくなる。従って、テルル滓はアルカリ浸出処理するのが好ましい。
アルカリ浸出工程
セレンテルル白金族含有物を苛性ソーダ溶液などのアルカリ溶液に混合してアルカリ浸出を行う。アルカリ浸出は1モル/L以上のアルカリ濃度下で行うのが良く、例えば5モル/L〜8モル/Lの範囲が好ましい。アルカリ濃度を1モル/L以上にすることによってpH14以上の強アルカリ性となり、セレンやテルルの酸化還元電位が下がり、常圧下において酸化剤を用いずに、セレンおよびテルルをアルカリ溶液中に溶出させることができる。なお、常温ではこのセレンやテルルの溶出反応の進行が遅いので、60℃以上の温度下、好ましくは60〜90℃、より好ましくは80℃程度の温度下で浸出を行うのが適当である。
上記アルカリ浸出によって、セレンおよびテルルはアルカリ溶液中に溶出してコロイド状に分散する。一方、ロジウムやパラジウムなどの白金族元素は溶出せずに残留する。これを濾別して、セレンないしテルルを含む浸出液と、白金族元素を含む固形分とに分離する。
上記固液分離後、セレンテルルを含む濾液(浸出液)に、硫酸または塩酸を加えて中和すると金属セレンないし金属テルルの黒色沈澱を生じ、溶液の色が濃紫色から次第に薄くなり、pH7付近で液は透明になる。このセレン沈澱ないしテルル沈澱の品位は概ね99%以上であり、高品位の金属セレンないし金属テルルを回収することができる。なお、硫酸や塩酸に代えて硝酸を用いると、硝酸の酸化力によってセレンやテルルは酸化溶解するので沈殿化することができない。また、液温は60〜80℃が好ましい。この液温で中和すれば濾過性の良い金属状セレンを得ることができる。
一方、白金族を含む固形分には過酸化水素などの酸化剤を塩酸と共に添加し、白金、パラジウム、ロジウム、ルテニウムなどの白金族元素を溶出させる。白金族元素は過酸化水素によって酸化されると共に塩素イオンによって塩化物錯体となり、安定化されて液中に溶出する。過酸化水素は白金族元素を安定な酸化数のイオンにするために必要な当量、すなわち、白金を4価、バラジウムを2価、ロジウムおよびルテニウムを3価に酸化するのに必要な当量を用いる。塩酸はそれぞれPtCl6 -,PdCl4 -,RhCl6 3-,RuCl6 3-に相当する量、および遊離塩酸として2モル/L以上を用いるのが好ましい。反応温度は反応を促進するため60℃以上が良く、また過酸化水素の分解を抑制するため80℃以下が適当であり、好ましくは70℃程度の温度下で行うのが良い。この溶解処理によって、白金、パラジウム、ロジウム、ルテニウムなどが溶解した塩酸性溶液を得ることができる。
以上のように、セレン白金族含有物を強アルカリ溶液に混合し、60℃〜90℃程度の温度下でアルカリ浸出することによって、常圧下で酸化剤を用いずに、セレンやテルルを溶解して白金族元素から分離することができる。従って、白金族元素と共にセレンやテルルを含有する処理滓から容易にセレンおよびテルルを分離して白金族元素を概ね95%以上の収率で選択的に回収することができる。しかも、このアルカリ浸出の際に白金族元素は酸化されないため、難溶性の酸化ロジウムや酸化ルテニウムを生じることがなく、溶液化が容易である。この浸出残渣中の白金族元素を塩酸酸性下で酸化して塩化物錯体を形成させることによって白金族元素含有液を得ることができる。
一方、浸出液中のセレンやテルルはコロイド状に分散しており、この浸出液を硫酸または塩酸によって中和するとセレンおよびテルルはメタルになって沈澱するので、これらも容易に回収することができる。因みに、従来の酸化剤を用いてアルカリ浸出する方法は加圧下で浸出を行い、セレン酸ソーダないし亜セレン酸ソーダなどが生じ、6価のセレンを含むため排水中に含まれるセレンを除去するのが難しい。一方、本発明の上記処理方法では常圧下で酸化剤を用いずにセレンおよびテルルを溶解して白金族元素と分離するので、6価のセレンを含まず工程の管理および回収処理が容易である。
アルカリ溶融工程
次に、上記セレンテルル白金族元素含有物、例えば、上記セレン滓またはセレン蒸留残物をアルカリ溶融処理する。このアルカリ溶融はセレン滓またはセレン蒸留残物に苛性ソーダ(NaOH)と硝酸ソーダ(NaNO3)の混合物からなるフラックスを添加し、これをフラックスの溶融温度(共晶温度)以上に加熱して溶融する。この加熱溶融によってセレンは主に4価になり、亜セレン酸ソーダ(Na2SeO3)を生じて溶解する。苛性ソーダと硝酸ソーダの混合物をフラックスとして使用するのは、苛性ソーダを単独に用いると雰囲気からの酸素の供給が不十分となってセレン化ナトリウム(Na2Se)が生成し、これは水浸出時にセレンがメタルに転化して析出するために白金族とセレンを物理的に分離することができなくなる。また、硝酸ソーダを単独に用いると酸化力が強くなり過ぎ、6価のセレンになる割合が高くなるので好ましくない。
溶融温度を下げるため、フラックスの組成は共晶組成近傍が好ましい。具体的には、苛性ソーダ:硝酸ソーダ=75:25〜85:15(モル比)であるものが良い。また、加熱温度はフラックスの共晶温度(258℃)以上であり、フラックスが十分な流動性を有してセレン化物を浸出する必要があるため、加熱温度は350℃〜450℃が望ましい。なお、硝酸ソーダ(NaNO3)はこの温度範囲内では酸素を発生するのでNOxは発生し難いが、この温度範囲より高いとNOxが発生する割合が高くなり、かつ酸化力が強くなるため6価のセレンになる割合が大きくなるので好ましくない。
上記アルカリ溶融の後に、この溶融物を水浸出して固液分離する。亜セレン酸ソーダは水に溶解し、一方、白金族元素は渣物に残るので、上記溶融物を水浸出して濾過することによって、亜セレン酸ソーダを含む濾液と白金族元素を含む残渣とに分離することができる。この濾液には白金族元素が実質的に含まれておらず、セレンと白金族元素の分離性が良い。また、残渣に含まれる白金族元素はこの残渣に過酸化水素等の酸化剤と共に塩酸を加えることによって溶出する。これを濾過して白金族元素を含む濾液を回収することができる。なお、上記アルカリ溶融ではテルルもセレンと同様に溶解するので、水浸出することによってテルルを白金族と分離することができる。
このようにアルカリ溶融工程において、セレンないしテルルは亜セレン酸ソーダ、亜テルル酸ソーダの形態で水浸出液に溶解し、白金族元素を含む浸出残渣と分離されるが、分離した水浸出液にはセレン、テルルの他に多少の白金族元素が残留していることがあるので、これを上記アルカリ浸出工程に循環させ、セレンテルル白金族含有物と共にアルカリ浸出を行うようにすると良い。この循環処理によって、セレンテルルが濃縮される。
一方、上記アルカリ溶融工程で得た白金族を含む浸出残渣は、アルカリ浸出工程の残渣と同様に、過酸化水素などの酸化剤を塩酸と共に添加し、白金、パラジウム、ロジウム、ルテニウムなどの白金族元素を溶出させる。白金族元素は過酸化水素によって酸化されると共に塩素イオンによって塩化物錯体となり、安定化されて液中に溶出する。この塩化浸出処理(クロリネーション)によって、白金、パラジウム、ロジウム、ルテニウムなどが溶解した塩酸性溶液を得ることができる。なお、この塩化浸出処理はアルカリ浸出工程で得た浸出残渣と一緒に行えば良い。
上記塩化浸出によって得た浸出液には白金族が含まれる。この浸出液に塩化アンモニウムを添加することによって、白金のみを塩化白金酸アンモニウム((NH4)2PtCl6)に転じて選択的に沈殿させることができる。この沈殿を濾別回収してよく洗浄し、加熱炉に入れ、還元性雰囲気中で800℃以上の温度でカ焼すると、スポンジ状の白金が得られる。1回の処理で十分な純度が得られない場合は、塩化白金酸アンモニウムを再溶解して再沈殿させる処理を繰返すことによって白金の純度を高めることが出来る。なお、沈殿の洗浄には塩化アンモニウム液を用いるとよい。
また、上記白金を沈殿分離した後の濾液中にはパラジウムが残る。この濾液にアンモニア水を適量添加することによってパラジウムをジクロロジアミンパラジウム((NH3)2PdCl2)に転じて沈殿させることができる。この沈殿を濾別回収してよく洗浄した後に加熱炉に入れ、800℃以上の温度でカ焼すると、スポンジ状のパラジウムを得ることができる。
本発明の処理方法によれば、セレンテルル白金族含有物を、高温下でアルカリ浸出するアルカリ浸出工程と、苛性ソーダと硝酸ソーダの混合物を加えて溶融(共晶)温度以上に加熱してセレンテルルを溶解処理するアルカリ溶融工程を併用するのでセレンテルルを含む白金族元素をほぼ完全に濃縮回収し精製容易な塩酸性溶液を精製工程に供することができ、セレンテルル白金族含有物から白金族元素とセレンテルルを低コストで、簡便且つ効率的に分離することができる。
以下、本発明の実施例および比較例を示す。なお、%は特に示さない限りwt%である。下記実施例に示すように、本発明の処理方法によれば、セレンテルル白金族含有物から白金族元素とセレンテルルを低コストで、簡便且つ効率的に分離することができる。
銅電解スライムの金抽出後液を還元処理して得た還元澱物の蒸留残物(セレン滓蒸留残物:主成分セレン化パラジウム)600gに苛性ソーダ651g、硝酸ソーダ345gを混合して400℃で2時間反応させた。冷却後、ルツボに水15Lを入れて1時間攪拌して濾別し、濾液15Lおよび濾滓348gを得た。この濾液中Se濃度は10.4g/Lであり、蒸留残物中のセレン97.4%が浸出された。また、浸出液にはPtおよびPdは検出されなかった。なお液中の6価Seの割合は10%以下であった。一方、濾滓の成分を分析したところ白金族元素を主成分とし、その濃度はPd44%、Pt5%、Rh0.3%、Ru1.0%であった。
次に、上記還元澱物のテルル滓(Se65%、Te30%、Pd5%、Pt0.5%、Rh0.2%、Ru0.4%)1kgに苛性ソーダ溶液(濃度5モル/L)を10L加えて80℃に保持したところ溶液は濃い紫色になった。これを冷却後に濾過して濾液12.7gと濾滓65gを得た。この濾滓の成分を分析したところ白金族元素を主成分とし、その濃度はPd80%、Pt8%、Rh3%、Ru6%であった。また、濾液中のSe濃度は65g/L、Te濃度は30g/Lであり、白金族元素は検出されなかった
次に、これらの濾滓を混合して3規定濃度の塩酸を加えてリパルプし、液温70℃で過酸化水素を導入して酸化した。これを濾過して得た塩酸性溶液(濾液)中の白金族の濃度はおのおのPd95g/L(95%)、Pt8.5g/L(99%)、Rh3.2g/L(95%)、Ru0.5g/L(95%以上)であった(括弧内は浸出率)。
苛性ソーダ609gと硝酸ソーダ432gとを用いた他は実施例1と同様にして、セレン滓蒸留残物600gを加熱下でアルカリ溶融し、この溶融物を水浸出して濾過した。この濾液中のセレン浸出率は98.2%であった。濾液には白金およびパラジウムは検出されなかった。また濾液中の6価セレンの割合は10%以下であった。また、濾滓の成分を分析したところ白金族元素を主成分とし、その濃度はPd45%、Pt5%、Rh1%、Ru2%であった。
次に、上記還元澱物のテルル滓1kgに苛性ソーダ溶液(濃度5モル/L)を10L加えて80℃に保持したところ溶液は濃い紫色になった。これを冷却後に濾過して濾液12.7gと濾滓65gを回収した。この濾液中のSe濃度は65g/L、Te濃度は30g/Lであり、白金族元素は検出されなかった。一方、濾滓の成分を分析したところ白金族元素を主成分とし、その濃度はPd80%、Pt8%、Rh3%、Ru6%であった。
次に、これらの濾滓を混合して塩酸2L、水500mlを加えてリパルプし、液温を70℃に保ちながら、過酸化水素360mlを徐々に添加して酸化した。過酸化水素の添加後に冷却し、濾過した濾液中の白金族の濃度はおのおのPd81g/L、Pt7g/L、Rh2.1g/L、Ru2.4g/Lであった。
実施例1のアルカリ浸出で得た浸出液(濾液)を80℃に保ち、硫酸を加えて中和していくと黒色沈殿が生じ始め、pH7付近で液が透明になった。この沈殿を濾別して回収し、成分を分析したところ金属セレン68%、金属テルル31%であった。
実施例3において、硫酸の代わりに塩酸を用いる他は同様にして実施例3と同等品位の金属セレンおよび金属テルルを得た。
比較例
〔比較例1〕
実施例1においてセレン蒸留残と同様にテルル滓1kgに苛性ソーダ1085g、硝酸ソーダ575gを混合して400℃で2時間反応させた。冷却後ルツボに水25Lを入れ1時間攪拌して濾別すると、濾液中にSeが97.4%、Teが98.1%浸出された。この濾液にはPtおよびPdは検出されなかった。これらの濾滓を混合して3規定濃度の塩酸でリバルプし、液温70℃で過酸化水素を導入して酸化した。これを濾過して得た塩酸性溶液(濾液)中の白金族の濃度と浸出率はPd95g/L(95%)、Pt8.5g/L(95%)、Rh1.3g/L(39%)、Ru1.5g/L(14%)であり(括弧内は浸出率)、実施例1に比較してRhおよびRuの浸出率が大幅に低下した。
〔比較例2〕
実施例1のセレン滓蒸留残物をアルカリ溶融するのに代えて、該セレン滓残留物1kgに5モル/Lの苛性ソーダ溶液10Lを加えて80℃に保持したが、セレンは殆ど溶出しなかった。
本発明の処理方法の概略を示す工程図。

Claims (9)

  1. セレンテルル白金族含有物からセレンテルルと白金族とを分離する処理方法において、セレンテルル白金族含有溶物として脱銅電解スライムの貴金属回収処理系における金抽出後液を用い、(イ)該金抽出後液の該還元処理によって生成した主にテルルを含む還元滓をアルカリ溶液に混合してアルカリ浸出し、セレンテルルを含む浸出液と白金族を含む浸出残渣とに分離するアルカリ浸出工程と、(ロ)上記還元処理によって生成した主にセレンを含む還元滓を蒸留し、この蒸留残物に苛性ソーダと硝酸ソーダの混合物を加え、該混合物の溶融温度以上に加熱してセレンテルルを溶解し、これを水浸出してセレンテルルを含む浸出液と白金族を含む浸出残渣とに分離するアルカリ溶融工程とを有することを特徴とするセレンテルル白金族含有物の処理方法。
  2. 脱銅電解スライムの貴金属回収処理系における金抽出後液に亜硫酸ガスを導入して還元処理し、先に沈澱したセレン滓を蒸留して高純度のセレンを分離した残物をアルカリ溶融処理し、後に沈澱したテルル滓をアルカリ浸出処理する請求項1に記載する処理方法。
  3. テルル滓をアルカリ濃度5〜8モル/Lの強アルカリ溶液に混合し、60〜90℃の温度下でアルカリ浸出を行う請求項2に記載する処理方法。
  4. セレン滓の蒸留残物に苛性ソーダと硝酸ソーダの混合物を加え、350〜450℃に加熱してアルカリ溶融を行う請求項2に記載する処理方法。
  5. アルカリ溶融工程の水浸出で得た浸出液をアルカリ浸出工程に循環し、セレンテルル白金族含有物と共にアルカリ浸出を行う請求項1〜4の何れかに記載する処理方法。
  6. アルカリ浸出工程で得た浸出液に硫酸または塩酸を加えて中和し、セレンテルルを沈殿させる請求項1〜5の何れかに記載する処理方法。
  7. アルカリ浸出工程およびアルカリ溶融工程において生じた浸出残渣に酸化剤の存在下で塩酸を加えて白金族を溶解させる請求項1〜6の何れかに記載する処理方法。
  8. 請求項7の処理工程において得た白金族浸出液に塩化アンモニウムを添加して塩化白金酸アンモニウムを沈澱させ、これを濾別回収して洗浄後、800℃以上に加熱してスポンジ状の高純度白金を得る工程を含む処理方法。
  9. 請求項8の処理工程において、塩化白金酸アンモニウムを分離した濾液にアンモニアを添加してジクロロジアミンパラジウムを沈澱させ、これを濾別回収して洗浄後、800℃以上に加熱してスポンジ状の高純度パラジウムを得る工程を含む処理方法。
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