JP2004176859A - 車両用パワートレーンの制御装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】エンジンの燃焼気筒数を増加する場合に発生するショックを抑制することのできる車両用パワートレーンの制御装置を提供する。
【解決手段】エンジンの全ての気筒における燃焼を停止するフューエルカット制御と、燃焼する気筒数を全数未満に減少させる減筒運転制御とを切り換え可能な車両用パワートレーンの制御装置において、フューエルカット制御から減筒運転制御に切り換える前に、エンジンと車輪との間に配置されているトルク容量制御装置のトルク容量を所定値以下に低下させる制御手段(ステップS1ないしステップS5)を備えている。
【選択図】 図1
【解決手段】エンジンの全ての気筒における燃焼を停止するフューエルカット制御と、燃焼する気筒数を全数未満に減少させる減筒運転制御とを切り換え可能な車両用パワートレーンの制御装置において、フューエルカット制御から減筒運転制御に切り換える前に、エンジンと車輪との間に配置されているトルク容量制御装置のトルク容量を所定値以下に低下させる制御手段(ステップS1ないしステップS5)を備えている。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、エンジンおよびトルク容量制御装置を有する車両用パワートレーンの制御装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来から、車両の駆動力源として用いられる内燃機関、例えば、エンジンは、燃焼室で燃料を燃焼させて熱エネルギを発生させ、その熱エネルギを機械エネルギに変換して出力する動力装置である。そして、車両に対する駆動力要求が少ない場合は、燃料を燃焼させる気筒数を減少させて、燃費の向上を図る可変気筒エンジンが知られており、可変気筒エンジンを有する制御装置の一例が、下記の特許文献1に記載されている。
【0003】
この特許文献1に記載されている車両は、エンジンの出力側に自動変速機が設けられている。また、エンジンは第1気筒ないし第8気筒を有しており、各気筒毎に燃料噴射弁が設けられている。さらに、エンジンを制御する電子制御装置が設けられており、この電子制御装置には、自動変速機の出力軸回転数センサの信号、スロットル開度センサの信号、吸入空気量センサの信号、エンジン回転数センサの信号などが入力される。前記吸入空気量をエンジン回転数で割った値は、エンジン負荷を表すパラメータとして使用される。また、自動変速機の出力軸回転数は、車速を表すパラメータとして使用される。これに対して、電子制御装置からは、各気筒毎に燃料噴射量および点火時期を制御する信号が出力される。
【0004】
そして、特許文献1に記載されている制御装置は、可変気筒エンジンを有する車両において、稼動気筒数を減少させると、燃料消費率の改善効果が大きくなるが、稼動気筒数が減少するほど、エンジン出力トルクの脈動が増大し、このトルク脈動は車速が低いほど大きな振動となって現れるという課題に着目し、車両走行速度が低いほど、稼動気筒数を増加させる制御をおこなうことで、運転性の悪化を防止することができるとされている。なお、可変気筒エンジンに関する文献としては、特許文献1の他に、下記の特許文献2ないし特許文献4が知られている。
【0005】
【特許文献1】
特開平7−83083号公報
【特許文献2】
特開平7−293685号公報
【特許文献3】
特開平8−230520号公報
【特許文献4】
特開平8−310276号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上記特許文献1に記載されているエンジンの制御装置においては、稼動気筒数を減少させている状態から、車両の走行速度が上昇した場合にも、稼動気筒数が増加してエンジントルクの変動が発生して、ショックとして体感される可能性があるが、上記公報においては、稼動気筒数の増加にともなうショックについては何ら考慮されておらず、その点で改善の余地が残されていた。
【0007】
この発明は上記の事情を背景としてなされたものであり、エンジンの燃焼気筒数を増加する場合に発生するショックを抑制することのできる車両用パワートレーンの制御装置を提供することを目的としている。
【0008】
【課題を解決するための手段およびその作用】
上記目的を達成するため請求項1の発明は、エンジンの全ての気筒における燃焼を停止するフューエルカット制御と、燃焼する気筒数を全数未満に減少させる減筒運転制御とを切り換え可能な車両用パワートレーンの制御装置において、前記フューエルカット制御から減筒運転制御に切り換える前に、前記エンジンと車輪との間に配置されているトルク容量制御装置のトルク容量を所定値以下に低下させる制御手段を備えていることを特徴とするものである。
【0009】
請求項1の発明によれば、燃焼気筒数の増加に伴うエンジン出力の変動が、トルク容量制御装置を経由して車輪に伝達されることが抑制される。
【0010】
請求項2の発明は、請求項1の構成に加えて、前記フューエルカット制御から前記減筒運転制御に切り換えられた場合に、エンジンを停止させる要求が発生するか否かを判断する停止要求判断手段と、この停止要求判断手段の判断結果に基づいて、前記減筒運転制御を継続するか否かを判断する継続判断手段とを、更に備えていることを特徴とするものである。
【0011】
請求項2の発明によれば、請求項1の発明と同様の作用が生じる他に、エンジンを停止させる要求が発生するか否かが判断され、この判断結果に基づいて、減筒運転制御を継続するか否かが判断される。
【0012】
【発明の実施の形態】
つぎに、この発明を適用できる車両のパワートレーンおよびその制御系統を、図2に基づいて説明する。まず、パワートレーンについて説明する。車両には駆動力源としてエンジン1が搭載されており、エンジン1の動力が、変速機2およびデファレンシャル20を経由して車輪3に伝達されるように構成されている。エンジン1は、燃料を燃焼させて動力を出力する形式の動力装置であり、このエンジン1としては、内燃機関、例えば、ガソリンエンジン、LPGエンジン、ディーゼルエンジン、メタノールエンジン、水素エンジンなどを用いることができる。
【0013】
以下、エンジン1としてガソリンエンジンを用いた場合について説明する。このエンジン1は複数の気筒4を有しており、各気筒4は、シリンダ、ピストン、燃焼室などの要素により構成されている。また各気筒4毎に、燃焼室に燃料を供給する燃料供給装置5および点火装置6が設けられている。このため、複数の各気筒4について、燃料の供給量および供給時期、点火時期などを独立して個々に制御することができる。具体的には、このエンジン1は、複数の気筒4のうち、燃料の燃焼をおこなう気筒数を変更(増減)することのできる、いわゆる可変気筒エンジンである。複数の気筒4のうち、燃料の供給および点火をおこなう気筒数を、所定数未満に設定することを、便宜上、減筒運転と呼ぶ。さらにまた、エンジン1対する燃料供給制御および点火時期制御を開始することに先立ち、エンジン1をクランキングさせるスタータモータ1Aが設けられている。
【0014】
変速機2は、その変速比を段階的(不連続的)に制御することのできる有段式の変速機である。ここでは、変速機2として、例えば、複数の遊星歯車機構と、遊星歯車機構のトルク伝達経路を切り換える摩擦係合装置とを有する変速機を用いた場合について説明する。この変速機2においては、摩擦係合装置の係合・解放状態を変更することにより、変速比を変更することができる。変速機2として、例えば、前進5段および後進1段の変速比を設定可能な変速機を用いることができる。そして、変速機2を制御するシフトポジションとして、例えば、P(パーキング)ポジション、R(リバース)ポジション、N(ニュートラル)ポジション、D(ドライブ)ポジション、4ポジション、3ポジション、2ポジション、L(ロー)ポジションの各ポジションを設定可能である。
【0015】
ここで、Dポジション、4ポジション、3ポジション、2ポジション、Lポジションが、前進用のシフトポジションである。前進用のシフトポジションとは、変速機2の出力軸のトルクを車輪3に伝達することにより、車両を前進させる向きの駆動力を発生させることのできるシフトポジションを意味する。そして、Dポジションが選択された場合は、変速機2において、第1速ないし第5速のいずれかを設定可能であり、4ポジションが選択された場合は、変速機2において、第1速ないし第4速のいずれかを設定可能であり、3ポジションが選択された場合は、変速機2において、第1速ないし第3速のいずれかを設定可能であり、2ポジションが選択された場合は、変速機2において、第1速または第2速のいずれかを設定可能であり、Lポジションが選択された場合は、変速機2において、第1速に固定される。なお、前進ポジジョンが選択された場合は、摩擦係合装置の1つであるクラッチ7が係合される。
【0016】
Rポジションは、後進用のシフトポジションである。後進用のシフトポジションとは、変速機2の出力軸のトルクを車輪3に伝達することにより、車両を後進(後退)させる向きの駆動力を発生させることのできるシフトポジションを意味する。Rポジションが選択された場合は、摩擦係合装置の1つである7Aが係合されて、所定の変速比に固定される。上記のDポジション、4ポジション、3ポジション、2ポジション、Lポジション、Rポジションが、駆動ポジションである。これらの駆動ポジションが選択された場合は、摩擦係合装置のトルク容量(係合圧)が高められて、変速機2の入力部材と出力部材との間でトルク伝達(動力伝達)が可能な状態となる。
【0017】
これに対して、NポジションおよびPポジションは、非駆動ポジションであり、この非駆動ポジションが選択された場合は、摩擦係合装置のトルク容量が低下されて、変速機2の入力部材と出力部材との間でトルク伝達が不可能な状態となる。このように、各シフトポジションでは、変速比の制御範囲が異なることから、「シフトポジション」を「シフトレンジ」と呼ぶこともできる。
【0018】
さらに、変速機2の摩擦係合装置の係合・解放を制御するアクチュエータとしての油圧制御装置8が設けられている。また、前記エンジン1および油圧制御装置8を制御する電子制御装置9が設けられている。電子制御装置9は、演算処理装置(CPUまたはMPU)および記憶装置(RAM,ROM)および入出力インタフェースを主体とするマイクロコンピュータにより構成されている。
【0019】
そして、電子制御装置9には、制動要求検知センサ10の信号、加速要求検知センサ11の信号、シフトポジションセンサ12の信号、車速センサ13の信号、エンジン回転数センサ14の信号、スロットル開度センサ15の信号、イグニッションスイッチ16の信号、エコラン用メインスイッチ17の信号などが入力される。電子制御装置9は、各種のセンサの信号および予め記憶されているデータに基づいて、エンジン1および変速機2を制御する信号を出力する。
【0020】
前記制動要求検知センサ10により、ブレーキ装置10Aの状態が検知される。ブレーキ装置10Aは、例えば、ブレーキペダル、マスターシリンダ、ホイールシリンダなどにより構成されている。また、加速要求検知センサ11により、エンジン出力制御装置11Aの状態が検知される。エンジン出力制御装置11Aは、例えば、アクセルペダル、スロットルバルブなどにより構成されている。これら、ブレーキペダルおよびアクセルペダルは、車両の乗員により操作される。
【0021】
図2に示す車両における各種の制御について説明する。まず、エンジン1の始動(運転)・停止制御について説明する。エコラン用メインスイッチ17がオフされている場合は、イグニッションスイッチ16の信号に基づいて、エンジン1の運転・停止が制御される。イグニッションスイッチ16により、例えば、ロック、アクセサリ、オン、スタートの各操作ポジションが検知される。すなわち、エンジン1が停止している場合に、イグニッションスイッチ16により、オンについでスタートが検知された場合は、スタータモータ1Aが駆動されてエンジン1がクランキングされるとともに、燃料供給制御および点火制御が実行されて、エンジン回転数が自律回転可能な回転数となる。これに対して、エンジン1が運転されている場合に、イグニッションスイッチ16が、オンについでアクセサリを検知した場合は、燃料供給制御および点火制御が停止されて、エンジン1が停止する。
【0022】
一方、エコラン用メインスイッチ17がオンされている場合は、イグニッションスイッチ16の信号以外の条件に基づいて、エンジン1の運転・停止が制御される。このように、イグニッションスイッチ16の信号以外の条件に基づいて、エンジン1の運転・停止を実行する制御を、エコラン制御と呼ぶ。エコラン制御においては、エンジン1の運転中に停止条件が成立した場合は、エンジン1が停止される。一方、エンジン1の停止中に復帰条件が成立した場合は、エンジン1を始動する。例えば、シフトポジションとして駆動ポジションが選択されていること、車速が零であること、ブレーキペダルが踏み込まれていること、などの事項が全て検知された場合に、前記停止条件が成立する。これに対して、前記事項の少なくとも1つの事項が解消された場合は、復帰条件が成立する。
【0023】
つぎに、変速機2の制御について説明する。変速機2のクラッチ7,7Aのトルク容量は、基本的には、選択されるシフトポジションに基づいて制御されるが、シフトポジション以外の条件に基づいて、クラッチ7,7Aのトルク容量を制御することもできる。以下、エンジン1の制御と、クラッチ7,7Aのトルク容量の制御とを協調させる制御例を、図1のフローチャートに基づいて説明する。
【0024】
まず、エンジン1が減筒運転制御が実行されているか否かが判断される(ステップS1)。ここで、エンジン1の減筒運転制御とは、「燃焼気筒数が全数未満であること」を意味する。この減筒運転制御は、例えば、車両の車速が所定車速以下である場合、またはエンジン負荷が所定値以下である場合に実行される。このステップS1で肯定的に判断された場合は、減速状態でフューエルカット制御が実行されているか否かが判断される(ステップS2)。ここで、フューエルカット制御とは、「全数の気筒4に対する燃料供給を停止すること。」を意味する。このフューエルカット制御は、例えば、エンジン回転数が所定回転数以上であり、かつ、アクセルペダルが踏み込まれていない場合に実行される。
【0025】
ステップS2で肯定的に判断された場合は、ニュートラル制御が実行されているか否かが判断される(ステップS3)。ここで、ニュートラル制御とは、「シフトポジションとして駆動ポジションが選択されている場合に、変速機2の摩擦係合装置のトルク容量を所定値以下に設定する制御。」を意味する。このステップS3で肯定的に判断された場合は、フューエルカット制御を終了するか否かが判断される(ステップS4)。このステップS4は、エンジン回転数が所定回転数未満であるか否かに基づいて判断される。
【0026】
エンジン回転数が所定回転数未満であれば、ステップS4で肯定的に判断されて、フューエルカット制御から減筒運転制御に切り換えられる(ステップS5)。このステップS5についで、車速が零であるか否かが判断され(ステップS6)、このステップS6で肯定的に判断された場合は、ブレーキペダルが踏まれたか否かが判断される(ステップS7)。このステップS7で肯定的に判断された場合は、エコラン制御によりエンジン1を停止する制御を実行する(ステップS8)。このエコラン制御は、エンジン回転数を零に近づける(または、完全に停止させる)制御であり、エコラン制御においては、燃料噴射が停止され、かつ、点火制御が停止される。前記フューエルカット制御においても、燃料噴射制御および点火制御が停止されるが、フューエルカット制御は、エンジン回転数が所定回転数以上でおこなわれる制御であり、かつ、エンジン回転数を零に近づけるための制御ではない点で、エコラン制御とフューエルカット制御とは相違する。
【0027】
これに対して、前記ステップS7またはステップS6またはステップS4で否定的に判断された場合は、減筒運転制御およびニュートラル制御を継続する(ステップS9)。また前記ステップS3で否定的に判断された場合は、エンジン回転数が所定回転数a未満であり、かつ、車速が所定車速bを越えているか否かが判断される(ステップS10)。このステップS10で肯定的に判断された場合は、ステップS9に進み、ステップS10で否定的に判断された場合は、この制御ルーチンを終了する。なお、前記ステップS2またはステップS1で否定的に判断された場合も、この制御ルーチンを終了する。
【0028】
この図1の制御例のように、エンジン1の減筒運転制御を実行すれば燃費が向上する。また、フューエルカット制御から減筒運転制御に復帰する場合は、エンジン出力(トルク×回転数)の変動幅は、減筒運転制御を実行していない場合におけるエンジン出力の変動幅よりも大きいが、減筒運転制御が実行される前にニュートラル制御が実行されているため、エンジン出力の変動が車輪4には伝達されにくく、ショックを回避できる。さらに、エンジン負荷が所定値以下の場合、または所定車速以下(減速中、または車両の停止中)でには、エンジン出力の変動幅が一層大きくなるが、前述と同じ理由によりショックを回避できる。したがって、上記の条件下でも、減筒運転をおこなって、低燃費効果を発揮させることができる。
【0029】
さらにまた、フューエルカット制御の終了前であって、減筒運転制御の開始前に、ニュートラル制御が実行されているため、減筒運転制御の開始にともなうエンジン出力の変動時期よりも、変速機2のトルク容量の低下時期が遅れることを、確実に防止できる。さらに、減筒運転制御の実行中は、ステップS6,S7でエンジン1の停止要求の有無を判断し、その判断結果に基づいて減筒運転制御を継続するか否かを判断できる。したがって、エンジンの燃焼状態を停止要求に適合させることができ、燃費が一層向上する。
【0030】
ここで、図1のフローチャートに示された機能的手段と、この発明の構成との対応関係を説明すれば、ステップS1,S2,S3,S4,S5が、この発明の制御手段に相当し、ステップS6,S7が、この発明の要求判断手段に相当し、ステップS8,S9が、この発明の継続判断手段に相当する。また、「トルク容量制御装置の入力部材のトルクが、トルク容量制御装置の出力部材に伝達されることのないトルク容量」が、この発明の「所定値」に相当し、ステップSS6,S7で挙げたパラメータが、エンジンを停止させる要求に相当する。
【0031】
さらに、図2に示された構成と、この発明の構成との対応関係を説明すれば、変速機2およびクラッチ(摩擦係合装置)7,7Aが、この発明のトルク容量制御装置に相当する。なお、この発明において「減筒運転を実行すること」には、「右バンクおよび左バンクを有するエンジンにおいて、片方のバンクのみで燃料を燃焼させる制御」も含まれる。さらに、複数の気筒から構成される気筒群が3以上備えられており、車両状態に応じて、各気筒群の稼動・停止を選択する形式のエンジンに対しても、この発明を実施可能である。
【0032】
また、上記実施例では、変速機2が有段変速機である場合について説明しているが、特許請求の範囲の各請求項に記載された発明を、無段変速機を備えた車両のパワートレーンに適用することもできる。無段変速機とは、入力部材と出力部材との間の変速比を、連続的もしくは無段階に制御することのできる変速機を意味している。この無段変速機としては、ベルト式無段変速機とトロイダル式無段変速機とが挙げられる。
【0033】
これらの無段変速機を簡単に説明する。まず、ベルト式無段変速機は、駆動側プーリおよび従動側プーリと、駆動側プーリの溝および従動側プーリの溝に巻き掛けられたベルトとを有する。駆動側プーリは入力部材に連結され、従動側プーリは出力部材に連結される。そして、駆動側プーリの溝幅を調整して、駆動側プーリに対するベルトの巻き掛け半径と、従動側プーリに対するベルトの巻き掛け半径とを制御することにより、ベルト式無段変速機の変速比が制御される。また、従動側プーリの溝幅を調整することにより、ベルトの張力が制御される。このベルトの張力の調整により、各プーリおよびベルトとの接触圧力、言い換えれば、駆動側プーリと従動側プーリとの間で伝達されるトルク容量が制御される。なお、ベルト式無段変速機の「ベルト」には、チェーンも含まれる。
【0034】
一方、トロイダル式無段変速機は、トロイダル面を有する入力ディスクおよび出力ディスクと、各ディスクに対して接触するパワーローラとを有する変速機である。入力ディスクは入力部材に連結され、出力ディスクは出力部材に連結される。各ディスクとパワーローラとの接触面には潤滑油が存在する。そして、パワーローラを、各ディスクの軸線に直交する平面内で直線状に移動させて、パワーローラと各ディスクとの接触半径を調整することにより、入力部材と出力部材との間の変速比が制御される。また、各ディスクとパワーローラとの接触面圧を調整することにより、入力部材と出力部材との間で伝達されるトルク容量が制御される。なお、いずれの無段変速機においても、そのトルク容量は、アクチュエータ、例えば、油圧制御装置により制御されるように構成されている。すなわち、これらの無段変速機を有するパワートレーンであれば、無段変速機が特許請求の範囲の各請求項に記載されたトルク容量制御装置に相当する。
【0035】
さらに、特許請求の範囲の各請求項に記載された発明を、変速機とトルク容量制御装置とが別々に設けられているパワートレーンを有する車両に対しても適用できる。このような車両としては、例えば、エンジンと変速機との間の動力伝達経路、または変速機とデファレンシャルとの間の動力伝達経路に、発進クラッチが設けられている車両が挙げられる。発進クラッチのトルク容量は、アクチュエータ、例えば、油圧制御装置により制御される。このような発進クラッチを有するパワートレーンにおいて、その発進クラッチのトルク容量を制御する場合は、「発進クラッチ」が、特許請求の範囲に記載されている各請求項の発明の「トルク容量制御装置」に相当する。
【0036】
ところで、前述の無段変速機を有する車両においては、エンジンと変速機との間の動力伝達経路、または変速機とデファレンシャルとの間の動力伝達経路に、前後進切り換え機構が配置される。この前後進切り換え機構は、回転部材の回転方向を正方向と逆方向とに選択的に切り換える機構であり、前後進切り換え機構は、例えば、遊星歯車機構および摩擦係合装置(クラッチ・ブレーキ)により構成される。摩擦係合装置のトルク容量は、アクチュエータ、例えば油圧制御装置により制御される。このように、エンジンと車輪との間の動力伝達経路に、無段変速機および前後進切り換え機構を配置した車両に対しても、特許請求の範囲の各請求項に記載された発明を適用できる。この場合は、「前後進切り換え機構の一部を構成する摩擦係合装置」が、特許請求の範囲に記載されている各請求項の発明の「トルク容量制御装置」に相当する。
【0037】
さらにまた、特許請求の範囲に記載されている制御手段を、制御器または制御用コントローラと読み替え、停止要求判断手段を、停止要求判断器または停止要求判断用コントローラと読み替え、継続判断手段を、継続判断器または継続判断用コントローラと読み替えることもできる。この場合、前記電子制御装置9が、制御器、制御用コントローラ、停止要求判断器、停止要求判断用コントローラ、継続判断器、継続判断用コントローラに相当する。さらに、制御手段を、制御ステップと読み替え、停止要求判断手段を、停止要求判断ステップと読み替え、継続判断手段を、継続判断ステップと読み替え、車両用パワートレーンの制御装置を、車両用パワートレーンの制御方法と読み替えることもできる。
【0038】
【発明の効果】
以上説明したように請求項1の発明によれば、燃焼気筒数の増加に伴うエンジン出力の変動が、トルク容量制御装置を経由して車輪に伝達されることを抑制でき、ショックを回避できる。
【0039】
請求項2の発明によれば、請求項1の発明と同様の効果を得られる他に、エンジンを停止させる要求が発生するか否かを判断し、この判断結果に基づいて、減筒運転制御を継続するか否かを判断できる。したがって、エンジンの燃焼状態を停止要求に適合させることができ、燃費が一層向上する。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の一制御例を示すフローチャートである。
【図2】図1の制御例を実行できる車両の概念図である。
【符号の説明】
1…エンジン、 2…変速機、 3…車輪、 4…気筒、 7,7A…摩擦係合装置(クラッチ)、 9…電子制御装置。
【発明の属する技術分野】
この発明は、エンジンおよびトルク容量制御装置を有する車両用パワートレーンの制御装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来から、車両の駆動力源として用いられる内燃機関、例えば、エンジンは、燃焼室で燃料を燃焼させて熱エネルギを発生させ、その熱エネルギを機械エネルギに変換して出力する動力装置である。そして、車両に対する駆動力要求が少ない場合は、燃料を燃焼させる気筒数を減少させて、燃費の向上を図る可変気筒エンジンが知られており、可変気筒エンジンを有する制御装置の一例が、下記の特許文献1に記載されている。
【0003】
この特許文献1に記載されている車両は、エンジンの出力側に自動変速機が設けられている。また、エンジンは第1気筒ないし第8気筒を有しており、各気筒毎に燃料噴射弁が設けられている。さらに、エンジンを制御する電子制御装置が設けられており、この電子制御装置には、自動変速機の出力軸回転数センサの信号、スロットル開度センサの信号、吸入空気量センサの信号、エンジン回転数センサの信号などが入力される。前記吸入空気量をエンジン回転数で割った値は、エンジン負荷を表すパラメータとして使用される。また、自動変速機の出力軸回転数は、車速を表すパラメータとして使用される。これに対して、電子制御装置からは、各気筒毎に燃料噴射量および点火時期を制御する信号が出力される。
【0004】
そして、特許文献1に記載されている制御装置は、可変気筒エンジンを有する車両において、稼動気筒数を減少させると、燃料消費率の改善効果が大きくなるが、稼動気筒数が減少するほど、エンジン出力トルクの脈動が増大し、このトルク脈動は車速が低いほど大きな振動となって現れるという課題に着目し、車両走行速度が低いほど、稼動気筒数を増加させる制御をおこなうことで、運転性の悪化を防止することができるとされている。なお、可変気筒エンジンに関する文献としては、特許文献1の他に、下記の特許文献2ないし特許文献4が知られている。
【0005】
【特許文献1】
特開平7−83083号公報
【特許文献2】
特開平7−293685号公報
【特許文献3】
特開平8−230520号公報
【特許文献4】
特開平8−310276号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上記特許文献1に記載されているエンジンの制御装置においては、稼動気筒数を減少させている状態から、車両の走行速度が上昇した場合にも、稼動気筒数が増加してエンジントルクの変動が発生して、ショックとして体感される可能性があるが、上記公報においては、稼動気筒数の増加にともなうショックについては何ら考慮されておらず、その点で改善の余地が残されていた。
【0007】
この発明は上記の事情を背景としてなされたものであり、エンジンの燃焼気筒数を増加する場合に発生するショックを抑制することのできる車両用パワートレーンの制御装置を提供することを目的としている。
【0008】
【課題を解決するための手段およびその作用】
上記目的を達成するため請求項1の発明は、エンジンの全ての気筒における燃焼を停止するフューエルカット制御と、燃焼する気筒数を全数未満に減少させる減筒運転制御とを切り換え可能な車両用パワートレーンの制御装置において、前記フューエルカット制御から減筒運転制御に切り換える前に、前記エンジンと車輪との間に配置されているトルク容量制御装置のトルク容量を所定値以下に低下させる制御手段を備えていることを特徴とするものである。
【0009】
請求項1の発明によれば、燃焼気筒数の増加に伴うエンジン出力の変動が、トルク容量制御装置を経由して車輪に伝達されることが抑制される。
【0010】
請求項2の発明は、請求項1の構成に加えて、前記フューエルカット制御から前記減筒運転制御に切り換えられた場合に、エンジンを停止させる要求が発生するか否かを判断する停止要求判断手段と、この停止要求判断手段の判断結果に基づいて、前記減筒運転制御を継続するか否かを判断する継続判断手段とを、更に備えていることを特徴とするものである。
【0011】
請求項2の発明によれば、請求項1の発明と同様の作用が生じる他に、エンジンを停止させる要求が発生するか否かが判断され、この判断結果に基づいて、減筒運転制御を継続するか否かが判断される。
【0012】
【発明の実施の形態】
つぎに、この発明を適用できる車両のパワートレーンおよびその制御系統を、図2に基づいて説明する。まず、パワートレーンについて説明する。車両には駆動力源としてエンジン1が搭載されており、エンジン1の動力が、変速機2およびデファレンシャル20を経由して車輪3に伝達されるように構成されている。エンジン1は、燃料を燃焼させて動力を出力する形式の動力装置であり、このエンジン1としては、内燃機関、例えば、ガソリンエンジン、LPGエンジン、ディーゼルエンジン、メタノールエンジン、水素エンジンなどを用いることができる。
【0013】
以下、エンジン1としてガソリンエンジンを用いた場合について説明する。このエンジン1は複数の気筒4を有しており、各気筒4は、シリンダ、ピストン、燃焼室などの要素により構成されている。また各気筒4毎に、燃焼室に燃料を供給する燃料供給装置5および点火装置6が設けられている。このため、複数の各気筒4について、燃料の供給量および供給時期、点火時期などを独立して個々に制御することができる。具体的には、このエンジン1は、複数の気筒4のうち、燃料の燃焼をおこなう気筒数を変更(増減)することのできる、いわゆる可変気筒エンジンである。複数の気筒4のうち、燃料の供給および点火をおこなう気筒数を、所定数未満に設定することを、便宜上、減筒運転と呼ぶ。さらにまた、エンジン1対する燃料供給制御および点火時期制御を開始することに先立ち、エンジン1をクランキングさせるスタータモータ1Aが設けられている。
【0014】
変速機2は、その変速比を段階的(不連続的)に制御することのできる有段式の変速機である。ここでは、変速機2として、例えば、複数の遊星歯車機構と、遊星歯車機構のトルク伝達経路を切り換える摩擦係合装置とを有する変速機を用いた場合について説明する。この変速機2においては、摩擦係合装置の係合・解放状態を変更することにより、変速比を変更することができる。変速機2として、例えば、前進5段および後進1段の変速比を設定可能な変速機を用いることができる。そして、変速機2を制御するシフトポジションとして、例えば、P(パーキング)ポジション、R(リバース)ポジション、N(ニュートラル)ポジション、D(ドライブ)ポジション、4ポジション、3ポジション、2ポジション、L(ロー)ポジションの各ポジションを設定可能である。
【0015】
ここで、Dポジション、4ポジション、3ポジション、2ポジション、Lポジションが、前進用のシフトポジションである。前進用のシフトポジションとは、変速機2の出力軸のトルクを車輪3に伝達することにより、車両を前進させる向きの駆動力を発生させることのできるシフトポジションを意味する。そして、Dポジションが選択された場合は、変速機2において、第1速ないし第5速のいずれかを設定可能であり、4ポジションが選択された場合は、変速機2において、第1速ないし第4速のいずれかを設定可能であり、3ポジションが選択された場合は、変速機2において、第1速ないし第3速のいずれかを設定可能であり、2ポジションが選択された場合は、変速機2において、第1速または第2速のいずれかを設定可能であり、Lポジションが選択された場合は、変速機2において、第1速に固定される。なお、前進ポジジョンが選択された場合は、摩擦係合装置の1つであるクラッチ7が係合される。
【0016】
Rポジションは、後進用のシフトポジションである。後進用のシフトポジションとは、変速機2の出力軸のトルクを車輪3に伝達することにより、車両を後進(後退)させる向きの駆動力を発生させることのできるシフトポジションを意味する。Rポジションが選択された場合は、摩擦係合装置の1つである7Aが係合されて、所定の変速比に固定される。上記のDポジション、4ポジション、3ポジション、2ポジション、Lポジション、Rポジションが、駆動ポジションである。これらの駆動ポジションが選択された場合は、摩擦係合装置のトルク容量(係合圧)が高められて、変速機2の入力部材と出力部材との間でトルク伝達(動力伝達)が可能な状態となる。
【0017】
これに対して、NポジションおよびPポジションは、非駆動ポジションであり、この非駆動ポジションが選択された場合は、摩擦係合装置のトルク容量が低下されて、変速機2の入力部材と出力部材との間でトルク伝達が不可能な状態となる。このように、各シフトポジションでは、変速比の制御範囲が異なることから、「シフトポジション」を「シフトレンジ」と呼ぶこともできる。
【0018】
さらに、変速機2の摩擦係合装置の係合・解放を制御するアクチュエータとしての油圧制御装置8が設けられている。また、前記エンジン1および油圧制御装置8を制御する電子制御装置9が設けられている。電子制御装置9は、演算処理装置(CPUまたはMPU)および記憶装置(RAM,ROM)および入出力インタフェースを主体とするマイクロコンピュータにより構成されている。
【0019】
そして、電子制御装置9には、制動要求検知センサ10の信号、加速要求検知センサ11の信号、シフトポジションセンサ12の信号、車速センサ13の信号、エンジン回転数センサ14の信号、スロットル開度センサ15の信号、イグニッションスイッチ16の信号、エコラン用メインスイッチ17の信号などが入力される。電子制御装置9は、各種のセンサの信号および予め記憶されているデータに基づいて、エンジン1および変速機2を制御する信号を出力する。
【0020】
前記制動要求検知センサ10により、ブレーキ装置10Aの状態が検知される。ブレーキ装置10Aは、例えば、ブレーキペダル、マスターシリンダ、ホイールシリンダなどにより構成されている。また、加速要求検知センサ11により、エンジン出力制御装置11Aの状態が検知される。エンジン出力制御装置11Aは、例えば、アクセルペダル、スロットルバルブなどにより構成されている。これら、ブレーキペダルおよびアクセルペダルは、車両の乗員により操作される。
【0021】
図2に示す車両における各種の制御について説明する。まず、エンジン1の始動(運転)・停止制御について説明する。エコラン用メインスイッチ17がオフされている場合は、イグニッションスイッチ16の信号に基づいて、エンジン1の運転・停止が制御される。イグニッションスイッチ16により、例えば、ロック、アクセサリ、オン、スタートの各操作ポジションが検知される。すなわち、エンジン1が停止している場合に、イグニッションスイッチ16により、オンについでスタートが検知された場合は、スタータモータ1Aが駆動されてエンジン1がクランキングされるとともに、燃料供給制御および点火制御が実行されて、エンジン回転数が自律回転可能な回転数となる。これに対して、エンジン1が運転されている場合に、イグニッションスイッチ16が、オンについでアクセサリを検知した場合は、燃料供給制御および点火制御が停止されて、エンジン1が停止する。
【0022】
一方、エコラン用メインスイッチ17がオンされている場合は、イグニッションスイッチ16の信号以外の条件に基づいて、エンジン1の運転・停止が制御される。このように、イグニッションスイッチ16の信号以外の条件に基づいて、エンジン1の運転・停止を実行する制御を、エコラン制御と呼ぶ。エコラン制御においては、エンジン1の運転中に停止条件が成立した場合は、エンジン1が停止される。一方、エンジン1の停止中に復帰条件が成立した場合は、エンジン1を始動する。例えば、シフトポジションとして駆動ポジションが選択されていること、車速が零であること、ブレーキペダルが踏み込まれていること、などの事項が全て検知された場合に、前記停止条件が成立する。これに対して、前記事項の少なくとも1つの事項が解消された場合は、復帰条件が成立する。
【0023】
つぎに、変速機2の制御について説明する。変速機2のクラッチ7,7Aのトルク容量は、基本的には、選択されるシフトポジションに基づいて制御されるが、シフトポジション以外の条件に基づいて、クラッチ7,7Aのトルク容量を制御することもできる。以下、エンジン1の制御と、クラッチ7,7Aのトルク容量の制御とを協調させる制御例を、図1のフローチャートに基づいて説明する。
【0024】
まず、エンジン1が減筒運転制御が実行されているか否かが判断される(ステップS1)。ここで、エンジン1の減筒運転制御とは、「燃焼気筒数が全数未満であること」を意味する。この減筒運転制御は、例えば、車両の車速が所定車速以下である場合、またはエンジン負荷が所定値以下である場合に実行される。このステップS1で肯定的に判断された場合は、減速状態でフューエルカット制御が実行されているか否かが判断される(ステップS2)。ここで、フューエルカット制御とは、「全数の気筒4に対する燃料供給を停止すること。」を意味する。このフューエルカット制御は、例えば、エンジン回転数が所定回転数以上であり、かつ、アクセルペダルが踏み込まれていない場合に実行される。
【0025】
ステップS2で肯定的に判断された場合は、ニュートラル制御が実行されているか否かが判断される(ステップS3)。ここで、ニュートラル制御とは、「シフトポジションとして駆動ポジションが選択されている場合に、変速機2の摩擦係合装置のトルク容量を所定値以下に設定する制御。」を意味する。このステップS3で肯定的に判断された場合は、フューエルカット制御を終了するか否かが判断される(ステップS4)。このステップS4は、エンジン回転数が所定回転数未満であるか否かに基づいて判断される。
【0026】
エンジン回転数が所定回転数未満であれば、ステップS4で肯定的に判断されて、フューエルカット制御から減筒運転制御に切り換えられる(ステップS5)。このステップS5についで、車速が零であるか否かが判断され(ステップS6)、このステップS6で肯定的に判断された場合は、ブレーキペダルが踏まれたか否かが判断される(ステップS7)。このステップS7で肯定的に判断された場合は、エコラン制御によりエンジン1を停止する制御を実行する(ステップS8)。このエコラン制御は、エンジン回転数を零に近づける(または、完全に停止させる)制御であり、エコラン制御においては、燃料噴射が停止され、かつ、点火制御が停止される。前記フューエルカット制御においても、燃料噴射制御および点火制御が停止されるが、フューエルカット制御は、エンジン回転数が所定回転数以上でおこなわれる制御であり、かつ、エンジン回転数を零に近づけるための制御ではない点で、エコラン制御とフューエルカット制御とは相違する。
【0027】
これに対して、前記ステップS7またはステップS6またはステップS4で否定的に判断された場合は、減筒運転制御およびニュートラル制御を継続する(ステップS9)。また前記ステップS3で否定的に判断された場合は、エンジン回転数が所定回転数a未満であり、かつ、車速が所定車速bを越えているか否かが判断される(ステップS10)。このステップS10で肯定的に判断された場合は、ステップS9に進み、ステップS10で否定的に判断された場合は、この制御ルーチンを終了する。なお、前記ステップS2またはステップS1で否定的に判断された場合も、この制御ルーチンを終了する。
【0028】
この図1の制御例のように、エンジン1の減筒運転制御を実行すれば燃費が向上する。また、フューエルカット制御から減筒運転制御に復帰する場合は、エンジン出力(トルク×回転数)の変動幅は、減筒運転制御を実行していない場合におけるエンジン出力の変動幅よりも大きいが、減筒運転制御が実行される前にニュートラル制御が実行されているため、エンジン出力の変動が車輪4には伝達されにくく、ショックを回避できる。さらに、エンジン負荷が所定値以下の場合、または所定車速以下(減速中、または車両の停止中)でには、エンジン出力の変動幅が一層大きくなるが、前述と同じ理由によりショックを回避できる。したがって、上記の条件下でも、減筒運転をおこなって、低燃費効果を発揮させることができる。
【0029】
さらにまた、フューエルカット制御の終了前であって、減筒運転制御の開始前に、ニュートラル制御が実行されているため、減筒運転制御の開始にともなうエンジン出力の変動時期よりも、変速機2のトルク容量の低下時期が遅れることを、確実に防止できる。さらに、減筒運転制御の実行中は、ステップS6,S7でエンジン1の停止要求の有無を判断し、その判断結果に基づいて減筒運転制御を継続するか否かを判断できる。したがって、エンジンの燃焼状態を停止要求に適合させることができ、燃費が一層向上する。
【0030】
ここで、図1のフローチャートに示された機能的手段と、この発明の構成との対応関係を説明すれば、ステップS1,S2,S3,S4,S5が、この発明の制御手段に相当し、ステップS6,S7が、この発明の要求判断手段に相当し、ステップS8,S9が、この発明の継続判断手段に相当する。また、「トルク容量制御装置の入力部材のトルクが、トルク容量制御装置の出力部材に伝達されることのないトルク容量」が、この発明の「所定値」に相当し、ステップSS6,S7で挙げたパラメータが、エンジンを停止させる要求に相当する。
【0031】
さらに、図2に示された構成と、この発明の構成との対応関係を説明すれば、変速機2およびクラッチ(摩擦係合装置)7,7Aが、この発明のトルク容量制御装置に相当する。なお、この発明において「減筒運転を実行すること」には、「右バンクおよび左バンクを有するエンジンにおいて、片方のバンクのみで燃料を燃焼させる制御」も含まれる。さらに、複数の気筒から構成される気筒群が3以上備えられており、車両状態に応じて、各気筒群の稼動・停止を選択する形式のエンジンに対しても、この発明を実施可能である。
【0032】
また、上記実施例では、変速機2が有段変速機である場合について説明しているが、特許請求の範囲の各請求項に記載された発明を、無段変速機を備えた車両のパワートレーンに適用することもできる。無段変速機とは、入力部材と出力部材との間の変速比を、連続的もしくは無段階に制御することのできる変速機を意味している。この無段変速機としては、ベルト式無段変速機とトロイダル式無段変速機とが挙げられる。
【0033】
これらの無段変速機を簡単に説明する。まず、ベルト式無段変速機は、駆動側プーリおよび従動側プーリと、駆動側プーリの溝および従動側プーリの溝に巻き掛けられたベルトとを有する。駆動側プーリは入力部材に連結され、従動側プーリは出力部材に連結される。そして、駆動側プーリの溝幅を調整して、駆動側プーリに対するベルトの巻き掛け半径と、従動側プーリに対するベルトの巻き掛け半径とを制御することにより、ベルト式無段変速機の変速比が制御される。また、従動側プーリの溝幅を調整することにより、ベルトの張力が制御される。このベルトの張力の調整により、各プーリおよびベルトとの接触圧力、言い換えれば、駆動側プーリと従動側プーリとの間で伝達されるトルク容量が制御される。なお、ベルト式無段変速機の「ベルト」には、チェーンも含まれる。
【0034】
一方、トロイダル式無段変速機は、トロイダル面を有する入力ディスクおよび出力ディスクと、各ディスクに対して接触するパワーローラとを有する変速機である。入力ディスクは入力部材に連結され、出力ディスクは出力部材に連結される。各ディスクとパワーローラとの接触面には潤滑油が存在する。そして、パワーローラを、各ディスクの軸線に直交する平面内で直線状に移動させて、パワーローラと各ディスクとの接触半径を調整することにより、入力部材と出力部材との間の変速比が制御される。また、各ディスクとパワーローラとの接触面圧を調整することにより、入力部材と出力部材との間で伝達されるトルク容量が制御される。なお、いずれの無段変速機においても、そのトルク容量は、アクチュエータ、例えば、油圧制御装置により制御されるように構成されている。すなわち、これらの無段変速機を有するパワートレーンであれば、無段変速機が特許請求の範囲の各請求項に記載されたトルク容量制御装置に相当する。
【0035】
さらに、特許請求の範囲の各請求項に記載された発明を、変速機とトルク容量制御装置とが別々に設けられているパワートレーンを有する車両に対しても適用できる。このような車両としては、例えば、エンジンと変速機との間の動力伝達経路、または変速機とデファレンシャルとの間の動力伝達経路に、発進クラッチが設けられている車両が挙げられる。発進クラッチのトルク容量は、アクチュエータ、例えば、油圧制御装置により制御される。このような発進クラッチを有するパワートレーンにおいて、その発進クラッチのトルク容量を制御する場合は、「発進クラッチ」が、特許請求の範囲に記載されている各請求項の発明の「トルク容量制御装置」に相当する。
【0036】
ところで、前述の無段変速機を有する車両においては、エンジンと変速機との間の動力伝達経路、または変速機とデファレンシャルとの間の動力伝達経路に、前後進切り換え機構が配置される。この前後進切り換え機構は、回転部材の回転方向を正方向と逆方向とに選択的に切り換える機構であり、前後進切り換え機構は、例えば、遊星歯車機構および摩擦係合装置(クラッチ・ブレーキ)により構成される。摩擦係合装置のトルク容量は、アクチュエータ、例えば油圧制御装置により制御される。このように、エンジンと車輪との間の動力伝達経路に、無段変速機および前後進切り換え機構を配置した車両に対しても、特許請求の範囲の各請求項に記載された発明を適用できる。この場合は、「前後進切り換え機構の一部を構成する摩擦係合装置」が、特許請求の範囲に記載されている各請求項の発明の「トルク容量制御装置」に相当する。
【0037】
さらにまた、特許請求の範囲に記載されている制御手段を、制御器または制御用コントローラと読み替え、停止要求判断手段を、停止要求判断器または停止要求判断用コントローラと読み替え、継続判断手段を、継続判断器または継続判断用コントローラと読み替えることもできる。この場合、前記電子制御装置9が、制御器、制御用コントローラ、停止要求判断器、停止要求判断用コントローラ、継続判断器、継続判断用コントローラに相当する。さらに、制御手段を、制御ステップと読み替え、停止要求判断手段を、停止要求判断ステップと読み替え、継続判断手段を、継続判断ステップと読み替え、車両用パワートレーンの制御装置を、車両用パワートレーンの制御方法と読み替えることもできる。
【0038】
【発明の効果】
以上説明したように請求項1の発明によれば、燃焼気筒数の増加に伴うエンジン出力の変動が、トルク容量制御装置を経由して車輪に伝達されることを抑制でき、ショックを回避できる。
【0039】
請求項2の発明によれば、請求項1の発明と同様の効果を得られる他に、エンジンを停止させる要求が発生するか否かを判断し、この判断結果に基づいて、減筒運転制御を継続するか否かを判断できる。したがって、エンジンの燃焼状態を停止要求に適合させることができ、燃費が一層向上する。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の一制御例を示すフローチャートである。
【図2】図1の制御例を実行できる車両の概念図である。
【符号の説明】
1…エンジン、 2…変速機、 3…車輪、 4…気筒、 7,7A…摩擦係合装置(クラッチ)、 9…電子制御装置。
Claims (2)
- エンジンの全ての気筒における燃焼を停止するフューエルカット制御と、燃焼する気筒数を全数未満に減少させる減筒運転制御とを切り換え可能な車両用パワートレーンの制御装置において、
前記フューエルカット制御から減筒運転制御に切り換える前に、前記エンジンと車輪との間に配置されているトルク容量制御装置のトルク容量を所定値以下に低下させる制御手段を備えていることを特徴とする車両用パワートレーンの制御装置。 - 前記フューエルカット制御から前記減筒運転制御に切り換えられた場合に、エンジンを停止させる要求が発生するか否かを判断する停止要求判断手段と、
この停止要求判断手段の判断結果に基づいて、前記減筒運転制御を継続するか否かを判断する継続判断手段と
を、更に備えていることを特徴とする請求項1に記載の車両用パワートレーンの制御装置。
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JP2007239679A (ja) * | 2006-03-10 | 2007-09-20 | Honda Motor Co Ltd | 車両のエンジン自動停止制御装置 |
JP2009264513A (ja) * | 2008-04-25 | 2009-11-12 | Toyota Motor Corp | 燃費管理装置 |
JP2013096518A (ja) * | 2011-11-01 | 2013-05-20 | Toyota Motor Corp | 車両制御装置 |
JP2013241878A (ja) * | 2012-05-21 | 2013-12-05 | Denso Corp | 車両駆動システムの制御装置 |
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- 2002-11-28 JP JP2002346143A patent/JP2004176859A/ja active Pending
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