JP3880673B2 - 切土法面の緑化装置及び緑化工法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、切土法面の緑化装置及び緑化工法に関し、更に詳細には開削トンネル、トンネル坑口、アンダーピーニングなどの土木工事用法面や根切りなどの建築工事用法面などに対する緑化装置及び緑化工法に関する。
【0002】
【従来の技術】
切土法面の施工法は、地質、風化程度、施工期間などの条件により異なるが、一般的にはまず所定の高さまで地山を掘削して法面を形成し、次にこの法面に金網を貼り付け、更にモルタルを吹き付けることにより覆工を形成する。次に、この覆工の上から地山に複数の穴をあけて補強用の棒状部材を挿入し、この棒状部材の周囲をグラウトなどで補強する。このような工程を繰り返すことによって、地山の上方から下方にかけて切土施工を進める。
【0003】
切土法面を形成した後は、緑化工法によって草本または木本の植栽が行われる。従来の緑化工法としては、草本を植栽する場合は種子を肥料及び水に混ぜて覆工に吹き付ける種子散布工法や、これに土を加えて吹き付ける客土材吹き付け工法など、比較的薄層の吹き付けを行うのが主流であった。また、土、種子、肥料、水、添加剤などを混合した材料をエアーで覆工に吹き付ける厚層基材吹き付け工法も行われていた。
【0004】
一方、木本を植栽する場合には、根の活着に必要な層の厚さが増すため、上述の厚層基材吹き付け工法か、又はベースとしてファイバー混入土砂を吹き付け、その上に種子散布工法や客土材吹き付け工法を行っていた。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、従来の切土法面の緑化工法では、切土法面を金網、モルタル吹き付け及びグラウトなどの補強材で安定させた後、草本又は木本の植栽が行われるので、工数が増加すると共に施工期間が長くなるという問題があった。
【0006】
また、厚層基材吹き付け工法では、草本としては洋芝等が使用され、木本としてはハギ類の肥料木等に限定されるので、これらの植生が淘汰されて草本や木本が成育するまで相当長い期間を要するという問題があった。
【0007】
更に、吹き付けられた厚層基材には粘結剤が混合されているものの、基材自身が法面に露出しているため、草本及び木本がある程度まで成長する間に強風雨によって植栽基材が崩れ落ちてしまって緑化が不完全になることがあった。
【0008】
本発明の目的は、このような問題点を解決することにあり、施工期間の短縮及び工数低減が可能で、更に切土法面の緑化を迅速にしかも確実に行うことにより、緑化品質を確保することが可能な切土法面の緑化装置及び緑化工法を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明は切土法面の緑化装置及び緑化工法であり、前述の技術的課題を解決するために以下のように構成されている。すなわち、本発明は、地山を掘削して形成された切土法面に、草本又は木本を植栽して前記切土法面を緑化する緑化工法において、
所定の大きさの孔を多数有すると共に端部に開口が設けられそれぞれの前記開口を同一方向に向けて重ね合わせた扁平な第1の袋及び第2の袋と、前記第1の袋に充填した客土材と、前記第2の袋に充填した前記草木本の種子又は木本の苗を含んだ基材と、第1の袋の前記開口付近及び第1の袋の底部付近の左右両側に設けられた固定用のリングと、を備えた切土法面の緑化装置を、
前記第2の袋を上にして切土法面の上側から下側にかけて順次敷設し、上側の緑化装置の底部付近のリングと、その下側の緑化装置の開口付近のリングとを重ね合わせて同時に固定することを特徴とする。
また、前記第2の袋の外側面には、苗用ピットを設けることができる。
【0010】
本発明の切土法面の緑化装置は、第1の袋の開口と第2の袋の開口が同一の方向に向けられているので、客土材及び基材の充填が容易になる。また、第1の袋に客土材が充填され、第2の袋に基材が充填されているので、強風雨が吹き付けたとしても客土材及び基材が流されてしまうのを防止できる。更に、第2の袋に充填されている基材中の種子から成長した草木本又は苗から成長した木本は、袋の多数の孔から外部に伸び出ることができる。
【0012】
本発明の切土法面の緑化工法は、切土法面の緑化装置を切土法面に敷設するだけで切土法面を緑化することができる。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係る切土法面の緑化装置及び緑化工法の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0014】
図1は、本発明に係る切土法面の緑化装置1を示す。この緑化装置1は、扁平な第1の袋11及び第2の袋12を有している。これらの袋11、12は、図2に示すようにメッシュ状で所定の強度、耐久性及び弾性のあるシートで形成されており、所定の大きさ、例えば1辺が5mm程度の多数の角孔13が設けられている。
【0015】
図1に示すように、第1の袋11は一方の端部から他方の端部にかけて徐々に厚くなっている。厚さが最大の部分は、木本20を成育するのに十分な厚さ、例えば20cm程度の厚さになっている。そして、薄い方の端部には、全幅に亘って開口14が設けられている。開口14の付近と底部付近に固定用のリング15が取り付けられている。
【0016】
第2の袋12は第1の袋11より小さくてほぼ均一な厚さに形成され、片端部には全幅に亘って開口16が設けられている。更に、第2の袋12には、図3にも示すように適宜な大きさの円形の苗用ピット17が設けられている。この苗用ピット17は、第1の袋11の厚い部分に対応している。これらの第1の袋11及び第2の袋12は、図1に示すように互いの底を合わせて重ねられており、各袋11、12の開口14、16は同一方向に向けられている。
【0017】
第1の袋11には、客土材18が充填されている。この客土材18としては、現地発生土、樹皮、堆肥、緩効性肥料、超軽量骨材、吸水材等を混合した緑化基材を使用することができる。樹脂や超軽量骨材は、軽量化に寄与するのみならず、肥料分や根張り空間を供給することができる。吸水剤は、粉状あるいは吸水ゲル状で混合して、吸水性及び保水性を確保することができる。
【0018】
第2の袋12には、草木本19の種子21を含んだ基材22が充填されている。この基材22には、現地の表土を混入することができる。こうすることによって、その土地における潜在的な自然植生の種子が発芽するため、早期に自然で多種多様な樹林が形成される。種子21から成長した草木本19は、袋12の多数の孔13(図2)を通して外部に伸び出るようになっている。
【0019】
更に、緑化装置1の第2の袋12の苗用ピット17に木本20のポット苗あるいはプラグ苗を挿入することができ、これによって、多種多様の苗を植栽することができる。
【0020】
この緑化装置1の第1の袋11及び第2の袋12に、客土材18又は基材22を充填するときは、例えば図4に示すように棒状部材25を適宜な高さに保持し、緑化装置1の上側のリング15を棒状部材25に係止することによって吊り下げる。これで、各袋11、12の開口14、16が上方に向けられる。
【0021】
この状態で、同図の左側に示すように第1の袋11には例えばミニバックホウ26などで開口14から客土材18を投入し、第2の袋12には例えば厚層基材吹き付け機27などで開口16から基材22を投入する。これで、客土18及び基材22を簡単に充填することができる。
【0022】
このようにして、客土材18及び基材22を充填した緑化装置1は、同図の右側に示すようにそのまま棒状部材25に吊り下げておくことによって、草木本19及び木本20がある程度成長するまで養生することができる。また、緑化装置1は、適宜な角度の傾斜地に置いておくことによって養生することも可能であり、この場合には、切土法面31(図5)に敷設したときと同様な状態で草木本19及び木本20の芽吹きや根張りが形成される。
【0023】
この緑化装置1は、図5に示すように草木本19及び木本20がある程度成長した状態で、地山30を掘削して形成された切土法面31に敷設することにより、切土法面31を緑化することができる。この場合には、切土法面31に例えばロックアンカー32などを打ち込み、このロックアンカー32にリング15を固定する。また、第1の袋11を下側に配置し、第2の袋12を上側に配置する。
【0024】
この緑化装置1は、切土法面32の上側から下側にかけて順次敷設する。こうすると、上方の緑化装置1の底部側のリング15と、その直下の緑化装置1の上側のリング15とを同時に固定することができるので、施工能率を上げることができる。なお、切土法面31に緑化装置1を敷設した後に、緑化装置1の第2の袋12の苗用ピット17に木本20のポット苗(図示せず)或いはプラグ苗を挿入することもできる。
【0025】
横に隣接する緑化装置1、1は、図6に示すように例えば緑化装置1の長さの半分だけずらして配置する。これによって、横に隣接する緑化装置1、1のリング15、15が千鳥状に配置されるので、隣接するリング15、15が重なるのを防止でき、これによってリング15、15を確実に固定することができる。
【0026】
上述のように、本発明の緑化装置1は第1の袋11の開口14と第2の袋12の開口16が同一の方向に向けられているので、客土材18及び基材22の充填が容易になる。また、第1の袋11に客土材18が充填され、第2の袋12に基材22が充填されているので、切土法面31に敷設された後に強風雨が吹き付けたとしても、客土材18及び基材22が流されてしまうのを防止することができる。したがって、切土法面31の緑化を確実に行うことができるため、緑化品質の確保が可能になる。更に、客土材18及び基材22の厚さを適宜設定することにより、草木本19及び木本20を確実に植生することができる。
【0027】
また、本発明の切土法面の緑化工法は、上述の切土法面の緑化装置1を第2の袋12を上側にして切土法面31に敷設するだけで、切土法面31を緑化することができるので、緑化工事と同時に切土法面31を緑化することができると共に、施工期間の短縮及び施工工数の低減が可能になる。
【0028】
また、予め養生することにより草木本19及び木本20が適度に成育した緑化装置1を使用することができるので、草木本19及び木本20の発芽時期に合わせて緑化工事を行う必要がなく、任意の時期に緑化工事を行っても適正な植生を得ることができる。
【0029】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の切土法面の緑化装置によれば、第1の袋の開口と第2の袋の開口が同一の方向に向けられているので、客土材及び基材の充填が容易であり、製造が容易になる。また、第1の袋に客土材が充填され、第2の袋に基材が充填されているので、敷設後に強風雨が吹き付けたとしても客土材及び基材が流されてしまうのを防止できる。したがって、切土法面を確実に緑化して緑化品質を確保することができる。
本発明の緑化装置を切土法面の上側から下側にかけて順次敷設するとき、上方の緑化装置の底部側のリングと、その直下の緑化装置の上側のリングとを同時に固定することができるので、施工能率を上げることができる。
【0030】
また、本発明の切土法面の緑化工法によれば、上述の切土法面の緑化装置を切土法面に敷設するだけで切土法面を緑化することができるので、施工期間及び施工工数を大幅に短縮することができる。更に、予め養生することによって草本又は木本がある程度成育した緑化装置を使用することにより、切土法面の緑化を迅速に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る切土法面の緑化装置の断面図である。
【図2】本発明に係る切土法面の緑化装置の第1の袋及び第2の袋の素材を示す図である。
【図3】図1のA矢視図である。
【図4】本発明に係る切土法面の緑化装置の客土材及び基材を充填する方法を示す図である。
【図5】本発明に係る切土法面の緑化工法を説明する斜視図である。
【図6】本発明に係る切土法面の緑化装置の敷設方法を示す図である。
【符号の説明】
1 緑化装置
11 第1の袋
12 第2の袋
13 孔
14 第1の袋の開口
16 第2の袋の開口
18 客土材
19 草木本
20 木本
21 種子
22 基材
30 地山
31 切土法面
Claims (2)
- 地山を掘削して形成された切土法面に、草本又は木本を植栽して前記切土
法面を緑化する緑化工法において、
所定の大きさの孔を多数有すると共に端部に開口が設けられそれぞれの前記開口を同一方向に向けて重ね合わせた扁平な第1の袋及び第2の袋と、前記第1の袋に充填した客土材と、前記第2の袋に充填した前記草木本の種子又は木本の苗を含んだ基材と、第1の袋の前記開口付近及び第1の袋の底部付近の左右両側に設けられた固定用のリングと、を備えた切土法面の緑化装置を、
前記第2の袋を上にして切土法面の上側から下側にかけて順次敷設し、上側の緑化装置の底部付近のリングと、その下側の緑化装置の開口付近のリングとを重ね合わせて同時に固定することを特徴とする切土法面の緑化工法。 - 前記第2の袋の外側面には、苗用ピットを設けたことを特徴とする請求項1に記載の切土法面の緑化工法。
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