JP4261838B2 - アクチュエータ装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば内燃機関の吸気弁や排気弁のバルブリフト量や作動角等を機関運転状態に応じて可変制御する可変動弁装置の駆動機構として用いられるアクチュエータ装置に関する。
【0002】
従来の可変動弁装置としては、本出願人が先に出願した特開平7−4251号公報に記載されているものが知られている。
【0003】
概略を説明すれば、この可変動弁装置は、機関のクランク軸からスプロケットを介して回転駆動される駆動軸と、該駆動軸の外周に一定の隙間をもって同軸上に配置され、駆動軸と相対回転自在なカムシャフトと、駆動軸とカムシャフトとの間に介装されて、機関運転状態に応じて両者の回転位相を変化させて吸気弁の開閉時期を可変制御する可変機構と、該可変機構を駆動するアクチュエータ装置とを備えている。このアクチュエータ装置は、電動モータと該電動モータの回転速度を減速して制御軸に伝達する減速機構としてのウォーム歯車機構とを有している。
【0004】
そして、機関運転状態の変化に応じて、コントローラからの制御信号によって電動モータを一方向へ回転させ、ウォーム歯車機構を介して制御軸を同方向へ回転させ、これにより第2偏心カムと第1偏心カムを所定角度まで回転制御する。これによって、ディスクハウジングの揺動に伴い環状ディスクの中心を駆動軸の中心から偏心あるいは同心状態に制御して、駆動軸とカムシャフトとの回転位相を変化させることにより吸気弁の開閉時期を可変制御し、機関低回転から高回転までの機関性能を向上させるようになっている。
【0005】
また、かかる機関作動中に、バルブスプリングのばね力に起因してカムシャフトに発生する正負の交番トルクは可変機構の各フランジ部やディスクハウジング等を介して制御軸に伝達されるが、この交番トルクは、ウォーム歯車機構の非可逆性を利用してウォームホィールとウォームギアとの間で減殺し、これによって、アクチュエータの駆動負荷を低減させるようになっている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、この従来の装置にあっては、前述のように、カムシャフトから伝達される交番トルクは、ウォーム歯車機構の非可逆性を利用してウォームホィールとウォームギアとの間で減殺できるものの、ウォーム歯車機構の構造上、ウォームホィールとウォームギアとの間のバックラッシ隙間を十分に小さく設定することができない。このため、該ウォームホィールとウォームギアとの歯面間で、交番トルクによる衝突打音が発生し易くなる。
【0007】
しかも、ウォームホィールとウォームギアとは、互いに1つの歯部が当接してトルク伝達を行なうため、該両歯部の対向当接する歯面間の面圧が高くなって摩耗が発生し易くなり、耐久性が低下する、といった種々の技術的課題を招来している。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明は、前記従来のアクチュエータ装置の実状に鑑みて案出されたもので、請求項1記載の発明にあっては、とりわけ、前記ガイド溝を、移動部材の内周面の軸方向に螺旋状に直接形成すると共に、ボールの循環列を、前記移動部材の軸方向に所定間隔をもって複数形成し、かつ、前記移動部材の各循環列の間に、前記リンク機構と連結するピンを回転自在に挿通するピン穴を該移動部材に直接形成し、前記ピン穴を移動部材の径方向へ貫通形成すると共に、前記ピン穴と該ピン穴に挿通したピンとの間に、潤滑油流通用の隙間部を形成し、潤滑油を前記隙間部から前記ガイド溝内に流入させることを特徴としている。
【0009】
したがって、この発明によれば、ボール循環溝とガイド溝と間は、複数のボールが介装されて、バックラッシ隙間を小さくすることができることから、例えばこのアクチュエータ装置を内燃機関に適用した場合には、交番トルクによる打音の発生を抑制できると共に、装置の耐久性を向上できる。
【0010】
また、ボール螺子軸と移動部材とは、ボール循環溝とガイド溝と間の複数のボールによって連続的かつほぼ転がり接触状態で噛合するようになっているため、ボール螺子軸から移動部材への回転トルクの伝達効率が高くなる。この結果、例えば可変機構の作動応答性が向上して、機関弁のバルブリフトや開閉時期制御を機関運転状態の変化に速やかに対応させることが可能になる。
【0011】
しかも、移動部材に形成されたピン穴は、各循環列を避けた位置に形成するようにしたことから、ガイド溝の強度を確保しつつピン穴によるピンの十分な保持力が確保されることから、移動部材の肉厚を可及的に小さくすることが可能になり、この結果、装置の小型化と軽量化が可能になる。
【0013】
さらに、この発明によれば、例えば移動部材の外周側から隙間部に流入した潤滑油は、内周側のガイド溝内に流入して該ガイド溝とボール及びボール循環溝との間を積極的かつ十分に潤滑することが可能になる。
【0014】
また、ピン穴は移動部材を貫通して形成されていることから、貫通形成させない場合に比較して、穴開け加工が極めて容易になる。
【0015】
さらに、ピン穴を移動部材の直径方向に沿って貫通して形成した場合には、2つの穴を同時かつ同軸上に形成できることから、穴開け加工の容易性と高い同軸精度を確保でき、この高い同軸精度によって移動部材とリンク機構との2つのピンの軸方向の位置ずれが防止され、しぶり等のない常時円滑な連結状態が得られる。
【0016】
請求項に記載の発明は、前記請求項1に記載のアクチュエータ装置において、前記制御軸を、内燃機関の機関弁の作動特性を変化させる可変機構を機関運転状態に応じて作動させる作動軸に適用したことを特徴としている。
【0017】
この発明によれば、ボール循環溝とガイド溝と間は、複数のボールが介装されて、バックラッシ隙間を小さくすることができることから、内燃機関のカムシャフトに作用する交番トルクによる打音の発生を抑制できると共に、装置の耐久性を向上できる。
【0018】
また、ボール螺子軸と移動部材とは、ボール循環溝とガイド溝と間の複数のボールによって連続的かつほぼ転がり接触状態で噛合する形になっているため、ボール螺子軸から移動部材への回転トルクの伝達効率が高くなる。この結果、前記可変機構の作動応答性が向上して、機関弁のバルブリフトや開閉時期制御を機関運転状態の変化に速やかに対応させることが可能になる。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係るアクチュエータ装置を内燃機関の可変動弁装置に適用した実施形態を図面に基づいて詳述する。この実施形態では、可変動弁装置が吸気弁側に適用され、1気筒当たり2つの吸気弁を備え、かつ吸気弁のバルリフト量を機関運転状態に応じて可変制御するようになっている。
【0020】
すなわち、可変動弁装置は、図3〜図6に示すようにシリンダヘッド1に図外のバルブガイドを介して摺動自在に設けられて、バルブスプリング3,3によって閉方向に付勢された一対の吸気弁2,2と、該各吸気弁2,2のバルブリフト量を可変制御する可変機構4と、該可変機構4の作動位置を制御にする制御機構5と、該制御機構5を回転駆動するアクチュエータ装置である駆動機構6とを備えている。
【0021】
前記可変機構4は、シリンダヘッド1上部の軸受14に回転自在に支持された中空状の駆動軸13と、該駆動軸13に圧入等により固設された偏心回転カムである駆動カム15と、駆動軸13の外周面に揺動自在に支持されて、各吸気弁2,2の上端部に配設されたバルブリフター16,16に摺接して各吸気弁2,2を開作動させる2つの揺動カム17,17と、駆動カム15と揺動カム17,17との間に連係されて、駆動カム15の回転力を揺動カム17,17の揺動力として伝達する伝達手段とを備えている。
【0022】
前記駆動軸13は、図3にも示すように、機関前後方向に沿って配置されていると共に、一端部に設けられた図外の従動スプロケットや、該従動スプロケットに巻装されたタイミングチェーン等を介して機関のクランク軸から回転力が伝達されており、この回転方向は図中、時計方向(矢印方向)に設定されている。
【0023】
前記軸受14は、図4Aに示すように、シリンダヘッド1の上端部に設けられて駆動軸13の上部を支持するメインブラケット14aと、該メインブラケット14aの上端部に設けられて後述する制御軸32を回転自在に支持するサブブラケット14bとを有し、両ブラケット14a,14bが一対のボルト14c,14cによって上方から共締め固定されている。
【0024】
前記駆動カム15は、ほぼリング状を呈し、円環状のカム本体と、該カム本体の外端面に一体に設けられた筒状部とからなり、内部軸方向に駆動軸挿通孔が貫通形成されていると共に、カム本体の軸心Yが駆動軸13の軸心Xから径方向へ所定量βだけオフセットしている。また、この駆動カム15は、駆動軸13に対し前記両バルブリフター16,16に干渉しない一方の外側に駆動軸挿通孔を介して圧入固定されていると共に、カム本体の外周面が偏心円のカムプロフィールに形成されている。
【0025】
前記バルブリフター16,16は、有蓋円筒状に形成され、シリンダヘッド1の保持孔内に摺動自在に保持されていると共に、揺動カム17,17が摺接する上面が平坦状に形成されている。
【0026】
前記両揺動カム17は、図3及び図4に示すように、同一形状のほぼ雨滴状を呈し、円環状のカムシャフト20の両端部に一体的に設けられていると共に、該カムシャフト20が内周面を介して駆動軸13に回転自在に支持されている。また、一端部のカムノーズ部21側にピン孔が貫通形成されていると共に、下面には、カム面22が形成され、カムシャフト20側の基円面と、該基円面からカムノーズ部21側に円弧状に延びるランプ面と、該ランプ面からカムノーズ部21の先端側に有する最大リフトの頂面に連なるリフト面が形成されており、該基円面とランプ面及びリフト面が、揺動カム17の揺動位置に応じて各バルブリフター16の上面の所定位置に当接するようになっている。
【0027】
前記伝達手段は、図3〜図6に示すように、駆動軸13の上方に配置されたロッカアーム23と、該ロッカアーム23の一端部23aと駆動カム15とを連係するリンクアーム24と、ロッカアーム23の他端部23bと揺動カム17とを連係するリンクロッド25とを備えている。
【0028】
前記ロッカアーム23は、中央に有する筒状の基部が支持孔を介して後述する制御カム33に回転自在に支持されている。また、筒状基部の外端部に突設された前記一端部23aには、ピン26が嵌入するピン孔が貫通形成されている一方、基部の内端部に夫々突設された前記他端部23bには、リンクロッド25の一端部25aと連結するピン27が嵌入するピン孔が形成されている。
【0029】
前記リンクアーム24は、比較的大径な円環状の基部24aと、該基部24aの外周面所定位置に突設された突出端24bとを備え、基部24aの中央位置には、前記駆動カム15のカム本体が回転自在に嵌合する嵌合孔24cが形成されている一方、突出端24bには、前記ピン26が回転自在に挿通するピン孔が貫通形成されている。
【0030】
前記リンクロッド25は、ロッカアーム23側が凹状のほぼく字形状に形成され、両端部25a,25bには前記ロッカアーム23の他端部23bと揺動カム17のカムノーズ部21の各ピン孔に挿入した各ピン27,28の端部が回転自在に挿通するピン挿通孔が貫通形成されている。
【0031】
なお、各ピン26,27,28の一端部には、リンクアーム24やリンクロッド25の軸方向の移動を規制するスナップリングがそれぞれが設けられている。
【0032】
前記制御機構19は、駆動軸13の上方位置に同じ軸受14に回転自在に支持された制御軸32と、該制御軸32の外周に固定されてロッカアーム23の支持孔に摺動自在に嵌入されて、ロッカアーム23の揺動支点となる制御カム33とを備えている。
【0033】
前記制御軸32は、図3に示すように、駆動軸13と並行に機関前後方向に配設されていると共に、所定位置のジャーナル部32bが前記軸受14のメインブラケット14aとサブブラケット14bとの間に回転自在に軸受されている。また、制御軸32の内部には、オイルギャラリー34が軸心方向に沿って形成されていると共に、前記ジャーナル部32bの半径方向にシリンダヘッド1内の潤滑油を前記オイルギャラリー34内に導く油導入孔34aが貫通形成されている。
【0034】
前記制御カム33は、図3〜図6に示すように円筒状を呈し、軸心P2位置が制御軸32の軸心P1からα分だけ偏倚している。
【0035】
前記駆動機構6は、図1〜図3及び図7、図8に示すように、シリンダヘッド1の後端部に固定されたハウジング35と、該ハウジング35の一端部に固定された回転力付与機構である電動モータ36と、ハウジング35の内部に設けられて電動モータ36の回転駆動力を前記制御軸32に伝達するボール螺子伝達手段37とから構成されている。
【0036】
前記ハウジング35は、前記制御軸32の軸方向とほぼ直角方向に沿って配置された円筒部35aと、該円筒部35aの上端部中央に上方へ突出して、内部に前記制御軸32の一端部32aが臨む膨出部35bと、円筒部35aと膨出部35bとの一側部を閉塞する側壁35cとから構成されている。
【0037】
前記電動モ−タ36は、比例型のDCモータによって構成され、ほぼ円筒状のモータケーシング38の先端小径部38aが前記円筒部35aの一端開口部35cに圧入などにより固定されている。また、電動モ−タ36の駆動シャフト36aは、モータケーシング38の先端小径部38a内に設けられたボールベアリング39によって軸受されている。
【0038】
また、電動モータ36は、機関の運転状態を検出するコントローラ40からの制御信号によって駆動するようになっている。このコントローラ40は、クランク角センサ41やエアーフローメータ42、水温センサ43や、制御軸32の回転位置を検出するポテンショメータ44等の各種のセンサからの検出信号をフィードバックして現在の機関運転状態を演算などにより検出して、前記電動モータ36に制御信号を出力している。
【0039】
前記ボール螺子伝達手段37は、図1及び図2、図7,図8に示すように、前記ハウジング35の円筒部35a内に電動モータ36の駆動シャフト36aとほぼ同軸上に配置されたボール螺子軸45と、該ボール螺子軸45の外周に螺合する移動部材であるボールナット46と、ハウジング35内で前記制御軸32の一端部に一体成形された連係部である連係アーム47と、該連係アーム47と前記ボールナット46とを連係するリンク部材48とから主として構成されており、前記連係アーム47とリンク部材48によってリンク機構が構成されている。
【0040】
前記ボール螺子軸45は、両端部を除く外周面全体に所定幅のボール循環溝49が螺旋状に連続して形成されていると共に、円筒部35aの一端開口部35cと他端開口部35dにそれぞれ臨んだ両端部45a、45bがボールベアリング50、51によって回転自在に軸受けされている。
【0041】
また、ボール螺子軸45の他端部45bの先端部には、該ボール螺子軸45を円筒部35a内に保持するナット52が螺着されており、このナット52は、一端側の突起部52aが一方側ボールベアリング51の内輪51aを右方向に押付けると共に、ボール螺子軸45の他端部45b側に有する段差面を左側に締め上げており、その結果、内輪51aを固定すると共に、ボール螺子軸45と一体的に回転するようになっている。また、前記円筒部35aの他端開口部35dは、碗状のキャップナット53が螺着されており、このキャップナット53の円筒状前端部によって前記一方側ボールベアリング51の外輪51bを他端開口部35dの段差部35eに押し付け固定している。
【0042】
なお、ボール螺子軸45の他端部45b側には、前記ナット52をスパナなどの所定の治具で締めつける際に、ボール螺子軸45が回転しないように押さえ治具が係合する2面幅の係合面45d、45dが形成されている。
【0043】
さらに、ボール螺子軸45は、一端部45aの先端小径軸45cと電動モータ36の駆動シャフト36aの先端小径部36bが円筒状の連結部材54によって同軸上で軸方向移動可能にセレーション結合されている。
【0044】
すなわち、前記先端小径軸45cと先端小径部36bの外周面にセレーション凹凸部が軸方向に沿って形成されている一方、前記連結部材54の内周面に前記セレーション凹凸部に遊嵌状態で嵌合するセレーション部が軸方向に沿って形成され、かかるセレーション結合によって電動モータ36の回転駆動力を前記ボール螺子軸45に伝達すると共に、ボール螺子軸45の軸方向の僅かな移動を許容している。
【0045】
前記ボールナット46は、図2、図3及び図8に示すように、ほぼ円筒状に形成され、内周面に前記ボール循環溝49と共同して複数のボール64を転動自在に保持するガイド溝55が螺旋状に連続して形成されていると共に、複数のボール64の循環列をボールナット46の軸方向の前後2個所に設定する2つのディフレクタ65が取り付けられている。つまり、このディフレクタ65は、前記ボール循環溝49とガイド溝55との間を転動する前記複数のボール64を同一溝内に循環させるために、同循環列内に再び戻すようにボール64を案内するものであり、この循環列を軸方向の前後2個所に設けたものである。そして、
ボールナット46は、各ボール64を介してボール螺子軸45の回転運動をボールナット46に直線運動に変換しつつ軸方向の移動力が付与されるようになっている。
【0046】
また、ボールナット46の前記両循環列の間には、2つのピン穴56,56がほぼ径方向に沿って穿設されている。すなわち、この両ピン穴56,56は、ボールナット46の外周面の軸方向のほぼ中央位置から内周面方向へ径方向に沿って対向して穿設され、その各底面56a、56aがボールナット46の内周面から貫通することなく所定の肉厚幅tをもって孔開けされている。
【0047】
前記連係アーム47は、図1及び図2に示すように、ほぼ雨滴状に形成され、大径基部が制御軸32の一端部32aを介して制御軸32と一体形成されていると共に、先細り状の先端部47bの幅方向の中央位置にスリット57が形成されており、また、先端部47bには、制御軸32方向に沿って連続して貫通した2つのピン孔47c、47cが形成されている。したがって、このピン孔47c、47の軸心Zが、制御軸32の軸心P1より偏倚している。また、連係アーム47の大径基部内には、前記制御軸32から伸びるオイルギャラリー34内の潤滑油を前記先端部47bを介してリンク部材48側へ供給する油導出孔34bが半径方向に沿って穿設されている。
【0048】
前記リンク部材48は、ほぼY字形状に形成され、平板状の一端部58と二股状の他端部59、59とからなり、前記一端部58は、前記連係アーム47のスリット57内に挿通配置されて、前記ピン孔47c、47cと自身のピン孔58aに貫通したピン60によって連係アーム47の先端部47bに回転自在に連結されている。なお、前記ピン60は、両端部が連係アーム47の両ピン孔47c、47cに固定されて、中央部がリンク部材48のピン孔58aに摺動可能になっている。
【0049】
一方、二股状の他端部59,59は、ボールナット46の両側に配置されて、前記ボールナット46のピン穴56,56に対応してそれぞれ対向して貫通形成されたピン孔59a、59aが貫通形成されており、該ピン穴59a、59aと前記ボールナット46のピン穴56,56にそれぞれ挿通された2つのピン軸61、61によってボールナット46に対して回転自在に連結されている。つまり、前記ピン軸61,61は、各外端部が前記ピン穴59a、59aにそれぞれ固定されていると共に、各内端部は前記各ピン穴56,56に微少隙間部Cを介して回転自在に挿通されている。前記各微少隙間部Cは、前記オイルギャラリー34から油導出孔34bを通ってリンク部材48の外面を伝ってきた潤滑油を内部に導くようになっている。
【0050】
また、前記ハウジング35の側壁35eの内側には、図1及び図7に示すように、前記連係アーム47を介して制御軸32の左右の最大回転位置を規制する規制機構である2つの第1、第2ストッパピン62,63が設けられている。
【0051】
すなわち、前記第1ストッパピン62は、前記制御軸32が図1中反時計方向へ回転して前記可変機構4によって吸気弁2,2のバルブリフト量を最小リフトとする側壁35e位置に固定されている。一方、第2ストッパピン63は、制御軸32が図示のように時計方向へ回転して前記バルブリフト量を最大リフトとする側壁35e位置に固定されており、これら第1,第2ストッパピン62,63によって制御軸32の左右の最小、最大回転位置が規制されるようになっている。
【0052】
以下、本実施形態の作用を説明すれば、まず、例えば、機関のアイドリング運転時を含む低回転運転領域には、コントローラ40からの制御信号によって電動モータ36に伝達された回転トルクは、ボール螺子軸45に伝達されて回転すると、この回転に伴って各ボール64がボール循環溝49とガイド溝55との間を転動しながらボールナット46を図7に示すように、最大右方向位置へ直線状に移動させる。
【0053】
これによって制御軸32は、リンク部材48と連係アーム47とによって反時計方向に回転駆動され、連係アーム47の先端部47bの側面が第1ストッパピン62に当接してそれ以上の回転が規制される。
【0054】
したがって、制御カム33は、軸心P2が図4A、Bに示すように制御軸32の軸心P1の回りを同一半径で回転して、肉厚部が駆動軸13から上方向に離間移動する。これにより、ロッカアーム23の他端部23bとリンクロッド25の枢支点は、駆動軸13に対して上方向へ移動し、このため、各揺動カム17は、リンクロッド25を介してカムノーズ部21側が強制的に引き上げられて全体が時計方向へ回動する。
【0055】
よって、駆動カム15が回転してリンクアーム24を介してロッカアーム23の一端部23aを押し上げると、そのバルブリフト量がリンクロッド25を介して揺動カム17及びバルブリフター16に伝達されるが、そのリフト量L1は充分小さくなる。
【0056】
したがって、かかる機関の低回転領域では、バルブリフト量が最も小さくなることにより、各吸気弁2の開時期が遅くなり、排気弁とのバルブオーバラップが小さくなる。このため、燃費の向上と機関の安定した回転が得られる。
【0057】
また、この時点における制御軸32に作用する正負(+、−)の交番トルクは、図9のT1’で示すように十分小さく、したがって連係アーム47やリンク部材48を介してボールナット46に伝達される荷重も小さいことから、ボール螺子軸45及びボールナット46のねじ部に対する大きな集中荷重の発生はない。
【0058】
したがって、ボール64によるボール螺子軸45とボールナット46との間の摩耗などの発生が防止される。
【0059】
また、機関中回転領域に移行した場合は、コントローラ40からの制御信号によって電動モータ36が逆回転し、この回転トルクがボール螺子軸45に伝達されて回転すると、この回転に伴ってボールナット46が各ボール64を介して図7に示す位置から左方向へ直線移動する。したがって、制御軸32は、制御カム33を図4に示す位置から時計方向へ回転させて、図5A、Bに示すように軸心P2を少し下方向へ回動させる。このため、ロッカアーム23は、今度は全体が駆動軸13方向寄りにに移動して他端部23bが揺動カム17のカムノーズ部21をリンクロッド25を介して下方へ押圧して該揺動カム17全体を所定量だけ反時計方向へ回動させる。
【0060】
よって、駆動カム15が回転してリンクアーム24を介してロッカアーム23の一端部23aを押し上げると、そのバルブリフト量がリンクロッド25を介して揺動カム17及びバルブリフター16に伝達されるが、そのリフト量L2は若干大きくなる。
【0061】
また、この時点における正負(+、−)の交番トルクは、図9のT2’に示すように最小リフト時の場合よりも比較的大きくなるが、ボール螺子軸45とリンク部材48との間のなす角度θが最小リフト時よりも小さくなるので、ボールナット46とボール螺子軸45との間のラジアル荷重は抑制され、大きな集中荷重の発生を回避できる。
【0062】
さらに、機関高回転領域に移行した場合は、コントローラ40からの制御信号によって電動モータ36がさらに逆回転してボール螺子軸45が同方向へさらに回転すると、この回転に伴ってボールナット46が各ボール64を介して図1に示すように、左方向へ大きく移動するが、このとき連係アーム48が第2ストッパピン63に突き当たった位置でそれ以上の移動が規制され、ボールナット46のそれ以上の移動も規制される。したがって、制御軸32は、制御カム33を図5に示す位置から時計方向へ回転させて、図6A、Bに示すように軸心P2が下方向へ移動する。このため、ロッカアーム23は、今度は全体が駆動軸13方向に移動して他端部23bによって揺動カム17のカムノーズ部21をリンクロッド25を介して下方へ押圧して該揺動カム17全体を所定量だけ反時計方向へ回動させる。
【0063】
したがって、揺動カム17のバルブリフター16の上面に対するカム面22の当接位置が、右方向位置(リフト部側)に移動する。このため、吸気弁12の開作動時に駆動カム15が回転してロッカアーム23の一端部23aをリンクアーム24を介して押し上げると、バルブリフター16に対するそのリフト量L3は中バルブリフト量L2よりさらに大きくなる。
【0064】
よって、かかる高回転領域では、バルブリフト量が最大に大きくなり、各吸気弁2の開時期が早くなると共に、閉時期が遅くなる。この結果、吸気充填効率が向上し、十分な出力が確保できる。
【0065】
そして、この時点における正負(+、−)の交番トルクは、図9のT3’に示すように中バルブリフト時の場合よりも大きくなる。ところが、ボール螺子軸45とリンク部材48との間のなす角度θ2が、最小リフト時よりは勿論のこと、中リフト時よりも小さくなるため、ラジアル荷重F3rは十分抑制され、前述のように、制御軸32から連係アーム47及びリンク部材48を介して伝達された大きな交番荷重を、各ボール64を介してボールナット46のガイド溝55とボール螺子軸45のボール循環溝49の円周方向の全域で受けることになるから、かかる入力荷重が円周方向に分散されて集中荷重の発生を十分に回避することができる。
【0066】
したがって、ガイド溝55とボール循環溝49間での摩耗などの発生を効果的に防止できることから、装置の耐久性の向上が図れる。
【0067】
特に、前記軸線方向の分力は、一列ではなく左右2列の循環列によってボール循環溝49とガイド溝55全体で受けるので、分力をさらに大きな範囲で分散させることになるから、摩耗などの発生をさらに防止できる。
【0068】
しかも、前述のように、ボール螺子軸45の回転力をボール循環溝49とガイド溝55間で各ボール64がほぼ転がり接触状態で転動することによりボールナット46に伝達するようになっており、各部間の摩擦抵抗が極めて小さくなることから、ボールナット46の移動が円滑になると共に、移動応答性が向上する。この結果、機関運転状態変化に応じて制御軸32による吸気弁2,2のバルブリフト制御応答性も良好になる。
【0069】
また、ボールナット46は、リンク部材48の二股状の他端部59,59と各ピン軸61,61によって自由な回転が規制されていることから、ボール螺子軸45の回転力を効率よく伝達することができる。
【0070】
さらに、この実施形態では、制御軸32の過回転を防止するために、第1、第2ストッパピン62,63を設けていることから、ボールナット46の最大左右移動位置において各ストッパピン62,63により前記交番トルクの一方向の荷重入力を抑制できると共に、該ボールナット46の過度な移動も防止できる。
【0071】
また、ボール螺子軸45の他端部45bをナット52によって、ボールベアリング51の内輪51aに固定するようにしたため、ボール螺子軸45の安定かつ円滑な回転を維持しつつ軸方向の不用意な移動を規制できる。
【0072】
さらに、ボールナット46は、ピン穴56,56を介してピン軸により軸方向のほぼ中央位置で支持されることから、前記径(ラジアル)方向からの入力荷重が作用してもボールナット46に偏荷重が作用しないので、耐久性の低下を防止できる。
【0073】
また、前記制御軸32のオイルギャラリー34から油導出孔34bを通って外部に導出された潤滑油は、図2及び図3の破線矢印で示すように、リンク部材48の外面を伝って二股状の他端部59,59の各内面に回り込んで微少隙間部C、C内に入って、ピン軸61,61の内端部との間を潤滑する。したがって、ボールナット46とリンク部材48との連結部位に対する潤滑性能が向上する。
【0074】
図10は本発明の第2の実施形態を示し、ボールナット46側のピン穴56,56を直径方向へ貫通形成したものである。
【0075】
すなわち、前記ピン穴56,56は、ボールナット46の外周面から内周面まで貫通形成されて、各ピン軸61,61の先端部がボールナット46の内周面まで挿通されている。また、この各ピン軸61,61の先端部外周面と各ピン穴56,56の内周面との間に微少隙間部C、Cが形成されて、該ピン軸61、61が回動自在になっている。
【0076】
したがって、この実施形態によれば、前述と同じように、油導出孔34bから流出した潤滑油が、図中破線矢印で示すように、リンク部材48の外面から各他端部59,59の内面に回り込んで、前記各微少隙間部C、C内を通ってガイド溝55とボール循環溝49との間に供給される。このため、各ボール64と各溝49,55との間が積極的に潤滑されて、一層円滑な転動つまりボールナット46のスムーズな移動性が得られると共に、摩耗の発生が防止され、この点でも耐久性の向上が図れる。
【0077】
さらに、潤滑油が各ボール64と各溝49,55との間に入り込むことによって、この粘性によって各部間のバックラッシ隙間によるボールナット46移動時の衝撃を減衰させることができると共に、衝撃騒音の発生も防止できる。
【0078】
また、前記ピン孔56,56を直径方向へ貫通形成することができるので、孔開け作業が容易になると共に、両者の同軸度が高くなり、これによって両他端部59,59の位置ずれなどによるボールナット46との摩擦の発生を防止できる。
各ピン軸61,61をボールナット46の内周面まで挿通できることから、この結合強度が高くなる。この結果、ボールナット46の外径(肉厚)を可及的に小さくすることができる。したがって、装置の小型化と軽量化が図れる。しかも、逆に、ボールナット46の外径が一定であれば、その内径を大きくしてボール螺子軸45の外径を大きくできるので、該ボール螺子軸45の強度や剛性を高くすることが可能になる。
【0079】
図11は本発明の第3の実施形態を示し、前記各ボール64の循環列を左右2つずつ形成したものである。
【0080】
すなわち、前記リンク部材48の二股状他端部59,59が、第1実施形態のものより軸方向へ長く形成されている一方、ボールナット46の軸方向の長さも長く形成され、ガイド溝55の左右にそれぞれ2つのディフレクタ65a、65b、65a、65bが設けられて、左右に各2連の循環列が形成されている。
【0081】
また、前記ピン穴56,56は、ボールナット46の外周面から内周面まで貫通形成されて、各ピン軸61,61の先端部がボールナット46の内周面まで挿通されていることは、第2の実施形態と同様である。
【0082】
したがって、この実施形態によれば、各2つの循環列がピン穴56,56(ピン軸61,61)を中心に左右対称位置に配置されることから、ボールナット46の移動姿勢が安定して、該ボールナット46の移動中における各ボール64、59による各ボール循環溝49と各ガイド溝55との片当たりの発生が防止されて、さらに常時円滑な移動性が得られると共に、各部の摩耗などの発生が防止されて、耐久性の向上が図れる。
【0083】
また、ピン穴56,56の貫通形成による作用効果は第2の実施形態と同様である。
【0084】
本発明は、前記実施形態の構成に限定されるものではなく、例えば電動モータ36の配置はエンジンルームのレイアウトによって自由に変更でき、図2に示す右側ではなく反対の左側にしてもよい。また、回転付与機構としては電動モータの他に、油圧モータなどであってもよい。また、本発明は、吸気弁側の他に排気弁側あるいは両方の弁側に適用することが可能である。さらにボールナット46のピン穴56は、2つでなく1つであっても良い。また、内燃機関以外への適用も可能である。
【0085】
さらに、ボール螺子の循環列を形成する例として、ディフレクタを示したが、チューブなどを用いて循環列を形成する方式であってもよい。
【0086】
前記各実施形態から把握できる請求項以外の技術的思想について、以下に記載する。
【0087】
(イ)前記可変機構は、機関のクランク軸に同期して回転し、外周に駆動カムが設けられた駆動軸と、支軸に揺動自在に支持されて、カム面がバルブリフター上面を摺接して機関弁を開閉作動させる揺動カムと、一端部が前記駆動カムに機械的に連係し、他端部がリンクロッドを介して揺動カムに連係したロッカアームとを備え、
機関運転状態に応じて前記ロッカアームの揺動支点を変化させることにより、揺動カムのカム面のバルブリフター上面に対する当接位置を変化させて機関弁のバルブリフトを可変にするように構成されたことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のアクチュエータ装置。
(ロ)前記ボールナットのピン穴をボールナットの直径方向へ貫通形成して、径方向の対称位置に2つ形成したことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のアクチュエータ装置。
【0088】
この発明によれば、ピン穴を2つ形成したことにより、該ピン穴に挿通するピン軸を介してボールナットをリンク機構に強固に連結することができると共に、前記ピン穴が直径方向の対称位置に貫通しているから、一度の孔開けで両方形成することができ、該孔開け作業が容易になる。
【0089】
しかも、両ピン穴の同軸度が高くなることから、リンク部材との安定した連結状態が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施形態の駆動機構を示す縦断面図である。
【図2】本実施形態の駆動機構の要部縦断面図である。
【図3】本実施形態が適用される可変動弁装置の斜視図ある。
【図4】Aは可変動弁装置における最小リフト制御時の閉弁作用を示す図2のA矢視図、Bは同最小リフト制御時の開弁作用を示す図2のA矢視図である。
【図5】Aは可変動弁装置における中リフト制御時の閉弁作用を示す図2のA矢視図、Bは同中リフト制御時の開弁作用を示す図2のA矢視図である。
【図6】Aは可変動弁装置における最大リフト制御時の閉弁作用を示す図2のA矢視図、Bは同最大リフト制御時の開弁作用を示す図2のA矢視図である。
【図7】本実施形態における最小リフト制御時の駆動機構の作動説明図である。
【図8】本駆動機構の平面展開図である。
【図9】バルブリフト量と交番トルクとの関係を示す特性図である。
【図10】本発明の第2の実施形態を示す駆動機構の要部縦断面図である。
【図11】本発明の第3の実施形態を示す駆動機構の要部縦断面図である。
【符号の説明】
2…吸気弁(機関弁)
4…可変機構
6…駆動機構(アクチュエータ装置)
32…制御軸
36…電動モータ(回転力付与機構)
37…螺子伝達手段
45…ボール螺子軸
46…ボールナット(移動部材)
47…連係リンク(リンク機構)
48…リンク部材(リンク機構)
49…ボール循環溝
55…ガイド溝
56…ピン穴
59…他端部
61…ピン軸(ピン)
62…第1ストッパピン(規制機構)
63…第2ストッパピン(規制機構)
64…ボール
65…ディフレクタ

Claims (2)

  1. 外周面の円周方向にボール循環溝を有するボール螺子軸と、
    該ボール螺子軸に回転力を付与する回転力付与機構と、
    内周面の円周方向に前記ボール循環溝と共同して複数のボールを転動自在保持するガイド溝を有し、前記ボール螺子軸の回転に伴い前記複数のボールを介してボール螺子軸の軸方向へ直線移動する移動部材と、
    一端部が前記移動部材に揺動自在に連係され、他端部が制御軸に揺動自在に連係されて、前記移動部材の直線移動を制御軸に回転運動として伝達するリンク機構と、
    を備え、
    前記回転付与機構の回転力をボール螺子軸及び移動部材及びリンク機構を介して前記制御軸に伝達するアクチュエータ装置であって、
    前記ガイド溝を、移動部材の内周面に軸方向へ螺旋状に直接形成すると共に、
    ボールの循環列を、前記移動部材の軸方向へ所定間隔をもって複数形成し、
    かつ、前記移動部材の各循環列の間に、前記リンク機構と連結するピンを回転自在に挿通するピン穴を該移動部材に直接形成し、
    前記ピン穴を移動部材の径方向へ貫通形成すると共に、前記ピン穴と該ピン穴に挿通したピンとの間に、潤滑油流通用の隙間部を形成し、潤滑油を前記隙間部から前記ガイド溝内に流入させることを特徴とするアクチュエータ装置。
  2. 前記請求項1に記載のアクチュエータ装置において、
    前記制御軸を、内燃機関の機関弁の作動特性を変化させる可変機構を機関運転状態に応じて作動させる作動軸に適用したことを特徴とするアクチュエータ装置。
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