JP4238002B2 - 難燃性スチレン系樹脂組成物およびそれからの成形品 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、高度な難燃性を有するとともに、耐熱性、流動性および耐候性に優れる難燃性スチレン系樹脂組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
スチレン系樹脂は、その優れた成形加工性、機械特性、電気特性のゆえに、多方面にわたり使用されている。しかし易燃性であるため、OA機器、家電製品のハウジングおよび電気、電子関係の部品等に用いられる際には、樹脂の難燃化が必要になる。この難燃性に関してはUL規格等により規制されており、近年種々の難燃化の手段が検討されている。その中においても家電製品のハウジング分野では、上記の難燃化規制及び耐熱性、機械物性、耐候性が求められ、これら全ての要求性能を満たすバランスのとれたスチレン系樹脂が求められている。
【0003】
スチレン系樹脂の難燃化としては、スチレン系樹脂に難燃剤としてハロゲン化ジフェニル誘導体を添加することにより得る方法(特許文献1および特許文献2参照)が知られている。
【0004】
しかしながら、上記従来のスチレン系樹脂に難燃剤としてハロゲン化ジフェニル誘導体を添加することにより得られる難燃性スチレン系樹脂組成物は耐候性に劣り、難燃性も十分ではなく、十分な難燃性を得るために多量に使用した場合、耐熱性が低下する問題がある。
【0005】
また、スチレン系樹脂にハロゲン化カーボネート化合物を難燃剤として用いることが知られている(特許文献3、特許文献4および特許文献5参照)。しかしながら、ハロゲン化カーボネート化合物をスチレン系樹脂に用いて、難燃化すると、ハロゲン化カーボネート化合物自体の分解温度が高いために、難燃樹脂の燃焼試験時にグロー燃焼しやすく、また、非溶融系の樹脂組成物となり、衝撃強度が低下し、さらに安定した難燃性を得るには多量の難燃剤が必要となりコスト的にも問題があるうえ、前述のグロー燃焼も発生しやすくなり、ハロゲン化カーボネート化合物単独での高度な難燃化には問題があった。
【0006】
【特許文献1】
特開昭60−139638号公報
【特許文献2】
特開昭60−240750号公報
【特許文献3】
特開平06−128435号公報
【特許文献4】
特公昭56−025953号公報
【特許文献5】
特開昭58−065741号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、従来技術の欠点を解消し、高度な難燃性を有するとともに、耐熱性、流動性および耐候性に優れる難燃性を有する難燃性スチレン系樹脂組成物を提供するものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
そこで、本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、スチレン系樹脂に難燃剤としてハロゲン化カーボネート化合物とハロゲン化ジアリール誘導体および難燃助剤を組合せて特定量配合することにより、上記課題が改良され、高度な難燃性を有する難燃性スチレン系樹脂組成物が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明によれば、(A)スチレン系樹脂を少なくとも50重量%含有する樹脂成分(A成分)100重量部、(B)下記式(1)で表わされる構成単位が全構成単位の少なくとも60モル%で、比粘度が0.015〜0.1のハロゲン化カーボネート化合物(B成分)12〜22重量部、(C)下記式(2)で示されるハロゲン化ジアリール誘導体(C成分)1〜10重量部および(D)無機系難燃助剤(D成分)1〜15重量部からなる難燃性スチレン系樹脂組成物。
【化7】
(式中、Xは臭素原子または塩素原子、R 1 は炭素数1〜4のアルキレン基、炭素数1〜4のアルキリデン基、−SO 2 −または単結合である。)
【0010】
【化3】
【0011】
(式中、Xは臭素原子または塩素原子、m、n、p、qは1〜6の整数であり、Ar1、Ar2は同一または異なっていてもよく、2価の炭素数6〜16の芳香族炭化水素基であり、Yはメチレン、プロピレン、イソプロピリデン、イソブチリデン、シクロヘキシリデン、スルフォン、ケトンおよび単結合から選ばれる一種であり、R1、R2はそれぞれ炭素数2〜6の飽和炭化水素基である。)
【0012】
本発明の樹脂成分(A成分)は、スチレン系樹脂(A−1成分)を少なくとも50重量%、好ましくは少なくとも60重量%、より好ましくは少なくとも80重量%、さらに好ましくは少なくとも90重量%含有する樹脂成分である。特に好ましくはスチレン系樹脂から実質的になる樹脂成分である。
【0013】
前記スチレン系樹脂(A−1成分)の他に他の樹脂成分(A−2成分)を含有していてもよい。他の樹脂成分(A−2成分)はA成分に基づいて50重量%以下であり、好ましくは40重量%以下、より好ましくは20重量%以下、特に好ましくは10重量%以下である。また、A−2成分を使用する場合、好ましくは1重量%以上、より好ましくは3重量%以上、特に好ましくは5重量%以上である。
【0014】
前記スチレン系樹脂(A−1成分)としては、スチレン、α−メチルスチレン及びp−メチルスチレン等のスチレン誘導体の単独重合体又は共重合体、これらの単量体とアクリロニトリル、メチルメタクリレート等のビニルモノマーとの共重合体、ポリブタジエン等のジエン系ゴム、エチレン・プロピレン系ゴム、アクリル系ゴムなどにスチレン及び/又はスチレン誘導体、又はスチレン及び/又はスチレン誘導体と他のビニルモノマーをグラフト重合させたものである。
【0015】
かかるスチレン系樹脂の具体例としては、例えばポリスチレン、スチレン・ブタジエン・スチレン共重合体(SBS)、水添スチレン・ブタジエン・スチレン共重合体(水添SBS)、水添スチレン・イソプレン・スチレン共重合体(SEPS)、耐衝撃性ポリスチレン(HIPS)、アクリロニトリル・スチレン共重合体(AS樹脂)、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体(ABS樹脂)、メチルメタクリレート・ブタジエン・スチレン共重合体(MBS樹脂)、メチルメタクリレート・アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体(MABS樹脂)、アクリロニトリル・アクリルゴム・スチレン共重合体(AAS樹脂)、アクリロニトリル・エチレンプロピレン系ゴム・スチレン共重合体(AES樹脂)等の樹脂、又はこれらの混合物が挙げられる。
【0016】
これらのスチレン系樹脂のなかでも、耐衝撃性ポリスチレンが特に好ましく用いられる。耐衝撃性ポリスチレンは、通常“HIPS”と称される衝撃性の改良されたポリスチレン樹脂である。一般的には、HIPSはゴム変性されたポリスチレン樹脂を意味する。
【0017】
かかるゴム変性ポリスチレン樹脂は主に芳香族ビニル系重合体よりなるマトリックス中にゴム状重合体が粒子状に分散してなる重合体をいい、ゴム状重合体の存在下に芳香族ビニル単量体を必須成分とする単量体混合物を加えて公知の塊状重合、塊状懸濁重合、溶液重合または乳化重合することにより得られる。
【0018】
前記ゴム状重合体の例としては、ポリブタジエン、ポリ(スチレン−ブタジエン)、ポリ(アクリロニトリル−ブタジエン)等のジエン系ゴムおよび上記ジエンゴムを水素添加した飽和ゴム、イソプレンゴム、クロロプレンゴム、ポリアクリル酸ブチル等のアクリル系ゴム、およびエチレン−プロピレン−ジエンモノマー三元共重合体(EPDM)等を挙げることができ、特にジエン系ゴムが好ましい。
【0019】
上記ゴム状重合体の存在下に重合させるグラフト共重合可能な単量体混合物中の必須成分である芳香族ビニル単量体は、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、パラメチルスチレン等であり、スチレンが最も好ましい。
【0020】
上記ゴム変性ポリスチレン樹脂中のゴム状重合体成分は、好ましくは1〜50重量%、より好ましくは2〜40重量%である。グラフト共重合可能な単量体混合物は、好ましくは99〜50重量%、より好ましくは98〜60重量%である。この範囲内では得られる樹脂組成物の耐熱性、耐衝撃性および剛性のバランスが向上し、また、不飽和結合が少なく酸化され難くなり熱安定性に優れるため好ましい。
【0021】
上記ゴム変性スチレン系樹脂の分子量の尺度である還元粘度ηsp/C(0.5g/dlのトルエン溶液を30℃で測定)は、好ましくは0.2〜1.5dl/gであり、より好ましくは0.4〜1.3dl/gであり、さらに好ましくは0.6〜1.1dl/gである。ゴム変性スチレン系樹脂の還元粘度ηsp/Cに関する上記条件を満たすための手段としては、重合開始材料、重合温度、連鎖移動剤量の調整等を挙げることができる。還元粘度が高くなると耐熱性および耐衝撃性に優れる。
【0022】
また、A−2成分としての樹脂成分としては、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂およびフェノール樹脂よりなる群から選ばれた少なくとも1種が挙げられる。なかでも、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリカーボネート樹脂またはフェノール樹脂が好適である。
【0023】
また、本発明で用いられるB成分のハロゲン化カーボネート化合物としては、下記式(1)で表される構成単位が全構成単位の少なくとも60モル%で、比粘度が0.015〜0.1のハロゲン化カーボネート化合物が好適に用いられる。
【0024】
【化4】
【0025】
(式中、Xは臭素原子または塩素原子、R1は炭素数1〜4のアルキレン基、炭素数1〜4のアルキリデン基、−SO2−または単結合である。)
B成分のハロゲン化カーボネート化合物において、前記式(1)中、Xは臭素原子または塩素原子、好ましくは臭素原子を示し、R1は炭素数1〜4のアルキレン基、炭素数1〜4のアルキリデン基、−SO2−または単結合、好ましくはメチレン基、エチレン基、イソプロピリデン基または−SO2−、特に好ましくはイソプロピリデン基を示す。
【0026】
B成分のハロゲン化カーボネート化合物は、前記式(1)で表される構成単位が全構成単位の少なくとも60モル%、好ましくは少なくとも80モル%、さらに好ましくは少なくとも90モル%である。特に好ましくは前記式(1)で表される構成単位から実質的になるハロゲン化カーボネート化合物である。
【0027】
B成分のハロゲン化カーボネート化合物は、好ましくは比粘度が0.015〜0.1の範囲であり、より好ましくは0.015〜0.08の範囲である。ここで、ハロゲン化カーボネート化合物の比粘度は、温度20℃で濃度0.7g/dlの塩化メチレン溶液でオストワルド粘度計により測定し、次式により算出したものである。
比粘度(ηsp)=(t−t0)/t0
(t0は塩化メチレンの落下秒数、tは試料溶液の落下秒数)
【0028】
また、B成分のハロゲン化カーボネート化合物は、その末端塩素量が0.3ppm以下であることが好ましく、0.2ppm以下であることがより好ましい。ここで、末端塩素量は、試料を塩化メチレンに溶解し、4−(p−ニトロベンジル)ピリジンを加えて末端塩素(末端クロロホーメート)と反応させ、これを紫外可視分光光度計(日立製作所製U−3200)により測定して求めたものである。末端塩素量が0.3ppm以下であると、ハロゲン化カーボネート化合物自体およびこれを樹脂に配合した樹脂組成物の熱安定性が良好となり好ましい。
【0029】
また、B成分のハロゲン化カーボネート化合物は、その末端水酸基量が、該ハロゲン化カーボネート化合物の構成単位1モルに対して、0.0005モル以下であることが好ましく、0.0003モル以下であることがより好ましい。ここで、末端水酸基量は、試料を重クロロホルムに溶解し、1H−NMR法により測定して求めたものである。末端水酸基量がハロゲン化カーボネート化合物の構成単位1モルに対して、0.0005モル以下であると、ハロゲン化カーボネート化合物自体およびこれを樹脂に配合した樹脂組成物の熱安定性が良好となり好ましい。
【0030】
また、前記ハロゲン化カーボネート化合物は例えば、特開2000−297147号公報にて示される方法により製造できる。具体的には、ハロゲン置換二価フェノールを60モル%以上含む二価フェノールのアルカリ水溶液とホスゲンとを有機溶媒および触媒の存在下反応させてハロゲン化カーボネート化合物を製造するに当り、
(1).アルカリ化合物の使用量を該二価フェノールに対して0.9〜1.4倍モル、有機溶媒の使用量を該二価フェノール100gに対して40〜250mlとして、且つ触媒として該二価フェノールに対して0.01〜0.05倍モルのアミン類触媒を存在させた混合液を調製し、
(2).(1)の混合液に、該二価フェノールに対して1.1〜1.8倍モルのホスゲンを添加し、反応系のpHを9〜12の範囲でホスゲン化反応させ、
(3).(2)のホスゲン化後の反応液にアルカリ化合物を添加しpH12以上とし、且つ一価フェノールを添加し、次いで反応温度が37〜45℃の範囲で、且つ該温度範囲での反応時間が10〜120分となる条件で反応させるハロゲン化カーボネート化合物の製造方法が採用できる。
【0031】
ハロゲン置換二価フェノールを含む二価フェノールとホスゲンとの反応において、末端停止剤として一価フェノールが好ましく使用される。かかる末端停止剤としては、フェノール、p−tert−ブチルフェノール、p−クミルフェノール、2,4,6−トリブロモフェノール、ペンタブロモフェノール等が好ましく用いられ、特に2,4,6−トリブロモフェノールおよびペンタブロモフェノールが好ましく用いられる。
【0032】
また、かかるハロゲン化カーボネート化合物は市販されており、例えば帝人化成(株)製のテトラブロモビスフェノールAカーボネートオリゴマー(商品名FG−8500、FG−7500)が挙げられ、これらを本発明で使用することができる。
【0033】
本発明で使用されるC成分のハロゲン化ジアリール誘導体は、下記式(2)で示される化合物である。
【0034】
【化5】
【0035】
(式中、Xは臭素原子または塩素原子、m、n、p、qは1〜6の整数であり、Ar1、Ar2は同一または異なっていてもよく、2価の炭素数6〜16の芳香族炭化水素基であり、Yはメチレン、プロピレン、イソプロピリデン、イソブチリデン、シクロヘキシリデン、スルフォン、ケトンおよび単結合から選ばれる一種であり、R1、R2はそれぞれ炭素数2〜6の飽和炭化水素基である。)
C成分のハロゲン化ジアリール誘導体において、前記式(2)中、Xは臭素原子または塩素原子、好ましくは臭素原子であり、m、n、p、qは1〜6の整数、好ましくは1〜4の整数であり、Ar1、Ar2は同一または異なっていてもよく、2価の炭素数6〜16の芳香族炭化水素基、好ましくはフェニル基、トリル基、キシリル基またはナフチル基であり、Yはメチレン、プロピレン、イソプロピリデン、イソブチリデン、シクロヘキシリデン、スルフォン、ケトンおよび単結合から選ばれる一種であり、好ましくはメチレン、イソプロピリデン、イソブチリデン、シクロヘキシリデン、スルフォンおよび単結合から選ばれる一種であり、R1、R2はそれぞれ炭素数2〜6の飽和炭化水素基、好ましくはエチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基またはイソブチル基である。
【0036】
前記式(2)で示されるハロゲン化ジアリール誘導体として、具体的には2,2−ビス[{3,5−ジブロモ−4−(2,3−ジブロモプロピルオキシ)}フェニル]プロパン、2,2−ビス[{3,5−ジブロモ−4−(2,3−ジブロモ−2−メチルプロピルオキシ)}フェニル]プロパン、ビス[{3,5−ジブロモ−4−(2,3−ジブロモプロピルオキシ)}フェニル]メタン、ビス[{3,5−ジブロモ−4−(2,3−ジブロモ−2−メチルプロピルオキシ)}フェニル]メタン、ビス[{3,5−ジブロモ−4−(2,3−ジブロモプロピルオキシ)}フェニル]スルフォン、ビス[{3,5−ジブロモ−4−(2,3−ジブロモ−2−メチルプロピルオキシ)}フェニル]スルフォン、{3,3′,5,5′−テトラブロモ−4,4′−(2,3−ジブロモプロピルオキシ)}ビフェニル、{3,3′,5,5′−テトラブロモ−4,4′−(2,3−ジブロモ−2−メチルプロピルオキシ)}ビフェニルおよび{3,3′,5,5′−テトラブロモ−4,4′−(1,2−ジブロモエチルオキシ)}ビフェニルが好ましく、2,2−ビス[{3,5−ジブロモ−4−(2,3−ジブロモプロピルオキシ)}フェニル]プロパン、ビス[{3,5−ジブロモ−4−(2,3−ジブロモプロピルオキシ)}フェニル]メタンおよびビス[{3,5−ジブロモ−4−(2,3−ジブロモプロピルオキシ)}フェニル]スルフォンがより好ましく、特に2,2−ビス[{3,5−ジブロモ−4−(2,3−ジブロモプロピルオキシ)}フェニル]プロパンが好ましく使用される。
【0037】
また、かかるハロゲン化ジアリール誘導体は市販されており、例えば帝人化成(株)製の2,2−ビス[{3,5−ジブロモ−4−(2,3−ジブロモプロピルオキシ)}フェニル]プロパン(商品名 FG−3100)、丸菱油化工業(株)製ビス[{3,5−ジブロモ−4−(2,3−ジブロモプロピルオキシ)}フェニル]スルフォン(商品名 ノンネンPR−2)が挙げられ、これらを本発明で使用することができる。
【0038】
本発明で使用されるD成分の無機系難燃助剤は、臭素化合物との相互作用により難燃性を増加させるものであり、具体的には、三酸化アンチモン、五酸化アンチモン、三酸化硼素、硼酸亜鉛、赤燐等が挙げられ、なかでも三酸化アンチモンおよび五酸化アンチモンが特に好ましい。
【0039】
本発明において、樹脂成分(A成分)100重量部に対するハロゲン化カーボネート化合物(B成分)の配合割合は12〜22重量部であり、好ましくは14〜21重量部であり、さらに好ましくは16〜20重量部である。12重量部未満であると樹脂組成物の耐熱性が不足し好ましくなく、22重量部を超えると機械物性が低下し好ましくない。
【0040】
また、樹脂成分(A成分)100重量部に対するハロゲン化ジアリール誘導体(C成分)の配合割合は1〜10重量部であり、好ましくは2〜7重量部である。1重量部未満であるとグローイングを充分に防ぐ事が出来ず難燃性に劣り好ましくなく、10重量部を超えると耐熱性および耐候性が低下し好ましくない。
【0041】
樹脂成分(A成分)に対する前記B成分と前記C成分との配合割合は重量比で20:1〜2:1の範囲が好ましく、15:1〜3:1の範囲がより好ましく、10:1〜4:1の範囲が特に好ましい。
【0042】
また、樹脂成分(A成分)100重量部に対する無機系難燃助剤(D成分)の配合割合は1〜15重量部であり、好ましくは3〜14重量部であり、さらに好ましくは5〜12重量部である。1重量部未満であると難燃性が不足し好ましくなく、15重量部を超えると機械物性の低下、あるいはグローイングが発生しやすくなり好ましくない。
【0043】
樹脂成分(A成分)に対する前記B成分と前記C成分との合計量と前記D成分との配合割合は重量比で5:1〜1.5:1の範囲が好ましく、3:1〜2:1の範囲が特に好ましい。
【0044】
本発明では、ハロゲン化カーボネート化合物(B成分)およびハロゲン化ジアリール誘導体(C成分)との混合物は、無機系難燃助剤(D成分)と併用してスチレン系樹脂に高度な難燃性とともに、優れた耐熱性および難燃性を与える。
【0045】
すなわち、本発明において、ハロゲン化カーボネート化合物(B成分)およびハロゲン化ジアリール誘導体(C成分)からなり、B成分とC成分との割合が重量比で20:1〜2:1の範囲、好ましくは15:1〜3:1の範囲、さらに好ましくは10:1〜4:1の範囲であるスチレン系樹脂用の難燃剤組成物が提供される。これらの範囲を外れてB成分が多い場合には得られる樹脂組成物の燃焼試験時にグローイングが発生し充分な難燃性が得られないおそれがある。また、これらの範囲を外れてC成分が多い場合には得られる樹脂組成物の耐熱性および耐候性が不足することがある。
【0046】
また、ハロゲン化カーボネート化合物(B成分)、ハロゲン化ジアリール誘導体(C成分)および無機系難燃助剤(D成分)からなり、B成分とC成分との割合が重量比で20:1〜2:1の範囲であり、且つB成分とC成分との合計量とD成分との割合が重量比で5:1〜1.5:1の範囲、好ましくは3:1〜2:1の範囲であるスチレン系樹脂用の難燃剤組成物が提供される。
【0047】
本発明の樹脂組成物は、これらの各成分を上記配合割合で配合することにより製造される。配合方法は特に制限がなく、ヘンシェルミキサー、タンブラーミキサー、スーパーミキサー、バンバリーミキサー、ニーダー、ロール、単軸押出機、二軸押出機等により混合混練する方法を適宜用いることができる。
【0048】
また、本発明の樹脂組成物には、本発明の目的を損なわない範囲で他の添加剤、例えば、着色剤、顔料、安定剤、可塑剤、滑剤、紫外線吸収剤、充填剤、補強剤、発泡剤、その他の添加剤を所望により配合することができる。
【0049】
本発明の難燃性樹脂組成物は、家電製品、事務機器、情報機器のハウジング等の種々の成形品を成形する材料として有用である。
【0050】
【実施例】
以下に、実施例および比較例をあげて本発明を説明する。なお、以下の実施例および比較例において、種々のスチレン系樹脂組成物の諸性質を下記の方法により測定し評価した。
【0051】
(1)難燃性:米国アンダーライターズ・ラボラトリー・インコーポレーション(Underwriters Loboratories Inc.,U.S.A)より出版された「UL94安全規格:機器の部品用プラスチック材料の燃焼試験」の7〜10項目に記載の94V−2、94V−1、94V−0(以下「V−2」、「V−1」、「V−0」と略する)の基準によった。
【0052】
(2)荷重たわみ温度(HDT):ISO 75−1〜2記載の方法にて測定した。
【0053】
(3)流動性:メルトボリュームレートはISO 1133により荷重3.8kg、温度230℃の条件で測定した。
【0054】
(4)耐候性:サンシャインウェザーメーター(スガ試験機製WEL−SUM−HC(H))を用いてブラックパネル温度63℃、雨ありの条件(102分の照射後、18分間の照射及び水噴霧)にて色見本板(高さ90mm×幅50mm×厚み2mm(照射部))を50時間の試験時間にて促進試験を行った。
【0055】
判定は、色見本版をJIS Z 8730に従い、色差計(日本電色(株)製SE−2000)を用いて促進試験前後の△E値を測定した。
【0056】
(5)比粘度:乾燥した試料0.7gを塩化メチレン100mlに溶解し、オストワルド粘度計により20℃で測定し、次式により算出した。
比粘度(ηsp)=(t−t0)/t0
(t0は塩化メチレンの落下秒数、tは試料溶液の落下秒数)
【0057】
(6)末端塩素量(クロロホーメート量):乾燥した試料を塩化メチレンに溶解し、4−(p−ニトロベンジル)ピリジンを加えて末端塩素と反応させ、これを紫外可視分光光度計(日立製作所製U−3200)により測定した。検出限界は0.2ppmである。
【0058】
(7)末端水酸基量:乾燥した試料を重クロロホルムに溶解し、1H−NMR法により測定した。検出限界は、ハロゲン化カーボネート化合物の構成単位1モルに対して0.0003モルである。
【0059】
[実施例1〜5]
スチレン系樹脂(耐衝撃性ポリスチレン樹脂;日本A&M(株)製H−9152)100重量部に対して、ハロゲン化カーボネート化合物としてテトラブロモビスフェノールAカーボネートオリゴマー(帝人化成(株)製 商品名 FG−8500;比粘度0.029、末端停止剤2,4,6−トリブロモフェノール使用、末端塩素量 検出限界以下、末端水酸基量 検出限界以下)、ハロゲン化ジアリール誘導体として2,2−ビス[{3,5−ジブロモ−4−(2,3−ジブロモプロピルオキシ)}フェニル]プロパン(帝人化成(株)製 商品名 FG−3100)および三酸化アンチモン(日本精鉱(株)製PATOX−M)を表1に示した割合で所定量混合し、シリンダー温度を180℃とした30mmφ2軸押出し機(池貝鉄工(株)製PCM−30、L/D=30)で溶融押出しペレットを得、次いでこのペレットを用い、(株)日本製鋼所製75トン射出成形機(シリンダー温度210℃、金型温度40℃)により射出成形し、UL−94V(3.2mm)、HDT試験用(通称ISOバー)および色見本板(縦90mm×横50mm×厚2mm)の試験片を作成し、UL−94、HDTおよび耐候性の試験に供した。また、成形前のペレットを用いてメルトボリュームレートの試験に供した。結果を表1に示した。
【0060】
【表1】
【0061】
[比較例1〜4]
実施例1〜5で使用したスチレン系樹脂、ハロゲン化カーボネート化合物、ハロゲン化ジアリール誘導体および三酸化アンチモンを表2に示した割合で所定量混合し、実施例1〜5と同様の手順により試験片を作成し、UL−94、HDTおよび耐候性の試験に供した。また、成形前のペレットを用いてメルトボリュームレートの試験に供した。結果を表2に示した。尚、比較例2〜4の耐候性試験後の色見本板は変形していた。
【0062】
【表2】
【0063】
以上の結果より、本実施例によれば、ハロゲン化カーボネート化合物およびハロゲン化ジアリール誘導体を併用して所定量使用することにより、得られたスチレン系樹脂組成物は高度な難燃性を有するとともに、耐熱性、流動性および耐候性に優れる樹脂組成物である。
【0064】
【発明の効果】
本発明のスチレン系樹脂組成物は、高度な難燃性を有するとともに、耐熱性、流動性および耐候性に優れる樹脂組成物である。従って、本発明の樹脂組成物は、特に難燃性を要求される分野、具体的には家電製品、事務機器、情報機器のハウジング等に有用である。
Claims (8)
- (A)スチレン系樹脂を少なくとも50重量%含有する樹脂成分(A成分)100重量部、(B)下記式(1)で表わされる構成単位が全構成単位の少なくとも60モル%で、比粘度が0.015〜0.1のハロゲン化カーボネート化合物(B成分)12〜22重量部、(C)下記式(2)で示されるハロゲン化ジアリール誘導体(C成分)1〜10重量部および(D)無機系難燃助剤(D成分)1〜15重量部からなる難燃性スチレン系樹脂組成物。
- A成分の樹脂成分は、耐衝撃性スチレン系樹脂を少なくとも50重量%含有する樹脂成分である請求項1記載の難燃性スチレン系樹脂組成物。
- B成分のハロゲン化カーボネート化合物は、前記式(1)において、Xは臭素原子およびR1はイソプロピリデン基を示すハロゲン化カーボネート化合物である請求項1記載の難燃性スチレン系樹脂組成物。
- B成分のハロゲン化カーボネート化合物は、その末端塩素量が0.3ppm以下で、且つその末端水酸基量がハロゲン化カーボネート化合物の構成単位1モルに対して0.0005モル以下である請求項1記載の難燃性スチレン系樹脂組成物。
- D成分の無機系難燃助剤は、三酸化アンチモン、五酸化アンチモン、三酸化硼素、硼酸亜鉛および赤リンからなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物である請求項1記載の難燃性スチレン系樹脂組成物。
- B成分とC成分との配合割合が重量比で20:1〜2:1の範囲である請求項1記載の難燃性スチレン系樹脂組成物。
- B成分とC成分との割合が重量比で20:1〜2:1の範囲であり、且つB成分とC成分との合計量とD成分との割合が重量比で5:1〜1.5:1の範囲である請求項1記載の難燃性スチレン系樹脂組成物。
- 請求項1〜7のいずれかに記載の難燃性スチレン系樹脂組成物より形成された成形品。
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