JP2004332549A - 可変動弁装置のアクチュエータ - Google Patents
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Abstract
【課題】ボール螺子軸とボールナット及び各ボール間の潤滑性能を向上させて、各部の円滑な作動が得られるアクチュエータを提供する。
【解決手段】電動モータ36の回転駆動によってボール螺子軸45を回転させて、ボール循環溝49とガイド溝53との間に転動自在に保持された複数のボール54を介して軸方向へ直線移動するボールナット46を有すると共に、該ボールナットと制御軸32との間を連係する連係アーム47及びリンク部材48とを備えている。前記ボールの循環列61,62を、それぞれボールナットのガイド溝の最端部位置よりも内側に配置して、ボールナットの周囲に供給された潤滑油をボールナットの最両端側のガイド溝53a、53bの凹部に貯留した。
【選択図】 図1
【解決手段】電動モータ36の回転駆動によってボール螺子軸45を回転させて、ボール循環溝49とガイド溝53との間に転動自在に保持された複数のボール54を介して軸方向へ直線移動するボールナット46を有すると共に、該ボールナットと制御軸32との間を連係する連係アーム47及びリンク部材48とを備えている。前記ボールの循環列61,62を、それぞれボールナットのガイド溝の最端部位置よりも内側に配置して、ボールナットの周囲に供給された潤滑油をボールナットの最両端側のガイド溝53a、53bの凹部に貯留した。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば内燃機関の吸気弁や排気弁のバルブリフト量や作動角等を機関運転状態に応じて可変制御する可変動弁装置の駆動機構として用いられるアクチュエータに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来の可変動弁装置としては、本出願人が先に出願した以下の特許文献1に記載されているものが知られている。
【0003】
概略を説明すれば、この可変動弁装置は、機関のクランク軸からスプロケットを介して回転駆動される駆動軸と、該駆動軸の外周に一定の隙間をもって同軸上に配置され、駆動軸と相対回転自在なカムシャフトと、駆動軸とカムシャフトとの間に介装されて、機関運転状態に応じて両者の回転位相を変化させて吸気弁の開閉時期を可変制御する可変機構と、該可変機構を駆動するアクチュエータとを備えている。このアクチュエータは、可変機構の作動を制御機構を介して制御する電動モータと、該電動モータの回転力を制御軸に伝達するボール螺子伝達手段とを備えている。
【0004】
このボール螺子伝達手段は、ハウジング内に軸受によって回転自在に支持されて、前記電動モータによって回転駆動されるボール螺子軸と、該ボール螺子軸の外周に形成された螺旋状のボール循環溝と内周面に形成された螺旋状のガイド溝との間に複数のボールを転動自在に保持してボール螺子軸の回転に伴い軸方向へ移動する円筒状のボールナットと、該ボールナットの直線移動を回転運動に変換して前記制御軸に回転伝達するリンク機構とから構成されており、このリンク機構は、一端部がボールナットの外面に枢支されたリンク部材と、一端が前記制御軸に固定され、他端がリンク部材の他端に回動自在に連結された連係アームとから構成されている。
【0005】
そして、機関運転状態の変化に応じて、コントローラからの制御信号によって電動モータを正逆いずれかの方向へ回転させることにより、ボール螺子軸の回転により各溝間の複数のボールを介してボールナットが軸方向に沿って移動して、この移動力をリンク部材と連係アームを介して制御軸に伝達して、該制御軸を所定方向に回転させる。これによって、吸気弁の作動角及び開閉時期を可変制御し、機関低回転から高回転までの機関性能を向上させるようになっている。
【0006】
【特許文献1】
特開2002−155716号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前記従来のアクチュエータにあっては、複数のボールが移動部材のガイド溝の全体、つまり移動部材の一方の最端部に有するガイド溝から他方の最端部に有するガイド溝までの全体に渡って配置されて、いわゆるボール循環列がガイド溝に連続して形成されている。
【0008】
このため、外部から移動部材の内部に潤滑油を供給した場合に、この潤滑油は両端側の各ボールに遮られて内側へ流入しにくくなり、内側のボール循環列に対する潤滑性能が低下する。この結果、ボール循環溝とガイド溝及び各ボールとの間に摩擦抵抗が発生して、移動部材の円滑な直線移動性が阻害されるおそれがある。
【0009】
特に、機関停止時に、潤滑油が移動部材内に溜めることが困難になることから機関始動時での潤滑性能が低下するおそれがある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明は、前記従来のアクチュエータの実状に鑑みて案出されたもので、請求項1記載の発明にあっては、とりわけ、ボール螺子軸のボール循環溝と移動部材のガイド溝との間に形成されるボールの循環列を、前記移動部材のガイド溝の最端部位置よりも内側に配置すると共に、前記移動部材の周囲に潤滑油を供給したことを特徴としている。
【0011】
この発明によれば、移動部材の周囲に供給された潤滑油は、ボールが配置されていない移動部材の左右両端部のガイド溝に十分貯留されることから、移動部材の直線移動時において、予め貯留された前記潤滑油が内側の複数のボールなどの外面に付着して、該各ボールとボール循環溝及びガイド溝との間を効果的に潤滑するため、ボール螺子軸と移動部材の常時スムーズな作動が得られる。
【0012】
請求項2に記載の発明は、前記ボール循環列を、前記移動部材の両端側にそれぞれ一条づつ配置したことを特徴としている。
【0013】
したがって、移動部材の移動時におけるボール螺子軸に対するモーメントを、ボール循環列が配置された移動部材の両端部で受けることになるので、両ボール循環列の内側には別異のボール循環列を配置する必要がなくなる。この結果、多くのボールが不要になることからコスト面で有利になるとなる共に、両ボール循環列間に潤滑油を貯留させることができるので、潤滑性能が向上する。
【0014】
請求項3に記載の発明にあっては、前記リンク機構は、一端部が前記移動部材に設けられた枢支部を介して揺動自在に支持されるリンク部材を備え、前記枢支部を移動部材の軸方向の端部に設けたことを特徴としている。
【0015】
この発明によれば、移動部材の軸方向の移動時において、リンク機構から移動部材に枢支部を介して伝達される反力は、移動部材のボール螺子軸に対するモーメント力として作用するが、枢支部が移動部材の軸方向の端部に設けられていることから、前記モーメントが両ボール循環列にほぼ軸方向から作用して移動部材の傾きを抑制する。このため、該移動部材の安定かつスムーズな移動を確保できる。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係る可変動弁装置のアクチュエータの実施形態を図面に基づいて詳述する。この実施形態では、内燃機関の可変動弁装置が吸気弁側に適用され、1気筒当たり2つの吸気弁を備え、かつ吸気弁のバルリフト量を機関運転状態に応じて可変制御するようになっている。
【0017】
すなわち、可変動弁装置は、図5〜図7に示すように、シリンダヘッド1に図外のバルブガイドを介して摺動自在に設けられて、バルブスプリング3,3によって閉方向に付勢された一対の吸気弁2,2と、該各吸気弁2,2のバルブリフト量を可変制御する可変機構4と、該可変機構4の作動位置を制御にする制御機構5と、該制御機構5を回転駆動するアクチュエータである駆動機構6とを備えている。
【0018】
前記可変機構4は、シリンダヘッド1上部の軸受14に回転自在に支持された中空状の駆動軸13と、該駆動軸13に圧入等により固設された偏心回転カムである駆動カム15と、駆動軸13の外周面に揺動自在に支持されて、各吸気弁2,2の上端部に配設されたバルブリフター16,16の上面に摺接して各吸気弁2,2を開作動させる2つの揺動カム17,17と、駆動カム15と揺動カム17,17との間に連係されて、駆動カム15の回転力を揺動カム17,17の揺動力として伝達する伝達手段とを備えている。
【0019】
前記駆動軸13は、図5にも示すように、機関前後方向に沿って配置されていると共に、一端部に設けられた図外の従動スプロケットや、該従動スプロケットに巻装されたタイミングチェーン等を介して機関のクランク軸から回転力が伝達されており、この回転方向は図中、時計方向(矢印方向)に設定されている。
【0020】
前記軸受14は、図6Aに示すように、シリンダヘッド1の上端部に設けられて駆動軸13の上部を支持するメインブラケット14aと、該メインブラケット14aの上端部に設けられて後述する制御軸32を回転自在に支持するサブブラケット14bとを有し、両ブラケット14a,14bが一対のボルト14c,14cによって上方から共締め固定されている。
【0021】
前記駆動カム15は、ほぼリング状を呈し、円環状のカム本体と、該カム本体の外端面に一体に設けられた筒状部とからなり、内部軸方向に駆動軸挿通孔が貫通形成されていると共に、カム本体の軸心Yが駆動軸13の軸心Xから径方向へ所定量βだけオフセットしている。また、この駆動カム15は、駆動軸13に対し前記両バルブリフター16,16に干渉しない一方の外側に駆動軸挿通孔を介して圧入固定されていると共に、カム本体の外周面が偏心円のカムプロフィールに形成されている。
【0022】
前記バルブリフター16,16は、有蓋円筒状に形成され、シリンダヘッド1の保持孔内に摺動自在に保持されていると共に、揺動カム17,17が摺接する上面が平坦状に形成されている。
【0023】
前記両揺動カム17は、図6及び図7に示すように、同一形状のほぼ雨滴状を呈し、円環状のカムシャフト20の両端部に一体的に設けられていると共に、該カムシャフト20が内周面を介して駆動軸13に回転自在に支持されている。また、一端部のカムノーズ部21側にピン孔が貫通形成されていると共に、下面には、カム面22が形成され、カムシャフト20側の基円面と、該基円面からカムノーズ部21側に円弧状に延びるランプ面と、該ランプ面からカムノーズ部21の先端側に有する最大リフトの頂面に連なるリフト面が形成されており、該基円面とランプ面及びリフト面が、揺動カム17の揺動位置に応じて各バルブリフター16の上面の所定位置に当接するようになっている。
【0024】
前記伝達手段は、図5〜図7に示すように、駆動軸13の上方に配置されたロッカアーム23と、該ロッカアーム23の一端部23aと駆動カム15とを連係するリンクアーム24と、ロッカアーム23の他端部23bと揺動カム17とを連係するリンクロッド25とを備えている。
【0025】
前記ロッカアーム23は、中央に有する筒状の基部が支持孔を介して後述する制御カム33に回転自在に支持されている。また、筒状基部の外端部に突設された前記一端部23aには、ピン26が嵌入するピン孔が貫通形成されている一方、基部の内端部に夫々突設された前記他端部23bには、リンクロッド25の一端部25aと連結するピン27が嵌入するピン孔が形成されている。
【0026】
前記リンクアーム24は、比較的大径な円環状の基部24aと、該基部24aの外周面所定位置に突設された突出端24bとを備え、基部24aの中央位置には、前記駆動カム15のカム本体が回転自在に嵌合する嵌合孔24cが形成されている一方、突出端24bには、前記ピン26が回転自在に挿通するピン孔が貫通形成されている。
【0027】
前記リンクロッド25は、ロッカアーム23側が凹状のほぼく字形状に形成され、両端部25a,25bには前記ロッカアーム23の他端部23bと揺動カム17のカムノーズ部21の各ピン孔に挿入した各ピン27,28の端部が回転自在に挿通するピン挿通孔が貫通形成されている。
【0028】
なお、各ピン26,27,28の一端部には、リンクアーム24やリンクロッド25の軸方向の移動を規制するスナップリングがそれぞれが設けられている。
【0029】
前記制御機構19は、駆動軸13の上方位置に同じ軸受14に回転自在に支持された制御軸32と、該制御軸32の外周に固定されてロッカアーム23の支持孔に摺動自在に嵌入されて、ロッカアーム23の揺動支点となる制御カム33とを備えている。
【0030】
前記制御軸32は、図5に示すように、駆動軸13と並行に機関前後方向に配設されていると共に、所定位置のジャーナル部32bが前記軸受14のメインブラケット14aとサブブラケット14bとの間に回転自在に軸受されている。また、制御軸32の内部軸方向には、シリンダヘッド1内の図外のオイルギャラリーから潤滑油が導入される油導入通路34が形成されている。
【0031】
前記制御カム33は、図6及び図7に示すように円筒状を呈し、軸心P2位置が制御軸32の軸心P1からα分だけ偏倚している。
【0032】
前記駆動機構6は、図1、図2及び図5に示すように、シリンダヘッド1の後端部に固定されたハウジング35と、該ハウジング35の一端部に固定された回転力付与機構である電動モータ36と、ハウジング35の内部に設けられて電動モータ36の回転駆動力を前記制御軸32に伝達するボール螺子伝達手段37とから構成されている。
【0033】
前記ハウジング35は、アルミ合金材などによって一体に形成され、内部に前記制御軸32の軸方向とほぼ直角方向に沿って配置されて、ボール螺子手段37が収容配置される細長い収容部35aと、該収容部35aの上端部中央に上方へ突出して、内部に前記制御軸32の一端部32aが臨む膨出室35bが形成されて、この両室35a、35bによって作動室が構成されている。また、この作動室35a、35bは、一端開口がシール部材を介して図外のカバーによって閉塞されるようになっており、前記収容室35aは、軸方向の一端部に円形状の開口部35cが形成されていると共に、他端部側が壁部35dによって閉塞されている。
【0034】
前記電動モ−タ36は、比例型のDCモータによって構成され、ほぼ円筒状のモータケーシング38の先端部38aが前記収容室35aの一端開口部35cを封止する状態で固定されている。また、電動モ−タ36は、一端開口部35cの内周面に圧入された円筒状のリテーナ39の内周側に設けられたメカニカルシール39aによって駆動シャフト36aを介してシールされている。また、電動モータ36は、機関の運転状態を検出するコントローラ40からの制御信号によって駆動するようになっている。
【0035】
このコントローラ40は、クランク角センサ41やエアーフローメータ42、水温センサ43や、制御軸32の回転位置を検出するポテンショメータ44等の各種のセンサからの検出信号をフィードバックして現在の機関運転状態を演算などにより検出して、前記電動モータ36に制御信号を出力している。
【0036】
前記ボール螺子伝達手段37は、図1及び図2に示すように、前記ハウジング35の収容室35a内に電動モータ36の駆動シャフト36aとほぼ同軸上に配置されたボール螺子軸45と、該ボール螺子軸45の外周に螺合する移動部材であるボールナット46と、膨出室35b内で前記制御軸32の一端部に直径方向に沿って連結された連係アーム47と、該連係アーム47と前記ボールナット46とを連係するリンク部材48とから主として構成されており、前記連係アーム47とリンク部材48によってリンク機構が構成されている。
【0037】
前記ボール螺子軸45は、両端部を除く外周面全体に所定幅のボール循環溝49が螺旋状に連続して形成されていると共に、収容室35aの一端開口部35cと他端部の小径部内にそれぞれ臨んだ両端部45a、45bがボールベアリング50、51によって回転自在に軸受けされている。前記一方のボールベアリング50は、一端開口部35cの内側に圧入固定されていると共に、他方のボールベアリング51は、他端部の小径部の内部に圧入固定されている。
【0038】
さらに、ボール螺子軸45は、一端部45aの先端の六角軸と電動モータ36の駆動シャフト36aの先端部が円筒状の連結部材52によって同軸上で軸方向移動可能に結合され、かかる結合によって電動モータ36の回転駆動力を前記ボール螺子軸45に伝達すると共に、ボール螺子軸45の軸方向の僅かな移動を許容している。
【0039】
前記ボールナット46は、ほぼ円筒状に形成され、内周面に前記ボール循環溝49と共同して複数のボール54を転動自在に保持するガイド溝53が螺旋状に連続して形成されていると共に、複数のボール54の循環列61,62をボールナット46の軸方向の前後端部側の2個所に設定する2つのディフレクタが取り付けられている。つまり、このディフレクタは、前記ボール循環溝49とガイド溝53との間を転動する前記複数のボール54を同一溝内に循環させるために、同循環列61,62内に再び戻すように各ボール54を案内するものであり、このボール循環列61,62を軸方向の前後端部側の2個所に設けたものである。
【0040】
具体的には、この各ボール循環列61,62は、ボールナット46の前後最端部から2つ目から3つ目のガイド溝53、53に配置されて、1つ目から2つ目までのガイド溝53a、53bには、なんらボール54が嵌入されずに空き状態になっている。
【0041】
また、前記ボールナット46は、各ボール54を介してボール螺子軸45の回転運動をボールナット46に直線運動に変換しつつ軸方向の移動力が付与されるようになっている。
【0042】
また、ボールナット46は、図3及び図4にも示すように、前記制御軸32側の外端部に、前記リンク部材48の他端部が回転自在に軸受される枢支部55が設けられていると共に、該枢支部55の下部近傍にリンク部材48の傾倒と揺動を許容する切欠溝56が形成されている。
【0043】
すなわち、前記枢支部55は、ボールナット46の軸方向の電動モータ36側の端縁にほぼ円筒状に一体に形成されて、内部に枢支ピン55aが貫通固定されている。また、枢支部55の上端部は、ボールナット46の上部外面より僅かに突出している。
【0044】
一方、切欠溝56は、前記枢支部55の基端側からボールナット46の上端部をほぼ半U字形状に切り欠いて形成され、リンク部材48の他端部外周面との間に隙間57が形成されている。
【0045】
前記連係アーム47は、図3及び図4に示すように、ほぼ雨滴状に形成され、一端側の大径基部が制御軸32の一端部32aに連結されていると共に、先細り状の先端部の幅方向の中央位置にスリット58が形成されており、また、連係アーム47の先端部には、制御軸32方向に沿って連続して貫通した2つのピン孔が貫通形成されていると共に、このピン孔の軸心Zが、制御軸32の軸心P1より偏倚している。
【0046】
前記リンク部材48は、比較的短い長さに設定されていると共に、全体が平面ほぼY字形状に形成されて、平板状の一端部58と、二股状の他端部59、59とから構成されている。また、前記一端部58は、前記連係アーム47のスリット58内に挿通配置されて、前記ピン孔と自身のピン孔58aに貫通したピン60によって連係アーム47の先端部に回転自在に連結されている。なお、前記ピン60は、両端部が連係アーム47の両ピン孔に固定されて、中央部にリンク部材48のピン孔58aが摺動可能になっている。
【0047】
一方、二股状の他端部59,59は、前記枢支部55の両側に配置されて、前記ピン55aの両端部に摺動自在なピン孔59a、59aが貫通形成されており、前記ピン55aによって枢支部55に対して回転自在に連結されている。 したがって、このリンク部材48は、図3及び図4にも示すように、枢支部55を介してボール螺子軸45の軸心とほぼ平行でかつボールナット46の外面軸方向にほぼ沿って傾倒かつ揺動可能に設けられており、完全に傾倒した姿勢では上端部がボールナット46の外面から上方へ僅かに突出した形になっている。
【0048】
また、前記連係アーム47の大径基部の内部には、前記制御軸32の油導入通路34と連通する油孔34aが形成されており、この油孔34aから流下した潤滑油は、前記スリット58内を通ってリンク部材47の一端部58や各他端部59,59の各外面を伝って枢支部55内やボールナット46の外面に供給され、さらに前記両端側の各ガイド溝53a、53b内に貯留されるようになっている。
【0049】
以下、本実施形態の作用を説明すれば、まず、例えば、機関のアイドリング運転時を含む低回転運転領域には、コントローラ40からの制御信号によって電動モータ36に伝達された回転トルクは、ボール螺子軸45に伝達されて回転すると、この回転に伴って各ボール54がボール循環溝49とガイド溝53との間を転動しながらボールナット46を図4に示すように、最大左方向位置へ直線状に移動させる。
【0050】
これによって制御軸32は、リンク部材48と連係アーム47とによって時計方向に回転駆動される。
【0051】
したがって、制御カム33は、軸心P2が図6A、Bに示すように制御軸32の軸心P1の回りを同一半径で回転して、肉厚部が駆動軸13から上方向に離間移動する。これにより、ロッカアーム23の他端部23bとリンクロッド25の枢支点は、駆動軸13に対して上方向へ移動し、このため、各揺動カム17は、リンクロッド25を介してカムノーズ部21側が強制的に引き上げられて全体が時計方向へ回動する。
【0052】
よって、駆動カム15が回転してリンクアーム24を介してロッカアーム23の一端部23aを押し上げると、そのバルブリフト量がリンクロッド25を介して揺動カム17及びバルブリフター16に伝達されるが、そのリフト量L1は充分小さくなる。
【0053】
したがって、かかる機関の低回転領域では、バルブリフト量が最も小さくなることにより、各吸気弁2の開時期が遅くなり、排気弁とのバルブオーバラップが小さくなる。このため、燃費の向上と機関の安定した回転が得られる。
【0054】
また、この時点における制御軸32に作用する正負の交番トルクは、十分小さく、したがって連係アーム47やリンク部材48を介してボールナット46に伝達される荷重も小さいことから、ボール螺子軸45及びボールナット46のねじ部に対する大きな集中荷重の発生はない。したがって、各ボール54によるボール螺子軸45とボールナット46との間の摩耗などの発生が防止される。
【0055】
また、機関高回転領域に移行した場合は、コントローラ40からの制御信号によって電動モータ36が逆回転し、この回転トルクがボール螺子軸45に伝達されて回転すると、この回転に伴ってボールナット46が各ボール54を介して図2に示す位置から図3に示す右方向へ直線移動する。したがって、制御軸32は、制御カム33を図6に示す位置から時計方向へ回転させて、図7A、Bに示すように軸心P2を下方向へ回動させる。このため、ロッカアーム23は、今度は全体が駆動軸13方向寄りに移動して他端部23bが揺動カム17のカムノーズ部21をリンクロッド25を介して下方へ押圧して該揺動カム17全体を所定量だけ反時計方向へ回動させる。
【0056】
よって、駆動カム15が回転してリンクアーム24を介してロッカアーム23の一端部23aを押し上げると、そのバルブリフト量がリンクロッド25を介して揺動カム17及びバルブリフター16に伝達されるが、そのリフト量L2は大きくなる。
【0057】
よって、かかる高回転領域では、バルブリフト量が最大に大きくなり、各吸気弁2の開時期が早くなると共に、閉時期が遅くなる。この結果、吸気充填効率が向上し、十分な出力が確保できる。
【0058】
また、この実施形態では、前記油導入通路34から油孔34aを通りリンク部材48の外面などを伝ってボールナット46の周囲に供給された潤滑油は、ボール54が配置されていないボールナット46の各ガイド溝53a、53bの凹部に十分貯留されることから、ボールナット46の直線移動時において、予め貯留された前記潤滑油が内側の複数のボール54などの外面に付着して、該各ボール54とボール循環溝49及びガイド溝53との間を効果的に潤滑するため、ボール螺子軸45の回転とボールナット46の直線移動をさらに円滑に行うことができる。
【0059】
また、両端側の各ガイド溝53a、53bに貯留された潤滑油は、両ボール循環列61,62間にも徐々に供給されて、ここにも潤滑油を貯留させることができるので、各部の潤滑性能が向上する。
【0060】
また、例えば図2に示す最小リフト制御時から、図1に示すように、ボールナット46が右方向の移動時において、連係アーム47とリンク部材48からボールナット46に枢支部55を介して伝達される図1の矢印方向の反力は、ボールナット46のボール螺子軸45に対するモーメント力として作用するが、前記リンク部材48は、一端部59,59がボールナット46の制御軸32側でかつ軸方向の端部に枢支部55を介して枢支されていることから、リンク部材48の傾倒に伴い前記モーメントが両ボール循環列61,62にほぼ軸方向から作用してボールナット46の傾きを抑制する。このため、該ボールナット46の安定かつスムーズな移動を確保できる。
【0061】
特に、前記ボールナット46に対する軸線方向の分力は、左右2列のボール循環列61,62によってボール循環溝49とガイド溝53全体で受けるので、分力をさらに大きな範囲で分散させることになるから、摩耗などの発生をさらに防止できる。
【0062】
さらに、この実施形態では、ハウジング35内に、ボール螺子軸45やボールナット46及びリンク部材48のユニット体を組み付ける際には、図1〜図4に示すように、リンク部材48を、予めボール螺子軸45の軸線とほぼ平行でかつボールナット46の外面軸方向にほぼ沿って傾倒させて置くことができるので、リンク部材48によるユニット体の横幅及び高さの嵩張りが少なくなって、全体をコンパクト化できる。
【0063】
したがって、かかるユニット体を、内部に予めベアリング51を取り付けた状態にあるハウジング35内に組付収容するには、一端開口部35cから収容室35a内へ軸方向に沿って挿入することができるので、該組付作業が極めて容易になると共に、組付コストの低減化が図れる。
【0064】
本発明は、前記実施形態の構成に限定されるものではなく、例えば電動モータ36の配置はエンジンルームのレイアウトによって自由に変更でき、図1、図2に示す左側ではなく反対の右側にしてもよい。また、回転付与機構としては電動モータの他に、油圧モータなどであってもよい。また、本発明は、吸気弁側の他に排気弁側あるいは両方の弁側に適用することが可能である。
【0065】
さらに、ボール螺子の循環列61,62を形成する例として、ディフレクタを示したが、チューブなどを用いて循環列を形成する方式であってもよい。また、螺子軸と移動部材とは、ボール54を用いずにボルト、ナットの関係で直接噛合させることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施形態における駆動機構の要部側面図である。
【図2】本実施形態の駆動機構の最小リフト時における要部側面図である。
【図3】本発明の第1の実施形態に供されるボール螺子軸とボールナット及びリンク部材のユニット体を示す側面図である。
【図4】同ユニット体の斜視図である。
【図5】本実施形態が適用される可変動弁装置の斜視図ある。
【図6】Aは可変動弁装置における最小リフト制御時の閉弁作用を示す図6のA矢視図、Bは同最小リフト制御時の開弁作用を示す図6のA矢視図である。
【図7】Aは可変動弁装置における最大リフト制御時の閉弁作用を示す図6のA矢視図、Bは同最大リフト制御時の開弁作用を示す図6のA矢視図である。
【符号の説明】
2…吸気弁(機関弁)
4…可変機構
6…駆動機構
32…制御軸
37…螺子伝達手段
45…ボール螺子軸
46…ボールナット(移動部材)
47…連係リンク(リンク機構)
48…リンク部材(リンク機構)
49…ボール循環溝
53…ガイド溝
53a、53b…両端側のガイド溝
54…ボール
61・62…ボール循環列
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば内燃機関の吸気弁や排気弁のバルブリフト量や作動角等を機関運転状態に応じて可変制御する可変動弁装置の駆動機構として用いられるアクチュエータに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来の可変動弁装置としては、本出願人が先に出願した以下の特許文献1に記載されているものが知られている。
【0003】
概略を説明すれば、この可変動弁装置は、機関のクランク軸からスプロケットを介して回転駆動される駆動軸と、該駆動軸の外周に一定の隙間をもって同軸上に配置され、駆動軸と相対回転自在なカムシャフトと、駆動軸とカムシャフトとの間に介装されて、機関運転状態に応じて両者の回転位相を変化させて吸気弁の開閉時期を可変制御する可変機構と、該可変機構を駆動するアクチュエータとを備えている。このアクチュエータは、可変機構の作動を制御機構を介して制御する電動モータと、該電動モータの回転力を制御軸に伝達するボール螺子伝達手段とを備えている。
【0004】
このボール螺子伝達手段は、ハウジング内に軸受によって回転自在に支持されて、前記電動モータによって回転駆動されるボール螺子軸と、該ボール螺子軸の外周に形成された螺旋状のボール循環溝と内周面に形成された螺旋状のガイド溝との間に複数のボールを転動自在に保持してボール螺子軸の回転に伴い軸方向へ移動する円筒状のボールナットと、該ボールナットの直線移動を回転運動に変換して前記制御軸に回転伝達するリンク機構とから構成されており、このリンク機構は、一端部がボールナットの外面に枢支されたリンク部材と、一端が前記制御軸に固定され、他端がリンク部材の他端に回動自在に連結された連係アームとから構成されている。
【0005】
そして、機関運転状態の変化に応じて、コントローラからの制御信号によって電動モータを正逆いずれかの方向へ回転させることにより、ボール螺子軸の回転により各溝間の複数のボールを介してボールナットが軸方向に沿って移動して、この移動力をリンク部材と連係アームを介して制御軸に伝達して、該制御軸を所定方向に回転させる。これによって、吸気弁の作動角及び開閉時期を可変制御し、機関低回転から高回転までの機関性能を向上させるようになっている。
【0006】
【特許文献1】
特開2002−155716号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前記従来のアクチュエータにあっては、複数のボールが移動部材のガイド溝の全体、つまり移動部材の一方の最端部に有するガイド溝から他方の最端部に有するガイド溝までの全体に渡って配置されて、いわゆるボール循環列がガイド溝に連続して形成されている。
【0008】
このため、外部から移動部材の内部に潤滑油を供給した場合に、この潤滑油は両端側の各ボールに遮られて内側へ流入しにくくなり、内側のボール循環列に対する潤滑性能が低下する。この結果、ボール循環溝とガイド溝及び各ボールとの間に摩擦抵抗が発生して、移動部材の円滑な直線移動性が阻害されるおそれがある。
【0009】
特に、機関停止時に、潤滑油が移動部材内に溜めることが困難になることから機関始動時での潤滑性能が低下するおそれがある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明は、前記従来のアクチュエータの実状に鑑みて案出されたもので、請求項1記載の発明にあっては、とりわけ、ボール螺子軸のボール循環溝と移動部材のガイド溝との間に形成されるボールの循環列を、前記移動部材のガイド溝の最端部位置よりも内側に配置すると共に、前記移動部材の周囲に潤滑油を供給したことを特徴としている。
【0011】
この発明によれば、移動部材の周囲に供給された潤滑油は、ボールが配置されていない移動部材の左右両端部のガイド溝に十分貯留されることから、移動部材の直線移動時において、予め貯留された前記潤滑油が内側の複数のボールなどの外面に付着して、該各ボールとボール循環溝及びガイド溝との間を効果的に潤滑するため、ボール螺子軸と移動部材の常時スムーズな作動が得られる。
【0012】
請求項2に記載の発明は、前記ボール循環列を、前記移動部材の両端側にそれぞれ一条づつ配置したことを特徴としている。
【0013】
したがって、移動部材の移動時におけるボール螺子軸に対するモーメントを、ボール循環列が配置された移動部材の両端部で受けることになるので、両ボール循環列の内側には別異のボール循環列を配置する必要がなくなる。この結果、多くのボールが不要になることからコスト面で有利になるとなる共に、両ボール循環列間に潤滑油を貯留させることができるので、潤滑性能が向上する。
【0014】
請求項3に記載の発明にあっては、前記リンク機構は、一端部が前記移動部材に設けられた枢支部を介して揺動自在に支持されるリンク部材を備え、前記枢支部を移動部材の軸方向の端部に設けたことを特徴としている。
【0015】
この発明によれば、移動部材の軸方向の移動時において、リンク機構から移動部材に枢支部を介して伝達される反力は、移動部材のボール螺子軸に対するモーメント力として作用するが、枢支部が移動部材の軸方向の端部に設けられていることから、前記モーメントが両ボール循環列にほぼ軸方向から作用して移動部材の傾きを抑制する。このため、該移動部材の安定かつスムーズな移動を確保できる。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係る可変動弁装置のアクチュエータの実施形態を図面に基づいて詳述する。この実施形態では、内燃機関の可変動弁装置が吸気弁側に適用され、1気筒当たり2つの吸気弁を備え、かつ吸気弁のバルリフト量を機関運転状態に応じて可変制御するようになっている。
【0017】
すなわち、可変動弁装置は、図5〜図7に示すように、シリンダヘッド1に図外のバルブガイドを介して摺動自在に設けられて、バルブスプリング3,3によって閉方向に付勢された一対の吸気弁2,2と、該各吸気弁2,2のバルブリフト量を可変制御する可変機構4と、該可変機構4の作動位置を制御にする制御機構5と、該制御機構5を回転駆動するアクチュエータである駆動機構6とを備えている。
【0018】
前記可変機構4は、シリンダヘッド1上部の軸受14に回転自在に支持された中空状の駆動軸13と、該駆動軸13に圧入等により固設された偏心回転カムである駆動カム15と、駆動軸13の外周面に揺動自在に支持されて、各吸気弁2,2の上端部に配設されたバルブリフター16,16の上面に摺接して各吸気弁2,2を開作動させる2つの揺動カム17,17と、駆動カム15と揺動カム17,17との間に連係されて、駆動カム15の回転力を揺動カム17,17の揺動力として伝達する伝達手段とを備えている。
【0019】
前記駆動軸13は、図5にも示すように、機関前後方向に沿って配置されていると共に、一端部に設けられた図外の従動スプロケットや、該従動スプロケットに巻装されたタイミングチェーン等を介して機関のクランク軸から回転力が伝達されており、この回転方向は図中、時計方向(矢印方向)に設定されている。
【0020】
前記軸受14は、図6Aに示すように、シリンダヘッド1の上端部に設けられて駆動軸13の上部を支持するメインブラケット14aと、該メインブラケット14aの上端部に設けられて後述する制御軸32を回転自在に支持するサブブラケット14bとを有し、両ブラケット14a,14bが一対のボルト14c,14cによって上方から共締め固定されている。
【0021】
前記駆動カム15は、ほぼリング状を呈し、円環状のカム本体と、該カム本体の外端面に一体に設けられた筒状部とからなり、内部軸方向に駆動軸挿通孔が貫通形成されていると共に、カム本体の軸心Yが駆動軸13の軸心Xから径方向へ所定量βだけオフセットしている。また、この駆動カム15は、駆動軸13に対し前記両バルブリフター16,16に干渉しない一方の外側に駆動軸挿通孔を介して圧入固定されていると共に、カム本体の外周面が偏心円のカムプロフィールに形成されている。
【0022】
前記バルブリフター16,16は、有蓋円筒状に形成され、シリンダヘッド1の保持孔内に摺動自在に保持されていると共に、揺動カム17,17が摺接する上面が平坦状に形成されている。
【0023】
前記両揺動カム17は、図6及び図7に示すように、同一形状のほぼ雨滴状を呈し、円環状のカムシャフト20の両端部に一体的に設けられていると共に、該カムシャフト20が内周面を介して駆動軸13に回転自在に支持されている。また、一端部のカムノーズ部21側にピン孔が貫通形成されていると共に、下面には、カム面22が形成され、カムシャフト20側の基円面と、該基円面からカムノーズ部21側に円弧状に延びるランプ面と、該ランプ面からカムノーズ部21の先端側に有する最大リフトの頂面に連なるリフト面が形成されており、該基円面とランプ面及びリフト面が、揺動カム17の揺動位置に応じて各バルブリフター16の上面の所定位置に当接するようになっている。
【0024】
前記伝達手段は、図5〜図7に示すように、駆動軸13の上方に配置されたロッカアーム23と、該ロッカアーム23の一端部23aと駆動カム15とを連係するリンクアーム24と、ロッカアーム23の他端部23bと揺動カム17とを連係するリンクロッド25とを備えている。
【0025】
前記ロッカアーム23は、中央に有する筒状の基部が支持孔を介して後述する制御カム33に回転自在に支持されている。また、筒状基部の外端部に突設された前記一端部23aには、ピン26が嵌入するピン孔が貫通形成されている一方、基部の内端部に夫々突設された前記他端部23bには、リンクロッド25の一端部25aと連結するピン27が嵌入するピン孔が形成されている。
【0026】
前記リンクアーム24は、比較的大径な円環状の基部24aと、該基部24aの外周面所定位置に突設された突出端24bとを備え、基部24aの中央位置には、前記駆動カム15のカム本体が回転自在に嵌合する嵌合孔24cが形成されている一方、突出端24bには、前記ピン26が回転自在に挿通するピン孔が貫通形成されている。
【0027】
前記リンクロッド25は、ロッカアーム23側が凹状のほぼく字形状に形成され、両端部25a,25bには前記ロッカアーム23の他端部23bと揺動カム17のカムノーズ部21の各ピン孔に挿入した各ピン27,28の端部が回転自在に挿通するピン挿通孔が貫通形成されている。
【0028】
なお、各ピン26,27,28の一端部には、リンクアーム24やリンクロッド25の軸方向の移動を規制するスナップリングがそれぞれが設けられている。
【0029】
前記制御機構19は、駆動軸13の上方位置に同じ軸受14に回転自在に支持された制御軸32と、該制御軸32の外周に固定されてロッカアーム23の支持孔に摺動自在に嵌入されて、ロッカアーム23の揺動支点となる制御カム33とを備えている。
【0030】
前記制御軸32は、図5に示すように、駆動軸13と並行に機関前後方向に配設されていると共に、所定位置のジャーナル部32bが前記軸受14のメインブラケット14aとサブブラケット14bとの間に回転自在に軸受されている。また、制御軸32の内部軸方向には、シリンダヘッド1内の図外のオイルギャラリーから潤滑油が導入される油導入通路34が形成されている。
【0031】
前記制御カム33は、図6及び図7に示すように円筒状を呈し、軸心P2位置が制御軸32の軸心P1からα分だけ偏倚している。
【0032】
前記駆動機構6は、図1、図2及び図5に示すように、シリンダヘッド1の後端部に固定されたハウジング35と、該ハウジング35の一端部に固定された回転力付与機構である電動モータ36と、ハウジング35の内部に設けられて電動モータ36の回転駆動力を前記制御軸32に伝達するボール螺子伝達手段37とから構成されている。
【0033】
前記ハウジング35は、アルミ合金材などによって一体に形成され、内部に前記制御軸32の軸方向とほぼ直角方向に沿って配置されて、ボール螺子手段37が収容配置される細長い収容部35aと、該収容部35aの上端部中央に上方へ突出して、内部に前記制御軸32の一端部32aが臨む膨出室35bが形成されて、この両室35a、35bによって作動室が構成されている。また、この作動室35a、35bは、一端開口がシール部材を介して図外のカバーによって閉塞されるようになっており、前記収容室35aは、軸方向の一端部に円形状の開口部35cが形成されていると共に、他端部側が壁部35dによって閉塞されている。
【0034】
前記電動モ−タ36は、比例型のDCモータによって構成され、ほぼ円筒状のモータケーシング38の先端部38aが前記収容室35aの一端開口部35cを封止する状態で固定されている。また、電動モ−タ36は、一端開口部35cの内周面に圧入された円筒状のリテーナ39の内周側に設けられたメカニカルシール39aによって駆動シャフト36aを介してシールされている。また、電動モータ36は、機関の運転状態を検出するコントローラ40からの制御信号によって駆動するようになっている。
【0035】
このコントローラ40は、クランク角センサ41やエアーフローメータ42、水温センサ43や、制御軸32の回転位置を検出するポテンショメータ44等の各種のセンサからの検出信号をフィードバックして現在の機関運転状態を演算などにより検出して、前記電動モータ36に制御信号を出力している。
【0036】
前記ボール螺子伝達手段37は、図1及び図2に示すように、前記ハウジング35の収容室35a内に電動モータ36の駆動シャフト36aとほぼ同軸上に配置されたボール螺子軸45と、該ボール螺子軸45の外周に螺合する移動部材であるボールナット46と、膨出室35b内で前記制御軸32の一端部に直径方向に沿って連結された連係アーム47と、該連係アーム47と前記ボールナット46とを連係するリンク部材48とから主として構成されており、前記連係アーム47とリンク部材48によってリンク機構が構成されている。
【0037】
前記ボール螺子軸45は、両端部を除く外周面全体に所定幅のボール循環溝49が螺旋状に連続して形成されていると共に、収容室35aの一端開口部35cと他端部の小径部内にそれぞれ臨んだ両端部45a、45bがボールベアリング50、51によって回転自在に軸受けされている。前記一方のボールベアリング50は、一端開口部35cの内側に圧入固定されていると共に、他方のボールベアリング51は、他端部の小径部の内部に圧入固定されている。
【0038】
さらに、ボール螺子軸45は、一端部45aの先端の六角軸と電動モータ36の駆動シャフト36aの先端部が円筒状の連結部材52によって同軸上で軸方向移動可能に結合され、かかる結合によって電動モータ36の回転駆動力を前記ボール螺子軸45に伝達すると共に、ボール螺子軸45の軸方向の僅かな移動を許容している。
【0039】
前記ボールナット46は、ほぼ円筒状に形成され、内周面に前記ボール循環溝49と共同して複数のボール54を転動自在に保持するガイド溝53が螺旋状に連続して形成されていると共に、複数のボール54の循環列61,62をボールナット46の軸方向の前後端部側の2個所に設定する2つのディフレクタが取り付けられている。つまり、このディフレクタは、前記ボール循環溝49とガイド溝53との間を転動する前記複数のボール54を同一溝内に循環させるために、同循環列61,62内に再び戻すように各ボール54を案内するものであり、このボール循環列61,62を軸方向の前後端部側の2個所に設けたものである。
【0040】
具体的には、この各ボール循環列61,62は、ボールナット46の前後最端部から2つ目から3つ目のガイド溝53、53に配置されて、1つ目から2つ目までのガイド溝53a、53bには、なんらボール54が嵌入されずに空き状態になっている。
【0041】
また、前記ボールナット46は、各ボール54を介してボール螺子軸45の回転運動をボールナット46に直線運動に変換しつつ軸方向の移動力が付与されるようになっている。
【0042】
また、ボールナット46は、図3及び図4にも示すように、前記制御軸32側の外端部に、前記リンク部材48の他端部が回転自在に軸受される枢支部55が設けられていると共に、該枢支部55の下部近傍にリンク部材48の傾倒と揺動を許容する切欠溝56が形成されている。
【0043】
すなわち、前記枢支部55は、ボールナット46の軸方向の電動モータ36側の端縁にほぼ円筒状に一体に形成されて、内部に枢支ピン55aが貫通固定されている。また、枢支部55の上端部は、ボールナット46の上部外面より僅かに突出している。
【0044】
一方、切欠溝56は、前記枢支部55の基端側からボールナット46の上端部をほぼ半U字形状に切り欠いて形成され、リンク部材48の他端部外周面との間に隙間57が形成されている。
【0045】
前記連係アーム47は、図3及び図4に示すように、ほぼ雨滴状に形成され、一端側の大径基部が制御軸32の一端部32aに連結されていると共に、先細り状の先端部の幅方向の中央位置にスリット58が形成されており、また、連係アーム47の先端部には、制御軸32方向に沿って連続して貫通した2つのピン孔が貫通形成されていると共に、このピン孔の軸心Zが、制御軸32の軸心P1より偏倚している。
【0046】
前記リンク部材48は、比較的短い長さに設定されていると共に、全体が平面ほぼY字形状に形成されて、平板状の一端部58と、二股状の他端部59、59とから構成されている。また、前記一端部58は、前記連係アーム47のスリット58内に挿通配置されて、前記ピン孔と自身のピン孔58aに貫通したピン60によって連係アーム47の先端部に回転自在に連結されている。なお、前記ピン60は、両端部が連係アーム47の両ピン孔に固定されて、中央部にリンク部材48のピン孔58aが摺動可能になっている。
【0047】
一方、二股状の他端部59,59は、前記枢支部55の両側に配置されて、前記ピン55aの両端部に摺動自在なピン孔59a、59aが貫通形成されており、前記ピン55aによって枢支部55に対して回転自在に連結されている。 したがって、このリンク部材48は、図3及び図4にも示すように、枢支部55を介してボール螺子軸45の軸心とほぼ平行でかつボールナット46の外面軸方向にほぼ沿って傾倒かつ揺動可能に設けられており、完全に傾倒した姿勢では上端部がボールナット46の外面から上方へ僅かに突出した形になっている。
【0048】
また、前記連係アーム47の大径基部の内部には、前記制御軸32の油導入通路34と連通する油孔34aが形成されており、この油孔34aから流下した潤滑油は、前記スリット58内を通ってリンク部材47の一端部58や各他端部59,59の各外面を伝って枢支部55内やボールナット46の外面に供給され、さらに前記両端側の各ガイド溝53a、53b内に貯留されるようになっている。
【0049】
以下、本実施形態の作用を説明すれば、まず、例えば、機関のアイドリング運転時を含む低回転運転領域には、コントローラ40からの制御信号によって電動モータ36に伝達された回転トルクは、ボール螺子軸45に伝達されて回転すると、この回転に伴って各ボール54がボール循環溝49とガイド溝53との間を転動しながらボールナット46を図4に示すように、最大左方向位置へ直線状に移動させる。
【0050】
これによって制御軸32は、リンク部材48と連係アーム47とによって時計方向に回転駆動される。
【0051】
したがって、制御カム33は、軸心P2が図6A、Bに示すように制御軸32の軸心P1の回りを同一半径で回転して、肉厚部が駆動軸13から上方向に離間移動する。これにより、ロッカアーム23の他端部23bとリンクロッド25の枢支点は、駆動軸13に対して上方向へ移動し、このため、各揺動カム17は、リンクロッド25を介してカムノーズ部21側が強制的に引き上げられて全体が時計方向へ回動する。
【0052】
よって、駆動カム15が回転してリンクアーム24を介してロッカアーム23の一端部23aを押し上げると、そのバルブリフト量がリンクロッド25を介して揺動カム17及びバルブリフター16に伝達されるが、そのリフト量L1は充分小さくなる。
【0053】
したがって、かかる機関の低回転領域では、バルブリフト量が最も小さくなることにより、各吸気弁2の開時期が遅くなり、排気弁とのバルブオーバラップが小さくなる。このため、燃費の向上と機関の安定した回転が得られる。
【0054】
また、この時点における制御軸32に作用する正負の交番トルクは、十分小さく、したがって連係アーム47やリンク部材48を介してボールナット46に伝達される荷重も小さいことから、ボール螺子軸45及びボールナット46のねじ部に対する大きな集中荷重の発生はない。したがって、各ボール54によるボール螺子軸45とボールナット46との間の摩耗などの発生が防止される。
【0055】
また、機関高回転領域に移行した場合は、コントローラ40からの制御信号によって電動モータ36が逆回転し、この回転トルクがボール螺子軸45に伝達されて回転すると、この回転に伴ってボールナット46が各ボール54を介して図2に示す位置から図3に示す右方向へ直線移動する。したがって、制御軸32は、制御カム33を図6に示す位置から時計方向へ回転させて、図7A、Bに示すように軸心P2を下方向へ回動させる。このため、ロッカアーム23は、今度は全体が駆動軸13方向寄りに移動して他端部23bが揺動カム17のカムノーズ部21をリンクロッド25を介して下方へ押圧して該揺動カム17全体を所定量だけ反時計方向へ回動させる。
【0056】
よって、駆動カム15が回転してリンクアーム24を介してロッカアーム23の一端部23aを押し上げると、そのバルブリフト量がリンクロッド25を介して揺動カム17及びバルブリフター16に伝達されるが、そのリフト量L2は大きくなる。
【0057】
よって、かかる高回転領域では、バルブリフト量が最大に大きくなり、各吸気弁2の開時期が早くなると共に、閉時期が遅くなる。この結果、吸気充填効率が向上し、十分な出力が確保できる。
【0058】
また、この実施形態では、前記油導入通路34から油孔34aを通りリンク部材48の外面などを伝ってボールナット46の周囲に供給された潤滑油は、ボール54が配置されていないボールナット46の各ガイド溝53a、53bの凹部に十分貯留されることから、ボールナット46の直線移動時において、予め貯留された前記潤滑油が内側の複数のボール54などの外面に付着して、該各ボール54とボール循環溝49及びガイド溝53との間を効果的に潤滑するため、ボール螺子軸45の回転とボールナット46の直線移動をさらに円滑に行うことができる。
【0059】
また、両端側の各ガイド溝53a、53bに貯留された潤滑油は、両ボール循環列61,62間にも徐々に供給されて、ここにも潤滑油を貯留させることができるので、各部の潤滑性能が向上する。
【0060】
また、例えば図2に示す最小リフト制御時から、図1に示すように、ボールナット46が右方向の移動時において、連係アーム47とリンク部材48からボールナット46に枢支部55を介して伝達される図1の矢印方向の反力は、ボールナット46のボール螺子軸45に対するモーメント力として作用するが、前記リンク部材48は、一端部59,59がボールナット46の制御軸32側でかつ軸方向の端部に枢支部55を介して枢支されていることから、リンク部材48の傾倒に伴い前記モーメントが両ボール循環列61,62にほぼ軸方向から作用してボールナット46の傾きを抑制する。このため、該ボールナット46の安定かつスムーズな移動を確保できる。
【0061】
特に、前記ボールナット46に対する軸線方向の分力は、左右2列のボール循環列61,62によってボール循環溝49とガイド溝53全体で受けるので、分力をさらに大きな範囲で分散させることになるから、摩耗などの発生をさらに防止できる。
【0062】
さらに、この実施形態では、ハウジング35内に、ボール螺子軸45やボールナット46及びリンク部材48のユニット体を組み付ける際には、図1〜図4に示すように、リンク部材48を、予めボール螺子軸45の軸線とほぼ平行でかつボールナット46の外面軸方向にほぼ沿って傾倒させて置くことができるので、リンク部材48によるユニット体の横幅及び高さの嵩張りが少なくなって、全体をコンパクト化できる。
【0063】
したがって、かかるユニット体を、内部に予めベアリング51を取り付けた状態にあるハウジング35内に組付収容するには、一端開口部35cから収容室35a内へ軸方向に沿って挿入することができるので、該組付作業が極めて容易になると共に、組付コストの低減化が図れる。
【0064】
本発明は、前記実施形態の構成に限定されるものではなく、例えば電動モータ36の配置はエンジンルームのレイアウトによって自由に変更でき、図1、図2に示す左側ではなく反対の右側にしてもよい。また、回転付与機構としては電動モータの他に、油圧モータなどであってもよい。また、本発明は、吸気弁側の他に排気弁側あるいは両方の弁側に適用することが可能である。
【0065】
さらに、ボール螺子の循環列61,62を形成する例として、ディフレクタを示したが、チューブなどを用いて循環列を形成する方式であってもよい。また、螺子軸と移動部材とは、ボール54を用いずにボルト、ナットの関係で直接噛合させることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施形態における駆動機構の要部側面図である。
【図2】本実施形態の駆動機構の最小リフト時における要部側面図である。
【図3】本発明の第1の実施形態に供されるボール螺子軸とボールナット及びリンク部材のユニット体を示す側面図である。
【図4】同ユニット体の斜視図である。
【図5】本実施形態が適用される可変動弁装置の斜視図ある。
【図6】Aは可変動弁装置における最小リフト制御時の閉弁作用を示す図6のA矢視図、Bは同最小リフト制御時の開弁作用を示す図6のA矢視図である。
【図7】Aは可変動弁装置における最大リフト制御時の閉弁作用を示す図6のA矢視図、Bは同最大リフト制御時の開弁作用を示す図6のA矢視図である。
【符号の説明】
2…吸気弁(機関弁)
4…可変機構
6…駆動機構
32…制御軸
37…螺子伝達手段
45…ボール螺子軸
46…ボールナット(移動部材)
47…連係リンク(リンク機構)
48…リンク部材(リンク機構)
49…ボール循環溝
53…ガイド溝
53a、53b…両端側のガイド溝
54…ボール
61・62…ボール循環列
Claims (3)
- 機関運転状態に応じて機関弁の作動状態を変化させる可変機構の制御軸を回転制御する可変動弁装置のアクチュエータであって、
前記アクチュエータは、
外周にボール循環溝が形成されて、モータによって回転駆動するボール螺子軸と、
内周に前記ボール循環溝と共同して複数のボールを転動自在に保持するガイド溝を有し、前記ボール螺子軸の回転駆動に伴い前記ボールの転動を介して該ボール螺子軸の軸方向への直線運動に変換して移動する移動部材と、
前記移動部材の直線移動を回転運動に変換して制御軸に伝達するリンク機構とを備え、
前記各ボールの循環列を、前記移動部材のガイド溝の最端部位置よりも内側に配置すると共に、前記移動部材の周囲に潤滑油を供給したことを特徴とする可変動弁装置のアクチュエータ。 - 前記ボール循環列を、前記移動部材の両端側にそれぞれ一条づつ配置したことを特徴とする請求項1に記載の可変動弁装置のアクチュエータ。
- 前記リンク機構は、一端部が前記移動部材に設けられた枢支部を介して揺動自在に支持されるリンク部材を備え、前記移動部材の枢支部を軸方向の端部に設けたことを特徴とする請求項2に記載の可変動弁装置のアクチュエータ。
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Family Applications (1)
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Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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-
2003
- 2003-04-30 JP JP2003125102A patent/JP2004332549A/ja not_active Abandoned
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DE102008014080B4 (de) * | 2007-07-04 | 2013-12-24 | Mitsubishi Jidosha Kogyo Kabushiki Kaisha | Variabler Ventiltrieb für einen Verbrennungsmotor |
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