JP4233993B2 - 起動信号出力回路 - Google Patents

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Description

本発明は、間欠的に発信された高周波信号(RF)を入力して検出信号を出力する変換回路を有する起動信号出力回路に関する。
ただし、上記の検出信号とは、上記の高周波信号(RF)の波形の包絡線によって決定される波形のレベル(振幅)が略一定、或いは略一定以上である期間に生じる、検知ダイオードより整流された信号に基づいて生成される出力信号を意味している。したがって、上記の高周波信号(RF)が断続的に到来したり、或いはその到来の有無が周期的であったりした場合には、上記の検出信号の波形も周期的と成り得る。高周波信号の包絡線を検波しており、その期間だけ直流電位を出力するという意味で、検出信号は直流と見做せるが、高周波信号の包絡線によって変動するという意味では交流でもある。以下、検出信号の直流電位は、このような意味で用いられている。
本願発明の起動信号出力回路は、例えば移動体通信機などに有用であり、今後本発明の適用が期待される製品分野としては、少なくとも、ETC、スマートプレート、LAN、監視システム、キーフリーシステム等を挙げることができる。
ダイオード検波による高周波検出技術としては、例えば、下記の特許文献1乃至特許文献5に記載の技術などが既に公知である。
これらの従来装置の中には、検出信号を多段の増幅回路で増幅したり、レベル判定を行ったりするものが多いが、その様な起動信号出力回路においては、信号が直流であるために、各段は直結合の接続形態とされている。
特許第2561023号公報 特許第2605827号公報 特開平4−291167号公報 特許第3202624号公報 特開平10−56333号公報
しかしながら、例えば−60dBmという極めて微弱の高周波信号を電源電圧の低下時にも安定して検出できるようにする際などには、上記の各段の直結合の回路構成が問題となる。即ち、各段の増幅器で発生した雑音は直流付近で大きな値を示し、その雑音の直流成分も後段の増幅器に伝搬するという問題が生じる。このことは、高周波信号の誤検出の原因となり、感度を向上させることができない原因となる。
また、各段の増幅器を構成するトランジスタなどを全て同一特性に形成することは困難なので、各段間において直流電位のオフセットが生じ得る。このオフセット電位は、後段に伝搬すると、検出信号や参照信号などの信号レベルもオフセットするので、その結果、トランジスタが飽和して真の検出信号の増幅が実行できない場合がある。そして、この様な現象は、勿論、誤動作などの原因となり得る。
本発明は、上記の課題を解決するために成されたものであり、その目的は、極めて高感度の起動信号出力回路を実現することであり、特に、本発明の主眼は、S/N比を向上させることや、検出精度を向上させることにある。
上記の課題を解決するためには、以下の手段が有効である。
即ち、本発明の第1の手段は、複数段の増幅回路を有して、間欠的に発信された高周波信号を検波して検出信号を生成し、その検出信号に応じて高周波信号が検出されたことを示す起動信号を出力する起動信号出力回路において、複数段の増幅回路のうちの初段の増幅回路は、高周波信号を入力するRF入力端に接続される伝送線路に直列に接続され、マッチング回路を構成する第1キャパシタと、第1キャパシタの出力信号を入力して検波する、コレクタとベースが接続された第1トランジスタと、第1トランジスタの電流出力端にベースが接続された第2トランジスタと、第2トランジスタのベースと接地間に接続された平滑キャパシタと、第1トランジスタの電流入力端子と電源間に接続された、コレクタとベースが接続された第3トランジスタと、を有し、初段以外の増幅回路は、第1トランジスタと第2トランジスタと第3トランジスタの接続関係を有したトランジスタ回路から成り、増幅回路の段間のうちいずれか1つの段間における信号伝送線路上に、第2キャパシタを直列に挿入することによって、ハイパスフィルタ特性を与え、ハイパスフィルタ特性のカットオフ周波数f c は、間欠的に発信される高周波信号の間欠的な到来周期Tに対応する周波数(=1/T)よりも小さく設定され、カットオフ周波数f c に対して、第2キャパシタの容量Cは、その容量Cが入力側に接続される増幅回路の入力インピーダンスZに対して、2πf c ・C・|Z| ≒ 1を満たす様に設定されており、増幅回路を構成するトランジスタに流れるバイアス電流を極微小値に制限することにより増幅回路にローパスフィルタ特性を与え、その特性と第2キャパシタよるハイパスフィルタ特性とによりバンドパスフィルタ特性を与えたことを特徴とする。
上記の増幅回路は、信号レベルを増大するものの他、信号を他の参照信号と比較して出力するものなど出力レベルを大きく増幅しないものも含む概念である。増幅回路の段数は任意である。通常、最前段の増幅回路は、高周波信号を整流して増幅する回路であり、検出・増幅回路である。以下、複数段の増幅回路を経て、高周波信号が受信された時、受信されていない時とが、区別し得る起動信号が出力される。
また、本発明において、第2キャパシタにより、ハイパスフィルタが構成されるが、このハイパスフィルタ特性のカットオフ周波数fc は、間欠的に発信される高周波信号の間欠的な到来周期Tに対応する周波数(=1/T)よりも小さく設定される。
また、本発明において、所望のカットオフ周波数fc に対して、第2キャパシタの容量Cは、その容量Cが入力側に接続される増幅回路の入力インピーダンスZに対して、2πfc ・C・|Z| ≒ 1満たす様に設定されている。
また、本発明において、第1キャパシタの出力信号を入力して検波するダイオード接続の第1トランジスタ(検知ダイオード)の電流出力端に第2トランジスタのベースが接続されているので、増幅回路を構成する第2トランジスタに流れるバイアス電流を極微小値に制限することにより増幅回路にローパスフィルタ特性を与えることができる。そして、その特性と第2キャパシタの容量によるハイパスフィルタ特性とによりバンドパスフィルタ特性を与えられる。
また、本発明において、増幅回路のうち最前段の高周波信号を整流して検波する増幅回路は、高周波信号を検波する検知ダイオードと、第2トランジスタが一方のトランジスタとなる差動対トランジスタTrL,TrRを有する差動増幅器と、この差動増幅器の電流を規定するカレントミラー回路とを備え、差動対トランジスタの一方のトランジスタTrLである第2トランジスタのベース電流は、前記第1トランジスタ(検知ダイオード)を流れる電流の直流成分と略一致し、差動対トランジスタTrL,TrRを流れる電流の合計は、カレントミラー回路によって略一定に規定されていることが望ましい。
また、本発明において、第1キャパシタと、第1トランジスタと、第1トランジスタの電流出力端にベースが接続された第2トランジスタと、平滑キャパシタと、第1トランジスタの電流入力端子と電源間に接続された、コレクタとベースが接続された第3トランジスタとにより、平滑キャパシタの端子電圧を出力とする倍電圧検波回路が構成される。
本発明によれば、複数段の増幅回路の段間の信号線路に直列に第2キャパシタを挿入したので、雑音の直流成分および直流付近の成分の後段への伝搬が防止される。この結果、検出精度及び検出感度が向上する。増幅回路で発生する雑音の周波数特性は1/f特性を示しているので、直流付近に大きな雑音電力が存在し、全体の雑音電力は、ほとんどこの直流付近の成分によって支配されている。この第2キャパシタによりこの直流付近の雑音成分が遮断され、雑音成分は後段に伝搬しない。この結果として、検出精度と検出感度が向上する。また、各段の増幅回路の直流電位のオフセットの伝搬も遮断される結果、後段のトランジスタが飽和することが防止され、検出信号と参照信号の直流電位の伝搬が遮断されるので誤判定が防止される。したがって、検出精度及び検出感度が向上する。一方、高周波信号は、間欠的に発信された信号を前提としている。したがって、整流後の検出信号は、高周波信号の包絡線を表すことになり、包絡線の変動に関する情報は、包絡線の検波波形が歪んだとしても、後段に伝搬させることができるので、S/N比を増大して高周波信号を精度良くかつ高感度で検出することが可能となる。
また、間欠的に発信される高周波信号の繰り返し周期(包絡線の周期)Tの逆数で決定される周波数をハイパスフィルタのカットオフ周波数とすることで、第2キャパシタを各段の増幅回路の段間の伝送線路に直列に挿入しても、包絡線の周期以上の周波数は後段に伝搬する。したがって、高周波信号の受信の有無を判定するための検出信号は後段に伝搬することになるが、支配的な雑音成分の伝搬は遮断される。これにより、S/N比が向上して、検出精度と検出感度を向上させることができる。
また、上記のカットオフ周波数fc に対して、後段の増幅回路の入力インピーダンスから第2キャパシタの容量の値を決定することができる。
また、本発明では、周波数の高い信号の伝搬が遮断される。すなわち、第1トランジスタ(検知ダイオード)による検波には、非線形特性が用いられているので、高周波の包絡線信号(基本波)の他に、これらの高次の高調波も生じる。しかし、間欠的に発信している高周波信号の有無を検出するには、基本波成分だけか、基本波成分と低次の高調波だけあれば十分である。よって、基本波成分だけ、または、基本波成分と低次の高調波だけが、通過するようなバンドパスフィルタを全体として構成すれば、高い周波数領域に存在する高調波成分や雑音成分の伝搬も遮断されるために、検出精度と検出感度はより向上することになる。
また、差動増幅器の差動対トランジスタのバイアス電流とバイアス電圧を、第1トランジスタを流れる電流で制御し、その電流をカレントミラー回路により制御した場合には、第1トランジスタには極微弱のバイアス電流(例えば、nA程度)を安定して供給できるので、電源電圧の低下に強く、検出感度の向上を実現することができる。また、差動増幅器を用いて信号を増幅することから、電源電圧の変動や低下に対する耐性が大きくなり、検出精度も向上する。
また、本発明によれば、倍電圧検波回路が構成されるので、検出感度を向上させ、起動信号出力回路のS/N比を効果的に向上させることができる。
以下、本発明を具体的な実施例に基づいて説明する。
ただし、本発明の実施形態は、以下に示す個々の実施例に限定されるものではない。
図1は、本実施例1の起動信号出力回路200の回路図である。
1.全体の構成
基準トランジスタTr0とその負荷抵抗R0と、従属トランジスタTr3,Tr9,Tr10などにより、カレントミラー回路が構成されている。負荷抵抗R0は、基準トランジスタTr0のコレクタ電流を最適化するためのものである。従属トランジスタTr3,Tr9,Tr10のベース電位は基準トランジスタTr0のベース電位に等しいので、各従属トランジスタを流れる電流は、基準トランジスタTr0を流れる電流と同量に規定される。
検波・増幅回路210の検知ダイオードは、コレクタとベースとが接続された(この接続によりダイオードが構成されるので、以下、この接続を「ダイオード接続」という)トランジスタTr4から成り、この検知ダイオードTr4は、トランジスタTr5と、マッチング回路MC内のキャパシタと、A点のキャパシタCaと、トランジスタTr1及びTr3から生成される抵抗成分とによって、倍電圧検波回路を形成している。即ち、検知ダイオードTr4は倍電圧整流作用を奏する。上記のトランジスタTr1が、本発明の第5の手段でいう所の差動対トランジスタTrLに相当する。
上記の検知ダイオードを有する検波・増幅回路210と、次段の増幅回路220との段間の信号伝達線路上には、容量C1,C2がそれぞれ直列に挿入されている。増幅回路220の回路構成には、検波・増幅回路210と同じ回路構成が利用されている。また、増幅回路220と次段のバッファ232との段間の信号伝達線路上にも、容量C3が直列に挿入されている。各段間容量(C1,C2,C3)の各容量値はそれぞれ何れも20pFである。
二値化回路230の前段に挿入されているバッファ232は、周知のバッファアンプの回路構成を有しており、レベルシフトの働きと、二値化回路230のCMOSのゲートが不安定になるのを防止する働きの2つの作用を同時に奏する。高周波信号の受信の有無を示す信号は、二値化回路230のCMOSにより矩形波に整形されて、最終的な起動信号として出力される。
2.検波・増幅回路210
図2に起動信号出力回路200の検波・増幅回路210の回路図を示す。検知ダイオード(Tr4)の高周波信号が入力される第1端子側には、高周波信号を効率よく入力するためのマッチング回路MCが接続されている。このマッチング回路MCは、周知の構成のものであり、図示したもの以外の公知の構成も採用可能である。図2のマッチング回路MCは、RF入力端からの高周波信号の伝送線路に対して直列に挿入されたキャパシタC00と、このキャパシタC00の出力端に接続され且つ他端が接地されたキャパシタC0 と、キャパシタC00の出力端に接続され且つ他端が接地されていないオープンハーフスタブSH と、キャパシタC00の出力端に接続され且つ上記の伝送線路上に直列に挿入されたスタブSとを有して成り、スタブSの他端がマッチング回路MCの出力端になっている。
電源Vccと接地間に、抵抗R00、R01、トランジスタTr00から成る等価負荷抵抗R0とトランジスタTr0の直列接続が配置されている。また、電源Vccと接地間にトランジスタTr3と、そのトランジスタの負荷であるトランジスタTr1とTr2とを差動対トランジスタとする差動増幅器との直列接続が配設されている。
トランジスタTr1(差動対トランジスタTrL)のベースには、トランジスタのダイオード接続によって形成される検知ダイオードTr4のエミッタが接続されている。また、検知ダイオードTr4のコレクタは、ダイオード接続のトランジスタTr5を介して電源Vccに接続されている。同様に、トランジスタTr2(差動対トランジスタTrR)のベースには、トランジスタのダイオード接続により構成された非検知ダイオードTr6のエミッタが接続され、非検知ダイオードTr6のコレクタはダイオード接続のトランジスタTr7を介して電源Vccに接続されている。また、差動対トランジスタ(Tr1,Tr2)のベース端子(A点)と接地間には、平滑キャパシタCaが配設されている。
図3は、本実施例に用いられている倍電圧検波回路の等価回路である。マッチング回路MCの容量C00、ダイオード接続のトランジスタTr4、Tr5によるダイオードTr4、Tr5、容量Cb、トランジスタTr1による抵抗Tr1とから、倍電圧検波回路が構成されている。入力端子の信号電圧が負の半周期の時、ダイオードTr5が導通し、容量C00が図中の極性に、入力信号の最大値Vmまで充電される。入力信号の次の正の半周期には、ダイオードTr5は導通せず、ダイオードTr4(検知ダイオード)が導通する。この時、容量C00に充電された電圧Vmが入力信号に加わるので、容量C2の端子電圧は約2Vmまで充電される。
したがって、このような倍電圧検波回路を用いることにより、S/N比を増加させて受信感度をさらに向上させることができる。
以下、図2を用いて、検波・増幅回路210の動作を詳しく説明する。カレントミラー回路の基準電流Iref (=Tr0のコレクタ電流)と従属電流Id(=Tr3のコレクタ電流)とは、カレントミラー回路の作用により、略一致することが保証される。即ち、トランジスタTr0、Tr3のバイアス電圧は等しいので、両トランジスタを流れる各電流量は、それらの負荷に係わらずほぼ一致する。この電流Idを、抵抗R0を用いてμAオーダーに制御すると、トランジスタTr1のベース電流Idia やトランジスタTr2のベース電流Idib は、トランジスタTr1の電流増幅率βに対してId/βとなる。よって、トランジスタTr1、Tr2のベース電流は、必然的に数十nAのオーダーとなるので、自動的に低いバイアス電流を差動対トランジスタ(Tr1,Tr2)に供給することができる。この作用により、トランジスタTr4のバイアス電流を非常に小さくすることができるので消費電力が抑制されると共に、非線形特性を有効に用いることができることから高周波信号の検出感度を向上させることができる。換言すると、トランジスタTr4、Tr6から見れば、それらのトランジスタと、それぞれ、トランジスタTr1、Tr2とのダーリントン接続により得られる極めて高い負荷抵抗を設けたことと等価となる。
上記の様なカレントミラー回路を利用した回路構成により、基準トランジスタTr0の基準電流Iref と従属電流Idとは常に同量になる(Iref =Id)。また、細部においては例えば、2つのMOSFETから成る素子M1,M2もカレントミラー回路を構成しているため、それぞれから出力される電流Iaと電流Ibとは同量になる。また、図2の記号Icは、差動対トランジスタTr2(差動対トランジスタTrR)のコレクタ電流を表している。
マッチング回路を通して高周波が入力されると、その高周波は、検知ダイオードに相当するトランジスタTr4等によって倍電圧整流されるので、これにより、A点の電位が上昇する。その結果、トランジスタTr1に流れる直流電流Iaは、Δa増加する。また、差動増幅器のアクティブ負荷を構成する2つのMOSFET(M1、M2)についても、カレントミラー回路が構成されているため、電流Ia及び反対側(M2側)の電流Ibに付いても同様にΔa増加する。
(電流の方程式)
Ia=Ib,
Iref =Id=Ia+Ic=一定 …(1)
この時、従属トランジスタTr3のコレクタ電流Idは、上記のカレントミラー回路の作用により電流Iref と常時同量であるため増加しない。また、MOSFETから成る素子M1はダイオード接続されているので、高周波信号の入力があってもB点の電位は変動しない。これは、高周波信号の入力があっても、図中の電流Voutaが変動しないことを意味するものである。
したがって、高周波信号の入力がある時には、電流Ia,Ibは、上記の通りそれぞれΔaだけ増え、また、電流Icは式(1)から判る様にΔaだけ減る。このため、高周波信号の入力がある時には、図中のVoutbは、2Δaだけ増える。言い換えれば、高周波信号の入力がある時には、C点の電位は、Voutbが2Δaだけ増える様に上昇する。これがこの検出・増幅回路210の動作原理である。
即ち、この様な回路構成に従えば、検知ダイオードTr4の直流電位(カソード端電位)と、非検知ダイオードTr6の直流電位(カソード端電位)との差分に基づいて、所望の高周波信号を効率よく高精度に検知することができる。また、この様な構成に従えば、電源電位Vccが降下した場合にも、差動増幅器の差動対トランジスタ(Tr1,Tr2)の両バイアス電位がバランス良く下がるため、出力電位の差分((検出側DC)−(参照用DC))の符号が、電源電位の降下により、不当に逆転する等の不都合が回避できる。よって、この作用により、電源電圧のドリフトによる検出誤りを効果的に防止することができる。
3.増幅回路220
図4に起動信号出力回路200の増幅回路220の回路図を示す。この回路構成は、検波・増幅回路210と殆ど同じ構成になっており、略同様の増幅作用を奏する。したがって、例えば、増幅回路220の差動対トランジスタの一方を構成しているトランジスタTr8のベース端子に位置するb点におけるバイアス電圧は、検波・増幅回路210のトランジスタTr1のA点におけるバイアス電圧と同様に、1.8〜1.9V程度の範囲に最適化されているので、トランジスタTr8の利得は、トランジスタTr1の利得と同様に高く設定されている。トランジスタTr8、Tr9のベースに接続される信号線に容量C1、C2が設けられていることが本件発明の特徴である。
シミュレータを使ってb点からトランジスタTr8に定常的に流れ込む直流電流iB を演算した所、9.26nAの電流が確認された。その時のb点の電位は1.87Vであったので、この増幅回路220の入力インピーダンス|Z|は、201.9MΩである。
図4の段間容量C1の容量値をC1とすると、上記の通りC1=20pFであるので、回路理論から、増幅回路220の入力インピーダンス|Z|とこの容量C1によって生成されるハイパスフィルタのカットオフ周波数fc は、次式(2)の通りになる。
2πfc ・C1・|Z| = 1 ,
∴ fc = 39.4[Hz] …(2)
したがって、このハイパスフィルタは、直流付近の信号のみを遮断する非常に帯域の狭いフィルタを構成している。図5−Aは、容量C1、C2を設けない時の検波・増幅回路210の出力信号V1outbの雑音の周波数分析である。この図からも明らかなように、直流で42nVあり、雑音のほとんどは20Hz以下の成分であることが理解される。したがって、容量C1を設けて、出力信号V1outbのから0〜39.4[Hz]の信号を遮断すれば、極めて効果的に雑音成分を除去することが可能となり、S/N比を向上させることができる。また、図5−Bは、容量C1、C2、C3を設けない時の増幅回路220の出力信号V2outaの雑音の周波数分析である。この図からも明らかなように、直流で19μVあり、雑音のほとんどは20Hz以下の成分であることが理解される。したがって、容量C3を設けて、出力信号V2outaから0〜39.4[Hz]の信号を遮断すれば、極めて効果的に雑音成分を除去することが可能となり、S/N比を向上させることができる。
このように、増幅回路の段間の伝送線路に容量を設けることで、雑音が後段に伝搬することを防止でき、したがって、各段の増幅回路において、雑音を極めて少なくした状態での増幅や信号レベルの判定をすることが可能となり、信号レベルの誤差が後段に伝搬しないので、極めて検出精度及び感度の高い起動信号出力回路となる。
また、高周波信号の到来周期Tに対応する周波数(fA ≡1/T)に対して、「fc ≦fA 」或いは「fc ≪fA 」成る関係を確保することができれば、これにより、フリッカー雑音などの低周波雑音やDCオフセットを取り除きつつ、高周波信号を整流した検出信号を効率よく伝達・増幅することができる。
4.シミュレーションによる効果の検証
以下のシミュレーションは、上記の起動信号出力回路200において、想定されるフリッカーノイズに対して、どの程度のS/N比が得られるかを検証するためのものである。シミュレーションは以下の条件で行った。
(1)電源
(a)電源電圧 : 3.0V(DC)
(b)電源電流 : 18μA
(2)高周波信号
(a)周波数 : 5.8GHz
(b)電力 : −60dBm
(c)入力波形 : ASK変調を受けた波形
(d)入力時間 : 781μsec
(e)入力周期T: 2.343msec
(f)1/T : 426.8Hz ( ≫39.4Hz=fc
図6−Aは、容量C1、C2を通過した後の各入力(図4のb点)を示すグラフであり、図6−Bは、容量C1を通過した後の入力V1outbの電位(図4のb点)における雑音の周波数成分を示したグラフである。また、図7−Aは、バッファ回路232の出力(二値化回路230の入力)V3out (図1)を示すグラフであり、図7−B、図7−Cは、その出力V3out に含まれる雑音の周波数成分を示すグラフである。
図5−Aと図6−Bとを比較すれば明らかなように、150Hz以下の雑音成分が大きく除去されていることが理解される。更に、図5−Bと図7−B,Cを比較すれば明らかなように、二値化回路230の入力信号V3out に現れる雑音も300Hz以下の成分が大きく除去されていることが理解される。これらは、容量C1、C2、C3を複数段の増幅器の段間に挿入したことによる効果である。
図8−Aは、増幅回路220の入力信号(図1のb点)に関するS/N比を直感的に示すために、図6−Bの入力信号と図6−Bの雑音の周波数成分とに基づいて表現した信号波形を示している。また、図8−Bは、バッファ232の出力信号(V3out )に関するS/N比を直感的に示すために、図7−Aの出力信号と図7−B,Cの雑音の周波数成分とに基づいて表現した信号波形を示している。以上のシミュレーションの結果から、本実施例1の起動信号出力回路200においては、各増幅器の段間において、検出信号のレベルに対して、ほとんど雑音がないに等しいS/N比が得られることが判る。
即ち、本発明によれば、各段間容量(例:C1,C2,C3)の挿入により、各増幅回路で生じるDCオフセットを取り除くことができ、更に、回路全体として生じるバンドパスフィルタの作用により、装置(起動信号出力回路)のS/N比を向上させることができる。また、本発明は、回路を構成する各素子の特性のバラツキに対して、補償効果があるので、起動信号出力回路を量産する際には歩留まり向上にも役立つ。
おな、上記実施例においては、検波・増幅回路210、増幅回路220、バッファ232、二値化回路230が、請求項に記載した複数段の増幅回路に該当する。増幅作用を有しない、レベル変換や、レベル比較、レベル判定も、増幅回路に含むものとする。
〔その他の変形例〕
本発明の実施形態は、上記の形態に限定されるものではなく、その他にも以下に例示される様な変形を行っても良い。この様な変形や応用によっても、本発明の作用に基づいて本発明の効果を得ることができる。
感度の向上の観点から倍電圧回路を使用することが望ましいが、用いなくとも本発明により感度や検出精度は改善される。増幅回路220は検出信号と参照信号とのレベルの大小関係を判定する判定回路であっても良い。感度向上および検出精度の向上の観点からも検波・増幅回路210には差動増幅器を用いることが望ましいが、用いなくとも本件発明により感度および検出精度は改善される。
前述の本発明の技術分野は、我が国の現行の電波法に基づいて言及したものであり、その規定に従うものであるので、国、地域若しくは時代の変遷などに伴う電波に関する法規制の変更によっては、その他の応用分野も十分にあり得るものと考えられる。
しかしながら、本発明が特定周波数の高周波信号(RF)を入力して直流電位(DC)を出力するRF/DC変換回路を有する起動信号出力回路に関することに何ら変りはなく、よって、本発明は、それを応用する状勢下での規制法(:電波法)に従う限りにおいて、その他の任意の応用も可能である。
実施例1の起動信号出力回路200の回路図 起動信号出力回路200の検波・増幅回路210の回路図 倍電圧回路の等価回路を示した回路図 起動信号出力回路200の増幅回路220の回路図 容量C1、C2、C3を設けない場合の検波・増幅回路210の出力信号V1outbを示すグラフ 容量C1、C2、C3を設けない場合の増幅器220の出力信号V2outaを示すグラフ。 高周波信号の受信時及びその直後の非受信時における増幅回路220の各入力信号(図4のb点、a点の電位)を示すグラフ 増幅回路220の各入力信号(図4のb点、a点の電位)に含まれる雑音の周波数数成分を示したグラフ 図6−Aと同一時刻におけるバッファ232の出力信号V3out を示すグラフ バッファ232の出力信号V3out に含まれる雑音の周波数成分を示したグラフ(極小点近傍の拡大図) バッファ232の出力信号V3out に含まれる雑音の周波数成分を示したグラフ 図6に基づいて、S/N比を直感的に示すための増幅回路220の入力信号を示したグラフ 図7に基づいて、S/N比を直感的に示すためのバッファ232の出力信号V3out を表現したグラフ
符号の説明
200 : 起動信号出力回路(実施例1)
210 : 検波・増幅回路
220 : 増幅回路
230 : 二値化回路
232 : バッファ
Cn : 段間容量(nは自然数)
MC : マッチング回路
Trn : トランジスタ(nは自然数)
Tr0 : カレントミラー回路を構成する基準トランジスタ
R0 : 基準トランジスタTr0の負荷
Mn : MOSFET(nは自然数)

Claims (1)

  1. 複数段の増幅回路を有して、間欠的に発信された高周波信号を検波して検出信号を生成し、その検出信号に応じて前記高周波信号が検出されたことを示す起動信号を出力する起動信号出力回路において、
    複数段の前記増幅回路のうちの初段の増幅回路は、
    前記高周波信号を入力するRF入力端に接続される伝送線路に直列に接続され、マッチング回路を構成する第1キャパシタと、
    前記第1キャパシタの出力信号を入力して検波する、コレクタとベースが接続された第1トランジスタと、
    前記第1トランジスタの電流出力端にベースが接続された第2トランジスタと、
    前記第2トランジスタのベースと接地間に接続された平滑キャパシタと、
    前記第1トランジスタの電流入力端子と電源間に接続された、コレクタとベースが接続された第3トランジスタと、
    を有し
    初段以外の増幅回路は、前記第1トランジスタと前記第2トランジスタと前記第3トランジスタの接続関係を有したトランジスタ回路から成り、
    前記増幅回路の段間のうちいずれか1つの段間における信号伝送線路上に、第2キャパシタを直列に挿入することによって、ハイパスフィルタ特性を与え、
    前記ハイパスフィルタ特性のカットオフ周波数f c は、間欠的に発信される前記高周波信号の間欠的な到来周期Tに対応する周波数(=1/T)よりも小さく設定され、
    前記カットオフ周波数f c に対して、前記第2キャパシタの容量Cは、その容量Cが入力側に接続される前記増幅回路の入力インピーダンスZに対して、
    2πf c ・C・|Z| ≒ 1
    を満たす様に設定されており、
    前記増幅回路を構成するトランジスタに流れるバイアス電流を極微小値に制限することにより前記増幅回路にローパスフィルタ特性を与え、その特性と前記第2キャパシタよるハイパスフィルタ特性とによりバンドパスフィルタ特性を与えた
    ことを特徴とする起動信号出力回路。
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