JP4222837B2 - 2,6−ジハロゲノプリンの製法 - Google Patents

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Description

【0001】
技術分野
本発明は、2,6−ジハロゲノプリンの製法に関する。さらに詳しくは、例えば、医薬品として有用なヌクレオシド類似体などの原料として有用な2,6−ジハロゲノプリンの製法に関する。
【0002】
背景技術
2,6−ジハロゲノプリンの製法としては、例えば、(A)キサンチンをピロホスホリルクロリドで塩素化する方法〔J. Am. Chem. Soc. 78, 3508-10(1956)〕、(B)ヒポキサンチンまたは6−クロロプリンのN−オキサイドをオキシ塩化リンで塩素化する方法(特公昭45-11508号公報、米国特許第3,314,938 号明細書)、(C)バルビツール酸誘導体を出発物質とし、4工程を経て製造する方法〔J. Org. Chem. 19 ,930(1954)、J. Am. Chem. Soc. 80, 404-8(1958)〕、(D)2,4−ジクロロ−5,6−ジアミノピリジンを環化して製造する方法(米国特許第2,844,576号明細書)などが知られている。
【0003】
しかしながら、前記(A)の方法には、ハロゲン化剤としてのピロホスホリルクロリドを、オキシ塩化リンから煩雑な方法で調製する必要があり、また165℃という高い反応温度を要し、さらに反応の際には耐食性の反応容器を必要とするのみならず、反応には約19時間という長時間を要するという欠点がある。
【0004】
また、前記(A)〜(D)の方法には、いずれも、工程が長く、煩雑な操作を必要とするという欠点がある。
【0005】
発明の開示
本発明は、前記従来技術に鑑みてなされたものであり、安価な出発物質を用いて、簡便に2,6−ジハロゲノプリンを効率よく製造しうる方法を提供することを目的とする。
【0006】
本発明は、
9−アセチル−2−アミノ−6−ハロゲノプリンに、亜硝酸エステルおよびハロゲン源を作用させることを特徴とする2,6−ジハロゲノプリンの製法であって、前記ハロゲン源が、金属ハロゲン化物と
(i) 塩素、塩酸、塩化水素、塩化チオニル、塩化スルフリル、メシルクロリド、オキシ塩化リン、三塩化リン、五塩化リン及びN−クロロスクシンイミドからなる群より選ばれた少なくとも1種のクロロ化剤、
(ii) 臭素、臭化水素酸、臭化水素、臭化チオニル、オキシ臭化リン、三臭化リン、五臭化リン及びN−ブロモスクシンイミドからなる群より選ばれた少なくとも1種のブロモ化剤、又は
(iii) p−トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、トリクロロ酢酸、トリフルオロ酢酸、酢酸、プロピオン酸、ギ酸及び硫酸からなる群より選ばれた少なくとも1種の酸
との組合せである2,6−ジハロゲノプリンの製法
に関する。
【0007】
発明を実施するための最良の形態
本発明によれば、7位または9位に保護基を有する2−アミノ−6−ハロゲノプリンに、ジアゾ化剤およびハロゲン源を作用させることにより、2,6−ジハロゲノプリンが得られる。
【0008】
7位または9位に保護基を有する2−アミノ−6−ハロゲノプリンは、2−アミノ−6−ハロゲノプリンを出発物質として用い、2−アミノ−6−ハロゲノプリンの7位または9位に保護基を導入することによって得ることができる。2−アミノ−6−ハロゲノプリンは、工業的に製造されており、容易に入手しうるものである。
【0009】
7位または9位に保護基を有する2−アミノ−6−ハロゲノプリンの保護基としては、アシル基、カルバモイル基などが挙げられ、これらのなかでは、アシル基が好ましい。
【0010】
アシル基の具体例としては、アセチル基、プロピオニル基、ブタノイル基、ベンゾイル基などの炭素数2〜7の分岐または置換基を有していてもよいアシル基などが挙げられる。また、カルバモイル基の具体例としては、炭素数2〜7の分岐または置換基を有していてもよいカルバモイル基が挙げられる。前記置換基としては、例えば、フェニル基などが挙げられる。これらの保護基のなかでは、アセチル基が反応性および経済性を向上させる観点から好ましい。
【0011】
2−アミノ−6−ハロゲノプリンの7位または9位に保護基を導入する方法としては、例えば、塩基の存在下、2−アミノ−6−ハロゲノプリンに、保護基を導入するための試薬を作用させる方法が挙げられる。
【0012】
なお、保護基を導入するための試薬として酸無水物を用いる場合には、塩基を用いなくても、2−アミノ−6−ハロゲノプリンの7位または9位に保護基を導入することができる。
【0013】
塩基としては、例えば、トリエチルアミンなどの有機塩基や、炭酸塩、炭酸水素塩などの無機塩基などが挙げられる。これらのなかでは、トリエチルアミンが反応性を向上させる観点から好ましい。
【0014】
塩基の量は、通常、2−アミノ−6−ハロゲノプリン1モルに対して、1〜3モル、好ましくは1.5〜2モルであることが反応性および経済性を向上させる観点から望ましい。
【0015】
保護基を導入するための試薬としては、例えば、無水酢酸、アセチルハライド、無水プロピオン酸、プロピオニルハライド、無水ブタン酸、ブタノイルハライドなどの炭素数2〜7のアシル化剤、ジt−ブチルジカーボネート、ハロゲン化t−ブチルカーボネートなどの炭素数2〜7のカルバモイル化剤などが挙げられる。これらのなかでは、アシル化剤が好ましく、無水酢酸およびアセチルハライドがより好ましく、無水酢酸がさらに好ましい。
【0016】
保護基を導入するための試薬の量は、通常、2−アミノ−6−ハロゲノプリン1モルに対して、1〜3モル、好ましくは1.1〜2モルであることが望ましい。
【0017】
2−アミノ−6−ハロゲノプリンの7位または9位への保護基の導入は、例えば、所定量の2−アミノ−6−ハロゲノプリン、塩基および保護基を導入するための試薬を混合し、これを攪拌下、加熱することによって行なうことができる。反応温度は、通常、1〜100℃程度であればよい。また、反応時間は、2−アミノ−6−ハロゲノプリンの7位または9位に保護基が導入されるまでであればよい。通常、反応時間は、1〜数時間程度である。2−アミノ−6−ハロゲノプリンの7位または9位に保護基が導入されたことは、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)によって容易に確認することができる。
【0018】
反応終了後、得られた反応液の温度を10〜30℃に調整し、有機溶媒を添加して希釈することが好ましい。有機溶媒としては、例えば、炭化水素系、アルコール系、エステル系またはエーテル系の有機溶媒などが挙げられる。有機溶媒の量は、特に限定がないが、通常、保護基を有する2−アミノ−6−ハロゲノプリン100重量部に対して100〜500重量部程度であればよい。
【0019】
得られた反応液には、7位または9位に保護基を有する2−アミノ−6−ハロゲノプリンが含まれており、この7位または9位に保護基を有する2−アミノ−6−ハロゲノプリンは、濾過により回収することができる。回収した7位または9位に保護基を有する2−アミノ−6−ハロゲノプリンは、必要により、精製をしてもよい。
【0020】
かくして7位または9位に保護基を有する2−アミノ−6−ハロゲノプリンを得ることができる。
【0021】
なお、2−アミノ−6−ハロゲノプリンを、N,N−ジメチルアセトアミドなどの有機溶媒中で、無水酢酸の存在下でアセチル化させた場合には、生成した7位または9位に保護基を有する2−アミノ−6−ハロゲノプリンを反応溶液から単離することなく、これに亜硝酸イソアミルなどのジアゾ化剤および塩化チオニルと塩化リチウムなどのハロゲン源を作用させることにより、2,6−ジハロゲノプリンを得ることができる。
【0022】
7位に保護基を有する2−アミノ−6−ハロゲノプリンの代表例としては、炭素数2〜7の分岐または置換基を有していてもよいアシル基を有する7−アシル−2−アミノ−6−クロロプリン、炭素数2〜7の分岐または置換基を有していてもよいカルバモイル基を有する7−カルバモイル−2−アミノ−6−クロロプリン、炭素数2〜7の分岐または置換基を有していてもよいアシル基を有する7−アシル−2−アミノ−6−ブロモプリン、炭素数2〜7の分岐または置換基を有していてもよいカルバモイル基を有する7−カルバモイル−2−アミノ−6−ブロモプリン、炭素数2〜7の分岐または置換基を有していてもよいアシル基を有する7−アシル−2−アミノ−6−ヨードプリン、炭素数2〜7の分岐または置換基を有していてもよいカルバモイル基を有する7−カルバモイル−2−アミノ−6−ヨードプリン、炭素数2〜7の分岐または置換基を有していてもよいアシル基を有する7−アシル−2−アミノ−6−フルオロプリン、炭素数2〜7の分岐または置換基を有していてもよいカルバモイル基を有する7−カルバモイル−2−アミノ−6−フルオロプリンなどが挙げられる。
【0023】
9位に保護基を有する2−アミノ−6−ハロゲノプリンの代表例としては、炭素数2〜7の分岐または置換基を有していてもよいアシル基を有する9−アシル−2−アミノ−6−クロロプリン、炭素数2〜7の分岐または置換基を有していてもよいカルバモイル基を有する9−カルバモイル−2−アミノ−6−クロロプリン、炭素数2〜7の分岐または置換基を有していてもよいアシル基を有する9−アシル−2−アミノ−6−ブロモプリン、炭素数2〜7の分岐または置換基を有していてもよいカルバモイル基を有する9−カルバモイル−2−アミノ−6−ブロモプリン、炭素数2〜7の分岐または置換基を有していてもよいアシル基を有する9−アシル−2−アミノ−6−ヨードプリン、炭素数2〜7の分岐または置換基を有していてもよいカルバモイル基を有する9−カルバモイル−2−アミノ−6−ヨードプリン、炭素数2〜7の分岐または置換基を有していてもよいアシル基を有する9−アシル−2−アミノ−6−フルオロプリン、炭素数2〜7の分岐または置換基を有していてもよいカルバモイル基を有する9−カルバモイル−2−アミノ−6−フルオロプリンなどが挙げられる。
【0024】
7位または9位に保護基を有する2−アミノ−6−ハロゲノプリンのなかでは、9−アシル−2−アミノ−6−クロロプリンが好ましく、9−アセチル−2−アミノ−6−クロロプリンがより好ましい。
【0025】
次に、7位または9位に保護基を有する2−アミノ−6−ハロゲノプリンに、ジアゾ化剤およびハロゲン源を作用させることにより、2,6−ジハロゲノプリンを得ることができる。
【0026】
ジアゾ化剤としては、亜硝酸ナトリウム、亜硝酸カリウムなどの亜硝酸塩、亜硝酸エステル、塩化ニトロシル、ニトロシル硫酸、一酸化窒素などが挙げられる。これらのなかでは、亜硝酸エステルが反応性および収率を向上させる観点から好ましい。
【0027】
亜硝酸エステルとしては、亜硝酸イソアミル、亜硝酸イソブチル、亜硝酸エチル、亜硝酸プロピル、亜硝酸イソプロピル、亜硝酸ブチル、亜硝酸tert−ブチル、亜硝酸アミルなどが挙げられる。
【0028】
亜硝酸エステルのなかでは、反応性を向上させ、副生物の生成を抑制する観点から、亜硝酸イソアミル、亜硝酸イソブチルおよび亜硝酸tert−ブチルが好ましく、亜硝酸イソアミルがより好ましい。
【0029】
ジアゾ化剤の量は、反応性および経済性を向上させる観点から、7位または9位に保護基を有する2−アミノ−6−ハロゲノプリン1モルあたり、1〜3モル、好ましくは1.1〜2モルであることが望ましい。
【0030】
ハロゲン源としては、金属ハロゲン化物および非金属ハロゲン化物が挙げられ、これらは、それぞれ単独でまたは混合して用いることができる。
【0031】
金属ハロゲン化物としては、例えば、金属塩化物、金属臭化物などが挙げられる。
【0032】
金属塩化物としては、塩化リチウム、塩化カリウム、塩化ナトリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、塩化亜鉛、塩化ニッケル、塩化第一銅、塩化第二銅などが挙げられる。これらのなかでは、塩化リチウムが反応性および収率を向上させる観点から好ましい。
【0033】
金属臭化物としては、臭化リチウム、臭化カリウム、臭化ナトリウム、臭化カルシウム、臭化マグネシウム、臭化亜鉛、臭化ニッケル、臭化第一銅、臭化第二銅などが挙げられる。
【0034】
非金属ハロゲン化物としては、クロロ化剤、ブロモ化剤、フッ素化合物などが挙げられる。
【0035】
クロロ化剤としては、塩素、塩酸、塩化水素、塩化チオニル、塩化スルフリル、メシルクロリド、オキシ塩化リン、三塩化リン、五塩化リン、N−クロロスクシンイミドなどが挙げられる。これらのなかでは、塩化チオニルが反応性および収率を向上させる観点から好ましい。
【0036】
ブロモ化剤としては、臭素、臭化水素酸、臭化水素、臭化チオニル、オキシ臭化リン、三臭化リン、五臭化リン、N−ブロモスクシンイミドなどが挙げられる。
【0037】
フッ素化合物としては、三フッ化ホウ素錯体、フッ化水素などが挙げられる。三フッ化ホウ素錯体としては、三フッ化ホウ素・ジエチルエーテル錯体、三フッ化ホウ素・テトラヒドロフラン錯体などが挙げられる。
【0038】
本発明においては、金属ハロゲン化物と非金属ハロゲン化物との組合せが反応性および収率を向上させる観点から好ましい。なかでも特に、金属ハロゲン化物として塩化リチウムを用い、非金属ハロゲン化物として塩化チオニルを用いることが、反応性および収率を向上させ、副生物の生成を抑制する観点から好ましい。
【0039】
金属ハロゲン化物と非金属ハロゲン化物とを組合せて用いる場合、金属ハロゲン化物と非金属ハロゲン化物との比率(金属ハロゲン化物/非金属ハロゲン化物:モル比率)は、反応性、収率および経済性を向上させ、副生物の生成を抑制する観点から、1/1〜10/1であることが好ましく、2/1〜6/1であることがより好ましい。
【0040】
また、本発明においては、前記金属ハロゲン化物と酸とを組合せて用いてもよい。この場合、酸として、p−トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、トリクロロ酢酸、トリフルオロ酢酸、酢酸、プロピオン酸、ギ酸、硫酸などを用いることが好ましい。
【0041】
金属ハロゲン化物と酸とを組合せて用いる場合、金属ハロゲン化物と酸との比率(金属ハロゲン化物/酸:モル比率)は、反応性、収率および経済性を向上させ、副生物の生成を抑制する観点から、1/1〜10/1であることが好ましく、2/1〜6/1であることがより好ましい。
【0042】
ハロゲン源の量は、反応性を向上させ、副生成物の生成を抑制し、経済性を高める観点から、7位または9位に保護基を有する2−アミノ−6−ハロゲノプリン1モルあたり、1〜3モル、好ましくは1.0〜1.5モルであることが望ましい。
【0043】
7位または9位に保護基を有する2−アミノ−6−ハロゲノプリンに、ジアゾ化剤およびハロゲン源を作用させるに際して、反応溶媒を用いることができる。
【0044】
反応溶媒として、有機溶媒を好適に使用することができる。
【0045】
有機溶媒としては、例えば、テトラヒドロフラン、アセトニトリル、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド、1,2−ジメトキシエタン等の極性溶媒、酢酸、プロピオン酸、ギ酸等の有機酸等が挙げられる。これらのなかでは、反応性および収率を向上させ、副生物の生成を抑制する観点から、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミドおよびテトラヒドロフランが好ましく、N,N−ジメチルアセトアミドがより好ましい。
【0046】
反応溶媒の量は、特に限定がないが、通常、7位または9位に保護基を有する2−アミノ−6−ハロゲノプリン100重量部に対して100〜2000重量部、好ましくは500〜1000重量部であることが望ましい。
【0047】
かくして、反応溶媒に金属ハロゲン化物および7位または9位に保護基を有する2−アミノ−6−ハロゲノプリンを添加することにより、7位または9位に保護基を有する2−アミノ−6−ハロゲノプリンの懸濁液が得られる。
【0048】
ハロゲン源としてハロゲン化剤を用いる場合には、得られた7位または9位に保護基を有する2−アミノ−6−ハロゲノプリンの懸濁液に、ハロゲン化剤およびジアゾ化剤を添加する。そのときの懸濁液の液温は、ハロゲン源およびジアゾ化剤の種類などによって異なるので一概には決定することができないが、反応性を向上させ、副生成物の生成を抑制する観点から、−10〜80℃程度であることが好ましい。
【0049】
かくして得られた反応溶液には、生成した7位または9位に保護基を有する2,6−ジハロゲノプリンが含まれている。
【0050】
2,6−ジハロゲノプリンの保護基の脱離は、反応溶液に水を加えることによって行なうことができる。保護基の脱離は弱酸性、例えば、pHが3〜7で進行し、反応溶液が強酸性である場合には、炭酸水素塩、炭酸塩などの無機塩基や、トリエチルアミンなどの有機塩基を添加することにより、そのpHを3〜7に調整してもよい。
【0051】
得られた反応溶液に常法により後処理を施すことにより、生成した2,6−ジハロゲノプリンを回収することができる。
【0052】
例えば、反応溶液から、アセトニトリル、酢酸エチル、メチルイソブチルケトンなどを用いて、生成した2,6−ジハロゲノプリンを抽出した後、抽出液を濃縮し、生成した2,6−ジハロゲノプリンを結晶として回収することができる。あるいは、抽出液に、例えば、水酸化ナトリウム水溶液などの塩基性水溶液を加え、2,6−ジハロゲノプリンを抽出した後、塩酸などの酸を加え、水溶液を中和し、析出した2,6−ジハロゲノプリンの結晶を濾過して回収することができる。その後、常法により、2,6−ジハロゲノプリンを精製し、乾燥してもよい。
【0053】
かくして、本発明によれば、安価な2−アミノ−6−ハロゲノプリンを出発物質とする7位または9位に保護基を有する2−アミノ−6−ハロゲノプリンを用いることにより、目的化合物である2,6−ジハロゲノプリンを簡便にかつ効率よく製造することができる。
【0054】
次に、本発明を実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明はかかる実施例のみに限定されるものではない。
【0055】
実施例1〔9−アセチル−2−アミノ−6−クロロプリンの製造〕(参考例)
無水酢酸204.2g(2.00mol)、トリエチルアミン202.4g(2.00mol)および2−アミノ−6−クロロプリン169.6g(1.00mol)の混合物を80℃で1時間攪拌した。得られた懸濁液を25℃に冷却した後、トルエン400mLで希釈し、濾過した。得られた結晶をイソプロパノール300mLに懸濁し、再度濾過した。得られた結晶を60℃、減圧下で乾燥し、9−アセチル−2−アミノ−6−クロロプリンの白色粉末211.8gを得た(収率100%)。
【0056】
〔得られた9−アセチル−2−アミノ−6−クロロプリンの物性〕
1H-NMR(400MHz,DMSO-d6):δ(ppm)=2.83(s,3H),7.26(br.s,2H),8.55(s,1H)
13C-NMR(100MHz,DMSO-d6):δ(ppm)=24.6,124.0,139.7,150.1,152.9,160.1,167.7
【0057】
実施例2〔2,6−ジクロロプリンの製造〕
塩化リチウム16.0g(0.377mol)をN,N−ジメチルアセトアミド160.0gに溶解した後、30℃に冷却し、9−アセチル−2−アミノ−6−クロロプリン20.0g(0.095mol)を加えた。この懸濁液に、塩化チオニル11.8g(0.099mol)および亜硝酸イソアミル16.6g(0.14mol)を10℃以下で、1時間かけて併注した。併注後、室温にて3時間攪拌した。
【0058】
反応終了後、反応溶液に炭酸水素ナトリウム16.0gおよび水160gを加えた。高速液体クロマトグラフィーによって反応溶液を分析した結果、2,6−ジクロロプリンが15.0g含まれていた。反応収率は84.0%であった。
【0059】
反応溶液を酢酸エチル150mLで5回抽出し、抽出液を合わせた後、4N−水酸化ナトリウム水溶液30gにより2回、2N−水酸化ナトリウム水溶液30gにより1回再度抽出した。得られたアルカリ抽出液を合わせた後、35%塩酸でpHを5に調整し、酸析した。濾過後、得られた結晶を60℃、減圧下で乾燥し、2,6−ジクロロプリンの淡黄色粉末12.6gを得た(収率70.5%)。
【0060】
〔得られた2,6−ジクロロプリンの物性値〕
融点:188-190℃(文献値:188-190℃)
1H-NMR(400MHz,DMSO-d6):δ(ppm)=8.74(s,1H)、14.15(s,1H)
13C-NMR(100MHz,DMSO-d6):δ(ppm)=128.3,147.2,150.6,155.9
【0061】
実施例3
実施例2において、亜硝酸イソアミル16.6g(0.14mol)の代わりに亜硝酸イソブチル14.4g(0.14mol)を用い、反応溶液の分析までの操作を実施例2と同様にして行った。
【0062】
反応溶液を分析した結果、得られた2,6−ジクロロプリンの反応収率は79.6%であった。
【0063】
実施例4
実施例2において、亜硝酸イソアミル16.6g(0.14mol)の代わりに亜硝酸tert−ブチル14.4g(0.14mol)を用い、反応溶液の分析までの操作を実施例2と同様にして行った。
【0064】
反応溶液を分析した結果、得られた2,6−ジクロロプリンの反応収率は70.1%であった。
【0065】
実施例5
実施例2において、塩化チオニル11.8g(0.099mol)の代わりに塩化スルフリル13.4g(0.099mol)を用い、反応溶液の分析までの操作を実施例2と同様にして行った。
【0066】
反応溶液を分析した結果、得られた2,6−ジクロロプリンの反応収率は73.7%であった。
【0067】
実施例6
実施例2において、塩化チオニル11.8g(0.099mol)の代わりにオキシ塩化リン15.2g(0.099mol)を用い、反応溶液の分析までの操作を実施例2と同様にして行った。
【0068】
反応溶液を分析した結果、得られた2,6−ジクロロプリンの反応収率は65.2%であった。
【0069】
実施例7
実施例2において、N,N−ジメチルアセトアミド160.0gの代わりに、N,N−ジメチルホルムアミド160.0gを用い、反応溶液の分析までの操作を実施例2と同様にして行った。
【0070】
反応溶液を分析した結果、得られた2,6−ジクロロプリンの反応収率は68.3%であった。
【0071】
実施例8
実施例2において、N,N−ジメチルアセトアミド160.0gの代わりに、テトラヒドロフラン160.0gを用い、反応溶液の分析までの操作を実施例2と同様にして行った。
【0072】
反応溶液を分析した結果、得られた2,6−ジクロロプリンの反応収率は56.0%であった。
【0073】
実施例9
N,N−ジメチルアセトアミド100mLに塩化リチウム10.0g(0.236mol)、2−アミノ−6−クロロプリン10.0g(0.059mol)および無水酢酸7.2g(0.071mol)を加えて攪拌した。得られた懸濁液を45〜50℃に昇温し、45分間攪拌し、得られた反応溶液を10℃以下に冷却し、塩化チオニル7.4g(0.062mol)および亜硝酸イソアミル10.4g(0.089mol)を1時間かけて併注した。併注後、15℃以下で17時間攪拌した。
【0074】
反応溶液を分析した結果、得られた2,6−ジクロロプリンの反応収率は76.6%であった。
【0075】
実施例10(参考例)
9−アセチル−2−アミノ−6−クロロプリン1.00g(4.72mmol)および三フッ化ホウ素・ジエチルエーテル錯体1.00g(7.02mmol)をテトラヒドロフラン25mLと混合した。得られた混合物を45〜50℃に加熱し、亜硝酸イソアミル1.10g(9.39mmol)を滴下した。滴下終了後、その溶液をさらに1時間攪拌した。その後、その溶液に水50mLを加え、メチルイソブチルケトン(50mL×3)で抽出した。有機溶媒を減圧下留去し、得られた残渣をシリカゲルクロマトグラフィーで精製し、2−フルオロ−6−クロロプリン0.39g(2.26mmol)を得た(収率48%)。
【0076】
1H-NMR(DMSO-d6)8.69(s,1H)
13C-NMR(DMSO-d6)128.0,147.4,148.4,155.0,157.1
MS(El)m/z 174(M+,35),172(M+ ,100),137(43)
【0077】
実施例11(参考例)
実施例10において、三フッ化ホウ素・ジエチルエーテル錯体の代わりに12%フッ化水素・1,2−ジメトキシエタン溶液6mLを用い、反応温度を−10℃に変更した以外は、実施例10と同様にして操作を行ない、2−フルオロ−6−クロロプリンを得た。
【0078】
実施例12
実施例2において、塩化チオニル11.8g(0.099mol)の代わりにメタンスルホン酸9.5g(0.099mol)を用い、反応溶液の分析までの操作を実施例2と同様にして行なった。反応溶液を分析した結果、得られた2,6−ジクロロプリンの反応収率は68.5%であった。
【0079】
実施例13
実施例2において、塩化チオニル11.8g(0.099mol)の代わりに硫酸4.9g(0.050mol)を用い、反応溶液の分析までの操作を実施例2と同様にして行なった。反応溶液を分析した結果、得られた2,6−ジクロロプリンの反応収率は71.6%であった。
【0080】
産業上の利用可能性
本発明の方法によれば、安価な出発物質を用いて、簡便に2,6−ジハロゲノプリンを効率よく製造することができる。得られた2,6−ジハロゲノプリンは、J. Org. Chem. 57, 3887-3894(1992)に記載されているヌクレオシド誘導体の合成に好適に使用することができる。

Claims (5)

  1. 9−アセチル−2−アミノ−6−ハロゲノプリンに、亜硝酸エステルおよびハロゲン源を作用させることを特徴とする2,6−ジハロゲノプリンの製法であって、前記ハロゲン源が、金属ハロゲン化物と
    (i) 塩素、塩酸、塩化水素、塩化チオニル、塩化スルフリル、メシルクロリド、オキシ塩化リン、三塩化リン、五塩化リン及びN−クロロスクシンイミドからなる群より選ばれた少なくとも1種のクロロ化剤、
    (ii) 臭素、臭化水素酸、臭化水素、臭化チオニル、オキシ臭化リン、三臭化リン、五臭化リン及びN−ブロモスクシンイミドからなる群より選ばれた少なくとも1種のブロモ化剤、又は
    (iii) p−トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、トリクロロ酢酸、トリフルオロ酢酸、酢酸、プロピオン酸、ギ酸及び硫酸からなる群より選ばれた少なくとも1種の酸
    との組合せである2,6−ジハロゲノプリンの製法。
  2. 亜硝酸エステルが亜硝酸イソアミル、亜硝酸イソブチルまたは亜硝酸tert−ブチルである請求項記載の製法。
  3. ハロゲン源が、金属ハロゲン化物とクロロ化剤との組合せであり、金属ハロゲン化物が塩化リチウムであり、クロロ化剤が塩化チオニルである請求項1又は2記載の製法。
  4. 塩基の存在下、2−アミノ−6−ハロゲノプリンに、無水酢酸を作用させ、得られた9−アセチル−2−アミノ−6−ハロゲノプリンを使用する請求項1〜3いずれか記載の製法。
  5. 塩基がトリエチルアミンである請求項4記載の製法。
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