JP4210535B2 - ハードコート処理物品、ハードコートフイルムおよび硬化性組成物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、防汚性ハードコート層を得るための硬化性組成物およびに防汚性ハードコート層を施したハードコート処理物品、ハードコートフイルムに関する。各種物品に本発明の硬化性組成物からなるハードコート層を設けることにより防汚性、耐擦傷性に優れたハードコート処理物品が得られ、様々な分野での応用が可能である。
透明基材フイルムに本発明の硬化性組成物からなるハードコート層を設けることにより、防汚性、耐擦傷性に優れた透明基材(ハードコートフイルム)を得ることができ、さらに本発明のハードコートフイルムはCRT、LCD、PDP、FED等のディスプレイ、タッチパネル、ガラス、テーブル、化粧合板等、さらにCD、DVD等の記録媒体の表面の保護フイルム等に好適である。
【0002】
【従来の技術】
近年、プラスチック製品が、加工性、軽量化の観点でガラス製品と置き換わりつつあるが、これらプラスチック製品の表面は傷つきやすいため、耐擦傷性を付与する目的でハードコート層を設けたり、ハードコート層を設けたフイルムを貼合して用いる場合が多い。また、従来のガラス製品についても、飛散防止のためにプラスチックフイルムを貼合する場合が増えており、これらのフイルム表面の硬度強化のために、その表面にハードコート層を形成することが広く行われている。
【0003】
従来のハードコート層は、通常、熱硬化型樹脂、あるいは紫外線硬化型樹脂等の活性エネルギー線重合性樹脂をプラスチック基材上に直接、或いは0.03から0.5μm程度のプライマー層を介して3以上10μm以下程度の薄い塗膜を形成して製造している。
【0004】
しかしながら、前記従来のハードコート層は硬度が不十分であったこと、また、その塗膜厚みが薄いことに起因して、下地のプラスチック基材が荷重により大きく変形した場合に、それに応じてハードコート層も変形し、ハードコート層に割れが生じてしまうため、十分に満足できるものではなかった。例えば、プラスチック基材フイルムとして広く利用されているポリエチレンテレフタレートフイルム上に、紫外線硬化型塗料を上記の厚みで塗工したハードコートフイルムにおいては、鉛筆硬度で3Hレベルが一般的であり、ガラスの鉛筆硬度である9Hには全く及んでいない。
【0005】
ハードコート層の硬度を上げるために、該層の樹脂形成成分を多官能性アクリル酸エステル系モノマーとし、これにアルミナ、シリカ、酸化チタン等の粉末状無機充填剤および重合開始剤を含有する被覆用組成物が特許文献1に開示されている。また、アルコキシシラン等で表面処理したシリカもしくはアルミナからなる無機質の装填材料を含む光重合性組成物が特許文献2に開示されている。さらに架橋有機微粒子を充填することも近年検討されている。これらはハードコート層の表面硬度を上げる効果を持っているが、ヘイズ増加、脆性悪劣化の問題も持っており、これのみでは要求されている性能に十分に応えうるものではなかった。
【0006】
また、特許文献3にハードコート層を2層構成とし、第一層に微粒子のシリカを添加することで、カールと耐擦傷性を満足させる方法が提案されている。さらに、特許文献4にはハードコート層を2層構成とし、下層にラジカル硬化性樹脂とカチオン硬化性樹脂のブレンドからなる硬化樹脂層を使用し、上層にラジカル硬化性樹脂のみからなる硬化樹脂層を使用したハードコートフイルムの記載がある。しかし、これらも十分満足できる硬度ではなかった。
【0007】
一方、ハードコート層の厚みを通常の3〜10μmよりも厚くすることが硬度増加に有効であることが知られている。しかし、厚くすることでヘイズが大きくなったり、ハードコート層の脆性が悪化することにより割れや剥がれが生じやすくなると同時に硬化収縮によるハードコートフイルムのカールが大きくなるという問題がある。このため従来の技術では、実用上使用できる良好な特性を有するハードコート層を得ることは困難であった。
【0008】
また、画像表示装置やタッチパネルの保護やガラス飛散防止のため設けたハードコート層は人が使用するに際し、指紋、サインペン、化粧、汗などの汚れが付着しやすく、一度付着するとその汚れは除去しにくい。透明性や反射性を損ない視認性が悪いという問題を有していた。
【0009】
【特許文献1】
特許第1815116号明細書
【特許文献2】
特許第1416240号明細書
【特許文献3】
特開2000−52472号公報
【特許文献4】
特開2000−71392号公報
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、表面硬度が高くかつ耐擦傷性に優れた防汚性ハードコート層を提供することにある。
本発明の他の目的は、上記防汚性ハードコート層が設けられたハードコート処理物品を提供することにある。
本発明のもう一つの目的は上記防汚性ハードコート層が設けられかつ各種の機能性を有し、画像表示装置、タッチパネル、プラスチック板、ガラス板などに用いられるハードコートフイルムを提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、鋭意検討の結果、下記構成の硬化性組成物により、上記目的が達成されることを見出した。
1.フッ素原子およびケイ素原子の少なくともいずれかの原子と活性エネルギー線重合性基を有する化合物を含む硬化性組成物であり、該硬化組成物を硬化して得られるハードコートフイルム表面の水の接触角が90度以上であることを特徴とする硬化性組成物。
2.上記1に記載の硬化性組成物より硬化形成されるハードコート層。
3.フッ素原子およびケイ素原子の少なくともいずれかの原子と活性エネルギー線重合性基を有する化合物を含む硬化性組成物層と、フッ素原子およびケイ素原子の少なくともいずれかの原子と活性エネルギー線重合性基を有する化合物を含まない硬化性組成物層とからなるハードコート層。
4.ハードコート層の表面弾性率が4.0GPa以上10GPa以下であることを特徴とする上記2または3に記載の防汚性ハードコート層。
5.ハードコート層の厚みが10μm以上60μm以下であることを特徴とする上記2〜4のいずれかに記載の防汚性ハードコート層。
6.活性エネルギー線の照射により硬化する硬化性組成物が、開環重合性基を含有する硬化性樹脂および/または同一分子内にエチレン性不飽和基を3個以上含む硬化性樹脂を含有することを特徴とする上記2〜5のいずれかに記載の防汚性ハードコート層。
7.開環重合性基を含有する硬化性樹脂が、下記一般式(1)で表される繰り返し単位を含有する架橋性ポリマーであることを特徴とする上記6に記載の防汚性ハードコート層。
一般式(1)
【0012】
【化1】
【0013】
一般式(1)中:
R1は、水素原子または炭素原子数1から4のアルキル基を表す。
P1は、一価の開環重合性基または開環重合性基を有する一価の基を表す。
L1は、単結合または二価以上の連結基を表す。
8.開環重合性基が、カチオン重合性基であることを特徴とする上記6または7に記載の防汚性ハードコート層。
9.上記2〜8のいずれかに記載の防汚性ハードコート層を設けたハードコート処理物品およびハードコートフイルム。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の硬化性組成物の硬化より得られる防汚性ハードコート層について、詳細に説明する。
本発明の防汚性ハードコート層(以下、単に「ハードコート層」とも称する)は、硬化性組成物が硬化して形成されたハードコート層である。硬化は活性エネルギー線による重合が、生産性の観点から好ましい。そして、本発明のハードコート層表面の水に対する接触角は、防汚性の観点から90度以上であり、好ましくは97度以上である。
ハードコート層表面の水に対する接触角を上記範囲とするには、ハードコート層を形成するための硬化性組成物にフッ素原子および/またはケイ素原子を含有し、かつ活性エネルギー線重合する基を有する硬化性樹脂あるいは化合物を防汚剤として含有させる方法により達成される。
【0015】
ハードコート層に含有されるフッ素原子および/またはケイ素原子を含有し、活性エネルギー線重合する基を有する防汚剤としての硬化性樹脂は、活性エネルギー線で重合する公知のフッ素硬化性樹脂やケイ素硬化性樹脂、あるいはフッ素原子を含有する骨格とケイ素原子を含有する骨格とを有する硬化性樹脂が用いられる。
さらにハードコート層を主として構成する硬化した樹脂あるいは該樹脂に分散した金属酸化物等と相溶性の良い骨格と、フッ素原子および/またはケイ素原子を含有する骨格とを有する活性エネルギー線重合性樹脂が好ましく挙げられる。このような硬化性樹脂をハードコート層または防汚性層を形成するために硬化することで、ハードコート層表面にフッ素あるいはケイ素を存在させることができる。
なお、本明細書においては、防汚性層は、防汚性ハードコート層の一部を構成する。但し、説明の便宜上、防汚性層は、ハードコート層と区別して記載することもあるが、その場合でも、防汚層は防汚性ハードコート層に包含される層である。
【0016】
ハードコート層に用いられる、防汚剤としての上記硬化性樹脂の具体的な例としては、フッ素原子またはケイ素原子を含有するモノマー、あるいはフッ素原子またはケイ素原子を含むモノマーの共重合体、ブロック共重合体、あるいはグラフト共重合体にアクリル基を含有させたポリマーが挙げられる。
フッ素含有モノマーとしては、ヘキサフルオロイソプロピルアクリレート、ヘプタデカフルオロデシルアクリレート、パーフルオロアルキルスルホンアミドエチルアクリレート、パーフルオロアルキルアミドエチルアクリレート等に代表されるパーフルオロアルキル基含有(メタ)アクリル酸エステルが挙げられる。 具体的には、2−パーフルオロオクチルエチルメタアクリレート、2−パーフルオロオクチルエチルアクリレート(日本メクトロン(株)製)、M−3633、M−3833、R−3633、R−3833等のアクリレート化合物((株)ダイキンファインケミカル研究所製)、AFC−1000,AFC−2000、FA−16等(共栄社化学(株)製)、メガファック531A(大日本インキ(株)製)などの重合性基を含有する化合物が挙げられる。
フッ素を含有する共重合体としては、主鎖が炭素原子のみからなり、かつ、含フッ素ビニルモノマー重合単位と側鎖に(メタ)アクリロイル基を有する重合単位とを含んでなる共重合体があり、具体的には下記一般式(2)で表される共重合体が挙げられる。
【0017】
【化2】
【0018】
(一般式(2)中、Mfは含フッ素ビニルモノマー、Lは炭素数1〜10の連結基を表し、mは0または1を表す。Xは水素原子またはメチル基を表す。Aは任意のビニルモノマーの重合単位を表し、単一成分であっても複数の成分で構成されていてもよい。x、y、zはそれぞれの構成成分のモル%を表し30≦x≦60、40≦y≦80、0≦z≦65を満たす値を表す。)
一般式(2)におけるMfで表される含フッ素ビニルモノマーとしてはフルオロオレフィン類(例えばフルオロエチレン、ビニリデンフルオライド、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン等)、(メタ)アクリル酸の部分または完全フッ素化アルキルエステル誘導体類(例えばビスコート6FM(商品名、大阪有機化学製)やM−2020(商品名、ダイキン製)等)、パーフルオロアルキルスルホン酸メタアクリルアミド、完全または部分フッ素化ビニルエーテル類等が挙げられるが、パーフルオロオレフィン類が好ましく、溶解性、透明性、入手性等の観点からはヘキサフルオロプロピレンが特に好ましい。
本発明の共重合体は側鎖に(メタ)アクリロイル基を有する重合単位を必須の構成成分として有する。共重合体への(メタ)アクリロイル基の導入法は特に限定されるものではないが、例えば、▲1▼水酸基、アミノ基等の求核基を有するポリマーを合成した後に、(メタ)アクリル酸クロリド、(メタ)アクリル酸無水物、(メタ)アクリル酸とメタンスルホン酸の混合酸無水物等を作用させる方法、▲2▼上記求核基を有するポリマーに、硫酸等の触媒存在下、(メタ)アクリル酸を作用させる方法、▲3▼上記求核基を有するポリマーにメタクリロイルオキシプロピルイソシアネート等のイソシアネート基と(メタ)アクリロイル基を併せ持つ化合物を作用させる方法、▲4▼エポキシ基を有するポリマーを合成した後に(メタ)アクリル酸を作用させる方法、▲5▼カルボキシル基を有するポリマーにグリシジルメタクリレート等のエポキシ基と(メタ)アクリロイル基を併せ持つ化合物を作用させる方法、▲6▼3―クロロプロピオン酸エステル部位を有するビニルモノマーを重合させた後で脱塩化水素を行う方法などが挙げられる。これらの中で本発明では特に水酸基を含有するポリマーに対して▲1▼または▲2▼の手法によって(メタ)アクリロイル基を導入することが好ましい。
【0019】
これらの(メタ)アクリロイル基含有重合単位の組成比を高めれば皮膜強度は向上し、含フッ素ビニルモノマー重合単位の種類によっても異なるが、一般に(メタ)アクリロイル基含有重合単位は40〜80モル%を占めることが好ましく、45〜75モル%を占めることがより好ましく、50〜70モル%を占めることが特に好ましい。
【0020】
本発明に有用な共重合体では上記含フッ素ビニルモノマー重合単位および側鎖に(メタ)アクリロイル基を有する重合単位以外に、一般式(2)におけるAで表される、基材への密着性、ポリマーのTgの調整(皮膜硬度に寄与する)、溶剤への溶解性、透明性、滑り性、防塵・防汚性等種々の観点から適宜他のビニルモノマーを共重合することもできる。これらのビニルモノマーは目的に応じて複数を組み合わせてもよく、合計で共重合体中の0〜65モル%の範囲で導入されていることが好ましく、0〜40モル%の範囲であることがより好ましく、0〜30モル%の範囲であることが特に好ましい。
【0021】
併用可能なビニルモノマー単位には特に限定はなく、例えばオレフィン類(エチレン、プロピレン、イソプレン、塩化ビニル、塩化ビニリデン等)、アクリル酸エステル類(アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸2‐ヒドロキシエチル、アクリル酸グリシジル、アクリル酸アリル、アクリル酸トリメトキシシリルプロピル等)、メタクリル酸エステル類(メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸グリシジル、メタクリル酸アリル、メタクリル酸トリメトキシシリルプロピル等)、スチレン誘導体(スチレン、p−ヒドロキシメチルスチレン、p−メトキシスチレン等)、ビニルエーテル類(メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、t−ブチルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、ヒドロキシエチルビニルエーテル、ヒドロキシブチルビニルエーテル、グリシジルビニルエーテル、アリルビニルエーテル等)、ビニルエステル類(酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、桂皮酸ビニル等)、不飽和カルボン酸類(アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、イタコン酸等)、アクリルアミド類(N,N−ジメチルアクリルアミド、N−tertブチルアクリルアミド、N−シクロヘキシルアクリルアミド等)、メタクリルアミド類(N,N−ジメチルメタクリルアミド)、アクリロニトリル等を挙げることができる。
好ましくはビニルエーテル誘導体、ビニルエステル誘導体であり、特に好ましくはビニルエーテル誘導体である。
【0022】
一般式(2)中、Lは炭素数1〜10の連結基を表し、より好ましくは炭素数1〜6の連結基であり、特に好ましくは2〜4の連結基であり、直鎖であっても分岐構造を有していてもよく、環構造を有していてもよく、O、N、Sから選ばれるヘテロ原子を有していてもよい。
好ましい例としては、*‐(CH2)2-O-**, *-(CH2)2-NH-**, *-(CH2)4-O-**, *-(CH2)6-O-**, *-(CH2)2-O-(CH2 )2-O-**, -CONH-(CH2)3-O-**, *-CH2CH(OH)CH2-O-*, *-CH2CH2OCONH(CH2)3-O-**(*はポリマー主鎖側の連結部位を表し、**は(メタ)アクリロイル基側の連結部位を表す。)等が挙げられる。mは0または1を表す。
【0023】
一般式(2)中、Xは水素原子またはメチル基を表す。硬化反応性の観点から、より好ましくは水素原子である。
【0024】
x、y、zはそれぞれの構成成分のモル%を表し、30≦x≦60、40≦y≦80、0≦z≦65を満たす値を表す。好ましくは、35≦x≦55、30≦y≦60、0≦z≦20の場合であり、特に好ましくは40≦x≦55、50≦y≦70、0≦z≦10の場合である。
【0025】
ケイ素含有モノマーとしてはポリジメチルシロキサンと(メタ)アクリル酸等の反応によるシロキサン基を有するモノマーが挙げられる。末端(メタ)アクリレートのシロキサン化合物の具体例としては、X−22−164A、X−22−164B、X−22−164C、X−22−2404、X−22−174D、X−22−8201、X−22−2426(信越化学工業(株)製)などが挙げられる。
【0026】
フッ素原子およびケイ素原子の少なくともいずれかの原子と活性エネルギー線重合性基を有する化合物を含まない硬化性組成物層に対し、フッ素原子およびケイ素原子の少なくともいずれかの原子と活性エネルギー線重合性基を有する化合物を含有する硬化性組成物層を設けたハードコートフイルムの場合、フッ素原子およびケイ素原子の少なくともいずれかの原子と活性エネルギー線重合性基を有する化合物を含有する硬化性組成物層の厚みは、0.05μm以上2μm以下が好ましい。薄すぎると塗膜の強度、防汚性の効果が得られ難いこと、1μm以上では多層構成にする意義が少なくなり、0.1μmから1μmの範囲がより好ましい。
【0027】
活性エネルギー線の照射により重合する基は、例えばアクリル基等のラジカル重合性の二重結合やエポキシ基等のカチオン重合性基を導入することによって付与される。これら硬化性組成物に含まれるフッ素、ケイ素と活性エネルギー線重合性基を有する化合物の含有量は硬化性樹脂の0.01〜20質量%が好ましく、1〜15質量%がより好ましい。
【0028】
ハードコート層が耐擦傷性に優れるためには、ハードコート層の硬度がある程度大きいことが好ましい。硬度の観点から、ハードコート層の表面弾性率は4.0GPa程度以上が好ましく、より好ましくは4.5GPa以上である。表面弾性率が4.0GPa未満のハードコート層では、十分な鉛筆硬度及び耐擦傷性が得られない。なお、上記の表面弾性率をユニバーサル硬度で表すと、その値は250N/mm2程度以上が好ましく、より好ましくは300N/mm2以上である。
無機微粒子を添加することにより、表面弾性率を上げることができる。無機微粒子の添加量を増やすと脆性が悪くなるので、表面弾性率の上限は、10GPa、好ましくは9.0GPaである。従って、好ましい表面弾性率の範囲は、4.0〜10GPaであり、特に好ましくは4.5〜9.0GPaである。
【0029】
ハードコート層の鉛筆硬度と脆性の両立化を図ることを検討した結果、硬度は若干小さいが脆性が改善されているハードコート剤を厚く塗布することが有効である。
【0030】
上記表面弾性率は、微小表面硬度計((株)フィッシャー・インスツルメンツ製:フィッシャースコープH100VP−HCU)を用いて求めた値である。具体的には、ダイヤモンド製の四角錐圧子(先端対面角度;136°)を使用し、押し込み深さが1μmを超えない範囲で、適当な試験荷重下での押し込み深さを測定し、除荷重時の荷重と変位の変化から求められる弾性率である。
また、前述の微小表面硬度計を用いて表面硬度をユニバーサル硬度として求めることもできる。ユニバーサル硬度は四角錐圧子の試験荷重下での押し込み深さを測定し、試験荷重をその試験荷重で生じた圧痕の幾何学的形状から計算される圧痕の表面積で割った値である。
上記の表面弾性率とユニバーサル硬度の間には、正の相関を有することが知られている。
【0031】
本発明のハードコート層の厚みは、10μm以上が好ましく、20μm以上がさらに好ましい。透明基材がフイルムの場合、ハードコート層の厚みをあまり厚くすると鉛筆硬度は向上するが、フイルムを曲げることが難しくなり、さらに曲げによる割れが発生しやすくなることから、ハードコート層の厚みは60μm以下が好ましく、50μm以下がより好ましい。従って、透明基材がフイルムの場合、ハードコート層の厚みは、好ましくは10〜60μmであり、より好ましくは20〜50μmである。
【0032】
ハードコート層は、単層でも複数層から構成されていてもよいが、製造工程上簡便な単層であることが好ましい。この場合の単層とは、同一の硬化性組成物から硬化形成されたハードコート層を指し、塗布、乾燥後の組成が、同一組成のものであれば、複数回の塗布後、硬化して形成されていてもよい。一方、複数層とは組成の異なる複数の硬化性組成物から硬化、形成された層を指す。
【0033】
本発明のハードコート層は、活性エネルギー線の照射により硬化する硬化性組成物を塗布後、活性エネルギー線の照射により硬化して形成される。該硬化性組成物の活性エネルギー線照射による硬化収縮率は、0〜15%、好ましくは0〜13%、より好ましくは0〜11%である。
上記硬化収縮率は、用いた活性エネルギー線、例えばUV光の照射前の硬化性組成物の密度と照射硬化後の硬化性組成物の密度を求め、その値から下記数式Aで計算して求めた値である。なお、密度はマイクロメトリック社製MULTIVOLUME PYCNOMETERで測定(25℃)した値である。
数式A:体積収縮率={1−(硬化前密度/硬化後密度)}×100(%)
【0034】
ハードコート層を形成するための硬化性組成物は、前記した防汚剤としての硬化性樹脂とは異なる、活性エネルギー線や熱によって硬化する硬化性樹脂を主成分として含有する。ハードコート層を形成するための硬化性組成物(以下、単に「硬化性組成物」とも称する。)は、該硬化性樹脂として、開環重合性基を有する硬化性樹脂および/またはエチレン性不飽和基を同一分子内に3個以上有する硬化性樹脂を含有することが好ましく、これら二種の硬化性樹脂のいずれをも含有することがより好ましい。このことによって、ハードコート層の表面硬度が高くなり、耐擦傷性に優れたハードコートフイルムが得られる。同時に、体積収縮率が上記した範囲を満たし、硬化後のカールが小さくなり、諸取り扱い時のひび割れが発生しにくくなる。さらに、ハードコート層の膜厚を一定の膜厚にすることによって、上記の効果がさらに顕著となる。
【0035】
以下、本発明に好ましく用いられる開環重合性基を含む硬化性樹脂について説明する。
開環重合性基を含む硬化性樹脂とは、カチオン、アニオン、ラジカルなどの作用により開環重合が進行する環構造を有する硬化性樹脂であり、この中でもヘテロ環状基含有硬化性樹脂が好ましい。このような硬化性樹脂としてエポキシ誘導体、オキセタン誘導体、テトラヒドロフラン誘導体、環状ラクトン誘導体、環状カーボネート誘導体、オキサゾリン誘導体などの環状イミノエーテル類などが挙げられ、特にエポキシ誘導体、オキセタン誘導体、オキサゾリン誘導体が好ましい。
本発明において開環重合性基を有する硬化性樹脂は、同一分子内に2個以上の開環重合性基を有することが好ましいが、より好ましくは3個以上有することが好ましい。また、本発明において、開環重合性基を有する硬化性樹脂を2種以上を組み合わせて併用してもよい。この場合、同一分子内に開環重合性基を1個有する硬化性樹脂と同一分子内に開環重合性基を2個以上有する硬化性樹脂とを組み合わせてもよく、また同一分子内に開環重合性基を2個以上有する硬化性樹脂のみを2種以上組み合わせてもよい。
【0036】
本発明で言う開環重合性基を有する硬化性樹脂とは、上記のような環状構造を有する硬化性樹脂であれば得に制限がない。このような硬化性樹脂の好ましい例としては、例えば単官能グリシジルエーテル類、単官能脂環式エポキシ類、2官能脂環式エポキシ類、ジグリシジルエーテル類(例えばグリシジルエーテル類としてエチレングリコールジグリシジルエーテル、ビスフェノールAジグリシジルエーテル)、3官能以上のグリシジルエーテル類(トリメチロールエタントリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、グリセロールトリグリシジルエーテル、トリス(グリシジルオキシエチル)イソシアヌレートなど)、4官能以上のグリシジルエーテル類(ソルビトールテトラグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールテトラグリシルエーテル、クレゾールノボラック樹脂のポリグリシジルエーテル、フェノールノボラック樹脂のポリグリシジルエーテルなど)、脂環式エポキシ類(セロキサイド2021P、セロキサイド2081、エポリードGT−301、エポリードGT−401(以上、ダイセル化学工業(株)製))、EHPE(ダイセル化学工業(株)製)、フェノールノボラック樹脂のポリシクロヘキシルエポキシメチルエーテルなど)、オキセタン類(OX−SQ、PNOX−1009(以上、東亞合成(株)製)など)などが挙げられるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0037】
本発明では開環重合性基を有する硬化性樹脂として、上記一般式(1)で表される繰り返し単位を含む架橋性ポリマーを含有していることが特に好ましい。以下にこれら架橋性ポリマーについて詳細に説明する。
一般式(1)中、R1は水素原子または炭素原子数1以上4以下のアルキル基を表し、好ましくは水素原子またはメチル基である。
L1は、単結合または二価以上の連結基であり、好ましくは単結合、−O−、アルキレン基、アリーレン基および*側で主鎖に連結する*−COO−、*−CONH−、*−OCO−、*−NHCO−である。
P1は、一価の開環重合性基または開環重合性基を有する一価の基であり、好ましいP1としては、エポキシ環、オキセタン環、テトラヒドロフラン環、ラクトン環、カーボネート環、オキサゾリン環などのイミノエーテル環などを有する一価の基が挙げられ、この中でも特に好ましくはエポキシ環、オキセタン環、オキサゾリン環を有する一価の基である。
【0038】
本発明において一般式(1)で表される繰り返し単位を含む架橋性ポリマーは、対応するモノマーを重合させて合成することが簡便で好ましい。この場合の重合反応としてはラジカル重合が最も簡便で好ましい。
以下に一般式(1)で表される繰り返し単位の好ましい具体例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0039】
【化3】
【0040】
【化4】
【0041】
【化5】
【0042】
本発明において、一般式(1)で表される繰り返し単位を含む架橋性ポリマーは複数種の一般式(1)で表される繰り返し単位で構成されたコポリマーであってもよく、また、一般式(1)以外の繰り返し単位(例えば開環重合性基を含まない繰り返し単位)を含んだコポリマーでもよい。特に架橋性ポリマーのTgや親疎水性をコントロールしたい場合や、架橋性ポリマーの開環重合性基の含有量をコントロールする目的で一般式(1)以外の繰り返し単位を含有するコポリマーとする手法は好適である。一般式(1)以外の繰り返し単位の導入方法は、対応するモノマーを共重合させて導入する手法が好ましい。
【0043】
一般式(1)以外の繰り返し単位を、対応するビニルモノマーを重合することによって導入する場合、好ましく用いられるモノマーとしては、アクリル酸またはα−アルキルアクリル酸(例えばメタクリル酸など)類から誘導されるエステル類(例えばメチルアクリレート、エチルアクリレート、ヒドロキシエチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、i−プロピルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−メチル−2−ニトロプロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、i−ブチルアクリレート、t−ブチルアクリレート、t−ペンチルアクリレート、2−メトキシエチルアクリレート、2−エトキシエチルアクリレート、2−メトキシメトキシエチルアクリレート、2,2,2−トリフルオロエチルアクリレート、2,2−ジメチルブチルアクリレート、3−メトキシブチルアクリレート、エチルカルビトールアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、n−ペンチルアクリレート、3−ペンチルアクリレート、オクタフルオロペンチルアクリレート、n−ヘキシルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、シクロペンチルアクリレート、セチルアクリレート、ベンジルアクリレート、n−オクチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、4−メチル−2−プロピルペンチルアクリレート、ヘプタデカフルオロデシルアクリレート、n−オクタデシルアクリレート、メチルメタクリレート、2,2,2−トリフルオロエチルメタクリレート、テトラフルオロプロピルメタクリレート、ヘキサフルオロプロピルメタクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、i−ブチルメタクリレート、sec−ブチルメタクリレート、n−オクチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、2−メトキシエチルメタクリレート、2−エトキシエチルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、ヘプタデカフルオロデシルメタクリレート、n−オクタデシルメタクリレート、2−イソボルニルメタクリレート、2−ノルボルニルメチルメタクリレート、5−ノルボルネン−2−イルメチルメタクリレート、3−メチル−2−ノルボルニルメチルメタクリレート、ジメチルアミノエチルメタクリレートなど)、
【0044】
アクリル酸またはα−アルキルアクリル酸(例えばメタクリル酸など)類から誘導されるアミド類(例えば、N−i−プロピルアクリルアミド、N−n−ブチルアクリルアミド、N−t−ブチルアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N−メチルメタクリルアミド、アクリルアミド、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、アクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウムクロライド、メタクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、アクリロイルモルホリン、N−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド)、、アクリル酸またはα−アルキルアクリル酸(アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸など)、ビニルエステル類(例えば酢酸ビニル)、マレイン酸またはフマル酸から誘導されるエステル類(マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジブチル、フマル酸ジエチルなど)、マレイミド類(N−フェニルマレイミドなど)、マレイン酸、フマル酸、p−スチレンスルホン酸のナトリウム塩、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、ジエン類(例えばブタジエン、シクロペンタジエン、イソプレン)、芳香族ビニル化合物(例えばスチレン、p−クロルスチレン、t−ブチルスチレン、α−メチルスチレン、スチレンスルホン酸ナトリウム)、N−ビニルピロリドン、N−ビニルオキサゾリドン、N−ビニルサクシンイミド、N−ビニルホルムアミド、N−ビニル−N−メチルホルムアミド、N−ビニルアセトアミド、N−ビニル−N−メチルアセトアミド、1−ビニルイミダゾール、4−ビニルピリジン、ビニルスルホン酸、ビニルスルホン酸ナトリウム、アリルスルホン酸ナトリウム、メタリルスルホン酸ナトリウム、ビニリデンクロライド、ビニルアルキルエーテル類(例えばメチルビニルエーテル)、エチレン、プロピレン、1−ブテン、イソブテン等が挙げられる。
【0045】
これらのビニルモノマーは2種類以上組み合わせて使用してもよい。これら以外のビニルモノマーはリサーチディスクロージャーNo.19551(1980年、7月)に記載されているものを使用することができる。
なかでも、アクリル酸またはメタクリル酸から誘導されるエステル類およびアミド類、ならびに芳香族ビニル化合物が特に好ましく用いられる。
【0046】
一般式(1)以外の繰り返し単位として、開環重合性基以外の反応性基を有する繰り返し単位も導入することができる。特に、ハードコート層の硬度を高めたい場合や、基材もしくはハードコート層上に別の機能層を用いる場合の層間の接着性を改良したい場合、開環重合性基以外の反応性基を含むコポリマーとする手法が好適である。開環重合性基以外の反応性基を有する繰り返し単位の導入方法は対応するビニルモノマー(以下、反応性モノマーと称する)を共重合する手法が簡便で好ましい。
【0047】
以下に反応性モノマーの好ましい具体例を以下に示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0048】
ヒドロキシル基含有ビニルモノマー(例えば、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、アリルアルコール、ヒドロキシプロピルアクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレートなど)、イソシアネート基含有ビニルモノマー(例えば、イソシアナトエチルアクリレート、イソシアナトエチルメタクリレートなど)、N-メチロール基含有ビニルモノマー(例えば、 N-メチロールアクリルアミド、N-メチロールメタクリルアミドなど)、カルボキシル基含有ビニルモノマー(例えばアクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、カルボキシエチルアクリレート、安息香酸ビニル)、アルキルハライド含有ビニルモノマー(例えばクロロメチルスチレン、2−ヒドロキシ−3−クロロプロピルメタクリレート)、酸無水物含有ビニルモノマー(例えばマレイン酸無水物)、ホルミル基含有ビニルモノマー(例えばアクロレイン、メタクロレイン)、スルフィン酸基含有ビニルモノマー(例えばスチレンスルフィン酸カリウム)、活性メチレン含有ビニルモノマー(例えばアセトアセトキシエチルメタクリレート)、酸クロライド含有モノマー(例えばアクリル酸クロライド、メタクリル酸クロライド)、アミノ基含有モノマー(例えばアリルアミン)、アルコキシシリル基含有モノマー(例えばメタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン)などが挙げられる。
【0049】
本発明において、一般式(1)で表される繰り返し単位を含む架橋性ポリマー中、一般式(1)で表される繰り返し単位が含まれる割合は、1質量%以上100質量%以下、好ましくは30質量%以上100質量%以下、特に好ましくは50質量%以上100質量%以下である。
【0050】
一般式(1)で表される繰り返し単位を含む架橋性ポリマーの好ましい数重量平均分子量(ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによる測定、ポリエチレングリコール換算値)の範囲は、1000以上100万以下、さらに好ましくは3000以上20万以下である。最も好ましくは5000以上10万以下である。
【0051】
以下に一般式(1)で表される繰り返し単位を含む架橋性ポリマーの好ましい例を表1に示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、前記で具体例を挙げた一般式(1)で表される繰り返し単位は前記で挙げた具体例の番号で表し、共重合可能なモノマーから誘導される繰り返し単位は、モノマー名を記載し、共重合組成比を質量%で付記した。
【0052】
【表1】
【0053】
既に述べたように、ハードコート層を形成するための活性エネルギー線によって硬化する硬化性組成物には、開環重合性基を含む硬化性樹脂とエチレン性不飽和基を同一分子内に3個以上含む硬化性樹脂との両方を含有することが好ましい。
以下に、上記エチレン性不飽和基を同一分子内に3個以上含む硬化性樹脂について詳しく説明する。
【0054】
好ましいエチレン性不飽和基の種類は、アクリロイル基、メタクリロイル基、スチリル基、ビニルエーテル基であり、特に好ましくはアクリロイル基である。なお、同一分子内にエチレン性不飽和基を3個以上含む硬化性樹脂と共に、エチレン性不飽和基を1個もしくは2個含む硬化性樹脂(モノマーあるいはオリゴマー)を併用してもよい。
さらに、分子内に3〜6個のアクリル酸エステル基を有する多官能アクリレートモノマーや、ウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレート、エポキシアクリレートと称される分子内に数個のアクリル酸エステル基を有する分子量が数百から数千のオリゴマーなどを本発明の硬化性樹脂として好ましく使用することができる。
【0055】
これら同一分子内に3個以上のアクリル基を有する硬化性樹脂の具体例としては、トリメチロールプロパントリアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート等のポリオールポリアクリレート類、ポリイソシナネ特許1416240号ートとヒドロキシエチルアクリレート等の水酸基含有アクリレートの反応によって得られるウレタンアクリレート等を挙げることができる。
【0056】
また、本発明では同一分子内に3個以上のエチレン性不飽和基を有する硬化性樹脂として、下記一般式(3)で表される繰り返し単位を含む架橋性ポリマーも好ましく使用できる。以下、一般式(3)で表される繰り返し単位を含む架橋性ポリマーについて詳細に説明する。
一般式(3)
【0057】
【化6】
【0058】
上記一般式(3)中、R2は、水素原子または炭素原子数1以上4以下のアルキル基を表し、好ましくは水素原子またはメチル基である。
P2は、一価のエチレン性不飽和基またはエチレン性不飽和基を有する一価の基を表す。
L2は、単結合もしくは二価以上の連結基を表し、好ましくは単結合、−O−、アルキレン基、アリーレン基および*側で主鎖に連結する*−COO−、*−CONH−、*−OCO−、*−NHCO−である。
好ましいP2としては、アクリロイル基、メタクリロイル基、スチリル基またはこれらの基のいずれかを含有する一価の基であり、最も好ましくはアクリロイル基またはこれを含有する一価の基である。
【0059】
一般式(3)で表される繰り返し単位を含む架橋性ポリマーは、(i)対応するモノマーを重合させて直接エチレン性不飽和基を導入する手法で合成してもよく、(ii)任意の官能基を有するモノマーを重合して得られるポリマーに高分子反応によりエチレン性不飽和基を導入する手法で合成してもよい。また、上記(i)および(ii)の手法を組み合わせて合成することもできる。重合反応としてはラジカル重合、カチオン重合、アニオン重合などが挙げられる。
上記(i)の方法を用いる場合、重合反応により消費されるエチレン性不飽和基と架橋性ポリマー中に残されるエチレン性不飽和基の重合性の差を利用することにより可能である。例えば、一般式(3)のP2が、アクリロイル基、メタクリロイル基またはこれらのいずれかを含有する一価の基である場合、架橋性ポリマーを生成させる重合反応をカチオン重合とすることで上記(i)の手法によって本発明の架橋性ポリマーを得ることができる。一方、P2がスチリル基またはスチリル基を含有する一価の基である場合は、ラジカル重合、カチオン重合、アニオン重合のいずれの方法をとってもゲル化が進行しやすいため、通常上記(ii)の手法によって一般式(3)の架橋性ポリマーを合成する。
【0060】
このように上記(ii)の高分子反応を利用する手法は、一般式(3)中に導入されるエチレン性不飽和基の種類によらず、架橋性ポリマーを得ることが可能であり、有用である。
高分子反応は、(I)例えば2−クロロエチル基から塩酸を脱離させるようなエチレン性不飽和基をプレカーサー化した官能基を含むポリマーを生成させたあとに官能基変換(脱離反応、酸化反応、還元反応など)によりエチレン性不飽和基に誘導する方法と、(II)任意の官能基を含むポリマーを生成させたあとに、該ポリマー中の官能基と結合生成反応が進行して共有結合を生成しうる官能基とエチレン性不飽和基の両方を有する反応性モノマーを反応させる方法が挙げられる。これら(I)、(II)の方法は組み合わせて行ってもよい。
ここで言う結合形成反応とは、一般に有機合成分野で用いられる結合生成反応のなかで共有結合を形成する反応であれば特に制限なく使用できる。一方で、架橋性ポリマーに含まれるエチレン性不飽和基が反応中に熱重合し、ゲル化してしまう場合があるので、できるだけ低温(好ましくは60℃以下、特に好ましくは室温以下)で反応が進行するものが好ましい。また反応の進行を促進させる目的で触媒を用いても良く、ゲル化を抑制する目的で重合禁止剤を用いてもよい。
【0061】
以下に好ましい高分子結合形成反応が進行する官能基の組み合わせの例を挙げるが本発明はこれらに限定されるものではない。
【0062】
加熱もしくは室温で反応が進行する官能基の組み合わせとしては、
(イ)ヒドロキシル基に対して、エポキシ基、イソシアネート基、N-メチロール基、カルボキシル基、アルキルハライド、酸無水物、酸クロライド、活性エステル基(例えば硫酸エステル)、ホルミル基、アセタール基、
(ロ)イソシアネート基に対して、ヒドロキシル基、メルカプト基、アミノ基、カルボキシル基、N-メチロール基、
(ハ)カルボキシル基に対して、エポキシ基、イソシアネート基、アミノ基、N-メチロール基、
(ニ)N-メチロール基に対して、イソシアネート基、N-メチロール基、カルボキシル基、アミノ基、ヒドロキシル基、
(ホ)エポキシ基に対して、ヒドロキシル基、アミノ基、メルカプト基、カルボキシル基、N-メチロール基、
(ヘ)ビニルスルホン基に対してスルフィン酸基、アミノ基、
(ト)ホルミル基に対してヒドロキシル基、メルカプト基、活性メチレン基、
(チ)メルカプト基に対して、ホルミル基、ビニル基(アリル基、アクリル基など)、エポキシ基、イソシアネート基、N-メチロール基、カルボキシル基、アルキルハライド、酸無水物酸クロライド、活性エステル基(例えば硫酸エステル)、
(リ)アミノ基に対して、ホルミル基、ビニル基(アリル基、アクリル基など)、エポキシ基、イソシアネート基、N-メチロール基、カルボキシル基、アルキルハライド、酸無水物、酸クロライド、活性エステル基(例えば硫酸エステル)、などの組み合わせが挙げられる。
【0063】
以下に反応性モノマーの好ましい具体例を以下に示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0064】
ヒドロキシル基含有ビニルモノマー(例えば、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、アリルアルコール、ヒドロキシプロピルアクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレートなど)、イソシアネート基含有ビニルモノマー(例えば、イソシアナトエチルアクリレート、イソシアナトエチルメタクリレートなど)、N-メチロール基含有ビニルモノマー(例えば、 N-メチロールアクリルアミド、N-メチロールメタクリルアミドなど)、エポキシ基含有ビニルモノマー(例えば、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、アリルグリシジルエーテル、CYCLOMER−M100、A200(ダイセル化学工業(株)製)など)、カルボキシル基含有ビニルモノマー(例えばアクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、カルボキシエチルアクリレート、安息香酸ビニル)、アルキルハライド含有ビニルモノマー(例えばクロロメチルスチレン、2−ヒドロキシ−3−クロロプロピルメタクリレート)、酸無水物含有ビニルモノマー(例えばマレイン酸無水物)、ホルミル基含有ビニルモノマー(例えばアクロレイン、メタクロレイン)、スルフィン酸基含有ビニルモノマー(例えばスチレンスルフィン酸カリウム)、活性メチレン含有ビニルモノマー(例えばアセトアセトキシエチルメタクリレート)、ビニル基含有ビニルモノマー(例えばアリルメタクリレート、アリルアクリレート)、酸クロライド含有モノマー(例えばアクリル酸クロライド、メタクリル酸クロライド)、アミノ基含有モノマー(例えばアリルアミン)、などが挙げられる。
【0065】
上記(II)に記載した任意の官能基を含むポリマーは、反応性官能基とエチレン性不飽和基の両方を有する反応性モノマーの重合を行うことで得ることができる。また、ポリ酢酸ビニルを変性して得られるポリビニルアルコールのように反応性の低い前駆体モノマーの重合後、官能基変換を行うことで得ることもできる。
これらの場合の重合方法としては、ラジカル重合が最も簡便で好ましい。
【0066】
以下に一般式(3)で表される繰り返し単位の好ましい具体例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0067】
【化7】
【0068】
【化8】
【0069】
【化9】
【0070】
【化10】
【0071】
【化11】
【0072】
本発明において一般式(3)で表される繰り返し単位を含む架橋性ポリマーは複数種の一般式(3)で表される繰り返し単位で構成されたコポリマーであってもよく、また、一般式(3)以外の繰り返し単位(例えばエチレン性不飽和基を含まない繰り返し単位)を含んだコポリマーでもよい。特に架橋性ポリマーのTgや親疎水性をコントロールしたい場合や、架橋性ポリマーのエチレン性不飽和基の含有量をコントロールする目的で一般式(3)以外の繰り返し単位を含んだコポリマーとする手法は好適である。一般式(3)以外の繰り返し単位の導入方法は、(a)対応するモノマーを共重合させて直接導入する手法を用いてもよく、(b)官能基変換可能な前駆体モノマーを重合させ、高分子反応により導入する手法を用いてもよい。また、(a)および(b)の手法を組み合わせて導入することもできる。
【0073】
(a)の手法によって一般式(3)以外の繰り返し単位を対応するビニルモノマーを重合することによって導入する場合、好ましく用いられるモノマーとしては、アクリル酸またはα−アルキルアクリル酸(例えばメタクリル酸など)類から誘導されるエステル類(例えばメチルアクリレート、エチルアクリレート、ヒドロキシエチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、i−プロピルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−メチル−2−ニトロプロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、i−ブチルアクリレート、t−ブチルアクリレート、t−ペンチルアクリレート、2−メトキシエチルアクリレート、2−エトキシエチルアクリレート、2−メトキシメトキシエチルアクリレート、2,2,2−トリフルオロエチルアクリレート、2,2−ジメチルブチルアクリレート、3−メトキシブチルアクリレート、エチルカルビトールアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、n−ペンチルアクリレート、3−ペンチルアクリレート、オクタフルオロペンチルアクリレート、n−ヘキシルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、シクロペンチルアクリレート、セチルアクリレート、ベンジルアクリレート、n−オクチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、4−メチル−2−プロピルペンチルアクリレート、ヘプタデカフルオロデシルアクリレート、n−オクタデシルアクリレート、メチルメタクリレート、2,2,2−トリフルオロエチルメタクリレート、テトラフルオロプロピルメタクリレート、ヘキサフルオロプロピルメタクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、 n−ブチルメタクリレート、i−ブチルメタクリレート、sec−ブチルメタクリレート、n−オクチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、2−メトキシエチルメタクリレート、2−エトキシエチルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、ヘプタデカフルオロデシルメタクリレート、n−オクタデシルメタクリレート、2−イソボルニルメタクリレート、2−ノルボルニルメチルメタクリレート、5−ノルボルネン−2−イルメチルメタクリレート、3−メチル−2−ノルボルニルメチルメタクリレート、ジメチルアミノエチルメタクリレートなど)、
【0074】
アクリル酸またはα−アルキルアクリル酸(例えばメタクリル酸など)類から誘導されるアミド類(例えば、N−i−プロピルアクリルアミド、N−n−ブチルアクリルアミド、N−t−ブチルアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N−メチルメタクリルアミド、アクリルアミド、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、アクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウムクロライド、メタクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、アクリロイルモルホリン、N−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド)、アクリル酸またはα−アルキルアクリル酸(アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸など)、ビニルエステル類(例えば酢酸ビニル)、マレイン酸またはフマル酸から誘導されるエステル類(マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジブチル、フマル酸ジエチルなど)、マレイミド類(N−フェニルマレイミドなど)、マレイン酸、フマル酸、p−スチレンスルホン酸のナトリウム塩、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、ジエン類(例えばブタジエン、シクロペンタジエン、イソプレン)、芳香族ビニル化合物(例えばスチレン、p−クロルスチレン、t−ブチルスチレン、α−メチルスチレン、スチレンスルホン酸ナトリウム)、N−ビニルピロリドン、N−ビニルオキサゾリドン、N−ビニルサクシンイミド、N−ビニルホルムアミド、N−ビニル−N−メチルホルムアミド、N−ビニルアセトアミド、N−ビニル−N−メチルアセトアミド、1−ビニルイミダゾール、4−ビニルピリジン、ビニルスルホン酸、ビニルスルホン酸ナトリウム、アリルスルホン酸ナトリウム、メタリルスルホン酸ナトリウム、ビニリデンクロライド、ビニルアルキルエーテル類(例えばメチルビニルエーテル)、エチレン、プロピレン、1−ブテン、イソブテン等が挙げられる。
【0075】
これらのビニルモノマーは2種類以上組み合わせて使用してもよい。これら以外のビニルモノマーはリサーチディスクロージャーNo.19551(1980年、7月)に記載されているものを使用することができる。
なかでも、アクリル酸またはメタクリル酸から誘導されるエステル類およびアミド類、ならびに芳香族ビニル化合物が特に好ましく用いられる。
【0076】
また、一般式(3)で表される繰り返し単位を前記(ii)のように高分子反応で導入し、反応を完結させない場合、エチレン性不飽和基をプレカーサー化した官能基や反応性官能基を含む繰り返し単位を有する共重合体となるが、本発明ではこれを特に制限無く用いることができる。
【0077】
上記で挙げたビニルモノマーから誘導されるエチレン性不飽和基を含まない繰り返し単位の大部分は前述した(b)官能基変換可能な前駆体モノマーを重合させ、高分子反応により導入することも可能である。一方で、本発明において一般式(3)で表される繰り返し単位を含む架橋性ポリマーは、高分子反応のみによってでしか導入できない、一般式(3)以外の繰り返し単位を含んでいてもよい。典型的な例としてポリ酢酸ビニルを変性して得られるポリビニルアルコールやポリビニルアルコールのアセタール化反応によって得られるポリビニルブチラール等を挙げることができる。これらの繰り返し単位の具体的な例を以下に示すが本発明はこれらに限定されるものではない。
【0078】
【化12】
【0079】
本発明において一般式(3)で表される繰り返し単位を含む架橋性ポリマー中、一般式(3)で表される繰り返し単位が含まれる割合は、1質量%以上100質量%以下、好ましくは30質量%以上100質量%以下、特に好ましくは50質量%以上100質量%以下である。
【0080】
一般式(3)で表される繰り返し単位を含む架橋性ポリマーの好ましい数量平均分子量(ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによる測定、ポリエチレングリコール換算値)の範囲は、1000以上100万以下、さらに好ましくは3000以上20万以下である。最も好ましくは5000以上10万以下である。
【0081】
以下に一般式(3)で表される繰り返し単位を含む架橋性ポリマーの好ましい例を表2に示すが、本発明はこれに限定されるものではない。なお、前記で具体例を挙げた一般式(3)で表される繰り返し単位とポリビニルアルコールなどの繰り返し単位は前記で挙げた具体例の番号で表し、共重合可能なモノマーから誘導される繰り返し単位は、モノマー名を記載し、共重合組成比を質量%で付記した。
【0082】
【表2】
【0083】
本発明に用いることのできる開環重合性基を有する硬化性樹脂として、一般式(1)および(3)で表される両方の繰り返し単位を含むポリマーも挙げることができる。この場合の一般式(1)および(3)の好ましい繰り返し単位としては、前記したものと同じである。また、一般式(1)および(3)以外の繰り返し単位を含んだコポリマーであってもエチレン性不飽和基および開環重合性基以外の反応性基を有する繰り返し単位を含んだコポリマーであってもよい。
【0084】
一般式(1)および(3)で表される両方の繰り返し単位を含む架橋性ポリマー中、一般式(1)で表される繰り返し単位が含まれる割合は、1質量%以上99質量%以下、好ましくは20質量%以上80質量%以下、特に好ましくは30質量%以上70質量%以下であり、一般式(3)で表される繰り返し単位が含まれる割合は、1質量%以上99質量%以下、好ましくは20質量%以上80質量%以下、特に好ましくは30質量%以上70質量%以下である。
【0085】
一般式(1)および(3)で表される両方の繰り返し単位を含む架橋性ポリマーの好ましい重量平均分子量(ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによる測定、ポリスチレン換算値)の範囲は、1000以上100万以下、さらに好ましくは3000以上20万以下である。最も好ましくは5000以上10万以下である。
【0086】
一般式(1)および(3)で表される両方の繰り返し単位を含む架橋性ポリマーの好ましい例を表3に示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、前記で具体例を挙げた一般式(1)および(3)で表される繰り返し単位とポリビニルアルコールなどの繰り返し単位は前記で挙げた具体例の番号で表し、共重合可能なモノマーから誘導される繰り返し単位は、モノマー名を記載し、共重合組成比を質量%で付記した。
【0087】
【表3】
【0088】
ハードコート層を形成するための硬化性組成物に好ましく含有される、エチレン性不飽和基を同一分子内に3個以上含む硬化性樹脂と開環重合性基を含む硬化性樹脂との好ましい混合比は、用いる硬化性樹脂の種類によっても異なり、特に制限はないが、エチレン性不飽和基を含む硬化性樹脂の割合が硬化性樹脂全体の30質量%以上90質量%以下であることが好ましく、さらに好ましくは50質量%以上80質量%以下である。
【0089】
エチレン性不飽和基を含む硬化性樹脂と開環重合性基を含む硬化性樹脂を含有する硬化性組成物(以下、特に断りのない限り、「硬化性組成物」は、これら両者の硬化性樹脂を含有する組成物である)を硬化させる場合、両方の硬化性樹脂の架橋反応が進行することが好ましい。エチレン性不飽和基の好ましい架橋反応はラジカル重合反応であり、開環重合性基の好ましい架橋反応はカチオン重合反応である。いずれの場合も活性エネルギー線の作用により、重合反応を進行させることができる。通常、重合開始剤と称される少量のラジカル発生剤およびカチオン発生剤(もしくは酸発生剤)を添加し、活性エネルギー線によりこれらを分解し、ラジカルおよびカチオンを発生させ重合を進行させることができる。ラジカル重合とカチオン重合は別々に行ってもよいが、同時に進行させることが好ましい。
【0090】
上記硬化性組成物を活性エネルギー線照射により硬化する場合、低温で架橋反応が進行する場合が多く、好ましい。
本発明では、活性エネルギー線として、放射線、ガンマー線、アルファー線、電子線、紫外線などが用いられる。その中でも紫外線を用いて、ラジカルもしくはカチオンを発生させる重合開始剤を添加し、紫外線により硬化させる方法が特に好ましい。また紫外線を照射した後、加熱することにより、さらに硬化を進行させることができる場合があり、この方法を好ましく用いることができる。この場合の好ましい加熱温度は140℃以下である。
【0091】
紫外線によってカチオンを発生させる光酸発生剤としては、トリアリールスルホニウム塩やジアリールヨードニウム塩などのイオン性の硬化性樹脂やスルホン酸のニトロベンジルエステルなどの非イオン性の硬化性樹脂が挙げられ、有機エレクトロニクス材料研究会編、"イメージング用有機材料"ぶんしん出版社刊(1997)などに記載されている硬化性樹脂等種々の公知の光酸発生剤が使用できる。この中で特に好ましくはスルホニウム塩もしくはヨードニウム塩であり、対イオンとしてはPF6 -、SbF6 -、AsF6 -、B(C6F5)4 - などが好ましい。
【0092】
紫外線によりラジカルを発生させる重合開始剤の例としてはアセトフェノン類、ベンゾフェノン類、ミヒラーのケトン、ベンゾイルベンゾエート、ベンゾイン類、α−アシロキシムエステル、テトラメチルチウラムモノサルファイドおよびチオキサントン等の公知のラジカル発生剤が使用できる。また上記で挙げたように通常、光酸発生剤として用いられるスルホニウム塩やヨードニウム塩なども紫外線照射によりラジカル発生剤として作用するため、本発明ではこれらを単独で用いてもよい。また、感度を高める目的で重合開始剤に加えて、増感剤を用いてもよい。増感剤の例には、n−ブチルアミン、トリエチルアミン、トリ−n−ブチルホスフィン、およびチオキサントン誘導体等が含まれる。
【0093】
重合開始剤は、それぞれ組み合わせて用いてもよいし、単独でラジカルとカチオンの両方を発生させるような硬化性樹脂の場合などは1種単独で用いることができる。重合開始剤の添加量としては、硬化性組成物中に含まれるエチレン性不飽和基含有硬化性樹脂と開環重合性基含有硬化性樹脂の総質量に対し、0.1〜15質量%の範囲で使用することが好ましく、1〜10質量%の範囲で使用することがさらに好ましい。
【0094】
本発明において一般式(1)で表される繰り返し単位を有する架橋性ポリマーや、一般式(3)で表される繰り返し単位を有する架橋性ポリマー(以下、これらを合わせて「本発明のポリマー」と称する)を使用する場合は、通常、本発明のポリマーは固体もしくは高粘度液体となり単独での塗布は困難であり、ポリマーが水溶性の場合や水分散物とした場合は水系で塗布することもできるが、通常有機溶媒に溶解して塗布される。有機溶媒としては、本発明のポリマーを溶解し得るものであれば特に制限なく使用できる。
好ましい有機溶媒としては、メチルエチルケトン等のケトン類、イソプロパノール等のアルコール類、酢酸エチルなどのエステル類などが挙げられる。また、前記した単官能もしくは多官能のビニルモノマーや、単官能、2官能または3官能以上の開環重合性基を有する硬化性樹脂が低分子量硬化性樹脂である場合、これらを併用すると、硬化性組成物の粘度を調節することが可能であり、溶媒を用いなくても塗布可能とすることもできる。
【0095】
また本発明では、硬化性組成物中に微粒子を添加してもよい。微粒子を添加することでハードコート層の硬化収縮量を低減できるため、基材との密着性が向上したり、基材がプラスチックフイルムである場合などカールを低減でき好ましい。微粒子としては、無機微粒子、有機微粒子、有機-無機複合微粒子のいずれも使用できる。無機微粒子としては例えば、二酸化ケイ素粒子、二酸化チタン粒子、酸化ジルコニウム粒子、酸化アルミニウム粒子などが挙げられる。このような無機微粒子は一般に硬質であり、ハードコート層に充填させることで、硬化時の収縮を改良できるだけではなく、表面の硬度も高めることができる。
ただし、微粒子は一般にヘイズを増加させる傾向があるために、各必要特性のバランスの上で充填方法が調整される。
【0096】
一般に、無機微粒子は本発明のポリマーや多官能ビニルモノマーなどの有機成分との親和性が低いため単に混合するだけでは凝集体を形成したり、硬化後のハードコート層がひび割れやすくなる場合がある。本発明では無機微粒子と有機成分との親和性を増すため、無機微粒子表面を有機セグメントを含む表面修飾剤で処理することができる。表面修飾剤は、無機微粒子と結合を形成するか無機微粒子に吸着しうる官能基と、有機成分と高い親和性を有する官能基を同一分子内に有するものが好ましい。
無機微粒子に結合もしくは吸着し得る官能基を有する表面修飾剤としては、シラン、アルミニウム、チタニウム、ジルコニウム等の金属アルコキシド表面修飾剤や、リン酸基、硫酸基、スルホン酸基、カルボン酸基等のアニオン性基を有する表面修飾剤が好ましい。
さらに有機成分との親和性の高い官能基としては単に有機成分と親疎水性を合わせただけのものでもよいが、有機成分と化学的に結合しうる官能基が好ましく、特にエチレン性不飽和基、もしくは開環重合性基が好ましい。
本発明において好ましい無機微粒子表面修飾剤は金属アルコキシドもしくはアニオン性基とエチレン性不飽和基もしくは開環重合性基を同一分子内に有する硬化性樹脂である。
【0097】
これら表面修飾剤の代表例として以下の不飽和二重結合含有のカップリング剤や、リン酸基含有有機硬化性樹脂、硫酸基含有有機硬化性樹脂、カルボン酸基含有有機硬化性樹脂等が挙げられる。
S−1 H2C=C(X)COOC3H6Si(OCH3)3
S−2 H2C=C(X)COOC2H4OTi(OC2H5)3
S−3 H2C=C(X)COOC2H4OCOC5H10OPO(OH)2
S−4 (H2C=C(X)COOC2H4OCOC5H10O)2POOH
S−5 H2C=C(X)COOC2H4OSO3H
S−6 H2C=C(X)COO(C5H10COO)2H
S−7 H2C=C(X)COOC5H10COOH
S−8 CH2CH(O)CH2OC3H6Si(OCH3)3
(Xは、水素原子あるいはCH3を表す)
【0098】
これらの無機微粒子の表面修飾は、溶液中でなされることが好ましい。無機微粒子を機械的に微細分散する時に、一緒に表面修飾剤を存在させるか、または無機微粒子を微細分散したあとに表面修飾剤を添加して攪拌するか、さらには無機微粒子を微細分散する前に表面修飾を行って(必要により、加温、乾燥した後に加熱、またはpH変更を行う)、そのあとで微細分散を行う方法でもよい。
表面修飾剤を溶解する溶液としては、極性の大きな有機溶剤が好ましい。具体的には、アルコール、ケトン、エステル等の公知の溶剤が挙げられる。
【0099】
有機微粒子としては特に制限がないが、エチレン性不飽和基を有するモノマーからなるポリマー粒子、例えば、ポリメタクリル酸メチル、ポリメタクリル酸エチル、ポリアクリル酸エチル、ポリアクリル酸ブチル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン等、および本発明における一般式(1)および(3)からなるポリマー粒子が好ましく用いられ、その他に、ポリシロキサン、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、ポリテトラフルオロエチレン、ポリカーボネート、ナイロン、ポリビニルアルコール、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリ塩化ビニル、アセチルセルロース、ニトロセルロース、ゼラチン等の樹脂粒子が挙げられる。これらの粒子は架橋されていることが好ましい。
微粒子の微細化分散機としては、超音波、ディスパー、ホモジナイザー、ディゾルバー、ポリトロン、ペイントシェーカー、サンドグラインダー、ニーダー、アイガーミル、ダイノミル、コボールミル等を用いることが好ましい。また、分散媒としては前述の表面修飾用の溶媒が好ましく用いられる。
【0100】
微粒子の充填量は、充填後のハードコート層の体積に対して、2〜40体積%が好ましく、3〜25体積%がより好ましく、5〜15体積%が最も好ましい。
【0101】
本発明のハードコート層のヘイズは1.5%以下であることが好ましく、1.2%以下がさらに好ましく、1.0%以下が最も好ましい。ヘイズの評価法は、日本電色工業(株)製の濁度計「NDH−1001DP」を用いて測定したヘイズ=(拡散光/全透過光)×100(%)として自動計測される値を用いた。
【0102】
本発明におけるハードコートフイルムは、カールを以下の数式Bで表したときの値が、マイナス15〜プラス15の範囲に入っていることが好ましく、マイナス12〜プラス12の範囲がより好ましく、さらに好ましくはマイナス10〜プラス10である。このときのカールの試料内測定方向は、ウェッブ形態での塗布の場合、基材の搬送方向について測ったものである。
(数式B) カール=1/R Rは曲率半径(m)
これは、ハードコートフイルムの製造、加工、市場での取り扱いで、ひび割れ、膜はがれを起こさないための重要な特性である。カール値が前記範囲にあり、カールが小さいことが好ましい。上記範囲にカールを小さくすることと高表面硬度とすることは、ハードコート層形成用の硬化性組成物の硬化前後の体積収縮率を15%以下とすることによって可能である。
カールの測定は、JISK7619−1988の「写真フイルムのカールの測定法」中の方法Aのカール測定用型板を用いて行われる。測定条件は25℃、相対湿度60%、調湿時間10時間である。
ここで、カールがプラスとはフイルムのハードコート層塗設側が湾曲の内側になるカールを言い、マイナスとは塗設側が湾曲の外側になるカールをいう。
また、本発明におけるハードコートフイルムは、上記したカール測定法に基づいて、相対湿度のみを80%と10%に変更したときの各カール値の差の絶対値が、24〜0が好ましく、15〜0がさらに好ましく、8〜0が最も好ましい。これはさまざまな湿度下でフイルムを貼り付けたときのハンドリング性や剥がれ、ひび割れに関係する特性である。
【0103】
本発明におけるハードコートフイルムの耐ひび割れ性は、ハードコート層塗設側を外側にして丸めたときに、ひび割れが発生する曲率直径が、50mm以下であることが好ましく、40mm以下がより好ましく、30mm以下が最も好ましい。エッジ部のひび割れについては、ひび割れがないか、ひび割れの長さが平均で1mm未満であることが好ましい。この耐ひび割れ性は、ハードコートフイルムの塗布、加工、裁断、貼りつけ等のハンドリングで割れ欠陥を出さないための重要な特性である。
【0104】
本発明のハードコートフイルムに用いられる基材は、透明なフイルム状やシート、板状のプラスチックが好ましい。具体的にはポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル、トリアセチルセルロース、ジアセチルセルロース等のセルロース樹脂、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、ポリカーボネート、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリアリレート、シクロオレフィンポリマー等のフイルムやシートが好ましい。フイルムの厚みは20〜300μmが好ましく、80〜200μmがより好ましい。基材フイルムの厚みが薄すぎると膜強度が弱く、厚いと剛性が大きくなり過ぎる。シートの厚みは透明性を損なわない範囲であればよく、300μm以上数mmのものが使用できる。
【0105】
活性エネルギー線硬化塗布液(硬化組成物の塗布液)は、ケトン系、アルコール系、エステル系等の有機溶剤に、上記の多官能モノマーと重合開始剤を主体に溶解して調製する。さらに、表面修飾した硬無機微粒子分散液と軟微粒子分散液を添加して調製することができる。
【0106】
本発明のハードコート層の作製は、透明基材上に活性エネルギー線硬化塗布液をディッピング法、スピナー法、スプレー法、ロールコーター法、グラビア法、ワイヤーバー法、スロットエクストルージョンコーター法(単層、重層)、スライドコーター法等の公知の薄膜形成方法で塗布し、乾燥、活性エネルギー線照射して、硬化させることにより作製することができる。
乾燥は、塗布した液膜中の有機溶媒濃度が、乾燥後に5質量%以下になる条件が好ましく、2質量%以下がより好ましく、1質量%以下がさらに好ましい。乾燥条件は、基材の熱的強度や搬送速度、乾燥工程長さなどの影響を受けるが、できるだけ有機溶媒の含有率の低いほうが重合率を高める点で好ましい。
【0107】
さらに、透明基材とハードコート層の密着性を向上させる目的で、所望により透明基材の片面又は両面に、酸化法や凹凸化法等により表面処理を施すことができる。上記酸化法としては、例えばコロナ放電処理、グロー放電処理、クロム酸処理(湿式)、火炎処理、熱風処理、オゾン・紫外線照射処理等が挙げられる。更に、一層以上の下塗り層を設けることができる。下塗り層の素材としては塩化ビニル、塩化ビニリデン、ブタジエン、(メタ)アクリル酸エステル、ビニルエステル等の共重合体或いはラテックス、低分子量ポリエステル、ゼラチン等の水溶性ポリマー等が挙げられる。さらに下塗り層に酸化錫、酸化錫・酸化アンチモン複合酸化物、酸化錫・酸化インジウム複合酸化物等の金属酸化物や四級アンモニウム塩等の帯電防止剤を含有させることができる。
【0108】
ハードコート層は、複数層構成でも可能であり、硬度の順に適宜積層して作製することもできる。
【0109】
【実施例】
以下、実施例に基づき本発明を具体的に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
【0110】
実施例1〜6、比較例1〜3
(ハードコート層塗布液(h−1)の調製)
メチルエチルケトン(MEK)中にグリシジルメタクリレートを溶解させ、熱重合開始剤(V−65(和光純薬工業(株)製)を滴下しながら80℃で2時間反応させ、得られた反応溶液をヘキサンに滴下し、沈殿物を減圧乾燥して得たポリグリシジルメタクリレート(ポリスチレン換算分子量は12,000)をメチルエチルケトンに50質量%濃度になるように溶解した溶液100質量部に、トリメチロールプロパントリアクリレート(ビスコート#295;大阪有機化学工業(株)製)150質量部と光ラジカル重合開始剤(イルガキュア184、チバガイギー社製)6質量部と光カチオン重合開始剤(ロードシル2074、ローディア社製)6質量部とメガファック531A(大日本インキ化学工業(株)製)10質量部を30質量部のメチルイソブチルケトンに溶解したものを撹拌しながら混合し、ハードコート層塗布液(h−1)を作製した。
(ハードコート層塗布液(h−2)の調製)
ハードコート層塗布液(h−1)の調製において、メガファック531Aを等質量のX−22−164B(信越化学(株)製)に変更する以外は同様に行い、ハードコート層塗布液(h−2)を調製した。
(ハードコート層塗布液(h−3)の調製)
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHA、ダイセル・ユーシービー(株)製)93質量部に、R−3833(ダイキンファインケミカル研究所製)5質量部、X−22−164C(信越化学(株)製)2質量部、光ラジカル重合開始剤(イルガキュア907、チバガイギー社製)3質量部をメチルエチルケトン/メチルイソブチルケトン(1:1質量比)混合液に溶解混合し、ハードコート層塗布液(h−3)を調整した。
(ハードコート層塗布液(h−4)の調整
ハードコート層塗布液(h−1)の調製において、メガファック531Aを添加しなかった以外は同様に行い、ハードコート層塗布液(h−4)を調製した。
【0111】
(ハードコート層塗布液(h−5)の調整
ハードコート層塗布液(h−1)の調製において、メガファック531Aを等質量の熱架橋性含フッ素ポリマー(JN−7214、JSR(株)製)に変更する以外は同様に行い、ハードコート層塗布液(h−5)を調製した。
【0112】
(ハードコートフイルムの作製)
厚さ175μmと100μmのPET(2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフイルム)の両面をコロナ処理し、ハードコート層を設置する面に屈折率1.55、ガラス転移温度37℃のスチレン−ブタジエンコポリマーからなるラテックス(LX407C5、日本ゼオン(株)製)と酸化錫・酸化アンチモン複合酸化物(FS−10D、石原産業(株)製)を質量で5:5の割合で混合し、乾燥後の膜厚が200nmとなるよう塗布し、帯電防止層付き下塗り層を形成した後、上記ハードコート層用塗布液を表1に記載の厚みになるようにエクストルージョン方式で塗布、乾燥し、紫外線を照射(700mJ/cm2)して表4に記載の厚みのハードコートフイルムを作製した。
【0113】
(重層ハードコートフイルムの作製)
上記の操作でハードコート層塗布液h−4を塗布した後、さらに同様の操作で、h−3のハードコート層塗布液を0.1μmの厚みになるように形成し、重層のハードコートフイルムを作製した。
【0114】
(防汚層の作製)
(1)防汚層塗布液(a−1)の調製
熱架橋性含フッ素ポリマー(JN−7214、JSR(株)製)にイソプロピルアルコールを加えて、0.2質量%の粗分散物液を調製した。粗分散液を更に超音波分散し、防汚性用塗布液を調製した。
【0115】
(2)防汚層付きハードコートフイルムの形成
(h−4)のハードコート層塗設後、(a−1)の防汚層塗布液を、ワイヤーバーを用いて乾燥膜厚が0.1μmになるように塗布、乾燥、熱硬化し防汚層を形成し、防汚層付きハードコートフイルムを得た。
【0116】
同様に、PETの厚味、ハードコート液の種類、それぞれの層の膜厚が表4に記載の値になるように塗布液を調製し、反射防止ハードコートフイルムを作製した。これらのフイルムの特性を表4に示す。
【0117】
(透明導電膜の塗設)
実施例1、4、5および比較例2、3のハードコート層を設けたフイルムのハードコート層と反対の面に、DCマグネトロンスパッタ法にてITOを15nm厚で製膜した。
【0118】
(3)タッチパネルの作製
片面の表面抵抗率が5Ω/□、もう片面の表面抵抗率が400Ω/□の透明導電膜(ITO)が付いたガラス板を用意した。表面抵抗率5Ω/□の面にポリイミド配向膜(SE−7992、日産化学(株)製)を形成した。もう一方の面(表面抵抗率400Ω/□)には、1mmピッチのドットスペーサと両端部に銀電極を印刷した。
実施例1、4、5、8および比較例2、3に透明導電膜を塗設し得られたハードコートフイルム(透明導電膜)側面の両端に銀電極を印刷し、それぞれ、上記透明ハードコート層の表面弾性率が4.0GPa以上10GPa以下である導電ガラス板と、透明導電膜同士が対向するように接着した。この際、両基板の周囲に100μm厚の絶縁性貼り合せ剤を挟んだ。
このようにしてタッチパネルA〜Eを作製した。これらのタッチパネルの特性を表5に示す。
【0119】
【表4】
【0120】
【表5】
【0121】
それぞれの評価方法は、以下の方法で行った。
・表面弾性率;微小表面硬度計((株)フィッシャー・インスツルメンツ社製:フィッシャースコープH100VP−HCU)を用いて、ダイヤモンド製の四角錐圧子(先端対面角度;136°)を使用し、押し込み深さが1μmを超えない範囲で、適当な試験荷重下での押し込み深さを測定し、除荷重時の荷重と変位の変化から表面弾性率を求めた。
・鉛筆硬度試験;鉛筆引っ掻き試験の硬度は、作製したハードコートフイルムを温度25℃、相対湿度60%の条件で2時間調湿した後、JIS−S−6006が規定する試験用鉛筆を用いて、JIS−K−5400が規定する鉛筆硬度評価方法に従い、9.8Nの荷重にて傷が認められない鉛筆の硬度を求めた。
・接触角;ハードコートフイルムを2×2cm2に切り取り、Contact-Angle meter(協和界面化学(株)製10927)を用いて水の接触角を測定した。
・防汚性;フイルム表面に書いた速乾性油性インキ(ゼブラ製、「マッキー」(登録商標))を東レ(株)製「トレシー」(登録商標)を用いて数回擦ってふき取った状態の評価(○は書いた跡が完全にふき取れた状態、△は一部がふき取れずに残った状態、×は大部分がふき残った状態)。
・耐擦傷性;#0000のスチールウールを用い、2N/cm2の荷重をかけ、50往復擦った後、表面の傷を観察した(傷が見えないものを○、僅かに見えるものを△、傷がはっきり見えるものを×とした)。
・汚れ拭取り性;表面についた指紋を東レ(株)製「トレシー」(登録商標)を用いて拭取った時の取れ易さを評価した(○は軽い力で数回でとれるもの、×は力をこめて擦って取れるもの、△は中間のもの)。
・ON荷重;ON荷重の測定はタッチパネル用ペン(ポリアセタールペン、先端0.8R)に徐々に荷重を加えて行き、タッチパネルの上下基板の対向するITOが導通し、ON状態が検出されたときの荷重を求めることで行った。
【0122】
【発明の効果】
本発明の防汚性ハードコート層は、高表面硬度で耐擦傷性に優れており、本発明の防汚性ハードコートを設けた透明基材は鉛筆硬度が高く、表面に傷がつき難く、汚れ難いものである。
このような諸機能性を有する透明ハードコートフイルム(透明基材)は、CRT、LCD、PDP、FED等の画像表示装置の表面やタッチパネルとして、またプラスチックやガラスの保護に好適である。
Claims (4)
- 同一分子内にエチレン性不飽和基を3個以上含む硬化性樹脂が、トリメチロールプロパントリアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、およびジペンタエリスリトールヘキサアクリレートから選ばれる少なくとも一つであることを特徴とする請求項1に記載のハードコート用硬化性組成物。
- L1が、単結合、−O−、アルキレン基、アリーレン基および*側で主鎖に連結する*−COO−、*−CONH−、*−OCO−、*−NHCO−から選ばれることを特徴とする請求項1または2に記載のハードコート用硬化性組成物。
- 請求項1〜3のいずれかに記載のハードコート用硬化性組成物から形成される硬化被膜を有し、硬化被膜の膜厚が20μm以上50μm以下であることを特徴とするハードコート処理物品。
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