JP4223081B2 - 法面への植樹方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は法面への植樹方法に関し、より詳細には、樹木が定着することが難しい土質の法面への植樹を可能にする方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
例えば、採石や採鉱をするために山を切り崩すと、図8に示すように山Mの切り崩した後に法面Gが形成されることとなる。
そして、この法面Gには当然のことながら樹木が存しないのだから、著しく景観を損ね、又その部分だけ保水力を欠き、土砂崩れ等の災害の原因となった。
よって、このような法面に植樹をして緑化することが望まれており、このための手段としては樹木を植樹することが公知であった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、この種の法面は採石や採鉱をした後に形成されるのであるから、当然のことながら土質は石や岩盤であり、そこに樹木を植樹をすることは困難を極めた。
【0004】
勿論、松を代表とするある種の樹木は、土質が石や岩盤であってもこれらに打ち勝って根を張るので着床することが可能である。
ところが、その状態に至るまでには長年月を要し、それまで樹木を法面上に定着させて生育しなくてはならない。
この場合、従来技術では、法面に樹木を生育させるための客土を施していたが、平坦地と異なり法面に客土を施すことは多大な労力を要し、又折角客土を施しても雨水等で流出してしまうおそれがあった。
【0005】
又、客土の層が薄いと、根の成長に伴って樹木が逆に固い法面に対して浮き上がってしまい、根が法面に侵入して着床しない問題も生じた。
【0006】
更に、法面が急斜面の場合(例えば、70°近い場合もある)、作業員が法面に登って植樹作業を行うことは危険を極め、又特別な足場も必要となり、安全面及びコスト面の双方において問題があった。
【課題を解決するための手段】
この発明は上記の如き従来技術の問題点を解消した植樹方法を提供することを目的として創作されたものであり、樹木の根が突き破ることが可能な素材よりなり、外部に連通する窓を設けた複数の区画室を全長方向に連続させた土嚢に、用土を収容すると共に各窓より樹木を区画室内に植え込み、植え込みが完了した土嚢を樹木の幹部分を各窓より露出させた状態で法面に配すると共に、この土嚢を法面に固定することにより土嚢を土床として樹木を成育させ、その後土嚢を突き破って成長した樹木の根を法面に着床させることを特徴とする。
【0007】
よって、この発明の植樹方法によれば、第1に用土の収容及び樹木の植え込みは土嚢を水平に寝かせた状態で行えるので、これらの作業を法面でなく地上で実施できることとなる。
【0008】
第2に、用土の収容作業、樹木の植え込み作業、及び樹木の幹の露出は全て同一の窓より行うことが可能なので、土嚢の構造が簡易となることとなる。
【0009】
第3に、これらの作業を完了した土嚢を、樹木の幹部分を各窓より露出させた状態で吊り上げて、これを法面に沿って配すると共に、固定するだけで植樹が完了するので、法面に特別な足場を設置することが不要となり、しかも作業員の法面上での作業を最小限に止めることができる。
【0010】
【発明の実施の形態】
次にこの発明の具体的実施例を添付図面に基づいて説明する。
図中符号1は、法面Gに対し配される土嚢である。
この土嚢1を構成する素材は少なくとも可撓性を有し、且つ樹木Tの根が突き破ることが可能な程度の強度であることが必要であり、ここでは例えばポリエステル、ナイロン、ポリエチレン、ポリプロピレン、スパンボンド等からなる不織布のシートを想定している。
【0011】
この土嚢1は内部に用土を収容するための複数の区画室2を土嚢の全長方向に順次連続させることにより構成される。
尚、土嚢1はここでは完全に閉じた袋状のものを想定しているが、用土を収容できれば必ずしも完全に閉じたものでなくても、例えば端部が開放された袋状のものでもよいことは勿論である。
【0012】
図中符号3は上記の区画室に設けられる窓であり、この実施例においては土嚢1の全長方向に沿ったスリットとして構成される(図2参照)。
この窓3は各区画室2に配される樹木Tの本数及び間隔に対応して設けられるものであるが、必要に応じて一つの窓或いは複数の窓毎に各区画室2を更に区画してもよいことは勿論である(このための区画壁については図示せず)。
【0013】
以下、この土嚢の使用方法を説明する。
土嚢1は先ず、例えば地面上に水平に寝かせた状態で載置される。
【0014】
そして、この土嚢1の区画室2をスリット方向に撓ませることによりスリット状の窓3を大円状に変形させ、そこから各区画室内に用土4を流し込む。
【0015】
次いで、用土4を収容した各区画室2内に、樹木Tを窓3より植え込む。
この際に、ここでは樹木Tとして通称「コンテナ栽培」或いは「ポット栽培」と呼ばれる方法により栽培されたものを採用している。
即ち、ここでは一定の容器で栽培した樹木を、容器の内部形状に沿って固まった土5を根の周囲に付着させた状態で、この容器より引き抜いたものを使用するものであり、これにより確実な植え込みが実現することとなる(図3参照)。
【0016】
以上の作業を完了した土嚢1は植樹を希望する法面に配すためにクレーン等により吊り上げられるものであるが、この実施例の場合、土嚢1は自重により全長方向に引っ張られるので窓3は本来のスリット状に堅く閉ざされ、用土4の漏れが防止されることとなる。
【0017】
上記の土嚢1は法面Gに固定されるものであるが、ここでは固定手段としてフェンスとアンカーを採用している。
図5に示すように植樹を行う法面Gには先ず、アンカー7(ここでは長さ2乃至3mの金属製のものを想定している)が所要間隔を取って打ち込み等により埋設される。
次いで、図6に示すように植え込みが完了した土嚢1をクレーン等により吊り上げ、樹木の幹部分を各窓より露出させた状態で法面Gに配する。
そして、法面Gに配された土嚢1は図1及び図3に示すように、フェンス6により法面に対して押さえつけられると共に、フェンス6はアンカー7に固定される。
このフェンス6は少なくとも樹木Tの茎又は幹が通過可能な透かし穴を有することが必要であり、例えば線材を格子状に組み立てたものや、金網状のものが想定し得る(図6参照)。
又、ここではフェンス6を法面Gより突出させたアンカー7にワイヤー8等により結びつけることにより固定しているが、図4に示すように例えばアンカー7の頭部にリング7A又はフックを設け、このリング7A又はフックを通したワイヤー8又はその他の金物によりフェンス6を固定してもよいことは勿論である。
後者の場合は施行が容易になる他、突出させるアンカー7の部分が法面Gの表面近くで済む利点をある。
【0018】
尚、以上の実施例においては、樹木Tの根付を良好にするためと、土嚢1を法面Gの表面の凹凸に馴染ませるために土嚢1と法面Gとの間に用土10を充填している。
【0019】
以上の作業を終えた樹木Tは先ず土嚢1の内部の用土2を土床として成育し、次いで伸びた根が土嚢1を突き破って用土10により成育し、更に法面Gに達して根を張り始める。
そして、最終的には樹木Tは法面Gに完全に着床することとなる(図7の状態)。
尚、以上の段階において、樹木Tの地上に伸びる茎又は幹T1がフェンス6の透かし穴を貫通することはいうまでもない。
【0020】
一方、樹木Tはこの実施例においては施行当初は1m2 あたり8乃至10本程度を想定しているが、成育する段階で自然淘汰され最終的には3m2 あたり1本程度になると予想される。
又、フェンス6は法面Gの表土の崩落を防止するために、樹木Tの根が絡み合って自然林となるまでの約10年から20年の間は固定されておくこととなる。
【0021】
ところで、この発明の実施に適する樹木種であるが、例えば松、ハイビャクシン、ハイネズ、ツルマサキ、コトネアスター、紅シタン、ハマゴウ等が最適であるが、法面が60°以下の傾斜度の場合は一般に植えられている樹木の全てが使用可能である。
【0022】
【発明の効果】
この発明は次の特有の効果を奏する。
▲1▼樹木の植え込み作業を地上で行うことができ、植え込み後は土嚢を吊り上げて法面に配して固定するだけで植樹が完了するので、掘削等の法面上での植樹作業が不要であり、足場が悪いどのような法面であっても容易に植樹を行うことができる。
【0023】
▲2▼同様に、法面の土質が石や岩盤であっても、やはり容易に植樹を行うことができる。
【0024】
▲3▼樹木は土嚢に固定されるので、雨水等で樹木が流出してしまうおそれが皆無であり、確実な植樹が実現される。
【0025】
▲4▼樹木は、先ず土嚢を土床として着床し、次の段階において法面にその根が達するが、この場合、既に着床している土嚢はフェンスにより法面に対し確実に固定され、しかもそれ自体の重量を有しているので、根の成長に伴って樹木が固い法面に対して浮き上がってしまい、法面に侵入して着床しないというおそれがなく、確実な植樹が実現される。
【0026】
▲5▼この発明によれば、従来植樹が極めて困難であった、採石や採鉱により生じた法面を容易に緑化することができ、景観の保護及び治水に寄与することとなる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の植樹方法により植樹された法面の断面図。
【図2】この発明に使用する部材を示す斜視図。
【図3】この発明の植樹方法により植樹された法面の拡大断面図。
【図4】同上異なる実施例の法面の拡大断面図。
【図5】この発明の植樹方法の経過を示す法面の断面図。
【図6】この発明の植樹方法の経過を示す法面の断面図。
【図7】この発明の植樹方法により緑化された法面の断面図。
【図8】採石や採鉱により生じた法面の側面図。
【符号の説明】
G 法面
T 樹木
1 土嚢
2 区画室
3 窓
6 フェンス
7 アンカー

Claims (1)

  1. 次の (1) (3) の工程により法面に固定した土嚢を土床として樹木を成育させ、その後土嚢を突き破って成長した樹木の根を法面に着床させることを特徴とする法面への植樹方法。
    (1) 樹木の根が突き破ることが可能な素材よりなり、外部に連通する窓を設けた複数の区画室を全長方向に連続させた土嚢に、用土を収容すると共に各窓より樹木を区画室内に植え込む工程
    (2) 樹木の植え込みが完了した土嚢を樹木の幹部分を各窓より露出させた状態で法面に配する工程
    (3) 法面に配した土嚢を樹木の茎又は幹が通過可能なフェンスにより法面に対して押さえつけると共に上記フェンスを法面に埋設したアンカーに固定する工程
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