JP4267144B2 - 車両の制御装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、車両の制御装置に係り、詳しくは、内燃機関の駆動軸に直結可能な流体継手を介して変速機が接続されるとともに減速時には内燃機関の燃料停止を行う車両の燃料停止解除時における燃料復帰及び流体継手の制御技術に関する。
【0002】
【関連する背景技術】
近年、燃費の向上を目的として、加速操作を行わない減速時に内燃機関(エンジン)への燃料供給を停止(フューエルカット)する車両が開発され、実用化されている。
ところで、このように燃料供給を停止した場合、燃料供給を再開すると、急激に燃焼が生起されることでトルク変動が生じ、所謂トルクショックが発生するという問題がある。
【0003】
このようなことから、特表再96−036801号公報に開示されるように、燃料供給の停止を解除する際において、希薄空燃比のもとで燃料供給を再開し、これによりトルクショックを低減しドライバビリティの向上を図ることが考えられている。
また、エンジンの駆動軸に流体継手(トルクコンバータ)を介して変速機が接続されている場合、フューエルカットしても、トルクコンバータの滑りによって車速の低下よりも内燃機関の回転低下の方が早く、フューエルカットを長く保持できず、またエンジンストールが発生するという問題がある。そこで、このようなトルクコンバータを有した車両では、トルクコンバータが直結クラッチ(ロックアップクラッチ)により直結され、エンジンに駆動輪からの動力が確実に伝達されているときにフューエルカットを行うようにし、その後、車速が所定の車速にまで低下した時点で当該フューエルカットを中止して燃料供給を再開するようにしている。そして、この際、燃料供給の再開とロックアップクラッチの解除に伴うトルクショックの発生を防止するため、燃料供給を再開する前の段階でロックアップクラッチを解除するようにしている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、このように流体継手を有した車両では、ロックアップクラッチによる直結中、車速が極めて低速になるまでできる限り長期間に亘ってフューエルカットを継続することは好ましいことである一方、減速により車速が比較的急激に低速にまで減少したような場合には、ロックアップクラッチを解除して燃料供給を再開しようとしても、エンジン回転の低下に対し燃焼が間に合わず、またロックアップクラッチの解除の遅れもあって、エンジンを再始動するのに十分なエンジン回転を維持できず、やはりエンジンストールを引き起こすおそれがある。
【0005】
本発明はこのような問題点を解決するためになされたもので、その目的とするところは、内燃機関の駆動軸に直結可能な流体継手の接続された車両において、燃料復帰時に発生するトルクショックを防止し且つエンジンストールを確実に回避しながら内燃機関の燃料停止を長期間継続して燃費の向上を図ることの可能な車両の制御装置を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記した目的を達成するために、請求項1の発明では、内燃機関が筒内に燃料を直接噴射可能であって吸気行程で燃料を噴射する吸気行程噴射モードと圧縮行程で燃料を噴射する圧縮行程噴射モードとを切り換えて運転可能な筒内噴射型内燃機関である場合において、内燃機関への加速指示がなく車両が減速走行状態にあるときには燃料停止手段により内燃機関への燃料供給が停止されるが、この際、変速比増大手段により変速機の変速比が増大させられて内燃機関の回転速度が一定に保持される一方、車両の減速力が所定減速力に達し且つ車速が所定車速以下になると変速比減少手段により変速比増大手段に拘わらず変速比が減少させられる。そして、直結クラッチが直結作動中にして機関回転速度検出手段により検出される内燃機関の回転速度が所定値以下になると、燃料再開手段により燃料停止手段により停止していた燃料供給が圧縮行程噴射モードの選択により希薄空燃比のもとで再開され、内燃機関の運転が再開された後に、直結クラッチの直結作動が直結解除手段により解除される。
【0007】
従って、変速比の増大により内燃機関の回転速度が一定に保持され、減速力が所定減速力に達し且つ車速が所定車速以下になると変速比が減少させられて燃料停止が長期間に亘って継続される。一方、直結クラッチの直結解除前に燃料供給が希薄空燃比のもとで再開されて燃焼が生起され内燃機関の運転が再開されており、減速により車速が極低速にまで減少した場合であっても、直結クラッチの直結が解除されたときには、既に内燃機関の回転を維持する程度の燃焼によって内燃機関の回転が確保されていることになる。故に、エンジンストールを回避しながら、車速が極めて低速となるまで直結クラッチを直結状態に維持し、内燃機関への燃料供給の停止を長期に亘って継続して燃費の向上を図ることが可能とされる。
【0008】
この際、当該燃料供給の再開は希薄空燃比のもとで行われるので、燃料消費量は極めて少量に抑えられ、当該直結クラッチの直結解除前における燃料供給の再開が燃費の向上に悪影響を及ぼすことはない。
また、希薄空燃比のもとでは、燃焼は内燃機関の回転を維持する程度の燃焼であるため、このように直結クラッチを直結状態としたままに燃料供給が再開されてもトルクショックが発生することもない。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を添付図面に基づき説明する。
図1を参照すると、本発明に係る車両の制御装置の概略構成図が示されており、以下当該車両の制御装置の構成を説明する。
エンジン(内燃機関)1の駆動軸2には流体継手4、クラッチ6、入力軸(プライマリ軸)8を介して無段変速機(CVT)10が接続されており、CVT10の出力軸(セカンダリ軸)30には、ギヤ32、デファレンシャルギヤユニット34、車軸36を介して一対の車輪38,38が接続されている。
【0010】
エンジン1は、ここでは筒内噴射型ガソリンエンジンが採用される。この筒内噴射型のエンジン1は、公知の如く、燃焼室内に直接に燃料を噴射、即ち燃料供給する方式の内燃機関であり、要求負荷が大きいときには、燃料噴射モードを吸気行程噴射モードとし、吸気行程で燃料を噴射することで空気との混合を図り均一燃焼を実現可能であり、要求負荷が小さいときには、圧縮行程噴射モードとし、圧縮行程で燃料を噴射することで燃料を点火プラグ近傍に集めて層状燃焼を実現可能とされている。つまり、当該筒内噴射型のエンジン1では、燃料噴射モードを圧縮行程噴射モードとすることで、局部的には空燃比がリッチ空燃比或いは理論空燃比であっても、全体として空燃比が超希薄空燃比、即ち超リーン空燃比(例えば、A/F=24〜50)となるような運転が可能となっている。これにより、定速走行時等の燃費の向上が図られている。
【0011】
また、流体継手4は、トルクコンバータとして公知のものであり、ロックアップクラッチ(直結クラッチ)5を有し、車両の運転状況に応じて直結(ロックアップ)と非直結との切換えが可能とされている。そして、クラッチ6は摩擦クラッチであり、始動時等エンジン1をニュートラル状態にする場合に切断可能とされている。
【0012】
さらに、駆動軸2にはギヤユニットやチェーン等の伝達部材40を介して高圧の油圧を発生可能なオイルポンプ42が接続されており、該オイルポンプ42には、油路46が接続されている。つまり、エンジン1が駆動されオイルポンプ42が作動すると、オイルポンプ42はオイルパン44に溜められたオイル(作動油)を高圧の油圧、即ちライン圧にして油路46に吐出する。
【0013】
CVT10は、プライマリプーリユニット12とセカンダリプーリユニット20に無端状のVベルト27が掛け回されて構成されており、上記駆動軸2はプライマリプーリユニット12に接続されている。
詳しくは、プライマリプーリユニット12、セカンダリプーリユニット20は、それぞれVベルト27のV字状の両側面との当接面が当該V字状の両側面に沿うようテーパ状に形成された固定プーリ14及び可動プーリ16、固定プーリ22及び可動プーリ24からなっている。そして、プライマリ側の可動プーリ16には油圧アクチュエータ18が、セカンダリ側の可動プーリ24には油圧アクチュエータ26が設けられており、これら油圧アクチュエータ18、油圧アクチュエータ26によって可動プーリ16、可動プーリ24がそれぞれ入力軸8、出力軸30に沿い摺動させられると、プライマリプーリユニット12、セカンダリプーリユニット20の溝幅、即ちVベルト27の掛かる有効径が変化することになり、これにより、CVT10の変速比が変化して変速が行われる。
【0014】
より詳しくは、セカンダリ側の油圧アクチュエータ26には上記油路46が接続されており、プライマリ側の油圧アクチュエータ18には上記油路46から分岐してソレノイド51で駆動される電磁式のスプール弁50の介装された油路48が接続されている。つまり、プライマリ側の油圧アクチュエータ18には変速比制御用のスプール弁50で減圧調整された油圧が作用するようようにされている。
【0015】
また、同図に示すように、油路46にはソレノイド53で駆動される電磁式のスプール弁52が介装されている。このスプール弁52は、セカンダリ側の油圧アクチュエータ26に供給されるライン圧の大きさを調整するものであり、当該スプール弁52から排出されるオイルは潤滑の必要な他の各部へ送られるようにされている。
【0016】
尚、当該CVT10は既に公知のものであるため、ここではその詳細については説明を省略する。
また、エンジン1の駆動軸2近傍には、駆動軸2の回転によりエンジン回転速度Neを検出するエンジン回転センサ(機関回転速度検出手段)60が設けられており、プライマリプーリユニット12の近傍には、CVT10の入力軸8の回転速度、即ちプライマリ回転速度Npを検出するプライマリ回転センサ62が設けられており、出力軸30に接続されたギヤ32の近傍には、CVT10のセカンダリプーリユニット20の回転速度、即ちセカンダリ回転速度Nsを検出し車速Vを検出する車速センサ64が設けられている。さらに、油路46の油圧アクチュエータ26近傍には、油路46内の油圧を検出する油圧センサ66も設けられている。
【0017】
電子コントロールユニット(ECU)70は、中央処理装置(CPU)等からなり、エンジン1等の車両の各種制御を司る主制御装置であり、その入力側には、上述のエンジン回転センサ60、プライマリ回転センサ62、車速センサ64、油圧センサ66等の各種センサ類が接続されており、さらに、エンジン1の出力調節を行うアクセルペダル72の操作量、即ちアクセル開度(加速指示)θaccを検出するアクセルポジションセンサ(APS)74や、車両の制動操作、即ちサービスブレーキ(図示せず)の作動操作を行うブレーキペダル76の操作(ONまたはOFF)を検出するブレーキスイッチ(ブレーキSW)78が接続されている。
【0018】
一方、ECU70の出力側には、エンジン1の電磁スロットルバルブや点火コイル(共に図示せず)や上記電磁式のスプール弁50,52のソレノイド51,53等が接続されている。
以下、このように構成された本発明に係る車両の制御装置の作用について説明する。
【0019】
当該車両では、車両が安定走行しているような場合にはロックアップクラッチ5が直結状態とされ、さらに、この直結状態の下、APS74からのアクセル開度情報θaccに基づいて加速指示がなく車両が減速走行状態にあると判定されると、エンジン1への燃料供給が停止、即ちフューエルカットされるようにされている(燃料停止手段)。これにより、燃料消費が節減され、燃費の向上及び排ガスの低減が図られている。
【0020】
そして、このフューエルカットは、エンジン回転速度Neがある程度まで低下すると解除され、これにより燃料供給が再開されるようにされており、また、当該フューエルカットの解除時、即ち燃料供給の再開時には、発生したトルクショックが車輪38,38に伝達するのを防止すべく、ロックアップクラッチ5については直結を解除するようにしている。
【0021】
ところで、このフューエルカットに関しては、上述した如く、燃費の向上という点で、車速Vが極めて低速になるまでできるだけ長期間に亘って継続するのがよい一方、フューエルカットの解除時には、ロックアップクラッチ5の解除を適切なタイミングで行い、エンジンストールを引き起こさないようにする必要がある。
【0022】
そこで、本発明ではこれらの点を考慮してフューエルカットの解除制御を行うようにしている。以下、本発明に係るフューエルカット解除制御について説明する。
図2及び図3を参照すると、ECU70が実行する本発明に係るフューエルカット解除制御の制御ルーチンがフローチャートで示されており、また、図4を参照すると、当該フローチャートに沿い制御した場合の車速V、エンジン回転速度Ne、CVT10の変速比、及び車両に働く減速力FBの時間変化がタイムチャートで示されており、以下、図4のタイムチャートを参照しながら図2及び図3のフローチャートに沿い説明する。
【0023】
ECU70は、先ず図2のステップS10において、APS74により検出されるアクセル開度情報θacc、車速センサ64により検出される車速情報V、プライマリ回転センサ62により検出されるプライマリ回転速度情報Np及びエンジン回転センサ60により検出されるエンジン回転速度情報Neをそれぞれ読込む。
【0024】
ステップS12では、現在フューエルカット中か否かを判別する。つまり、ロックアップクラッチ5が直結状態とされ且つAPS74により検出されるアクセル開度θaccがゼロ値で車両が減速走行状態にあり、エンジン1への燃料供給が停止されている状態であるか否かを判別する。
ステップS12の判別結果が偽(No)で、フューエルカットが行われていないと判定された場合には、フューエルカット解除制御は必要がなく、何もせず当該ルーチンを抜ける。一方、ステップS12の判別結果が真(Yes)で、現在フューエルカット中と判定された場合には、次にステップS14に進む。
【0025】
ステップS14では、エンジン回転速度情報Neに基づき、当該エンジン回転速度Neの時間変化(dNe/dt)が所定値X1よりも小さいか否かを判別する。即ち、車両が急減速をしている状態でないか否かの判別を行う。尚、当該判別は、急減速の判別であるから、車速Vの時間変化に基づいて行うようにしてもよい。
【0026】
ステップS14の判別結果が偽(No)で、エンジン回転速度Neの時間変化(dNe/dt)が所定値X1以上であり、車両が急減速をしている状態と判定された場合には、次にステップS16に進む。
ステップS16では、通常通りアクセル開度情報θaccと車速情報V(セカンダリ回転速度情報Ns)とに基づいて目標Npを演算する。つまり、目標となる変速比(変速比=プライマリ回転速度Np/セカンダリ回転速度Ns)を演算する。実際には、変速比に対応する当該目標Npは、実験等に基づきアクセル開度θaccと車速Vとに応じて予めその適正値が設定されてマップ化されており、当該目標Npマップ(図示せず)から読みとられ、これにより変速比が設定される。ここでは、アクセル開度θaccはゼロ値であるので、当該アクセル開度θaccがゼロ値であるときの目標Npが車速Vの変化に応じて読み出される。
【0027】
このように目標Npが求められ変速比が決定されたら、ステップS18において、当該変速比に基づいて変速制御を行う。つまり、変速比に応じてスプール弁50及びスプール弁52の開度調整を行い、CVT10の油圧アクチュエータ18及び油圧アクチュエータ26に供給するライン圧をそれぞれ調圧する。
ところで、フューエルカット中、車両が急減速をしているときには、図4中に二点鎖線で示すように、車速Vが低速になるにつれてエンジン回転速度Neも急激に減少する。そして、エンジン回転速度Neが急に小さくなると、フューエルカットを解除すべくロックアップクラッチ5を解放したときに、流体継手4の滑りによってエンジン回転速度Neが車速Vの低下よりもさらに早く低下し、燃料供給を再開しても燃焼による回転力が回転摩擦力に打ち勝てずにエンジンストールしてしまうおそれがある。
【0028】
そこで、このような状況を回避するために、ここでは、車速Vがそれほど低速とならないうちにロックアップクラッチ5を解放するようにしており、故に、次のステップS20において、車速センサ64により検出される車速Vがそれほど低速でない所定車速V1以下になったか否かの判別を行う。
ステップS20の判別結果が偽(No)で、車速Vがそれほど低速ではなく、未だフューエルカットを解除する必要がないと判定された場合には、そのまま当該ルーチンを繰り返す。一方、ステップS20の判別結果が真(Yes)で、車速Vが所定車速V1以下になったと判定された場合には、次にステップS22に進む。
【0029】
ステップS22では、フューエルカットの解除を行うにあたり、先ずロックアップクラッチ5の解除を行う。このようにすると、通常車両が急減速をしているような場合にはエンジン回転速度Neの減少度合いが大きいためにエンジン回転速度Neが急速に低下してしまうのであるが、エンジン回転速度Neが比較的高い状態のときにロックアップクラッチ5の解除が行われることになり、その後におけるフューエルカットの解除、即ち燃料供給の再開をトルクショックの発生なく実施でき、且つ、エンジンストールを確実に回避することができる。
【0030】
ステップS24では、ロックアップクラッチ5の解除後、エンジン回転速度Neが所定回転速度Ne2以下にまで低下したか否かを判別する。つまり、エンジン回転速度Neが、フューエルカットを解除し燃料供給を再開したときにエンジンストールが発生しないぎりぎりの回転速度にまで低下したか否かを判別する。
ステップS24の判別結果が偽(No)で、エンジン回転速度Neが所定回転速度Ne2よりも大きく、未だフューエルカットを解除する必要がないと判定された場合には、そのまま当該ルーチンを繰り返す。一方、ステップS24の判別結果が真(Yes)で、エンジン回転速度Neが所定回転速度Ne2以下になったと判定された場合には、次にステップS26に進み、フューエルカットの解除を行う。
【0031】
このようにフューエルカットが解除されると、燃料供給が再開されることになる。そして、燃料供給が再開された後は、図4に示すように、エンジン回転速度Neは安定してアイドル回転速度に保持される。また、このように燃料供給が再開されると、もはやフューエルカット中ではないため、次回ステップS12が実行されたときには、当該ステップS12の判別結果は偽(No)と判定される。
【0032】
一方、上記ステップS14の判別結果が真(Yes)で、エンジン回転速度Neの時間変化(dNe/dt)が所定値X1よりも小さく、車両が急減速をしておらず通常の減速状態と判定された場合には、次にステップS28に進む。
ステップS28では、CVT10の変速比を徐々に増大させる変速比増大制御を行う(変速比増大手段)。つまり、車速Vが低下してもエンジン回転速度Neが低下せず、比較的高回転の所定回転速度Ne1(Ne1>Ne2)を維持するよう、変速比増大制御、つまり、CVT10の変速比を図4中に実線で示すように増大側に徐々に変化させるような制御を行うようにする。
【0033】
詳しくは、ロックアップクラッチ5が直結のときにはエンジン回転速度Neとプライマリ回転速度Npとは同一であって所定回転速度Ne1は即ち目標Npであり、一方車速Vは即ちセカンダリ回転速度Nsであるため、ここでは、これら所定回転速度Ne1と車速Vとに基づいて変速比を上記変速比の式から求める。
このように変速比増大制御のための変速比が決定されたら、ステップS30において、当該変速比に基づいて変速制御を行う。つまり、上記ステップS18の場合と同様に、変速比に応じてスプール弁50及びスプール弁52の開度調整を行い、CVT10の油圧アクチュエータ18及び油圧アクチュエータ26に供給するライン圧をそれぞれ調圧する。
【0034】
これにより、エンジン回転速度Neが所定回転速度Ne1に保持され、フューエルカットが長期間に亘って継続可能とされ、燃費の改善が図られる。
ステップS32では、車両の減速力FBを演算する。この減速力FBは、つまりフューエルカットにより燃焼が実施されていない状態でのエンジン1のエンジンブレーキ、即ちエンジンフリクション(ポンピングロスを含む)やオルタネータ負荷等による抵抗の大きさを意味し、これらの抵抗値はエンジン1の個体(仕様等)に依存する。従って、減速力FBは、エンジン1に固有の値としてCVT10の変速比とエンジン回転速度Neとから容易に演算されることになり、エンジン回転速度Neが所定回転速度Ne1で一定の場合には、図4中に二点鎖線で示すように、変速比の増加に応じて増大する。
【0035】
ステップS34では、減速力FBが所定値F1以上となり且つ車速Vが所定車速V2(V1>V2)以下となったか否かを判別する。
図4に示すように、車速Vの減少とともに変速比は増加し、これに伴い減速力FBは所定値F1を越えるようになる。故に、ここでは、先ず減速力FBが所定値F1以上であるか否かを判別する。ここに、所定値F1は、後にロックアップクラッチ5を解除したときに、減速力FBが急に抜けることにより運転者が空走感のような違和感を覚えることのない程度の減速力FBの上限値を示しており、例えば、上記変速比増大制御を実施せずに所定車速V1でロックアップクラッチ5を解除する際の減速力FBに等しいものとされている。
【0036】
そして、さらに、車速Vが所定車速V2以下、即ちエンジン回転速度Ne一定の下、変速比が最大変速比(フル・ロー)となるまでにある程度余裕のある車速Vとなったか否かを判別する。
ステップS34の判別結果が真(Yes)で、減速力FBが所定値F1以上で且つ車速Vが所定車速V2以下と判定された場合には、ステップS36に進む。
【0037】
ステップS36では、変速比急変制御を行う(変速比減少手段)。つまり、上記変速比増大制御により徐々に増大させている変速比を一時的に小さく変更する。
このように、変速比を一時的に小さく変更すると、これに応じて所定回転速度Ne1で一定に保持していたエンジン回転速度Neが減少することになり、これにより、本来ならば図4中に破線で示す如くさらに増加する減速力FBが、エンジン1の慣性トルクの放出により、同図中実線で示すように急減し、所定値F1よりも小さく抑制されることになる。
【0038】
そして、ステップS38では、変速比急変制御の実施により低下するエンジン回転速度Neが所定回転速度Ne3(Ne1>Ne3>Ne2)以下にまで減少したか否かを判別する。この所定回転速度Ne3は、図4に示すように、所定車速V3(V2>V3)に対応した値である。判別結果が偽(No)で、エンジン回転速度Neが未だ所定回転速度Ne3にまで低下していないと判定される場合には、当該ルーチンの実行を繰り返し、減速力FBを減少させ続ける。一方、判別結果が真(Yes)で、エンジン回転速度Neが所定回転速度Ne3にまで低下したと判定された場合には、ステップS40に進む。
【0039】
ステップS40では、上記車両が急減速している場合とは異なり、先ず、フューエルカットの解除を行い、燃料供給を再開する。詳しくは、ここでは、上記圧縮行程噴射モード、即ち超リーン空燃比で運転を再開する(燃料再開手段)。
このように、燃料噴射を圧縮行程で行い超リーン空燃比で運転を再開すると、空燃比が極めて希薄であることから、燃料の燃焼は、エンジン1の運転を行うもののエンジン回転速度Neを維持する程度にとどまり、エンジン出力に寄与することはない。従って、このようにロックアップクラッチ5が接続されたままに燃料供給が再開されても、トルクショックが発生することなく、車両の乗員が違和感を覚えることはない。
【0040】
そしてさらに、超リーン空燃比で運転を開始した後は、空燃比をテーリングさせ、要求負荷に応じた空燃比に徐々に移行させる。つまり、空燃比が要求負荷に応じた空燃比となるようにして燃料供給量を徐変させる。
ステップS42では、上記同様に車速センサ64により検出される車速Vが比較的極低速である所定車速V4(V3>V4)以下になったか否かの判別を行う。
【0041】
ステップS42の判別結果が偽(No)で、車速Vがそれほど低速ではないと判定された場合には、そのまま当該ルーチンを繰り返す。一方、ステップS42の判別結果が真(Yes)で、車速Vが所定車速V4以下になったと判定された場合には、次にステップS44に進み、ロックアップクラッチ5の解除を行う(直結解除手段)。
【0042】
ところで、このように車速Vが所定車速V4となりロックアップクラッチ5の解除を行った時点では、上述の如く、燃料供給は既に再開され、空燃比は要求負荷に応じた空燃比に向けてテーリング処理されている。詳しくは、ロックアップクラッチ5が解除されたことで、空燃比及び燃料供給量はアイドル運転に応じた空燃比に向けてテーリング処理されている。
【0043】
従って、このように車速Vが所定車速V4と比較的極低速となった時点でロックアップクラッチ5を解除しても、エンジン回転速度Neは、大きく低下してしまうことなく良好にアイドル回転速度に収束し、エンジンストールが確実に回避されることとなる。
つまり、通常の減速状態のときには、車速Vが所定車速V4と比較的極低速となるまでロックアップクラッチ5の接続状態を保持したとしても、上述の如く燃料復帰時におけるトルクショックを防止しながらエンジンストールを確実に回避可能であり、故にトルクショックやエンジンストールなくフューエルカットを長期間に亘って継続して燃費の向上を図ることができることとなる。
【0044】
また、このように車速Vが所定車速V4にまで低下した時点でロックアップクラッチ5の解除を行うと、この時点では、減速力FBは、図4にFbで示すように、最終的に所定値F1よりも十分に小さい値となっている。つまり、減速力FBは、ロックアップクラッチ5の解除により運転者が空走感のような違和感を覚える程度の減速力FBよりも十分に小さな値に抑制されている。
【0045】
従って、上述の如く変速比増大制御を行い、フューエルカットを長期間に亘り継続するようにした場合であっても、当該変速比急変制御を実施することにより、ロックアップクラッチ5の解除時に発生する空走感のような違和感をも好適に防止することができる。
尚、フューエルカットを解除し、ロックアップクラッチ5を解除した後は、車両がさらに減速して停止に至った際の発進に備えるため、変速比は、図4に示すように最大変速比(フル・ロー)にまで移行制御される。
【0046】
以上のように、本発明の車両の制御装置では、フューエルカットの解除に当たり、主に車両が通常の減速状態にあるときには、ロックアップクラッチ5が接続されたまま燃料供給を超リーン空燃比のもとで再開し、その後にロックアップクラッチ5を解除するようにしている。
従って、燃料供給の再開時にトルクショックを発生させないようにし、且つ、ロックアップクラッチ5を解除したときにエンジンストールを発生させないようにしながら、車速Vが極めて低速になるまでフューエルカットを長期間に亘り継続して燃費の向上を図ることが可能である。
【0047】
尚、上記実施形態では、併せて変速比増大制御や変速比急変制御を実施した場合を例に説明したが、変速比増大制御や変速比急変制御については必ずしも実施しなくてもよい。つまり、フューエルカット中にエンジン回転速度Neを一定に保持しなくても、上記の如くエンジン回転速度Neに応じて燃料供給を超リーン空燃比のもとで開始し、その後にロックアップクラッチ5を解除することで上記同様の効果が得られる。
【0048】
また、上記実施形態では、エンジン1として筒内噴射型ガソリンエンジンを採用し、燃料噴射モードを圧縮行程噴射モードとして超希薄空燃比での運転を実現するようにしたが、吸気行程噴射モードにおいてもある程度の希薄空燃比での運転を実現することが可能であり、さらに、エンジン1を通常の希薄空燃比運転可能な吸気管噴射型のガソリンエンジン(リーンバーンエンジン)とし、当該吸気管噴射型のガソリンエンジンを希薄空燃比で運転するようにしても、ある程度の希薄空燃比での運転を実現することができ、十分に上記同様の効果が得られる。
【0049】
また、上記実施形態では、変速機として無段変速機(CVT)10を用いるようにしたが、通常の有段式の自動変速機であっても本発明を好適に適用可能である。
【0050】
【発明の効果】
以上詳細に説明したように、本発明の請求項1の車両の制御装置によれば、変速比の増大により内燃機関の回転速度を一定に保持するとともに減速力が所定減速力に達し且つ車速が所定車速以下になると変速比を減少させるので、その後に直結クラッチの直結を解除しても、減速力が急に抜けて運転者が空走感のような違和感を覚えることを防止しながら燃料停止を長期間に亘って継続することができる。また、直結クラッチの直結解除前に燃料供給を圧縮行程噴射モードの選択により希薄空燃比のもとで再開し内燃機関の運転を再開するので、車が極低速にまで減少した場合であっても、直結クラッチの直結が解除されたときには、内燃機関の出力に寄与せず内燃機関の回転を維持する程度の燃料消費量の極めて少ない燃焼によって内燃機関の回転を確保しておくことができる。従って、燃料復帰時に発生するトルクショックを防止し且つエンジンストールを確実に回避しながら、車速が極低速となるまで直結クラッチを直結状態に維持し、内燃機関への燃料供給の停止を長期に亘って継続して燃費の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る車両の制御装置を示す概略構成図である。
【図2】本発明に係るフューエルカット解除制御の制御ルーチンを示すフローチャートの一部である。
【図3】図2のフローチャートに続く、フューエルカット解除制御の制御ルーチンを示すフローチャートの残部である。
【図4】図2及び図3のフローチャートに沿い制御した場合の車速V、エンジン回転速度Ne、CVTの変速比、及び車両に働く減速力FBの時間変化を示すタイムチャートである。
【符号の説明】
1 エンジン(内燃機関)
4 流体継手
5 ロックアップクラッチ(直結クラッチ)
10 無段変速機(CVT)
60 エンジン回転センサ(機関回転速度検出手段)
62 プライマリ回転センサ
64 車速センサ
70 電子コントロールユニット(ECU)
74 アクセルポジションセンサ(APS)

Claims (1)

  1. 筒内に燃料を直接噴射可能であって吸気行程で燃料を噴射する吸気行程噴射モードと圧縮行程で燃料を噴射する圧縮行程噴射モードとを切り換えて転可能な筒内噴射型内燃機関の駆動軸に流体継手を介して変速機の接続された車両の制御装置において、
    前記流体継手を直結可能な直結クラッチと、
    前記内燃機関への加速指示がなく車両が減速走行状態にあるとき、前記内燃機関への燃料供給を停止する燃料停止手段と、
    前記燃料停止手段による燃料供給の停止中、車速の低下に伴って前記変速機の変速比を増大させ、前記内燃機関の回転速度を一定に保持する変速比増大手段と、
    前記変速比と前記内燃機関の回転速度とに基づき演算される車両の減速力が所定減速力に達し且つ車速が所定車速以下になると、前記変速比増大手段に拘わらず、前記変速比を減少させて前記内燃機関の回転速度の低下を許容する変速比減少手段と、
    前記内燃機関の回転速度を検出する機関回転速度検出手段と、
    前記燃料停止手段による燃料供給の停止中、前記直結クラッチが直結作動中で且つ前記機関回転速度検出手段により検出される前記内燃機関の回転速度が所定速度以下となったとき、前記燃料停止手段により停止していた燃料供給を前記圧縮行程噴射モードで再開する燃料再開手段と、
    前記燃料再開手段により燃料供給が再開され前記内燃機関の運転が再開された後、前記直結クラッチの直結作動を解除する直結解除手段と、
    を備えたことを特徴とする車両の制御装置。
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