JP4254182B2 - 接着剤及びその利用 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、接着剤に関し、詳しくはプラスチックフィルムと金属板とを貼着し、積層するための接着剤に関し、さらに詳しくは印刷層の設けられたプラスチックフィルムと金属板とを印刷層を介して積層する際に用いられる接着剤に関する。
さらに、本発明は、上記接着剤の利用に関し、詳しくは印刷層の設けられたプラスチックフィルムの印刷層上に接着剤層を形成してなる接着剤層付きプラスチックフィルム、並びに該接着剤層付きプラスチックフィルムと金属板とを貼着し、積層してなるプラスチックフィルム被覆金属板に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から、食物や飲料(以下、飲料等という)を保存し収容する缶の内・外面は、それぞれ耐食性、装飾性等を付与する目的で各種の塗装や印刷が施されている。ところで、飲料等用の缶は、その形態から大きく3ピース缶と2ピース缶とに分類できる。3ピース缶は、円筒状の側面部、即ち缶胴部と、底部と蓋部とからなる。一方、2ピース缶は、一体化した缶胴部・底部、即ち有底缶胴部と、蓋部とからなる。
これら缶のうち3ピース缶の缶胴部は、一般に予め所定の大きさに切った金属板に、内面塗料及び外面下塗り塗料を塗布した後、外面側に印刷層を設け、該印刷層の上に外面仕上げ塗料を塗布した後、一缶毎の大きさの四辺形に切断し、次いでその四辺形の金属板を円筒状に丸め、端面を接着、溶接等することによって形成される。その後、円筒状の缶胴部の上端部及び下端部を縮める加工(ネックイン加工)が施される。
一方、これら缶のうち2ピース缶の一体化した缶胴部・底部は、一缶分の金属板を有底円筒状にした後、内面塗料及び外面下塗り塗料を塗布した後、外面側に印刷層を設け、該印刷層の上に外面仕上げ塗料を塗布し、形成される。
【0003】
近年、2ピース缶、3ピース缶いずれの場合も、金属に直に塗料を塗布したり、インキを印刷したりする上記の方法の他に、缶胴部の金属の内・外面をプラスチックフィルムで被覆する方法が提案されている。
例えば、2ピース缶の有底缶胴部は、外面被覆用のプラスチックフィルムの一方の面に印刷層を設け、該印刷層上に外面仕上げ塗料を塗布してなる金属外面被覆用プラスチックフィルムを得、金属板の一方の面に金属内面被覆用プラスチックフィルムを、金属板の他方の面に上記の金属外面被覆用プラスチックフィルムの印刷層を設けていない側(非印刷層側)をそれぞれ積層してなるプラスチックフィルム被覆金属板を得、該プラスチックフィルム被覆金属板を一缶分毎に打ち抜き、これを有底円筒状にしたり、
【0004】
または、金属板の一方の面に金属内面被覆用プラスチックフィルムを、金属板の他方の面に金属外面被覆用プラスチックフィルムをそれぞれ積層し、両面をプラスチックフィルムで被覆した金属板を得た後、該プラスチックフィルム被覆金属板を一缶分毎に打ち抜き、打ち抜いたものを有底円筒状にし、次いで円筒部の外面に、印刷層を設け、その印刷層の上に外面仕上げ塗料を塗布したりすることによって形成される。
【0005】
一方、3ピース缶の缶胴部は、外面被覆用のプラスチックフィルムの一方の面に仕上げ用塗料層を、外面被覆用のプラスチックフィルムの他方の面に印刷層を設け、該印刷層上に接着剤層を設けてなる金属外面被覆用の接着剤層付きプラスチックフィルムを得、金属板の一方の面に金属内面被覆用プラスチックフィルムを、金属板の他方の面に金属外面被覆用接着剤層付きプラスチックフィルムの接着剤層をそれぞれ積層してなるプラスチックフィルム被覆金属板を得、該プラスチックフィルム被覆金属板を一缶毎の大きさの四辺形に切断し、次いでその四辺形の金属板を円筒状に丸め、端面を接着、溶接等することによって形成される。
【0006】
このような分野に用られる接着剤として種々のものが提案されている。
例えば、ポリエステルとイソシアネート化合物とを含有する接着剤が特許文献1〜5に記載されている(特許文献1:特開平01−268777号公報、特許文献2:特開平06−31362号公報、特許文献3:特開平08−199147号公報、特許文献4:特開平09−208654号公報、特許文献5:特開平11−157006号公報等参照)。
【0007】
【特許文献1】
特開平01−268777号公報
【0008】
【特許文献2】
特開平06−313162号公報
【0009】
【特許文献3】
特開平08−199147号公報
【0010】
【特許文献4】
特開平09−208654号公報
【0011】
【特許文献5】
特開平11−157006号公報
【0012】
また、イソシアネート化合物のうちブロック化イソシアネート化合物をポリエステルと組み合わせてなる接着剤が特許文献6〜10に記載されている(特許文献6:特開平04−266984号公報、特許文献7:特開平05−070737号公報、特許文献8:特開平10−183095号公報、特許文献9:特開平11−199851号公報、特許文献10:特開平2000−0080181号公報等参照)。
【0013】
【特許文献6】
特開平04−266984号公報
【0014】
【特許文献7】
特開平05−070737号公報
【0015】
【特許文献8】
特開平10−183095号公報
【0016】
【特許文献9】
特開平11−199851号公報
【0017】
【特許文献10】
特開2000−008018号公報
【0018】
さらに、ウレタン変性ポリエステルとブロック化イソシアネート化合物とを含有する接着剤が特許文献11〜13に記載されている(特許文献11:特開平09−286968号公報、特許文献12:特開平11−293220号公報、特許文献13:特開2001−107015号公報等参照)。
【0019】
特許文献11(特開平09−286968号公報)及び特許文献12(特開平11−293220号公報)には、特定の構成成分から構成されるポリエステル樹脂を多価イソシアナート化合物および/またはエポキシ樹脂で変性してなる変性ポリエステル樹脂を含有する接着剤が記載されている(特許文献11の請求項3、特許文献12の請求項1)。そして、この変性ポリエステル樹脂(A)と反応し得る硬化剤(B)を配合する旨記載され(特許文献11の請求項1、特許文献12[0021])、その硬化剤(B)の一種として種々のイソシアネート化合物が開示されている(特許文献11[0020]、特許文献12[0023])。さらにブロック化イソシアネート化合物の利用も開示されている(特許文献11[0023]、特許文献12[0024])。
【0020】
特許文献13(特開2001−107015号公報)には、特定分子量の水酸基含有ポリエステル樹脂とポリイソシアネート化合物を特定割合で反応させてなる特定分子量のウレタン変性ポリエステル樹脂(A)とブロック化イソシアネート化合物(B)とを含有する接着剤が記載されている(請求項1)。
【0021】
【特許文献11】
特開平09−286968号公報
【0022】
【特許文献12】
特開平11−293220号公報
【0023】
【特許文献13】
特開2001−107015号公報
【0024】
3ピース缶の缶胴部形成に際し、金属板に金属外面被覆用接着剤層付きプラスチックフィルムを積層せしめる場合、まず金属板と金属外面被覆用接着剤層付きプラスチックフィルムとを重ね合わせつつ180〜210℃に加熱したロール間を通過させ熱圧着(以下、「熱圧着」ともいう)した後、180〜230℃で1〜数分間加熱し接着剤を十分に硬化させる必要がある(以下、係る工程を「加熱」、「硬化」、「熱硬化」ともいう)。
しかし、ポリエチレンテレフタレート(以下、PETともいう)に代表されるプラスチックフィルムは、積層時の上記のような温度条件において収縮してしまう。プラスチックフィルムが収縮すると、プラスチックフィルムと金属板との間に位置する印刷層及び接着剤が端部においてプラスチックフィルムの外にはみ出してしまうこととなる。一般に接着剤層は印刷層に比して厚いので、端部におけるはみ出しも印刷層に比して顕著になる。
接着剤が熱圧着時の温度条件で端部からはみ出してしまうと、圧着の際に使用するロールの表面に付着し、その結果ロール表面の付着物が積層中のプラスチックフィルム被覆金属板表面を汚してしまうこととなる。
【0025】
ところで、金属外面被覆用接着剤層付きプラスチックフィルムに使用される接着剤は、金属とプラスチックフィルムとを貼着する機能を担うばかりでなく、酸化チタン等の白色顔料を含有することにより貼着後金属地を隠蔽し、印刷層の美粧性を引き立てる機能をも担う。
熱圧着時及びその後の加熱時にプラスチックフィルムが収縮し、プラスチックフィルムの端部から接着剤がはみ出したり、はみ出した接着剤が積層中のプラスチックフィルム被覆金属板表面に付着すると、接着剤が白色顔料を含有しているが故に目立ち、積層物の外観を著しく損なうこととなる。
【0026】
係る課題に対し、特許文献14(特開2002−206079号公報)には、エポキシ樹脂を必須とする特定分子量のポリマー(A)と、解離温度の異なる2種類のブロック化イソシアネート化合物(B)とを含有する接着剤が記載されている。
【0027】
【特許文献14】
特開2002−206079号公報
【0028】
また、上記課題に対し、本発明者らは、イソシアネート基と反応し得る官能基を有する数平均分子量5000〜100000のポリマー(A)と、マロン酸ジメチル、及びマロン酸ジエチルからなる群より選ばれるブロック化剤でブロック化されてなるブロック化イソシアネート化合物と、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、アセチルアセトン、ジイソプロピルアミン、3,5−ジメチルピラゾール、1,2,4−トリアゾール、1,2−ピラゾール、及びメチルエチルケトンオキシムからなる群より選ばれるブロック化剤でブロック化されてなるブロック化イソシアネート化合物とを含有する接着剤を用いれば、プラスチックフィルムの端部からはみ出さないことを見出した(特許文献15:特願2001−115361号参照)。
【0029】
【特許文献15】
特願2001−115361号
【0030】
ところで、3ピース缶の缶胴部用の部材は、熱圧着後、接着剤を加熱硬化させる際に、プラスチックフィルム/接着剤層/金属/接着剤層/印刷層/プラスチックフィルムという構成のプラスチックフィルム被覆金属板は、ウイケット架台上に乗せられ加熱される。上記構成のプラスチックフィルム被覆金属板の印刷層の設けられていない側は、缶胴部内面を形成することとなる。内面側プラスチックフィルムを加熱時にウイケット架台上に接触させることは好ましくない。
従って、缶胴部外面側のプラスチックフィルム、即ち印刷層に隣接するプラスチックフィルムがウイケット架台上に接触することとなる。高温のウィケット架台に外面側のプラスチックフィルムが接触すると、その部分の接着剤が軟化、溶融し流動してしまう。接着剤の流動に伴い、プラスチックフィルムと接着剤の間に位置する印刷層も流動してしまうことがある。プラスチックフィルムを介してウィケット架台に接触していた部分の接着剤や印刷層が流動すると、絵柄や隠蔽層(接着剤層)が薄くなり、移動が著しい場合には「ヌケ」が生じ外面側のプラスチックフィルムを通して金属素地が見えてしまう。絵柄や隠蔽層(接着剤層)の薄くなった部分や「ヌケ」を「ウイケット圧痕」といい、外観を損なうという点で大きな問題である。
【0031】
特許文献15:特願2001−115361号に開示される接着剤は、はみ出しにくく、またレトルト後の加工部の密着性にも優れるものであった。
しかし、特許文献15:特願2001−115361号に開示される接着剤は、ウイケット圧痕が発生する傾向にあり、ウイケット圧痕が発生しない接着剤が求められた。
【0032】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、プラスチックフィルムと金属板とを貼着し、積層するための接着剤であって、貼着・積層時にプラスチックフィルムの端面からはみ出さない接着剤を提供すること、及び金属板との貼着・積層時に端部からはみ出したりしない接着剤層を印刷層の設けられたプラスチックフィルムの印刷層上に形成してなる接着剤層付きプラスチックフィルム、並びに該接着剤層付きプラスチックフィルムと金属板とを貼着・積層・加熱してもウイケット圧痕が発生しないプラスチックフィルム被覆金属板を提供することを目的とする。
【0033】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題に鑑み鋭意検討した結果、比較的高温で解離する特定のブロック化剤とこれよりは相対的にやや低温で解離する特定のブロック化剤でブロックされてなる2種類以上のブロック化イソシアネート化合物を接着剤に用いることにより、貼着・積層時のプラスチックフィルムの収縮を抑制し、ウィケット圧痕の発生も抑制し得ることを見出し、本発明を完成した。
即ち、第1の発明は、イソシアネート基と反応し得る官能基を有する数平均分子量5000〜100000のポリマー(A)と、メチルエチルケトンオキシムブロック化剤でブロック化されてなるブロック化イソシアネート化合物(b1)と、ピラゾール、3−メチルピラゾール、3,5−ジメチルピラゾール、1,2,4−トリアゾールからなる群より選ばれるブロック化剤でブロック化されてなるブロック化イソシアネート化合物(b2)とを含有することを特徴とする接着剤である。
【0034】
第2の発明は、ポリマー(A)100重量部に対して、ブロック化イソシアネート化合物(b1)及びブロック化イソシアネート化合物(b2)を合計で1〜40重量部含有することを特徴とする第1の発明請求に記載の接着剤である。
【0035】
第3の発明は、ブロック化イソシアネート化合物(b1)とブロック化イソシアネート化合物(b2)とが重量比で、(b1)/(b2)=90/10〜10/90であることを特徴とする第2の発明に記載の接着剤である。
【0036】
第4の発明は、白色顔料を含有することを特徴とする第1ないし第3の発明いずれか記載の接着剤である。
【0037】
第5の発明は、ポリマー(A)が、水酸基及び/又はアミノ基を有するポリウレタンであることを特徴とする第1ないし第4の発明いずれか記載の接着剤である。
【0038】
第6の発明は、ポリマー(A)が、水酸基を有するポリエステルであることを特徴とする第1ないし第4の発明いずれか記載の接着剤である。
【0039】
第7の発明は、印刷層を設けたプラスチックフィルム/金属板貼着用であることを特徴とする第1ないし第6の発明いずれか記載の接着剤である。
【0040】
第8の発明は、プラスチックフィルムの一方の面に印刷層が設けられ、該印刷層上に第1ないし第6の発明いずれか記載の接着剤を用いてなる接着剤層が設けられていることを特徴とする接着剤層付きプラスチックフィルムである。
【0041】
第9の発明は、プラスチックフィルムの非印刷層側にトップコート層が設けられていることを特徴とする第8の発明記載の接着剤層付きプラスチックフィルムである。
【0042】
第10の発明は、第8又は第9の発明記載の接着剤層付きプラスチックフィルムの接着剤層上に金属板が積層されていることを特徴とするプラスチックフィルム被覆金属板である。
【0043】
第11の発明は、第10の発明記載のプラスチックフィルム被覆金属板を用いてなる飲料用缶である。
【0044】
第12の発明は、プラスチックフィルムの一方の面に印刷層が設けられ、該印刷層上に接着剤層が設けられている接着剤層付きプラスチックフィルムであって、
前記印刷層が、水酸基及び/又はアミノ基を有するポリウレタンを含有する印刷インキから形成され、かつ
前記接着剤層が、水酸基を有する数平均分子量5000〜100000のポリエステルと、メチルエチルケトンオキシムブロック化剤でブロック化されてなるブロック化イソシアネート化合物(b1)と、ピラゾール、3−メチルピラゾール、3,5−ジメチルピラゾール、1,2,4−トリアゾールからなる群より選ばれるブロック化剤でブロック化されてなるブロック化イソシアネート化合物(b2)とを含有する接着剤から形成されることを特徴とする接着剤層付きプラスチックフィルムである。
【0045】
【発明の実施の形態】
本発明において用いるイソシアネート基と反応し得る官能基を有する数平均分子量5000〜100000のポリマー(A)について説明する。
イソシアネート基と反応し得る官能基としては、水酸基、アミノ基、カルボキシル基、メルカプト基等が挙げられる。また、数平均分子量(以下、Mnという)は、5000〜100000であることが重要であり、10000〜50000であることが好ましい。Mnが5000未満では、イソシアネート基と反応して得られる接着剤層の凝集力が低く、レトルト工程時に接着剤が熱水に犯され易くなり、Mnが100000を越えるとイソシアネート基と反応して得られる接着剤層の凝集力が高くなりすぎて金属板との接着性が低下することとなる。
本発明において用いるポリマー(A)は、上記のような官能基及びMnを有するものであれば、ポリエステル、ポリウレタン(ポリウレタンウレアを含む)、アクリル系(共)重合体等のいずれであってもよく、ポリエステル、ポリウレタンが好ましく、両者を併用することもできる。
【0046】
本発明において用い得るポリマー(A)のうちポリエステルは、常法に従い、得ることができる。例えば、反応槽中に多価アルコールと多塩基酸を仕込み、加熱、撹拌しながら180〜250℃にて反応することにより得られる。
多価アルコールの例としては、例えばエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ペンタンジオール、3−メチル−1,5ペンタンジオール、ヘキサンジオール、シクロヘキサンジオール、1,4−ブチンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ビスフェノールAのエチレンオキサド付加物、ビスフェノールAのプロピレンオキサド付加物などの飽和および不飽和の低分子グリコール類、n−ブチルグリシジルエーテル、2−エチルヘキシルグリシジルエーテル類のアルキルグリシジルエーテル類やバーサティック酸グリシジルエステル等のモノカルボン酸グリシジルエステル類である。
前記多塩基酸の例としては、例えばアジピン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、マレイン酸、フマル酸、こはく酸、しゅう酸、マロン酸、グルタル酸、ピメリン酸、スペリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ダイマー酸などの二塩基酸もしくはこれらの無水物が挙げられる。
更には、環状エステル化合物を開環重合せしめたりしてポリエステルポリオールを得ることもできる。
なお、金属板との接着性、耐レトルト性のよりフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸を使用したポリエルテルポリオールが好ましい。
【0047】
また、本発明において用いるポリマー(A)のうちポリウレタンも、常法に従い、得ることができる。例えば、
(1)ポリオールとポリイソシアネート化合物とを、水酸基過剰の条件下に反応せしめる、
(2)ポリオールとポリイソシアネート化合物とを、イソシアネート基過剰の条件下に反応せしめ、イソシアネート基を有するポリウレタンプレポリマーを得、次いで該ポリウレタンプレポリマーと、鎖伸長剤としてジアミン化合物又はジオール化合物とを反応せしめる、
(3)上記(2)の場合において、必要に応じて反応停止剤として単官能のアミン化合物又はアルコールを反応せしめる。
上記(2)(3)の場合において、鎖伸長剤としてのジアミン化合物とジオール化合物、反応停止剤としての単官能アミン化合物と単官能アルコールとをそれぞれ併用することもできるし、また鎖伸長剤としてのジアミン化合物と反応停止剤としての単官能アルコールとを組み合わせることも、鎖伸長剤としてのジオール化合物と反応停止剤としての単官能アミン化合物とを組み合わせることもできる。
【0048】
ポリマー(A)のうちポリウレタンを得る際に用いられるポリオールとしては、水酸基を2個以上有するものであればよく、比較的低分子量のジオールの他、一般にポリウレタンの合成に供される比較的高分子量のジオール成分等が用いられる。
低分子量ジオールとしては、例えばエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ペンタンジオール、3−メチル−1,5ペンタンジオール、ヘキサンジオール、1,4−ブチンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコールなどの飽和および不飽和の低分子グリコール類、
n−ブチルグリシジルエーテル、2−エチルヘキシルグリシジルエーテル類のアルキルグリシジルエーテル類等が挙げられる。
【0049】
また、高分子量ジオールとしては、例えば酸化エチレン、酸化プロピレン、テトラヒドロフランなどを重合または共重合してなるポリエーテルポリオール類;
バーサティック酸グリシジルエステル等のモノカルボン酸グリシジルエステル類と、アジピン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、マレイン酸、フマル酸、こはく酸、しゅう酸、マロン酸、グルタル酸、ピメリン酸、スペリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ダイマー酸などの二塩基酸もしくはこれらの無水物とを脱水縮合せしめて得られるポリエステルポリオール類;
環状エステル化合物を開環重合して得られるポリエステルポリオール類;
ビスフェノールAに酸化エチレンまたは酸化プロピレンを付加して得られるグリコール類;
その他ポリカーボネートポリオール類、ポリブタジエングリコール類等が挙げられる。
なお、高分子量ジオールのうち、グリコール類と二塩基酸とから得られるポリエステルポリオールを用いる場合は、グリコール類のうち5モル%までを以下の各種ポリオールに置換することが出来る。すなわち、たとえばグリセリン、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、1,2,6−ヘキサントリオール、1,2,4−ブタントリオール、ソルビトール、ペンタエスリトール等のポリオールに置換してもよい。
【0050】
ポリマー(A)のうちポリウレタンを得る際に用いられるポリイソシアネート化合物としては、芳香族、脂肪族または脂環族の各種公知の種々のジイソシアネート類や、3官能のイソシアネート類も必要に応じて使用することが出来る。
例えば、芳香族ジイソシアネートとしては、1,5−ナフチレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルジメチルメタンジイソシアネート、4,4’−ジベンジルイソシアネート、ジアルキルジフェニルメタンジイソシアネート、テトラアルキルジフェニルメタンジイソシアネート、1,3−フェニレンジイソシアネート、1,4−フェニレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート等が、
脂肪族ジイソシアネートとしては、ブタン−1,4−ジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネ−ト、イソプロピレンジイソシアネート、メチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、m−テトラメチルキシリレンジイソシアネート、ダイマー酸のカルボキシル基をイソシアネート基に転化したダイマージイソシアネート等が、
脂環族ジイソシアネートとしては、シクロヘキサン−1,4−ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン−4、4’−ジイソシアネート、1,3ービス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート等が挙げられる。
また、3官能イソシアネート類としては、上記ジイソシアネート類をトリメチロールプロパン等で3官能化したアダクト体、イソシアヌレート体、ビュレット体等が挙げられる。
【0051】
ポリマー(A)のうちポリウレタンを得る際に用いられる鎖伸長剤としては、各種公知のジアミン類およびグリコール類を使用できる。
ジアミン類としては、例えばエチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、トリエチレンテトラミン、ジエチレントリアミン、イソホロンジアミン、ジシクロヘキシルメタン-4,4'-ジアミン、2-ヒドロキシエチルエチレンジアミン、2-ヒドロキシエチルプロピレンジアミン、ジ-2- ヒドロキシエチルエチレンジアミン、ジ-2- ヒドロキシエチルプロピレンジアミン、2-ヒドロキシプロピルエチレンジアミン、ジ-2- ヒドロキシプロピルエチレンジアミン等の分子内に水酸基を有するジアミン類およびダイマー酸のカルボキシル基をアミノ基に転化したダイマージアミン等が代表例として挙げられる。
また、グリコール類としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ペンタンジオール、3-メチル-1,5- ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、オクタンジオール、1,4-ブチルジオール、ジプロピレングリコール等の飽和および不飽和の各種公知の低分子グリコール類およびダイマー酸のカルボキシル基を水酸基に転化したダイマージオール等が代表例として挙げられる。
【0052】
更には、ポリマー(A)のうちポリウレタンを得る際に反応停止剤を用いることもできる。かかる反応停止剤としては、例えば、ジ−n−ブチルアミン等のジアルキルアミン類、ジエタノールアミン等のアルカノールアミン類やエタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール類が挙げられる。
【0053】
本発明は上記したように解離温度の相対的に異なるブロック化剤でブロックされてなる2種類以上のブロック化イソシアネート化合物を用いることが大きな特徴である。
即ち、比較的高温、例えば140〜160℃程度で解離し得るメチルエチルケトンオキシムブロック化剤でブロック化されてなるブロック化イソシアネート化合物(b1)(以下、高温解離のブロック化イソシアネート化合物(b1)ともいう)と、上記高温解離ののブロック化イソシアネート化合物(b1)よりは低温、例えば110〜140℃程度で解離し得る、ピラゾール、3−メチルピラゾール、3,5−ジメチルピラゾール、1,2,4−トリアゾールからなる群より選ばれるブロック化剤でブロック化されてなるブロック化イソシアネート化合物(b2)(以下、中温解離のブロック化イソシアネート化合物(b2)ともいう)とを用いることによって、貼着・積層時のプラスチックフィルムの収縮、加熱時のウイケット圧痕を抑制し、厳しい加工での密着性を得ることができる。
【0054】
中温解離のブロック化イソシアネート化合物(b2)だけを用いると、貼着・積層時のプラスチックフィルムの収縮は抑制し得るので、接着剤層の端がプラスチックフィルムからはみ出すことはなく、加熱時のウイケット圧痕もないが、貼着・積層後プラスチックフィルム被覆金属板に高度な加工を加え更にレトルト処理を行うと、金属板と接着剤層との界面で剥離したり、接着剤層と印刷層との界面で剥離したり、印刷層とプラスチックフィルムとの界面で剥離したりする(以下、高度な加工を加えレトルト処理後の密着性を、レトルト後の加工密着性という)。
【0055】
また、上記中温解離のブロック化剤よりも更に解離温度の低いブロック化剤(例えばマロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル等)でブロック化したイソシアネート化合物を使用すると、積層時のプラスチックフィルムの収縮は抑制し得るので、接着剤層の端がプラスチックフィルムからはみ出すことはなくなるが、加熱時のウイケット圧痕の抑制効果は不充分となる。
【0056】
他方、高温解離のブロック化イソシアネート化合物(b1)だけを用いると、中温解離のブロック化イソシアネート化合物(b2)もしくは低温解離のブロック化イソシアネート化合物だけを用いる場合に比して加工密着性は向上するものの、貼着・積層時のプラスチックフィルムの収縮および加熱時のウイケット圧痕の抑制効果は小さくなってしまう。
【0057】
さらに、低温解離のブロック化イソシアネート化合物を高温解離のブロック化イソシアネート化合物(b1)もしくは中温解離のブロック化イソシアネート化合物(b2)と併用すると、貼着・積層時のプラスチックフィルムの収縮を抑制し、レトルト後の加工密着性も良好であるが、加熱時のウイケット圧痕が生じる。
【0058】
尚、ブロック化剤の解離温度はイソシアネート化合物種や解離用触媒の影響も受けるので、ブロック化剤のみによって解離温度を特定することは困難である。従って、上記した解離温度はおよその値である。
【0059】
高温解離ブロック化イソシアネート化合物(b1)及び中温解離ブロック化イソシアネート化合物(b2)は合計で、ポリマー(A)100重量部に対して1〜40重量部用いることが好ましく、10〜30重量部用いることが好ましい。1重量部未満だと加工密着性が悪くなり、また40重量部を越えると塗工面にタックが残り易くなり、印刷層を設けたプラスチックフィルムに塗工後巻き取った場合ブロッキングを起こし易くなり好ましくない。
また、高温解離ブロック化イソシアネート化合物(b1)と中温解離ブロック化イソシアネート化合物(b2)とは、重量比で(b1)/(b2)=90/10〜10/90の比で用いることが好ましい。
【0060】
イソシアネート化合物としては、ポリマー(A)のうちポリウレタンを得る際に用いることのできる芳香族、脂肪族または脂環族の各種公知の種々のポリイソシアネート類と同様のイソシアネート化合物を使用することが出来る。
【0061】
本発明で用いる高温解離のブロック化イソシアネート化合物(b1)は、メチルエチルケトンオキシムブロック化剤で上記種々のイソシアネート化合物をブロック化されてなるブロック化イソシアネート化合物であり、ヘキサメチレンジイソシアネート由来の3官能の化合物(アダクト体、イソシアヌレート体、ビュレット体)をメチルエチルケトンオキシムでそれぞれブロック化したものが好ましく、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体をメチルエチルケトンオキシムでブロック化したものがより好ましい。
【0062】
本発明で用いる中温解離のブロック化イソシアネート化合物(b2)は、ピラゾール、3−メチルピラゾール、3,5−ジメチルピラゾール、1,2,4−トリアゾールからなる群より選ばれるブロック化剤で上記種々のイソシアネート化合物をブロックしてなるものであり、3,5−ジメチルピラゾール、1,2,4−トリアゾールでブロック化されてなるものが好ましい。これらはさらに2種類以上を併用することもできる。
具体的には、ヘキサメチレンジイソシアネート由来の3官能の化合物(アダクト体、イソシアヌレート体、ビュレット体)を上記ブロック化剤でそれぞれブロック化したものが好ましく、イソシアヌレート体をブロック化したものがより好ましく、イソシアヌレート体を3,5−ジメチルピラゾール、1,2,4−トリアゾールでブロック化されてなるものが特に好ましい。
【0063】
また、本発明の接着剤は、その他必要に応じて多官能エポキシ樹脂、種々の顔料、有機溶剤、有機錫化合物、3級アミン等の硬化触媒、帯電防止剤、表面平滑剤、消泡剤、分散剤等の種々の添加剤を含有することができる。
多官能エポキシ樹脂としては、ビスフェノール型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂等が挙げられるが、金属との密着性向上、レトルト後の白化抑制、耐熱性などの点からクレゾールノボラック型エポキシ樹脂が好適である。
顔料としては、酸化チタン、硫酸バリウム、タルク、炭酸カルシウム、シリカ、炭酸マグネシウム、酸化アルミニウム等が挙げられ、貼着・積層後金属地を隠蔽しようとする場合には、白色で隠蔽性に優れる酸化チタンを含有するとこが好ましい。
有機溶剤としては、トルエン、キシレン、ソルベッソ、ノルマルヘキサン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、イソホロン、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールメチルエーテル、更には前記グリコールエーテルのアセテート類、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル等から溶解性、蒸発速度等を考慮して選択される。
【0064】
上記した本発明の接着剤は、基材又は被着体に塗布・乾燥後タックフリーの状態になることが重要であり、タックフリーの状態にした後、基材と被着体とを加熱・加圧下に貼着・積層することができる。
基材又は被着体としては、プラスチックフィルム、印刷層を設けたプラスチックフィルム、金属板等が挙げられ、プラスチックフィルムと金属板、プラスチックフィルムとプラスチックフィルム、プラスチックフィルムと印刷層を設けたプラスチックフィルム、印刷層を設けたプラスチックフィルムと印刷層を設けたプラスチックフィルム、印刷層を設けたプラスチックフィルムと金属板、金属板と金属板との貼着・積層等に適用でき、特にプラスチックフィルムと金属板とを印刷層を介して貼着・積層する際に好適に使用することができる。
【0065】
プラスチックフィルムと金属板とを印刷層を介して貼着・積層するには、
(1) 印刷層を設けたプラスチックフィルムの印刷層上に接着剤層を設け、接着剤層付きプラスチックフィルムを得、該接着剤層付きプラスチックフィルムの接着剤層と金属板とを接触せしめ、加熱・加圧し、接着剤層付きプラスチックフィルムと金属板とを貼着・積層することもできるし、
(2) 印刷層を設けたプラスチックフィルムの印刷層と、接着剤層を設けた接着剤層付き金属板の接着剤層とを接触せしめ、加熱・加圧し、印刷層付きプラスチックフィルムと接着剤層付き金属板とを貼着・積層することもできるが、前者が好ましい。
そこで、次に金属板との貼着・積層に供される接着剤層付きプラスチックフィルムについて説明する。
【0066】
本発明の接着剤層付きプラスチックフィルムは、プラスチックフィルムと、印刷層と、上述の接着剤から形成される接着剤層とがこの順序で積層されてなるものであり、プラスチックフィルムの印刷層とは接していない方の側、即ち非印刷層側にトップコート層が設けられていてもよい。プラスチックフィルムの一方の面にトップコート層を設け、次いで該プラスチックフィルムの背面、即ちトップコート層を設けていない側に印刷層を設け、次いで該印刷層の上に接着剤層を設けても良いし、プラスチックフィルムの一方の面に印刷層を設け、次いで該プラスチックフィルムの背面、即ち非印刷層側にトップコート層を設け、その後印刷層上に接着剤層を設けても良い。
【0067】
プラスチックフィルムとしては、ポリエステルフィルム、ポリオレフィンフィルム、ナイロンフィルム等が挙げられる。
ポリエステルフィルムとしては、ポリエチレンテレフタレート等が、またポリオレフィンフィルムとしては、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム等が挙げられ、飲料缶用としてはポリエステルフィルムが好ましく、特にポリエチレンテレフタレートが好ましい。
【0068】
印刷層は、プラスチックフィルムの一方の面にグラビア印刷、フレキソ印刷等にてインキを印刷・乾燥することにより得られる。
印刷に供される印刷インキとしては、種々のものが用いられるが、耐水性、耐ボイル・レトルト性等の観点から、ポリウレタンをバインダーとするインキが好ましい。
印刷インキに好適なポリウレタンは、ポリマー(A)のうちのポリウレタンと同様にして得ることができる。即ち、印刷インキに好適なポリウレタンは、ポリマー(A)の場合と同様に、常法に従い、得ることができる。例えば、
(1)ポリオールとポリイソシアネート化合物とを、水酸基過剰の条件下に反応せしめる、
(2)ポリオールとポリイソシアネート化合物とを、イソシアネート基過剰の条件下に反応せしめ、イソシアネート基を有するポリウレタンプレポリマーを得、次いで該ポリウレタンプレポリマーと、鎖伸長剤としてジアミン化合物又はジオール化合物とを反応せしめる、
(3)上記(2)の場合において、必要に応じて反応停止剤として単官能のアミン化合物又はアルコールを反応せしめる。
上記(2)(3)の場合において、鎖伸長剤としてのジアミン化合物とジオール化合物、反応停止剤としての単官能アミン化合物と単官能アルコールとをそれぞれ併用することもできるし、また鎖伸長剤としてのジアミン化合物と反応停止剤としての単官能アルコールとを組み合わせることも、鎖伸長剤としてのジオール化合物と反応停止剤としての単官能アミン化合物とを組み合わせることもできる。
使用し得るポリオール、ポリイソシアネート化合物等は、上記ポリマー(A)の場合と同様のものが例示できる。
【0069】
印刷層を設けたプラスチックフィルムを得た後、その印刷面側に上記した接着剤をスプレーコーティング、ロールコーティング、グラビアコーティング、リップコーティングなどにより塗布し、タックフリーになるように加熱乾燥し、接着剤層付きプラスチックフィルムを得る。加熱乾燥後の状態において接着剤層をタックフリーの状態にすることによって、接着剤層付きプラスチックフィルムを巻き取り保存等することができる。この接着剤層付きプラスチックフィルムは、飲料等用の缶の外面側に用いられる。
【0070】
得られた接着剤層付きプラスチックフィルムの接着剤層と金属板とを対向・接触せしめつつ、180〜210℃に加熱したロール間を通過させ熱圧着せしめた後、180〜230℃で1〜数分間加熱し、接着剤を十分に硬化させることにより、プラスチックフィルム被覆金属板を得ることができる。
プラスチックフィルム被覆金属板を得る場合、予め内面側がプラスチックフィルムで被覆された金属板を用いても良いし、外面用の接着剤層付きプラスチックフィルムと金属板とを貼着・積層するのと同時に金属板の他方の面に内面用の接着剤層付きプラスチックフィルムを貼着・積層しても良いし、あるいは金属板の一方の面に外面用の接着剤層付きプラスチックフィルムを貼着・積層した後、金属板の他方の面に内面用の接着剤層付きプラスチックフィルムを貼着・積層しても良い。
本発明のプラスチックフィルム被覆金属板に用いられる金属板の素材としては、例えば鉄、ブリキ、ステンレス鋼、チタン、銅、アルミニウム等が挙げられる。なお、これらの金属の表面には、あらかじめ表面処理が施されていてもよく、また各種プライマーが形成されていてもよい。
上記のようにして得た内・外面をプラスチックフィルムで被覆した金属板を用いて3ピ−ス缶の缶胴部を得ることができる。
【0071】
【実施例】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれら具体例のみに限定されるものではない。なお、例中[部]とあるのは[重量部]を示す。
[実施例1]
分水器、還流冷却器、精留塔、温度調節器、窒素導入管、撹拌装置、減圧装置を有する2リットル四口フラスコに、エチレングリコール138部(2.22モル)、ネオペンチルグリコール194部(1.86モル)、ジメチルテレフタレート361部(1.86モル)、酢酸亜鉛0.1部を仕込み、窒素気流下で撹拌しながら160〜220に加熱しエステル交換を4時間行い理論上のメタノールが95%留出したら、イソフタル酸を309部(1.86モル)仕込み徐々に240℃まで加熱、酸化が2以下になるまで反応させた。更にテトラブトキシチタンを0.01部仕込み、所定の粘度になるまで240℃で減圧反応を続け、数平均分子量17000、水酸基価6KOHmg/gの水酸基を有するポリエステル樹脂(a)を得た。
この樹脂100部をトルエン221部、メチルエチルケトン221部で溶解したのち、ヘキサメチレンジイソシアネート(以下HMDIという)の3官能イソシアヌレート体をメチルエチルケトンオキシムでブロック化したブロック化イソシアネート(固形分75%)17部、HMDIの3官能イソシアヌレート体を3,5−ジメチルピラゾールでブロック化したブロック化イソシアネート16部、酸化チタン175部およびジブチル錫ジラウレート0.88部をペイントコンディショナーで混合分散させ、不揮発分40%の接着剤(1)を調整した。
【0072】
[実施例2]
実験例1で合成したポリエステル樹脂(a)100部、メチルエチルケトン221部で溶解したのち、HMDIの3官能イソシアヌレート体をメチルエチルケトンオキシムでブロック化したブロック化イソシアネート(固形分75%)17部、HMDIの3官能イソシアヌレート体を1,2,4−トリアゾールでブロック化したブロック化イソシアネート16部、酸化チタン175部およびジブチル錫ジラウレート0.88部をペイントコンディショナーで混合分散させ、不揮発分40%の接着剤(2)を調整した。
【0073】
[実施例3]
実験例1で合成したポリエステル樹脂(a)100部、メチルエチルケトン221部で溶解したのち、HMDIの3官能イソシアヌレート体をメチルエチルケトンオキシムでブロック化したブロック化イソシアネート(固形分75%)17部、HMDIの3官能イソシアヌレート体を3,5−ジメチルピラゾールおよび1,2,4−トリアゾール(モル比で1:1)でブロック化したブロック化イソシアネート16部、酸化チタン175部およびジブチル錫ジラウレート0.88部をペイントコンディショナーで混合分散させ、不揮発分40%の接着剤(3)を調整した。
【0074】
[実施例4]
実施例1で合成したポリエステル樹脂(a)400部、トルエン372.4部を実施例1と同様の四口フラスコに仕込み、100℃まで昇温して溶解した。これにイソホロンジイソシアネート1部(イソシアネート当量、ポリエステル樹脂の水酸基当量に対して0.23当量)を添加し、100℃で10時間反応させた。IRによりイソシアネート基の吸収が消失したことを確認後冷却し、更にメチルエチルケトン372.4部を仕込み、数平均分子量25000、固形分35%の水酸基を有するポリウレタン樹脂ワニス(b)を得た。
得られたポリウレタン樹脂ワニス(b)286部、HMDIの3官能イソシアヌレート体をメチルエチルケトンオキシムでブロック化したブロック化イソシアネート(固形分75%)21部、HMDIの3官能イソシアヌレート体を3,5−ジメチルピラゾールでブロック化したブロック化イソシアネート(固形分75%)12部、トルエン128部、メトルエチルケトン127、酸化チタン175部およびジブチル錫ジラウレート0.88部をペイントコンディショナーで混合分散させ、不揮発分40%の接着剤(4)を調整した。
【0075】
[実施例5]
実施例1と同様の四口フラスコに、エチレングリコール123部(1.98モル)、ネオペンチルグリコール207部(1.99モル)、ジメチルテレフタレート337部(1.74モル)、酢酸亜鉛0.1部を仕込み、窒素気流下で撹拌しながら160〜220に加熱しエステル交換を4時間行い、理論上のメタノールが95%留出したらイソフタル酸288部(1.73モル)、セバシン酸45部(0.22モル)を仕込み、徐々に240℃まで加熱し反応させた。更にフラスコを徐々に5mmHgまで減圧し、酸価が2以下になるまで減圧反応を続け、数平均分子量3000、水酸基価35KOHmg/gの水酸基を有するポリエステル樹脂(c)を得た。
得られたポリエステル樹脂(c)300部、トルエン207部を実施例1と同様の四口フラスコに仕込み、100℃まで昇温して溶解した。これにイソホロンジイソシアネート33.3部(イソシアネート当量、ポリエステル樹脂の水酸基当量に対して1.6当量)を添加し100℃で10時間反応させ、イソシアネート基を有するウレタンプレポリマーを得た。更に別の四口フラスコにイソホロンジアミン7.87部、2−アミノエチルエタノールアミン0.6部、ジ−n−ブチルアミン1.8部、トルエン180部、イソプロパノール180部を仕込み、撹拌しながら前記ウレタンプレポリマー540部を添加し50℃にて3時間反応後メチルエチルケトン180部を添加し、数平均分子量19000,固形分30%、水酸基価およびアミノ基を有するポリウレタン樹脂ワニス(c)を得た。
得られたポリウレタン樹脂ワニス(c)333部、HMDIの3官能イソシアヌレート体をメチルエチルケトンオキシムでブロック化したブロック化イソシアネート(固形分75%)16部、HMDIの3官能イソシアヌレート体を3,5−ジメチルピラゾールでブロック化したブロック化イソシアネート(固形分75%)8部、酸化チタン165部、トルエン93部、メチルエチルケトン92部およびジブチル錫ジラウレート0.59部をペイントコンディショナーで混合分散させ、不揮発分40%の接着剤(5)を調整した。
【0076】
[比較例1]
実施例1で合成したポリエステル樹脂(a)100部をトルエン221部、メチルエチルケトン221部で溶解したのち、HMDIの3官能イソシアヌレート体をメチルエチルケトンオキシムでブロック化したブロック化イソシアネート(固形分75%)33部、酸化チタン175部およびジブチル錫ジラウレート0.88部をペイントコンディショナーで混合分散させ、不揮発分40%の接着剤(6)を調整した。
【0077】
[比較例2]
実施例1で合成したポリエステル樹脂(a)100部をトルエン221部、メチルエチルケトン221部で溶解したのち、HMDIの3官能イソシアヌレート体を3,5−ジメチルピラゾールでブロック化したブロック化イソシアネート(固形分75%)33部、酸化チタン175部およびジブチル錫ジラウレート0.88部をペイントコンディショナーで混合分散させ、不揮発分40%の接着剤(7)を調整した。
[比較例3]
実施例1で合成したポリエステル樹脂(a)100部をトルエン221部、メチルエチルケトン221部で溶解したのち、HMDIの3官能イソシアヌレート体をメチルエチルケトンオキシムでブロック化したブロック化イソシアネート(固形分75%)17部、HMDIの3官能イソシアヌレート体をマロン酸ジエチルでブロック化したブロック化イソシアネート16部、酸化チタン175部およびジブチル錫ジラウレート0.88部をペイントコンディショナーで混合分散させ、不揮発分40%の接着剤(7)を調整した。
【0078】
[プラスチックフィルム被膜金属板1の作成]
厚さ12μのコロナ処理PETフィルムに、ポリウレタンをバインダーとするグラビアインキ「NEWLPスーパーR39S藍」および「NEWLPスーパーR630白」(共に東洋インキ製造(株)製)をトルエン/メトルエチルケトン/イソプロパノール=40/40/20(重量比)の溶剤にて粘度を調整し、35μmグラビア版にてPETフィルム/藍/白の順でグラビア印刷を行った。
次いで、実施例および比較例で調整した接着剤を前記PETフィルム印刷物のインキ面に、バーコーターにて10g/m2になるように塗工、170℃で40秒間乾燥後、縦200mm、横100mmの大きさに切り、ロール温度200℃、ロール圧力5Kg/cm2、ラミネート速度1m/分の条件でスズメッキ鋼板と熱圧着した後、210℃の雰囲気中で2分間加熱処理を行い、プラスチックフィルム被膜金属板を得た。得られたプラスチックフィルム被膜金属板について、以下の評価をし、結果を表1に示す。
【0079】
<接着剤のはみ出し性>:加熱処理したプラスチックフィルム被膜金属板のフィルム端部(縦方向)にはみ出している接着剤の量を、拡大鏡にて長さを測定した。なお、はみ出した接着剤の量として0.1mm以下を良好レベルとした。
【0080】
<耐レトルト性(加工密着性)>:加熱処理したプラスチックフィルム被膜金属板を深絞り加工機を用いて直径30mm、絞り高さ12mmのキャップ状に加工を行い、加圧レトルト装置により125℃で30分間レトルト処理を行い、レトルト後の接着性を評価した。評価基準は次の5段階評価とした。
5点:フィルムの剥離は見られない。
4点:フィルム剥離は見られないが、ごく僅かに気泡が見られる。
3点:僅かにフィルム剥離が見られる。
2点:加工面積の50%程度にフィルム剥離が見られる。
1点:全面にフィルム剥離が見られる。
【0081】
[プラスチックフィルム被膜金属板2の作成]<耐ウイケット圧痕性>
上記プラスチックフィルム被膜金属板1の場合と同様にして、PETフィルム印刷物とスズメッキ鋼板とを接着剤層を介して熱圧着し、スズメッキ鋼板/接着剤層/印刷層/プラスチックフィルムからなる積層体を得た。直径8mmのステンレス棒を5cmの間隔に2本置き、該ステンレス棒に上記積層体のプラスチックフィルムを接触させ、500g荷重をかけた状態で200℃−2分加熱硬化後、プラスチックフィルム側からステンレス棒の圧痕の有無を目視評価した。
評価基準は5段階評価とした。
5点:ステンレス棒の圧痕は認められない。
4点:ステンレス棒を置いた部分の接着剤層及び印刷層がやや薄くなっている。
3点:ステンレス棒を置いた部分の接着剤層及び印刷層が薄くなってはいるが、その部分のプラスチックフィルムを通してスズメッキ鋼板素地は見えない。
2点:ステンレス棒を置いた部分の接着剤層及び印刷層がかなり薄くなり、その部分のプラスチックフィルムを通してスズメッキ鋼板素地がやや見える。
1点:ステンレス棒を置いた部分の接着剤層及び印刷層がほとんどなくなり、その部分のプラスチックフィルムを通してスズメッキ鋼板素地がはっきりと見える。
【0082】
【表1】
Figure 0004254182
【0083】
【発明の効果】
本発明によれば、金属板とプラスチックフィルムと印刷インキ、とりわけ金属板とPETフィルムと印刷インキとの接着性に優れるため、接着剤のはみ出しが少なく、ウイケット圧痕が少なく、耐レトルト性の良好なプラスチック被膜金属板を製造することができ、缶蓋、缶内外面などの缶用途に好適に使用することができる。

Claims (12)

  1. イソシアネート基と反応し得る官能基を有する数平均分子量5000〜100000のポリマー(A)と、メチルエチルケトンオキシムブロック化剤でブロック化されてなるブロック化イソシアネート化合物(b1)と、ピラゾール、3−メチルピラゾール、3,5−ジメチルピラゾール、1,2,4−トリアゾールからなる群より選ばれるブロック化剤でブロック化されてなるブロック化イソシアネート化合物(b2)とを含有することを特徴とする接着剤。
  2. ポリマー(A)100重量部に対して、ブロック化イソシアネート化合物(b1)及びブロック化イソシアネート化合物(b2)を合計で1〜40重量部含有することを特徴とする請求項1記載の接着剤。
  3. ブロック化イソシアネート化合物(b1)とブロック化イソシアネート化合物(b2)とが重量比で、(b1)/(b2)= 10/90〜90/10であることを特徴とする請求項2記載の接着剤。
  4. 白色顔料を含有することを特徴とする請求項1ないし3いずれか記載の接着剤。
  5. ポリマー(A)が、水酸基及び/又はアミノ基を有するポリウレタンであることを特徴とする請求項1ないし4いずれか記載の接着剤。
  6. ポリマー(A)が、水酸基を有するポリエステルであることを特徴とする請求項1ないし4いずれか記載の接着剤。
  7. 印刷層を設けたプラスチックフィルム/金属板貼着用であることを特徴とする請求項1ないし6いずれか記載の接着剤。
  8. プラスチックフィルムの一方の面に印刷層が設けられ、該印刷層上に請求項1ないし6いずれか記載の接着剤を用いてなる接着剤層が設けられていることを特徴とする接着剤層付きプラスチックフィルム。
  9. プラスチックフィルムの非印刷層側にトップコート層が設けられていることを特徴とする請求項8記載の接着剤層付きプラスチックフィルム。
  10. 請求項8又は9記載の接着剤層付きプラスチックフィルムの接着剤層上に金属板が積層されていることを特徴とするプラスチックフィルム被覆金属板。
  11. 請求項10記載のプラスチックフィルム被覆金属板を用いてなる飲料用缶。
  12. プラスチックフィルムの一方の面に印刷層が設けられ、該印刷層上に接着剤層が設けられている接着剤層付きプラスチックフィルムであって、
    前記印刷層が、水酸基及び/又はアミノ基を有するポリウレタンを含有する印刷インキから形成され、かつ
    前記接着剤層が、水酸基を有する数平均分子量5000〜100000のポリエステルと、メチルエチルケトンオキシムブロック化剤でブロック化されてなるブロック化イソシアネート化合物(b1)と、ピラゾール、3−メチルピラゾール、3,5−ジメチルピラゾール、1,2,4−トリアゾールからなる群より選ばれるブロック化剤でブロック化されてなるブロック化イソシアネート化合物(b2)とを含有する接着剤から形成されることを特徴とする接着剤層付きプラスチックフィルム。
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