JP4254231B2 - 発光素子用材料およびそれを用いた発光素子 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、電気エネルギーを光に変換できる発光素子に関し、表示素子、フラットパネルディスプレイ、バックライト、照明、インテリア、標識、看板、電子写真機、光信号発生器などの分野に利用可能な発光素子用材料及び発光素子に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
陰極から注入された電子と陽極から注入された正孔が両極に挟まれた有機蛍光体内で再結合する際に発光するという有機積層薄膜発光素子の研究が近年活発に行われている。この素子は、薄型、低駆動電圧下での高輝度発光、蛍光材料を選ぶことによる多色発光が特徴であり注目を集めている。
【0003】
この研究は、コダック社のC.W.Tangらが有機積層薄膜素子が高輝度に発光することを示して以来、多くの研究機関が検討を行っている。コダック社の研究グループが提示した有機積層薄膜発光素子の代表的な構成は、ITOガラス基板上に正孔輸送性のジアミン化合物、発光層である8−ヒドロキシキノリンアルミニウム、そして陰極としてMg:Agを順次設けたものであり、10V程度の駆動電圧で1000cd/m2の緑色発光が可能であった(例えば、非特許文献1参照)。
【0004】
有機積層薄膜発光素子は、発光層に種々の蛍光材料を用いることにより、多様な発光色を得ることが可能であることから、ディスプレイなどへの実用化研究が盛んである。三原色の発光材料の中では緑色発光材料の研究が最も進んでおり、現在は赤色発光材料と青色発光材料において、特性向上を目指して鋭意研究がなされている。
【0005】
この有機積層薄膜発光素子の構成については、上記の陽極/正孔輸送層/発光層/陰極の他に、電子輸送層を適宜設けたものが知られている。ここで、/は積層を表す。正孔輸送層は陽極より注入された正孔を発光層に輸送する機能を有し、電子輸送層は陰極より注入された電子を発光層に輸送する機能を有する。これらの層を発光層と両極の間に挿入することにより、発光効率、耐久性が向上することが知られている。これらを用いた素子構成の例として、陽極/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/陰極や陽極/発光層/電子輸送層/陰極などの層構成を持つ素子が挙げられ、各層に適した有機化合物の研究が正孔輸送材料を中心に行われている。
【0006】
例えば、特定のフェナントロリン誘導体を電子輸送材料として用いることが提案されている(例えば、特許文献1参照)。特定のフェナントロリン誘導体を使用することで、高効率発光を示すものの、長時間の通電により結晶化し、素子性能が低下する問題がある。
【0007】
また、特定のジフェニルビニル誘導体をは、青色発光材料として用いることが提案されている(例えば、特許文献2参照)。特定のジフェニルビニル誘導体を使用することで、高効率発光を示すものの、熱的安定性が低く、耐久性が十分ではない。
【0008】
また、ホスフィンオキサイド化合物を発光材料や電子輸送材料として用いることが提案されている(例えば、特許文献3参照)。しかし、この場合は、素子の耐久性が十分ではない。
【0009】
【非特許文献1】
”Applied Physics Letters”,(米国),1987年、51巻、12号、p.913−915
【0010】
【特許文献1】
特開平5−331459号公報(第1−2頁)
【0011】
【特許文献2】
特開平2−247278号公報(第1−2頁)
【0012】
【特許文献3】
特開2002−63989号公報(第1−2頁)
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
有機積層薄膜発光素子をフラットパネル・ディスプレイやバックライト等の光源に応用するためには、素子の信頼性を十分に確保する必要がある。しかしながら、従来の有機積層薄膜発光素子では熱的安定性が不十分であり、素子の劣化が避けられないため、信頼性が十分とはいえなかった。本発明は、かかる従来技術の問題を解決し、発光輝度が高く、耐久性に優れた発光素子を提供することを目的とするものである。
【0014】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため本発明は以下の構成を取る。すなわち、本発明は、一般式(1)で表されるホスフィンオキサイド化合物を含む発光素子用材料をその骨子とする。
【0015】
【化3】
【0016】
ここで、Ar1は、下記で表されるいずれかの基であり、Ar2およびAr3はα位で連結したナフチル基である。
【化4】
【0017】
さらに、本発明は、陽極と陰極の間に少なくとも発光層が存在し、電気エネルギーによって発光する発光素子であって、該発光素子中に上記一般式(1)で表されるホスフィンオキサイド化合物を含む発光素子用材料を用いたことを特徴とする発光素子である。
【0018】
【発明の実施の形態】
まず、本発明における一般式(1)で表されるホスフィンオキサイド化合物について詳細に説明する。
【0019】
【化5】
【0020】
ここで、Ar1〜Ar3はそれぞれ同じでも異なっていてもよく、アリール基もしくはヘテロアリール基である。但し、Ar1〜Ar3のうち少なくとも一つはα位で連結したナフチル基であり、かつAr1〜Ar3のうち少なくとも一つは蛍光性骨格または電荷輸送性骨格を含む。
【0021】
これらの置換基の内、アリール基とは、例えば、フェニル基、ナフチル基、ビフェニル基、フェナントリル基、ターフェニル基、ピレニル基などの芳香族炭化水素基を示し、これらは無置換でも置換されていてもかまわない。アリール基の炭素数は特に限定されないが、通常、6〜40の範囲が入手の容易性等の理由で好ましく使用される。
【0022】
また、ヘテロアリール基とは、例えば、フラニル基、チオフェニル基、オキサゾリル基、ピリジル基、キノリニル基、カルバゾリル基などの炭素以外の原子を有する環状構造基を示し、これらは無置換でも置換されていてもかまわない。ヘテロアリール基の炭素数は特に限定されないが、通常、2〜30の範囲が入手の容易性等の理由で好ましく使用される。
【0023】
本発明で使用するホスフィンオキサイド化合物は、α位で連結したナフチル基を少なくとも一つ以上有することが特徴であるが、これはリン原子とナフチル基のα位が単結合により直接連結したものである。一つのリン原子にナフチル基が二つ以上連結していてもよく、一つのナフチル基にリン原子が二つ以上連結していてもよい。すなわち、Ar1〜Ar3はさらにリン原子で置換されていてもよい。また、該ナフチル基は置換基を有していても無置換でもかまわない。
【0024】
長時間にわたって安定な発光を得るためには、熱的安定性や薄膜形成性に優れた材料が望まれる。これは、一般式(1)のAr1〜Ar3のうち少なくとも一つ以上がα位で連結したナフチル基であることによって達成できるのであるが、一般式(1)のAr1〜Ar3のうち二つ以上がα位で連結したナフチル基であると、より熱安定性が向上するため好ましい。
【0025】
熱安定性の指標としてはガラス転移温度Tgが広く用いられている。発光素子の駆動時にはジュール熱等の熱が発生するため、Tgが低い化合物を用いると素子の耐久性が低下する。一方、Tgが高すぎる化合物は昇華性が低くなり、蒸着時の信頼性が低下する傾向がある。そこで、一般式(1)で表されるホスフィンオキサイド化合物の好ましいTgは、100℃以上、300℃以下であり、より好ましくは110℃以上、290℃以下、更に好ましくは120℃以上、280℃以下である。ここで、Tgは、Ar1〜Ar3を適宜選択することで調整することが可能である。
【0026】
発光素子用材料としての機能(発光・電荷輸送・電荷注入等)をより強く発揮するために、一般式(1)のAr1〜Ar3のうち少なくとも一つが蛍光性骨格または電荷輸送性骨格であることが必要である。もちろん、蛍光性骨格または電子輸送性骨格をそれぞれ二つ以上有していてもよいし、蛍光性骨格および電子輸送性骨格を同時に有していてもよい。
【0027】
ここで、蛍光性骨格としては、蛍光を有していれば特に限定されるものではないが、例えば、後述の既知発光材料の骨格が好適に用いられる。
【0028】
また、電荷輸送性骨格とは正孔輸送性骨格または電子輸送性骨格を指すものであり、正孔輸送性および/または電子輸送性を有していれば特に限定されるものではないが、例えば、後述の正孔輸送材料や電子輸送材料の骨格が好適に用いられる。
【0029】
ホスフィンオキサイド骨格そのものが電子輸送性を有することから、なかでも上記Ar1〜Ar3のうち少なくとも一つが電子輸送性骨格を有することが、その電子輸送機能をより強く発揮することができるため好ましい。
【0030】
上記のようなホスフィンオキサイド化合物として具体的には以下のような例が挙げられる。
【0031】
【化6】
【0032】
【化7】
【0033】
【化8】
【0034】
【化9】
【0035】
【化10】
【0036】
【化11】
【0037】
一般式(1)で表されるホスフィンオキサイド化合物の合成は、公知の方法を使用することができる。例えば、ハロゲン化ホスフィンオキサイドとグリニヤール試薬または有機リチウム試薬による置換反応、2置換ホスフィンオキサイドとハロゲン化アリールによるパラジウム触媒下でのカップリング反応、ホスフィン化合物の酸化反応などの方法により合成することができるが、これに限定されるものではない。
【0038】
本発明において、一般式(1)で表されるホスフィンオキサイド化合物は発光素子用材料として好適に用いられる。
【0039】
本発明の発光素子用材料は、一般式(1)で表されるホスフィンオキサイド化合物のみからなるものであっても良いし、材料のハンドリング性等の理由により、適宜、その他の材料を添加しても良い。
【0040】
次に、本発明の発光素子について詳細に説明する。
【0041】
陽極は、光を取り出すために透光性であれば良く、使用する素材としては、酸化錫、酸化インジウム、酸化錫インジウム(ITO)などの導電性金属酸化物、あるいは金、銀、クロムなどの金属、ヨウ化銅、硫化銅などの無機導電性物質、ポリチオフェン、ポリピロール、ポリアニリンなどの導電性ポリマなど特に限定されるものでないが、ITOガラスやネサガラスを用いることが特に望ましい。
【0042】
透明電極である陽極の抵抗は、素子の発光に十分な電流が供給できればよいので限定されないが、素子の消費電力の観点からは低抵抗であることが望ましい。例えば、300Ω/□以下のITO基板であれば素子電極として機能するが、現在では10Ω/□程度の基板の供給も可能になっていることから、低抵抗品を使用することが特に望ましい。ITOの厚みは、抵抗値に合わせて任意に選ぶ事ができるが、通常100〜300nmの間で用いられることが多い。また、ガラス基板はソーダライムガラス、無アルカリガラスなどが用いられ、また厚みも機械的強度を保つのに十分な厚みがあればよいので、0.5mm以上あれば十分である。ガラスの材質については、ガラスからの溶出イオンが少ない方がよいので無アルカリガラスが好ましいが、SiO2などのバリアコートを施したソーダライムガラスなど市販されているガラスを使用できる。さらに、陽極が安定に機能するのであれば、基板はガラスである必要はなく、例えば、プラスチック基板上に陽極を形成しても良い。ITO膜形成方法は、電子線ビーム法、スパッタリング法、化学反応法などを使用することができ、特に制限を受けるものではない。
【0043】
陰極に使用する素材は、電子を本有機物層に効率良く注入できる物質であれば特に限定されず、例えば、白金、金、銀、銅、鉄、錫、亜鉛、アルミニウム、インジウム、クロム、リチウム、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウムなどを使用することができる。電子注入効率をあげて素子特性を向上させるためには、リチウム、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウムまたはこれらの低仕事関数金属を含む合金が有効である。しかし、これらの低仕事関数金属は、一般に大気中で不安定であることが多く、例えば、有機層に微量のリチウムやマグネシウム(例えば、真空蒸着の膜厚計表示で1nm以下)をドーピングして安定性の高い電極を使用する方法が好ましい例として挙げることができるが、フッ化リチウムのような無機塩の使用も可能であることから特にこれらに限定されるものではない。更に、電極保護のために、白金、金、銀、銅、鉄、錫、アルミニウム、インジウムなどの金属、またはこれらの金属を用いた合金、そしてシリカ、チタニア、窒化ケイ素などの無機物、ポリビニルアルコール、塩化ビニル、炭化水素系高分子などを積層することが好ましい例として挙げられる。これらの電極の作製法についても、抵抗加熱、電子線ビーム、スパッタリング、イオンプレーティング、コーティングなど、導通を取ることができれば特に制限されない。
【0044】
本発明の発光素子に含まれる発光素子材料とは、自ら発光するもの、その発光を助けるもののいずれをも該当し、発光に関与している化合物を指すものである。具体的には、正孔輸送材料、発光材料、電子輸送材料などが該当する。
【0045】
また、本発明の発光素子は発光素子用材料を含む層により形成され、例えば、1)正孔輸送層/発光層、2)正孔輸送層/発光層/電子輸送層、3)発光層/電子輸送層、そして、4)以上の組合わせ物質を一層に混合した形態のいずれであってもよい。即ち、素子構成としては、上記1)〜3)の多層積層構造の他に4)のように発光材料単独または発光材料と正孔輸送材料や電子輸送材料を含む層を一層設けるだけでもよい。
【0046】
本発明に使用する一般式(1)で表されるホスフィンオキサイド化合物は上記した発光素子用材料のいずれに含まれていてもよく、また、上記した一層もしくは複数層に含まれていてもよい。また、層全体に含まれていても、層の一部分に含まれていてもよい。
【0047】
正孔輸送層は、正孔輸送材料の一種または二種以上を積層、混合するか、正孔輸送材料と高分子結着剤の混合物により形成することができる。正孔輸送材料としては、例えば、N,N’−ジフェニル−N,N’−ジ(3−メチルフェニル)−4,4’−ジフェニル−1,1’−ジアミン、N,N’−ジナフチル−N,N’−ジフェニル−4,4’−ジフェニル−1,1’−ジアミンなどのトリフェニルアミン類、ビス(N−アリルカルバゾール)またはビス(N−アルキルカルバゾール)類、ピラゾリン誘導体、スチルベン系化合物、ヒドラゾン系化合物、オキサジアゾール誘導体やフタロシアニン誘導体、ポルフィリン誘導体に代表される複素環化合物、ポリマー系では前記単量体を側鎖に有するポリカーボネートやスチレン誘導体、ポリビニルカルバゾール、ポリシランなどが好ましく使用される。ただし、素子作製に必要な薄膜を形成し、陽極から正孔が注入できて、さらに正孔を輸送できる化合物であれば特に限定されるものではない。
【0048】
本発明における発光層は、発光材料(ホスト材料、ドーパント材料)により形成され、これはホスト材料とドーパント材料との混合物であっても、ホスト材料単独であっても、いずれでもよい。ホスト材料とドーパント材料は、それぞれ一種類であっても、複数の組み合わせであっても、いずれでもよい。ドーパント材料はホスト材料の全体に含まれていても、部分的に含まれていても、いずれであってもよい。ドーパント材料は積層されていても、分散されていても、いずれであってもよい。ドーパント材料の量は、多すぎると濃度消光現象が起きるため、ホスト材料に対して10重量%以下で用いることが好ましく、更に好ましくは2重量%以下である。ドーピング方法としては、ホスト材料との共蒸着法によって形成することができるが、ホスト材料と予め混合してから同時に蒸着しても良い。
【0049】
発光材料としては、所望の発光色に応じて様々な材料の中から選択することができる。高輝度発光を得るためには、特に限定されるものではないが、以前から発光体として知られているものが使用できる。例えば、ナフタレン、アントラセン、フェナンスレン、ピレン、トリフェニレン、ペリレン、トラキセン、フルオレン、インデン、9,9’−スピロビフルオレンなどの芳香族炭化水素化合物やその誘導体、フラン、ピロール、チオフェン、シロール、9−シラフルオレン、9,9’−スピロビシラフルオレン、ベンゾチオフェン、ベンゾフラン、インドール、ジベンゾチオフェン、ジベンゾフラン、イミダゾピリジン、フェナントロリン、ピラジン、ナフチリジン、キノキサリン、ピロロピリジン、チオキサンテンなどの芳香族複素環化合物やその誘導体、トリス(8−キノリノラト)アルミニウム錯体などのキノリノール金属錯体、ビピリジン金属錯体、ローダミン金属錯体、アゾメチン金属錯体、ジスチリルベンゼン誘導体、テトラフェニルブタジエン誘導体、スチルベン誘導体、アルダジン誘導体、クマリン誘導体、フタルイミド誘導体、ナフタルイミド誘導体、ペリノン誘導体、ピロロピロール誘導体、シクロペンタジエン誘導体、アクリドン誘導体、イミダゾール、チアゾール、チアジアゾール、カルバゾール、オキサゾール、オキサジアゾール、トリアゾールなどのアゾール誘導体およびその金属錯体、メロシアニン誘導体、ポルフィリン誘導体、ピロメテン化合物およびその金属錯体、トリス(2−フェニルピリジン)イリジウム(III)に代表されるイリジウムや白金を中心金属としたリン光性金属錯体などを好適に用いることができる。
【0050】
また、本発明に使用する一般式(1)で表されるホスフィンオキサイド化合物も蛍光性骨格を導入することによって、発光材料として用いることが可能である。例えば、上記発光材料として例示した化合物を蛍光性骨格として一般式(1)で表されるホスフィンオキサイド化合物に導入することによって発光材料として用いることができる。また、リン光発光を示す発光層のホスト材料として用いる場合には、蛍光性骨格を有していてもいなくてもどちらでもよく、一般式(1)で表されるホスフィンオキサイド化合物を好適に用いることができる。
【0051】
本発明において、電子輸送層とは陰極から電子が注入され、さらに電子を輸送することを司る層である。したがって電子輸送層は、電子注入効率が高く、注入された電子を効率良く輸送することが望ましい。しかしながら、正孔と電子の輸送バランスを考えた場合に、陽極からの正孔が再結合せずに陰極側へ流れるのを効率よく阻止できる役割を主に果たす場合には、電子輸送能力がそれ程高くなくても、発光効率を向上させる効果は電子輸送能力が高い材料と同等に有する。したがって、本発明における電子輸送層は、正孔の移動を効率よく阻止できる正孔阻止層も同義のものとして含むことができる。
【0052】
本発明における電子輸送材料には一般式(1)で表されるホスフィンオキサイド化合物が好適に用いられる。
【0053】
電子輸送材料は上記ホスフィンオキサイド化合物一種のみに限る必要はなく、複数のホスフィンオキサイド化合物を混合して用いたり、既知の電子輸送材料の一種類以上を前記化合物と混合して用いてもよい。既知の電子輸送材料としては特に限定されるものではないが、電子注入効率が高く、注入された電子を効率良く輸送する、あるいは陽極からの正孔の移動を効率よく阻止できることが望ましく、具体的には、8−ヒドロキシキノリンアルミニウムに代表されるキノリノール誘導体金属錯体、ターピリジン金属錯体、トロポロン金属錯体、フラボノール金属錯体、ペリレン誘導体、ペリノン誘導体、ナフタレン、クマリン誘導体、ベンズイミダゾール誘導体、ベンズオキサゾール誘導体、ベンズチアゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、チアジアゾール誘導体、トリアゾール誘導体、アルダジン誘導体、ビススチリル誘導体、ピラジン誘導体、フェナントロリン誘導体、キノキサリン誘導体、キノリン誘導体、ベンゾキノリン誘導体、ナフチリジン誘導体、ビピリジン誘導体、ターピリジン誘導体、ナフタルイミド誘導体、アントラキノンやジフェノキノンなどのキノン誘導体などがあげられる。
【0054】
次に、本発明の発光素子を構成する各層の形成について説明する。
【0055】
正孔輸送層、発光層、電子輸送層は、例えば、上記した単独または二種類以上の材料を混合、積層する方法、高分子結着剤としてポリ塩化ビニル、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリ(N−ビニルカルバゾール)、ポリメチルメタクリレート、ポリブチルメタクリレート、ポリエステル、ポリスルフォン、ポリフェニレンオキサイド、ポリブタジエン、炭化水素樹脂、ケトン樹脂、フェノキシ樹脂、ポリサルフォン、ポリアミド、エチルセルロース、酢酸ビニル、ABS樹脂、ポリウレタン樹脂などの溶剤可溶性樹脂や、フェノール樹脂、キシレン樹脂、石油樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂などの硬化性樹脂などに分散する方法などで、それぞれの層を形成することが可能である。
【0056】
発光素子を構成する層の形成手段は、抵抗加熱蒸着、電子ビーム蒸着、スパッタリング、分子積層法、コーティング法など特に限定されるものではないが、通常は、抵抗加熱蒸着、電子ビーム蒸着が特性面で好ましく使用される。
【0057】
発光素子を構成する各層の厚みは、発光物質の抵抗値にもよるので限定することはできないが、通常、1〜1000nmの間から選ばれる。
【0058】
本発明において、電気エネルギーとは主に直流電流を指すが、パルス電流や交流電流を用いることも可能である。電流値および電圧値は特に制限はないが、発光素子の消費電力、寿命を考慮するとできるだけ低いエネルギーで最大の輝度が得られるようにするのが好ましい。
【0059】
本発明の発光素子の好適な積層例は、基板/陽極/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/陰極がこの順に積層された素子である。
【0060】
本発明の発光素子の用途は特に限定されないが、例えば、マトリクスおよび/またはセグメント方式によって表示するディスプレイに好適に用いるられる。
【0061】
ここで、マトリクスとは、表示のための画素が格子状、モザイク状など二次元的に配置されたものをいい、画素の集合で文字や画像を表示する。画素の形状、サイズは用途によって決まる。例えば、パソコン、モニター、テレビの画像および文字表示には、通常一辺が300μm以下の四角形の画素が用いられるし、表示パネルのような大型ディスプレイの場合は、一辺がmmオーダーの画素を用いる。モノクロ表示の場合は、同じ色の画素を配列すればよいが、カラー表示の場合には、赤、緑、青の画素を並べて表示させる。この場合、典型的にはデルタタイプとストライプタイプがある。そして、このマトリクスの駆動方法としては、線順次駆動方法やアクティブマトリックスのどちらでもよい。線順次駆動の方が構造が簡単であるという利点があるが、動作特性を考慮した場合、アクティブマトリックスの方が優れる場合があるので、これも用途によって使い分けることが好ましい。
【0062】
また、セグメントタイプとは、予め決められた情報を表示するようにパターンを形成し、決められた領域を発光させるものである。例えば、デジタル時計や温度計における時刻や温度表示、オーディオ機器や電磁調理器などの動作状態表示、自動車のパネル表示などがあげられる。
【0063】
マトリクス表示とセグメント表示は同じパネルの中に共存していてもよい。
【0064】
本発明の発光素子はバックライトとしても好ましく用いられる。バックライトは、主に自発光しない表示装置の視認性を向上させる目的に使用され、液晶表示装置、時計、オーディオ装置、自動車パネル、表示板、標識などに使用される。特に、液晶表示装置、中でも薄型化が課題となっているパソコン用途のバックライトとしては、従来方式のものが蛍光灯や導光板からなっているため薄型化が困難であることを考えると、本発明における発光素子を用いたバックライトは薄型、軽量化が可能となり、好適に使用される。
【0065】
【実施例】
以下、実施例および比較例をあげて本発明を説明するが、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。
【0066】
なお、各実施例にある化合物の番号は前記した化合物群に記載された番号を指すものである。また、1H−NMRは、超伝導FTNMR EX−270(日本電子(株)製)を用い、重クロロホルム溶液にて測定を行った。
【0067】
実施例1:化合物〔15〕の合成とそれを用いた発光素子
ビス(1−ナフチル)ホスフィンオキサイド5g、4’−ブロモアセトフェノン3.3g、トリエチルアミン2.3ml、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)0.96gとトルエン50mlの混合溶液を窒素気流下、90℃で2時間加熱撹拌した。室温に冷却した後、ろ過し、トルエン10ml、メタノール10mlで洗浄した。真空乾燥後、白色粉末6gを得た(以降、化合物Aと記載する)。
【0068】
次いで、化合物A2g、8−アミノ−7−キノリンカルボキシアルデヒド0.87g、水酸化カリウム0.67gをエタノール20ml、ジオキサン30mlの混合溶液に溶解し、窒素気流下、4時間加熱環流した。室温に冷却後、ろ過し、エタノールで洗浄した。得られた粉末をジメチルホルムアミドから再結晶し、真空乾燥した後、白色粉末1.6gを得た。得られた白色粉末の1H−NMR分析結果は次の通りであり、化合物〔15〕が得られた。
1H−NMR(CDCl3(d=ppm)):7.30-7.39(m, 4H), 7.46-7.57(m, 4H), 7.62-7.67(q, 1H), 7.89-7.95(m, 6H), 8.03-8.11(m, 3H), 8.26(dd, 1H), 8.33-8.39(m, 3H), 8.86(d, 2H), 9.21(dd, 1H)
ついで、化合物〔15〕を用いた発光素子を次のように作製した。ITO透明導電膜を150nm堆積させたガラス基板(旭硝子(株)製、15Ω/□、電子ビーム蒸着品)を30×40mmに切断、エッチングを行った。得られた基板をアセトン、”セミコクリン56”(フルウチ化学(株)製)で各々15分間超音波洗浄してから、超純水で洗浄した。続いて、イソプロピルアルコールで15分間超音波洗浄してから熱メタノールに15分間浸漬させて乾燥させた。この基板を素子を作製する直前に1時間UV−オゾン処理し、真空蒸着装置内に設置して、装置内の真空度が5×10-5Pa以下になるまで排気した。
【0069】
抵抗加熱法によって、まず正孔注入材料として、銅フタロシアニンを10nm、正孔輸送材料として、4,4’−ビス(N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ)ビフェニルを50nm蒸着した。次に発光材料として、トリスキノリノールアルミニウム錯体(Alq3)を25nmの厚さに積層した。次に電子輸送材料として、化合物〔15〕を25nmの厚さに積層した。次にリチウムを0.5nm有機層にドーピングした後、アルミニウムを200nm蒸着して陰極とし、5×5mm角の素子を作製した。ここで言う膜厚は水晶発振式膜厚モニター表示値である。この発光素子からは、発光波長530nm、輝度19000カンデラ/平方メートルの高輝度緑色発光が得られた。この発光素子の耐久性は非常に優れたものであり、4mAで直流駆動したところ、10000時間たっても輝度半減に至らなかった。
【0070】
また、この発光素子を真空セル内で1mAパルス駆動(Duty比1/60、パルス時の電流値60mA)させたところ、良好な発光が確認された。
【0071】
実施例2
電子輸送材料として化合物〔16〕を用いた以外は実施例1と同様に素子を作製した。この発光素子からは発光波長531nm、輝度18000カンデラ/平方メートルの高輝度緑色発光が得られた。この発光素子の耐久性は非常に優れたものであり、4mAで直流駆動したところ、10000時間たっても輝度半減に至らなかった。
【0072】
実施例3:化合物〔18〕の合成とそれを用いた発光素子
1−ブロモメチルナフタレン10gと亜リン酸トリエチル17.6mlを、窒素気流中140℃で6時間加熱環流した。過剰の亜リン酸トリエチルおよび複製した臭化エチルを減圧蒸留にて取り除いた後、ジメチルスルホキシド100mlおよび4−ブロモベンゾフェノン14.8gを加え、これにカリウム−t−ブトキシド6.3gを加え、窒素気流下室温で4時間撹拌した。水100mlを加え、ジクロロメタンで抽出し、溶媒留去後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶媒:ヘキサン)により精製した。得られた粉末2.5g、ビス(1−ナフチル)ホスフィンオキサイド2g、トリエチルアミン0.9ml、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)0.38gとトルエン10mlの混合溶液を窒素気流下、90℃で2時間加熱撹拌した。室温に冷却した後、ろ過し、トルエン5ml、メタノール5mlで洗浄した。真空乾燥後、白色粉末2.9gを得た。得られた白色粉末の1H−NMR分析結果は次の通りであり、化合物〔18〕が得られていた。
1H−NMR(CDCl3(d=ppm)):7.02(d, 1H), 7.12-7.55(m, 24H), 7.68(d, 1H), 7.82(dd, 1H), 7.91(d, 2H), 8.00(d, 2H), 8.09(dd, 1H), 8.75(d, 2H)
ついで、電子輸送材料として化合物〔18〕を用いた以外は実施例1と同様に素子を作製した。この発光素子からは発光波長532nm、輝度13000カンデラ/平方メートルの高輝度緑色発光が得られた。この発光素子の耐久性は非常に優れたものであり、4mAで直流駆動したところ、10000時間たっても輝度半減に至らなかった。
【0073】
実施例4:化合物〔20〕の合成とそれを用いた発光素子
実施例1記載の化合物A2g、2−アセチルアニリン0.66g、水酸化カリウム0.67gをエタノール20ml、ジオキサン30mlの混合溶液に溶解し、窒素気流下、4時間加熱環流した。溶媒留去後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶媒:ジクロロメタン/酢酸エチル=9/1)により精製した。真空乾燥後、白色粉末0.35gを得た。得られた白色粉末の1H−NMR分析結果は次の通りであり、化合物〔20〕が得られていた。
1H−NMR(CDCl3(d=ppm)):2.78(s, 3H), 7.30-7.37(m, 4H), 7.45-7.60(m, 5H), 7.70-7.76(m, 2H), 7.82-7.94(m, 4H), 8.01-8.05(m, 3H), 8.15(ss, 1H), 8.22(dd, 2H), 8.84(d, 2H)
ついで、電子輸送材料として化合物〔20〕を用いた以外は実施例1と同様に素子を作製した。この発光素子からは発光波長531nm、輝度16000カンデラ/平方メートルの高輝度緑色発光が得られた。この発光素子の耐久性は非常に優れたものであり、4mAで直流駆動したところ、10000時間たっても輝度半減に至らなかった。
【0074】
実施例5:化合物〔21〕の合成とそれを用いた発光素子
ビス(1−ナフチル)ホスフィンオキサイド1g、2−(4−ブロモフェニル)キノキサリン0.94g、トリエチルアミン0.46ml、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)0.19gとトルエン10mlの混合溶液を窒素気流下、90℃で2時間加熱撹拌した。室温に冷却した後、ろ過し、トルエン5ml、メタノール5mlで洗浄した。得られた粉末をジメチルホルムアミドから再結晶し、真空乾燥した後、白色粉末0.35gを得た。得られた白色粉末の1H−NMR分析結果は次の通りであり、化合物〔21〕が得られていた。
1H−NMR(CDCl3(d=ppm)):7.28-7.40(m, 4H), 7.46-7.57(m, 4H), 7.76-7.84(m, 2H), 7.88-7.96(m, 4H), 8.05(d, 2H), 8.13-8.17(m, 2H), 8.28(dd, 2H), 8.84(d, 2H), 9.34(s, 1H)
ついで、電子輸送材料として化合物〔21〕を用いた以外は実施例1と同様に素子を作製した。この発光素子からは発光波長530nm、輝度17000カンデラ/平方メートルの高輝度緑色発光が得られた。この発光素子の耐久性は非常に優れたものであり、4mAで直流駆動したところ、10000時間たっても輝度半減に至らなかった。
【0075】
実施例6:化合物〔22〕の合成とそれを用いた発光素子
実施例1記載の化合物A3.3g、2−アミノ−3−ピリジンカルボキシアルデヒド1g、水酸化カリウム1.17gをエタノール20ml、ジオキサン30mlの混合溶液に溶解し、窒素気流下、4時間加熱環流した。室温に冷却後、ろ過し、エタノールで洗浄した。得られた粉末をジメチルホルムアミドから再結晶し、真空乾燥した後、白色粉末2.7gを得た。得られた白色粉末の1H−NMR分析結果は次の通りであり、化合物〔22〕が得られていた。
1H−NMR(CDCl3(d=ppm)):7.28-7.40(m, 4H), 7.45-7.57(m, 4H), 7.85-7.95(m, 4H), 8.02-8.05(m, 3H), 8.22(dd, 1H), 8.34(ss, 1H), 8.38(dd, 2H), 8.84(d, 2H), 9.17(dd, 1H)
ついで、電子輸送材料として化合物〔22〕を用いた以外は実施例1と同様に素子を作製した。この発光素子からは発光波長532nm、輝度18000カンデラ/平方メートルの高輝度緑色発光が得られた。この発光素子の耐久性は非常に優れたものであり、4mAで直流駆動したところ、10000時間たっても輝度半減に至らなかった。
【0076】
実施例7:化合物〔23〕の合成とそれを用いた発光素子
ビス(1−ナフチル)ホスフィンオキサイド0.54g、2−(4−ブロモフェニル)−4−フェニル−6−(2−ピリジル)ピリジン0.7g、トリエチルアミン0.25ml、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)0.10gとトルエン10mlの混合溶液を窒素気流下、90℃で2時間加熱撹拌した。室温に冷却した後、ろ過し、トルエン5ml、メタノール5mlで洗浄した。得られた粉末をジメチルホルムアミドから再結晶し、真空乾燥した後、白色粉末0.6gを得た。得られた白色粉末の1H−NMR分析結果は次の通りであり、化合物〔23〕が得られていた。
1H−NMR(CDCl3(d=ppm)):7.32-7.38(m, 5H), 7.46-7.57(m, 7H), 7.80-7.95(m, 7H), 8.01-8.05(m, 3H), 8.30(dd, 2H), 8.66(ss, 1H), 8.69-8.72(m, 2H), 8.86(d, 2H)
ついで、電子輸送材料として化合物〔23〕を用いた以外は実施例1と同様に素子を作製した。この発光素子からは発光波長531nm、輝度14000カンデラ/平方メートルの高輝度緑色発光が得られた。この発光素子の耐久性は非常に優れたものであり、4mAで直流駆動したところ、10000時間たっても輝度半減に至らなかった。
【0077】
実施例8:化合物〔31〕の合成とそれを用いた発光素子
ビス(1−ナフチル)ホスフィンオキサイド2g、2−(4−ブロモフェニル)−5−フェニル−1,3,4−オキサジアゾール2g、トリエチルアミン0.92ml、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)0.38gとトルエン10mlの混合溶液を窒素気流下、90℃で2時間加熱撹拌した。室温に冷却した後、ろ過し、トルエン5ml、メタノール5mlで洗浄した。得られた粉末をジメチルホルムアミドから再結晶し、真空乾燥した後、白色粉末1.6gを得た。得られた白色粉末の1H−NMR分析結果は次の通りであり、化合物〔31〕が得られていた。
1H−NMR(CDCl3(d=ppm)):7.28-7.40(m, 4H), 7.46-7.58(m, 7H), 7.86-7.96(m, 4H), 8.06(d, 2H), 8.12-8.16(m, 2H), 8.24(dd, 2H), 8.80(d, 2H)
ついで、電子輸送材料として化合物〔31〕を用いた以外は実施例1と同様に素子を作製した。この発光素子からは発光波長531nm、輝度18000カンデラ/平方メートルの高輝度緑色発光が得られた。この発光素子の耐久性は非常に優れたものであり、4mAで直流駆動したところ、10000時間たっても輝度半減に至らなかった。
【0078】
実施例9:化合物〔32〕の合成とそれを用いた発光素子
ビス(1−ナフチル)ホスフィンオキサイド4.3g、N−(4−ブロモフェニル)−1,8−ナフタルイミド5g、トリエチルアミン2ml、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)0.82gとトルエン50mlの混合溶液を窒素気流下、90℃で2時間加熱撹拌した。室温に冷却した後、ろ過し、トルエン10ml、メタノール10mlで洗浄した。得られた粉末をジメチルホルムアミドから再結晶し、真空乾燥した後、淡黄色粉末3.2gを得た。得られた淡黄色粉末の1H−NMR分析結果は次の通りであり、化合物〔32〕が得られていた。
1H−NMR(CDCl3(d=ppm)):7.31-7.58(m, 10H), 7.78-7.94(m, 6H), 8.04(d, 2H), 8.28(dd, 2H), 8.64(dd, 2H), 8.86(d, 2H)
ついで、電子輸送材料として化合物〔32〕を用いた以外は実施例1と同様に素子を作製した。この発光素子からは発光波長533nm、輝度11000カンデラ/平方メートルの高輝度緑色発光が得られた。この発光素子の耐久性は非常に優れたものであり、4mAで直流駆動したところ、10000時間たっても輝度半減に至らなかった。
【0079】
比較例1
電子輸送材料として2,9−ジメチル−4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン(BTCPN)を用いた他は実施例1と全く同様にして発光素子を作製した。この発光素子の耐久性は著しく短く、4mAで直流駆動したところ、1000時間で輝度が半減した。
【0080】
比較例2
電子輸送材料としてジフェニル−5−フェナンスレニルホスフィンオキサイドを用いた他は実施例1と全く同様にして発光素子を作製した。この発光素子の耐久性は短く、4mAで直流駆動したところ、5000時間で輝度が半減した。
【0081】
比較例3
電子輸送材料として(4−ジフェニルエテニル)フェニル−2−ナフチルフェニルホスフィンオキサイドを用いた他は実施例1と全く同様にして発光素子を作製した。この発光素子の耐久性は短く、4mAで直流駆動したところ、4000時間で輝度が半減した。
【0082】
比較例4
電子輸送材料としてジフェニル−2−ピレニルホスフィンオキサイドを用いた他は実施例1と全く同様にして発光素子を作製した。この発光素子の耐久性は短く、4mAで直流駆動したところ、6000時間で輝度が半減した。
【0083】
実施例10
発光材料として、ホスト材料としてトリスキノリノールアルミニウム錯体(Alq3)、ゲスト材料として4−(ジシアノメチレン)−2−tブチル−6−(1,1,7,7−テトラメチルジュロリジル−9−エニル)−4H−ピラン(DCJTB)をドープ濃度が2%になるように用いた他は実施例1と全く同様にして発光素子を作製した。この発光素子からは、発光波長630nm、輝度9000カンデラ/平方メートルの高輝度赤橙色発光が得られた。この発光素子の耐久性は非常に優れたものであり、4mAで直流駆動したところ、10000時間たっても輝度半減に至らなかった。
【0084】
実施例11
ホスト材料として、4,4’−ビス(ジフェニルビニル)ビフェニル(DPVBi)を用いた他は実施例1と全く同様にして発光素子を作製した。この発光素子からは、発光波長460nm、輝度9000カンデラ/平方メートルの高輝度青色発光が得られた。
【0085】
比較例5
電子輸送材料としてトリスキノリノールアルミニウム錯体(Alq3)を用いた他は実施例11と全く同様にして発光素子を作製した。この発光素子からは発光材料からの発光に加えて電子輸送材料からの緑色発光が観察され、色純度が著しく悪かった。
【0086】
実施例12
ホスト材料として、1,4−ジケト−2,5−ビス(3,5−ジメチルベンジル)−3,6−ビス(1−ナフチル)ピロロ[3,4−c]ピロール、ゲスト材料として4,4−ジフルオロ−8−フェニル−1,3,5,7−テトラ(4−n−ヘキシル)−4−ボラ−3a,4a−ジアザ−s−インダセンをドープ濃度が1%になるように用いた他は実施例1と全く同様にして発光素子を作製した。この発光素子からは、発光波長616nm、輝度16000カンデラ/平方メートルの高輝度赤色発光が得られた。
【0087】
比較例6
電子輸送材料としてビス(2−ピレニル)フェニルホスフィンオキサイドを用いた他は実施例12と全く同様にして発光素子を作製した。この発光素子からは発光材料からの赤色発光に加えて電子輸送材料からの青色発光が観察され、色純度が著しく悪かった。
【0088】
実施例13
ITO透明導電膜を150nm堆積させたガラス基板(旭硝子(株)製、15Ω/□、電子ビーム蒸着品)を30×40mmに切断、フォトリソグラフィ法によって300μmピッチ(残り幅270μm)×32本のストライプ状にパターン加工した。ITOストライプの長辺方向片側は外部との電気的接続を容易にするために1.27mmピッチ(開口部幅800μm)まで広げてある。得られた基板をアセトン、”セミコクリン56”で各々15分間超音波洗浄してから、超純水で洗浄した。続いて、イソプロピルアルコールで15分間超音波洗浄してから熱メタノールに15分間浸漬させて乾燥させた。
【0089】
この基板を素子を作製する直前に1時間UV−オゾン処理し、真空蒸着装置内に設置して、装置内の真空度が5×10-4Pa以下になるまで排気した。抵抗加熱法によって、まず、正孔輸送材料として4,4’−ビス(N−(m−トリル)−N−フェニルアミノ)ビフェニルを150nm蒸着し、発光材料としてトリスキノリノールアルミニウム錯体を25nmの厚さに蒸着した。次に、電子輸送材料として、化合物〔15〕を50nmの厚さに積層した。ここで言う膜厚は水晶発振式膜厚モニター表示値である。
【0090】
次に、厚さ50μmのコバール板にウエットエッチングによって16本の250μmの開口部(残り幅50μm、300μmピッチに相当)を設けたマスクを、真空中でITOストライプに直交するようにマスク交換し、マスクとITO基板が密着するように裏面から磁石で固定した。そしてリチウムを0.5nm有機層にドーピングした後、アルミニウムを200nm蒸着して32×16ドットマトリクス素子を作製した。本発光素子をマトリクス駆動させたところ、クロストークなく文字表示できた。
【0091】
【発明の効果】
本発明によれば、発光輝度が高く、耐久性に優れた発光素子を可能にする発光素子用材料、および発光輝度が高く、耐久性に優れた発光素子を提供できるものである。
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