JP4275246B2 - いす式階段昇降装置 - Google Patents
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Description
【０００１】
【発明の属する技術分野】
この発明は、階段の昇降をいすに座った状態で行えるいす式階段昇降装置、更に詳しくは、ガイドレールに沿っていすを移動させるための駆動要素であるラック又はチェーンの配置構造に関する。
【０００２】
【従来の技術】
階段の昇降が困難な人の福祉機器として、階段の傾斜に沿って設けたガイドレールに、該ガイドレールに沿って移動するいすを設け、このいすに座るだけで階段を昇降できるようにしたいす式階段昇降装置がすでに提案されている。
【０００３】
上記いす式階段昇降装置１は、図１０と図１１に示すように、階段Ａの傾斜に沿ってガイドレールＢを設置し、このガイドレールＢが上下に平行するレール２、３からなり、該レール２、３に昇降機構４を複数のガイドローラ１２を介して装着し、該昇降機構４に座席部５と足置き台６、背もたれ７及び肘かけ８からなるいす９を取り付けた構造を有し、いす９に腰をかけた状態でスイッチを操作し、昇降機構４を起動させることによりいす９がレール２、３に沿って移動し、いす９に座った状態で階段Ａの昇降が行えるようになっている。
【０００４】
このようないす式階段昇降装置１の駆動方式としては、レール２、３に平行してラック１０やチェーンを配置し、昇降機構４内に設けた駆動機のピニオン１１又はスプロケットをラック１０又はチェーンに噛み合わせ、駆動機の起動によるピニオン１１又はスプロケットの回転でレール２、３に沿っていす９を移動させるようになっている。
【０００５】
このような、ラック１０とピニオン１１又は、チェーンとスプロケットによる駆動方式は、直線階段、曲線階段の双方に対応し得る駆動要素として確立されたものであるが、従来のいす式階段昇降装置１におけるラック１０の配置は、図１１で示したように、鋼製やステンレス製のパイプであるガイドレール２の外面にラック１０を固定した構造になっていた。また、チェーンの場合も同様の構造である。
【０００６】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、いす式階段昇降装置１の設置は大半が一般家庭であり、上記のようなレール２の外面にラック１０又はチェーンを固定した構造は、ラック１０又はチェーンの全てが目に見え、いす式階段昇降装置１全体の意匠的価値を低下させると共に、ラック１０又はチェーンは手の触れる位置に存在しているので、ラック１０の尖った歯先やチェーンに手が触れて怪我をする危険性が十分にあり、また、ラック１０又はチェーンに衣類が接触して汚れたり引っ掛かってしまうことがある。
【０００７】
そこで、この発明の課題は、ラック又はチェーンをガイドレールの内部に収納した隠蔽状態で配置することにより、ラック又はチェーンが見えなくなっていす式階段昇降装置全体の意匠的価値を向上させることができ、しかも、ラック又はチェーンによる怪我や衣類の汚れ等の発生を防ぐことができるいす式階段昇降装置を提供することにある。
【０００８】
【課題を解決するための手段】
上記のような課題を解決するため、請求項１の発明は、階段の傾斜に沿って設けられるガイドレールにラックが平行に設けられ、前記ガイドレールに装着した昇降機構を、駆動機の前記ラックに噛み合うピニオンの回転によって前記ガイドレールに沿って移動するようにし、前記昇降機構にはいすが設けられるいす式階段昇降装置において、
前記ガイドレールは、断面が上下に長い長円状に形成され、
前記ガイドレールの下部には、前記ラックの幅と高さが収まる大きさの角形で、下面に開放する収納溝が形成され、
前記ラックは、前記収納溝内へ収納されて外部から隠蔽された状態で前記収納溝の上壁に固定されており、
前記ガイドレールの上部によって案内される上側ガイドローラと、
二分割されたローラ部分の間に前記ピニオンを配置して形成され、前記ガイドレールの下側に配置され、前記駆動機によって駆動される取り付け軸に固定される下側ガイドローラとを有し、
前記下側ガイドローラの各ローラ部分が前記ガイドレールの下面に当接した状態で、前記ピニオンが前記ラックに噛み合うことを特徴とするいす式階段昇降装置である。
【０００９】
請求項２の発明は、前記ガイドレールが、上下に平行状態で配置した二本のレールで形成され、前記ラックは、両レールの各々の前記収納溝内へ収納されて外部から隠蔽された状態で前記収納溝の上壁に固定され、昇降機構に上下のラックのそれぞれに別個に噛み合うピニオンを設けたことを特徴とする。
【００１０】
請求項３の発明は、階段の傾斜に沿って設けられるガイドレールにチェーンが平行に設けられ、前記ガイドレールに装着した昇降機構を、駆動機の前記チェーンに噛み合うスプロケットの回転によって前記ガイドレールに沿って移動するようにし、前記昇降機構にはいすが設けられるいす式階段昇降装置において、
前記ガイドレールは、断面が上下に長い長円状に形成され、
前記ガイドレールの下部には、前記ラックの幅と高さが収まる大きさの角形で、下面に開放する収納溝が形成され、
前記チェーンは、前記収納溝内へ収納されて外部から隠蔽された状態で前記収納溝の上壁に固定されており、
前記ガイドレールの上部によって案内される上側ガイドローラと、
二分割されたローラ部分の間に前記スプロケットを配置して形成され、前記ガイドレールの下側に配置され、前記駆動機によって駆動される取り付け軸に固定される下側ガイドローラとを有し、
前記下側ガイドローラの各ローラ部分が前記ガイドレールの下面に当接した状態で、前記スプロケットが前記チェーンに噛み合うことを特徴とする。
【００１１】
請求項４の発明は、前記ガイドレールが、上下に平行状態で配置した二本のレールで形成され、前記チェーンは、両レールの各々の前記収納溝内へ収納されて外部から隠蔽された状態で前記収納溝の上壁に固定され、昇降機構に上下のチェーンのそれぞれに別個に噛み合うスプロケットを設けたことを特徴とする。
【００１３】
ここで、ガイドレールは、アルミニウム合金の押し出し成形材やホーミング材等の成形材によって形成され、ラック又はチェーンの収納空間の形成が自由に行え、曲げ加工することにより曲線階段にも対応可能である。
【００１４】
【発明の実施の形態】
以下、この発明の実施の形態を図１乃至図９の図示例と共に説明する。
【００１５】
図１に示すように、この発明のいす式階段昇降装置２１の基本的な構成は、階段Ａの傾斜に沿って設けたガイドレールＢが上下に配置した二条のレール２２、２３からなり、このレール２２、２３をレール支持材２４への取り付けによって平行状に設置し、該レール２２、２３に昇降機構２５をレール２２、２３に沿って移動するよう装着し、この昇降機構２５に座席部２６と足置き台２７、背もたれ２８及び肘かけ２９からなるいす３０を取り付けた構造を有している。
【００１６】
図１乃至図４に示す第１の実施の形態は、いす３０の移動方式にラックとピニオンを用いた例である。
【００１７】
上下一方のレール２２の内部で長さ方向の全長に沿って、該レール２２と平行するよう隠蔽状に収納したラック３７を固定し、上記昇降機構２５は、上下のレール２２、２３に複数のガイドローラ３１、３２、３３、３４を介して支持されるケース３５の内部に駆動機であるモータを収納し、このモータで駆動されるピニオン３６を、上記ラック３７に噛み合わせ、いす３０に腰をかけた状態で肘かけ２９等に設けたスイッチを操作し、モータの起動によるピニオン３６の回転で、いす３０がレール２２、２３に沿って移動し、いす３０に座った状態で階段Ａの昇降が行えるようになっている。
【００１８】
図３と図４はレール２２に対するラック３７の取り付け構造を示し、レール２２は、例えば、アルミニウム合金を用い、上下に長い長円状のパイプに押し出し成形されたものやホーミング材等の成形材を用い、内側の一方側面にレール支持材２４の支持アーム２４ａに対する取り付け溝３８と、内側の下部位置にラック３７の収納溝３９を設けた断面形状になっている。なお、レール２２、２３は、直線だけでなく、曲げ加工することにより曲線階段にも対応可能であり、ラック３７もレール２２、２３に合わせて曲げればよい。
【００１９】
上記ラック３７の収納溝３９は、該ラック３７の幅と高さが納まる大きさの角形で、レール２２の下面において開放する形状となり、ラック３７はこの収納溝３９の上壁にボルト止め等によって固定され、収納溝３９内への収納によりラック３７は外部から隠蔽された配置となり、昇降機構２５のピニオン３６は、収納溝３９の下面開放部分からラック３７に噛み合う配置となる。
【００２０】
前記ラック３７は、収納溝３９の上壁にボルト止め等で固定されることにより、ラック歯が鉛直方向において下向きの状態でレール２２に固定され、かつ、レール２２で周囲が囲まれているため、粉塵、ごみなどでラック歯の歯面が汚れ、ピニオン３６の噛み合いに影響を及ぼす心配はない。
【００２１】
図示の場合、ピニオン３６は、レール２２の下面に当接するガイドローラ３２と取り付け軸４０を共用しており、図３のように、溝型のガイドローラ３２を二分割してその間にピニオン３６を配置した状態で、モータにより駆動される取り付け軸４０に取り付けてキー結合で固定し、ガイドローラ３２がレール２２の下面に当接する状態でピニオン３６がラック３７に噛み合う状態になり、モータの起動でガイドローラ３２とピニオン３６が一体に回転することになり、これによっていす３０は、レール２２と２３に沿って移動することになる。
【００２２】
なお、図示の場合、下部のレール２３は、上部レール２２と同じ断面形状のものを使用したが、他の断面形状のものを用いてもよい。
【００２３】
図５と図６及び図７に示す第２の実施の形態は、いす３０の移動方式にチェーンとスプロケットを用いた例であり、先の第１の実施の形態と同一部分については同一符号を付して説明に代える。
【００２４】
この第２の実施の形態においては、第１の実施の形態のラック３７をチェーン４１に、ピニオン３６をスプロケット４２に代えたものであり、レール２２の収納溝３９内にチェーン４１を収納してボルト止め等の手段で固定し、スプロケット４２は、レール２２の下面に当接するガイドローラ３２と取り付け軸４０を共用し、チェーン４１に噛み合うことにより、いす３０をレール２２と２３に沿って移動させるものである。
【００２５】
上記チェーン４１は、フレキシブルな構造のものを用いることにより、曲線階段にも対応可能であり、レール２２内に下向きの状態で固定されることにより、隠蔽状となって外部から見えないだけでなく、スプロケット４２の噛み合い面に粉塵、ごみなどの付着がない。
【００２６】
図７はレール２２に対するチェーン４１の具体的な取り付け構造を示し、押し出し成形されるレール２２を、収納溝３９の内側にガイド溝４３を連成した断面形状に形成し、チェーン４１の全長に渡って設けたプレート４４をガイド溝４３内に挿入して走らせ、これにより収納溝３９の内部にチェーン４１を配置し、この後チェーン４１をレール２２にボルト止め等の手段で固定したものである。
【００２７】
図８及び図９に示す第３の実施の形態は、上下レール２２と２３の各々の内部に、第１又は第２の実施の形態と同様の手段で、ラック又はチェーンをそれぞれ隠蔽状となるよう収納し、昇降機構２５には、上下のラック又はチェーンのそれぞれに、収納溝３９の下面開放部分から別個に噛み合うピニオン又はスプロケットを設けた構造になっている。
【００２８】
この第３の実施の形態のように、上下レール２２と２３の各々の内部にラック又はチェーンをそれぞれ隠蔽状となるよう収納し、昇降機構２５のピニオン又はスプロケットを上下のラック又はチェーンのそれぞれに別個に噛み合うようにすれば、ガイドレールＢに沿ういす３０の移動のための駆動が上下ダブル方式となり、駆動が上下で行われることにより、いす３０の左右の振れがなくなり、しかも、ラック又はチェーンにかかる負荷を上下で分散することにより半減することができるという利点がある。
【００２９】
【発明の効果】
以上のように、この発明によると、階段の傾斜に沿ってガイドレールとラック又はチェーンを設け、ガイドレールに、該ガイドレールに沿って移動するいすを取り付け、ラック又はチェーンに噛み合うピニオンやスプロケットの駆動により、いすに座るだけで階段を昇降できるようにしたいす式階段昇降装置において、ラック又はチェーンをガイドレールの内部に収納した隠蔽状態で配置したので、ラック又はチェーンが外部から見えることがなく、いす式階段昇降装置全体の意匠的価値を向上させることができる。
【００３０】
また、ラック又はチェーンをガイドレールの内部に隠蔽することにより、ラック又はチェーンに手が触れて怪我をする危険性が防止でき、かつ、ラック又はチェーンに衣類が接触して汚れたり引っ掛かってしまうこともなくなる。
【００３１】
さらに、ガイドレールの内部に隠蔽したラック又はチェーンを、ラック歯又はチェーンのスプロケットかみ合い面が鉛直方向において下向きの状態でガイドレールに固定したので、粉塵、ごみなどの付着でラック歯又はチェーンの歯面が汚れることにより、ピニオンやスプロケットの噛み合いに悪影響を及ぼすというような心配はない。
【００３２】
また、ガイドレールを上下二条のレールで形成し、上下両レールの各々にラック又はチェーンを隠蔽状態で収納し、昇降機構に上下のラック又はチェーンのそれぞれに別個に噛み合うピニオン又はスプロケットを設けたので、いすの移動のための駆動が上下ダブル方式となり、駆動が上下で行われることにより、いすの左右の振れがなくなり、しかも、ラック又はチェーンにかかる負荷を上下で分散することにより半減できることになる。
【図面の簡単な説明】
【図１】この発明に係るいす式階段昇降装置の第１の実施の形態を示す縦断側面図
【図２】同上におけるガイドレールとガイドローラの構造を示す背面図
【図３】ガイドレールとガイドローラ及びラックの構造を示す縦断側面図
【図４】同上の一部切り欠き正面図
【図５】ガイドレールとガイドローラ及びチェーンの構造を示す第２の実施の形態を示す縦断側面図
【図６】同上の一部切り欠き正面図
【図７】ガイドレールに対するチェーンの具体的な取り付け構造を示す拡大断面図
【図８】この発明に係るいす式階段昇降装置の第３の実施の形態を示す縦断側面図
【図９】同上におけるガイドレールとガイドローラの構造を示す背面図
【図１０】従来のいす式階段昇降装置の縦断正面図
【図１１】従来のいす式階段昇降装置のガイドレールとガイドローラ及びラックの構造を示す縦断側面図
【符号の説明】
２１ いす式階段昇降装置
２２ レール
２３ レール
２５ 昇降機構
３０ いす
３１ ガイドローラ
３２ ガイドローラ
３３ ガイドローラ
３４ ガイドローラ
３６ ピニオン
３７ ラック
３９ 収納溝
４１ チェーン
４２ スプロケット
Ａ 階段
Ｂ ガイドレール
【発明の属する技術分野】
この発明は、階段の昇降をいすに座った状態で行えるいす式階段昇降装置、更に詳しくは、ガイドレールに沿っていすを移動させるための駆動要素であるラック又はチェーンの配置構造に関する。
【０００２】
【従来の技術】
階段の昇降が困難な人の福祉機器として、階段の傾斜に沿って設けたガイドレールに、該ガイドレールに沿って移動するいすを設け、このいすに座るだけで階段を昇降できるようにしたいす式階段昇降装置がすでに提案されている。
【０００３】
上記いす式階段昇降装置１は、図１０と図１１に示すように、階段Ａの傾斜に沿ってガイドレールＢを設置し、このガイドレールＢが上下に平行するレール２、３からなり、該レール２、３に昇降機構４を複数のガイドローラ１２を介して装着し、該昇降機構４に座席部５と足置き台６、背もたれ７及び肘かけ８からなるいす９を取り付けた構造を有し、いす９に腰をかけた状態でスイッチを操作し、昇降機構４を起動させることによりいす９がレール２、３に沿って移動し、いす９に座った状態で階段Ａの昇降が行えるようになっている。
【０００４】
このようないす式階段昇降装置１の駆動方式としては、レール２、３に平行してラック１０やチェーンを配置し、昇降機構４内に設けた駆動機のピニオン１１又はスプロケットをラック１０又はチェーンに噛み合わせ、駆動機の起動によるピニオン１１又はスプロケットの回転でレール２、３に沿っていす９を移動させるようになっている。
【０００５】
このような、ラック１０とピニオン１１又は、チェーンとスプロケットによる駆動方式は、直線階段、曲線階段の双方に対応し得る駆動要素として確立されたものであるが、従来のいす式階段昇降装置１におけるラック１０の配置は、図１１で示したように、鋼製やステンレス製のパイプであるガイドレール２の外面にラック１０を固定した構造になっていた。また、チェーンの場合も同様の構造である。
【０００６】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、いす式階段昇降装置１の設置は大半が一般家庭であり、上記のようなレール２の外面にラック１０又はチェーンを固定した構造は、ラック１０又はチェーンの全てが目に見え、いす式階段昇降装置１全体の意匠的価値を低下させると共に、ラック１０又はチェーンは手の触れる位置に存在しているので、ラック１０の尖った歯先やチェーンに手が触れて怪我をする危険性が十分にあり、また、ラック１０又はチェーンに衣類が接触して汚れたり引っ掛かってしまうことがある。
【０００７】
そこで、この発明の課題は、ラック又はチェーンをガイドレールの内部に収納した隠蔽状態で配置することにより、ラック又はチェーンが見えなくなっていす式階段昇降装置全体の意匠的価値を向上させることができ、しかも、ラック又はチェーンによる怪我や衣類の汚れ等の発生を防ぐことができるいす式階段昇降装置を提供することにある。
【０００８】
【課題を解決するための手段】
上記のような課題を解決するため、請求項１の発明は、階段の傾斜に沿って設けられるガイドレールにラックが平行に設けられ、前記ガイドレールに装着した昇降機構を、駆動機の前記ラックに噛み合うピニオンの回転によって前記ガイドレールに沿って移動するようにし、前記昇降機構にはいすが設けられるいす式階段昇降装置において、
前記ガイドレールは、断面が上下に長い長円状に形成され、
前記ガイドレールの下部には、前記ラックの幅と高さが収まる大きさの角形で、下面に開放する収納溝が形成され、
前記ラックは、前記収納溝内へ収納されて外部から隠蔽された状態で前記収納溝の上壁に固定されており、
前記ガイドレールの上部によって案内される上側ガイドローラと、
二分割されたローラ部分の間に前記ピニオンを配置して形成され、前記ガイドレールの下側に配置され、前記駆動機によって駆動される取り付け軸に固定される下側ガイドローラとを有し、
前記下側ガイドローラの各ローラ部分が前記ガイドレールの下面に当接した状態で、前記ピニオンが前記ラックに噛み合うことを特徴とするいす式階段昇降装置である。
【０００９】
請求項２の発明は、前記ガイドレールが、上下に平行状態で配置した二本のレールで形成され、前記ラックは、両レールの各々の前記収納溝内へ収納されて外部から隠蔽された状態で前記収納溝の上壁に固定され、昇降機構に上下のラックのそれぞれに別個に噛み合うピニオンを設けたことを特徴とする。
【００１０】
請求項３の発明は、階段の傾斜に沿って設けられるガイドレールにチェーンが平行に設けられ、前記ガイドレールに装着した昇降機構を、駆動機の前記チェーンに噛み合うスプロケットの回転によって前記ガイドレールに沿って移動するようにし、前記昇降機構にはいすが設けられるいす式階段昇降装置において、
前記ガイドレールは、断面が上下に長い長円状に形成され、
前記ガイドレールの下部には、前記ラックの幅と高さが収まる大きさの角形で、下面に開放する収納溝が形成され、
前記チェーンは、前記収納溝内へ収納されて外部から隠蔽された状態で前記収納溝の上壁に固定されており、
前記ガイドレールの上部によって案内される上側ガイドローラと、
二分割されたローラ部分の間に前記スプロケットを配置して形成され、前記ガイドレールの下側に配置され、前記駆動機によって駆動される取り付け軸に固定される下側ガイドローラとを有し、
前記下側ガイドローラの各ローラ部分が前記ガイドレールの下面に当接した状態で、前記スプロケットが前記チェーンに噛み合うことを特徴とする。
【００１１】
請求項４の発明は、前記ガイドレールが、上下に平行状態で配置した二本のレールで形成され、前記チェーンは、両レールの各々の前記収納溝内へ収納されて外部から隠蔽された状態で前記収納溝の上壁に固定され、昇降機構に上下のチェーンのそれぞれに別個に噛み合うスプロケットを設けたことを特徴とする。
【００１３】
ここで、ガイドレールは、アルミニウム合金の押し出し成形材やホーミング材等の成形材によって形成され、ラック又はチェーンの収納空間の形成が自由に行え、曲げ加工することにより曲線階段にも対応可能である。
【００１４】
【発明の実施の形態】
以下、この発明の実施の形態を図１乃至図９の図示例と共に説明する。
【００１５】
図１に示すように、この発明のいす式階段昇降装置２１の基本的な構成は、階段Ａの傾斜に沿って設けたガイドレールＢが上下に配置した二条のレール２２、２３からなり、このレール２２、２３をレール支持材２４への取り付けによって平行状に設置し、該レール２２、２３に昇降機構２５をレール２２、２３に沿って移動するよう装着し、この昇降機構２５に座席部２６と足置き台２７、背もたれ２８及び肘かけ２９からなるいす３０を取り付けた構造を有している。
【００１６】
図１乃至図４に示す第１の実施の形態は、いす３０の移動方式にラックとピニオンを用いた例である。
【００１７】
上下一方のレール２２の内部で長さ方向の全長に沿って、該レール２２と平行するよう隠蔽状に収納したラック３７を固定し、上記昇降機構２５は、上下のレール２２、２３に複数のガイドローラ３１、３２、３３、３４を介して支持されるケース３５の内部に駆動機であるモータを収納し、このモータで駆動されるピニオン３６を、上記ラック３７に噛み合わせ、いす３０に腰をかけた状態で肘かけ２９等に設けたスイッチを操作し、モータの起動によるピニオン３６の回転で、いす３０がレール２２、２３に沿って移動し、いす３０に座った状態で階段Ａの昇降が行えるようになっている。
【００１８】
図３と図４はレール２２に対するラック３７の取り付け構造を示し、レール２２は、例えば、アルミニウム合金を用い、上下に長い長円状のパイプに押し出し成形されたものやホーミング材等の成形材を用い、内側の一方側面にレール支持材２４の支持アーム２４ａに対する取り付け溝３８と、内側の下部位置にラック３７の収納溝３９を設けた断面形状になっている。なお、レール２２、２３は、直線だけでなく、曲げ加工することにより曲線階段にも対応可能であり、ラック３７もレール２２、２３に合わせて曲げればよい。
【００１９】
上記ラック３７の収納溝３９は、該ラック３７の幅と高さが納まる大きさの角形で、レール２２の下面において開放する形状となり、ラック３７はこの収納溝３９の上壁にボルト止め等によって固定され、収納溝３９内への収納によりラック３７は外部から隠蔽された配置となり、昇降機構２５のピニオン３６は、収納溝３９の下面開放部分からラック３７に噛み合う配置となる。
【００２０】
前記ラック３７は、収納溝３９の上壁にボルト止め等で固定されることにより、ラック歯が鉛直方向において下向きの状態でレール２２に固定され、かつ、レール２２で周囲が囲まれているため、粉塵、ごみなどでラック歯の歯面が汚れ、ピニオン３６の噛み合いに影響を及ぼす心配はない。
【００２１】
図示の場合、ピニオン３６は、レール２２の下面に当接するガイドローラ３２と取り付け軸４０を共用しており、図３のように、溝型のガイドローラ３２を二分割してその間にピニオン３６を配置した状態で、モータにより駆動される取り付け軸４０に取り付けてキー結合で固定し、ガイドローラ３２がレール２２の下面に当接する状態でピニオン３６がラック３７に噛み合う状態になり、モータの起動でガイドローラ３２とピニオン３６が一体に回転することになり、これによっていす３０は、レール２２と２３に沿って移動することになる。
【００２２】
なお、図示の場合、下部のレール２３は、上部レール２２と同じ断面形状のものを使用したが、他の断面形状のものを用いてもよい。
【００２３】
図５と図６及び図７に示す第２の実施の形態は、いす３０の移動方式にチェーンとスプロケットを用いた例であり、先の第１の実施の形態と同一部分については同一符号を付して説明に代える。
【００２４】
この第２の実施の形態においては、第１の実施の形態のラック３７をチェーン４１に、ピニオン３６をスプロケット４２に代えたものであり、レール２２の収納溝３９内にチェーン４１を収納してボルト止め等の手段で固定し、スプロケット４２は、レール２２の下面に当接するガイドローラ３２と取り付け軸４０を共用し、チェーン４１に噛み合うことにより、いす３０をレール２２と２３に沿って移動させるものである。
【００２５】
上記チェーン４１は、フレキシブルな構造のものを用いることにより、曲線階段にも対応可能であり、レール２２内に下向きの状態で固定されることにより、隠蔽状となって外部から見えないだけでなく、スプロケット４２の噛み合い面に粉塵、ごみなどの付着がない。
【００２６】
図７はレール２２に対するチェーン４１の具体的な取り付け構造を示し、押し出し成形されるレール２２を、収納溝３９の内側にガイド溝４３を連成した断面形状に形成し、チェーン４１の全長に渡って設けたプレート４４をガイド溝４３内に挿入して走らせ、これにより収納溝３９の内部にチェーン４１を配置し、この後チェーン４１をレール２２にボルト止め等の手段で固定したものである。
【００２７】
図８及び図９に示す第３の実施の形態は、上下レール２２と２３の各々の内部に、第１又は第２の実施の形態と同様の手段で、ラック又はチェーンをそれぞれ隠蔽状となるよう収納し、昇降機構２５には、上下のラック又はチェーンのそれぞれに、収納溝３９の下面開放部分から別個に噛み合うピニオン又はスプロケットを設けた構造になっている。
【００２８】
この第３の実施の形態のように、上下レール２２と２３の各々の内部にラック又はチェーンをそれぞれ隠蔽状となるよう収納し、昇降機構２５のピニオン又はスプロケットを上下のラック又はチェーンのそれぞれに別個に噛み合うようにすれば、ガイドレールＢに沿ういす３０の移動のための駆動が上下ダブル方式となり、駆動が上下で行われることにより、いす３０の左右の振れがなくなり、しかも、ラック又はチェーンにかかる負荷を上下で分散することにより半減することができるという利点がある。
【００２９】
【発明の効果】
以上のように、この発明によると、階段の傾斜に沿ってガイドレールとラック又はチェーンを設け、ガイドレールに、該ガイドレールに沿って移動するいすを取り付け、ラック又はチェーンに噛み合うピニオンやスプロケットの駆動により、いすに座るだけで階段を昇降できるようにしたいす式階段昇降装置において、ラック又はチェーンをガイドレールの内部に収納した隠蔽状態で配置したので、ラック又はチェーンが外部から見えることがなく、いす式階段昇降装置全体の意匠的価値を向上させることができる。
【００３０】
また、ラック又はチェーンをガイドレールの内部に隠蔽することにより、ラック又はチェーンに手が触れて怪我をする危険性が防止でき、かつ、ラック又はチェーンに衣類が接触して汚れたり引っ掛かってしまうこともなくなる。
【００３１】
さらに、ガイドレールの内部に隠蔽したラック又はチェーンを、ラック歯又はチェーンのスプロケットかみ合い面が鉛直方向において下向きの状態でガイドレールに固定したので、粉塵、ごみなどの付着でラック歯又はチェーンの歯面が汚れることにより、ピニオンやスプロケットの噛み合いに悪影響を及ぼすというような心配はない。
【００３２】
また、ガイドレールを上下二条のレールで形成し、上下両レールの各々にラック又はチェーンを隠蔽状態で収納し、昇降機構に上下のラック又はチェーンのそれぞれに別個に噛み合うピニオン又はスプロケットを設けたので、いすの移動のための駆動が上下ダブル方式となり、駆動が上下で行われることにより、いすの左右の振れがなくなり、しかも、ラック又はチェーンにかかる負荷を上下で分散することにより半減できることになる。
【図面の簡単な説明】
【図１】この発明に係るいす式階段昇降装置の第１の実施の形態を示す縦断側面図
【図２】同上におけるガイドレールとガイドローラの構造を示す背面図
【図３】ガイドレールとガイドローラ及びラックの構造を示す縦断側面図
【図４】同上の一部切り欠き正面図
【図５】ガイドレールとガイドローラ及びチェーンの構造を示す第２の実施の形態を示す縦断側面図
【図６】同上の一部切り欠き正面図
【図７】ガイドレールに対するチェーンの具体的な取り付け構造を示す拡大断面図
【図８】この発明に係るいす式階段昇降装置の第３の実施の形態を示す縦断側面図
【図９】同上におけるガイドレールとガイドローラの構造を示す背面図
【図１０】従来のいす式階段昇降装置の縦断正面図
【図１１】従来のいす式階段昇降装置のガイドレールとガイドローラ及びラックの構造を示す縦断側面図
【符号の説明】
２１ いす式階段昇降装置
２２ レール
２３ レール
２５ 昇降機構
３０ いす
３１ ガイドローラ
３２ ガイドローラ
３３ ガイドローラ
３４ ガイドローラ
３６ ピニオン
３７ ラック
３９ 収納溝
４１ チェーン
４２ スプロケット
Ａ 階段
Ｂ ガイドレール
Claims (4)
- 階段の傾斜に沿って設けられるガイドレールにラックが平行に設けられ、前記ガイドレールに装着した昇降機構を、駆動機の前記ラックに噛み合うピニオンの回転によって前記ガイドレールに沿って移動するようにし、前記昇降機構にはいすが設けられるいす式階段昇降装置において、
前記ガイドレールは、断面が上下に長い長円状に形成され、
前記ガイドレールの下部には、前記ラックの幅と高さが収まる大きさの角形で、下面に開放する収納溝が形成され、
前記ラックは、前記収納溝内へ収納されて外部から隠蔽された状態で前記収納溝の上壁に固定されており、
前記ガイドレールの上部によって案内される上側ガイドローラと、
二分割されたローラ部分の間に前記ピニオンを配置して形成され、前記ガイドレールの下側に配置され、前記駆動機によって駆動される取り付け軸に固定される下側ガイドローラとを有し、
前記下側ガイドローラの各ローラ部分が前記ガイドレールの下面に当接した状態で、前記ピニオンが前記ラックに噛み合うことを特徴とするいす式階段昇降装置。 - 前記ガイドレールが、上下に平行状態で配置した二本のレールで形成され、前記ラックは、両レールの各々の前記収納溝内へ収納されて外部から隠蔽された状態で前記収納溝の上壁に固定され、昇降機構に上下のラックのそれぞれに別個に噛み合うピニオンを設けたことを特徴とする請求項１に記載のいす式階段昇降装置。
- 階段の傾斜に沿って設けられるガイドレールにチェーンが平行に設けられ、前記ガイドレールに装着した昇降機構を、駆動機の前記チェーンに噛み合うスプロケットの回転によって前記ガイドレールに沿って移動するようにし、前記昇降機構にはいすが設けられるいす式階段昇降装置において、
前記ガイドレールは、断面が上下に長い長円状に形成され、
前記ガイドレールの下部には、前記ラックの幅と高さが収まる大きさの角形で、下面に開放する収納溝が形成され、
前記チェーンは、前記収納溝内へ収納されて外部から隠蔽された状態で前記収納溝の上壁に固定されており、
前記ガイドレールの上部によって案内される上側ガイドローラと、
二分割されたローラ部分の間に前記スプロケットを配置して形成され、前記ガイドレールの下側に配置され、前記駆動機によって駆動される取り付け軸に固定される下側ガイドローラとを有し、
前記下側ガイドローラの各ローラ部分が前記ガイドレールの下面に当接した状態で、前記スプロケットが前記チェーンに噛み合うことを特徴とするいす式階段昇降装置。 - 前記ガイドレールが、上下に平行状態で配置した二本のレールで形成され、前記チェーンは、両レールの各々の前記収納溝内へ収納されて外部から隠蔽された状態で前記収納溝の上壁に固定され、昇降機構に上下のチェーンのそれぞれに別個に噛み合うスプロケットを設けたことを特徴とする請求項３に記載のいす式階段昇降装置。
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