JP4248119B2 - アルカリ蓄電池 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、アルカリ蓄電池に関する。
【0002】
【従来の技術】
アルカリ蓄電池は、外装缶に、ニッケル正極と、水酸化カドミウムあるいは水素吸蔵合金を活物質とする負極とをセパレータを介して巻回または積層した電極群が収納され、電極体にアルカリ電解液が含浸され、外装缶の開口部が封口蓋で封口されて構成されている。そして、外装缶と封口蓋との間には、この部分をシールするためにガスケットが介挿されているが、このガスケットは一般的にナイロン製のものが用いられている。
【0003】
このようなアルカリ蓄電池は、蓄電池の中でも優れた充放電特性を有し密閉化が可能であるため、種々の機器に用いられている。
このアルカリ蓄電池において、従来より高容量化及び長寿命化といった性能向上が要求されており、その要求に応えるための研究開発がなされている。
ところで、近年、電池の使用環境が多岐に亘るのに伴って、アルカリ蓄電池においても、低温域から高温域に亘る幅広い温度域で使用できる特性も要求されている。
【0004】
アルカリ蓄電池の高温特性を向上させる技術として、例えば、電解液中にLiを添加することによって、高温においても高い電池容量が得られることが知られている(特開平11−219721号公報)。
その他にもアルカリ蓄電池の高温域での特性を改善すための手法は、下記のようにいろいろと知られている。
【0005】
▲1▼高温での充電効率の低下を抑制するため、正極活物質である水酸化ニッケルにCoを固溶させる。
▲2▼正極板において主体をなす水酸化ニッケルに、水酸化コバルト及び水酸化イットリウムを混在させる(Yは0.5〜3%)ことによって、高温においても電池容量が高く充放電サイクル特性の優れたものを提供する(特開平11−73957号公報)。
【0006】
▲3▼水酸化ニッケル活物質の結晶が集合した粒子において、Mg,Ca,Srなどと、Co,Mnとを固溶した表層部を設けることによって高温における充電効率が高いものを提供する(特開平10−125318号公報)。
▲4▼ニッケル活物質の内部にAl,Vなどを含有させ、表面にCa,Tiなどの層を設けることによって、高温における充電特性を改善する(特開平10−149821号公報)。
【0007】
▲5▼水酸化ニッケル粒子をNiおよびYベースの水酸化物からなる層で被覆することによって高温での活物質の効率を向上させる(特開平10−255790号公報)
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、低温から高温まで安定して使用できるアルカリ蓄電池は未だ実現されていない。例えば、上記▲1▼〜▲5▼の技術を用いたアルカリ蓄電池は、常温における特性や高温特性には優れるが、−40℃程度の低温において十分な放電容量が得られるとは言えない。
【0009】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであって、広い温度範囲で安定して優れた充放電特性を示すアルカリ蓄電池を提供することを目的としている。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明のアルカリ蓄電池においては、ニッケル正極は、ニッケル焼結基板に化学含浸法によって充填された水酸化ニッケル層の表面上に化学含浸法によって充填されたイットリウムの化合物からなる表面層、もしくは、水酸化ニッケル層の表面上に化学含浸法によってイットリウムの化合物が固溶した水酸化ニッケル層を形成し、更に、アルカリ電解液におけるアルカリ濃度を10〜11mol/Lに規定した。
【0011】
上記のアルカリ蓄電池によれば、ニッケル焼結基板に化学含浸法によって充填された水酸化ニッケル層の表面上に化学含浸法によって充填されたイットリウムの化合物からなる表面層、もしくは、水酸化ニッケル層の表面上に化学含浸法によってイットリウムの化合物が固溶した水酸化ニッケル層を形成することによって、高温における酸素過電圧が増大するので、酸素ガスの発生が抑制されて、優先的に充電反応を起こすことができる。よって、高温における充電特性が優れたものとなる。
【0012】
また、従来のアルカリ蓄電池においては、アルカリ電解液のアルカリ濃度が9mol/L以下の適当な範囲で設定されていたのに対して、本発明のアルカリ蓄電池では、上記のようにアルカリ電解液のアルカリ濃度が10mol/L以上と高濃度に規定されている。高濃度のアルカリ電解液は、凝固点は低いので、−40℃程度の低温下でも安定して作動し、放電容量も確保される。
【0013】
アルカリ電解液の濃度の上限については、低温でアルカリが析出しないような範囲内であればよいと考えられるが、アルカリ濃度をあまり高く設定しすぎると作動電圧が低くなることもあるので、それらの点も考慮して設定するのがよい。実験的には、アルカリ濃度を10〜11mol/Lの範囲に設定することによって、低温から高温の広い範囲で安定して作動する電池が得られることを確認している。
【0014】
アルカリ電解液の電解質としては、水酸化セシウム,水酸化ルビジウム,水酸化カリウム,水酸化ナトリウムを単独もしくは混合して用いることが望ましい。これは、水酸化リチウムのようなアルカリは水に対する溶解度が小さいため、水酸化リチウムを用いてアルカリ濃度を高く設定すると水酸化リチウムが析出するが、上記のアルカリは水に対する溶解度が大きいので、アルカリ濃度を高く設定してもアルカリが析出しにくいからである。
【0015】
このようなアルカリ電池においてセパレータ材料を2枚以上積層させてセパレータを構成することによって、内部短絡を低減することができる。特に、負極にカドミウムを用いたニッケル−カドミウム蓄電池においては、高温で運転するとカドミウムのデンドライトが成長して内部短絡が発生しやすいので、上記のようにセパレータ材料を2枚以上積層させてセパレータを構成することは、長期にわたって電池性能を維持するのに有効である。
【0016】
【発明の実施の形態】
図1は、本発明の一実施形態に係るアルカリ蓄電池の構成を示す図である。
このアルカリ蓄電池は、焼結式ニッケル正極1と負極2とがセパレータ3を介して渦巻状に巻かれてなる電極群4と、アルカリ電解液(図示しない)と、これらを収容する円筒状の外装缶6等から構成されている。そして負極2は、負極集電体5により外装缶6の底辺部に電気的に接続されている。
【0017】
外装缶6上端の円形の開口部には、ガスケット11を介在させて、封口蓋12が配設され、この封口蓋12に正極端子13が装着されている。
この封口蓋12の中央部には、弁板8,おさえ板9,コイルスプリング10からなる弁が形成され、電池内圧が上昇したときに押圧されて、内部のガスが大気中に放出されるようになっている。
【0018】
また、正極端子13とニッケル正極1とは、正極集電体7及び封口蓋12を介して電気的に接続されている。ニッケル正極1は、ニッケル焼結基板に、化学含浸法によって所定量の水酸化ニッケルが充填され、このように充填された水酸化ニッケル層に、Yが添加されたものである。
【0019】
多孔質焼結基板の多孔度は80〜85%程度、厚みは0.5〜1.0mm程度である。水酸化ニッケル層にこのような元素化合物を添加する形態としては、水酸化ニッケル層に、Yの化合物を固溶させてもよいが、水酸化ニッケル層の表面上に、Yの化合物からなる表面層を形成したり、水酸化ニッケル層の表面上に、Yの化合物が固溶した水酸化ニッケル表面層を形成することが、高温における酸素過電圧を増大させる上で好ましい。
【0020】
水酸化ニッケルに対する上記元素化合物の添加比率は、水酸化ニッケル層に固溶させる場合は金属モル比率で1%以上とし、水酸化ニッケル層上に表面層として形成する場合は金属モル比率で0.3〜5%とするのが適当である。
このようなニッケル正極1は、例えば次のような工程を通して作製することができる。
【0021】
A:水酸化ニッケル層上にイットリウム化合物の表面層を形成する場合:
(1)工程:ニッケル焼結基板を、硝酸ニッケルを主成分とする溶液に浸漬し、アルカリ処理するという工程を繰り返すことによって、ニッケル焼結基板に所定量の水酸化ニッケルを充填する。
(2)工程:水酸化ニッケルを充填したニッケル焼結基板を、硝酸イットリウム溶液に浸漬し、乾燥した後、アルカリ水溶液に浸漬する。
【0022】
B:水酸化ニッケル層上に、イットリウム化合物が固溶した水酸化ニッケルの表面層を形成する場合:
上記Aと同様であるが、(2)工程において、水酸化ニッケルを充填したニッケル焼結基板を、硝酸イットリウムを含む硝酸ニッケル溶液に浸漬する。
C:水酸化ニッケル層にイットリウム化合物を固溶させる場合:
ニッケル焼結基板を、硝酸ニッケルを主成分とし、硝酸イットリウムを混合した溶液に浸漬し、アルカリ処理するという工程を繰り返すことによって、ニッケル焼結基板に水酸化イットリウムが固溶した水酸化ニッケルを充填する。
【0023】
負極2は、ここでは、ニッケル焼結基板に、化学含浸法によって所定量のカドミウム活物質(水酸化カドミウム)を充填した焼結式カドミウム負極を用いることとするが、非焼結式カドミウム負極及び水素吸蔵合金電極を用いてもよい。焼結式カドミウム負極は、ニッケル焼結極板に硝酸ニッケルを含浸した後アルカリ処理を行って水酸化カドミウムを生成するという工程を数回繰り返すことによって作製することができる。
【0024】
セパレータ3としては、市販のPP製セパレータ材を帯状に切断したものを用いる。
ここで、セパレータ3として、帯状に切断したセパレータ材を2枚以上重ね合わせたものを用いることが、電池の内部短絡を防止する上で好ましい(図1では2枚のセパレータ材3a,3bを重ね合わせてセパレータ3が形成されている)。
【0025】
例えば、ニッケル−カドミウム蓄電池の場合、充放電を繰り返すと、カドミウム負極において水酸化カドミウムのデンドライトが成長し、このデンドライトがセパレータを突き破ることによって内部短絡が発生することがある。特に高温で使用する場合には、水酸化カドミウムのデンドライトが成長しやすいため内部短絡は発生しやすい。
【0026】
しかし、上記のようにセパレータ材が2枚以上重ねられていると、デンドライトが1枚目のセパレータ材を貫通しても、2枚目以降を貫通しなければ内部短絡が生じないので、内部短絡は生じにくい。
従って、例えば、厚さ0.4mmのセパレータ材を1枚用いるよりも、厚さ0.2mmのセパレータ材を2枚重ねて用いる方が、デンドライトがセパレータを貫通して内部短絡が生じる頻度は少なくなる。
【0027】
ガスケット11としては、従来から用いられているナイロン製のものを用いてもよいが、ポリサルフォン製のものを用いれば、ポリサルフォンは耐熱性に優れるので高温下でも長期にわたってシール性能を維持できる。従って、高温環境下で長期にわたって電池性能を維持させるのに有利である。
アルカリ電解液の電解質としては、水酸化セシウム,水酸化ルビジウム,水酸化カリウム,水酸化ナトリウムを、単独もしくは混合して用いることが好ましい。
【0028】
また、従来のアルカリ蓄電池においては、アルカリ電解液のアルカリ濃度は一般的に9mol/L以下に設定されていたのに対して、本実施形態においては、アルカリ濃度を10〜11mol/Lと高い濃度に設定する。
従来のように、アルカリ電解液のアルカリ濃度が9mol/L以下の場合は、−40℃程度の低温下ではアルカリ電解液が凍結するため電池が作動しないが、アルカリ濃度が10mol/L以上にすることによって、−40℃程度の低温下でもアルカリ電解液が凍結することなく電池が作動する。
【0029】
また、アルカリの中でも水酸化リチウムは水に対する溶解性が低いのでアルカリ濃度を10mol/L以上と高濃度にすることは困難であるが、水酸化セシウム,水酸化ルビジウム,水酸化カリウム,水酸化ナトリウムは水に対する溶解性が比較的高いので、10mol/L以上と高濃度にすることが容易である。
なお、常温において高い電池作動電圧を得るには、アルカリ濃度は低めに設定する方が有利ではあって、その点では、従来のようにアルカリ濃度を9mol/L以下に設定するのが有利ではあるが、本実施形態のようにアルカリ濃度が10mol/L〜11mol/Lの範囲にあるならば、電池作動電圧においても実用上問題ないことを確認している。
【0030】
【実施例】
(実施例1,比較例1)
上記実施の形態に基づいて、以下の仕様で、SCサイズの電池A1,A2,A3,A4(公称容量1200mAh)を作製した。なお、電池A1,A2,A3,A4の中で、電池A1,A2は比較例、電池A3,A4は実施例である。
【0031】
ニッケル正極作製に際して、上記Aの方法を用い、(2)工程では、水酸化ニッケルを充填したニッケル焼結基板を、0.5mol/Lの硝酸イットリウム溶液(pH5)に30分間浸漬し、乾燥した後、8mol/Lのアルカリ水溶液に浸漬した。
セパレータは、50g/m2のセパレータ材を2枚重ねて用いた。
【0032】
アルカリ電解液の電解質としてKOHを用い、アルカリ電解液の濃度は、電池A1では8mol/L、電池A2では9mol/L、電池A3では10mol/L、電池A4では11mol/Lに設定した。
(実施例2,比較例2)
上記実施の形態に基づいて、以下の仕様で、SCサイズの電池B1,B2,B3,B4(公称容量1200mAh)を作製した。なお、電池B1,B2,B3,B4の中で、電池B1,B2は比較例、電池B3,B4は実施例である。
【0033】
ニッケル正極作製に際して、上記Bの方法を用い、(2)工程では、水酸化ニッケルを充填したニッケル焼結基板を、硝酸ニッケル・硝酸イットリウム混合溶液(ニッケルとイットリウムのモル比率は80:20で、全体の濃度は0.5mol/L、溶液のpHは5)に30分間浸漬し、乾燥した後、8mol/Lのアルカリ水溶液に浸漬した。
【0034】
セパレータは、目付け50g/m2のセパレータ材を2枚重ねて用いた。
アルカリ電解液の電解質としてKOHを用い、アルカリ電解液の濃度は、電池B1では8mol/L、電池B2では9mol/L、電池B3では10mol/L、電池B4では11mol/Lに設定した。
(実施例3,比較例3)
上記実施の形態に基づいて、以下の仕様で、SCサイズの電池C1,C2,C3,C4(公称容量1200mAh)を作製した。なお、電池C1,C2,C3,C4の中で、電池C1,C2は比較例、電池C3,C4は実施例である。
【0035】
ニッケル正極作製に際して、上記Cの方法を用い、水酸化ニッケルを充填したニッケル焼結基板を、硝酸ニッケル・硝酸イットリウム混合溶液(ニッケルとイットリウムのモル比率は100:1)に浸漬し、乾燥した後アルカリ水溶液に浸漬するという工程を繰り返す。
セパレータは、50g/m2のセパレータ材を2枚重ねて用いた。
【0036】
アルカリ電解液の電解質としてKOHを用い、アルカリ電解液の濃度は、電池C1では8mol/L、電池C2では9mol/L、電池C3では10mol/L、電池C4では11mol/Lに設定した。
(比較例4)
上記実施例1,比較例1において、ニッケル正極作製に際して、(2)を行わない以外は同様にして、電池D1,D2,D3,D4を作製した。
【0037】
この電池D1,D2,D3,D4は、ニッケル正極にイットリウム化合物が添加されていない点を除いて、電池A1,A2,A3,A4と同様の構成である。
(比較例5)
アルカリ電解液として、7mol/LのKOH、1mol/LのNaOH、1mol/LのLiOHを含む水溶液を用いる以外は上記比較例4と同様にして、電池Eを作製した。
【0038】
この電池Eは、ニッケル正極にイットリウム化合物が添加されておらず、アルカリ電解液には、LiOHが含まれ、アルカリ濃度は9mol/Lである。
<実験>
このように作製した電池A1〜A4,B1〜B4,C1〜C4,D1〜D4,Eを用いて、以下のように電池の高温充電効率試験及び低温放電効率試験を行った。
【0039】
高温充電効率試験:
各電池について、25℃充電時の放電容量と60℃充電時の放電容量とを測定し、放電容量比=60℃充電時の放電容量/25℃充電時の放電容量を算出し、これを高温充電効率とした。
25℃充電時の放電容量は、25℃において0.1Cの電流で16時間充電した後、25℃において1Cの電流で0.8Vになるまで放電したときの放電容量測定値である。
【0040】
60℃充電時の放電容量は、60℃において0.1Cの電流で16時間充電した後、25℃において1Cの電流で0.8Vになるまで放電したときの放電容量測定値である。
低温放電効率試験:
各電池について、25℃充電時の放電容量と−40℃充電時の放電容量とを測定し、放電容量比=−40℃充電時の放電容量/25℃充電時の放電容量を算出し、これを低温放電効率とした。
【0041】
25℃充電時の放電容量は、25℃において0.1Cの電流で1週間充電した後、25℃において1Cの電流で放電したときの放電容量測定値である。
−40℃充電時の放電容量は、25℃において0.1Cの電流で1週間充電した後、−40℃において1Cの電流で放電したときの放電容量測定値である。
図2は高温充電効率試験の結果であって、アルカリ電解液のアルカリ濃度と高温充電効率との関係を示した特性図である。また、図3は低温放電効率試験の結果であって、アルカリ電解液のアルカリ濃度と低温放電効率との関係を示した特性図である。
【0042】
<実験結果の考察>
図2から、ニッケル正極にイットリウム化合物を添加した電池A1〜A4,B1〜B4,C1〜C4は、ニッケル正極にイットリウム化合物を添加していない電池D1〜D4,Eと比べて、高温充電効率が高いことが明らかである。
また、電池A1〜A4,B1〜B4,C1〜C4の中でも、水酸化ニッケルにイットリウム化合物を固溶添加した電池C1〜C4と比べて、水酸化ニッケル層の表面にイットリウム化合物を含む層を形成した電池A1〜A4の方が、高温充電効率が高い値を示していることもわかる。
【0043】
また、図2から、ニッケル正極にイットリウム化合物を添加し且つアルカリ電解液のアルカリ濃度が9mol/L以上の電池電池A2〜A4,B2〜B4,C2〜C4は、ニッケル正極にイットリウム化合物を添加せずアルカリ電解液に水酸化リチウムを加えた電池Eと比べて、高温充電効率が良好であることもわかる。
図3から、アルカリ電解液の電解質として水酸化カリウムを用いた電池A1〜A4,B1〜B4,C1〜C4,D1〜D4においては、アルカリ電解液のアルカリ濃度が10mol/L以上の範囲で低温放電効率65%以上と良好であるのに対して、9mol/L以下の範囲では低温放電効率がかなり低いことがわかる。
【0044】
アルカリ電解液のアルカリ濃度が9mol/L以下の範囲で低温放電効率が低いのは、低温下でアルカリ電解液が凍結したことによるものと考えられる。
また、電池A2,B2,C2,D2と電池Eは、アルカリ電解液のアルカリ濃度は同じ9mol/Lであるが、電池Eの低温放電効率はかなり低いことがわかる。これは、電池Eにおいて、アルカリ電解液に含まれている水酸化リチウムが低温下で析出または電池の初期の充放電サイクルあるいは高温放電時において正極活物質に侵入固溶及び/あるいは化学吸着により固定化されたことによる電解液濃度の低下によるものと考えられる。
【0045】
(変形例などについて)
上記実験では、ニッケル正極にイットリウム化合物を添加し、アルカリ電解液の電解質がKOHの場合において、アルカリ濃度が10〜11mol/Lの範囲内で低温〜高温の範囲で優れた電池特性が得られることを確認したが、アルカリ電解液のアルカリ電解質が、NaOH,KOH,RbOH,CsOH並びにこれらの混合物の場合においても、アルカリ濃度が10〜11mol/Lの範囲内で低温〜高温において優れた電池特性が得られることは別途実験で確認している。
【0047】
上記実施の形態では、円筒形のアルカリ蓄電池を例にとって説明したが、本発明は、電池の形状に限定されず、角形アルカリ蓄電池やボタン型アルカリ蓄電池などにも適用することができる。
【0050】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明は、アルカリ蓄電池において、ニッケル焼結基板に化学含浸法によって充填された水酸化ニッケル層の表面上に化学含浸法によって充填されたイットリウムの化合物からなる表面層、もしくは、水酸化ニッケル層の表面上に化学含浸法によってイットリウムの化合物が固溶した水酸化ニッケル層を形成し、更に、アルカリ電解液におけるアルカリ濃度を10〜11mol/Lに規定することによって、高温における充電特性並びに低温における放電特性が共に優れたものを得ることができる。
【0051】
そして、本発明によれば、広い温度範囲で安定した放電特性を示すアルカリ蓄電池を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態にかかるアルカリ蓄電池の構成を示す図である。
【図2】高温充電効率試験の結果を示す特性図である。
【図3】低温放電効率試験の結果を示す特性図である。
【符号の説明】
1 ニッケル正極
2 負極
3 セパレータ
3a,3b セパレータ材
4 電極群
6 外装缶
12 封口蓋

Claims (3)

  1. ニッケル正極及び負極がセパレータを介して巻回または積層されてなる電極体と、アルカリ電解液とが、電池ケースに収納されてなるアルカリ蓄電池において、
    前記ニッケル正極は、ニッケル焼結基板に化学含浸法によって充填された水酸化ニッケル層の表面上に化学含浸法によって充填されたイットリウムの化合物からなる表面層、もしくは、水酸化ニッケル層の表面上に化学含浸法によってイットリウムの化合物が固溶した水酸化ニッケル層を形成しており、
    且つ、前記アルカリ電解液は、
    アルカリ濃度が10〜11mol/Lであることを特徴とするアルカリ蓄電池。
  2. 前記アルカリ電解液は、
    水酸化セシウム,水酸化ルビジウム,水酸化カリウム及び水酸化ナトリウムから選択される1種類以上を、電解質として用いていることを特徴とする請求項1記載のアルカリ蓄電池。
  3. 前記セパレータは、
    セパレータ材料が2枚以上積層されて構成されていることを特徴とする請求項1または2記載のアルカリ蓄電池。
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