JP4214815B2 - 車両用電子制御装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、車両用電子制御装置に関し、特に、イグニッションスイッチやキースイッチなど外部から入力される所定のスイッチ信号(以後、イグニッションスイッチという)のオフ時に、車両のエンジン等の制御対象機器を制御するための制御データを保持する車両用電子制御装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
イグニッションオフ時に、エンジン等の制御対象機器を制御するための制御データを保持するものとして、特許文献1及び特許文献2に示される装置が知られている。
【0003】
特許文献1の装置は、電源バックアップされた揮発性メモリであるRAMを備え、定期的に、エンジン等の制御を実施するための制御データをRAMに書き込む。そして、イグニッションスイッチがオフされたときには、そのRAMで制御データを保持しておく。その後、イグニッションスイッチがオンされると、RAMに書き込まれている制御データを読出し、その制御データを用いてエンジン等の制御を実行する。また、特許文献2の装置は、揮発性メモリとしてのスタティックRAM(SRAM)及び不揮発性メモリとしてのフラッシュPROMを備え、エンジン制御に利用される学習値等の制御データは、SRAMに記憶させつつ、所定時間毎に、SRAMからフラッシュPROMに書き込む。このようにして、不揮発性メモリの書き込み回数を低減しつつ、制御データの継続的な記憶を可能としている。
【0004】
【特許文献1】
特開2002−30988号公報
【0005】
【特許文献2】
特開平9−244707号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
上述した特許文献1の装置では、常時、RAMに電源を供給する必要があるため、イグニッションスイッチがオフされている間にも、電源回路及びRAMに暗電流が流れ、車両のバッテリを消費する要因となってしまう。電源回路及びRAMの暗電流は、RAMでの消費電流と、電源回路における電圧変換ロス電流によるものであり、両者を合計すると、例えば0.6mA程度の電流値となる。
【0007】
そのため、特許文献2の装置のように、SRAMではなくフラッシュPROMに制御データを記憶させ、かつSRAMへの電源供給を停止することによって、暗電流を低減させることが考えられる。しかしながら、フラッシュPROMのような不揮発性メモリは、その書き込み回数に制限があるため(例えば10万回)、あまり短い時間間隔でフラッシュPROMの書き込み処理を行なうことはできない。例えば、特許文献2には、書き込みは1時間ごとに行なうと記載されている。
【0008】
しかしながら、1時間毎に書き込むようにしても、日常的に、車両が長時間継続して運転される場合には、不揮発性メモリへの書き込み回数が増大してしまう。一方、車両が主に短距離のみを走行するような用途で使用された場合、1時間以上継続して運転されないため、制御データがフラッシュPROMに全く書き込まれない事態が発生する可能性がある。この制御データは、例えば、特許文献2に記載されているように、エンジンの状態を理論空燃比に近づけるための補正係数学習値、または、各センサの経年変化を補正するためのセンサ補正学習値や、自動変速機におけるクラッチの磨耗を考慮した変速タイミングに関する学習値を含む。このような学習値がフラッシュPROMに書き込まれずに、イグニッショスイッチのオフやバッテリ交換等によってSRAMから消失してしまうと、エンジン制御や自動変速機制御に関する制御性が悪化することが懸念される。
【0009】
すなわち、特許文献2に記載されるように、単に所定時間毎に揮発性メモリから不揮発性メモリへの制御データの書き込みを行なうだけでは、書き込み回数の増大や制御データを確実に保持するといった点で、十分な効果が得られない場合がある。
【0010】
本発明は、上記の点に鑑みてなされたものであり、揮発性メモリ及び不揮発性メモリを備えた車両用電子制御装置において、揮発性メモリの暗電流を低減するとともに、不揮発性メモリへの書き込み回数を低減しつつ、イグニッションのオフ時に確実に制御データを保持することを目的とするものである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の車両用電子制御装置は、
車両に搭載された制御対象機器を制御するマイコンと、
外部から入力される所定のスイッチ信号がオンされたとき、マイコンへの動作電源の供給を開始し、そのスイッチ信号がオフされたことに基づいて、動作電源の供給を停止する第1の電源回路と、
スイッチ信号がオフされてからの経過時間をカウントし、そのカウント時間が所定時間に達すると、第1の電源回路を起動するタイマ回路と、
スイッチ信号がオフされた後においても、タイマ回路に動作電源を供給する第2の電源回路と、
第1の電源回路からの電源供給を受けて、マイコンにおける演算処理結果を一時的に記憶する第1の揮発性メモリと、
第2の電源回路からの電源供給を受けて、制御対象機器を制御するための学習値を含む制御データを記憶する第2の揮発性メモリと、
第2の揮発性メモリに記憶された制御データを保存するための不揮発性メモリとを備え、
マイコンは、タイマ回路によって所定時間がカウントされたとき、第1の電源回路からの動作電源の供給を受けて作動し、第2の揮発性メモリに記憶されている制御データを不揮発性メモリに書き込んで保存し、その後、第2の電源回路から第2の揮発性メモリへの電源供給を停止させることを特徴とする。
【0012】
このように、スイッチ信号のオフ後、所定時間が経過するまでは、制御データが第2の揮発性メモリに記憶されるため、書き込みや読出しのアクセス性を良好に保つことができるとともに、不揮発性メモリへの書き込み回数を大幅に低減することができる。さらに、スイッチ信号のオフから所定時間経過すると、第2の揮発性メモリに記憶された制御データは不揮発性メモリに書き込まれ、その後、第2の電源回路から第2の揮発性メモリへの電源供給が停止される。従って、第2の揮発性メモリへの電源供給が停止される時には、必ず、制御データが不揮発性メモリに書き込まれるので、従来技術のように、制御データが不揮発性メモリに書き込まれないといった事態の発生を確実に防止することができる。また、スイッチ信号のオフ後、スイッチ信号が再びオンされるまでの期間が上述した所定時間以上となるような長時間に渡る場合には、第2の電源回路から第2の揮発性メモリへの電源供給を停止させるので、第2の揮発性メモリにおける暗電流も低減することができる。
【0013】
請求項2に記載の車両用電子制御装置は、第2の電源回路による第2の揮発性メモリへの電源供給が停止したか否かを示すフラグを当該第2の揮発性メモリに設け、マイコンは、第1の電源回路から動作電源の供給を受けて動作を開始したとき、フラグの状態に基づいて第2の揮発性メモリへの電源供給が停止したと判別した場合、不揮発性メモリから制御データを読み出して第2の揮発性メモリに記憶することを特徴とする。
【0014】
例えば、電源供給が停止したか否かを示すフラグとして、電源供給が停止していない場合には「1」あるいは「$5A」等の値を示すように設定すると、電源供給が停止された場合には、第2の揮発性メモリの内容が破壊され、フラグの状態も「0」あるいは「$5A以外」等の値となる。これにより、制御データを不揮発性メモリから読み出す必要があるか否かを容易に判定することができる。
【0015】
請求項3に記載の車両用電子制御装置においては、マイコンが、第1の電源回路から動作電源の供給を受けて動作を開始したとき、タイマ回路のカウント時間、もしくは電源起動信号を参照することにより、スイッチ信号のオンにより動作を開始したのか、タイマ回路による所定時間のカウントにより動作を開始したのかを判別することを特徴とする。マイコンが、スイッチ信号がオンされたときに実行すべき処理と、タイマ回路が所定時間をカウントしたときに実行すべき処理とは異なる。そこで、上述したように、マイコンがタイマ回路のカウント時間もしくは電源起動信号を参照するように構成することにより、マイコンがいずれの処理を実行すべきか容易に判定することができる。
【0016】
請求項4に記載の車両用電子制御装置においては、マイコンが、不揮発性メモリへの制御データの書き込み前に、少なくとも温度及び動作電圧に関して所定の書込実行条件を満足しているか否かを判別し、当該書込実行条件が満足されている場合に、不揮発性メモリへの制御データの書き込みを実行することを特徴とする。不揮発性メモリへの書き込みに関しては、環境温度や動作電圧が所望の範囲外の場合、書込エラーが発生する可能性が生じる。そのため、少なくとも温度及び動作電圧が不揮発性メモリの書き込みに適しているか否か、つまり、書込実行条件を満足しているか否かを判定し、書込実行条件が満足されている場合のみ、不揮発性メモリへの制御データの書き込みを実行する。これにより、書込エラーの発生を低減することができる。
【0017】
但し、制御データが不揮発性メモリに書き込まれるのは、スイッチ信号がオフされてから所定時間が経過した時点であり、車両のエンジン等の各部の温度も常温程度まで低下していることが多い。また、エンジンが停止しているため、電圧変動も僅かである。このため、通常は、安定した書き込みを行なうことができる。
【0018】
請求項5に記載の車両用電子制御装置においては、マイコンが、所定の書込実行条件が満足されない場合、書込実行条件が満足されたか否かの判別を所定回数実行し、当該書込実行条件が1度も満足されない場合には、書込条件エラーとして、不揮発性メモリへの書き込みを中止することを特徴とする。このように、書込実行条件が満足されたか否かの判別を所定回数実行することにより、制御データの不揮発性メモリへの書き込みが成功する確率を高めることができる。ただし、そのような所定回数の判別にもかかわらず1度も書込実行条件が満足されない場合には、不揮発性メモリへの書き込みを中止する。これにより、無駄にマイコンが動作を継続して、電力の消費量が増大することを防止できる。
【0019】
書込実行条件が満足されたか否かの判別を所定回数実行する場合には、請求項6に記載したように、書込実行条件を緩和することが好ましい。この書込実行条件を緩和する場合の例としては、書き込みを実行する温度範囲及び/または動作電圧の範囲を1回のみ広げても良いし、判別が実行されるたびにそれらの範囲を序々に拡大させても良い。
【0020】
また、上述した書込条件エラーが生じた場合には、請求項7に記載したように、スイッチ信号がオンとなったときに、その旨の警告を行なうことが好ましい。これにより、制御データの書き込みが不調であった旨を車両の運転者等に知らせることができる。なお、スイッチ信号がオフのときには、運転者が不在であることが多いため、スイッチ信号がオンとなったことを条件として警告を行なう。これにより、運転者不在時にランプ等を用いた警告を行なった場合に消費される暗電流を低減することができる。
【0021】
請求項8に記載の車両用電子制御装置においては、マイコンが、第2の揮発性メモリに記憶された制御データが正しく不揮発性メモリに書き込まれたか否かを判別し、正しく書き込まれていないと判別した場合には、第2の電源回路から第2の揮発性メモリへの電源供給を維持することを特徴とする。
【0022】
書込実行条件が満足されて不揮発性メモリに書き込みが行なわれた場合であっても、不揮発性メモリへの書き込みが正しく行なわれない場合も有り得る。そのため、例えば、不揮発性メモリに書き込んだ制御データを読み出して、第2の揮発性メモリに記憶されている制御データと対比する等の処理により、制御データが不揮発性メモリに正しく書き込まれたか否かを判別することが好ましい。そして、正しく書き込まれていないと判別した場合には、制御データを保持するため、第2の揮発性メモリへの電源供給を維持する。
【0023】
制御データが不揮発性メモリに正しく書き込まれていないと判別した場合、さらに、請求項9に記載したように、制御データの書き込みを複数回実行し、その複数回の制御データの書き込みがいずれも不調である場合、書込データエラーとして、不揮発性メモリへの書き込みを中止することが好ましい。これにより、マイコンにおける書き込み処理が過度に繰り返され、電力の消費量が増大することを防止できる。
【0024】
請求項10に記載の車両用電子制御装置では、書込データエラーが生じた場合、マイコンが、スイッチ信号がオンとなったときに、その旨の警告を行なうことを特徴とする。これにより、請求項7と同様に、制御データの書き込みが不調であった旨を車両の運転者等に知らせることができるとともに、警告時の暗電流を低減することができる。
【0025】
また、請求項11に記載の車両用制御装置においては、マイコンが、スイッチ信号がオン・オフされた回数をカウントし、そのカウント回数が所定回数に達する間に、一度も不揮発性メモリに制御データが書き込まれなかった場合、不揮発性メモリへの制御データの書き込みを実行することを特徴とする。
【0026】
上述した所定時間が経過する以前に、車両の運転が繰り返される場合、第2の揮発性メモリに記憶される制御データのみが最新のものとなり、不揮発性メモリには、古い制御データが保存されることになる。この制御データがエンジン等の制御に関する学習値を含む場合には、第2の揮発性メモリにおける制御データの消失に備えて、不揮発性メモリに保存される制御データも更新することが望ましい。そのため、上述したように、制御データの不揮発性メモリへの強制書き込みを実行する。これにより、タイマ回路が所定時間をカウントする以前に車両の運転が繰り返されても、不揮発性メモリの保存する制御データを更新することができる。従って、例えば、バッテリ交換等でバッテリからの電源供給が突然停止した場合であっても、その更新した制御データを不揮発性メモリから読み出すことにより、制御性を悪化させることなく制御対象機器の制御を行なうことができる。
また、請求項12に記載したように、マイコンは、第2の電源回路から第2の揮発性メモリへの電源供給を停止させる際に、タイマ回路への電源供給も停止させることが好ましい。
【0027】
【発明の実施の形態】
以下、本発明による車両用電子制御装置の実施の形態について、図面を用いて説明する。なお、本実施形態では、車両用電子制御装置を、車両のエンジンや自動変速機を制御する装置に適用した例について説明するが、ブレーキ、サスペンション、エアバッグ等のその他の車載機器の制御装置として適用することも可能である。
【0028】
図1に、本実施形態における電子制御装置(ECU)1の全体構成を示す。図1に示すように、ECU1は、主に、エンジンや自動変速機を制御するための各種の処理を実行するマイコン3と、イグニッションスイッチ13がオフされて、マイコン3が動作を停止している時間をカウントするためのタイマ回路5と、タイマ回路5を動作させるための5vの動作電圧Vosを出力する電源回路7と、エンジン制御や変速機制御に利用される学習値等の制御データを保存する不揮発性メモリ9と、マイコン3及び不揮発性メモリ9に5vの動作電圧Vomを出力する電源回路11とを備える。
【0029】
電源回路7には、スイッチ13を介して、車両のバッテリ23からバッテリ電圧VBが供給される。電源回路7はバッテリ電圧VBが供給されたとき、動作電圧Vosを生成して出力する。スイッチ13は、スイッチ駆動回路15からの駆動信号によって、そのオン・オフ状態が切り替えられる。すなわち、スイッチ駆動回路15の駆動信号がハイレベルである場合にオンされ、ローレベルである場合にオフされる。
【0030】
このスイッチ駆動回路15には、後述するメインリレー21からの信号と、マイコン3からの指示信号PIIが入力される。そして、スイッチ駆動回路15は、スイッチ13のオンを指示するハイレベルの指示信号PIIがマイコン3から出力されたとき、そのハイレベルの信号を保持する保持回路51を有している。この保持回路51は、ハイレベルの信号の保持をリセットするためのローレベルの指示信号PIIがマイコン3から出力されるまで、継続してハイレベルの信号を出力する。この保持回路51の出力信号と、メインリレー21からの信号とがOR機能を有する駆動回路53を介して、スイッチ13に与えられている。従って、保持回路51の出力信号とメインリレー21からの信号のいずれかがハイレベルであれば、駆動回路53からハイレベルの駆動信号が出力されてスイッチ13がオンし、電源回路7にバッテリ電圧VBを供給する。
【0031】
ここで、スイッチ駆動回路15にメインリレー21からの信号が入力されている理由は、メインリレー21を介して、第1の電源回路11にバッテリ電圧VBが供給されるときには、必ず第2の電源回路7にもバッテリ電圧VBを供給するためである。換言すれば、第1の電源回路11から動作電圧Vomが出力されているときには、第2の電源回路7からも動作電圧Vosを出力し、マイコン3における電源供給の不整合を防止するためである。なお、スイッチ駆動回路15にメインリレー21からの信号を入力する代わりに、電源回路11からの動作電圧Vomを入力しても良い。
【0032】
また、上述したメインリレー21のリレーコイルにはOR機能を有する駆動回路17が接続されており、この駆動回路17には、車両のイグニッションスイッチ(IGSW)19を介して、IGSW19のオン・オフ状態を示すIGSW信号と、タイマ回路5からの電源起動信号TSWと、マイコン3からの電源保持信号PIが入力されている。従って、車両のIGSW19がオンされている場合、タイマ回路5からハイレベルの電源起動信号TSWが出力されている場合、あるいは、マイコンからハイレベルの電源保持信号PIが出力されている場合、メインリレー21のリレーコイルが通電され、リレー接点がオンする。その結果、電源回路11にはメインリレー21を介してバッテリ電圧VBが供給される。
【0033】
電源回路11によって動作電圧Vomの出力が開始されると、マイコン3は、初期状態から動作を開始する。マイコン3は、プログラムを格納するフラッシュROM等からなる不揮発性メモリ30、不揮発性メモリ30に格納されたプログラムに従ってエンジン等の制御処理を実行するCPU32、CPU32における演算処理結果等を一時的に記憶するRAM等の揮発性メモリ34、スタータ信号STAや自動変速機のシフト位置信号を入力するI/Oポート36、エンジンの吸気圧や水温等、制御に必要なセンサ信号をA/D変換するA/D変換器38、タイマ回路5や不揮発性メモリ9との通信を行なう外部I/F40、及びエンジン等の制御に利用される制御データを記憶するスタティックRAM等の揮発性メモリ42とから構成される。
【0034】
ここで、制御データは、例えば、エンジンにおける空燃比状態を理論空燃比に近づけるための補正係数学習値、または、各センサの経年変化による出力のずれを補正するためのセンサ補正学習値や、自動変速機におけるクラッチの磨耗を考慮した変速タイミングに関する学習値等、各種の学習値を含む。このような学習値は、車両が運転される毎に、センサ信号やエンジン等の制御対象機器の状態に基づいて更新され、その最新の学習値が揮発性メモリ42に記憶される。
【0035】
このような学習値は、電源回路11からマイコン3への動作電圧Vomの供給が停止した場合であっても、揮発性メモリ42が継続的に保持する必要がある。このため、本実施形態においては、マイコン3内に、電源回路11からの動作電圧Vomの供給を受けるVom領域と、電源回路7からの動作電圧Vosの供給を受けるVos領域とが設定され、揮発性メモリ42はVos領域に設けられている。このため、IGSW19のオフに連動してメインリレー21がオフされ、電源回路11からの動作電圧Vomの供給が停止した後においても、電源回路7から供給される動作電圧Vosにより、不揮発性メモリ42は制御データを消失することはない。
【0036】
ただし、常に揮発性メモリ42に制御データを保持させるようにすると、揮発性メモリ42や電源回路7における暗電流によって、車両のバッテリ23が消費され、特に、長期間にわたって車両を使用しない場合には、バッテリ上がりを招く要因ともなりえる。このため、本実施形態では、EEPROM等の書き換え可能な不揮発性メモリ9を備え、所定の条件が成立した場合には、制御データを揮発性メモリ42から不揮発性メモリ9に書き込むとともに、スイッチ13をオフして、電源回路7からの動作電圧Vosの供給を停止させる。この制御データの不揮発性メモリ9への書き込み等の処理に関しては後に詳細に説明する。なお、不揮発性メモリ42としては、EEPROMの他、フラッシュROM,電流磁界方式メモリMRAM、強誘電体メモリFeRAM、相変化膜を利用したOUM、磁気抵抗効率を利用するRRAMなどを用いても良い。また、不揮発性メモリ9は、マイコン3に内蔵されていてもよい。
【0037】
タイマ回路5は、制御データを不揮発性メモリ42に書き込むタイミングを判別するために利用されるものである。すなわち、タイマ回路5は、IGSW19のオフに伴ってマイコン3が動作を停止するときに、マイコン3によってカウント動作の開始が指示される。そして、そのカウント時間が所定の計測時間に達すると、ハイレベルの電源起動信号TSWを出力する。なお、タイマ回路5がカウントする計測時間は、例えば15時間に設定される。
【0038】
本実施形態においては、マイコン3が電源回路11から動作電圧Vomの供給を受けて動作を開始すると、駆動回路17への電源保持信号PIをハイレベルにして、電源回路11から動作電圧Vomが出力される状態を維持する。そして、マイコン3は、所定の動作停止条件が成立したと判断すると、電源保持信号PIをローレベルにして、電源回路11から動作電圧Vomの供給を停止させ、自己の動作を停止する。なお。本実施形態における動作停止条件は、マイコン3がIGSW19のオンに伴って起動された場合には、そのIGSW19がオフされてから必要な処理が終了した時点で成立し、また、IGSW19がオフされているときに、タイマ回路5の電源起動信号TSWがハイレベルになってマイコン3が起動された場合には、その際に必要な処理が終了した時点で成立する。なお、図示していないが、マイコン3は、IGSW19の状態を読み取ることもできるように構成されている。
【0039】
図1の構成において、システムBは、例えばキーレスエントリーシステム等、リモートキーからの信号に基づいてドアロック解除を行なうシステムであり、このようなシステムは、イグニッションのオン・オフに係わらず常時、リモートキーからの信号を監視することが必要であるため、直接、車両のバッテリから電源の供給を受けている。また、システムAは、盗難防止装置の警告灯(点滅灯)などであり、車両が長期間使用されない場合、一時的にオフしても良い場合には、スイッチ13を介して車両のバッテリに接続される。
【0040】
次に、マイコン3で実行される処理について、図2及び図3のフローチャートに基づいて説明する。なお、図2は、マイコン3が実行する処理の全体を示すフローチャートであり、図3は、不揮発性メモリ9への制御データの書込処理を示すフローチャートである。
【0041】
図2に示すように、マイコン3が電源回路11からの動作電圧Vomの供給を受けて動作を開始すると、まずステップS100において、駆動回路17への電源保持信号PIをハイレベルにして、電源回路11から動作電圧Vomが出力される状態を維持するとともに、指示信号PIIをハイレベルにして、保持回路51からハイレベルの出力信号が出力されるようにする。この場合、メインリレー21からの信号及び保持回路51の出力信号がともにハイレベルであるため、スイッチ13はオン状態を維持し、電源回路7も動作電圧Vosを出力する状態を維持する。
【0042】
続くステップS110では、揮発性メモリ42内に設定したフラグSRAMflgの値が、ハイレベルであるか否かを判定する。つまり、今回のマイコン3の起動前に、揮発性メモリ42への動作電圧Vosの供給が停止されたか否かを、フラグSRAMflgの値に基づいて判定する。揮発性メモリ42内に設定したフラグSRAMflgは、後述するステップS130において、その値がハイレベルに設定される。従って、ステップS110において、フラグSRAMflgの値がハイレベルであると判定した場合には、揮発性メモリ42への動作電圧Vosの供給が継続してなされ、揮発性メモリ42は制御データの記憶を保持していると推定できる。一方、フラグSRAMflgの値がローレベルであれば、動作電圧Vosの供給停止により、揮発性メモリ42の内容が破壊されたものとみなすことができる。なお、フラグSRAMflgの値としては、単なるハイ・ローではなく、例えば「$5A」等の値を用いても良い。フラグSRAMflgとしてこのような値を用いると、動作電圧Vosの低下やノイズにより、揮発性メモリ42の内容が化けてしまった場合においても、フラグSRAMflgの値が「$5A」以外の値を示す可能性が大きくなる。従って、フラグSRAMflgの値が「$5A」かそれ以外かを判断することにより、制御データを正しく記憶しているか否かの判定精度を向上することができる。
【0043】
ステップS110において、フラグSRAMflgの値がローレベルであると判定された場合には、揮発性メモリ42には、制御データが記憶されていない。このため、ステップS120に進んで、不揮発性メモリ9から制御データを読み込み、揮発性メモリ42に読み込んだ制御データを書き込む。一方、フラグSRAMflgの値がハイレベルであると判定された場合には、揮発性メモリ42に制御データが記憶されているため、ステップS120を実行することなく、ステップS130に進む。ステップS130では、上述したように、揮発性メモリ42内に設定したフラグSRAMflgに、ハイレベルの値をセットする。
【0044】
次に、ステップS140において、タイマ回路5のカウント時間を読み取り、そのカウント時間が所定の計測時間に達して、電源起動信号TSWがハイレベルになっているか否かを、読み取ったカウント時間に基づいて判定する。すなわち、このステップS140では、マイコン3の起動がIGSW19のオンに起因するものであるのか、それともタイマ回路5からの電源起動信号TSWに起因するものであるのかを判定するのである。なお、この場合、IGSW19の状態を読み取って判定したり、タイマ回路5から駆動回路17への電源起動信号TSWのレベルを直接読み取って、電源起動信号TSWがハイレベルか否かを判定するようにしても良い。
【0045】
ステップS140において、電源起動信号TSWがハイレベルであると判定した場合には、今回のマイコン3の起動がタイマ回路5によるものとみなし、ステップS150以降の処理を実行する。ステップS150では、まず、エバポパージシステムの診断処理を実施するために、エンジンの燃料タンクからのエバポガスを回収するための系を閉塞した上でエバポポンプによる加圧を行なう。なお、エバポパージシステムの診断処理は、エバポガスを回収する系内を閉塞した上でその系内を加圧(または減圧)し、そのときの圧力変化に基づいて、当該系の気密性、ひいてはエバポガスのリークの可能性を検査するものである。
【0046】
エバポポンプによる加圧を開始した後、ステップS160において、不揮発性メモリ9への制御データの書込処理を行なう。すなわち、本実施形態においては、IGSW19がオフされてマイコン3が動作を停止した後、タイマ回路5によるカウント時間が所定の計測時間に達するまでは、制御データを揮発性メモリ42にて保持する。このため、制御データの書き込みや読出しのアクセス性を良好に保つことができるとともに、不揮発性メモリ9への制御データの書き込み回数を大きく低減することができる。なお、書込処理の詳細については、後述する。
【0047】
ステップS160の書込処理が終了すると、ステップS170において、所定の加圧が終了した後の圧力変化に基づいて、エバポガスのリーク検出を行なう。次に、ステップS180にて、タイマ回路5から出力される電源起動信号TSWがローレベルとなるように、タイマ回路5に対して電源起動信号TSWのクリアを指示する。ステップS190では、IGSW19がオンされたか否かを判定する。この判定は、スタータ信号STAに基づいて判定しても良い。タイマ回路5によるマイコン3の起動中に、IGSW19がオンされた場合には、マイコン3において、点火時期や燃料噴射量等のエンジン制御及び自動変速機の変速制御などを実行するべく、ステップS220に進む。一方、ステップS190にてIGSW19がオフされたままと判定した場合には、ステップS200に進む。
【0048】
ステップS200では、ステップS160の書込処理において、制御データを不揮発性メモリ9に書き込むことができないエラーが生じたか否かを判定する。なお、この書込エラーには、環境温度及び動作電圧等の不揮発性メモリ9への書き込み条件が所定の範囲外であり、不揮発性メモリ9への書き込みが実行されなかった書込条件エラーと、不揮発性メモリ9への書き込みは行なわれたが、その書き込まれた制御データに誤りがある書込データエラーがある。このような書込エラーが生じた場合には、揮発性メモリ42に記憶された制御データをそのまま保持する必要があるため、保持回路51におけるハイレベルの信号の保持をリセットすべくローレベルの指示信号PIIを出力するステップS210の処理をスキップする。一方、ステップS200において正常に書き込みが行なわれたと判定されると、ステップS210において、保持回路51に対してローレベルの指示信号PIIを出力し、保持回路51の出力信号をローレベルに変化させる。なお、ステップS210において、フラグSRAMflgをローレベルとする処理を行なっても良い。この場合、ステップS110にて、フラグSRAMflgの状態を正確に判定することができる。
【0049】
その後、ステップS290に進んで、ローレベルの電源保持信号PIを出力することにより、駆動回路17からメインリレー21への通電を停止させ、電源回路11による動作電圧Vomの供給を停止させる。なお、スイッチ13は、ローレベルの指示信号PIIが出力された時点では、メインリレー21からの信号がハイレベルであるためオフされず、ステップS290において、メインリレー21への通電が停止した時点でオフされる。
【0050】
スイッチ13がオフされることにより、電源回路7における動作電圧Vosの生成及び電源回路7から揮発性メモリ42への動作電圧Vosの出力が停止される。このように、IGSW19がオフされてマイコン3が動作を停止してから所定の計測時間が経過した後は、電源回路7における動作電圧Vosの生成、及び揮発性メモリ42への動作電圧Vosの供給が停止されるので、電源回路7及び揮発性メモリ42における暗電流を減少させることができる。さらに、本実施形態における処理により、揮発性メモリ42への動作電圧Vosの供給が停止される時には、必ず、制御データが不揮発性メモリ9に書き込まれるので、従来技術のように、制御データが不揮発性メモリに書き込まれないといった事態の発生を確実に防止することができる。
【0051】
次に、マイコン3がIGSW19のオンにより起動された場合の処理について説明する。この場合、ステップS140において「No」との判定がなされ、ステップS220以降の処理が行なわれる。ステップS220では、各種のセンサ信号やシフト位置信号、さらには揮発性メモリ42に記憶された制御データに基づいて、点火時期や燃料噴射量等のエンジン制御及び自動変速機の変速制御などを実行する。そして、ステップS230では、IGSW19がオンされたままであるか否かを判定し、オンのままである場合には、ステップS240の警報処理を行なった上で、上述したステップS220の制御処理を実行する。この閉ループ処理は、IGSW19がオフされるまで繰り返し実行される。
【0052】
ステップS240の警報処理では、上述した書込処理において書込エラーが発生した場合に、制御データの不揮発性メモリ9への書き込みが不調であった旨を運転者等に知らせるため、例えばインストルメントパネルのインジケータを点灯する等の処置を行なう。もちろん、書込処理が正常に行なわれた場合には、ステップS240において何ら警報を行なうことはない。
【0053】
ステップS230において、IGSW19がオフされたと判定された場合には、ステップS250に進み、IGSW19がオン・オフされた回数をカウントするカウンタONCNTをインクリメントする。続いて、ステップS260において、そのカウンタONCNTのカウント回数が14回以上になったか否かを判定する。このカウンタONCNTは、後述するように、不揮発性メモリ9への書き込みが正常に行なわれた場合に、そのカウント回数がクリアされる。従って、ステップS260では、1度も不揮発性メモリ9への書き込みがなされることなく、IGSW19のオン・オフされた回数が14回以上となったか否かを判定するのである。
【0054】
ここで、制御データは、エンジン制御や変速機制御に利用される各種の学習値を含み、これらの学習値は、車両が運転される毎に、センサ信号及びエンジンの運転状態等に基づいて更新される。従って、制御データの不揮発性メモリ9への書き込みが行なわれずに、車両が運転を繰り返した場合、揮発性メモリ42に記憶される制御データのみが最新のものとなり、不揮発性メモリ9には、古い制御データが保存されることになる。このような状況で、例えば、バッテリ交換により、揮発性メモリ42の制御データが失われた場合、次に制御を開始する際には、かなり古い制御データに基づいてエンジン制御等を実行せざるをえず、制御性の悪化が懸念される。
【0055】
このため、ステップS260にて「Yes」と判定された場合、ステップS270にて、制御データの不揮発性メモリ9への強制書き込みを実行するのである。これにより、タイマ回路5が所定の計測時間をカウントする以前に車両の運転が繰り返された場合でも、不揮発性メモリ9に保存される制御データを更新することができる。
【0056】
次に、ステップS280では、タイマ回路5を起動して、カウント動作を開始させる。その後、ステップS290にて、電源保持信号PIをローレベルにして、マイコン3は自己の動作を停止する。
【0057】
次に、制御データの不揮発性メモリ9への書込処理について説明する。この書込処理においては、まず、図3のフローチャートのステップS300において、不揮発性メモリ9への書込条件が満足されているか否かを判定する。この書込条件の判定は、例えば、環境温度と動作電圧Vom(または、動作電圧Vosかバッテリ電圧VB)とがそれぞれ所定の範囲に属するか否かにより判定される。なお、書込処理に適した環境温度の範囲は、例えば−20℃以上80℃以下であり、動作電圧Vomの範囲は4V以上である。また、バッテリ電圧VBを用いて判定する場合には、例えば8V以上16V以下の範囲と比較される。
【0058】
ステップS300において、書込条件が満足されないと判定された場合、ステップS380にて書込条件不成立回数をカウントするカウンタerr2をインクリメントする。そして、ステップS390において、このカウンタerr2のカウント回数が10回以上であるか否かを判定する。このステップS390において、「No」と判定された場合には、ステップS400において、極力、書き込みが実行されるように、比較すべき書込条件を緩和する。すなわち、書き込みを実行する温度範囲及び/または動作電圧(バッテリ電圧)の範囲を拡大する。そして、ステップS410において、緩和された書込条件が満足されているか否かを判定する。このステップS410において書込条件が満足されたと判定された場合には、書き込みを実行すべくステップS320以降の処理を行なう。一方、書込条件が満足されない場合には、ステップS380に戻り、カウンタerr2の値をインクリメントする。
【0059】
このようにして、書込条件を緩和しながらも、10回連続して書込条件が満足されない場合には、ステップS400からステップS420に進み、エラー処理2を行なう。このエラー処理2では、書込条件が満足されず、不揮発性メモリ9への書込処理が実行されなかった(書込条件エラー)ことを示すエラーフラグを立て、揮発性メモリ42に記憶する。前述した図2のフローチャートのステップS200では、このエラーフラグを参照することにより、書込エラーが発生したか否かを判定する。そして、ステップS420でエラー処理2が実行された後は、そのまま、書込処理を終了する。
【0060】
このように、書込条件が満足されたか否かの判別を所定回数(10回)実行することにより、制御データの不揮発性メモリ9への書き込みが実行される確率を高めることができる。ただし、そのような所定回数の判別にもかかわらず1度も書込条件が満足されない場合には、不揮発性メモリ9への書き込みを中止するのである。これにより、無駄にマイコン3が動作を継続して、電力の消費量が増大することを防止できる。
【0061】
一方、ステップS300において、書込条件が満足されたと判定されると、ステップS310に進み、カウンタerr2のカウント回数をクリアする。次に、ステップS320において、制御データの不揮発性メモリ9への書き込みを行なう。この制御データの書き込みが終了すると、ステップS330にて、制御データの書き込みが正常に行なわれたか否かを判定する。この判定処理では、例えば、不揮発性メモリ9に書き込んだ制御データを読み出して、揮発性メモリ42に記憶されている制御データと対比し、両者が一致した場合、制御データが不揮発性メモリ9に正しく書き込まれたと判定することができる。
【0062】
ステップS330において、制御データが不揮発性メモリ9に正しく書き込まれたと判定した場合には、ステップS360において、IGSW19のオン・オフ回数をカウントするカウンタONCNTのカウント回数をクリアし、本書込処理を終了する。一方、ステップS330において、制御データの書き込みが正しく行なわれなかったと判定した場合には、ステップS340において、再度不揮発性メモリ9への書き込みを実行する。そして、ステップS350において、制御データの書き込みが正常に行なわれたか否かを判定する。このステップS350において、正しく制御データが書き込まれたと判定すると、上述のステップS360の処理を実行するが、再度、書き込みが正しく行なわれなかったと判定されると、ステップS370のエラー処理1が実行される。
【0063】
このエラー処理1では、不揮発性メモリ9に正しく制御データを書き込むことができない(書込データエラー)ことを示すエラーフラグを立て、揮発性メモリ42に記憶する。この際、カウンタerr2のカウント回数も参照されることが好ましい。すなわち、このカウンタerr2のカウント回数から、書込条件が緩和された上で、制御データが書き込まれたのか否かを判別することができる。従って、エラー処理1において、このカウンタerr2のカウント回数も揮発性メモリ42に記憶し、後に、診断時に読み出すことができるようにしても良い。そして、ステップS370でエラー処理1が実行された後は、そのまま、書込処理を終了する。
【0064】
このように、制御データが不揮発性メモリ9に正しく書き込まれていないと判定した場合、さらに、再度、制御データの書き込みを実行する。しかし、この複数回の制御データの書き込みがいずれも不調である場合、書込データエラーとして、不揮発性メモリ9への書き込みを中止する。これにより、マイコン3において書込処理が過度に繰り返され、電力の消費量が増大することを防止できる。
【0065】
以上、本実施形態によるマイコン3により実行される処理について説明したが、上述した処理による不揮発性メモリ9への制御データの書き込みの動作例を図4のタイムチャートに示す。
【0066】
図4に示す例においては、時刻t1において、IGSW19がオフされたことに基づいて、電源保持信号PIがローレベルとなり、電源回路11は動作電圧Vomの出力を停止する。一方、IGSW19のオフに連動してタイマ回路5がカウント動作を開始するが、再び、IGSW19がオンされる時刻t2においては、そのカウント時間が所定の計測時間に達していない。従って、時刻t1から時刻t2の期間においては、不揮発性メモリ9への制御データの書き込みは行なわれず、制御データは動作電圧Vosが供給されている揮発性メモリ42によって保持される。
【0067】
次に、時刻t3において、IGSW19のオフにより電源保持信号PIがローレベルとなった後、IGSW19がオンされる時刻t5までの時間が、タイマ回路5がカウントする所定の計測時間よりも長いと、タイマ回路5のカウント時間が所定の計測時間に達した時刻t4において、タイマ回路5が電源起動信号TSWをハイレベルにする。この電源起動信号TSWがハイレベルになって、動作電圧Vom,Vosが各電源回路7,11によって出力されると、マイコン3(すなわちCPU32)が動作を開始する。マイコン3は動作を開始すると、まず電源保持信号PIをハイレベルにして、制御データの不揮発性メモリ9への書き込み処理等の所定の処理が終了するまで動作電圧Vomを維持する。
【0068】
そして、揮発性メモリ42に記憶された制御データの不揮発性メモリ9への書き込みが正常に完了すると、電圧起動信号TSWをローレベルにするとともに、保持回路51に対してハイレベルの出力信号をリセットするための指示信号PIIを出力し、保持回路51の出力信号をローレベルにする。さらに、電圧保持信号PIもローレベルにすることで、電源回路7,11からの動作電圧Vos,Vomの出力を停止させる。これにより、時刻t5までは、電源回路7,11の動作が停止するとともに、揮発性メモリ42への動作電圧Vosの供給も停止する。
【0069】
時刻t5において、IGSW19のオンによりマイコン3が起動された場合、まず、不揮発性メモリ9から制御データを読み出して、不揮発性メモリ42に記憶させ、その後、通常のエンジン制御及び変速機制御を実行する。
【0070】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態になんら制限されることなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々変形して実施することが可能である。
【0071】
例えば、上述した実施形態においては、制御データを不揮発性メモリ9に書き込む処理と、エバポパージシステムの診断処理を同時期に実施したが、異なるタイミングで実行しても良い。例えば、タイマ回路5として、カウント時間をマイコン3によって設定可能なものを用い、まず、IGSW19がオフした後、タイマ回路5にエバポパージシステムの診断処理を実施すべき経過時間として5時間をセットする。そして、5時間後に診断処理を実施した後、タイマ回路5にカウントすべき経過時間として10時間をセットする。そして、10時間後に不揮発性メモリ9への制御データの書き込みを実施するようにしても良い。あるいは、制御データの書き込みタイミングを設定するタイマ回路とエバポパージシステムの診断処理タイミングを設定するタイマ回路とを別個に設けるように構成しても良い。
【0072】
また、上述した実施形態では、エバポポンプの加圧時間を利用して不揮発性メモリ9への制御データの書き込みを実行したが、エバポガスのリーク検出結果も不揮発性メモリ9へ記憶させる場合には、そのリーク検出処理後に、制御データ及びその検出結果を不揮発性メモリ9に書き込むようにしても良い。また、エバポパージシステムの診断処理によりバッテリ23の消費が懸念される場合には、先に制御データの書き込みを行ない、その後、診断処理を実施しても良い。このようにリーク検出結果が得られる前に制御データの書き込みを行なった場合、リーク検出結果が得られた時点で、別途、そのリーク検出結果のみを不揮発性メモリ9に書き込んでも良い。
【0073】
さらに、上述した実施形態では、エバポパージシステムの診断処理後に、IGSW19がオンされたか否かをチェックしているが、IGSW19がオンされたら割込みを発生させ、診断処理を中断するようにしても良い。ただし、この場合、不揮発性メモリ9に記憶されている制御データに関して、前回の値と今回の値とが混在しないように、意味のあるブロック単位の書き込みが終了するまで、IGSWの割込処理の開始をウエイトする等の対策が必要となる。
【0074】
また、上述した実施形態においては、電源回路7とバッテリ23との間にスイッチ13を設け、スイッチ13をオフした場合には、電源回路7が動作電圧Vosの出力を停止するように構成されていた。この構成によれば,スイッチ13をオフすることにより、揮発性メモリ42及び電源回路7における暗電流を停止させることができる。しかしながら、スイッチ13を電源回路7と揮発性メモリ42との間に設けても良い。この場合、スイッチ13がオフされても電源回路7は動作電圧Vosの出力を維持するため、この電源回路7を、例えば盗難防止装置等の常時作動することが必要な装置の5V電源として共用することができる。また、タイマ回路5のカウント動作を所定の計測時間(15時間)経過後も維持したい場合にも、有効である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態における電子制御装置(ECU)1の全体構成を示す構成図である。
【図2】マイコン3が実行する処理の全体を示すフローチャートである。
【図3】不揮発性メモリ9への制御データの書込処理を示すフローチャートである。
【図4】不揮発性メモリ9への制御データの書き込みの動作例を示すタイムチャートである。
【符号の説明】
1…電子制御装置(ECU)、3…マイコン、5…タイマ回路、7…電源回路、9…不揮発性メモリ、11…電源回路、13…スイッチ、15…スイッチ駆動回路、17…駆動回路、19…イグニッションスイッチ、21…メインリレー、
23…バッテリ

Claims (12)

  1. 車両に搭載された制御対象機器を制御するマイコンと、
    外部から入力される所定のスイッチ信号がオンされたとき、前記マイコンへの動作電源の供給を開始し、前記スイッチ信号がオフされたことに基づいて、前記動作電源の供給を停止する第1の電源回路と、
    前記スイッチ信号がオフされてからの経過時間をカウントし、そのカウント時間が所定時間に達すると、前記第1の電源回路を起動するタイマ回路と、
    前記スイッチ信号がオフされた後においても、前記タイマ回路に動作電源を供給する第2の電源回路と、
    前記第1の電源回路からの電源供給を受けて、前記マイコンにおける演算処理結果を一時的に記憶する第1の揮発性メモリと、
    前記第2の電源回路からの電源供給を受けて、前記制御対象機器を制御するための学習値を含む制御データを記憶する第2の揮発性メモリと、
    前記第2の揮発性メモリに記憶された制御データを保存するための不揮発性メモリとを備え、
    前記マイコンは、前記タイマ回路によって前記所定時間がカウントされたとき、前記第1の電源回路からの動作電源の供給を受けて作動し、前記第2の揮発性メモリに記憶されている制御データを前記不揮発性メモリに書き込んで保存し、その後、前記第2の電源回路から前記第2の揮発性メモリへの電源供給を停止させることを特徴とする車両用電子制御装置。
  2. 前記第2の電源回路による前記第2の揮発性メモリへの電源供給が停止したか否かを示すフラグを当該第2の揮発性メモリに設け、前記マイコンは、前記第1の電源回路から動作電源の供給を受けて動作を開始したとき、前記フラグの状態に基づいて前記第2の揮発性メモリへの電源供給が停止したと判別した場合、前記不揮発性メモリから制御データを読み出して前記第2の揮発性メモリに記憶することを特徴とする請求項1に記載の車両用電子制御装置。
  3. 前記マイコンは、前記第1の電源回路から動作電源の供給を受けて動作を開始したとき、前記タイマ回路のカウント時間もしくは電源起動信号を参照することにより、スイッチ信号のオンにより動作を開始したのか、タイマ回路による所定時間のカウントにより動作を開始したのかを判別することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の車両用電子制御装置。
  4. 前記マイコンは、前記不揮発性メモリへの制御データの書き込み前に、少なくとも温度及び動作電圧に関して所定の書込実行条件を満足しているか否かを判別し、当該書込実行条件が満足されている場合に、前記不揮発性メモリへの制御データの書き込みを実行することを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の車両用電子制御装置。
  5. 前記マイコンは、前記所定の書込実行条件が満足されない場合、書込実行条件が満足されたか否かの判別を所定回数実行するものであり、当該書込実行条件が1度も満足されない場合には、書込条件エラーとして、前記不揮発性メモリへの書き込みを中止することを特徴とする請求項4に記載の車両用電子制御装置。
  6. 前記マイコンは、前記書込実行条件に関する判別を所定回数実行する際に、その書込実行条件を緩和することを特徴とする請求項5に記載の車両用電子制御装置。
  7. 前記マイコンは、前記書込条件エラーが生じた場合、前記スイッチ信号がオンとなったときに、その旨の警告を行なうことを特徴とする請求項5に記載の車両用電子制御装置。
  8. 前記マイコンは、前記第2の揮発性メモリに記憶された制御データが正しく前記不揮発性メモリに書き込まれたか否かを判別し、正しく書き込まれていないと判別した場合には、前記第2の電源回路から前記第2の揮発性メモリへの電源供給を維持することを特徴とする請求項1乃至請求項7のいずれかに記載の車両用電子制御装置。
  9. 前記マイコンは、前記制御データが前記不揮発性メモリに正しく書き込まれていないと判別した場合、当該制御データの書き込みを複数回実行し、その複数回の制御データの書き込みがいずれも不調である場合、書込データエラーとして、前記不揮発性メモリへの書き込みを中止することを特徴とする請求項8に記載の車両用電子制御装置。
  10. 前記マイコンは、前記書込データエラーが生じた場合、前記スイッチ信号がオンとなったときに、その旨の警告を行なうことを特徴とする請求項9に記載の車両用電子制御装置。
  11. 前記マイコンは、前記スイッチ信号がオン・オフされた回数をカウントし、そのカウント回数が所定回数に達する間に、一度も前記不揮発性メモリに制御データが書き込まれなかった場合、前記不揮発性メモリへの制御データの書き込みを実行することを特徴とする請求項1乃至請求項10のいずれかに記載の車両用電子制御装置。
  12. 前記マイコンは、前記第2の電源回路から前記第2の揮発性メモリへの電源供給を停止させる際に、前記タイマ回路への電源供給も停止させることを特徴とする請求項1に記載の車両用電子制御装置。
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