JP4240733B2 - 薄型ディスプレイパネルの隔壁用組成物 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
薄型ディスプレイパネルの放電表示セル等を構成する隔壁の成型もしくは欠損部の補修などに用いられる隔壁用組成物に関し、特に、エネルギー線硬化樹脂組成物を基に硬化性を向上させた隔壁用組成物、及び、かかる組成物を用いた隔壁の製法に関する。
【0002】
【従来の技術】
薄型ディスプレイ(特に大型)は次世代ディスプレイパネルとして研究開発が盛んであるが、現時点では爆発的な普及に至っていない。一番の原因は画面の解像度等の品質面もさることながら、価格が高いことが原因であり、特に一般ユーザー向けには大幅な価格低減が必要である。
上記ディスプレイが高額である原因の一つには、ディスプレイパネル、特に背面基盤パネルが高いことが挙げられ、その理由としてはバリアリブを精密加工する必要があるからである。
【0003】
上記バリアリブは、通常、サンドブラストにてリブを削り出すか、印刷法にてリブを積み上げて製造している。リブ材料は、ガラスおよびセラミックの粒子と、有機化合物のペースト(有機物20重量%程度)であり、数万円/kgで大変高価であるが、サンドブラスト法ではこれを背面ガラス基盤に固定した後、リブを削り出す。この際、最終的に70重量%程度が削られてゴミ(再利用不可)となり効率が大変悪い。また、サンドブラストであるから精度も低く、時間もかかる。一方、印刷法はリブ材の無駄は少ないが、印刷を積み重ねてリブを製造するためリブ成形にはサンドブラスト法以上に長時間を要し、生産性が極めて悪い。また、積み重ねにズレが生じるなど精度が良いとは言い難い。
このような理由から背面基盤は高コストとならざるを得ない。従って、各メーカーとも低コストで背面基盤を製造可能な方法の研究・開発に注力しており、一部には簡便な製造法として熱プレス・型押し法が開発されたが、熱硬化によりリブを硬化させるためその硬化時間が必要なこと、硬化中プレスを要するため効率が悪い等、結果的に生産スピードはサンドブラストと同程度であった。
【0004】
一方、UV硬化に代表されるエネルギー線硬化という特徴をもつエネルギー線硬化樹脂のバリアリブへの適用が検討されているが、適用を妨げる要因としてエネルギー線硬化の能力不足があげられる。
UV硬化樹脂に代表されるエネルギー線硬化樹脂は、一定量以上のエネルギー線が照射された部位のみを硬化するという特徴を有し、また、UVに代表されるエネルギー線は、樹脂を透過する過程で減衰するという特徴を有するため、エネルギー線硬化という現象は、樹脂自体の硬化能力、エネルギー線の強度、照射時間、減衰特性等に大きく影響されるという特徴を有する。
そして従来、エネルギー線硬化能力を向上させるために行ってきた方法としては、光開始剤の高性能化、照射するエネルギー線の強度UP、照射時間増大、エネルギー線の種類の変更等が挙げられる。
【0005】
しかしながら、上記の方法を採用する場合、樹脂組成の側では、開始剤の開発に時間と費用がかかる、あるいは、樹脂組成物が高価等の問題があった。また、エネルギー線照射装置・設備の側では、装置の大型化、消費エネルギーの増大、ランニングコスト増大、生産性の低下、線源の特殊化、装置・設備が高価、安全性の低下等の問題があった。このため、エネルギー線硬化の利点の消失、トータルコストの増大等の問題が解消されなければ、結果的に上記方法自体が利用・適用が困難な状況である。
また、高UV硬化性樹脂に代表されるこれまでの高硬化性エネルギー線硬化樹脂は、エネルギー線硬化に有効な新規光重合性開始剤の開発か、あるいはこれより例は少ないが新規光重合性オリゴマーの開発によるものであり、用途に適切な組成を容易に得ることが可能とは言い難い状況であった。さらに、UV・加熱併用硬化型樹脂はより幅広い硬化条件を備えているという特徴を有する反面、これまでの高硬化性エネルギー線硬化樹脂が有する前述の問題点はそのままであり、更には、加熱プロセスの必要性から加熱装置および設備が必要となるため、装置および設備の面でもエネルギー線硬化の利点を損なっていた。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
そこで、本発明者らは、上記問題点に鑑み、生産性、材料利用効率の両方に優れる新規なバリアリブの材料を開発すべく、鋭意研究した。
その結果、本発明者らは、従来技術の問題点を解決した生産性、材料利用効率が共に優れる隔壁組成物として、特有のエネルギー線硬化樹脂を薄型ディスプレイパネルの隔壁用組成物の有機性添加物に用いた型押し成形法とすることで、従来の光硬化では硬化困難な遮蔽物高含有および厚肉の硬化可能(一度の照射でリブ所定寸法を達成)、且つ、従来プレス法では困難だった短時間硬化を可能(光および連鎖硬化)となり、前述の問題点を解決できることを見いだした。本発明は、かかる見地より完成されたものである。
【0007】
本発明の目的は、下記のいずれかの構成を有することによって、効果的に達成することができる。すなわち
(1)薄型ディスプレイパネルの隔壁又はその一部を成形するためのガラスもしくはセラミックの粉体と樹脂組成物とを含有する混合組成物であって、該樹脂組成物を15重量%〜50重量%含み、該樹脂組成物が、UV照射により熱エネルギーを発生し、且つ、発生した熱エネルギーにより熱エネルギーを連続的に発生させ、UV線源からのエネルギーもしくは発生した熱エネルギーで硬化可能であって、カチオン系光・熱重合開始剤と、硬化剤と、光重合性樹脂成分として脂環型エポキシ樹脂とを含み、
前記カチオン系光・熱重合開始剤として、一般式(I)、(I´)又は(II)
【0008】
【化1】
Figure 0004240733
【0009】
で示されるスルホニウム塩を含薄型ディスプレイパネルの隔壁用組成物である。
【0010】
(2)前記該樹脂組成物が、さらに鉄−アレン系光重合開始剤を含む(1)の薄型ディスプレイパネルの隔壁用組成物である。
【0011】
(3)前記樹脂組成物が、さらに硬化促進剤を含む(2)の薄型ディスプレイパネルの隔壁用組成物である。
【0012】
(4)前記樹脂組成物が、カチオン系光重合開始剤を含む(1)の薄型ディスプレイパネルの隔壁用組成物である。
(5)前記硬化剤成分として、酸無水物又はその誘導体を含む(1)〜(4)のいずれかに記載の薄型ディスプレイパネルの隔壁用組成物である。
(6)前記分子構造に環状エーテル構造を有するエポキシ樹脂が3,4−シクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレートである(1)〜(5)のいずれかに記載の薄型ディスプレイパネルの隔壁用組成物である。
【0013】
(7)前記(1)〜(6)のいずれかに記載の薄型ディスプレイパネルの隔壁用組成物にて薄型ディスプレイパネルの隔壁又はその一部を成形し、該成形体を硬化させた後、焼成して隔壁を製造する方法である。
(8)前記薄型ディスプレイパネルの隔壁用組成物として、予め硬化しない程度に加温した該隔壁用組成物を用いる(7)の隔壁の製造方法である。
【0014】
本発明における薄型ディスプレイパネルとは、プラズマディスプレイパネル(PDP)、液晶ディスプレイ(LCD)等、従来のTVモニターとは異なる方式で厚みが薄いことを特徴とする表示用モニターの一群を意味し、薄型ディスプレイパネルの隔壁とは、プラズマディスプレイの構造において、ガラス基盤(背面)から上に突き出た壁によりRGBの各蛍光体を各単位で仕切っている、この仕切壁を隔壁(バリアリブ)と称する。
【0015】
このような本発明の隔壁用組成物は、UV等のエネルギー線(及び熱エネルギー)により硬化可能であり、硬化の際、自己の硬化反応熱をも利用した連鎖硬化を伴う。従って、エネルギー線遮蔽物含有の有無、膜厚、寸法、形状等に無関係に短時間で硬化可能である。これにより、効率に優れる型押し法で成形可能で且つ短時間で硬化可能となる。
従来のUV硬化樹脂を用いる印刷法等では、図2に示すように、硬化に必要なUVエネルギー量が照射された部分のみ硬化するので、有効エネルギー量が到達しない厚膜部分や、UVが遮蔽されるフィラー高充填物の硬化はできなかった。よって、一度にリブを硬化させ、製造することは困難であった。また、従来の熱硬化樹脂を用いる熱プレス法等では、周囲温度(及び樹脂温度)の上昇が必要なため、エネルギー効率が低く、加熱硬化(及び常温硬化)は、エネルギー線硬化に比べ硬化速度が遅かった。よって、短時間で硬化させることが困難であり、生産性が低い等という問題があった。
【0016】
その点、本発明の隔壁用組成物によれば、
(i) リブ材料の無駄が少なく、リソグラフィー用の感光剤が不要であるため、材料費が低減する、(ii) 短時間硬化によりリブの短時間成形が可能となるので、高生産性、易成形、連続生産可能、工程数削減(マスクレス、洗浄レス)等が実現する、(iii) 1回のエネルギー線照射によって、従来の印刷法数回照射等と同等あるいはそれ以上の硬化が可能となるので、省エネルギー化が実現しランニングコストも低くなる、(iv) リソグラフィー、プレス等の高価な設備が不要であり、設備費が低く抑えられる、(v) 粉塵が出ずクリーンなので、ゴミ低減に資するとともに清潔であり、ダストフリーである、(vi) 型で精度を確保し、製品のバラツキが小さく、高精度化が達成される、(vii) 高輝度化に向けた理想形状を型で成形可能であるため、高輝度化・高性能化を図ることが容易である、等の利点がある。
以下、本発明を実施の形態に基づいて詳細に説明するが、本発明はこれらの実施の形態によって限定されるものではない。
【0017】
【発明の実施の形態】
薄型ディスプレイパネルのうち、例えば高精度かつ安価な大型画面用カラー表示装置等に用いられるプラズマディスプレイパネルでは、通常、微小な放電表示セルと呼ばれる2枚の平坦な絶縁基板および隔壁に囲まれた空間に、対向する電極群を設ける。上記空間には希ガス等の放電可能なガスを封入した気密構造を成しており、上記対向する電極間に電圧を選択的に印加して、放電によりプラズマを発生させる。このプラズマから放出される紫外光により、放電表示セル内壁に形成された蛍光体を発光させて画面の発光素子とする。したがって、上記隔壁は例えば±10μm以下の高さが要求されると共に、放電により発生したプラズマの漏洩による放電表示セルの表示色の混合を防止するため、絶縁基板との接触部に位置する隔壁には気密性を保持する上で、欠落や変形等の形状欠陥があってはならない。
【0018】
そして、薄型ディスプレイパネルの隔壁部分の一般的な製造方法としては、印刷法やサンドブラスト法等がある。印刷法では、隔壁材料のペーストを用いて厚膜印刷法により放電表示セルの所定形状をパターンとして絶縁基板上に印刷、乾燥を繰り返しながら約100〜200μm程度の高さを必要とする放電表示セルの隔壁を成形する。サンドブラスト法では、感光性フィルムを用いて露光・現像を行い、ブラスト処理後にレジスト除去を行ってから、焼成することで隔壁の凹部を形成する。また他には、熱プレスによる型押し法、隔壁形状の凹部構造を持つ成形型に隔壁材料を注入して成形する方法、更にはフォトリソグラフィ法のように、絶縁基板上に設けた感光性樹脂層をパターンマスクを介して光や紫外線等を用いて露光後、現像して開口部を形成し、該開口部に絶縁ペーストを埋め込んで隔壁を成形する方法がある。
本発明の隔壁組成物は、上記のような薄型ディスプレイパネルの隔壁部分の製造方法により放電表示セルを構成する隔壁全体を成形する場合、あるいは、隔壁の欠損部を補充・修復等するため、刷毛塗り法やマイクロシリンジ法による注入法、ロール印刷法、スプレー法等により隔壁に用いる場合に用いられ、該成形体または欠損部を大気中にて硬化させ、次いで絶縁基板と共に一体的に焼成する。
【0019】
本発明の隔壁用組成物を用いて、UV連鎖硬化による型押し法のバリアリブ製造方法の一例を挙げれば、以下のようになる。
先ず、母材上に凸部を有するリソグラフィー型を作製し、凸部をNi−Pメッキする。次いで、これを用いてPTFE等のテフロン系の樹脂型を製造する。一方、後述のような組成からなる隔壁組成物をリブペーストとして、樹脂型とガラス基板とで囲まれた溝に充填する。これを例えばUVランプ等によってガラス基板の面からエネルギー線(UV等)照射して、隔壁用組成物を硬化させた後、型抜きによって離型させる。そして最後に、ヒータ等によって焼成する。
ここで、リブペーストとして用いられる隔壁用組成物は、予め硬化しない程度に加温させておくことで、反応性向上(硬化時間短縮)だけでなく、粘度低減(型充填容易)にも効果があるので好ましい。
また、エネルギー線照射だけでなく、熱を同時に付与することも反応性向上(硬化時間短縮)の観点からは有効である。
【0020】
ここでUV照射においては、図1に示すように、押し型2の凹部に隔壁用組成物が投入されており、照射する面にはガラス基板1が設けられている。隔壁用組成物であるバリアリブ材料は、主に、セラミックスやガラス等3と、有機性添加物4とによって構成されている。
図1のようにUV照射が行われると、ガラス面に接する表面部分が、先ずエネルギー線硬化(UV硬化)を行う。その際、UV硬化部分5は反応熱を発生し、熱は深部へと伝達されるが、この熱エネルギー(又はカチオン等)によっても有機性添加物4が連鎖的に硬化する。そして、反応熱による連鎖硬化によって熱硬化部分7は深化してゆき、最終的にはバリアリブ材料全体が硬化する。
【0021】
本発明の隔壁用組成物に用いられるガラスもしくはセラミック粉体としては特に限定されるものではなく、ソーダライムガラスや低ソーダガラス、鉛アルカリケイ酸ガラス、ホウケイ酸塩ガラス、あるいは硫黄(S)やセレン(Se)、ミョウバン等を含有させた各種のガラスの粉末、又は、アルミナ、ジルコニア等の酸化物系もしくは窒化ケイ素、窒化アルミニウム、炭化ケイ素等の非酸化物系の各種セラミック材料が挙げられる。これらのガラスやセラミック粉末には、各種焼結助剤を所望量添加させることもできる。
なお、ガラスもしくはセラミック粉体の粒径は特に限定されるものではないが、通常は数10μm〜サブミクロンのものが好適に用いられ、隔壁成形体の密度を増加させる観点からは2μm以下の微粉が特に好ましい。
【0022】
本発明に用いられる有機性添加物は、以下のような特定の樹脂組成物を通常15重量%〜50重量%の割合で含むものである。樹脂組成物が15重量%未満では、混合組成物の主成分であるガラス等の粉体成分の保形性が不十分となり、隔壁成形体のダレや変形を生じ得るので好ましくない。一方、樹脂組成物が50重量%を超えると、熱分解性の観点から焼成後の隔壁内部に残留分ができてしまい、発光時の表示に悪影響を与えるので好ましくない。
なお、カップリング剤を添加することで、前記ガラスもしくはセラミックの粉体と樹脂組成物とのなじみを良好にしたり、混合組成物の粘度を下げたり、ガラス基板との密着力を向上させることが可能である。
【0023】
樹脂組成物は、エネルギー線照射により熱エネルギーを発生させるとともに、エネルギー線源からのエネルギーもしくは発生した熱エネルギーで硬化可能であり、あるいは、エネルギー線照射により熱エネルギーを発生させ且つ発生した熱エネルギーにより熱エネルギーを連続的に発生させ、エネルギー線源からのエネルギーもしくは発生した熱エネルギーで硬化可能である。そして通常、該熱エネルギーは、硬化反応時の発熱エネルギーである。
前記樹脂組成物としては、エネルギー線硬化に利用可能な光重合性樹脂成分と、エネルギー線を照射した際に該光重合性樹脂成分の硬化を可能にする光重合性開始剤成分と、を含む。この光重合性開始剤成分としては、光および熱の双方で重合を開始させることができる光・熱重合開始剤を含むことが好ましく、光重合開始剤と光・熱重合開始剤とを含む2元系以上からなる重合開始剤成分でもよい。
また、前記樹脂組成物としては、光重合性樹脂成分および光重合性開始剤成分の他、該光重合性樹脂成分のうちの少なくとも1種をエネルギー線による照射以外の方法で硬化させるのに用いる硬化剤成分、さらに加えて、硬化を促進させる硬化促進剤成分を含んでいることが良い。
このような樹脂組成物を用いることによって、従来の光硬化機構以外の硬化能力の付与、安価な硬化能力向上が可能となり、硬化能力が高く、樹脂組成物が安価で、容易に樹脂特性を制御可能となる。
【0024】
前記エネルギー線としては、紫外線(UV)のほか電子線(EB)、X線、赤外線、太陽光線、可視光線、各種レーザー(エキシマレーザー、CO2レーザー、アルゴンレーザー等)、熱線(放射や輻射等)等が挙げられる。又、本発明で用いる樹脂組成物は、付与するエネルギーとしては光や電磁波の他に、熱等でも硬化可能であり、更に、かかる樹脂組成の特徴から予め樹脂組成物を硬化しない程度に加温しておくことがエネルギー線硬化の特性を向上させるのに有効である。
【0025】
ここで、光重合性樹脂成分としては、例えば、エポキシアクリレート、エポキシ化油アクリレート、ウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレート、ポリエーテルアクリレート、ビニル/アクリレート、ポリスチリルエチルメタクリレート等に代表される各種アクリレート、脂環型エポキシ、グリシジルエーテル型エポキシ、ビスフェノール型エポキシ、ノボラック型エポキシ等に代表される各種エポキシ、不飽和ポリエステル、ポリエン/チオール、シリコン、ポリブタジエン、ビニルエーテル化合物、エポキシ化ポリオレフィン等の各種光重合性オリゴマーや、エポキシモノマー、アクリルモノマー、ビニルエーテル、環状エーテル等の各種光重合性モノマーが例示できるが、これに限定されるものではない。
【0026】
光重合性開始剤成分としては、ラジカル系光重合開始剤、カチオン系光重合開始剤、アニオン系光重合開始剤等、対象とする光重合性樹脂成分で適性が異なるが、例えば、下記表1に示すようなジアゾニウム塩タイプの化合物、表2に示すようなヨードニウム塩タイプの化合物、下記一般式
【0027】
【化3】
Figure 0004240733
【0028】
に示されるようなピリジニウム塩タイプの化合物、特開平6−157624号公報、特開平7−82283号公報に示されるようなホスホニウム塩タイプの化合物、後述の表3に示されるようなスルホニウム塩タイプの化合物、下記一般式(III)、(IV)、(V)
【0029】
【化4】
Figure 0004240733
【0030】
で示される鉄−アレン化合物タイプの化合物、スルホン酸エステルタイプの化合物、上記一般式(I)、(I')、(II)で示される光・熱重合開始剤、後述の表4に示されるP1型光重合開始剤、及び後述の表5に示されるP2型光重合開始剤、Co-アミンmin錯体、O-アシルオキシム、ベンジルオキシカルボニル誘導体、ホルムアミド等の光塩基発生剤等が例示できるがこれに限定されるものではない。
【0031】
硬化剤成分は相手となる樹脂成分に対応して異なり、例えば光重合性樹脂成分が水酸基含有時にはエポキシ類、イソシアネート類等、エポキシ基含有時にはアミン類、酸無水物類、ポリオール類等が例示できるがこれに限定されるものではない。但し、硬化剤成分と光重合性樹脂成分の少なくとも1種との間で、常温硬化や加熱硬化といったエネルギー線硬化以外の硬化(化学反応)が可能な関係が成り立つことが必要である。硬化剤成分、光重合性樹脂成分、および光開始剤成分は、それぞれ複数成分であっても良い。
また、場合によっては、硬化剤成分と光重合性樹脂成分の位置関係を入れ替えて光重合性樹脂成分が硬化剤成分として位置付けられていても(通常組成物の主成分が樹脂成分で副成分が硬化剤成分であるが、これら逆転し、組成物の主成分が硬化剤成分で副成分が光重合性樹脂成分の様な場合)上記関係が成り立つ以上、本発明に用いることができるし、ある1種の光重合性樹脂成分の硬化剤成分が、光重合性樹脂成分であっても何等問題ない。
さらに、このような樹脂組成物にその他の成分が加わっていてもよく、例えば硬化剤成分と無関係な他の光重合性樹脂成分やこれと関係がある光重合開始剤成分が加わっていてもよい。
【0032】
硬化促進剤成分も光重合性樹脂成分と硬化剤成分に対応して異なり、例えば、アミン類に対する1価又は多価のアルコール類、酸無水物等、酸無水物に対する1価又は多価のアルコール類、アミンが例示できるがこれに限定されるものではない。但し、硬化促進剤成分は、前述の硬化剤成分と光重合性樹脂成分の少なくとも1つとの間で起こりうる硬化反応(化学反応)を促進する機能を有することが必要である。
ここでは硬化剤成分の場合と同様に、他の成分や硬化促進剤成分がそれぞれ複数成分であっても良く、場合によっては、硬化促進剤成分が硬化剤成分や光重合性樹脂成分の機能を有する場合や、光重合開始剤成分が本発明で定義した硬化剤成分の機能を有する場合等が考えられるが、いずれの場合も上記硬化反応促進機能を有している以上、本発明に用いることができる。一般的に、硬化剤成分としても硬化促進剤成分としても機能する成分(物質)同士の場合、該成分(物質)の位置付けは組成物中に含まれる含有量の割合によって区別される場合が多い。例えば、酸無水物等の割合が多い場合には、酸無水物等が硬化剤成分として作用し、アルコール類が硬化促進剤として作用する。一方、アルコール類の割合が多い場合には、アルコール類が硬化剤成分として作用し、酸無水物等が硬化促進剤として作用する。双方の量が多い場合には双方が両方の機能を有することとなる。加えて、硬化促進剤成分と硬化剤成分の双方が光重合性樹脂成分の少なくとも1つと反応可能な場合は、より容易な硬化が期待できる。
【0033】
本発明に用いられる樹脂組成物の具体的な例としては、例えば、エポキシアクリレート(光重合性樹脂成分)、ラジカル系光重合開始剤(光重合開始剤成分)、酸無水物(硬化剤成分)およびポリオール(硬化促進剤成分)を含む樹脂組成物、
エポキシアクリレートとエポキシ樹脂(光重合性樹脂成分)、ラジカル系光重合開始剤とカチオン系光重合開始剤(光重合開始剤成分)および酸無水物(硬化剤成分)を含む樹脂組成物、
エポキシ樹脂(光重合性樹脂成分)、カチオン系光重合開始剤(光重合開始剤成分)、酸無水物(硬化剤成分)およびポリオール(硬化促進剤成分)を含む樹脂組成物、
エポキシ樹脂(光重合性樹脂成分)、アニオン系光重合開始剤(光重合開始剤成分)、アミン類(硬化剤成分)および酸無水物(硬化促進剤成分)を含む樹脂組成物、等を挙げることができるが、これに限定されるものではない。
以上の樹脂組成物の材料設計の注意点としては、樹脂組成物中の各種成分間で硬化阻害を発生させないこと、特に光重合開始剤成分と他成分との間で硬化阻害を発生させないことが重要であり、例えば、カチオン系光開始剤成分の硬化阻害物質であるアミン類は、カチオン系光開始剤成分を用いる際は使用を避けるべきである。
【0034】
【表1】
Figure 0004240733
【0035】
【表2】
Figure 0004240733
【0036】
【表3】
Figure 0004240733
【0037】
【表4】
Figure 0004240733
【0038】
【表5】
Figure 0004240733
【0039】
特に、硬化剤成分や硬化促進剤成分の種類が豊富で硬化物の物性が良好である点から光重合性樹脂成分としてはエポキシ樹脂成分が好ましく、特に3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレートが好ましい。
また、特に硬化剤成分もしくは硬化促進剤成分としては、酸無水物又は酸無水物の誘導体、1価又は多価のアルコール類が好ましい。例えば、酸無水物としては表6に示す化合物、1価又は多価のアルコール類としてはフェノール、ノボラック、グリコール、アルコール、ポリオール等の化学構造中に水酸基を有する化合物が挙げられ、これらは特に前述のエポキシ樹脂成分の場合にも好ましい。
【0040】
【表6】
Figure 0004240733
【0041】
光重合性樹脂成分としてエポキシ樹脂成分を用いた場合の硬化剤成分及び硬化促進剤成分としては、表Gに示すようなエポキシ基と反応可能な官能基(無水カルボン酸基、カルボン酸基、水酸基、アミン基、アミド基、ウレタン基、ウレア基、イソシアネート基、その他、表7記載の官能基等)を有する化合物が考えられるが、一般的なものとしては、硬化剤成分としてアミン類、アミド類(ポリアミド樹脂)、酸無水物、フェノール類等、硬化促進剤成分として酸無水物、ポリオール、アミン類等が例示できる。特に、酸無水物又は酸無水物の誘導体と、1価又は多価のアルコール類と、を成分とするものが好ましい。又、かかる成分の分子構造内に窒素原子を含まない化合物は、カチオン系光重合開始剤と組み合わせたときに硬化阻害を起こしにくいので材料設計をする上で好ましい。
【0042】
【表7】
Figure 0004240733
【0043】
特に、酸無水物としては価格、反応性、特性の点からマレイン酸無水物又はその誘導体が好ましく、特に3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレートと、マレイン酸無水物又はその誘導体と、カチオン系光重合開始剤と、を含む樹脂組成物が好ましい。又、特に、1価又は多価のアルコール類としては反応性制御、分子量制御、特性制御の点からポリエチレングリコールが好ましく、特に3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレートと、マレイン酸無水物又はその誘導体と、ポリエチレングリコールと、カチオン系光重合開始剤と、を含む樹脂組成物が好ましい。
【0044】
更に、樹脂組成物の組成比率としては、硬化剤成分と反応可能な樹脂成分1molに対し、硬化剤成分が0.1〜1.4molの比率であることが好ましく、特に、硬化剤成分と反応可能な樹脂成分1molに対し、硬化剤成分が0.3〜1.0molの比率であることが好ましい。熱硬化の場合、樹脂成分と硬化剤成分の割合はある程度化学量論的に決定でき、その範囲を超えた場合には良好な物性の硬化物を得ることが困難となる。一方、エネルギー線硬化の場合、光重合開始剤により樹脂成分単体で硬化が進行する。本発明はエネルギー線硬化と熱硬化の双方の特徴を有する。従って、硬化剤成分が上記範囲を外れて少なすぎると、本発明の特徴であるエネルギー線照射以外の硬化機構による硬化能力向上効果(エネルギー線硬化とその際の硬化発熱による熱硬化という異なる硬化機構のほぼ同時進行、並びに硬化不足解消等)が発揮されにくく、逆に多すぎると、相対的にエネルギー線硬化に必要な樹脂成分が少なくなるためエネルギー線硬化能力の低下や硬化発熱量の低下がおこり硬化特性が低下する。又、化学量論的な限度を超えて多い場合は良好な物性の硬化物を得ることが困難となる。
また、硬化剤成分1molに対し、硬化促進剤成分が0.04〜0.6molの比率であることが好ましく、特に、硬化剤成分1molに対し、硬化促進剤成分が0.08〜0.4molの比率であることが好ましい。上記範囲を外れて少なすぎると硬化反応の促進効果を発揮できず、一方多すぎても適正量添加時以上の硬化反応促進効果は期待できず、かえって硬化反応の鈍化、エネルギー線硬化の阻害、硬化発熱量の浪費等を引き起こす点で好ましくない。
【0045】
光重合性開始剤成分としては、特にカチオン系光重合開始剤が好ましく、特に上記一般式(III)、(IV)、(V)で示される鉄−アレン系化合物は樹脂組成物に含まれると大きく硬化特性が向上するため好ましい。例えば、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレートと、マレイン酸無水物と、上記一般式(III)と、を含む樹脂組成物は太陽光で容易に硬化する程、硬化能力が向上し高硬化性を示す。
また、光・熱重合開始剤を用いることも好ましく、特に上記一般式(I),(I')又は(II)で示されるスルホニウム塩は樹脂組成物に含まれると大きく硬化特性が向上し、且つ、従来2元系光重合開始剤を用いないと困難だった連鎖硬化反応が単一の重合開始剤でも可能となる。
例えば、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレートと、マレイン酸無水物と、一般式(IV)等の化合物と、を含む樹脂組成物は、一般式(I)等で示される化合物が約0.5重量%含有されているだけで連鎖硬化反応する程、硬化能力が向上し高硬化性を示す。
【0046】
更に、光重合開始剤と光・熱重合開始剤を成分とする2元系以上からなる光重合開始剤も好ましく、特にアリール系スルホニウム塩タイプもしくは上記一般式(III)、(IV)、(V)で示される鉄−アレン系化合物の少なくとも1種と、上記一般式(I),(I')又は(II)で示されるスルホニウム塩の少なくとも1種と、を含んでなる2元系以上からなる光重合開始剤は樹脂組成物に用いると大きく硬化特性が向上する。
例えば、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレートと、マレイン酸無水物と、上記2元系以上からなる光重合開始剤と、を含んでなる樹脂組成物は硬化能力が向上し高硬化性を示すため、容易に連鎖硬化反応する。
又、光重合開始剤、光・熱重合開始剤、上記2元系以上から成る重合開始剤成分等に、適当な熱重合開始剤成分(例えば、プレニル・テトラメチレンスルホニウム・ヘキサフルオロアンチモネート等)を加えた光重合開始剤成分も好ましく、熱硬化能力の向上からより容易な硬化が期待できる。
【0047】
更に、樹脂組成物の組成比率としては、光重合開始剤成分以外の他成分の総重量100重量部に対し、光重合開始剤成分が0.1〜6.0重量部の比率であることが好ましく、特に0.5〜3.0重量部が好ましい。光重合開始剤成分の割合が0.1重量部未満ではその効果が殆どなく、全体に対する量が少ないためそのものが機能しにくい。一方、6.0重量部を超えても光硬化機能そのものは変わらない。
また、2元系以上からなる光重合開始を構成する光・熱重合開始剤光の重量比が10〜100重量%であることが好ましく、特に20〜80重量%であることが好ましい。従来の2元系以上からなる光重合開始剤では、光・熱重合開始剤光の重量比50〜80重量%が好ましかったが、上記比率においても連鎖硬化の機能を発揮する。但し、重量比が少ないと連鎖硬化の特徴を発揮しにくく、重量比が大きいと連鎖硬化を制御しにくい傾向にある。
【0048】
更には、上記の樹脂組成物に硬化可能な範囲で添加することのできる添加剤としては、エネルギー線遮蔽性物質(例えば炭素及び炭素繊維(短繊維、長繊維、連続繊維、カーボンクロス等)、無機フィラー、金属粉等)及び各種フィラー、有機成分、光増感剤、反応性希釈剤、光鋭感剤、増酸剤等慣用される添加剤を1種以上添加することができる。
【0049】
本発明で用いる樹脂組成物の製法は何ら限定されるものではなく、最終的に成分を含む樹脂組成物であれば良いので、例えば製造する樹脂組成物の成分や特徴によって、温度、攪拌時間、遮光の有無、投入順序等は適宜定めることができる。
硬化剤成分、硬化促進剤成分、光重合性開始剤の各成分と、光重合性樹脂成分との反応性が高い場合、特に温度に対する反応性が高く常温で短時間に硬化が可能な場合には、反応が進行しない様に考慮した低温での攪拌が好ましい。また、固体や溶解しにくい成分を攪拌する場合には、長時間の攪拌や予め溶媒等に溶解させて液状にしておく等の処置が好ましい。
製造環境で容易に光重合開始剤成分が光反応可能であったり、光重合開始剤成分が投入されてから製造終了までに長時間を要する場合には、遮光や投入順序の入れ替えが有効となる。また、投入順序によっては硬化反応が開始及び進行したり、副反応が発生したりすることもあるため、この場合も投入順序の入れ替えが有効である。樹脂組成物は高硬化性であり、熱及びエネルギー線双方で硬化可能なため、硬化反応が起きないように製造条件を決定することが必要となる。
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって何ら限定されるものではない。
【0050】
【実施例】
隔壁用組成物の内、ガラスもしくはセラミックの粉体については、ガラス粉体(主成分が低融点鉛ガラス)約90重量%と、セラミック粉体(その他主要無機成分が酸化ジルコニウム、ケイ酸ジルコニウム、必要に応じて窯業用黒色顔料等を含む)約10重量%と、を主成分とする混合物を用いた。また、隔壁用組成物の内、樹脂組成物を含む有機性添加物(バインダー)については、以下の実施例1〜7および参考例1〜6に示す組成物を用いた。
【0051】
参考例1
まず、ガラスもしくはセラミックの粉体として、ガラス粉体(主成分:低融点鉛ガラス)約90重量%と、セラミック粉体(その他主要無機成分:酸化ジルコニウム、ケイ酸ジルコニウム、窯業用黒色顔料等)約10重量%とを主成分とする混合物を用意した。(A)
次に、セロキサイド2021P(ダイセル化学(株)製:脂環式エポキシ樹脂;3,4−シクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート)100重量部に対し、サンエイドSI−80L(三新化学(株)製:カチオン系光・熱重合開始剤;一般式(I))1.75重量部、DAICAT11(ダイセル化学工業(株)製:カチオン系光重合開始剤;アリール系スルホニウム塩)0.75重量部を配合して、バインダー用の樹脂組成物とした。(B)
そして、(A)を80重量%と、(B)を20重量%とをよく混ぜ合わせ隔壁用組成物を作製した。(C)
(C)を型に充填し、ガラス基板と貼り合わせた後、UVを照射した。UVランプにはメタルハライドランプ(120W/cm)を用い、空気中・室温・大気圧にて照射した。(D)
(D)は5分以内で完全に硬化した。硬化後、型を外した後、約1時間焼成(焼成温度500〜650℃)して良好な隔壁を得た。
【0052】
参考例2
(B)の樹脂組成物として、セロキサイド2021P 80重量部、セロキサイド2000(ダイセル化学(株):光重合性希釈剤;シクロヘキセンビニルモノオキサイド)20重量部に対し、サンエイドSI−80L 2.2重量部、DAICAT11 0.8重量部を配合した樹脂組成物を用いる以外は、全て参考例1の方法にて試験した。
上記サンプルは5分以内で完全に硬化した。硬化後、型を外した後、約1時間焼成して良好な隔壁を得た。
【0053】
実施例1
(B)の樹脂組成物として、セロキサイド2021P 1molに対し、マレイン酸無水物0.65molを加えて攪拌・溶解させたもの100重量部にイルガキュア261(チバガイギー(株)製:鉄−アレン系光重合開始剤) 1.0重量部、サンエイドSI−60L(三新化学(株)製:カチオン系光・熱重合開始剤;一般式(I))1.0重量部を配合した樹脂組成物を用いる以外は、全て参考例1の方法にて試験した。
上記サンプルは5分以内で完全に硬化した。硬化後、型を外した後、約1時間焼成して良好な隔壁を得た。
【0054】
実施例2
(B)の樹脂組成物として、セロキサイド2021P 1molに対し、マレイン酸無水物0.65molを加えて攪拌・溶解させたもの100重量部にDAICAT11 0.7重量部、サンエイドSI−80L 1.8重量部を配合した樹脂組成物を用いる以外は、全て参考例1の方法にて試験した。
上記サンプルは5分以内で完全に硬化した。硬化後、型を外した後、約1時間焼成して良好な隔壁を得た。
【0055】
実施例3
(B)の樹脂組成物として、セロキサイド2021P/マレイン酸無水物/ポリエチレングリコール300(モル比 1.0/0.65/0.17)100重量部にイルガキュア261 1.0重量部、サンエイドSI−60L 1.0重量部を配合した樹脂組成物を用いる以外は、全て参考例1の方法にて試験した。
上記サンプルは5分以内で完全に硬化した。硬化後、型を外した後、約1時間焼成して良好な隔壁を得た。
【0056】
実施例4
(B)の樹脂組成物として、セロキサイド2021P/セロキサイド2000/マレイン酸無水物/ヘキサヒドロフタル酸無水物/ポリエチレングリコール300(モル比=0.95mol/0.05mol/0.48mol/0.16mol/0.145mol)100重量部と、イルガキュア261 0.15重量部、DAICAT110.6、サンエイドSI−60(三新化学(株)製:カチオン系光・熱重合開始剤;一般式(I))1.05重量部を配合した樹脂組成物を用いる以外は、全て参考例1の方法にて試験した。
上記サンプルは5分以内で完全に硬化した。硬化後、型を外した後、約1時間焼成して良好な隔壁を得た。
【0057】
実施例5
(B)の樹脂組成物として、セロキサイド2021P 1molに対し、マレイン酸無水物0.65molを加えて攪拌・溶解させたもの100重量部にサンエイドSI−60L 1.5重量部を配合した樹脂組成物を用いる以外は、全て参考例1の方法にて試験した。上記サンプルは、実施例3より時間を要したものの完全に硬化した。
硬化後、型を外した後、約1時間焼成して良好な隔壁を得た。
【0058】
参考例3
(B)の樹脂組成物として、セロキサイド2021P 100重量部に対し、サンエイドSI−80L 1.5重量部、DAICAT11 0.5重量部、4,4’−ビス[ジ(β−ヒドロキシエトキシ)フェニルスルフォニオ]フェニルスルフィド−ビス−ヘキサフルオロアンチモネート 0.5重量部、2−ブチニルテトラメチレンスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート 0.5重量部を配合した樹脂組成物を用いる以外は、全て参考例1の方法にて試験した。
上記サンプルは5分以内で完全に硬化した。硬化後、型を外した後、約1時間焼成して良好な隔壁を得た。
【0059】
参考例4
(B)の樹脂組成物として、セロキサイド2021P 100重量部に対し、サンエイドSI−80L 1.5重量部、DAICAT11 1.0重量部、プレニルテトラメチレンスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート 0.5重量部を配合した樹脂組成物を用いる以外は、全て参考例1の方法にて試験した。
上記サンプルは5分以内で完全に硬化した。硬化後、型を外した後、約1時間焼成して良好な隔壁を得た。
【0060】
参考例5
(C)の隔壁用組成物を型に充填する前に、予め硬化が開始しない温度範囲(本事例では60℃)に隔壁用組成物を温度調節する以外は、全て参考例1の方法にて試験した。
上記サンプルは参考例1より短時間で完全に硬化した。硬化後、型を外した後、約1時間焼成して良好な隔壁を得た。
【0061】
実施例6
実施例4の樹脂組成物を用いて(C)と同様の方法にて隔壁用組成物を作製し、該隔壁用組成物を予め硬化が開始しない温度範囲(本事例では40℃)にて温度調節した後に型に充填する以外は、全て参考例1の方法にて試験した。
上記サンプルは実施例4より短時間で完全に硬化した。硬化後、型を外した後、約1時間焼成して良好な隔壁を得た。
【0062】
参考例6
(C)を型に充填し、ガラス基板と貼り合わせた後、UVを照射するのではなく、120℃に保持したオーブンに入れ加熱する以外は、全て参考例1の方法にて試験した。
加熱開始より10分以内で上記サンプルは完全に硬化した。硬化後、型を外した後、約1時間焼成して良好な隔壁を得た。
【0063】
実施例7
実施例4の樹脂組成物を用いて(C)と同様の方法にて隔壁用組成物を作製し、これを型に充填してガラス基板と貼り合わせた後、UVを照射するのではなく、120℃に保持したオーブンに入れ加熱する以外は、全て参考例1の方法にて試験した。
加熱開始より10分以内で上記サンプルは完全に硬化した。硬化後、型を外した後、約1時間焼成して良好な隔壁を得た。
【0064】
比較例1
(B)の樹脂組成物として、紫外線硬化樹脂(昭和高分子(株)製:RIPOXY LC-630;ビニルエステル樹脂)を用いる以外は、全て参考例1の方法にて試験した。
上記はUV光を10分以上照射してもガラス基板側の極表層のみ硬化するのみでほとんどが未硬化のため、型から外す際に型押しにてフケイした隔壁形状を維持できず崩れたり、型側にも組成物が付着したりする等、焼成するに至らない不適なものであった。
【0065】
比較例2
(B)の樹脂組成物として、熱硬化性樹脂(旭電化工業(株)製:アデカオプトマーKT-960;脂環式低粘度エポキシ樹脂)を用いる以外は、全て参考例1の方法にて試験した。
上記はUV光を10分以上照射しても硬化せず、型から外す際に型押しにてフケイした隔壁形状を維持できず崩れたり、型側にも組成物が付着したりする等、焼成するに至らない不適なものであった。
【0066】
比較例3
(B)の樹脂組成物として、セロキサイド2021P 100重量部に対し、DAICAT11 2.5重量部を配合した樹脂組成物を用いる以外は、全て参考例1の方法にて試験した。
上記はUV光を10分以上照射してもガラス基板側の極表層のみ硬化するのみでほとんどが未硬化のため、型から外す際に型押しにてフケイした隔壁形状を維持できず崩れたり、型側にも組成物が付着したりする等、焼成するに至らない不適なものであった。
【0067】
比較例4
(B)の樹脂組成物として、セロキサイド2021P 100重量部に対し、イルガキュア261 1.5重量部を配合した樹脂組成物を用いる以外は、全て参考例1の方法にて試験した。
上記はUV光を10分以上照射してもガラス基板側の極表層のみ硬化するのみでほとんどが未硬化のため、型から外す際に型押しにてフケイした隔壁形状を維持できず崩れたり、型側にも組成物が付着したりする等、焼成するに至らない不適なものであった。
【0068】
比較例5
(B)の樹脂組成物として、セロキサイド2021P 100重量部に対し、サンエイドSI−60L 1.5重量部を配合した樹脂組成物(実施例7の樹脂組成物からマレイン酸無水物を除いて組成構築)を用いる以外は、全て参考例1の方法にて試験した。
上記はUV光を10分以上照射してもガラス基板側の極表層のみ硬化するのみでほとんどが未硬化のため、型から外す際に型押しにてフケイした隔壁形状を維持できず崩れたり、型側にも組成物が付着したりする等、焼成するに至らない不適なものであった。
【0069】
比較例6
(B)の樹脂組成物として、セロキサイド2021P/セロキサイド2000/マレイン酸無水物/ヘキサヒドロフタル酸無水物/ポリエチレングリコール300(モル比=0.95mol/0.05mol/0.48mol/0.16mol/0.145mol)を配合した樹脂組成物(実施例4の樹脂組成物から光重合開始剤成分を除いて組成構築)を用いる以外は、全て参考例1の方法にて試験した。
上記はUV光を10分以上照射しても硬化せず、型から外す際に型押しにてフケイした隔壁形状を維持できず崩れたり、型側にも組成物が付着したりする等、焼成するに至らない不適なものであった。
【0070】
【発明の効果】
本発明の隔壁用組成物によれば、(i)リブ材料の無駄が少なく、リソグラフィー用の感光剤が不要であるため、材料費が低減する、(ii)短時間硬化によりリブの短時間成形が可能となるので、高生産性、易成形、連続生産可能、工程数削減(マスクレス、洗浄レス)等が実現する、(iii)1回のエネルギー線照射によって、従来の印刷法数回照射等と同等あるいはそれ以上の硬化が可能となるので、省エネルギー化が実現しランニングコストも低くなる、(iv)リソグラフィー、プレス等の高価な設備が不要であり、設備費が低く抑えられる、(v)粉塵が出ずクリーンなので、ゴミ低減に資するとともに清潔であり、ダストフリーである、(vi)型で精度を確保し、製品のバラツキが小さく、高精度化が達成される、(vii)高輝度化に向けた理想形状を型で成形可能であるため、高輝度化・高性能化を図ることが容易である、等の優れた効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の隔壁用組成物を用いて隔壁を製造する際の製造フローの一部(硬化工程)を示す図である。
【図2】従来の隔壁用材料を用いて隔壁を製造する際の製造フローの一部(硬化工程)を示す図である。
【符号の説明】
1 ガラス基板
2 押し型
3 セラミックス等
4 有機性添加物
5 UV硬化部分
6 有機性添加物
7 熱硬化部分

Claims (8)

  1. 薄型ディスプレイパネルの隔壁又はその一部を成形するためのガラスもしくはセラミックの粉体と樹脂組成物とを含有する混合組成物であって、該樹脂組成物を15重量%〜50重量%含み、該樹脂組成物が、UV照射により熱エネルギーを発生し、且つ、発生した熱エネルギーにより熱エネルギーを連続的に発生させ、UV線源からのエネルギーもしくは発生した熱エネルギーで硬化可能であって、カチオン系光・熱重合開始剤と、硬化剤と、光重合性樹脂成分として脂環型エポキシ樹脂とを含み、
    前記カチオン系光・熱重合開始剤として、一般式(I)、(I´)又は(II)
    Figure 0004240733
    で示されるスルホニウム塩を含ことを特徴とする薄型ディスプレイパネルの隔壁用組成物。
  2. 前記該樹脂組成物が、さらに鉄−アレン系光重合開始剤を含むことを特徴とする請求項1の薄型ディスプレイパネルの隔壁用組成物。
  3. 前記樹脂組成物が、さらに硬化促進剤を含むことを特徴とする請求項2の薄型ディスプレイパネルの隔壁用組成物。
  4. 前記樹脂組成物が、カチオン系光重合開始剤を含むことを特徴とする請求項1の薄型ディスプレイパネルの隔壁用組成物。
  5. 前記硬化剤成分として、酸無水物又はその誘導体を含むことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の薄型ディスプレイパネルの隔壁用組成物。
  6. 前記脂環型エポキシ樹脂が3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレートであることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の薄型ディスプレイパネルの隔壁用組成物。
  7. 請求項1〜6のいずれかに記載の薄型ディスプレイパネルの隔壁用組成物にて薄型ディスプレイパネルの隔壁又はその一部を成形し、該成形体を硬化させた後、焼成してなることを特徴とする隔壁の製造方法。
  8. 前記薄型ディスプレイパネルの隔壁用組成物として、予め硬化しない程度に加温した該隔壁用組成物を用いることを特徴とする請求項7に記載の隔壁の製造方法。
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