JP4266538B2 - 赤色発光性インキ組成物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、吸収波長が紫外領域にあり、蛍光発色域が赤色域にあるユウロピウム錯体を含んでなる赤色発光性インキ組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、機能性有機化合物という言葉が用いられるようになり、電子、光学ディバイスに有機物を利用する研究が盛んになってきている。その中でフォトルミネッセンス(PL)現象を有する発光化合物(自発光化合物)が知られている。
【0003】
発光化合物の用途の一例としてはセキュリティーインキがある。セキュリティーインキとは、可視光線下では筆跡が不可視であるが、紫外線、例えば、ブラックライトランプで照射した場合には筆跡が発光して、記録情報を読むことができるインキをいう。
【0004】
セキュリティーインキは、秘密保持などの目的で偽造や複写を防止したり、機密情報を記録する目的で使用される。例えば、商品のロット番号、暗号等をセキュリティーインキで記録すると、商品の流通経路の追跡、偽造品の防止対策が容易となり、しかも可視光線下では視認されないため、改竄や損傷の怖れも少なくなる。
【0005】
特開2000−144029号公報には、可視光領域で実質的に不可視であって、紫外線により励起されて615±20μmに発光中心波長を有するユウロピウム(Eu)を含む色素と、ポリビニル系樹脂とを含有するとともに、ホスフィンオキサイド化合物、ホスフィンサルファイド化合物およびホスフィン化合物の中から選ばれる少なくとも1種のリン酸系化合物を中性配位子として含有し、かつ水または/およびエタノールを溶媒中94重量%以上含有することを特徴とするインキ組成物が提案されている。
【0006】
特開2000−160083号公報には、発光材料として4,4,4−トリフルオロ−1−(2−チエニル)−1,3−ブタンジオナート・ユウロピウムキレート化合物の含有量が0.001〜5重量%であり、溶剤としてアルコール系溶剤を70重量%以上含有するインクジェット印刷用インキ組成物が提案されている。
【0007】
また、ユウロピウム系錯体の発光化合物を用いるインキ組成物に関し、紫外線照射により視認しうるジェット印刷用水性インキ(特公昭54−22336号)、熱転写用蛍光ユウロピウムコンプレックス(特公平6−15269号)、二配座配位子、例えばビピリジン誘導体やフェナントロリン誘導体が配位したユウロピウム錯体を含有する発光性インキ組成物(特開平3−50291号)、アンモニウム塩を対イオンに有するテトラ(ベンゾイルトリフルオロアセトナート)ユウロピウム錯体を含むインキ組成物(特開昭64−6085号、同64−26583号)等が知られている。
【0008】
セキュリティーインキとして実用化することを考えた場合、インキの筆跡や機密情報は紫外線、例えばブラックライトランプ(365nm光)で照射した場合にはっきりと視認できる程度に発光する必要がある。しかしながら、これら従来の発光化合物やインキ組成物では発光強度が未だ不十分であったり、アルコール類を溶媒とするインクの安定性に問題がある。
【0009】
従って、可視光領域で実質的に不可視である筆跡や記録画像を、紫外線照射下ではっきりと視認できる、発光強度に優れた赤色発光性インキ組成物の開発が望まれている。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記従来の発光強度やインキの溶解安定性や機密情報の堅牢性についての問題を解決するものであり、その目的とするところは、可視光下では実質的に無色でありながら、紫外域波長に吸収を有し、紫外光で励起すると、赤色付近の波長(600〜635nm)に強い発光を呈する赤色発光性インキ組成物を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明は、式
【0012】
【化3】
【0013】
[式中、R1は、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基、及びハロゲン原子からなる群から選択される置換基であり、Rは炭素数1〜20の含フッ素アルキル基、炭素数1〜6の置換もしくは非置換アルキル基、炭素数7〜10の置換もしくは非置換アラルキル基、及び炭素数6〜12の置換もしくは非置換アリール基からなる群から選択される基である。]
で表されるユウロピウム錯体を含む赤色発光性インキ組成物を提供するものであり、そのことにより上記目的が達成される。
【0014】
本発明の赤色発光性インキ組成物のうち好ましいものは、式
【0015】
【化4】
【0016】
[式中、Rは炭素数1〜20の含フッ素アルキル基、炭素数1〜6の置換もしくは非置換アルキル基、炭素数7〜10の置換もしくは非置換アラルキル基、炭素数6〜12の置換もしくは非置換アリール基からなる群から選択される基である。]
で表されるユウロピウム錯体0.001〜5.0重量%、及びアルコール系溶剤60重量%以上を含む赤色発光性インキ組成物である。
【0017】
従来、インキ組成物用の赤色発光化合物としては、希土類金属のユウロピウム系のβ−ジケトン錯体が知られている。そのようなユウロピウム錯体としては、中性配位子として一配座又は二配座配位子を有するテノイルトリフルオロアセトン系やベンゾイルトリフルオロアセトン系のものが多く提案されているが、中性配位子を持たないナフトイルトリフルオロアセトン系のユウロピウム錯体を含有するインキ組成物は知られていない。
【0018】
【発明の実施の形態】
本発明の赤色発光性インキ組成物が含有する式(I)又は式(II)で表される発光化合物は、3価のユウロピウム(希土類金属)に、2−ナフチル基が結合した特定のβ−ジケトン誘導体の3分子が配位した紫外線励起型ユウロピウム錯体である。
【0019】
式(I)において、2−ナフチル基における置換基R1はアルキル基、アルコキシ基、又はハロゲン原子でありうる。より具体的には、2−ナフチル基の置換基R1は炭素数1〜4、好ましくは1〜2のアルキル基、炭素数1〜4、好ましくは1〜2のアルコキシ基、及びハロゲン原子からなる群から選択される。
【0020】
2−ナフチル基の具体例としては、2−ナフチル基、1−メチル−2−ナフチル基、3−メチル−2−ナフチル基、4−メチル−2−ナフチル基、5−メチル−2−ナフチル基、6−メチル−2−ナフチル基、7−メチル−2−ナフチル基、8−メチル−2−ナフチル基、4−エチル−2−ナフチル基等の炭素数1〜4のアルキル基置換2−ナフチル基;1−メトキシ−2−ナフチル基、3−メトキシ−2−ナフチル基、4−メトキシ−2−ナフチル基、5−メトキシ−2−ナフチル基、6−メトキシ−2−ナフチル基、7−メトキシ−2−ナフチル基、8−メトキシ−2−ナフチル基、6−エトキシ−2−ナフチル基等の炭素数1〜4のアルコキシ基置換2−ナフチル基;あるいはハロゲン置換2−ナフチル基等が挙げられる。
【0021】
式(I)又は式(II)におけるRは含フッ素アルキル基、置換もしくは非置換アルキル基、置換もしくは非置換アラルキル基、又は置換もしくは非置換アリール基でありうる。より具体的には、CF3基、CHF2基、CH2F基、C2F5基、CH(CF3)2基、CF2CF2CF3基、C7F15基又はCnF2n+1(式中nは1〜20の整数である。)等の炭素数1〜20の含フッ素アルキル基;メチル基、エチル基、イソプロピル基等の炭素数1〜6のアルキル基;ベンジル基、フッ素原子で置換されたベンジル基等の炭素数7〜10のアラルキル基;フェニル基;フッ素原子やアルキル基で置換された炭素数6〜10のフェニル基;及びナフチル基等の炭素数10〜12のアリール基であり、一般にはCF3基、特にCnF2n+1(式中nは1〜20の整数である。)基等の炭素数1〜20のパーフルオロアルキル基、炭素数1〜10のパーフルオロアルキル基であることが好ましい。
【0022】
本発明のインキ組成物が含有するユウロピウム錯体(I)又は(II)の具体例を以下に示す。
【0023】
【化5】
【0024】
【化6】
【0025】
【化7】
【0026】
【化8】
【0027】
【化9】
【0028】
【化10】
【0029】
【化11】
【0030】
【化12】
【0031】
本発明のインキ組成物が含有するユウロピウム錯体(I)又は(II)は、β−ジケトン誘導体としての、例えば4,4,4−トリフルオロ−1−(2−ナフチル)−1,3−ブタンジオン(3mol)と3価のユウロピウム塩化物(1mol)を1NのNaOHの存在下に有機溶剤(例えばエタノール)中で加熱混合することにより容易に得られる。
【0032】
得られるユウロピウム錯体は無色の粉末であり、本発明のインキ組成物の紫外線励起型蛍光発色剤(発光化合物)として用いる。このユウロピウム錯体を液媒体、好ましくはアルコール系溶剤に溶解し、必要によりバインダー樹脂、各種界面活性剤等のインキ組成物に通常含まれる成分と混合して本発明のインキ組成物が得られる。尚、アルコール系溶剤とは、アルコールを主成分として含む溶剤をいう。例えば、アルコールと水との混合物は、アルコールを主成分として含む場合はアルコール系溶剤に含まれる。ここで、主成分とは、その溶剤中に60重量%以上、好ましくは80重量%以上の量で含まれている成分をいう。
【0033】
ユウロピウム錯体の配合量は、インキ組成物全量中のユウロピウム錯体の濃度が0.01〜5重量%、好ましくは0.1〜3重量%となる量とする。インキ組成物中のユウロピウム錯体の濃度が0.001重量%未満になると発光量が少なくなり、発光の読み取りが難しくなり、5重量%を越えると自己吸収が生じて、発光強度が小さくなる恐れがある。
【0034】
本発明のインキ組成物に用いられるアルコール系溶剤としては、具体的にはメタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール等の脂肪族アルコール類、及びこれらの混合物が挙げられる。アルコール系溶剤は30重量%まで、好ましくは10重量%までの水を含有していてもよい。アルコール系溶剤をインキ組成物に配合する量は、インキ組成物全量に対して60重量%以上、すなわち、60重量%〜残量全て、とすることが好ましい。より好ましくは、アルコール系溶剤の配合量は、インキ組成物全量に対して80〜95重量%とする。
【0035】
また本発明のインキ組成物には、インクの安定性の向上やペン先やノズルでの乾燥防止のためにエチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のエーテル系溶剤、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール等のグリコール系溶剤(2価のアルコール系溶剤)、1,2−ヘキサンジオール、2,4,6−ヘキサントリオール等のポリオールを添加することができる。添加量は、本発明のインキ組成物に対して0〜30重量%であることが好ましい。
【0036】
本発明のインキ組成物は、必要であればアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、4−メトキシ−4−メチルペンタノン等のケトン系溶剤、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、n−ペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン等の炭化水素系溶剤、酢酸エチル、酢酸n−プロピル等のエステル系溶剤、ジメチルスルホキシド、n−メチル−2−ピロリドン、γ−ブチルラクトン、トルエン、キシレン、高沸点石油系溶剤を用いることができ、これらの溶剤は単独または複数種を混合して用いられる。
【0037】
好ましい溶剤は、本発明のインキ組成物が含有するユウロピウム系発光化合物の発光強度が最大となるような比較的高濃度で、かつ安定に溶解することができるアルコール系溶剤である。
【0038】
本発明のインキ組成物に用いられるバインダー樹脂は発光化合物を被記録体に良好に定着させるための成分である。バインダー樹脂には上記溶剤(溶媒)に対する溶解性が良好であり、インキ組成物の粘度を適度に調整できるものを用いる。好ましいバインダー樹脂の具体例には以下のような樹脂を挙げることができる。すなわち、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリビニルピロリドン、ビニルピロリドン−酢酸ビニル共重合体等のポリビニル系樹脂;ポリアリルアミン、ポリビニルアミン、ポリエチレンイミン等のポリアミン系樹脂;ポリメチルアクリレート、ポリエチレンアクリレート、ポリメチルメタクリレート、ポリビニルメタアクリレート等のポリアクリレート系樹脂;及びアミノ樹脂、アルキッド樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリエステルイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、シリコーン樹脂、フェノール樹脂、ケトン樹脂、ロジン、ロジン変性樹脂(フェノール、マレイン酸、フマル酸樹脂等)、石油樹脂、エチルセルロース、ニトロセルロース等のセルロース系樹脂、天然樹脂(アラビアゴム、ゼラチン等)等が例示される。
【0039】
特に好ましいバインダー樹脂は、筆記具用インキやインクジェットインキ、あるいは印刷インキに通常用いられるポリビニル系樹脂、ポリアクリレート系樹脂、ポリアミン系樹脂等である。
【0040】
これらのバインダー樹脂の配合量としては、インキ組成物全量に対して0〜30重量%が例示され、好ましくは1〜20重量%である。0.5重量%よりも少ないと非浸透性の被記録体に対して発光化合物を十分に定着できない。また、30重量%よりも多くなると、インキ組成物の吐出安定性を低下させることがある。また、発光化合物の周囲をバインダー層が厚く覆うことになり、発光化合物の発光の低下を招く恐れがあるばかりか樹脂に起因する発光の発生も障害になる可能性をもっている。
【0041】
また、アルコール系溶剤としてアルコールと水との混合物を用いる場合は、各種界面活性剤(例えば、アルキル硫酸エステル類、リン酸エステル類、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、アルキルアミン塩等のアニオン性、ノニオン性、カチオン性界面活性剤、両イオン性界面活性剤、あるいはフッ素系界面活性剤、あるいはアセチレングリコール系界面活性剤)、分散剤(例えば、ロジン酸石鹸、ステアリン酸石鹸、オレイン酸石鹸、Na−ジ−β−ナフチルメタンジサルフェート、Na−ラウリルサルフェート、Na−ジエチルヘキルスルホサクシネート)、あるいはシクロデキストリン(CD)(例えば、β−CD、ジメチル−β−CD、メチル−β−CD、ヒドロキシエチル−β−CD、ヒドロキシプロピル−β−CD等)、消泡剤等を添加することができる。これらの添加剤は、インキ組成物に対して0.1〜5重量%、好ましくは1〜3重量%程度用いることができる。
【0042】
本発明のインキ組成物が含有するユウロピウム系発光化合物は、上記各種の溶剤及び/又は樹脂等に一般に可溶性もしくは良分散性を示し、これに紫外光で励起すると赤色域(610〜630nm)に発色光を示す(実施例参照)。例えばブラックライトランプのような紫外線ランプにより紫外光(約365nm)を、本発明のユウロピウム錯体の有機溶剤液(例えばエタノール溶液)に照射して、ユウロピウム錯体を励起させ、赤色域に発光させることができる。したがって、本発明のインキ組成物による機密情報は可視光のもとでは発光せず、紫外光のもとでは赤色に発光し、セキュリティーインキとして有用である。
【0043】
【発明の効果】
可視光下では実質上不可視であり、紫外光のもとで赤色領域に強い発光色を示すので、オフィスにおける書類、各種容器のマーキング、バーコード等の目隠し印刷、セキュリティー機能を有する印刷物の分野に有用なインキ組成物を提供できる。
【0044】
【実施例】
以下、合成例及び実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されない。
【0045】
合成例1
4,4,4−トリフルオロ−1−(2−ナフチル)−1,3−ブタンジオン7.98g(0.03mol)(東京化成社製)、塩化ユウロピウム(III)六水和物3.66g(0.01mol)(和光純薬社製)、及び1Nの水酸化ナトリウム30mlを、エタノール100ml中に混合、加熱攪拌(約40℃で約1時間)することにより、8.5gの下記構造の発光化合物1(NTFA−Eu)を得た。
【0046】
【化13】
【0047】
合成例2
メチルペンタフルオロプロピオネート21.4g(0.12mol)(Lancaster社製)、2−アセチルナフタレン17g(0.10mol)(東京化成社製)を、乾燥エーテル50ml中、ナトリウムメチラート16.2g(0.30mol)(和光純薬社製)の存在下、反応させ、4,4,5,5,5−ペンタフルオロ−1−(2−ナフチル)−1,3−ブタンジオン30gを得た。
【0048】
上記のようにして得られた4,4,5,5,5−ペンタフルオロ−1−(2−ナフチル)−1,3−ブタンジオン9.48g(0.03mol)、塩化ユウロピウム(III)六水和物3.66g(0.01mol)(和光純薬社製)、及び1Nの水酸化ナトリウム30mlを、エタノール100ml中に混合、加熱攪拌(約40℃で約2時間)することにより、10gの下記構造の発光化合物2(NEFA−Eu)を得た。
【0049】
【化14】
【0050】
合成例3
メチルパーフルオロオクタネート51.4g(0.12mol)(Lancaster社製)、2−アセチルナフタレン17g(0.10mol)(東京化成社製)を、乾燥エーテル50ml中、ナトリウムメチラート16.2g(0.30mol)(和光純薬社製)の存在下反応させ、4,4−ジフルオロ−4−パーフルオロヘキシル−1−(2−ナフチル)−1,3−ブタンジオン50gを得た。
【0051】
上記のようにして得られた4,4−ジフルオロ−4−パーフルオロヘキシル−1−(2−ナフチル)−1,3−ブタンジオン17g(0.03mol)、塩化ユウロピウム(III)六水和物3.66g(0.01mol)(和光純薬社製)、及び1Nの水酸化ナトリウム30mlを、エタノール100ml中に混合、加熱攪拌(約40℃で約2時間)することにより、17gの下記構造の発光化合物3(NHFA−Eu)を得た。
【0052】
【化15】
【0053】
比較例化合物1
特公昭54−22336号公報を参考にして、塩化ユウロピウム(III)六水和物[3.66g、0.01mol(和光純薬社製)]を水100mlに溶解した水溶液とテノイルトリフルオロアセトン(4,4,4−トリフルオロ−1−(2−チエニル)−1,3−ブタンジオン)[7.98g、0.03mol(東京化成社製)]をエーテル150mlに溶解した溶液とを混合し、アンモニア水にてPH8〜9に調整し室温30分攪拌させた。水層を分離除去し、エーテル層を水洗した後、無水炭酸ソーダにて乾燥後濾過し、濾液中エーテルを留去し下記構造の目的物7.0gの比較例化合物1(TTFA−Eu)を得た。
【0054】
【化16】
【0055】
比較例化合物2
特開平4−220395号公報を参考にして、硝酸ユウロピウム(III)六水和物[4.46g、0.01mol(キシダ化学社製)]、ベンゾイルトリフルオロアセトン(4,4,4−トリフルオロ−1−フェニル−1,3−ブタンジオン)[6.48g、0.03mol(東京化学社製)]、をエタノール150ml中に溶解して温めながら攪拌した。テトラメチルアンモニウムヒドロキシドを用いて溶液PHを8.5に調整して15分間攪拌した。水(200ml)滴下により沈澱させ、濾過することにより下記構造の目的物6.2gの比較例化合物2(BTFA−Eu)を得た。
【0056】
【化17】
【0057】
比較例化合物3
特開2000−144029号公報を参考にして、ナフトイルトリフルオロアセトン(4,4,4−トリフルオロ−1−(2−ナフチル)−1,3−ブタンジオン)[7.98g、0.03mol(東京化成社製)]、トリフェニルホスフィンオキサイド[5.56g、0.02mol(東京化成社製)]にエタノール200部を加え、加熱溶解した後、1N水酸化ナトリウム水溶液30mlを加えて中和し、40℃に保ちながら1mol/Lのユウロピウム(III)塩水溶液10部を攪拌しながら滴下し、冷却、濾過することにより下記構造の目的物10gの比較例化合物3(NTFA−TPO−Eu)を得た。
【0058】
【化18】
【0059】
比較例化合物4
特開平8−67775号公報を参考にして、過酸化ユウロピウム[7.2g、0.02mol]を含む水溶液28mlを、ナフトイルトリフルオロアセトン(4,4,4−トリフルオロ−1−(2−ナフチル)−1,3−ブタンジオン)[42.6g、0.16mol(東京化成社製)]、苛性ソーダ[6.4g,0.16mol]、水10mlを含むアセトン溶液500部中に滴下し、1時間攪拌後アセトンを減圧留去し、エタノール100ml、水500mlを加え十分攪拌し濾過、水洗し乾燥した。得られた固体を370mlのエタノール中に溶解し、トリエチルアミン[4.0g、0.04mol]を加え1時間放置した。濾過、水洗、減圧乾燥し、下記構造の目的物42gの比較例化合物4(NTFA−TEA−Eu)を得た。
【0060】
【化19】
【0061】
実施例1
この実施例では、上記合成例で得られた本発明のインキ組成物に用いるユウロピウム系発光化合物1〜3、及び比較例化合物1〜4について評価を行った。評価の方法は、100mlのエタノールにそれぞれの発光化合物25mgを溶解させ、蛍光分光光度計(島津製作所社製のRF−5300PC)を用いて蛍光強度(フォトルミネッセンス強度)を測定した。比較例化合物1の蛍光強度を1.00としたときの蛍光強度の相対値を表1に示す。
【0062】
また、各化合物(発光化合物)の溶解度について比較した。溶解度の測定は、100mlのエタノールに、それぞれの発光化合物を加熱溶解させ、24時間、室温にて放置後、不溶分をろ過により取り除き、溶解度(g/エタノール100ml)を算出した。結果を表1に示す。
【0063】
【表1】
【0064】
また、図1に発光化合物1〜3と比較例化合物1〜4の発光スペクトルを示す。
【0065】
実施例2〜4、及び比較例1〜4は、エタノール:エチレングリコール:ポリビニルピロリドン:発光化合物の配合を90:5:4:1(重量比)としたインキ組成物である。
【0066】
実施例2
90gのエタノールと5gのエチレングリコール溶液に、発光化合物1(1g)を溶解し、これに4gのポリビニルピロリドン[IPS社製のPVP K−15(商品名)]を加えてインキ組成物(A)を調製した。インクジェット記録装置[エプソン社製のHG5130]を使用して、普通紙にバーコード印刷し、これにブラックライトランプにより紫外光(約365nm)を照射したところ、鮮明な赤色に発光した(表4)。
【0067】
実施例3
90gのエタノールと5gのエチレングリコール溶液に、発光化合物2(1g)を溶解し、これに4gのポリビニルピロリドン[IPS社製のPVP K−15(商品名)]を加えてインキ組成物(B)を調製した。インクジェット記録装置[エプソン社製のHG5130]を使用して、普通紙にバーコード印刷し、これにブラックライトランプにより紫外光(約365nm)を照射したところ鮮明な赤色に強く発光した(表4)。
【0068】
実施例4
90gのエタノールと5gのエチレングリコール溶液に、発光化合物3(1g)を溶解し、これに4gのポリビニルピロリドン[IPS社製のPVP K−15(商品名)]を加えてインキ組成物(C)を調製した。インクジェット記録装置[エプソン社製のHG5130]を使用して、普通紙にバーコード印刷し、これにブラックライトランプにより紫外光(約365nm)を照射したところ鮮明な赤色に強く発光した(表4)。
【0069】
比較例1〜4
実施例2で用いた発光化合物1を比較例化合物1、2、3及び4に代えた他は、実施例2と同様にしてインキ組成物(a)、(b)、(c)及び(d)を作成した。このインキ組成物を用いて実施例2と同様にバーコード印刷し、これにブラックライトランプにより紫外光(約365nm)を照射したところ、赤色に発光した(表4)。
【0070】
実施例5〜7、及び比較例5〜8は、エタノール:エチレングリコール:ポリビニルブチラール:発光化合物の配合を90:5:4:1(重量比)としたインキ組成物である。
【0071】
実施例5
90gのエタノールと5gのエチレングリコール溶液に、発光化合物1(1g)を溶解し、これに4gのポリビニルブチラール[積水化学工業社製のエレックス BL−1(商品名)]を加えてインキ組成物(D)を調製した。インクジェット記録装置[エプソン社製のHG5130]を使用して、普通紙にバーコード印刷し、これにブラックライトランプにより紫外光(約365nm)を照射したところ、鮮明な赤色に発光した(表5)。
【0072】
実施例6
90gのエタノールと5gのエチレングリコール溶液に、発光化合物2(1g)を溶解し、これに4gのポリビニルブチラール[積水化学工業社製のエレックス BL−1(商品名)]を加えてインキ組成物(E)を調製した。インクジェット記録装置[エプソン社製のHG5130]を使用して、普通紙にバーコード印刷し、これにブラックライトランプにより紫外光(約365nm)を照射したところ、鮮明な赤色に強く発光した(表5)。
【0073】
実施例7
90gのエタノールと5gのエチレングリコール溶液に、発光化合物3(1g)を溶解し、これに4gのポリビニルブチラール[積水化学工業社製のエレックス BL−1(商品名)]を加えてインキ組成物(F)を調製した。インクジェット記録装置[エプソン社製のHG5130]を使用して、普通紙にバーコード印刷し、これにブラックライトランプにより紫外光(約365nm)を照射したところ、鮮明な赤色に強く発光した(表5)。
【0074】
比較例5〜8
実施例5で用いた発光化合物1を、比較例化合物1,2、3及び4に代えた他は、実施例5と同様にインキ組成物(e)、(f)、(g)及び(h)を作成した。このインキ組成物を用いて実施例4と同様にバーコード印刷し、これにブラックライトランプにより紫外光(約365nm)を照射したところ、赤色に発光した(表5)。
【0075】
実施例8〜10、及び比較例9〜12は、エタノール:エチレングリコール:酢酸エチル:ポリアクリレート:発光化合物の配合を、60:5:30:4:1(重量比)としたインキ組成物である。
【0076】
実施例8
60gのエタノールと5gのエチレングリコール溶液に30gの酢酸エチルを加えた溶液に、発光化合物1(1g)を溶解し、これに4gのポリアクリレート系樹脂[Avecia社製のNeoCrylB-814(商品名)]を加えてインキ組成物(G)を調製した。インクジェット記録装置[エプソン社製のHG5130]を使用して、普通紙にバーコード印刷し、これにブラックライトランプにより紫外光(約365nm)を照射したところ、鮮明な赤色に発光した(表6)。
【0077】
実施例9
60gのエタノールと5gのエチレングリコール溶液に30gの酢酸エチルを加えた溶液に、発光化合物2(1g)を溶解し、これに4gのポリアクリレート系樹脂[Avecia社製のNeoCrylB-814(商品名)]を加えてインキ組成物(H)を調製した。インクジェット記録装置[エプソン社製のHG5130]を使用して、普通紙にバーコード印刷し、これにブラックライトランプにより紫外光(約365nm)を照射したところ、鮮明な赤色に強く発光した(表6)。
【0078】
実施例10
60gのエタノールと5gのエチレングリコール溶液に30gの酢酸エチルを加えた溶液に、発光化合物3(1g)を溶解し、これに4gのポリアクリレート系樹脂[Avecia社製のNeoCrylB-814(商品名)]を加えてインキ組成物(I)を調製した。インクジェット記録装置[エプソン社製のHG5130]を使用して、普通紙にバーコード印刷し、これにブラックライトランプにより紫外光(約365nm)を照射したところ、鮮明な赤色に強く発光した(表6)。
【0079】
比較例9〜12
実施例8で用いた発光化合物1を、比較例化合物1,2、3及び4に代えた他は、実施例8と同様にインキ組成物(i)、(j)、(k)及び(l)を作成した。このインキ組成物を用いて実施例4と同様にバーコード印刷し、これにブラックライトランプにより紫外光(約365nm)を照射したところ、赤色に発光した(表6)。
【0080】
実施例13
84gのエタノール溶液に、発光化合物2(1g)を溶解し、これに15gのポリアリルアミン[日東紡績社製の重量平均分子量約1万の20%水溶液PAA−L(商品名)]を加えてインキ組成物(J)を調製した。インクジェット記録装置[エプソン社製のHG5130]を使用して、普通紙にバーコード印刷し、これにブラックライトランプにより紫外光(約365nm)を照射したところ、実施例3のインキ組成物Bと同様に、鮮明な赤色に強く発光した。
【0081】
実施例14
実施例及び比較例で得られたインキ組成物を、以下の特性について試験した。
【0082】
視認性
印刷されたバーコードが紫外線照射下ではっきりと視認できるか否かを目視により評価した。評価基準を表2に、評価結果を表4〜6に示す。
【0083】
【表2】
【0084】
安定性
透明容器に入れたインキ組成物100gを、50℃に調節したインキュベーターにいれて1ヶ月保存した。その後、保存したインキ組成物について沈殿物の有無を目視で評価した。評価基準を表3に、評価結果を表4〜6に示す。
【0085】
【表3】
評価基準
【0086】
相対蛍光強度
上記の各インキ組成物について発光強度を調べるため、各インキで用いたそれぞれのインキ溶媒により50倍に希釈して、実施例1と同様に蛍光分光光度計(島津製作所社製のRF−5300PC)を用いて蛍光強度(フォトルミネッセンス強度)を測定した。比較例1のインキ組成物(a)の613nmにおける蛍光強度を100としたときの蛍光強度の相対値(%)を表4、表5及び表6に示す。
【0087】
【表4】
【0088】
【表5】
【0089】
【表6】
【図面の簡単な説明】
【図1】 合成例で得られた発光化合物1〜3、及び比較例化合物1〜4の発光スペクトルである。
【図2】 ポリビニルピロリドン樹脂を用いた実施例2、3、4、及び比較例1、2、3、4のインキ組成物の発光スペクトルである。
【図3】 ポリビニルブチラール樹脂を用いた実施例5、6、7、及び比較例5、6、7、8のインキ組成物の発光スペクトルである。
【図4】 ポリアクリレート樹脂を用いた実施例8、9、10、及び比較例9、10、11、12のインキ組成物の発光スペクトルである。
Claims (4)
- 前記Rが炭素数1〜10のパーフルオロアルキル基である(但しRが炭素数1〜6の含フッ素アルキル基である場合を除く)請求項1又は2記載の赤色発光性インキ組成物。
- ポリビニル系樹脂、ポリアミン系樹脂及びポリアクリレート系樹脂から選択される溶媒可溶性樹脂を更に含有する請求項2又は3記載の赤色発光性インキ組成物。
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