JP4239251B2 - シアノ安息香酸アルキルエステルの製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は置換または無置換シアノ安息香酸アルキルエステル、特に一般式(3)で示されるシアノ安息香酸アルキルエステルの製造方法に関する。シアノ安息香酸アルキルエステルは医薬・農薬その他有機化学品などの合成原料または中間体として有用である。
【0002】
【従来の技術】
シアノ安息香酸アルキルエステルの製造方法としては、特開昭58−113145号公報のクロロベンゾニトリルのようにハロゲンが置換されたベンゾニトリルを触媒を用いて一酸化炭素及びアルコールと反応させる方法、Bull.Chem.Soc.Jpn.,61,6,1985,(1988) とJ.Org.Chem.,51,24,4714,(1986) に報告されているアミノ安息香酸メチルのようにアミノ化された安息香酸アルキルエステルをサンドマイヤー反応によりジアゾニウム塩を経由して製造する方法、特公昭41−18818号公報のニトリルとエステルの不均化反応による方法等の報告があるが、(1)、(2)は原料の入手が困難で価格が高い、(3)は過酷な条件が必要であること等いずれもシアノ安息香酸アルキルエステルを安価に製造する方法とはならない。このようにシアノ安息香酸アルキルエステルを製造する工業的に安価で有利な方法はこれまで知られておらず、更なる改善が望まれている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、一般式(3)で示されるシアノ安息香酸アルキルエステルを工業的に有利な方法により高選択的かつ高収率で製造することにあり、特に医薬の合成中間体として有用なm−シアノ安息香酸アルキルエステルまたはp−シアノ安息香酸アルキルエステルを高選択的かつ高収率で製造することにある。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、前記の従来の問題点を解決すべく鋭意検討した結果、置換または無置換シアノ安息香酸アミドと脂肪族アルコールを、酸を用いて反応させアミド基のみをアルキルエステル基に変換することにより、高選択的かつ高収率でシアノ安息香酸アルキルエステルを製造する方法を見出し、本発明を確立するに至った。本発明は以下の(1)〜(4)に示される製造方法に関する。
【0005】
(1)ベンゼン環上に置換基を有してもよいシアノ安息香酸アミドと脂肪族アルコールを酸の存在下反応させることにより、アミド基のみをアルキルエステル基に変換することを特徴とするベンゼン環上に置換基を有してもよいシアノ安息香酸アルキルエステルの製造方法。
(2)下記一般式(1)
【化3】
(式中、−CONH2 基はニトリル基のメタ位またはパラ位にあり、Xは塩素原子またはフッ素原子を表わし、nは0〜4の整数を表わす。ただし、nが2以上の場合、Xは同一であっても異なっていてもよい。)で示されるシアノ安息香酸アミドと下記一般式(2)
ROH (2)
(式中、Rは炭素数が1〜5のアルキル基を表わす。)で示される脂肪族アルコールを酸の存在下反応させることにより、アミド基のみをアルキルエステル基に変換することを特徴とする下記一般式(3)
【化4】
(式中、X、nおよびRは前記と同様の意味を表わし、−COOR基はニトリル基のメタ位またはパラ位にある。)で示されるシアノ安息香酸アルキルエステルの製造方法。
【0006】
(3)一般式(1)で示されるシアノ安息香酸アミドがm−またはp−シアノ安息香酸アミドであり、一般式(3)で示されるシアノ安息香酸アルキルエステルがm−またはp−シアノ安息香酸アルキルエステルである上記(2)に記載のシアノ安息香酸アルキルエステルの製造方法。
(4)一般式(2)で示される脂肪族アルコールがメタノールおよびエタノールから選ばれることを特徴とする上記(1)乃至(3)のいずれかに記載のシアノ安息香酸アルキルエステルの製造方法。
すなわち本発明は、置換または無置換シアノ安息香酸アミドと脂肪族アルコールを混合し、冷却または加熱下に攪拌し、アミド基のみを選択的にアルキルエステル基に変換するのに好ましい量の酸を加えて反応させることにより置換または無置換シアノ安息香酸アルキルエステルを高選択的かつ高収率で得る方法である。
【0007】
【発明の実施の形態】
以下本発明について説明する。
本発明は置換または無置換シアノ安息香酸アミド、好適には一般式(1)で示されるシアノ安息香酸アミドから置換または無置換シアノ安息香酸アルキルエステル、特に一般式(3)で示されるシアノ安息香酸アルキルエステルを製造する方法を提供する。置換または無置換シアノ安息香酸アミドと脂肪族アルコールを混合し、アミド基のみをアルキルエステル基に変換するのに適した量の酸を入れて反応させる。
【0008】
本発明を更に詳細に説明する。
先ず、本発明で用いられるシアノ安息香酸アミドは置換または無置換シアノ安息香酸アミドを使用することができる。無置換シアノ安息香酸アミドとしては好適にm−シアノ安息香酸アミド、p−シアノ安息香酸アミドが例示される。次に置換シアノ安息香酸アミドとしては、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、アラルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アラルキルオキシ基などが1乃至4置換したシアノ安息香酸アミドが挙げられる。2以上置換した場合は同一または相異なる置換基であってもよい。
【0009】
ハロゲン原子で置換されたシアノ安息香酸アミドについて説明する。4−シアノ−2,3,5,6−テトラクロロ安息香酸アミド、3−シアノ−2,4,5,6−テトラクロロ安息香酸アミドなどの塩素化シアノ安息香酸アミドはテレフタロニトリルおよびイソフタロニトリルの塩素化反応により得られるテトラクロロテレフタロニトリルなどの塩素化テレフタロニトリルおよびテトラクロロイソフタロニトリルなどの塩素化イソフタロニトリルの片側ニトリル基の水和反応で容易かつ大量に製造できる。4−シアノ−2,3,5,6−テトラフルオロ安息香酸アミド、3−シアノ−2,4,5,6−テトラフルオロ安息香酸アミドなどのフッ素化シアノ安息香酸アミドはテトラクロロテレフタロニトリルなどの塩素化テレフタロニトリルおよびテトラクロロイソフタロニトリルなどの塩素化イソフタロニトリルのフッ素化反応で得られるテトラフルオロテレフタロニトリルなどのフッ素化テレフタロニトリルおよびテトラフルオロイソフタロニトリルなどのフッ素化イソフタロニトリルの片側ニトリル基の水和反応で容易かつ大量に製造できる。
【0010】
本発明で用いられる脂肪族アルコールは炭素数が1〜5のアルキル基を有する脂肪族アルコールが使用される。炭素数が1〜5のアルキル基を有する脂肪族アルコールとしては、例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、n−ブタノール、n−ペンタノール、イソプロパノール、イソブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノール、イソアミルアルコール、活性アミルアルコール、ネオペンチルアルコール等が挙げられる。
【0011】
反応温度は特に制限はないが、0℃〜100℃の範囲内であることが好ましく、反応温度が低い場合は、反応性が悪くなり好ましくなく、また反応温度が高い場合はアミド基がアルキルエステル基に変換されるばかりでなく、ニトリル基もアルキルイミノエーテル基に変換されるため収率が悪化し好ましくない。またアルキルイミノエーテル基は水と反応して容易にアルキルエステル基に変換され、フタル酸ジアルキルエステルが生成するため、シアノ安息香酸アルキルエステルの精製効率を低下させ収率低下を招く。
【0012】
反応時間は10分〜48時間、好ましくは1〜24時間の範囲内とするのがよい。ただし使用する脂肪族アルコールによって反応時間は適時調整される。反応時間が短い場合はシアノ安息香酸アミドの転化率が低く、また長い場合は生産性の面で問題がある。
【0013】
アミド基のアルキルエステル化に使用される酸としては、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸等の鉱酸、ギ酸、酢酸などの有機酸、塩化第一鉄、塩化第二鉄、塩化第一スズ、塩化アルミ等のルイス酸が挙げられる。好ましくは塩酸、硫酸が用いられる。これらの酸は単独でも2種以上を任意の割合で組み合わせて使用してもよい。
【0014】
加える酸の量は原料のシアノ安息香酸アミド1モルに対して0.1モル〜7.0モル、好ましくは0.8モル〜5.0モルの範囲内とするのがよい。酸の量を少なくすると反応性が悪くなり収率が低下し、また多すぎるとシアノ安息香酸アミドのシアノ基がアルキルイミノエーテル基に変換してしまい、収率が低下するため好ましくない。これらの酸は反応液に直接添加しても、反応溶媒と同じ脂肪族アルコールにあらかじめ吸収させてから添加してもどちらでもよい。
【0015】
反応終了後は反応液にそのまま、あるいは回収率を向上させるために溶媒を留去して濃縮を行い、水を加え加熱溶解後冷却することでシアノ安息香酸アルキルエステルの結晶を得ることができる。またアルカリを加えて中和し、晶析あるいは濃縮を行ってもよい。中和に使用されるアルカリは水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化ルビジウム等のアルカリ金属水酸化物;炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等のアルカリ金属の炭酸塩;リン酸三ナトリウム、ピロリン酸ナトリウム、リン酸三カリウム等のアルカリ金属のリン酸塩;水酸化ベリリウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム等のアルカリ土類金属の水酸化物、アンモニア、トリエチルアミン等のアミン類等のいずれでもよく、これらは単独でも2種以上を任意の割合で組み合わせて使用してもよい。さらに有機溶媒を使用して抽出し、濃縮を行って結晶を分離することもできる。抽出に使用する有機溶媒としては、例えばトルエン、キシレン等の炭化水素系、ジクロロメタン、クロロホルム等のハロゲン系、ジエチルエーテル等のエーテル系、酢酸エチル等のエステル系等の有機溶媒を使用することができる。このようにして得られたシアノ安息香酸アルキルエステルは必要ならば減圧蒸留あるいは再結晶等により精製を行う。
【0016】
【実施例】
以下に実施例を用いてさらに詳しく本発明を説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
純度99%以上のp−シアノ安息香酸アミド73.0g(0.5mol)とエタノール460.3gを2Lのセパラブルフラスコに入れ、攪拌しながらあらかじめ用意しておいた20%塩化水素/エタノール溶液162.4gを加えて78℃で12時間反応させた。ガスクロマトグラフを用いて分析することにより、反応液中にp−シアノ安息香酸エチルが83.1g存在することを確認した(収率95%)。この反応液を減圧濃縮し水を加えて加熱溶解後冷却して晶析したところ、純度99.5%のp−シアノ安息香酸エチル74.7g(収率85%)を得た。
【0017】
(実施例2)
純度99%以上のp−シアノ安息香酸アミド73.0g(0.5mol)とメタノール460.3gを2Lのセパラブルフラスコに入れ、攪拌しながらあらかじめ用意しておいた20%塩化水素/メタノール溶液162.4gを加えて64℃で12時間反応させた。ガスクロマトグラフを用いて分析することにより、反応液中にp−シアノ安息香酸メチルが75.7g存在することを確認した(収率94%)。
【0018】
(実施例3)
純度99%以上のp−シアノ安息香酸アミド73.0g(0.5mol)とエタノール657.0gを2Lのセパラブルフラスコに入れ、攪拌しながら95%硫酸51.6gを加えて78℃で19時間反応させた。ガスクロマトグラフを用いて分析することにより、反応液中にp−シアノ安息香酸エチルが66.5g存在することを確認した(収率76%)。
【0019】
(実施例4)
純度99%以上のm−シアノ安息香酸アミド73.0g(0.5mol)とメタノール460.3gを2Lのセパラブルフラスコに入れ、攪拌しながらあらかじめ用意しておいた20%塩化水素/メタノール溶液162.4gを加えて64℃で12時間反応させた。ガスクロマトグラフを用いて分析することにより、反応液中にp−シアノ安息香酸メチルが74.9g存在することを確認した(収率93%)。
【0020】
(実施例5)
純度99%以上の2,3,5,6−テトラクロロ−4−シアノ安息香酸アミド28.4g(0.1mol)とメタノール268.8gを2Lのセパラブルフラスコに入れ、攪拌しながらあらかじめ用意しておいた20%塩化水素/メタノール溶液91.3gを加えて64℃で12時間反応させた。ガスクロマトグラフを用いて分析することにより、反応液中に2,3,5,6−テトラクロロ−4−シアノ安息香酸メチルが23.9g存在することを確認した(収率80%)。
【0021】
【発明の効果】
本発明により、シアノ安息香酸アミドを原料として温和な条件にて収率よくシアノ安息香酸アルキルエステルを合成できる。得られたシアノ安息香酸アルキルエステルは医薬・農薬その他有機化学品などの合成原料または中間体として広く利用することが出来る。
Claims (4)
- ベンゼン環上に置換基を有してもよいシアノ安息香酸アミドと脂肪族アルコールを酸の存在下反応させることにより、アミド基のみをアルキルエステル基に変換することを特徴とするベンゼン環上に置換基を有してもよいシアノ安息香酸アルキルエステルの製造方法。
- 下記一般式(1)
ROH (2)
(式中、Rは炭素数が1〜5のアルキル基を表わす。)で示される脂肪族アルコールを酸の存在下反応させることにより、アミド基のみをアルキルエステル基に変換することを特徴とする下記一般式(3)
- 一般式(1)で示されるシアノ安息香酸アミドがm−またはp−シアノ安息香酸アミドであり、一般式(3)で示されるシアノ安息香酸アルキルエステルがm−またはp−シアノ安息香酸アルキルエステルである請求項2に記載のシアノ安息香酸アルキルエステルの製造方法。
- 一般式(2)で示される脂肪族アルコールがメタノールおよびエタノールから選ばれることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のシアノ安息香酸アルキルエステルの製造方法。
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