JP4272841B2 - インクジェット記録用シート - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、水性インク、油性インク等の液状インクや、常温では固体であり、溶融液状化させて印画に供する固体状インク等を用いたインクジェット記録に適した被記録材に関し、詳しくは、無機顔料微粒子と容易に反応し得るカチオンポリマーを用いたインク受容性能に優れたインクジェット記録用シートに関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、情報産業の急速な発展に伴い、種々の情報処理システムが開発され、その情報システムに適した記録方法および装置も開発され、各々実用化されている。
上記記録方法の中で、インクジェット記録方法は、多種の記録材料に記録可能なこと、ハード(装置)が比較的安価であること、コンパクトであること、静粛性に優れること等の点から、オフィスは勿論、いわゆるホームユースにおいても広く用いられてきている。
【0003】
また、近年のインクジェットプリンタの高解像度化に伴い、いわゆる写真ライクな高画質記録物を得ることも可能になってきている。さらに、ハード(装置)の発展に伴って、インクジェット記録用の記録シートも各種開発されてきている。
上記インクジェット記録用の記録シートに要求される特性としては、一般的に、(1)速乾性があること(インクの吸収速度が大きいこと)、(2)インクドットの径が適正で均一であること(ニジミのないこと)、(3)粒状性が良好であること、(4)ドットの真円性が高いこと、(5)色濃度が高いこと、(6)彩度が高いこと(くすみのないこと)、(7)印画部の耐光性、耐水性が良好なこと、(8)記録シートの白色度が高いこと、(9)記録シートの保存性が良好なこと(長期保存で黄変着色を起こさないこと)、(10)変形しにくく、寸法安定性が良好であること(カールが十分小さいこと)、(11)ハード走行性が良好であること等が挙げられる。更に、いわゆる写真ライクな高画質記録物を得る目的で用いられるフォト光沢紙の用途としては、上記特性に加えて、光沢性、表面平滑性、銀塩写真に類似した印画紙状の風合い等も要求される。
【0004】
これら特性の向上を目的として、色材受容層に多孔質構造を有し、インク吸収性(速乾性)に優れ、高い光沢を有するインクジェット記録用シートが開発され実用化されている。
【0005】
特開昭62−178384号公報および特公平3−24905号公報には、シランカップリング剤で表面処理したシリカ粒子を含有する色材受容層を有する記録材料が提案されている。しかし、これらシリカ粒子の表面活性が低下し、耐侯性は向上するものの、シリカ粒子間の凝集力も低下するため色材受容層の皮膜強度が弱くなってしまう。
【0006】
また、PVA等のバインダーとの混合時にシリカ分散液が凝集してしまい、粘度が高くなり安定性が悪くなってしまう。このため、分散液中のシリカ粒子の粒径が大きくなり、光沢度、塗膜強度、インク吸収速度、耐水性および印画濃度等に悪影響を与えてしまう。その中でも特に印画濃度に与える影響が大きく、印画濃度を大幅に低下させてしまう。
【0007】
特開2001−10209号公報には、無機顔料微粒子、アンモニア構造を有するシランカップリング剤およびカチオン性樹脂を含むインクジェット記録用紙が提案されている。しかし、上記インクジェット記録用シートは無機微粒子とカチオン性樹脂とを一液で支持体表面に塗布するものであり、アニオン電荷を有する無機微粒子との間で凝集を生じてしまいインクジェット記録用紙の諸性能を十分に発揮できない。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
上述のように、色材受容層が、ひび割れ等の発生がなく強固である一方、良好なインク吸収性を有し高解像度な画像が形成できると共に、その形成画像が耐水性、耐経時ニジミに優れるといったインク受容性能を備えながら、画像の印画濃度、鮮鋭性および光沢感に優れるインクジェット記録用シートは、未だ提供されていないのが現状である。
【0009】
本発明は、前記従来における諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、
本発明は、画像の印画濃度が高いインクジェット記録用シートを提供することを目的とする。
本発明は、ひび割れ等の発生がなく強固で、良好なインク吸収性を有し高解像度な画像を形成し、光沢度、耐水性および印画後の経時ニジミに優れ、太陽光や蛍光灯等の光照射下でも高い耐光性を示すインクジェット記録用シートを提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するための手段は以下の通りである。即ち、
【0014】
<1>無機顔料微粒子と、該無機顔料微粒子と結合し得る基を末端に有するカチオンポリマーと、の結合によって得られるカチオンポリマー変性無機顔料微粒子を含む色材受容層を支持体上に有し、前記無機顔料微粒子と結合し得る基を末端に有するカチオンポリマーが下記一般式(1)で表されることを特徴とするインクジェット記録用シートである。
【0018】
【化8】
【0019】
[式中X1、X2、X3はそれぞれ独立に水素原子、飽和または不飽和環状構造を含んでいてもよい、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数1〜8のアルコキシ基若しくはアリールオキシ基を表わす。また、X1、X2、X3のうち少なくとも一つはアルコキシ基またはアリールオキシ基を表わす。Yは置換基を有していてもよく、複素原子を介していてもよい総炭素数1〜18の二価の連結基を表わす。Aは下記(I)〜(II)から選ばれる少なくとも1種の繰り返し単位を表し、BはAと共重合可能な少なくとも1種の繰り返し単位を表す。m、nはそれぞれA成分とB成分とのモル比を表し、0.2≦m≦1.0,0≦n≦0.8(m+n=1.0)である。]
【0021】
(I)下記一般式(2)で表わされる繰り返し単位
【0022】
【化9】
【0023】
[式中、R1は水素原子または炭素数1〜4のアルキル基を表し、R2、R3、R4はそれぞれ独立に、水素原子、または、置換基を有していてもよく、また、連結して飽和若しくは不飽和環状構造を形成していてもよい、メチル基、若しくはベンジル基を表わす。Zは−NH−を表し、Y2は複素原子を介していてもよい総炭素数1〜8の二価の連結基を表す。X-は陰イオンを表す。]
【0024】
(II)下記一般式(3)で表わされる繰り返し単位
【0025】
【化10】
【0026】
[式中、R5は水素原子またはメチル基を表わす。R2、R3、R4、X-は一般式(2)と同義である。]
【0032】
<2>前記無機顔料微粒子と結合し得る基を末端に有するカチオンポリマーは、片末端のみに前記無機顔料微粒子と結合し得る基を有することを特徴とする<1>のインクジェット記録用シートである。
<3>前記無機顔料微粒子と結合し得る基は、アルコキシシリル基であることを特徴とする<1>または<2>のインクジェット記録用シートである。
【0033】
<4>前記無機顔料微粒子(x)と前記無機顔料微粒子と結合し得る基を末端に有するカチオンポリマー(y)との質量比(x:y)は、1:0.001〜1:0.2の範囲内であることを特徴とする<1>〜<3>のいずれか1項記載のインクジェット記録用シートである。
【0034】
<5>前記無機顔料微粒子が、シリカ微粒子、コロイダルシリカ、アルミナ微粒子及び擬ベーマイトから選ばれる1種または2種以上である<1>〜<4>のいずれか1項記載のインクジェット記録用シートである。
<6>前記色材受容層が、更に水溶性樹脂を含有するものである<1>〜<5>のいずれか1項記載のインクジェット記録用シートである。
<7>前記水溶性樹脂が、ポリビニルアルコール系樹脂、セルロース系樹脂、エーテル結合を有する樹脂、カルバモイル基を有する樹脂、カルボキシル基を有する樹脂及びゼラチン類から選ばれる1種又は2種以上である<6>記載のインクジェット記録用シートである。
<8>前記色材受容層が、更に水溶性樹脂を架橋し得る架橋剤を含有するものである<6>又は<7>記載のインクジェット記録用シートである。
<9>前記色材受容層が、更に媒染剤を含有するものである<1>〜<8>のいずれか1項記載のインクジェット記録用シートである。
<10>色材受容層が、少なくとも微粒子および水溶性樹脂を含有する塗布液を塗布した塗布層を架橋硬化させた層であり、該架橋硬化が、前記塗布液および/または下記塩基性溶液に架橋剤を添加し、かつ、(1)前記塗布液を塗布して塗布層を形成すると同時、または(2)前記塗布液を塗布して形成される塗布層の乾燥途中であって該塗布層が減率乾燥を示す前のいずれかのときに、pH8以上の塩基性溶液を該塗布層に付与することにより行われることを特徴とする<6>〜<9>のいずれか1項記載のインクジェット記録用シートである。
【0039】
《インクジェット記録用シート》
本発明のインクジェット記録用シートは、無機顔料微粒子と、該無機顔料微粒子と結合し得る基を末端に有する下記一般式(1)で表されるカチオンポリマー(以下「本発明におけるカチオンポリマー」という場合がある。)と、の結合によって得られるカチオンポリマー変性無機顔料微粒子を含む色材受容層を有することを特徴とする。色材受容層を形成する際、無機顔料分散時に本発明におけるカチオンポリマーを無機顔料微粒子分散液に添加すると該カチオンポリマーと無機顔料微粒子とが反応してカチオンポリマー変性無機顔料微粒子となり、その凝集、例えば後述するポリビニルアルコール等の水溶性樹脂と混合する際等の凝集を防ぐことができ、低粘度かつ分散粒子径の小さい塗布液を調製することができる。低粘度かつ粒子径の小さい分散液を用いるとインクジェット記録用シートの光沢度、色材受容層のひび割れ、インク吸収速度、耐水性、耐経時ニジミ等の諸性能を向上させることができ、特に印画濃度の高いインクジェット記録用シートを提供することができる。
また、カチオンポリマー変性無機顔料微粒子を用いると単に公知のカチオンポリマーを用いて無機顔料微粒子を分散させた場合に比べて、少量の添加で印画濃度を向上させることができる。このため、多量に公知のカチオンポリマーを用いた場合におこる色材受容層の着色がなく、耐光性および色材受容層の膜強度の低下、並びに経時ニジミの発生を防止することができる。
【0040】
〈色材受容層〉
まず、色材受容層に含まれる各材料について説明する。本発明における色材受容層は、少なくとも、カチオンポリマー変性無機顔料微粒子を含み、好ましくは、さらに水溶性樹脂、該水溶性樹脂を架橋し得る架橋剤および有機媒染剤を含み、その他必要に応じて各種添加剤を含んでいてもよい。
【0041】
(カチオンポリマー変性無機顔料微粒子)
本発明におけるカチオンポリマー変性無機顔料微粒子は,無機顔料微粒子と、本発明におけるカチオンポリマーと、の結合によって得られる。
【0042】
−本発明におけるカチオンポリマー−
本発明におけるカチオンポリマーは、無機顔料微粒子と結合し得る基を末端に有する。本発明におけるカチオンポリマーは、無機顔料微粒子と結合し得る基を少なくとも片末端に有していればよく、また両末端に有していてもよいが、無機顔料微粒子の分散性および流動性を向上させる観点からは片末端に有するのが好ましい。ここで「無機顔料微粒子と結合し得る基」とは、無機顔料微粒子と結合することができる基であれば、特に限定はないが、例えば、アルコキシシリル基、ハロゲン化シリル基、エポキシ基、イソシアネート基、酸ハロゲン化物、酸無水物等が挙げられ、アルコキシシリル基、エポキシ基、イソシアネート基、酸ハロゲン化物が好ましく、水中での安定性、および、無機顔料微粒子との反応性の点からアルコキシシリル基が特に好ましい。
【0043】
本発明におけるカチオンポリマーとしては、下記一般式(1)で表わされる。
【0044】
【化14】
【0045】
[式中X1、X2、X3はそれぞれ独立に水素原子、飽和または不飽和環状構造を含んでいてもよい、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数1〜8のアルコキシ基若しくはアリールオキシ基を表わす。また、X1、X2、X3のうち少なくとも一つはアルコキシ基またはアリールオキシ基を表わす。Yは置換基を有していてもよく、複素原子を介していてもよい総炭素数1〜18の二価の連結基を表わす。Aは下記(I)〜(II)から選ばれるカチオンを有する少なくとも1種の繰り返し単位を表し、BはAと共重合可能な少なくとも1種の繰り返し単位を表し、AとBの共重合体は、AとBの、ランダム、交互、ブロック、グラフトのいずれの共重合体であってもよい。m、nはそれぞれA成分とB成分とのモル比を表し、0.2≦m≦1.0,0≦n≦0.8(m+n=1.0)である。]
【0046】
一般式(1)中、X1、X2、X3は各々独立に水素原子、あるいは、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数1〜8のアルコキシ基若しくはアリールオキシ基を表わす。上記アルキル基、アルコキシ基およびアリールオキシ基は、飽和または不飽和環状構造を有していてもよい。但し、X1、X2、X3のうち少なくとも一つはアルコキシ基またはアリールオキシ基である。
【0047】
上記アルキル基の炭素数は1〜18であり、好ましくは1〜8である。該炭素数が18を超えると、無機顔料微粒子との反応性が低下し、凝集を防止できない場合がある。上記アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基、テトラデシル基、オクタデシル基が挙げられ、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基が好ましい。
【0048】
上記アルコキシ基の炭素数は1〜8であり、好ましくは1〜4である。該炭素数が8を超えると、無機顔料微粒子との反応性が低下し、凝集を防止できない場合がある。上記アルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、ヘキシルオキシ基、オクチルオキシ基が挙げられ、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基が好ましい。
【0049】
上記アリールオキシ基の炭素数は6〜14が好ましく、6〜10が更に好ましい。上記アリールオキシ基としては、フェノキシ基、メチルフェノキシ基、ニトロフェノキシ基、メトキシフェノキシ基、ナフトキシ基等が挙げられ、フェノキシ基、ニトロフェノキシ基、が好ましい。
【0050】
一般式(1)中、Yは置換基を有していてもよく、また複素原子を介していてもよい総炭素数1〜18の二価の連結基を表わす。Yの総炭素数としては、2〜8が好ましい。該総炭素数が18を超えると、水、アルコール系溶媒への溶解性が低下し、十分な性能を得られない場合がある。上記置換基としては、ハロゲン原子、水酸基、アミノ基、エステル基、エーテル基、アミド基等が挙げられる。。上記複素原子としては、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、ケイ素原子、リン原子等が挙げられ、酸素原子、窒素原子、硫黄原子が好ましい。
上記二価の連結基の好ましい具体例としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、テトラメチレン基、ヘキサメチレン基、キシリレン基、3−オキサペンタメチレン等が挙げられる。
【0051】
一般式(1)中、Aは、下記(I)〜(II)から選ばれるカチオンを有する少なくとも1種の繰り返し単位を表す。
尚、本発明において、Aは下記繰り返し単位(I)〜(IV)のうちの繰り返し単位(III)〜(IV)を含まないものとする。
【0052】
(I)下記一般式(2)で表わされる繰り返し単位
【0053】
【化15】
【0054】
[式中、R1は水素原子または炭素数1〜4のアルキル基を表し、R2、R3、R4はそれぞれ独立に、水素原子、または、置換基を有していてもよく、また、連結して飽和若しくは不飽和環状構造を形成していてもよい、メチル基、ベンジル基を表わす。Zは−NH−を表し、Y2は複素原子を介していてもよい総炭素数1〜8の二価の連結基を表す。X-は陰イオンを表す。]
【0056】
一般式(2)中、R1は水素原子または炭素数1〜4のアルキル基を表す。該アルキル基の炭素数としては1〜2が好ましい。該炭素数が4を超えると、重合体を得るのが困難な場合がある。該アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、i−ブチル基、n−ブチル基が挙げられる。R1としては水素原子、または、メチル基が好ましい。
一般式(2)中、R2、R3、R4はそれぞれ独立に、水素原子、または、炭素数1〜18のアルキル基、アリール基若しくはアラルキル基を表わす。該アルキル基、アリール基およびアラルキル基は置換基を有していてもよい。該置換基としては、上述と同様のものが挙げられる。
【0057】
上記アルキル基の炭素数は1〜18であり、好ましくは1〜8である。該炭素数が18を超えると、水、アルコールへの溶解性が低下し、十分な性能が得られない場合がある。上記アルキルとしては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基、テトラデシル基、オクタデシル基が挙げられ、メチル基、エチル基、ブチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基が好ましい。
【0058】
上記アリール基の炭素数は6〜14が好ましく、6〜10がさらに好ましい。上記アリール基としては、例えば、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基が挙げられ、フェニル基、トリル基が好ましい。
【0059】
上記アラルキル基の炭素数7〜15が好ましく、7〜11がさらに好ましい。上記アラルキル基としては、例えば、ベンジル基、フェネチル基、ジフェニルメチル基、トリフェニルメチル基、αまたはβ−スチリル基が挙げられ、ベンジル基が好ましい。
【0060】
一般式(2)中、Zは−NH−を表す。
一般式(2)中、Y2は複素原子を介していてもよい総炭素数1〜8の二価の連結基を表す。該複素原子としては上述と同様のものが挙げられる。Y2の総炭素数としては、2〜6が好ましい。該炭素数が8を超えると、水、アルコールへの溶解性が低下し、十分な性能が得られない場合がある。該二価の連結基としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、テトラメチレン基、ヘキサメチレン基、キシリレン基、3−オキサペンタメチレン等が挙げられる。
【0061】
一般式(2)中、X-は陰イオンを表わす。該陰イオンとしては、特に限定はないが、例えば、F-、Cl-、Br-、I-、AcO-、NO3 -、SO4 2-、HSO4 -、MeSO4 -、PO4 3-、HPO4 2-、H2PO4 -、TsO-、CH3SO3 -、ClO4 -、BF4 -、PF6 -、CH3CH2CO2 -、Ph−CO2 -、(CO2)2 2-、(メタ)アクリレートアニオンが挙げられる。
【0062】
以下に一般式(2)で表される繰り返し単位の具体例を挙げるが、本発明はこれに限定されるのものではない。但し、本発明においては、I−1〜I−13、I−15、I−18、I−21〜I−23、I−25〜I−28を除くものとする。
【0063】
【化16】
【0064】
【化17】
【0065】
(II)下記一般式(3)で表わされる繰り返し単位
【0066】
【化18】
【0067】
一般式(3)中、R5は水素原子またはメチル基を表わし、水素原子が好ましい。R2、R3、R4、X-は上記一般式(2)と同義である。
【0068】
以下に一般式(3)で表される繰り返し単位の具体例を挙げるが、本発明はこれに限定されるのものではない。
【0069】
【化19】
【0070】
【化20】
【0071】
(III)下記一般式(4)および/または一般式(5)で表わされる繰り返し単位
【0072】
【化21】
【0073】
一般式(4)および(5)中、R2、R3、X-は一般式(2)と同義である。
【0074】
以下に一般式(4)および(5)で表される繰り返し単位の具体例を挙げるが、本発明はこれに限定されるのものではない。
【0075】
【化22】
【0076】
【化23】
【0077】
【化24】
【0078】
(IV)下記一般式(6)および/または一般式(7)で表わされる繰り返し単位
【0079】
【化25】
【0080】
一般式(6)および(7)中、nは0または1を表わし1が好ましい、R2、R3、R4、X-は一般式(2)と同義である。
【0081】
以下に一般式(6)および(7)で表される繰り返し単位の具体例を挙げるが、本発明はこれに限定されるのものではない。
【0082】
【化26】
【0083】
【化27】
【0084】
一般式(1)中、BはAと共重合可能な少なくとも1種の繰り返し単位を表す。上記Bとしては、Aと共重合可能な繰り返し単位であれば特に限定はないが、芳香族ビニル化合物(例、スチレン、α−メチルスチレン、p−ヒドロキシスチレン、クロロメチルスチレン及びビニルトルエン)、(メタ)アクリル酸アルキルエステル(例、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、i−ブチル(メタ)アクリレート及び2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート)、(メタ)アクリル酸アルキルアリールエステル(例、ベンジル(メタ)アクリレート)、(メタ)アクリル酸置換アルキルエステル(例、グリシジル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート及びジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート)、アルキル(メタ)アクリルアミド(例、(メタ)アクリルアミド、ジメチル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、n−ブチル(メタ)アクリルアミド、tert−ブチル(メタ)アクリルアミド及びtert−オクチル(メタ)アクリルアミド)、置換アルキル(メタ)アクリルアミド(例、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド及びジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド)、シアン化ビニル(例、(メタ)アクリロニトリル及びα−クロロアクリロニトリル)、カルボン酸ビニルエステル(例、酢酸ビニル、安息香酸ビニル、ギ酸ビニル)、脂肪族共役ジエン(例、1,3−ブタジエン及びイソプレン)及び重合性オリゴマー(例、片末端メタクリロイル化ポリメチルメタクリレートオリゴマー、片末端メタクリロイル化ポリスチレンオリゴマー及び片末端メタクリロイル化ポリエチレングリコール)などが挙げられる。
【0085】
一般式(1)中、m、nはそれぞれA成分とB成分とのモル比を表わし、mは0.2≦m≦1.0であり、nは0.0≦n≦0.8である。ただし、m+n=1である。m:nとしては、好ましくは0.4:0.6〜1.0:0であり、0.5:0.5〜1.0:0がさらに好ましい。
また、本発明におけるカチオンポリマーの数平均分子量としては、1000〜100000が好ましく、1000〜20000がさらに好ましく、1500〜10000であることが特に好ましい。該数平均分子量が1000未満、或いは、100000を超えると無機顔料微粒子同士の凝集を防止できない場合がある。
【0086】
以下上記カチオンポリマーの具体例(カチオンポリマー1〜27)を挙げるが、本発明はこれに限定されるものではない。
但し、カチオンポリマー1、9〜11は、カチオンポリマーの具体例から除くものとする。
【0087】
【化28】
【0088】
【化29】
【0089】
【化30】
【0090】
【化31】
【0091】
【化32】
【0092】
【化33】
【0093】
【化34】
【0094】
−無機顔料微粒子−
上記無機顔料微粒子としては、例えば、シリカ微粒子、コロイダルシリカ、二酸化チタン、硫酸バリウム、珪酸カルシウム、ゼオライト、カオリナイト、ハロイサイト、雲母、タルク、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸カルシウム、ベーマイト、擬ベーマイト等を挙げることができる。中でも、シリカ微粒子、擬ベーマイトが特に好ましい。
【0095】
上記シリカ微粒子は、比表面積が特に大きいので、インクの吸収性、保持の効率が高く、また、屈折率が低いので、適切な粒子径まで分散をおこなえば色材受容層に透明性を付与でき、高い色濃度と良好な発色性が得られるという特徴がある。色材受容層が透明であることは、OHP等透明性が必要とされる用途のみならず、フォト光沢紙等の記録用シートに適用する場合でも、高い色濃度と良好な発色性を得る観点で重要である。
【0096】
上記無機顔料微粒子の平均一次粒子径としては、20nm以下が好ましく、10nm以下がさらに好ましく、3〜10nmが特に好ましい。
【0097】
上記シリカ微粒子は、その表面にシラノール基を有し、該シラノール基による水素結合によって粒子同士が付着しやすいため、上記のように平均一次粒子径が10nm以下の場合に空隙率の大きい構造を形成することができる。これにより、インク吸収特性を効果的に向上させることができる。
【0098】
また、シリカ微粒子は、その製造法によって湿式法粒子と乾式法粒子とに大別される。
上記湿式法では、ケイ酸塩の酸分解によって活性シリカを生成し、これを適度に重合させ凝集沈降させて含水シリカを得る方法が主流である。一方、乾式法は、ハロゲン化珪素の高温気相加水分解による方法(火炎加水分解法)や、ケイ砂とコークスとを電気炉中でアークによって加熱還元気化し、これを空気で酸化する方法(アーク法)によって無水シリカを得る方法が主流である。
【0099】
これらの方法で得られる含水シリカおよび無水シリカは、表面のシラノール基の密度、空孔の有無等に相違があるため、それぞれ異なった性質を示す。特に、無水シリカ(無水珪酸)は、空隙率が高い三次元構造を形成しやすいため好ましい。この理由は明らかではないが、含水シリカの場合には、微粒子表面におけるシラノール基の密度が5〜8個/nm2と多く、シリカ微粒子が密に凝集(アグリゲート)しやすい。一方、無水シリカの場合には、微粒子表面におけるシラノール基の密度が2〜3個/nm2と少ないため、疎な軟凝集(フロキュレート)となる。その結果、空隙率が高い構造になるものと推定される。
従って、本発明においては、微粒子表面におけるシラノール基の密度が2〜3個/nm2であるシリカ(シリカ微粒子)を用いることが好ましい。
【0100】
上記無機顔料微粒子としては、擬ベーマイトも好ましい。擬ベーマイトは、ベーマイト(組成式AlOOH)結晶のコロイド状凝集体であり、バインダーを含有するものが好ましい。その細孔特性として、平均細孔半径は1〜10nmが好ましく、3〜10nmがさらに好ましい。また、細孔容積は0.5〜1.0ml/gの範囲にあることが好ましい。
上記擬ベーマイトの塗工量は、5〜30g/m2の範囲にあることが好ましい。該塗工量が5g/m2未満の場合は、インクの吸収性が低下し、あるいは基材の凹凸の影響を受けて光沢性が悪くなるおそれがあるので好ましくない。塗工量が30g/m2を超える場合は、いたずらに擬ベーマイトを消費するだけでなく、擬ベーマイトの強度が低下するおそれがあるので好ましくない。
【0101】
擬ベーマイト塗工液の組成としては、バインダーを擬ベーマイト固形分100質量部に対して好ましくは5〜50質量部含み、全体の固形分濃度が5〜30質量%のものが好適に使用できる。塗工液の溶媒としては、取り扱い性の点から水系が好ましい。上記バインダーとしては、でんぷんやその変性物、ポリビニルアルコールおよびその変性物、SBRラテックス、NBRラテックス、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ポリビニルピロリドン等の高分子化合物からなる有機バインダーを好ましく使用できる。
【0102】
本発明における色材受容層はカチオンポリマー変性無機顔料微粒子を10質量%以上含むのが好ましく、20質量%以上含むのがさらに好ましい。カチオンポリマー変性無機顔料微粒子の含有量が上記の範囲にあれば、下記の方法によって色材受容層用塗布液に添加される無機顔料微粒子の全てがカチオンポリマーと反応している必要はない。
本発明におけるカチオンポリマー変性無機顔料微粒子は、色材受容層用塗布液に無機顔料微粒子と本発明におけるカチオンポリマーをメタノール等の溶媒に溶解した溶液とを添加して、攪拌することで得ることができる。その際、カチオンポリマーの添加量(y)は、無機顔料微粒子の添加量(x)に対して質量比(x:y)で1:0.001〜1:0.2の範囲内であることが好ましく、1:0.002〜1:0.1の範囲内であることがさらに好ましく、1:0.005〜1:0.05の範囲内であることが特に好ましい。本発明におけるカチオンポリマーの添加量が無機顔料微粒子の添加量の0.001質量%未満であると、無機顔料微粒子同士の凝集を防止できない場合があり、0.2質量%を超えると無機顔料微粒子の凝集を引き起こしたり、塗布液が増粘して塗布適正が失われる場合がある。
【0103】
(水溶性樹脂)
本発明における色材受容層はカチオンポリマー変性無機顔料微粒子と、水溶性樹脂とを含む分散液を支持体上に塗布して形成される層であることが好ましい。上記水溶性樹脂としては、例えば、親水性構造単位としてヒドロキシル基を有する樹脂である、ポリビニルアルコール(PVA)、カチオン変性ポリビニルアルコール、アニオン変性ポリビニルアルコール、シラノール変性ポリビニルアルコール、ポリビニルアセタール、セルロース系樹脂〔メチルセルロース(MC)、エチルセルロース(EC)、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、カルボキシメチルセルロース(CMC)等〕、キチン類、キトサン類、デンプン;エーテル結合を有する樹脂であるポリエチレンオキサイド(PEO)、ポリプロピレンオキサイド(PPO)、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリビニルエーテル(PVE);アミド基またはアミド結合を有する樹脂であるポリアクリルアミド(PAAM)、ポリビニルピロリドン(PVP)等が挙げられる。
また、解離性基としてカルボキシル基を有する、ポリアクリル酸塩、マレイン酸樹脂、アルギン酸塩、ゼラチン類を挙げることができる。
上記の中でも、特にポリビニルアルコール類が好ましい。
【0104】
上記水溶性樹脂の含有量としては、色材受容層の全固形分質量に対して、9〜40質量%が好ましく、16〜33質量%がさらに好ましい。
上記含有量が、9質量%未満であると、膜強度が低下し、乾燥時にひび割れを生じやすくなることがあり、40質量%を超えると、空隙が樹脂によって塞がれやすくなる結果、空隙率が減少してインク吸収性が低下することがある。
【0105】
色材受容層を主として構成する、上記カチオンポリマー変性無機顔料微粒子と上記水溶性樹脂とは、それぞれ単一素材でもよいし、複数の素材の混合系であってもよい。
【0106】
また、透明性の観点から、無機顔料微粒子に組合わせる樹脂の種類が重要となる。上記無水シリカを用いる場合には、水溶性樹脂としては、ポリビニルアルコール(PVA)が好ましく、中でも、鹸化度70〜99%のPVAがさらに好ましく、鹸化度70〜90%のPVAが特に好ましい。
【0107】
上記PVAは、その構造単位に水酸基を有するが、この水酸基と無機顔料微粒子表面のシラノール基とが水素結合を形成して、無機顔料微粒子の二次粒子を鎖単位とする三次元網目構造を形成しやすくする。上記三次元網目構造の形成によって、空隙率の高い多孔質構造の色材受容層を形成しうると考えられる。
インクジェット記録において、上述のようにして得た多孔質の色材受容層は、毛細管現象によって急速にインクを吸収し、インクニジミのない真円性の良好なドットを形成することができる。
【0108】
−無機顔料微粒子と水溶性樹脂との含有比−
カチオンポリマー変性無機顔料微粒子(未反応又は他の無機顔料微粒子を含む場合は全無機顔料微粒子の総量;i)と水溶性樹脂(p)との含有比〔PB比(i:p)、水溶性樹脂1質量部に対する全無機顔料微粒子の質量〕は、色材受容層の膜構造にも大きな影響を与える。即ち、PB比が大きくなると、空隙率、細孔容積、表面積(単位質量当り)が大きくなる。
具体的には、上記PB比(i:p)としては、1.5:1〜10:1が好ましい。上記PB比が10:1を超える、即ち、PB比が大きくなりすぎると、膜強度が低下し、乾燥時にひび割れを生じやすくなることがあり、1.5:1未満、即ちPB比が小さすぎると、空隙が樹脂によって塞がれやすくなる結果、空隙率が減少してインク吸収性が低下することがある。
【0109】
インクジェットプリンターの搬送系を通過する場合、記録用シートに応力が加わることがあるので、色材受容層には十分な膜強度を有していることが必要である。さらにシート状に裁断加工する場合、色材受容層の割れ、剥がれ等を防止する上でも色材受容層には十分な膜強度を有していることが必要である。
この場合、上記PB比としては5:1以下が好ましく、インクジェットプリンターで高速インク吸収性をも確保する観点からは、2:1以上であることが好ましい。
【0110】
例えば、平均一次粒子径が20nm以下の、本発明におけるカチオンポリマーによって変性された無水シリカ微粒子と水溶性樹脂とをPB比2:1〜5:1で水溶液中に完全に分散した塗布液を支持体上に塗布し、該塗布層を乾燥した場合、シリカ微粒子の二次粒子を鎖単位とする三次元網目構造が形成され、平均細孔径が30nm以下、空隙率が50%〜80%、細孔比容積0.5ml/g以上、比表面積が100m2/g以上の、透光性の多孔質膜を容易に形成することができる。
【0111】
(架橋剤)
本発明のインクジェット記録用シートの色材受容層は、無機顔料微粒子および水溶性樹脂を含む塗布層(多孔質層)に、更に上記水溶性樹脂を架橋し得る架橋剤を含み、該架橋剤と上記水溶性樹脂との架橋反応によって硬化された層であることが好ましい。
【0112】
上記架橋剤の付与は、多孔質性の色材受容層を形成する塗布液(第1の塗布液)が塗布されるのと同時に、あるいは第1の塗布液を塗布して形成された塗布層が減率乾燥速度を示すようになる前に、第2の塗布液に添加しておこなわれることが好ましい。この操作によって、塗布層が乾燥する間に発生するひび割れの発生を効果的に防止することができる。即ち、上記塗布液が塗布されたと同時に、あるいは塗布層が減率乾燥速度を示すようになる前に架橋剤溶液が塗布層内に浸透し、塗布層内の水溶性樹脂と速やかに反応し、水溶性樹脂をゲル化(硬化)させることによって、塗布層の膜強度を即時に大幅に向上させる。尚、架橋剤は、第1および/または第2の塗布液に含まれていてもよく、第1および第2の塗布液とは別の塗布液に添加して付与してもよい。
【0113】
上記水溶性樹脂を架橋しうる架橋剤としては、色材受容層に用いられる水溶性樹脂との関係で好適な物を適宜選択すればよいが、中でも、架橋反応が迅速である点から、ホウ素化合物が好ましく、例えば、硼砂、ホウ酸、ホウ酸塩(例えば、オルトホウ酸塩、InBO3、ScBO3、YBO3、LaBO3、Mg3(BO3)2、Co3(BO3)2、二ホウ酸塩(例えば、Mg2B2O5、Co2B2O5)、メタホウ酸塩(例えば、LiBO2、Ca(BO2)2、NaBO2、KBO2)、四ホウ酸塩(例えば、Na2B4O7・10H2O)、五ホウ酸塩(例えば、KB5O8・4H2O、Ca2B6O11・7H2O、CsB5O5)が挙げられ、その他グリオキザール、メラミン・ホルムアルデヒド(例えば、メチロールメラミン、アルキル化メチロールメラミン)、メチロール尿素、レゾール樹脂、ポリイソシアネート、エポキシ樹脂等を挙げることができる。中でも、速やかに架橋反応を起こす点で、硼砂、ホウ酸、ホウ酸塩が好ましく、特に水溶性樹脂としてポリビニルアルコールと組合わせて使用することがさらに好ましい。
【0114】
上記水溶性樹脂としてゼラチンを用いる場合には、ゼラチンの硬膜剤として知られている、以下の化合物を架橋剤として用いることができる。例えば、ホルムアルデヒド、グリオキザール、グルタールアルデヒド等のアルデヒド系化合物;ジアセチル、シクロペンタンジオン等のケトン系化合物;ビス(2−クロロエチル尿素)−2−ヒドロキシ−4,6−ジクロロ−1,3,5−トリアジン、2,4−ジクロロ−6−S−トリアジン・ナトリウム塩等の活性ハロゲン化合物;ジビニルスルホン酸、1,3−ビニルスルホニル−2−プロパノール、N,N’−エチレンビス(ビニルスルホニルアセタミド)、1,3,5−トリアクリロイル−ヘキサヒドロ−S−トリアジン等の活性ビニル化合物;ジメチロ−ル尿素、メチロールジメチルヒダントイン等のN−メチロール化合物;
【0115】
1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート等のイソシアネート系化合物;米国特許明細書第3017280号、同第2983611号に記載のアジリジン系化合物;米国特許明細書第3100704号に記載のカルボキシイミド系化合物;グリセロールトリグリシジルエーテル等のエポキシ系化合物;1,6−ヘキサメチレン−N,N’−ビスエチレン尿素等のエチレンイミノ系化合物;ムコクロル酸、ムコフェノキシクロル酸等のハロゲン化カルボキシアルデヒド系化合物;2,3−ジヒドロキシジオキサン等のジオキサン系化合物;クロム明ばん、カリ明ばん、硫酸ジルコニウム、酢酸クロム等である。
なお、上記架橋剤は、一種単独でも、2種以上を組合わせてもよい。
【0116】
上記架橋剤溶液は、架橋剤を水および/または有機溶媒に溶解して調製される。
架橋剤溶液中の架橋剤の濃度としては、架橋剤溶液の質量に対して、0.05〜10質量%が好ましく、0.1〜7質量%が特に好ましい。
架橋剤溶液を構成する溶媒としては、一般に水が使用され、該水と混和性の有機溶媒を含む水系混合溶媒であってもよい。
上記有機溶媒としては、架橋剤が溶解するものであれば任意に使用することができ、例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、グリセリン等のアルコール;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン;酢酸メチル、酢酸エチル等のエステル;トルエン等の芳香族溶剤;テトラヒドロフラン等のエーテル、およびジクロロメタン等のハロゲン化炭素系溶剤等を挙げることができる。
【0117】
(有機媒染剤)
本発明においては、形成画像の耐水性、耐経時ニジミの更なる向上を図るために、色材受容層に有機媒染剤(以下、単に「媒染剤」という場合がある。)を含むのが好ましい。
上記媒染剤としてはカチオン性のポリマー(カチオン性媒染剤)が好ましく、該媒染剤を色材受容層中に存在させることにより、アニオン性染料を色材として有する液状インクとの間で相互作用し色材を安定化し、耐水性や経時ニジミを向上させることができる。
【0118】
しかし、これを直接色材受容層を形成するための第1の塗布液に添加すると、アニオン電荷を有する無機顔料微粒子との間で凝集を生ずる懸念があるが、独立の別の溶液として調製し塗布する方法を利用すれば、無機顔料微粒子の凝集を懸念する必要はない。よって、本発明においては、上記無機顔料微粒子とは別の第2の塗布液に含有して用いる。
【0119】
上記カチオン性媒染剤としては、カチオン性基として、第1級〜第3級アミノ基、または第4級アンモニウム塩基を有するポリマー媒染剤が好適に用いられるが、カチオン性の非ポリマー媒染剤も使用することができる。
上記ポリマー媒染剤としては、第1級〜第3級アミノ基およびその塩、または第4級アンモニウム塩基を有する単量体(媒染モノマー)の単独重合体や、該媒染モノマーと他のモノマー(以下、「非媒染モノマー」という。)との共重合体または縮重合体として得られるものが好ましい。また、これらのポリマー媒染剤は、水溶性ポリマー、または水分散性のラテックス粒子のいずれの形態でも使用できる。
【0120】
上記単量体(媒染モノマー)としては、例えば、トリメチル−p−ビニルベンジルアンモニウムクロライド、トリメチル−m−ビニルベンジルアンモニウムクロライド、トリエチル−p−ビニルベンジルアンモニウムクロライド、トリエチル−m−ビニルベンジルアンモニウムクロライド、N,N−ジメチル−N−エチル−N−p−ビニルベンジルアンモニウムクロライド、N,N−ジエチル−N−メチル−N−p−ビニルベンジルアンモニウムクロライド、N,N−ジメチル−N−n−プロピル−N−p−ビニルベンジルアンモニウムクロライド、N,N−ジメチル−N−n−オクチル−N−p−ビニルベンジルアンモニウムクロライド、N,N−ジメチル−N−ベンジル−N−p−ビニルベンジルアンモニウムクロライド、N,N−ジエチル−N−ベンジル−N−p−ビニルベンジルアンモニウムクロライド、N,N−ジメチル−N−(4−メチル)ベンジル−N−p−ビニルベンジルアンモニウムクロライド、N,N−ジメチル−N−フェニル−N−p−ビニルベンジルアンモニウムクロライド、
【0121】
トリメチル−p−ビニルベンジルアンモニウムブロマイド、トリメチル−m−ビニルベンジルアンモニウムブロマイド、トリメチル−p−ビニルベンジルアンモニウムスルホネート、トリメチル−m−ビニルベンジルアンモニウムスルホネート、トリメチル−p−ビニルベンジルアンモニウムアセテート、トリメチル−m−ビニルベンジルアンモニウムアセテート、N,N,N−トリエチル−N−2−(4−ビニルフェニル)エチルアンモニウムクロライド、N,N,N−トリエチル−N−2−(3−ビニルフェニル)エチルアンモニウムクロライド、N,N−ジエチル−N−メチル−N−2−(4−ビニルフェニル)エチルアンモニウムクロライド、N,N−ジエチル−N−メチル−N−2−(4−ビニルフェニル)エチルアンモニウムアセテート、
【0122】
N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミドのメチルクロライド、エチルクロライド、メチルブロマイド、エチルブロマイド、メチルアイオダイド若しくはエチルアイオダイドによる4級化物、またはそれらのアニオンを置換したスルホン酸塩、アルキルスルホン酸塩、酢酸塩若しくはアルキルカルボン酸塩等が挙げられる。
【0123】
具体的には、例えば、モノメチルジアリルアンモニウムクロライド、トリメチル−2−(メタクリロイルオキシ)エチルアンモニウムクロライド、トリエチル−2−(メタクリロイルオキシ)エチルアンモニウムクロライド、トリメチル−2−(アクリロイルオキシ)エチルアンモニウムクロライド、トリエチル−2−(アクリロイルオキシ)エチルアンモニウムクロライド、トリメチル−3−(メタクリロイルオキシ)プロピルアンモニウムクロライド、トリエチル−3−(メタクリロイルオキシ)プロピルアンモニウムクロライド、トリメチル−2−(メタクリロイルアミノ)エチルアンモニウムクロライド、トリエチル−2−(メタクリロイルアミノ)エチルアンモニウムクロライド、トリメチル−2−(アクリロイルアミノ)エチルアンモニウムクロライド、トリエチル−2−(アクリロイルアミノ)エチルアンモニウムクロライド、トリメチル−3−(メタクリロイルアミノ)プロピルアンモニウムクロライド、トリエチル−3−(メタクリロイルアミノ)プロピルアンモニウムクロライド、トリメチル−3−(アクリロイルアミノ)プロピルアンモニウムクロライド、トリエチル−3−(アクリロイルアミノ)プロピルアンモニウムクロライド、
【0124】
N,N−ジメチル−N−エチル−2−(メタクリロイルオキシ)エチルアンモニウムクロライド、N,N−ジエチル−N−メチル−2−(メタクリロイルオキシ)エチルアンモニウムクロライド、N,N−ジメチル−N−エチル−3−(アクリロイルアミノ)プロピルアンモニウムクロライド、トリメチル−2−(メタクリロイルオキシ)エチルアンモニウムブロマイド、トリメチル−3−(アクリロイルアミノ)プロピルアンモニウムブロマイド、トリメチル−2−(メタクリロイルオキシ)エチルアンモニウムスルホネート、トリメチル−3−(アクリロイルアミノ)プロピルアンモニウムアセテート等を挙げることができる。
その他、共重合可能なモノマーとして、N―ビニルイミダゾール、N―ビニル−2−メチルイミダゾール等も挙げられ。
【0125】
上記非媒染モノマーとは、第1級〜第3級アミノ基およびその塩、または第4級アンモニウム塩基等の塩基性あるいはカチオン性部分を含まず、インクジェットインク中の染料と相互作用を示さない、あるいは相互作用が実質的に小さいモノマーをいう。
上記非媒染モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸アルキルエステル;(メタ)アクリル酸シクロヘキシル等の(メタ)アクリル酸シクロアルキルエステル;(メタ)アクリル酸フェニル等の(メタ)アクリル酸アリールエステル;(メタ)アクリル酸ベンジル等のアラルキルエステル;スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン等の芳香族ビニル類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、バーサチック酸ビニル等のビニルエステル類;酢酸アリル等のアリルエステル類;塩化ビニリデン、塩化ビニル等のハロゲン含有単量体;(メタ)アクリロニトリル等のシアン化ビニル;エチレン、プロピレン等のオレフィン類、等が挙げられる。
【0126】
上記(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、アルキル部位の炭素数が1〜18の(メタ)アクリル酸アルキルエステルが好ましく、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ステアリル等が挙げられる。中でも、メチルアクリレート、エチルアクリレート、メチルメタアクリレート、エチルメタアクリレート、ヒドロキシエチルメタアクリレートが好ましい。
上記非媒染モノマーも、一種単独で、または二種以上組合せて使用できる。
【0127】
更に、ポリマー媒染剤として、ポリジアリルジメチルアンモニウムクロライド、ポリメタクリロイルオキシエチル−β−ヒドロキシエチルジメチルアンモニウムクロライド、ポリエチレンイミン、ポリアリルアミンおよびその変性体、ポリアリルアミン塩酸塩、ポリアミド−ポリアミン樹脂、カチオン化でんぷん、ジシアンジアミドホルマリン縮合物、ジメチル−2−ヒドロキシプロピルアンモニウム塩重合物、ポリアミジン、ポリビニルアミン等も好ましいものとして挙げることができ、ポリアリルアミンおよびその誘導体が特に好ましい。
【0128】
上記ポリアリルアミン誘導体は、アクリルニトリル、クロロメチルスチレン、TEMPO、エポキシヘキサン、ソルビン酸等をポリアリルアミンに2〜50mol%付加したものであり、好ましくは、アクリルニトリル、クロロメチルスチレンの5〜10mol%付加物であり、特にポリアリルアミンの5〜10mol%アクリルニトリル付加物が、オゾン褪色性防止効果を発揮する観点から好ましい。
【0129】
上記媒染剤の分子量としては、重量平均分子量で5000〜200000が好ましい。上記分子量が5000〜200000の範囲にあると、耐水性および耐経時ニジミ性を向上させることができる。
【0130】
(他の成分)
色材受容層は、必要に応じて下記成分を含んでいてもよい。
色材の劣化を抑制する目的で、各種の紫外線吸収剤、酸化防止剤、一重項酸素クエンチャー等の褪色防止剤を含んでいてもよい。
上記紫外線吸収剤としては、桂皮酸誘導体、ベンゾフェノン誘導体、ベンゾトリアゾリルフェノール誘導体等が挙げられる。例えば、α−シアノ−フェニル桂皮酸ブチル、o−ベンゾトリアゾールフェノール、o−ベンゾトリアゾール−p−クロロフェノール、o−ベンゾトリアゾール−2,4−ジ−t−ブチルフェノール、o−ベンゾトリアゾール−2,4−ジ−t−オクチルフェノール等が挙げられる。ヒンダートフェノール化合物も紫外線吸収剤として使用でき、具体的には少なくとも2位または6位のうち1ヵ所以上が分岐アルキル基で置換されたフェノール誘導体が好ましい。
【0131】
また、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、サリチル酸系紫外線吸収剤、シアノアクリレート系紫外線吸収剤、オキザリックアシッドアニリド系紫外線吸収剤等も使用できる。例えば、特開昭47−10537号公報、同58−111942号公報、同58−212844号公報、同59−19945号公報、同59−46646号公報、同59−109055号公報、同63−53544号公報、特公昭36−10466号公報、同42−26187号公報、同48−30492号公報、同48−31255号公報、同48−41572号公報、同48−54965号公報、同50−10726号公報、米国特許第2,719,086号明細書、同3,707,375号明細書、同3,754,919号明細書、同4,220,711号明細書等に記載されている。
【0132】
蛍光増白剤も紫外線吸収剤として使用でき、例えば、クマリン系蛍光増白剤等が挙げられる。具体的には、特公昭45−4699号公報、同54−5324号公報等に記載されている。
【0133】
上記酸化防止剤としては、ヨーロッパ公開特許第223739号公報、同309401号公報、同309402号公報、同310551号公報、同第310552号公報、同第459416号公報、ドイツ公開特許第3435443号公報、特開昭54−48535号公報、同60−107384号公報、同60−107383号公報、同60−125470号公報、同60−125471号公報、同60−125472号公報、同60−287485号公報、同60−287486号公報、同60−287487号公報、同60−287488号公報、同61−160287号公報、同61−185483号公報、同61−211079号公報、同62−146678号公報、同62−146680号公報、同62−146679号公報、同62−282885号公報、同62−262047号公報、同63−051174号公報、同63−89877号公報、同63−88380号公報、同66−88381号公報、同63−113536号公報、
【0134】
同63−163351号公報、同63−203372号公報、同63−224989号公報、同63−251282号公報、同63−267594号公報、同63−182484号公報、特開平1−239282号公報、特開平2−262654号公報、同2−71262号公報、同3−121449号公報、同4−291685号公報、同4−291684号公報、同5−61166号公報、同5−119449号公報、同5−188687号公報、同5−188686号公報、同5−110490号公報、同5−1108437号公報、同5−170361号公報、特公昭48−43295号公報、同48−33212号公報、米国特許第4814262号、同第4980275号公報等に記載のものが挙げられる。
【0135】
具体的には、6−エトキシ−1−フェニル−2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリン、6−エトキシ−1−オクチル−2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリン、6−エトキシ−1−フェニル−2,2,4−トリメチル−1,2,3,4−テトラヒドロキノリン、6−エトキシ−1−オクチル−2,2,4−トリメチル−1,2,3,4,−テトラヒドロキノリン、シクロヘキサン酸ニッケル、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−2−エチルヘキサン、2−メチル−4−メトキシ−ジフェニルアミン、1−メチル−2−フェニルインドール等が挙げられる。
【0136】
上記褪色性防止剤は、単独でも2種以上を併用してもよい。この上記褪色性防止剤は、水溶性化、分散、エマルション化してもよく、マイクロカプセル中に含ませることもできる。
上記褪色性防止剤の添加量としては、色材受容層塗布液の0.01〜10質量%が好ましい。
【0137】
また、無機顔料微粒子の分散性を高める目的で、各種無機塩類、pH調整剤として酸やアルカリ等を含んでいてもよい。
更に、表面の摩擦帯電や剥離帯電を抑制する目的で、電子導電性を持つ金属酸化物微粒子を、表面の摩擦特性を低減する目的で各種のマット剤を含んでいてもよい。
【0138】
〈色材受容層の形成方法〉
次に、色材受容層の形成方法について述べる。本発明における色材受容層は、少なくとも上記カチオンポリマー変性無機顔料微粒子を含む第1の塗布液(色材受容層用塗布液)を塗布し、(1)該塗布と同時に、または、(2)前記塗布によって形成される塗布層の乾燥途中であって、該塗布層が減率乾燥速度を示す前、あるいは(3)前記塗布層を乾燥して塗膜を形成した後、のいずれかに、前記塗布層に、少なくとも上記有機媒染剤を含む第2の塗布液(架橋剤溶液)を付与し、前記塗布層を硬化および乾燥させて形成されるのが好ましい。
【0139】
上記のように、架橋剤と共に媒染剤を第2の塗布液に添加して同時塗布することにより、色材受容層の耐水性を向上させることができる。即ち、上記媒染剤を第1の塗布液に添加すると、該媒染剤はカチオン性であるので、表面にアニオン電荷を持つ無機顔料微粒子との共存下では凝集を生ずる場合があるが、媒染剤を含む第2の塗布液と第1の塗布液とをそれぞれを独立に調製し、個々に塗布する方法を採用すれば、無機顔料微粒子の凝集を考慮する必要がなく、媒染剤の選択範囲が広がる。
【0140】
本発明において、無機顔料微粒子(例えばシリカ微粒子)と本発明におけるカチオンポリマーとからなるカチオンポリマー変性無機顔料微粒子を少なくとも含み、さらに水溶性樹脂(例えばPVA)を含んでなる色材受容層用の上記第1の塗布液は、例えば、以下のようにして調製できる。
即ち、シリカ微粒子を水中に添加して(例えば、10〜20質量%)、さらに本発明におけるカチオンポリマー含有溶液(例えば30%メタノール溶液を本発明のカチオンポリマーの添加量が上記気相法シリカの含有量に対して0.005〜0.05質量%となるように)を添加し、高速回転湿式コロイドミル(例えば、クレアミックス(エム・テクニック(株)製))を用いて、例えば10000rpm(好ましくは5000〜20000rpm)の高速回転の条件で20分間(好ましくは10〜30分間)分散させた後、ポリビニルアルコール水溶液(例えば、シリカの1/3程度の質量のPVAとなるように)を加え、さらに上記と同じ回転条件で分散をおこなうことによって調製することができる。得られた第1の塗布液は均一ゾルであり、これを下記塗布方法で支持体上に塗布形成することによって、三次元網目構造を有する多孔質性の色材受容層を形成することができる。
上記第1の塗布液には、必要に応じて、さらに界面活性剤、pH調整剤、帯電防止剤等を添加することもできる。
【0141】
上記第1の塗布液の塗布は、例えば、エクストルージョンダイコータ、エアードクターコータ、ブレッドコータ、ロッドコータ、ナイフコータ、スクイズコータ、リバースロールコータ、バーコータ等の公知の塗布方法によっておこなうことができる。
【0142】
上述の「塗布層が減率乾燥速度を示すようになる前」とは、通常、第1の塗布液を塗布した直後から数分間を指し、この間においては、塗布された塗布層中の溶剤の含有量が時間に比例して減少する現象である恒率乾燥速度を示す。該恒率乾燥速度を示す時間については、化学工学便覧(p.707〜712、丸善(株)発行、昭和55年10月25日)に記載されている。
【0143】
上述の通り、上記第1の塗布液の塗布後、減率乾燥速度を示すようになるまでその塗布層は乾燥されるが、該乾燥は一般に50〜180℃で0.5〜10分間(好ましくは、0.5〜5分間)おこなわれる。この乾燥時間としては、当然塗布量によって異なるが、上記の範囲が適当である。
【0144】
上記塗布層が減率乾燥速度を示すようになる前に、有機溶媒溶液を含む塗布液(第2の塗布液)を付与する方法としては、(1)第2の塗布液を塗布層上にさらに塗布する方法、(2)第2の塗布液をスプレー等の方法によって噴霧する方法、(3)第2の塗布液の液中に、該塗布層が形成された支持体を浸漬する方法、等が挙げられる。
【0145】
上記方法(1)において、第2の塗布液を塗布する塗布方法としては、例えば、カーテンフローコータ、エクストルージョンダイコータ、エアードクターコーター、ブレッドコータ、ロッドコータ、ナイフコータ、スクイズコータ、リバースロールコータ、バーコータ等の公知の塗布方法を利用することができる。しかし、エクストリュージョンダイコータ、カーテンフローコータ、バーコータ等のように、既に形成されている塗布層にコータが直接接触しない方法を利用することが好ましい。また、これらの塗布は、2種以上の塗布液を同時に重層塗布してもよい。
【0146】
上記同時塗布(重層塗布)は、例えば、エクストルージョンダイコータ、カーテンフローコータを用いた塗布方法によっておこなうことができる。該同時塗布の後、形成された塗布層は乾燥されるが、この場合の乾燥は、一般に塗布層を40〜150℃で0.5〜10分間加熱することによっておこなわれ、好ましくは、40〜100℃で0.5〜5分間加熱することによっておこなわれる。
例えば、第2の塗布液に含有する架橋剤として硼砂やホウ酸を使用する場合は、60〜100℃で5〜20分間加熱することが好ましい。
【0147】
また、第2の塗布液を塗布層が乾燥して塗膜を形成した後に付与する場合、該塗布層の乾燥は、40〜150℃で0.5〜10分間加熱することによっておこなわれ、好ましくは、40〜100℃で0.5〜5分間加熱することによっておこなわれる。
【0148】
上記架橋剤は、上述の第1および第2の塗布液のいずれかに添加して、該架橋剤を支持体上等に付与することができる。該架橋剤は、上述の第1および第2の塗布液とは別に、架橋剤を含む溶液を調製し、塗布工程のいずれかの段階で塗布等することもできる。
【0149】
また、上述の塗布における各工程では、溶媒として水、有機溶媒、またはこれらの混合溶媒を用いることができる。この塗布に用いることができる有機溶媒としては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、i−プロパノール、メトキシプロパノール等のアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、テトラヒドロフラン、アセトニトリル、酢酸エチル、トルエン等が挙げられる。
【0150】
支持体上に色材受容層を形成した後、該色材受容層は、例えば、スーパーカレンダ、グロスカレンダ等を用い、加熱加圧下にロールニップ間を通してカレンダー処理を施すことによって、表面平滑性、光沢度、透明性および塗膜強度を向上させることが可能である。しかしながら、上記カレンダー処理は、空隙率を低下させる要因となることがあるため(即ち、インク吸収性が低下することがあるため)、空隙率の低下が少ない条件を設定しておこなう必要がある。
【0151】
カレンダー処理をおこなう場合のロール温度としては、30〜150℃が好ましく、40〜100℃がさらに好ましい。
また、カレンダー処理時のロール間の線圧としては、50〜400kg/cmが好ましく、100〜200kg/cmがさらに好ましい。
【0152】
上記色材受容層の層厚は、インクジェット記録用シートの場合では、液滴を全て吸収するだけの吸収容量をもつ必要があるため、層中の空隙率との関連で決定する必要がある。例えば、インク量が8nL/mm2で、空隙率が60%の場合であれば、層厚が約15μm以上の膜が必要となる。
この点を考慮すると、インクジェット記録の場合には、色材受容層の層厚としては、10〜50μmが好ましい。
【0153】
また、色材受容層の細孔径は、メジアン径で0.005〜0.030μmが好ましく、0.01〜0.025μmがさらに好ましい。
上記空隙率および細孔メジアン径は、水銀ポロシメーター(商品名:ボアサイザー9320−PC2、(株)島津製作所製)を用いて測定することができる。
【0154】
また、色材受容層は、透明性に優れていることが好ましいが、その目安としては、色材受容層を透明フイルム支持体上に形成したときのヘイズ値が、30%以下であることが好ましく、20%以下であることがさらに好ましい。
上記ヘイズ値は、ヘイズメーター(HGM−2DP:スガ試験機(株))を用いて測定することができる。
【0155】
〈支持体〉
上記支持体としては、プラスチック等の透明材料よりなる透明支持体、紙等の不透明材料からなる不透明支持体のいずれをも使用できる。色材受容層の透明性を生かす上では、透明支持体または高光沢性の不透明支持体を用いることが好ましい。
【0156】
上記透明支持体に使用可能な材料としては、透明性で、OHPやバックライトディスプレイで使用される時の輻射熱に耐え得る性質を有する材料が好ましい。該材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)等のポリエステル類;ポリスルホン、ポリフェニレンオキサイド、ポリイミド、ポリカーボネート、ポリアミド等を挙げることができる。中でも、ポリエステル類が好ましく、ポリエチレンテレフタレートは特に好ましい。
上記透明支持体の厚みとしては、特に制限はないが、取り扱い性の点で、50〜200μmが好ましい。
【0157】
高光沢性の不透明支持体としては、色材受容層の設けられる側の表面が40%以上の光沢度を有するものが好ましい。上記光沢度は、JIS P−8142(紙および板紙の75度鏡面光沢度試験方法)に記載の方法に従って求められる値である。具体的には、下記支持体が挙げられる。
【0158】
例えば、アート紙、コート紙、キャストコート紙、銀塩写真用支持体等に使用されるバライタ紙等の高光沢性の紙支持体;ポリエチレンテレフタレート(PET)等のポリエステル類、ニトロセルロース,セルロースアセテート,セルロースアセテートブチレート等のセルロースエステル類、ポリスルホン、ポリフェニレンオキサイド、ポリイミド、ポリカーボネート、ポリアミド等のプラスチックフィルムに白色顔料等を含有させて不透明にした(表面カレンダー処理が施されていてもよい。)高光沢性のフィルム;或いは、上記各種紙支持体、上記透明支持体若しくは白色顔料等を含有する高光沢性のフィルムの表面に、白色顔料を含有若しくは含有しないポリオレフィンの被覆層が設けられた支持体が挙げられる。
更に、白色顔料含有発泡ポリエステルフィルム(例えば、ポリオレフィン微粒子を含有させ、延伸により空隙を形成した発泡PET)も好適に挙げることができる。
【0159】
上記不透明支持体の厚みについても特に制限はないが、取り扱い性の点で、50〜300μmが好ましい。
【0160】
また、上記支持体には、コロナ放電処理、グロー放電処理、火炎処理、紫外線照射処理等を施したものを使用してもよい。
【0161】
次に、上記紙支持体に用いられる原紙について詳述する。
上記原紙としては、木材パルプを主原料とし、必要に応じて木材パルプに加えてポリプロピレンなどの合成パルプ、あるいはナイロンやポリエステルなどの合成繊維を用いて抄紙される。上記木材パルプとしては、LBKP、LBSP、NBKP、NBSP、LDP、NDP、LUKP、NUKPのいずれも用いることができるが、短繊維分の多いLBKP、NBSP、LBSP、NDP、LDPをより多く用いることが好ましい。
但し、LBSPおよび/またはLDPの比率としては、10質量%以上、70質量%以下が好ましい。
【0162】
上記パルプは、不純物の少ない化学パルプ(硫酸塩パルプや亜硫酸パルプ)が好ましく用いられ、漂白処理をおこなって白色度を向上させたパルプも有用である。
【0163】
原紙中には、高級脂肪酸、アルキルケテンダイマー等のサイズ剤、炭酸カルシウム、タルク、酸化チタンなどの白色顔料、スターチ、ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコール等の紙力増強剤、蛍光増白剤、ポリエチレングリコール類等の水分保持剤、分散剤、4級アンモニウム等の柔軟化剤などを適宜添加することができる。
【0164】
抄紙に使用するパルプの濾水度としては、CSFの規定で200〜500mlが好ましく、また、叩解後の繊維長が、JIS P−8207に規定される24メッシュ残分質量%と42メッシュ算分の質量%との和が30〜70%が好ましい。なお、4メッシュ残分の質量%は20質量%以下であることが好ましい。
【0165】
原紙の坪量としては、30〜250gが好ましく、特に50〜200gが好ましい。原紙の厚さとしては、40〜250μmが好ましい。原紙は、抄紙段階または抄紙後にカレンダー処理して高平滑性を与えることもできる。原紙密度は0.7〜1.2g/m2(JIS P−8118)が一般的である。
更に、原紙剛度としては、JIS P−8143に規定される条件で20〜200gが好ましい。
【0166】
原紙表面には表面サイズ剤を塗布してもよく、表面サイズ剤としては、上記原紙中添加できるサイズと同様のサイズ剤を使用できる。
原紙のpHは、JIS P−8113で規定された熱水抽出法により測定された場合、5〜9であることが好ましい。
【0167】
原紙表面および裏面を被覆するポリエチレンは、主として低密度のポリエチレン(LDPE)および/または高密度のポリエチレン(HDPE)であるが、他のLLDPEやポリプロピレン等も一部使用することができる。
【0168】
特に、色材受容層を形成する側のポリエチレン層は、写真用印画紙で広くおこなわれているように、ルチルまたはアナターゼ型の酸化チタンをポリエチレン中に添加し、不透明度および白色度を改良したものが好ましい。ここで、酸化チタン含有量としては、ポリエチレンに対して、概ね3〜20質量%が好ましく、4〜13質量%がより好ましい。
【0169】
ポリエチレン被覆紙は、光沢紙として用いることも、また、ポリエチレンを原紙表面上に溶融押し出してコーティングする際に、いわゆる型付け処理をおこなって通常の写真印画紙で得られるようなマット面や絹目面を形成したものも使用できる。
【0170】
以上のように、本発明によれば、他のインク性能を低下させることなく、画像の印画濃度を向上させることができる。しかも、色材受容層が無機顔料微粒子を含んで空隙率50〜80%の三次元網目構造を有すると、良好なインク吸収性を示し高解像度な画像が形成できると共に、高温高湿環境下での経時ニジミも抑制され、形成された画像も高い耐光性、耐水性を示すといった、優れたインク受容性能をも同時に確保することができる。
【0171】
【実施例】
以下、実施例により本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。尚、実施例中の「部」および「%」は、特に指定しない限り「質量部」および「質量%」を表し、「WM」に続く数字は「重量平均分子量」を表し、「重合度」は「重量平均重合度」を表す。
但し、本発明においては、下記合成例6は除くものとする。また、合成例6で合成されたカチオンポリマー6を用いた実施例6も、本発明から除くものとする。
【0172】
《本発明におけるカチオンポリマーの合成例》
【0174】
[合成例3]
N−[3−(メタクリロイルアミノ)プロピル]−N,N,N−トリメチルアンモニウムクロリド30部、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン2.8部とをメタノール70部に溶解させ、窒素気流下で65℃に加熱し、V−50(重合開始剤;和光純薬(株)製)を0.16部加えて更に4時間加熱し、カチオンポリマー3〔一般式(2)で表わされる繰り返し単位を含む一般式(1)で表わされるカチオンポリマー〕の30%メタノール溶液を得た。
【0175】
[合成例4]
合成例3のN−[3−(メタクリロイルアミノ)プロピル]−N,N,N−トリメチルアンモニウムクロリド30部を、N−[2−(メタクリロイルオキシ)エチル]−N−ベンジル−N,N−ジメチルアンモニウムクロリド30部に変更した以外は合成例3と同様にしてカチオンポリマー4〔一般式(2)で表わされる繰り返し単位を含む一般式(1)で表わされるカチオンポリマー〕の30%メタノール溶液を得た。
【0176】
[合成例5]
合成例3のN−[3−(メタクリロイルアミノ)プロピル]−N,N,N−トリメチルアンモニウムクロリド30部を、N,N,N−トリメチル−N−(ビニルベンジル)アンモニウムクロリド30部に変更した以外は合成例3と同様にしてカチオンポリマー5〔一般式(2)で表わされる繰り返し単位を含む一般式(1)で表わされるカチオンポリマー〕の30%メタノール溶液を得た。
【0177】
[合成例6]
合成例3のN−[3−(メタクリロイルアミノ)プロピル]−N,N,N−トリメチルアンモニウムクロリド30部をN,N,N−トリメチル−N−ビニルベンジルアンモニウムクロリド30部に変更した以外は合成例3と同様にしてカチオンポリマー6の30%メタノール溶液を得た。
【0178】
[合成例7]
合成例3のN−[3−(メタクリロイルアミノ)プロピル]−N,N,N−トリメチルアンモニウムクロリド30部をN,N,N−トリエチル−N−ビニルベンジルアンモニウムクロリド30部に変更した以外は合成例3と同様にしてカチオンポリマー7の30%メタノール溶液を得た。
【0179】
[比較合成例1]
合成例3の3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン2.8部を、2−メルカプトエタノール1.1部に変更した以外は合成例3と同様にしてカチオンポリマー8〔比較用カチオンポリマー〕の30%メタノール溶液を得た。
【0180】
《インクジェット記録用シートの作製》
[実施例3]
−支持体の作製−
秤量186g/m2のアート紙(OK金藤;王子製紙(株)製)にコロナ放電処理をおこなった後、溶融押出機を用いて高密度ポリエチレンを厚さ19μmとなるようにコーティングし、マット面からなる樹脂層を形成した(以下、樹脂層面を「裏面」と称する。)。この裏面側の樹脂層にさらにコロナ放電処理を施し、その後、帯電防止剤として、酸化アルミニウム(アルミナゾル100、日産化学工業(株)製)と二酸化ケイ素(スノーテックスO、日産化学工業(株)製)とを1:2の比(質量比)で水に分散した分散液を、乾燥質量が0.2g/m2となるように塗布した。
【0181】
更に、樹脂層の設けられていない側のフェルト面(表面)側にコロナ放電処理を施した後、アナターゼ型二酸化チタン10%、微量の群青、および蛍光増白剤0.01%(対ポリエチレン)を含有する、MFR(メルトフローレート)3.8の低密度ポリエチレンを、溶融押出機を用いて、厚み24μmとなるように溶融押し出しし、高光沢な熱可塑性樹脂層を基紙の表面側に形成し(以下、この高光沢面を「オモテ面」と称する。)、支持体とした。なお、支持体のオモテ面は塗布液を塗布する前にコロナ放電処理をして使用した。
【0182】
−色材受容層用塗布液(第1の塗布液)の調製−
下記組成中の(2)イオン交換水に(1)気相法シリカ微粒子を混合し、(3)上記カチオンポリマー3の30%メタノール溶液をさらに混合し、ナノマイザーLA31(ナノマイザー(株)製)を用いて、500kg/m2の圧力で2回処理をおこなった後、さらに60分間攪拌をおこない、下記組成中の(4)ポリビニルアルコール8%水溶液を攪拌しながら加え、さらに(5)エマルゲン109P(10%)水溶液と(6)ジエチレングリコールモノブチルエーテルとを加え、色材受容層用塗布液A(第1の塗布液)を調製した。シリカ微粒子と水溶性樹脂との質量比(PB比/(1):(4))は、4.5:1であった。
【0183】
〔色材受容層用塗布液Aの組成〕
(1)気相法シリカ微粒子(無機顔料微粒子) 7.7部
(BET法による比表面積:300m2/g、平均一次粒子径7nm、
QS−30、(株)トクヤマ製)
(2)イオン交換水 72.4部
(3)上記カチオンポリマー3の30%メタノール溶液 0.26部
(4)ポリビニルアルコール8%水溶液 21.3部
(PVA124、(株)クラレ製、鹸化度98.5%、重合度2400)
(5)ポリオキシエチレンラウリルエーテル 1.0部
(ノニオン系界面活性剤;エマルゲン109P(10%)、花王(株)製)
(6)ジエチレングリコールモノブチルエーテル(DEGMBE) 0.6部
(高沸点有機溶剤)
【0184】
−インクジェット記録用シートの作製−
上記から得た色材受容層用塗布液Aを、支持体のオモテ面にエクストルージョンダイコーターを用いて200ml/m2の塗布量で塗布し(塗布工程)、熱風乾燥機にて80℃(風速3〜8m/sec)で塗布層の固形分濃度が20%になるまで乾燥させた。塗布層は、この期間恒率乾燥速度を示した。その直後、下記組成の架橋剤溶液A(第2の塗布液)に30秒間浸漬して該塗布層上にその20g/m2を付着させ(架橋剤溶液を付与する工程)、更に80℃下で10分間乾燥させた(乾燥工程)。これより、乾燥膜厚32μmの色材受容層が設けられた、本発明のインクジェット記録用シート(3)を作製した。。
【0185】
〔架橋剤溶液Aの組成〕
・ホウ酸(架橋剤) 2.5部
・イオン交換水 69.5部
・ポリアリルアミン(10%)水溶液(有機媒染剤;WM:1万) 25部
・ポリオキシエチレンラウリルエーテル(ノニオン系界面活性剤) 2部
(エマルゲン109P(10%)、花王(株)製、)
・塩化アンモニウム 1部
【0186】
−評価方法−
1.色材受容層用塗布液の評価
(1−1)
上記色材受容層用塗布液A300gを500ml容器に採取し、30℃の高温槽に10分間浸漬した後、B型粘度計(トキメック製)を用いて60rpmの条件で粘度を測定し、下記の基準に従って色材受容層用塗布液Aの分散状態を評価した。結果を表1に示す。
〔基準〕
AA:粘度が100mPa・s未満で、良好な分散状態であり塗布が可能であった。
BB:粘度が100以上1000mPa・s未満で、塗布にはやや差し支えが生じる分散状態であった。
CC:粘度が1000mPa・s以上、塗布が不可能な分散状態であった。
【0187】
(1−2)平均粒径
光散乱回折式の粒度分布測定装置(LA910、(株)堀場製作所製)を用いて、色材受容層用塗布液A中の微粒子の体積基準中位粒径D50を測定し、この値を平均粒子径として採用して、下記の基準に従い評価した。結果を表1に示す。尚、測定に際しては屈折率1.10をパラメータとして入力した。
〔基準〕
AA:0.2μm未満
BB:0.2以上5.0μm未満
CC:5μm以上
【0188】
(1−3)粗大粒子
上記(1−2)において、5μm以上の粒子が全体に占める割合によって評価した。結果を表1に示す。
〔基準〕
AA:2%未満
BB:2以上10%未満
CC:10%以上
【0189】
2.インクジェット記録用シートの評価
(2−1)光沢度
印画前の記録シートの色材受容層表面における60°光沢度を、デジタル変角光沢度計(UGV−50DP,スガ試験機(株)製)にて測定し、下記の基準に従って評価した。結果を表2に示す。
〔基準〕
AA:光沢度が40以上であった。
BB:光沢度が30以上40未満であった。
CC:光沢度が30未満であった。
【0190】
(2−2)インク吸収速度
インクジェットプリンター(PM−900C、セイコーエプソン(株)製)を用いて、インクジェット記録用シートに、Y(黄)、M(マゼンタ)、C(シアン)、K(黒)、B(青)、G(緑)およびR(赤)のベタ画像を印画し、その直後(約10秒後)、該画像上に紙を接触押圧し、インクの紙への転写の有無を下記の基準に従って評価した。結果を表2に示す。
〔基準〕
AA:紙上へのインクの転写は全く認められなかった。インク吸収速度が良好な事を示す。
BB:紙上へインクの一部が転写されたが実用上問題のないレベルであった。
CC:紙上へのインクの転写が多く認められた。
【0191】
(2−3)ひび割れの発生
インクジェット記録用シートの表面に発生したひび割れの有無、およびその大きさを目視で観察し、下記の基準に従って評価した。結果を表2に示す。
〔基準〕
AA:表面にひび割れは全く認められなかった。
BB:1〜2mmの長さのひび割れが認められた。
CC:3mm以上の長さのひび割れが認められた。
【0192】
(2−4)耐水性
上記(2−2)と同じプリンタを用いて、インクジェット記録用シート上に同じ印画パターンを形成させ、3時間放置した後、水中に一分間浸して、インクの水中への流出程度を目視で観察し、下記の基準に従って評価した。結果を表2に示す。
〔基準〕
AA:染料の流出が全く認められなかった。
BB:染料の流出した部分が認められ、色濃度が低下した。
CC:染料がほぼ完全に水中に流出してしまった。
【0193】
(2−5)経時ニジミ
上記(2−2)と同じプリンタを用いて、インクジェット記録用シート上にマゼンタインクとブラックインクとを隣り合わせにした格子状の線状パターン(線幅0.28mm)を印画し、Xライト310TR(Xライト社製)によってビジュアル濃度を測定した。さらに、印画後3時間放置した後、40℃、相対湿度90%の恒温恒湿槽に1日保管し、再度ビジュアル濃度を測定してその濃度差(ΔOD)を算出し、下記の基準に従って評価した。該濃度差(ΔOD)の値が小さいほど経時ニジミの発生は抑制されている。結果を表2に示す。
〔基準〕
AA:濃度差が0.36未満であった。
BB:濃度差が0.36以上0.5未満であった。
CC:濃度差が0.5以上であった。
【0194】
(2−6)耐光性
上記(2−2)と同じプリンタを用いて、インクジェット記録用シート上にY(黄)、M(マゼンタ)、C(シアン)およびK(黒)のベタ画像を印画し、Xライト310TR(Xライト社製)によって各色のビジュアル濃度を測定した。その後、印画した画像に対して365nm以下の波長領域の紫外線をカットするフイルムを通して、Xenon weather−ometer Ci65A(ATLAS社製)を用いて、25℃、相対湿度32%の環境条件下で3.8時間ランプを点灯し、その後、ランプを消した状態で、20℃、相対湿度91%の環境条件下に1時間放置するサイクルを11日間おこなった。その後、再度各色のビジュアル濃度を測定して各色の褪色を残存率(試験前後での濃度変化率)を算出し、下記の基準に従って評価した。結果を表2に示す。
〔基準〕
AA:ほとんど褪色していなかった。
BB:僅かに褪色していた。
CC:かなり褪色していた。
【0195】
(2−7)画像濃度(印画濃度)
上記(2−2)と同じプリンタを用いて、インクジェット記録用シートにK(黒)のベタ画像を印字し、3時間放置後、該印字面の反射濃度をマクベス反射濃度計で測定し、下記の基準に従って評価した。結果を表2に示す。
〔基準〕
AA:反射濃度が2.0以上であった。
BB:反射濃度が1.8以上2.0未満であった。
CC:反射濃度が1.8未満であった。
【0196】
[実施例5、7、比較例1〜4]
実施例3の色材受容層用塗布液Aのカチオンポリマー3および添加量を、表1に示すカチオンポリマーおよび添加量に変更した以外は実施例3と同様に色材受容層用塗布液を調製し、これを評価し表1に示し、さらに、それぞれの色材受容層用塗布液を用い実施例3と同様にしてインクジェット記録用シートを得た(実施例5、7、比較例1〜4)。結果を表2に示す。尚、比較例3および4においては色材受容層用塗布液の粘度等が高く支持体上に塗布することができなかった。
【0197】
【表1】
【0198】
上記表1から、本発明におけるカチオンポリマーを添加した色材受容層用塗布液は、気相法シリカ微粒子同士の凝集を抑制し、流動性の良好な分散液とすることができた。
これに対し、比較用のカチオンポリマー8を用いた色材受容層用塗布液(比較例1)は粘度、平均粒径および粗大粒子の評価においていずれもやや劣る結果となった。また、ポリモノメチルジアリルアンモニウムクロリドまたはポリアリルアミン塩酸塩を用いた色材受容層用塗布液は、多量の添加が必要であった。さらに、ポリアリルアミン塩酸塩を用いた色材受容層用塗布液(比較例3)およびカチオンポリマーを用いなかった色材受容層用塗布液(比較例4)は、粘度が高く支持体表面に塗布することが不可能であった。
【0199】
【表2】
【0200】
上記表2の結果から、本発明におけるカチオンポリマーを色材受容層用塗布液に添加し、カチオンポリマー変性無機顔料微粒子を含む本発明のインクジェット記録用シートは、光沢度、インク吸収速度、ひび割れ、耐水性、耐経時ニジミ、耐光性、印画濃度に優れていることが判った。
【0201】
これに対し、本発明におけるカチオンポリマーを用いなかった比較例1は色材受容層のひび割れおよび画像濃度の低下がみられ、また比較例2は経時ニジミが発生し、さらに耐光性も低かった。また、比較例3および4においては、色材受容層用塗布液の粘度が高く、インクジェット記録用シートを作製することができず、評価不能であった。
【0202】
【発明の効果】
本発明は、無機顔料微粒子と容易に反応しその凝集を防止するカチオンポリマーを提供することができる。また、本発明は、他のインク受容性能を低下させることなく、画像の印画濃度が高いインクジェット記録用シートを提供することことができる。さらに、本発明は、ひび割れ等の発生がなく強固で、良好なインク吸収性を有し高解像度な画像を形成しうるインクジェット記録用シートを提供することができる。また、本発明は、印画後の耐経時ニジミ、耐水性に極めて優れ、かつ太陽光や蛍光灯等の光照射下でも高い耐光性を示すインクジェット記録用シートを提供することができる。
Claims (10)
- 無機顔料微粒子と、該無機顔料微粒子と結合し得る基を末端に有するカチオンポリマーと、の結合によって得られるカチオンポリマー変性無機顔料微粒子を含む色材受容層を支持体上に有し、前記無機顔料微粒子と結合し得る基を末端に有するカチオンポリマーが下記一般式(1)で表されることを特徴とするインクジェット記録用シート。
(I)下記一般式(2)で表わされる繰り返し単位
(II)下記一般式(3)で表わされる繰り返し単位
- 前記無機顔料微粒子と結合し得る基を末端に有するカチオンポリマーは、片末端のみに前記無機顔料微粒子と結合し得る基を有することを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録用シート。
- 前記無機顔料微粒子と結合し得る基は、アルコキシシリル基であることを特徴とする請求項1または2に記載のインクジェット記録用シート。
- 前記無機顔料微粒子(x)と前記無機顔料微粒子と結合し得る基を末端に有するカチオンポリマー(y)との質量比(x:y)は、1:0.001〜1:0.2の範囲内であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載のインクジェット記録用シート。
- 前記無機顔料微粒子が、シリカ微粒子、コロイダルシリカ、アルミナ微粒子及び擬ベーマイトから選ばれる1種または2種以上である請求項1〜4のいずれか1項記載のインクジェット記録用シート。
- 前記色材受容層が、更に水溶性樹脂を含有するものである請求項1〜5のいずれか1項記載のインクジェット記録用シート。
- 前記水溶性樹脂が、ポリビニルアルコール系樹脂、セルロース系樹脂、エーテル結合を有する樹脂、カルバモイル基を有する樹脂、カルボキシル基を有する樹脂及びゼラチン類から選ばれる1種又は2種以上である請求項6記載のインクジェット記録用シート。
- 前記色材受容層が、更に水溶性樹脂を架橋し得る架橋剤を含有するものである請求項6又は7記載のインクジェット記録用シート。
- 前記色材受容層が、更に媒染剤を含有するものである請求項1〜8のいずれか1項記載のインクジェット記録用シート。
- 色材受容層が、少なくとも微粒子および水溶性樹脂を含有する塗布液を塗布した塗布層を架橋硬化させた層であり、該架橋硬化が、前記塗布液および/または下記塩基性溶液に架橋剤を添加し、かつ、(1)前記塗布液を塗布して塗布層を形成すると同時、または(2)前記塗布液を塗布して形成される塗布層の乾燥途中であって該塗布層が減率乾燥を示す前のいずれかのときに、pH8以上の塩基性溶液を該塗布層に付与することにより行われることを特徴とする請求項6〜9のいずれか1項記載のインクジェット記録用シート。
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