JP4259794B2 - 固体電解コンデンサの製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、固体電解コンデンサとその製造方法に関し、より詳しくは、耐電圧を向上させ、かつESRの上昇を抑制した固体電解コンデンサとその製造方法に関にする。
【0002】
【従来の技術】
従来、バルブ陽極金属表面に形成した誘電体皮膜上に、ピロール、アニリン、チオフェン、エチレンジオキシチオフェン等のモノマーを、酸化剤と接触させて化学酸化重合させたり、支持電解質と共に電解重合させて、導電性高分子膜を形成させ、固体電解質とする固体電解コンデンサが、広く知られており、例えば、特開昭63−173313号公報、特開平1−32619号公報等に開示されている。
【0003】
上記導電性高分子の電気伝導度は、例えば、化学酸化重合の場合、ポリピロールで1〜10S/cm、ポリアニリンで10−1〜1S/cmであり、また電解重合の場合、ポリピロールで10S/cmである。
【0004】
また、固体電解コンデンサでは、一般に、バルブ陽極金属に対する導電性高分子の酸化皮膜形成能力が低いため、熱ストレス等により、誘電体皮膜に欠陥が生じた場合、欠陥付近に流れる電流によるジュール熱によって、導電性高分子が絶縁化し、誘電体皮膜の欠陥が修復されるが、導電性高分子の酸化皮膜形成能力が低いため、耐電圧が低いという問題があった。
【0005】
耐電圧が高い固体電解コンデンサを得るには、一般に、誘電体皮膜の形成時に陽極酸化電圧を高くすることにより、誘電体皮膜を厚くする方法が用いられている。しかしながら、誘電体皮膜形成時の陽極酸化電圧が50V前後までは、陽極酸化電圧と耐電圧は同等であるものの、電圧が50V超になると、電圧を上げても、耐電圧の上昇が小さく、高耐電圧とするためには、誘電体皮膜を非常に厚くしなくてはならず、コンデンサの容量低下が大きくなってしまという欠点があった。
【0006】
DENKI KAGAKU 第66巻,第438頁(1998年)には、導電性高分子のドーパントとして、ヘキシルリン酸エステルのモノエステルとジエステルとの混合物であるアルキルホスホートを用いることにより、耐電圧を向上させたアルミ固体電解コンデンサが開示されている。アルキルホスホートが、アルミニウム酸化皮膜に対し、高い修復能力を有することにより、アルキルホスホートを用いた場合の耐電圧は、陽極酸化電圧106Vに対し、79Vであり、用いない場合の63.9Vに比し、約15V向上している。
【0007】
特願平11−332303号公報には、導電性高分子と、リン酸とその誘導体、フェノールとその誘導体及びニトロベンゼン誘導体等の誘電体皮膜修復能力の高い化合物とを混在させ、コンデンサの耐電圧を向上させる方法が開示されている。上記化合物を用いた場合の耐電圧は、陽極酸化電圧35Vに対し、30V前後であり、用いない場合の25V前後に比し、約5V向上している。
【0008】
一方、アルミ電解コンデンサにおいては、駆動用電解液の電気伝導度が低いほど、火花電圧が高くなるため、電気伝導度が低く、かつアルミニウムに対する酸化皮膜形成能力の高い駆動用電解液を用いることにより、耐電圧を向上させているが、反面、高電圧の場合には、ESRが大きくなってしまうという欠点があった。
【0009】
固体電解コンデンサの最大使用電圧は、通常、16V程度であり、アルミ電解コンデンサの最大使用電圧の450Vないしはそれ以上とは、大きく隔たっているのが実情である。
【0010】
耐電圧を向上させ、かつESRの上昇を抑制して、コンデンサ特性を保持させた固体電解コンデンサが要望されている。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、耐電圧を向上させ、かつESRの上昇を抑制し、コンデンサ特性を保持させた固体電解コンデンサとその製造方法を提供することである。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、鋭意検討した結果、バルブ陽極金属表面に形成させた誘電体皮膜直近の固体電解質層の電気伝導度を、上部に位置する固体電解質層より低い電気伝導度に制御することにより、コンデンサの耐電圧が向上するにも関わらず、ESRの上昇を抑制し、コンデンサ特性を保持し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0013】
すなわち、本発明は、バルブ陽極金属表面に形成した誘電体皮膜上に、固体電解質陰極層形成る固体電解コンデンサの製造方法において、固体電解質陰極層が、第1固体電解質層及び化学重合及び電解重合による複数層の第2固体電解質層からなり、かつ誘電体皮膜直近の第1固体電解質層の電気伝導度が、上部に位置する第2固体電解質層より低い電気伝導度に制御されてなることを特徴とする固体電解コンデンサの製造方法であり、また、第1固体電解質層の電気伝導度が、誘電体皮膜上に、導電性高分子膜を形成させた後、熱処理することにより10−2〜10−10S/cmに制御されてなることを特徴とする固体電解コンデンサの製造方法である。
【0014】
以下、本発明を、図面を参照して、説明する。図1は、本発明の固体電解コンデンサの概略断面模式図である。
【0015】
図1に示すように、本発明の固体電解コンデンサは、バルブ陽極金属1表面に形成した誘電体皮膜2上に、固体電解質陰極層4が形成されてなる固体電解コンデンサにおいて、誘電体皮膜2直近の第1固体電解質層3の電気伝導度が、上部に位置する第2固体電解質層3’より低い電気伝導度である10−2〜10−10S/cmの範囲に制御されたものである。
【0016】
バルブ陽極金属1としては、アルミニウム、タンタル、ニオブ、チタン及びそれらの合金からなる群から選ばれた1種が用いられ、焼結体、箔いずれの形状でもよい。
【0017】
本発明の固体電解コンデンサは、用いられるバルブ陽極金属の種類、形状により、チップ型または巻回型のいずれとすることができる。
【0018】
本発明の固体電解コンデンサの第1実施態様であるチップ型コンデンサについて、図2を参照して、説明する。図2は、本発明の固体電解コンデンサの第1実施態様であるチップ型コンデンサの断面模式図である。
【0019】
まず、アジピン酸アンモニウム等の水溶液中で、バルブ陽極金属1を陽極酸化させて、バルブ陽極金属1表面に誘電体皮膜2を形成させる。
【0020】
次に、該誘電体皮膜2上に、電気伝導度が10−2〜10−10S/cmの範囲に制御された第1固体電解質層3を形成させる。
【0021】
第1固体電解質層3の形成は、a)まず、誘電体皮膜2上に、ピロール、アニリン、チオフェン、エチレンジオキシチオフェン等のモノマーを、酸化剤と接触させて化学酸化重合させるか、または支持電解質と共に電解重合させて、導電性高分子膜を形成させた後、酸化剤ないしは還元剤溶液と接触、熱処理、または電解液中でカソード分極させることにより、所定の電気伝導度範囲に制御する方法、あるいは、b)予め所定の電気伝導度範囲に制御された、脱ドープ導電性高分子膜またはイオン伝導性高分子膜を、誘電体皮膜2上に、直接形成させる方法による。
【0022】
次に、所定の電気伝導度範囲に制御された第1固体電解質層3上に、ピロール、アニリン、チオフェン、エチレンジオキシチオフェン等のモノマーを、酸化剤と接触させて化学酸化重合させるか、支持電解質と共に電解重合させて、導電性高分子膜を形成させて、第2固体電解質層3’を形成させる。第2固体電解質層3’は、単一層または複数層のいずれでもよい。
【0023】
以上のようにして、上部に位置する第2固体電解質層3’の電気伝導度より低い、所定の電気伝導度範囲に制御された第1固体電解質層3と、第2固体電解質層3’とからなる固体電解質陰極層4を形成させる。
【0024】
誘電体皮膜2直近の第1固体電解質層3の電気伝導度を、上部に位置する第2固体電解質層3’より低い電気伝導度である10−2〜10−10S/cmの範囲に制御することにより、耐電圧を向上させ、かつESRの上昇を抑制し、コンデンサ特性を保持したコンデンサとすることができる。
【0025】
第1固体電解質層3の電気伝導度が10−2S/cm未満の場合、耐電圧の向上が不十分であり、また、10−10S/cm超の場合、耐電圧は向上するものの、ESRが非常に大きくなり、不都合である。
【0026】
また、第1固体電解質層3の電気伝導度を10−4〜10−8S/cmの範囲に制御した場合、陽極酸化電圧の高いコンデンサの耐電圧が十分に向上すると共に、ESRの上昇を最小限に抑制できるので、好ましい。
【0027】
陽極酸化電圧が比較的低いコンデンサに使用される交流エッチドアルミニウム箔を用いた場合には、第1固体電解質層3の電気伝導度を10−2〜10−4S/cmの範囲に制御すると、コンデンサの耐電圧が向上すると共に、ESRの上昇を最小限に抑制できるので、好都合である。
【0028】
陽極酸化電圧が比較的高いコンデンサに使用される直流エッチドアルミニウム箔を用いた場合には、第1固体電解質層3の電気伝導度を10−4〜10−10S/cmの範囲に制御すると、コンデンサの耐電圧が向上すると共に、ESRの上昇を最小限に抑制できるので、好都合である。
【0029】
第1固体電解質層3の厚さは、0.3〜100nmである。第1固体電解質層の厚さが0.3nm未満では、耐電圧がほとんど向上せず、また、100nm超の場合には、耐電圧は向上するものの、ESRが非常に大きくなり、不都合である。
【0030】
次に、バルブ陽極金属1表面に形成した誘電体酸化皮膜2上に形成させた固体電解質陰極層4上に、カーボンペースト、銀ペースト等を塗布し、加熱、乾燥して、陰極引出層5を形成させた後、リードフレームを搭載し、以下、周知の方法により、陰極を銀ペースト等により、また陽極を溶接等により接合した後、エポキシ樹脂等でモールドし、本発明のチップ型コンデンサを完成する。
【0031】
本発明の固体電解コンデンサでは、バルブ陽極金属表面に形成した誘電体皮膜直近の固体電解質層の電気伝導度が、上部に位置する固体電解質層より低い電気伝導度である、10−2〜10−10S/cmの範囲に制御されており、また、誘電体皮膜の欠陥発生時には、電流によるジュール熱を増加させ、欠陥付近の導電性高分子の絶縁化が促進できるので、耐電圧が向上し、かつESRの上昇を最小限に抑制し、コンデンサ特性を保持することができる。
【0032】
誘電体皮膜2直近の第1固体電解質層3の電気伝導度を、上部に位置する第2固体電解質層3’より低い電気伝導度に制御する方法について、以下、さらに詳しくに説明する。
【0033】
第1固体電解質層3の形成は、前述したように、a)まず、誘電体皮膜2上に、ピロール、アニリン、チオフェン、エチレンジオキシチオフェン等のモノマーを、酸化剤と接触させて化学酸化重合させるか、支持電解質と共に電解重合させて、導電性高分子膜を形成させた後、酸化剤ないしは還元剤溶液と接触、熱処理、または電解液中でカソード分極させることにより、導電性高分子の電気伝導度を低下させて、所定の電気伝導度範囲に制御させる方法、あるいは、b)誘電体皮膜2上に、予め所定の電気伝導度範囲に制御された、溶媒可溶性の脱ドープ導電性高分子膜またはイオン導電性高分子膜を、直接形成させる方法のいずれかによる。
【0034】
方法a−1)
誘電体皮膜2上に、導電性高分子膜を形成させた後、酸化剤ないしは還元剤溶液と接触させる方法
【0035】
方法a−1)では、まず、特開平1−32619号公報に開示されている方法に準じ、バルブ陽極金属1表面に形成した誘電体皮膜2上に、ピロール、アニリン、チオフェン、エチレンジオキシチオフェン等のモノマーを、酸化剤と接触させて化学酸化重合させるか、支持電解質と共に電解重合させて、導電性高分子膜を形成させる。
【0036】
化学酸化重合に用いられる酸化剤は、周知の酸化剤があげられ、特に限定されない。例えば、ヨウ素、臭素、ヨウ化臭素等のハロゲン、五フッ化ヒ素、五フッ化アンチモン、四フッ化ケイ素、五塩化リン、五フッ化リン、塩化アルミニウム、塩化モリブデン等の金属ハロゲン化物、硫酸、硝酸、フルオロ硫酸、トリフルオロメタン硫酸、クロロ硫酸、テトラフルオロホウ酸ナトリウム、ヘキサフルオロリン酸アンモニウム等のプロトン酸とその塩、安息香酸、フタル酸、クエン酸等のカルボン酸、ベンゼンスルホン酸、パラトルエンスルホン酸、パラトルエンスルホン酸アンモニウム、ナフタレンスルホン酸トリメチルアンモニウム等のスルホン酸とその塩、三酸化イオウ、二酸化チッ素等の含酸素化合物、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩、過酸化水素、過酢酸、ジスルスルホニルパーオキサイド等の過酸化物等があげられ、水やアルコール、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、N−メチル−2−ピロリドン(以下、「NMP」と記す。)等の有機溶媒に溶解させて用いられる。
【0037】
電解重合の際に用いられる支持電解質は、周知の支持電解質を用いることができ、特に限定されない。例えば、ヘキサフロロリン、ヘキサフロロヒ素、テトラフロロホウ素等のハロゲン化物アニオン、ヨウ素、臭素、塩素等のハロゲンアニオン、過塩素酸アニオン、アルキルベンゼンスルホン酸、ニトロベンゼンスルホン酸、アミノベンゼンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、パラトルエンスルホン酸等のスルホン酸アニオンと、リチウム、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属カチオン、アンモニウム、テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム等の四級アンモニウムカチオンとを組合せたものがあげられ、水やアルコール、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、NMP等の有機溶媒に溶解させて用いられる。
【0038】
ついで、酸化剤ないしは還元剤溶液と接触させて、導電性高分子鎖を変成させるか、または脱ドープさせて、所定の電気伝導度範囲に制御された第1固体電解質層3を形成させる。
【0039】
第1固体電解質層3を形成させるための酸化剤溶液は、硝酸、過マンガン酸カリウム等のプロトン酸、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩、過酸化水素等の過酸化物、オゾン等を、所定の濃度に溶解させた水溶液である。
【0040】
上記酸化剤溶液の濃度及び接触時間は、形成された導電性高分子膜及びドーパントの種類により、適宜設定される。高濃度の酸化剤溶液を用いた場合には、より短時間の接触で行えるものの、長過ぎると、誘電体皮膜を損傷する恐れがあるので、注意を要する。
【0041】
第1固体電解質層3を形成させるための還元剤溶液は、ヒドラジン、アンモニア、水酸化ナトリウム等のアルカリ金属水酸化物、水素化ホウ素ナトリウム等を、所定の濃度に溶解させた水溶液である。
【0042】
上記還元剤溶液の濃度及び接触時間は、形成された導電性高分子膜及びドーパントの種類により、適宜設定される。高濃度の還元剤溶液を用いた場合には、より短時間の接触で行えるものの、長過ぎると、誘電体皮膜を損傷する恐れがあるので、注意を要する。
【0043】
方法a−2)
誘電体皮膜2上に、導電性高分子膜を形成させた後、熱処理させる方法
【0044】
方法a−2)では、まず、バルブ陽極金属1表面に形成した誘電体皮膜2上に、方法a−1)と同様にして、化学酸化重合または電解重合による導電性高分子膜を形成させる。
【0045】
ついで、開放下または密閉下、温度120〜約300℃で、熱処理させることにより、導電性高分子鎖を変成させるか、または脱ドープさせて、所定の電気伝導度範囲に制御された第1固体電解質層3を形成させる。
【0046】
熱処理温度が、120℃未満の場合には、長時間を要し、また、約300℃超の場合には、電気伝導度が急激に変化し、制御が困難となり、不都合である。
【0047】
方法a−3)
誘電体皮膜2上に、導電性高分子膜を形成させた後、電解液中で、カソード分極させる方法
【0048】
方法a−3)では、まず、バルブ陽極金属1表面に形成した誘電体皮膜2上に、方法a−1)と同様にして、化学酸化重合または電解重合による導電性高分子膜を形成させる。
【0049】
ついで、電解液中に、浸漬し、対極として白金、金、ステンレス等の電極を設け、導電性高分子膜を陰極として、電圧を印加し、電解液中にドーパントを拡散させるか、または導電性高分子鎖を変成させて、所定の電気伝導度範囲に制御された第1固体電解質層3を形成させる。
【0050】
電解液は、ホウ酸、リン酸、アジピン酸、クエン酸、酒石酸等のカルボン酸等のアニオンと、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属カチオン、アンモニウム、テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム等の四級アンモニウムカチオンとを組合せたものを、水やアルコール、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、NMP等の有機溶媒に溶解させたものであり、pH1〜14の範囲である。
【0051】
導電性高分子膜への給電は、導電性高分子膜に金ワイヤーを接触させる他に、予めスクリーン印刷により電極を印刷したものを用いてもよい。
【0052】
印加電圧は、導電性高分子とドーパントの種類によって異なるが、0.5V〜3Vが適当である。この時、電流値が大き過ぎると、金ワイヤー等の給電部付近が急激に脱ドープされ、抵抗が大きくなり、全面処理が困難になってしまうので、電流値はできる限り小さいほうがよいが、生産性を低下させない範囲で、導電性高分子とドーパントの種類に応じ、全面処理ができる範囲で、最大の電流値が設定される。
【0053】
方法b−1)
誘電体皮膜2上に、予め所定の電気伝導度範囲に制御された、溶媒可溶性の脱ドープ導電性高分子膜を、直接形成させる方法
【0054】
方法b−1)では、まず、アニリンや、メチルチオフェン、エチルチオフェン、n−ブチルチオフェン等のアルキルチオフェン等のモノマーを、方法a−1)に記載の周知の酸化剤を用いて、化学酸化重合させて、導電性高分子を得る。次に、該導電性高分子を、アンモニア、水酸化ナトリウム、アミン化合物等の溶液と接触させて、脱ドープさせて、所定の電気伝導度に制御された、溶媒可溶性の脱ドープ導電性高分子を得る。ついで、該脱ドープ導電性高分子を、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、NMP等の溶媒に溶解させた溶液を調製する。
【0055】
次に、上記調製溶液中に、表面に誘電体皮膜2を形成したバルブ陽極金属1を浸漬するか、あるいは、誘電体皮膜2上に、上記調製溶液を、塗布または流延した後、乾燥することにより、予め所定の電気伝導度範囲に制御された、溶媒可溶性の脱ドープ導電性高分子膜を、誘電体皮膜2上に、直接形成させて、第1固体電解質層3とする。
【0056】
方法b−2)
誘電体皮膜2上に、予め所定の電気伝導度範囲に制御されたイオン伝導性高分子膜を、直接形成させる方法
【0057】
方法b−2)では、所定の電気伝導度範囲に制御された、ポリマーと電解質とからなるイオン伝導性高分子を、溶媒に溶解させた溶液中に、表面に誘電体皮膜2を形成したバルブ陽極金属1を浸漬するか、あるいは、誘電体皮膜2上に、上記溶液を、塗布または流延した後、乾燥することにより、予め所定の電気伝導度範囲に制御されたイオン伝導性高分子膜を、誘電体皮膜2上に、直接形成させて、第1固体電解質層3とする。
【0058】
上記ポリマーとしては、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、ポリフッ化ビニリデン、ポリアクリロニトリル、ポリアクリル酸オリゴエチレンオキサイド、ポリメタクリル酸オリゴエチレンオキサイド、ポリアクリル酸オリゴプロピレンオキサイド、ポリメタクリル酸オリゴプロピレンオキサイド、及びそれらの共重合体等、周知のポリマーが用いられる。
【0059】
また、電解質としては、アジピン酸、アゼライン酸、ボロジサリチル酸、安息香酸、パラトルエンスルホン酸等のアニオンと、リチウム、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属カチオン、アンモニア、テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム等の四級アンモニウムカチオンとを組み合わせた、周知の電解質が用いられる。
【0060】
さらに、イオン伝導性高分子として、特開平1−138364号公報に開示されている、ポリエチレングリコールと、トリエタノールアミンまたは1,1,1−トリス(ヒドロキシメチル)エタンのいずれかの三官能性ポリオールと、ポリイソシアネートとからなる架橋重合体、並びにアルカリ金属塩を含有した高分子固体電解質を用いることもできる。
【0061】
以上の方法a−1)〜3)、または方法b−1)、2)により、誘電体皮膜2上に、所定の電気伝導度範囲に制御された第1固体電解質層3を形成させることができる。
【0062】
次に、本発明の固体電解コンデンサの第2実施態様である巻回型コンデンサについて、図3を参照して、以下に説明する。図3は、本発明の固体電解コンデンサの第2実施態様である巻回型コンデンサの断面模式図である。
【0063】
まず、バルブ陽極金属であるアルミニウム箔の表面を、エッチングし、粗面化させて、エッチドアルミニウム箔とした後、陽極リード端子を、溶接やカシメ付け等により接続させる。次に、アジピン酸アンモニウム等の水溶液中で、該陽極箔を、陽極酸化させて、エッチドアルミニウム陽極箔1表面に誘電体皮膜2を形成させる。
【0064】
ついで、陰極リード端子を、溶接等により接続させた対向アルミニウム陰極箔と、上記陽極箔とを、マニラ紙等をセパレータとして、巻回した後、熱処理して、巻回コンデンサ素子を準備する。
【0065】
ついで、前述したチップ型コンデンサの場合と同様、方法a−1)〜3)、または方法b−1)、2)のいずれかを用いて、エッチドアルミニウム陽極箔1表面に形成した誘電体皮膜2上に、電気伝導度が10−2〜10−10S/cmに制御された第1固体電解質層3を形成させる。
【0066】
次に、ピロール、アニリン、チオフェン、エチレンジオキシチオフェン等のモノマーを、酸化剤と接触させて化学酸化重合させるか、支持電解質と共に電解重合させて、導電性高分子膜を形成させて、第1固体電解質層3上に第2固体電解質層3’を形成させる。第2固体電解質層3’は、単一層または複数層のいずれでもよい。
【0067】
以上のようにして、上部に位置する第2固体電解質層3’の電気伝導度より低い、所定の電気伝導度範囲に制御された第1固体電解質層3と、第2固体電解質層3’とからなる固体電解質陰極層4が形成されたコンデンサ素子を得る。
【0068】
その後、上記コンデンサ素子を、アルミニウム製コンデンサケースに入れ、以下、周知の方法により、エポキシ樹脂等を用いて、該ケースを封口し、電圧を印加して、エージング等を行い、本発明の巻回型コンデンサを完成する。
【0069】
【発明の実施の形態】
以下、発明の実施の形態を、実施例に基き、図面を参照して、説明する。なお、本発明は、実施例により、なんら限定されない。実施例中、「%」は「質量%」を表す。
【0070】
実施例1
図2に示すように、バルブ陽極金属である直流エッチドアルミニウム箔1(縦3.0mm×横5.0mm)に、陽極リード端子を接続した後、7%ホウ酸水溶液中に浸漬し、電圧500Vで、陽極酸化し、表面に誘電体皮膜2を形成した直流エッチドアルミニウム陽極箔1を準備した。
【0071】
上記陽極箔を、ピロールモノマーの30%エタノール溶液中に、浸漬、乾燥した後、酸化剤である過硫酸アンモニウムの0.1mol/l水溶液中に、浸漬、乾燥する操作を、3回、繰返して、誘電体皮膜2上に、化学酸化重合ポリピロールの導電性高分子膜を形成させた。
【0072】
次に、該陽極箔を、酸化剤溶液である35%硝酸中に、1分間、浸漬した後、洗浄、乾燥して、誘電体酸化皮膜2上に第1固体電解質層3を形成させた。
【0073】
ついで、上記陽極箔を、ピロールモノマーの30%エタノール溶液中に、浸漬、乾燥した後、酸化剤である過硫酸アンモニウムの0.1mol/l水溶液中に、浸漬、乾燥する操作を、3回、繰返して、化学酸化重合ポリピロールの導電性高分子膜を形成させた後、7%ホウ酸水溶液中、電圧400Vで、誘電体皮膜を再化成修復した。
【0074】
次に、ステンレス容器中、ピロールモノマー0.4mol/lと、支持電解質である1,7−ナフタレンスルホン酸テトラエチルアンモニウム0.4mol/lとのアセトニトリル電解液中に、上記陽極箔を浸漬して、化学酸化重合ポリピロールの導電性高分子膜の一部分に、金ワイヤーを接触させて、電流0.3mAで、90分間、電解重合させ、電解重合ポリピロールの導電性高分子膜を形成させた。
【0075】
以上のようにして、直流エッチドアルミニウム箔1表面に形成した誘電体皮膜2上に、電気伝導度を低下させたポリピロール膜からなる第1固体電解質層3と、化学酸化重合及び電解重合ポリピロールの導電性高分子膜からなる第2固体電解質層3’とで構成される固体電解質陰極層4を形成させた。
【0076】
その後、固体電解質陰極層4上に、カーボンペースト及び銀ペーストにより、陰極引出層5を形成させた後、リードフレームに搭載し、陰極を銀ペーストにより、陽極を溶接により接合した後、エポキシ樹脂でモールドし、チップ型固体電解コンデンサを完成した。
【0077】
完成したコンデンサについて、120Hzでの静電容量(以下「C」と記す。)、100kHzでのESRの初期値を測定した。また、電圧を1V/30秒の割りで、0Vから上昇させ、コンデンサの漏れ電流100mA以下での最大電圧を耐電圧とした耐電圧試験を行った。結果を表2に示す。
【0078】
また、第1固体電解質層3の電気伝導度を測定するため、ピロールモノマーの30%エタノール溶液と、過硫酸アンモニウムの0.1mol/l水溶液とを混合させて、化学酸化重合ポリピロールの粉末を得た。ついで、該粉末を、35%硝酸中に、1分間、浸漬、乾燥した後、ペレット(直径13mmφ)を作製し、低抵抗率計Loresta−GP(三菱化学(株)登録商標)を用いて、測定したところ、電気伝導度は、6.4×10−7S/cmであった。結果を表1に示す。
【0079】
実施例2
実施例1と同様にして、直流エッチドアルミニウム陽極箔1表面に形成した誘電体皮膜2上に、化学酸化重合ポリピロールの導電性高分子膜を形成させた。
【0080】
ついで、該陽極箔を、還元剤溶液である6%アンモニア水中に、1時間、浸漬した後、洗浄、乾燥して、第1固体電解質層3を形成させた。
【0081】
その後、実施例1と同様にして、化学酸化重合及び電解重合ポリピロールの導電性高分子膜からなる第2固体電解質層3’を形成させた後、以下、実施例1と同様にして、チップ型固体電解コンデンサを完成した。
【0082】
完成したコンデンサについて、実施例1と同様にして、C、ESR及び耐電圧を測定した。結果を表2に示す。
【0083】
また、第1固体電解質層3の電気伝導度を測定するため、実施例1と同様の化学酸化重合ポリピロールの粉末を、6%アンモニア水中に、1時間、浸漬、乾燥した後、ペレット(直径13mmφ)を作製し、実施例1と同様にして、測定したところ、2.1×10−6S/cmであった。結果を表1に示す。
【0084】
比較例1
実施例1において、第1固体電解質層を形成させない以外は、実施例1と同様にして、チップ型固体電解コンデンサを完成した。
【0085】
完成したコンデンサについて、実施例1と同様にして、C、ESR及び耐電圧を測定した。結果を表2に示す。
【0086】
実施例3
実施例1と同様にして、直流エッチドアルミニウム陽極箔1表面の誘電体酸化皮膜2上に、化学酸化重合ポリピロールの導電性高分子膜を形成させた。
【0087】
ついで、該陽極箔を、熱処理炉内に、温度200℃で、1時間、放置し、熱処理させて、第1固体電解質層3を形成させた。
【0088】
その後、実施例1と同様にして、化学酸化重合及び電解重合ポリピロールの導電性高分子膜からなる第2固体電解質層3’を形成させた後、以下、実施例1と同様にして、チップ型固体電解コンデンサを完成した。
【0089】
完成したコンデンサについて、実施例1と同様にして、C、ESR及び耐電圧を測定した。結果を表2に示す。
【0090】
また、第1固体電解質層3の電気伝導度を測定するため、実施例1と同様の化学酸化重合ポリピロールの粉末を、温度200℃で、1時間、浸漬、乾燥した後、ペレット(直径13mmφ)を作製し、実施例1と同様にして、測定したところ、4.5×10−5S/cmであった。結果を表1に示す。
【0091】
実施例4
バルブ陽極金属である交流エッチドアルミニウム箔(縦3.0mm×横5.0mm)に、陽極リード端子を接続した後、7%ホウ酸水溶液中に浸漬し、電圧150Vで陽極酸化し、表面に誘電体皮膜2を形成した交流エッチドアルミニウム陽極箔1を準備した。
【0092】
該陽極箔を、ピロールモノマーの30%エタノール溶液中に、浸漬、乾燥した後、酸化剤である過硫酸アンモニウムの0.1mol/l水溶液中に、浸漬、乾燥する操作を、3回、繰返して、化学酸化重合ポリピロールの導電性高分子膜を形成させた後、7%ホウ酸水溶液中、電圧140Vで、誘電体皮膜を再化成修復した。
【0093】
次に、ステンレス容器中、10%アジピン酸二アンモニウム−0.5%アンモニア水溶液中に、上記陽極箔を浸漬し、上記ポリピロール膜の一部分に、金ワイヤーを接触させて、カソード分極し、ステンレス容器を陽極として、最大電圧5V、電流密度10μA/素子で、8分間、通電して、第1固体電解質層3を形成させた。
【0094】
その後、実施例1と同様にして、化学酸化重合及び電解重合ポリピロールの導電性高分子膜からなる第2固体電解質層3’を形成させた後、以下、実施例1と同様にして、チップ型固体電解コンデンサを完成した。
【0095】
完成したコンデンサについて、実施例1と同様にして、C、ESR及び耐電圧を測定した。結果を表2に示す。
【0096】
また、第1固体電解質層3の電気伝導度を測定するため、実施例1と同様の化学酸化重合ポリピロールの粉末を用いて、ペレット(直径13mmφ)を作製し、上記実施例4と同一条件で、カソード分極し、通電した後、実施例1と同様にして、測定したところ、7.6×10−5S/cmであった。結果を表1に示す。
【0097】
比較例2
第1固体電解質層3を形成させない以外は、実施例4と同様にして、チップ型固体電解コンデンサを完成した。
【0098】
完成したコンデンサについて、実施例1と同様、C、ESR及び耐電圧を測定した。結果を表2に示す。
【0099】
実施例5
300mlガラス容器中、温度5℃に冷却した、アニリンモノマー4.7g及び濃硫酸9.8gを含む水溶液中に、酸化剤である過硫酸アンモニウム11.4gを含む水溶液を滴下して、生成した沈殿を、ろ別、乾燥して、化学酸化重合ポリアニリンの粉末を得た。次に、該粉末4gを、10%アンモニア水50ml中に入れ、撹拌、混合した後、ろ別、乾燥して、溶媒可溶性の脱ドープポリアニリンの粉末を得た。ついで、該粉末を、NMP及びブタノールの混合溶媒に溶解し、脱ドープポリアニリン0.3%のNMP50%−ブタノール50%溶液を調製した。
【0100】
次に、上記調製溶液中に、実施例1と同様の直流エッチドアルミニウム陽極箔1を、5分間、浸漬、乾燥して、脱ドープポリアニリン膜を形成させて、誘電体皮膜上2に、第1固体電解質層3を形成させた。
【0101】
その後、実施例1と同様にして、化学酸化重合及び電解重合ポリピロールの導電性高分子膜からなる第2固体電解質層3’を形成させた後、以下、実施例1と同様にして、チップ型固体電解コンデンサを完成した。
【0102】
完成したコンデンサについて、実施例1と同様にして、C、ESR及び耐電圧を測定した。結果を表2に示す。
【0103】
また、第1固体電解質層3の電気伝導度を測定するため、脱ドープポリアニリン0.3%のNMP50%−ブタノール50%溶液中に、ガラス板を、浸漬、乾燥して、脱ドープポリアニリン膜を形成した後、実施例1と同様にして、測定したところ、1.1×10−6S/cmであった。結果を表1に示す。
【0104】
実施例6
特開2−138364号公報の実施例1に準じて、所定量のポリエチレングリコール及びグリセリンを溶解させたメチルエチルケトン溶液と、所定量のコロネートL(日本ポリウレタン(株)登録商標)とを混合させた後、所定量の過塩素酸リチウムを溶解させた液状組成物を調製した。
【0105】
実施例4と同様の直流エッチドアルミニウム陽極箔1表面に形成した誘電体皮膜2上に、上記液状組成物を塗布し、温度80℃で、4時間、乾燥して、架橋重合させて、イオン伝導性高分子を形成させて、第1固体電解質層3を形成させた。
【0106】
その後、実施例1と同様にして、化学酸化重合及び電解重合ポリピロールの導電性高分子膜からなる第2固体電解質層3’を形成させた後、以下、実施例1と同様にして、チップ型固体電解コンデンサを完成した。
【0107】
完成したコンデンサについて、実施例1と同様にして、C、ESR及び耐電圧を測定した。結果を表2に示す。
【0108】
また、第1固体電解質層3の電気伝導度を測定するため、ガラス板上に、上記液状組成物を、上記実施例6と同一条件で、塗布、乾燥して、イオン伝導性高分子を形成した後、、実施例1と同様にして、測定したところ、2.7×10−7S/cmであった。結果を表1に示す。
【0109】
実施例7
図3に示すように、バルブ陽極金属である長尺状の直流エッチドアルミニウム箔(縦3.0mm×横75.0mm)箔に、陽極リード端子を、カシメ付けにより接続した後、実施例1と同様にして、陽極酸化して、表面に誘電体酸化皮膜2を形成した直流エッチドアルミニウム陽極箔1を得た。
【0110】
次に、陰極リード端子を溶接させた対向アルミニウム陰極箔7と、該陽極箔1との間に、厚さ50μmのマニラ紙をセパレータ6として挟み、円筒状に巻き取り、ついで、温度400℃で、30分間、熱処理して、マニラ紙を炭化させ、巻回コンデンサ素子を準備した。
【0111】
ついで、上記巻回コンデンサ素子を、実施例1と同様にして、ピロールモノマーの30%エタノール溶液及び酸化剤である過硫酸アンモニウムの0.1mol/l水溶液中に、順次、浸漬、乾燥して、誘電体酸化皮膜2上に化学酸化重合ポリピロールの導電性高分子膜を形成させた後、酸化剤溶液である35%硝酸に接触させて、誘電体酸化皮膜2上に、第1固体電解質層3を形成させた。
【0112】
次に、実施例1と同様にして、化学酸化重合及び電解重合ポリピロールの導電性高分子膜からなる第2固体電解質層3’を形成させ、誘電体皮膜2上に固体電解質陰極層4を形成させたコンデンサ素子を得た。
【0113】
その後、上記コンデンサ素子を、アルミニウム製コンデンサケース(直径6mmφ×高さ7mm)に入れ、エポキシ樹脂を用いて、該ケースを封口した後、エージングし、巻回型固体電解コンデンサを完成した。
【0114】
完成したコンデンサについて、実施例1と同様にして、C、ESR及び耐電圧を測定した。結果を表2に示す。
【0115】
比較例3
第1固体電解質層3を形成させない以外は、実施例7と同様にして、巻回型固体電解コンデンサを完成した。
【0116】
完成したコンデンサについて、実施例1と同様、C、ESR及び耐電圧を測定した。結果を表2に示す。
【0117】
【表1】
Figure 0004259794
【0118】
【表2】
Figure 0004259794
【0119】
表1及び表2に示すように、直流エッチドアルミニウム箔を用いたチップ型コンデンサ(実施例1〜3、5、6及び比較例1)において、誘電体皮膜2上に、所定の電気伝導度に制御された第1固体電解質層3を形成させた、実施例1(導電性高分子膜形成後、酸化剤溶液を接触)、実施例2(導電性高分子膜形成後、還元剤溶液を接触)、実施例3(導電性高分子膜形成後、熱処理)、実施例5(脱ドープ導電性高分子膜形成)及び実施例6(イオン伝導性高分子膜形成)は、第1固体電解質層3を形成させない比較例1と比べ、耐電圧が向上しており、かつESRの上昇も最小限に抑制され、コンデンサ特性が保持されていた。また、交流エッチドアルミニウム箔を用いたチップ型コンデンサ(実施例4)においても、直流エッチドアルミニウム箔の場合と同様の結果であった。
【0120】
また、直流エッチドアルミニウム箔を用いた巻回型コンデンサ(実施例7)においても、第1固体電解質層3を形成させない比較例3と比べ、耐電圧が向上しており、かつESRの上昇も抑制され、コンデンサ特性が保持されていた。
【0121】
【発明の効果】
バルブ陽極金属表面に形成した誘電体皮膜上直近の固体電解質層の電気伝導度が、上部に位置する固体電解質層より低い電気伝導度である、10−2〜10−10S/cmの範囲に制御された、本発明の固体電解コンデンサは、耐電圧を向上させ、かつESRの上昇を最小限に抑制し、コンデンサ特性が保持されたコンデンサである。
【0122】
本発明の固体電解コンデンサは、用いるバルブ陽極金属の種類、形状により、チップ型、巻回型のいずれとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の固体電解コンデンサの構造を示す概略断面模式図である。
【図2】本発明のチップ型固体電解コンデンサの構造を示す断面模式図である。
【図3】本発明の巻回型固体電解コンデンサの構造を示す断面模式図である。
【符号の説明】
1 バルブ陽極金属
2 誘電体皮膜
3 第1固体電解質層
3’ 第2固体電解質層
4 固体電解質陰極層
5 陰極取出層
6 セパレータ
7 対向陰極箔

Claims (3)

  1. バルブ陽極金属表面に形成した誘電体皮膜上に、
    誘電体皮膜直近の第1固体電解質層と、
    その上部に位置する第2固体電解質層とからなる固体電解質陰極層を形成させる固体電解コンデンサの製造方法において、
    誘電体皮膜上に、導電性高分子膜を形成させた後、熱処理することにより誘電体皮膜直近の第1固体電解質層の電気伝導度を7.6×10 −5 〜2.7×10 −7 S/cmであり、かつ、上部に位置する第2固体電解質層より低い電気伝導度に制御し、次いで、その上部に化学重合及び電解重合による複数層の第2固体電解質層を形成することを特徴とする固体電解コンデンサの製造方法。
  2. 固体電解質陰極層上に、陰極引出層を形成させることを特徴とする請求項1に記載の固体電解コンデンサの製造方法。
  3. バルブ陽極金属が、エッチドアルミニウム箔であり、かつ該陽極箔と、対向陰極箔とを、セパレータを介して、巻回させることを特徴とする請求項1又は2に記載の固体電解コンデンサの製造方法。
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