JP2015024638A - ケイ素及び/又はフッ素を有するダイヤモンド微粒子を含む撥水性及び撥油性に優れたハードコートフィルム - Google Patents
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Abstract
Description
本発明のハードコートフィルム1は、図1に示すように、基材2上にダイヤモンド微粒子10を含むハードコート層3が形成されたものであり、前記ダイヤモンド微粒子10は、(a)ケイ素を有するダイヤモンド微粒子、(b)フッ素を有するダイヤモンド微粒子、(c)ケイ素を有するダイヤモンド微粒子及びフッ素を有するダイヤモンド微粒子の混合物、又は(d)ケイ素及びフッ素を有するダイヤモンド微粒子である。
ハードコート層は、JIS K5600−5−4で示す鉛筆硬度試験で「4H」以上の硬度を示す高硬度の層であり、硬化材料(ハードコート剤)の塗布等により形成されるもの、又は基材とハードコート層とを共押出しにより積層して形成されるものが好ましい。
ハードコート剤又はハードコート剤を含む溶液にケイ素を有するダイヤモンド微粒子及び/又はフッ素を有するダイヤモンド微粒子、又はケイ素及びフッ素を有するダイヤモンド微粒子を分散し、ハードコート層を形成する。
基材とハードコート層とを積層して形成する場合、後述の基材を形成する材料と、ケイ素を有するダイヤモンド微粒子及び/又はフッ素を有するダイヤモンド微粒子、又はケイ素及びフッ素を有するダイヤモンド微粒子を含有するハードコート層を形成する材料とを共押出しにより積層しても良いし、それぞれを押出成形して単層のシートを形成し、それらをドライラミネーション、熱ラミネーション等により貼り合わせ得てもよい。ただし、生産性の点で共押出しにより積層したものが好ましい。共押出成形の場合には、複雑な工程(乾燥工程や塗工工程)を経なくてもよいため、ゴミなどの外部異物の混入が少なく、優れた光学性能を発揮できる。ハードコート層を形成する材料としては、後述の基材を形成する材料を使用するのが好ましい。
本発明のハードコートフィルムは、基材の上にケイ素を有するダイヤモンド微粒子及び/又はフッ素を有するダイヤモンド微粒子、又はケイ素及びフッ素を有するダイヤモンド微粒子を含有するハードコート層を積層した、高い表面硬度を有するフィルムである。ケイ素を有するダイヤモンド微粒子及び/又はフッ素を有するダイヤモンド微粒子、又はケイ素及びフッ素を有するダイヤモンド微粒子を含有するハードコート層を設けることで、優れた耐擦傷性と高い硬度をフィルムに持たせることができ、フィルムの鉛筆硬度が上がり、高表面硬度を実現することができるとともに、指紋が付着しにくく、また付着した指紋を容易に拭き取ることができる撥水性、撥油性に優れたものになる。鉛筆硬度は、JIS K5600−5−4が規定する鉛筆硬度評価方法により求められる値であり、フィルムの表面硬度を量る指標となる。鉛筆硬度が4H以上であれば、フィルムとしては十分な表面硬度を有し、好ましくは5H以上である。
本発明のケイ素を有するダイヤモンド微粒子、フッ素を有するダイヤモンド微粒子、並びにケイ素及びフッ素を有するダイヤモンド微粒子は、10〜500nm程度のダイヤモンド微粒子を、ケイ素原子を含有する基及び/又はフッ素原子を含有する基で修飾したものである。すなわち、ケイ素のみを有するダイヤモンド微粒子であってもよいし、フッ素のみを有するダイヤモンド微粒子であってもよいし、ケイ素及びフッ素を有するダイヤモンド微粒子であってもよい。
基材については特に制限はなく、光学用ハードコートフィルムの基材として公知のプラスチックフィルムの中から適宜選択して用いることができる。このようなプラスチックフィルムとしては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリカーボネート等のポリエステル系フィルム、ポリメチルメタクリレート等のアクリル系フィルム、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、脂環式構造含有重合体等のポリオレフィン系フィルム、セロファン、ジアセチルセルロースフィルム、トリアセチルセルロースフィルム、アセチルセルロースブチレートフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリ塩化ビニリデンフィルム、ポリビニルアルコールフィルム、エチレン−酢酸ビニル共重合体フィルム、ポリスチレンフィルム、ポリスルホンフィルム、ポリエーテルエーテルケトンフィルム、ポリエーテルスルホンフィルム、ポリエーテルイミドフィルム、ポリイミドフィルム、フッ素樹脂フィルム、ポリアミドフィルム等を用いることができる。
前記ハードコート層は、ケイ素を有するダイヤモンド微粒子、フッ素を有するダイヤモンド微粒子、又はケイ素及びフッ素を有するダイヤモンド微粒子の他に、硬度をアップさせ傷付き耐性を高める目的で、無機微粒子を含んでもよい。前記無機微粒子としては、雲母、合成雲母、シリカ、アルミナ、酸化カルシウム、チタニア、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、フッ化マグネシウム、スメクタイト、合成スメクタイト、バーミキュライト、ITO(酸化インジウム/酸化錫)、ATO(酸化アンチモン/酸化錫)、酸化錫、酸化インジウム、酸化カドミウム、酸化アンチモン等が挙げられる。
ハードコートフィルムには、図2に示すように、ハードコート層3が形成された面とは反対の面に透明導電層4を設けることができる。透明導電層5としては、酸化錫(SnO2等)、酸化インジウム、酸化アンチモン、酸化亜鉛(ZnO)、酸化カドミウム、インジウム錫酸化物(ITO)等の金属酸化物、金、銀、銅、アルミニウム、錫、ニッケル等の金属膜が挙げられる。その中でも、金属酸化膜は、成長が速く、中でもZnO、SnO2等の単一金属からなる酸化物が化学量論比による制御が容易で高性能な薄膜が得られる点で好ましい。透明導電層の形成方法は特に限定されず、スパッタリング法、真空蒸着法、イオンプレーティング法、低圧プラズマ、塗工法、常圧プラズマCVD法等が挙げられる。透明導電層の厚さは、表面抵抗が発現し、透明性が保たれる厚みであることが好ましく、赤外線及び電磁波の低減性能が発現し、可視光透過率が60%以上であるためには、膜厚は30〜200nmであるのが好ましい。
ハードコートフィルムには、本発明の目的を阻害しない範囲で、ハードコート層3の上に反射防止層を設けることができる。反射防止層4としては、TiO2、ZrO2、SiO2、MgF2等が用いられる。高性能な反射防止機能を付与するには、TiO2層とSiO2層との積層体を用いるのが好ましい。このような積層体としては、ハードコート層上に屈折率の高いTiO2層(屈折率:約1.8〜2.1)を形成し、このTiO2層上に屈折率の低いSiO2層(屈折率:約1.4〜1.5)を形成してなる2層積層体、さらにこの2層積層体上に、TiO2層及びSiO2層をこの順に形成してなる4層積層体が好ましい。このような2層積層体又は4層積層体の反射防止層を設けることにより、特定波長の光の反射率を低くすることができる。
ケイ素を有するダイヤモンド微粒子、フッ素を有するダイヤモンド微粒子、並びにケイ素及びフッ素を有するダイヤモンド微粒子は、ダイヤモンド微粒子をケイ素化処理及び/又はフッ素化処理することにより得ることができる。ケイ素化処理は、フッ素化処理よりも先に行うのが好ましい。
ダイヤモンド微粒子としては、爆射法により得られた未精製のナノダイヤモンド(BDと言うこともある。)、又はそれを酸化処理しグラファイト系炭素の一部又は全部を除去したナノダイヤモンドが好ましい。前記酸化処理して得られるナノダイヤモンドとしては、後述のグラファイト相の一部が除去されたナノダイヤモンド(グラファイト−ダイヤモンド粒子と呼ぶ)及びグラファイト相がほとんど除去された精製ナノダイヤモンド粒子が好ましい。
従って、精製度が高くグラファイト系炭素の残存量が少ないほど比重が高くなる。本発明で用いるナノダイヤモンドの比重は2.36g/cm3(ダイヤモンド8.8体積%)以上3.48g/cm3(ダイヤモンド98体積%)以下、2.55g/cm3(ダイヤモンド24体積%)以上3.48g/cm3以下であるのが好ましく、3.0g/cm3(ダイヤモンド84体積%)以上3.46g/cm3(ダイヤモンド97体積%)以下であるのがより好ましく、3.38g/cm3(ダイヤモンド90体積%)以上3.45g/cm3(ダイヤモンド96体積%)以下であるのが最も好ましい。なおナノダイヤモンド中のダイヤモンドの体積%は、前記ダイヤモンドの比重3.50g/cm3及びグラファイトの比重2.25g/cm3を用いて、ナノダイヤモンドの比重から算出した。
爆射法によるBDの合成は、例えば、水と多量の氷を満たした純チタン製の耐圧容器に、電気雷管を装着した爆薬[例えば、TNT(トリニトロトルエン)/HMX(シクロテトラメチレンテトラニトラミン)=50/50]を胴内に収納させ、片面プラグ付き鋼鉄製パイプを水平に沈め、この鋼鉄製パイプに鋼鉄製のヘルメット状カバーを被覆して、前記爆薬を爆裂させることにより行うことができる。反応生成物としてのBDは容器中の水及び氷中から回収する。
(i)酸化処理A
爆射法で得られた未精製の粗ダイヤモンド(BD)は、まず酸化処理Aを施すのが好ましい。
酸化処理Aを施すことによりグラファイト相の一部が除去されたグラファイト−ダイヤモンド粒子が得られる。酸化処理Aは、(a)爆射法で得られたBDを、酸中で酸化性分解処理する工程、(b)酸化性分解処理したBDを、さらに厳しい条件で処理する酸化性エッチング処理工程、(c)酸化性エッチング処理後の液を中和する工程、(d)脱溶媒工程、及び(e)洗浄工程からなり、必要に応じてグラファイト−ダイヤモンド粒子分散液の(f)pH及び濃度を調製する工程、又は(g)乾燥して微粉末とする工程からなる。
回収したBDを55〜56質量%の濃硝酸、又は濃硝酸と濃硫酸との混合物とともに、1.4MPa程度の圧力及び150〜180℃程度の温度で10〜30分間処理し、電気雷管等の混入金属、炭素等の夾雑物等の不純物を分解する。
酸化性分解処理したBDは、濃硝酸中で酸化性分解処理よりもさらに厳しい条件(例えば、1.4MPa、200〜240℃)で行う。このような条件で10〜30分処理すると、BD表面を被覆する硬質炭素、すなわちグラファイトを大部分除去することができる。
酸化性エッチング処理後のグラファイト−ダイヤモンド粒子を含む硝酸水溶液(pHが2〜6.95)に、それ自身又はその分解反応生成物が揮発性の塩基性物質を加えて中和反応させる。塩基性物質の添加によりpH7.05〜12に上昇する。前記塩基性物質を使用することにより、凝集したグラファイト−ダイヤモンド粒子内に浸透した塩基が、粒子内の硝酸と反応し、ガス化することにより凝集体を個々のグラファイト−ダイヤモンド粒子に解体するといった効果が得られる。この工程により、グラファイト−ダイヤモンド粒子の大きな比表面積及び孔部吸着空間が形成されるものと思われる。
得られたグラファイト−ダイヤモンド粒子を含む液は、遠心分離、デカンテーション等により脱溶媒するのが好ましい。
脱溶媒したグラファイト−ダイヤモンド粒子はデカンテーション法により水洗するのが好ましい。洗浄操作は3回以上行うのが好ましい。水洗したグラファイト−ダイヤモンド粒子は、再度遠心分離し、脱水するのが好ましい。
グラファイト−ダイヤモンド粒子分散液は、pH4〜10、好ましくはpH5〜8、より好ましくはpH6〜7.5に調節する。グラファイト−ダイヤモンド粒子濃度は0.05〜16%、好ましくは0.1〜12%、より好ましくは1〜5%に調製するのが好ましい。
酸化処理Bは、(a)グラファイト相を有するナノダイヤモンドと、酸化性化合物と、水及び/又はアルコールからなる溶媒とからなる混合物A(単に「混合物A」とよぶことがある)を調製し、(b)この混合物Aを、溶媒の臨界点以上の温度及び圧力にした状態でグラファイト相を有するナノダイヤモンドを処理し、(c)得られた精製ダイヤモンド粒子を含む液を遠心分離して溶媒を除去する工程を有する。さらに、脱溶媒した精製ダイヤモンド粒子を(d)水洗及び遠心分離により脱水する工程を設けるのが好ましい。工程(c)と(d)の間に、必要に応じて、脱溶媒した精製ダイヤモンド粒子を(e)塩基性溶液で中和する工程、及び(f)弱酸で処理する工程を設けてもよい。工程(c)又は(d)で得られた精製ダイヤモンド粒子は乾燥して微粉末にする。
混合物Aは、グラファイト相を有するナノダイヤモンドの粉末に、酸化性化合物、及び水及び/又はアルコールからなる溶媒を混合することにより調製する。又は、前記溶媒にあらかじめグラファイト相を有するナノダイヤモンドを分散した液に、前記酸化性化合物又はその溶液を添加して調製しても良い。混合物Aには、酸化性化合物による酸化反応を促進させるため、塩基性化合物又は酸化性化合物を添加しても良い。
混合物Aを溶媒の臨界点以上の温度及び圧力で処理する。処理温度は溶媒の臨界温度以上、600℃以下であるのが好ましく、550℃以下であるのがより好ましい。処理圧力は溶媒の臨界圧力以上、100MPa以下であるのが好ましく、70MPa以下であるのがより好ましく、50MPa以下であるのが最も好ましい。処理時間は温度及び圧力により適宜設定すればよいが、1〜24時間が好ましい。
酸化処理Aと同様にして行う。
酸化処理Aと同様にして行う。
工程(c)で脱溶媒した精製ダイヤモンド粒子を、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の塩基で中和してもよい。塩基性溶液の濃度は0.01〜0.5mol/Lが好ましい。脱溶媒した精製ダイヤモンド粒子に塩基性溶液を添加し、超音波処理するのが好ましい。
工程(e)で中和した精製ダイヤモンド粒子を弱酸溶液で洗浄するのが好ましい。弱酸溶液の例として、0.01〜0.5mol/Lの塩酸が挙げられる。中和した精製ダイヤモンド粒子に弱酸溶液を添加し、超音波処理するのが好ましい。
酸化処理Cは、(a)グラファイト相を有するナノダイヤモンドと、水及び/又はアルコールからなる溶媒とからなる混合物Bを調製し、(b)この混合物Bに酸素を共存させた状態で、処理溶媒の標準沸点以上の温度及び0.1MPa(ゲージ圧)以上の圧力でグラファイト相を有するナノダイヤモンドを処理し、(c)得られた精製ダイヤモンド粒子を含む液を遠心分離して溶媒を除去する工程を有する。さらに、脱処理溶媒した精製ダイヤモンド粒子を(d)水洗及び遠心分離により脱水する工程を設けるのが好ましい。工程(c)又は(d)で得られた精製ダイヤモンド粒子は乾燥して微粉末にする。
混合物Bは、グラファイト相を有するナノダイヤモンドと、水及び/又はアルコールからなる溶媒とを混合することにより調製する。混合物B中のグラファイト相を有するナノダイヤモンドの濃度は、0.05〜16質量%が好ましく、0.1〜12質量%がより好ましく、1〜10質量%が最も好ましい。この濃度が16質量%を超えると、精製が不十分となる恐れがある。
一方0.05質量%未満であると、回収時のロスの割合が多くなり生産性が悪化する。
混合物Bをオートクレーブに入れ、酸素を導入する。酸素の導入量は、グラファイト相を有するナノダイヤモンド中のグラファイト1gに対して、0.1モル以上が好ましく、0.15モル以上がより好ましく、0.2モル以上が最も好ましい。この導入量の上限は特に制限されない。
酸化処理Aと同様にして行う。
酸化処理Aと同様にして行う。
酸化処理Dは、前記グラファイト相を有するナノダイヤモンドを反応管に入れ、常圧下で酸素を含む気体を流しながら380〜450℃に加熱する工程を有する。加熱温度は400〜430℃であるのが好ましい。酸素を含む気体は、酸素ガス、空気等を使用できるが、簡便さから空気が好ましい。
酸化処理を効率よく行い、着色の少ない精製ダイヤモンド粒子を得るために、酸化処理B〜Dの前にBD又はグラファイト−ダイヤモンド粒子をビーズミル等の公知のメディア分散法により粉砕するのが好ましい。ビーズミルによる分散は、ジルコニアビーズを使用するのが好ましい。BD又はグラファイト−ダイヤモンド粒子をメディア分散することにより、メジアン径を100nm以下にするのが好ましく、50nm以下にするのがより好ましく、30nm以下にするのが最も好ましい。
前記爆射法で得られた未精製のナノダイヤモンド、又は前記酸化処理して得られたナノダイヤモンドに、シリル化剤、アルコキシシラン、シランカップリング剤等を反応させることによりナノダイヤモンドの表面にある水酸基等の親水性基を、ケイ素を含む有機基に置換することができる。ケイ素化処理は、シリル化剤を用いるのが好ましい。
前記爆射法で得られた未精製のナノダイヤモンド、又は前記酸化処理により得られたナノダイヤモンドは、フルオロアルキル基含有オリゴマーを使用した方法、フッ素ガスと直接反応させる方法、フッ素プラズマによる方法等により、その表面をフッ素又はフッ素を有する基で修飾することができる。
高分子主鎖の両末端にフルオロアルキル基が直接炭素一炭素結合により導入された高分子界面活性剤(含フッ素オリゴマー)は、水溶液中又は有機溶媒中において自己組織化したナノレベルの分子集合体を形成することが知られている。このフルオロアルキル基が末端に導入された含フッ素オリゴマーを用いることにより、フルオロアルキル基で修飾したナノダイヤモンドを形成することができる。
フッ素ガスと直接反応させる方法は、ナノダイヤモンドを入れた反応管(ニッケル製等)に、フッ素ガスとアルゴン等の不活性ガスとの混合ガスを300〜500℃で10〜500時間流すことにより行う。
(1)ナノダイヤモンドの作製
TNT(トリニトロトルエン)とRDX(シクロトリメチレントリニトロアミン)を60/40の比で含む0.65kgの爆発物を3m3の爆発チャンバー内で爆発させて生成するBDを保存するための雰囲気を形成した後、同様の条件で2回目の爆発を起こしBDを合成した。爆発生成物が膨張し熱平衡に達した後、15mmの断面を有する超音速ラバルノズルを通して35秒間ガス混合物をチャンバーより流出させた。チャンバー壁との熱交換及びガスにより行われた仕事(断熱膨張及び気化)のため、生成物の冷却速度は280℃/分であった。サイクロンで捕獲した生成物(黒色の粉末、BD)の比重は2.36g/cm3、メジアン径(動的光散乱法)は230nmであった。このBDは比重から計算して、91体積%のグラファイト系炭素と9体積%のダイヤモンドからなっていると推定された。
得られたナノダイヤモンドの粉末をメチルイソブチルケトンに3質量%の濃度で分散させ、トリメチルクロロシランのメチルイソブチルケトン溶液(濃度7.5質量%)を1:1の容量で加え、48時間撹拌してナノダイヤモンドをトリメチルシランで修飾した。得られた分散物をメチルイソブチルケトンで洗浄後、乾燥し、トリメチルシラン修飾ナノダイヤモンド粉末を得た。ナノダイヤモンドに対し、トリメチルシランが8.5質量%付加したケイ素化ナノダイヤモンド粉末を得た。
基材フィルムとして、ポリエチレンテレフタレートフィルム(東洋紡社製、O−PET、75μm)の表面にスパッタリングで20nmのITO層を形成させたシートを上部電極として得た。この上部電極の表面固有抵抗は300Ω/cm2であった。
(1)フッ素化処理
実施例1で作製したナノダイヤモンドの粉末を3質量%の濃度でメタノールに分散させ、下記式:
トリメチルシラン修飾ナノダイヤモンド粉末の代わりに、フルオロアルキル基修飾ナノダイヤモンド粉末を使用した以外実施例1と同様にして、ハードコートフィルムを作製した。
ハードコートフィルムの作製
トリメチルシラン修飾ナノダイヤモンド粉末の代わりに、実施例1で作製したトリメチルシラン修飾ナノダイヤモンド粉末、及び実施例2で作製したフルオロアルキル基修飾ナノダイヤモンド粉末を4:6の質量比となるように混合した粉末を使用した以外実施例1と同様にして、ハードコートフィルムを作製した。
(1)ケイ素化及びフッ素化
実施例1で作製したトリメチルシラン修飾ナノダイヤモンド分散物を用いて、実施例2と同様にして、ナノダイヤモンド表面をフルオロアルキル基で修飾し、ナノダイヤモンド表面がトリメチルシラン及びフルオロアルキル基で修飾された複合粒子を得た。
トリメチルシラン修飾ナノダイヤモンド粉末の代わりに、トリメチルシラン及びフルオロアルキル基修飾ナノダイヤモンド粉末を使用した以外実施例1と同様にして、ハードコートフィルムを作製した。
ハードコートフィルムの作製
実施例1で作製したトリメチルシラン修飾ナノダイヤモンド粉末を、ハードコート層作製時にトリメチルシラン修飾ナノダイヤモンド粉末を0.3質量部と1/10に減らして使用した以外実施例1と同様にして、ハードコートフィルムを作製した。
ハードコートフィルムの作製
実施例2で得たフルオロアルキル基修飾ナノダイヤモンド粉末を、ハードコート層作製時にフルオロアルキル基修飾ナノダイヤモンド粉末を0.3質量部と1/10に減らして使用した以外実施例1と同様にして、ハードコートフィルムを作製した。
(1)接触角は、接触角計[協和界面科学株式会社製、全自動接触角計 DM−701]を用いて液滴法により測定した。液滴法はハードコート層表面に蒸留水の液滴(直径2mm)を滴下し、ハードコート層表面と蒸留水の接触角を測定した。
(2)指紋付着防止性は、被検体のハードコートフィルムをハードコート層表面が上になるように黒色板上に置き、ハードコート層表面に指をゆっくり押し当てて、付着した指紋の跡を視認できるか否かを5回試験して判定した。この判定は付着した指紋の跡を5回とも全く視認できなかった場合は◎、5回の視認テストのうち1回にうっすらと指紋の跡が視認された場合は○、5回の視認テストの内3回に指紋の跡がはっきりと視認された場合に△、明らかに指紋の跡が5回とも視認できた場合は×で表した。
(3)指紋拭き取り性は、指紋付着防止性試験で指紋の跡がうっすらと視認できた場合、はっきりと視認出来た場合に限り試験を行い、そのハードコート層表面を、眼鏡拭き用ポリエステル布で、5回軽く拭き、目視観察によって拭き取り性を以下の標準で評価した。◎:拭き跡が残らなかった。○:拭き跡は、よくよく観察しないと分からないが、わずかに残っている。×:拭き跡が残った。各実施例、各比較例について、表示した。
(4)総合評価結果として、指紋付着防止性と指紋拭き取り性の両者とも二重丸は、総合評価で二重丸◎、どちらか一方が◎か○で、他方が○の場合は総合評価が○、どちらか一方が○か△で、他方が△の場合は総合評価が△、どちらか一方が△か×で、他方が×の場合は総合評価が×で表した。
なお、接触角の上限は特に限定されないが、ナノダイヤモンドに付加するフッ素の量によって変わり特に限定されないが、約170°であった。
Claims (15)
- 基材上にハードコート層が形成されたハードコートフィルムであって、前記ハードコート層が、ケイ素を有するダイヤモンド微粒子及び/又はフッ素を有するダイヤモンド微粒子を含み、そのフイルム表面の水の接触角が90°以上であることを特徴とするハードコートフィルム。
- 基材上にハードコート層が形成されたハードコートフィルムであって、前記ハードコート層が、ケイ素及びフッ素を有するダイヤモンド微粒子を含み、そのフイルム表面の水の接触角が90°以上であることを特徴とするハードコートフィルム。
- 請求項1に記載のハードコートフィルムにおいて、前記ケイ素を有するダイヤモンド微粒子がケイ素化処理されたダイヤモンド微粒子であり、前記フッ素を有するダイヤモンド微粒がフッ素化処理されたダイヤモンド微粒子であることを特徴とするハードコートフィルム。
- 請求項2に記載のハードコートフィルムにおいて、前記ケイ素及びフッ素を有するダイヤモンド微粒子が、ケイ素化処理及びフッ素化処理されたダイヤモンド微粒子であることを特徴とするハードコートフィルム。
- 請求項3又は4に記載のハードコートフィルムにおいて、前記ケイ素化処理がシリル化処理であることを特徴とするハードコートフィルム。
- 請求項3〜5のいずれかに記載のハードコートフィルムにおいて、前記フッ素化処理がフルオロアルキル基含有オリゴマーによる処理であることを特徴とするハードコートフィルム。
- 請求項1〜6のいずれかに記載のハードコートフィルムにおいて、前記ダイヤモンド微粒子が爆射法で得られたナノダイヤモンドであることを特徴とするハードコートフィルム。
- 請求項1〜7のいずれかに記載のハードコートフィルムにおいて、前記ハードコート層が、硬化材料により形成されたことを特徴とするハードコートフィルム。
- 請求項8に記載のハードコートフィルムにおいて、前記硬化材料が、熱硬化型樹脂、紫外線硬化型材料、電子線硬化型材料、及び二液混合型硬化型樹脂からなる群から選ばれた少なくとも1種であることを特徴とするハードコートフィルム。
- 請求項1〜9のいずれかに記載のハードコートフィルムにおいて、前記ハードコート層が、さらに無機微粒子を含むことを特徴とするハードコートフィルム。
- 請求項10に記載のハードコートフィルムにおいて、前記無機微粒子が、雲母、合成雲母、シリカ、アルミナ、酸化カルシウム、チタニア、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、フッ化マグネシウム、スメクタイト、合成スメクタイト、バーミキュライト、ITO(酸化インジウム/酸化錫)、ATO(酸化アンチモン/酸化錫)、酸化錫、酸化インジウム、酸化カドミウム及び酸化アンチモンからなる群から選ばれた少なくとも1種であることを特徴とするハードコートフィルム。
- 請求項1〜11のいずれかに記載のハードコートフィルムにおいて、前記ハードコート層の厚さが、0.01〜50μmであることを特徴とするハードコートフィルム。
- 請求項1〜12のいずれかに記載のハードコートフィルムにおいて、前記基材が、ポリエステル、アクリル樹脂、又はポリオレフィンからなることを特徴とするハードコートフィルム。
- 請求項1〜13のいずれかに記載のハードコートフィルムにおいて、前記基材の、前記ハードコート層が形成された面とは反対の面に透明導電層が形成されていることを特徴とするハードコートフィルム。
- 請求項1〜14のいずれかに記載のハードコートフィルムにおいて、タッチパネル用として用いられることを特徴とするハードコートフィルム。
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