JP5174867B2 - ダイヤモンド微粒子を含むハードコートフィルム - Google Patents

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Description

本発明は、ハードコートフィルムに関し、さらに詳しくは、耐擦傷性や耐摩耗性に優れ、特にタッチパネル、各種ディスプレイ等の保護用に好適なハードコートフィルムに関するものである。
近年、市場が増大している携帯用の情報端末への入力装置として、ディスプレイ画面を直接指、ペン等で触れることによってデータを入力するタッチパネルが利用されている。タッチパネルには、耐擦傷性向上のため、通常、透明保護層及びハードコート層が形成されている。このハードコート層は、硬度や滑り性に優れるので、透明保護層表面の傷付き防止等に用いられる。このようなハードコート層は、透明保護層の表面に紫外線硬化型材料や熱硬化型樹脂からなる硬化材料液を塗布し、光照射又は加熱し、硬化させて形成する。
特開2004-42653号(特許文献1)には、ハードコート層に雲母、合成雲母、シリカ、アルミナ、酸化カルシウム、チタニア、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、フッ化マグネシウム、スメクタイト、合成スメクタイト、バーミキュライト、ITO(酸化インジウム/酸化錫)、ATO(酸化アンチモン/酸化錫)、酸化錫、酸化インジウム、酸化カドミウム及び酸化アンチモン等の無機微粒子を添加する技術が開示されている。特許文献1は、これらの無機微粒子を添加することによりハードコートフィルムのブロッキングを防止できると記載している。
しかしながら、特許文献1に記載の無機微粒子は、耐擦傷性や耐摩耗性に対してある程度の効果があるものの、繰り返し使用したときに効果が不十分である。そのため耐擦傷性や耐摩耗性をさらに改良することのできるフィラーの開発が望まれている。
特開2004-42653号公報
従って、本発明の目的は、耐擦傷性や耐摩耗性に優れ、タッチパネル、各種ディスプレイ等の保護用に好適なハードコートフィルムを提供することである。
上記目的に鑑み鋭意研究の結果、本発明者らは、ダイヤモンド微粒子をハードコートフィルムに含有させることにより、耐擦傷性、耐摩耗性が飛躍的に改良することを見出し、本発明に想到した。
すなわち、本発明のハードコートフィルムは、基材上に、ダイヤモンド微粒子を含むハードコート層が形成されたことを特徴とする。
前記ダイヤモンド微粒子は爆射法で得られたナノダイヤモンドであるのが好ましい。
前記ハードコート層は、硬化材料により形成されたのが好ましい。前記硬化材料は、熱硬化型樹脂、紫外線硬化型材料、電子線硬化型材料、及び二液混合型硬化型樹脂からなる群から選ばれた少なくとも1種であるのが好ましい。
前記ハードコート層は、さらに無機微粒子を含むのが好ましい。前記無機微粒子は、雲母、合成雲母、シリカ、アルミナ、酸化カルシウム、チタニア、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、フッ化マグネシウム、スメクタイト、合成スメクタイト、バーミキュライト、ITO(酸化インジウム/酸化錫)、ATO(酸化アンチモン/酸化錫)、酸化錫、酸化インジウム、酸化カドミウム及び酸化アンチモンからなる群から選ばれた少なくとも1種であるのが好ましい。
前記ハードコート層の厚さは、0.1〜50μmであるのが好ましい。
前記基材は、ポリエステル、アクリル樹脂、ポリオレフィン、又はフッ素樹脂からなるのが好ましい。
前記基材の、前記ハードコート層が形成された面とは反対の面に透明導電層が形成されているのが好ましい。
本発明のハードコートフィルムは、タッチパネルの保護用として用いられるのが好ましい。
本発明のハードコートフィルムは、耐擦傷性及び耐摩耗性に優れるので、タッチパネル、各種ディスプレイ等の保護用に好適である。
本発明のハードコートフィルムの一例を示す模式断面図である。 本発明のハードコートフィルムの他の一例を示す模式断面図である。
1.ハードコートフィルム
本発明のハードコートフィルム1は、図1に示すように、基材2上にダイヤモンド微粒子10を含むハードコート層3が形成されたものであり、前記ダイヤモンド微粒子10は、爆射法によって得られたナノダイヤモンドが好ましい。
[1]ハードコート層
(1)構成
ハードコート層は、JIS K5600-5-4で示す鉛筆硬度試験で「4H」以上の硬度を示す高硬度の層であり、硬化材料(ハードコート剤)により形成されるもの、又は基材とハードコート層とを共押出しにより積層して形成されるものが好ましい。
ハードコート層中のダイヤモンド微粒子の含有量は、特に限定されないが、ハードコート層を形成する材料に対して、合計で0.001〜10質量%であるのが好ましく、0.005〜5質量%であるのがより好ましく、0.01〜2質量%であるのが最も好ましい。ハードコート層の厚さは、0.1〜50μm程度であるのが好ましく、1〜30μmであるのがより好ましい。
本発明のハードコートフィルムの厚さは、50〜300μmが好ましく、80〜260μmがより好ましい。
(a) 硬化材料(ハードコート剤)による方法
ハードコート剤又はハードコート剤を含む溶液にダイヤモンド微粒子を分散し、ハードコート層を形成する。ハードコート剤としては、シリコーン樹脂系ハードコート剤や有機樹脂系ハードコート剤等が挙げられる。特に爆射法によって得られたナノダイヤモンドは、水、アルコール等の親水的な溶剤に対する分散性が良好なので、このような親水的な溶剤に溶解又は分散されたハードコート剤、もしくは親水的なハードコート剤を用いるのが好ましい。
シリコーン樹脂系ハードコート剤は、シロキサン結合を持った硬化樹脂層を形成するものであり、3官能シロキサン単位に相当する化合物(トリアルコキシシラン化合物等)を主成分とする化合物の部分加水分解縮合物、好ましくはさらに4官能シロキサン単位に相当する化合物(テトラアルコキシシラン化合物等)を含む部分加水分解縮合物、さらにこれらにコロイダルシリカ等の金属酸化物微粒子を充填した部分加水分解縮合物等が挙げられる。シリコーン樹脂系ハードコート剤はさらに2官能性のシロキサン単位及び1官能性のシロキサン単位を含んでよい。これらには縮合反応時に発生するアルコール(アルコキシシランの部分加水分解縮合物の場合)等が含まれるが、さらに必要に応じて任意の有機溶剤、水、又はこれらの混合物に溶解又は分散させてもよい。前記有機溶剤としては、低級脂肪酸アルコール類、多価アルコールとそのエーテル、エステル類等が挙げられる。なお、ハードコート層には平滑な表面状態を得るためシロキサン系、フッ化アルキル系界面活性剤等の各種界面活性剤を添加してもよい。
有機樹脂系ハードコート剤としては、熱硬化型樹脂、紫外線硬化型材料、電子線硬化型材料、二液混合型硬化型樹脂等が挙げられる。
熱硬化型樹脂とは、熱の作用を受けて分子間架橋による硬化反応を起こし、不溶不融性の三次元網目構造をとる樹脂であり、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ケイ素樹脂、ポリウレタン樹脂、ジアリルフタレート樹脂等が挙げられる。
紫外線硬化型材料及び電子線硬化型材料としては、光重合性の官能基を2個以上、特に3〜6個有するモノマー又はオリゴマーが挙げられる。前記モノマー又はオリゴマーとしては、ウレタンアクリレート、エポキシアクリレート、ポリエステルアクリレート、ポリエーテルアクリレート、アクリレートモノマー、シリコンアクリレート等が挙げられる。紫外線硬化型材料とは、前記モノマー又はオリゴマーのうち、紫外線照射により重合や架橋を起すものであり、電子線硬化型材料とは、前記モノマー又はオリゴマーのうち、電子線照射により重合や架橋を起すものである。前記モノマーやオリゴマーは一種類でもよいし、二種類以上を併用してもよい。
二液混合型硬化型樹脂としては、エポキシ系樹脂、ウレタン系樹脂等が挙げられる。
これらハードコート剤のうち長期間の耐久性に優れ、かつ表面硬度が比較的高いシリコーン樹脂系ハードコート剤、又は処理が比較的簡便でかつ良好なハードコート層が形成される紫外線硬化型のアクリル樹脂等が好ましい。
シリコーン樹脂系ハードコート剤はプライマー層とトップ層から構成されるいわゆる2コートタイプ、又は1層のみから形成されるいわゆる1コートタイプのいずれも選択できる。プライマー層(第1層)を形成する樹脂としては、各種ブロックイソシアネート成分及びポリオール成分からなるウレタン樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、アミノ樹脂、ポリエステルアクリレート、ウレタンアクリレート、エポキシアクリレート、ホスファゼンアクリレート、メラミンアクリレート、アミノアクリレート等の各種多官能アクリル樹脂等を挙げることができ、これらは単独でも2種以上を併用して使用することもできる。これらの中でも好ましくはアクリル樹脂、多官能アクリル樹脂が50重量%、より好ましくは50重量%以上含有するものを挙げることができ、特にアクリル樹脂及びウレタンアクリレートからなるものが好ましい。これらは未反応状態のものを塗布後所定の反応をさせて硬化樹脂とすること、並びに反応後の樹脂を直接塗布し硬化樹脂層を形成することのいずれも適用可能である。後者は通常樹脂を溶媒に溶解し溶液とした後、塗布されその後溶媒が除去される。また前者の場合も溶媒を使用することが一般的である。
コート方法としては、バーコート法、ディップコート法、フローコート法、スプレーコート法、スピンコート法、ローラーコート法等の方法を、塗装される基材となる成形品の形状に応じて適宜選択することができる。中でも複雑な成形品形状に対応しやすいディップコート法、フローコート法、及びスプレーコート法が好ましい。
ハードコート層には、さらに必要に応じて、アニオン、カチオン性やノニオン性界面活性剤、光安定剤や紫外線吸収剤、触媒、熱・光重合開始剤、重合禁止剤、シリコーン消泡剤、レベリング剤、増粘剤、沈殿防止剤、垂れ防止剤、難燃剤、有機・無機顔料・染料の各種添加剤、添加助剤等を含むことができる。
(b) 基材とハードコート層とを積層して形成する方法
基材とハードコート層とを積層して形成する場合、後述の基材を形成する材料と、ダイヤモンド微粒子を含有するハードコート層を形成する材料とを共押出しにより積層しても良いし、それぞれを押出成形して単層のシートを形成し、それらをドライラミネーション、熱ラミネーション等により貼り合わせ得てもよい。ただし、生産性の点で共押出しにより積層したものが好ましい。共押出成形の場合には、複雑な工程(乾燥工程や塗工工程)を経なくてもよいため、ゴミなどの外部異物の混入が少なく、優れた光学性能を発揮できる。ハードコート層を形成する材料としては、後述の基材を形成する材料を使用するのが好ましい。
(2)ダイヤモンド微粒子
ダイヤモンド微粒子は、爆射法で得られたナノダイヤモンドを用いるのが好ましい。爆射法で得られた未精製のナノダイヤモンドは、ナノダイヤモンドの表面をグラファイト系炭素が覆ったコア/シェル構造を有しており黒く着色している。未精製のナノダイヤモンドをこのまま用いても良いが、より着色の少ない高表面硬度フィルムを得るためには、未精製のナノダイヤモンドを酸化処理し、グラファイト相の一部又はほぼ全部を除去して用いるのが好ましい。
酸化処理して得られたナノダイヤモンドは、2〜10 nm程度のダイヤモンドの一次粒子からなるメジアン径30〜250 nm(動的光散乱法)の二次粒子である。グラファイト相を除去することにより、着色成分はほとんどなくなるが、微量に残ったグラファイト系炭素の表面に-COOH、-OH等の親水性官能基が存在するため、水、アルコール等の親水的な溶剤への分散に優れている。
(3)ケイ素化合物
ハードコート層には、指紋の付着防止及び付着した指紋の拭き取り性を改良するためにケイ素化合物を含有するのが好ましい。ケイ素化合物としては、ハードコート剤との相溶性が良く、成膜したときにヘイズ等の上昇が起こらないものであればどのようなものでもよい。
ケイ素化合物としては、例えば、特開2010-152331号公報に記載の反応性ケイ素化合物、特表2010-512423号公報に記載の反応性ケイ素化合物等を好ましく用いることができる。ケイ素化合物としては、前記ハードコート剤と反応することのできる化合物が好ましく、シリル化剤、アルコキシシラン、シランカップリング剤等が好ましく、特にシリル化剤が好ましい。
好ましいシリル化剤としては、トリエチルクロロシラン、トリメチルクロロシラン、ジエチルジクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、アセトキシトリメチルシラン、アセトキシシラン、ジアセトキシジメチルシラン、メチルトリアセトキシシラン、フェニルトリアセトキシシラン、ジフェニルジアセトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、2-トリメチルシロキシペント-2-エン-4-オン、n-(トリメチルシリル)アセトアミド、2-(トリメチルシリル)酢酸、n-(トリメチルシリル)イミダゾール、トリメチルシリルプロピオレート、ノナメチルトリシラザン、ヘキサメチルジシラザン、ヘキサメチルジシロキサン、トリメチルシラノール、トリエチルシラノール、トリフェニルシラノール、t-ブチルジメチルシラノール、ジフェニルシランジオール等が挙げられる。本発明に用いられるシリル化剤は、これらの化合物に限定されない。
シリル化剤の種類や濃度にもよるが、シリル化剤をハードコート剤と混合し、10〜40℃で十分攪拌しながらシリル化反応を進行させるのが好ましい。10℃未満では反応が進行しにくく、40℃超では反応が不均一になる。
ケイ素化合物の添加量は、ハードコート剤に対して0.0001〜2質量%であるのが好ましく、0.001〜1.5質量%であるのがより好ましく、0.005〜1質量%であるのが最も好ましい。
(4)フッ素化合物
ハードコート層には、指紋の付着防止及び付着した指紋の拭き取り性を改良するためにフッ素化合物を含有するのが好ましい。フッ素化合物としては、ハードコート剤との相溶性が良く、成膜したときにヘイズ等の上昇が起こらないものであればどのようなものでもよい。
フッ素化合物としては、例えば、特開2002-120311号公報に記載の含フッ素共重合体、特開2007-46031号公報に記載のシロキサンオリゴマーと、フルオロアルキル構造及びポリシロキサン構造を有するフッ素化合物との組合せ、特開2010-152331号公報に記載の反応性フッ素化合物、特開2007-293313号公報に記載の熱硬化型又は電離放射線硬化型の含フッ素化合物、特に含フッ素オルガノシラン化合物、特表2010-512423号公報に記載の反応性フッ素化合物等を好ましく用いることができる。フッ素化合物としては、前記ハードコート剤と反応することのできる化合物が好ましく、後述のフルオロアルキル基含有オリゴマー等が好ましい。
フルオロアルキル基含有オリゴマー
高分子主鎖の両末端にフルオロアルキル基が直接炭素−炭素結合により導入された高分子界面活性剤(含フッ素オリゴマー)は、水溶液中又は有機溶媒中において自己組織化したナノレベルの分子集合体を形成することが知られている。このフルオロアルキル基が末端に導入された含フッ素オリゴマーをハードコート剤と混合することにより、フルオロアルキル基で修飾したハードコート剤を形成させることができる。
フルオロアルキル基含有オリゴマーとしては、一般式(1)で表される化合物が好ましい。
Figure 0005174867
ここで、RFはフルオロアルキル基であり、具体的には、-CF(CF3)OC3F7、-CF(C3F)OCF2CF(CF3)OC3F7等の基が好ましい。Rは置換基であり、-N(CH3)2、-OH、-NHC(CH3)2CH2C(=O)CH3、-Si(OCH3)3、-COOH等の基が好ましい。nは5〜2000であるのが好ましい。
(5) 無機微粒子
前記ハードコート層は、ダイヤモンド微粒子の他に、硬度をアップさせ傷付き耐性を高める目的で、無機微粒子を含んでもよい。前記無機微粒子としては、雲母、合成雲母、シリカ、アルミナ、酸化カルシウム、チタニア、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、フッ化マグネシウム、スメクタイト、合成スメクタイト、バーミキュライト、ITO(酸化インジウム/酸化錫)、ATO(酸化アンチモン/酸化錫)、酸化錫、酸化インジウム、酸化カドミウム、酸化アンチモン等が挙げられる。
中でも、雲母、合成雲母、シリカ、チタニア、酸化ジルコニウム、フッ化マグネシウム、スメクタイト、合成スメクタイト、ITO(酸化インジウム/酸化錫)、ATO(酸化アンチモン/酸化錫)、酸化錫、バーミキュライトが好ましく、雲母、合成雲母、スメクタイト、合成スメクタイト、バーミキュライトがより好ましい。前記無機微粒子は、一種類でもよいし、二種類以上を併用してもよい。
無機微粒子の平均粒子径は、10〜300 nmが好ましく、10〜200 nmがより好ましく、30〜150 nmが最も好ましい。平均粒子径が、10 nm以上の場合は、より小さい表面粗さを有するハードコート層を形成することができ、一方、前記平均粒子径が300 nm以下の場合は、より優れた光学特性を有するハードコート層を形成できる。
鱗片状及び/又は不規則薄片状の無機微粒子を使用することにより、より優れたブロッキング防止効果を有するハードコート層を形成できる。このような形状を有する無機微粒子としては、シリカ、チタニア、酸化ジルコニウム、ITO等を鱗片状に成形したもの、雲母、合成雲母、スメクタイト、合成スメクタイト、バーミキュライト等が挙げられる。
ハードコート層中の無機微粒子の含有量は、0.01〜6重量%であるのか好ましく、0.01〜5.5重量%であるのがより好ましい。前記含有量が、0.01重量%以上であると、より優れたブロッキング防止効果を有するバードコート層を形成することができ、6重量%以下であると、より優れた光学特性を有するハードコート層を形成できる。
[2]基材
基材については特に制限はなく、光学用ハードコートフィルムの基材として公知のプラスチックフィルムの中から適宜選択して用いることができる。このようなプラスチックフィルムとしては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリカーボネート等のポリエステル系フィルム、ポリメチルメタクリレート等のアクリル系フィルム、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、脂環式構造含有重合体等のポリオレフィン系フィルム、セロファン、ジアセチルセルロースフィルム、トリアセチルセルロースフィルム、アセチルセルロースブチレートフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリ塩化ビニリデンフィルム、ポリビニルアルコールフィルム、エチレン-酢酸ビニル共重合体フィルム、ポリスチレンフィルム、ポリスルホンフィルム、ポリエーテルエーテルケトンフィルム、ポリエーテルスルホンフィルム、ポリエーテルイミドフィルム、ポリイミドフィルム、フッ素樹脂フィルム、ポリアミドフィルム等を用いることができる。
これらの透明基材フィルムの中で、タッチパネル用や各種ディスプレイの表面保護用フィルム等の光学用フィルムの基材としては、性能及び経済性の面からポリエステル系フィルム、アクリル系フィルム及びポリオレフィン系フィルムが好適であり、特に耐熱性が要求される用途には、脂環式構造含有ポリオレフィン系フィルム、フッ素樹脂等が好ましく用いられる。
これらの基材フィルムは、透明、半透明のいずれであってもよく、着色されていてもよいし、無着色のものでもよく、用途に応じて適宜選択すればよい。液晶表示体の保護用として用いる場合には、無色透明のフィルムが好適である。
これらの透明基材フィルムの厚さは特に制限はなく、状況に応じて適宜選定されるが、通常15〜300μm、好ましくは30〜250μmの範囲である。また、この透明基材フィルムは、その表面に設けられる層との密着性を向上させる目的で、所望により片面又は両面に、酸化法や凹凸化法などにより表面処理を施すことができる。上記酸化法としては、コロナ放電処理、クロム酸処理(湿式)、火炎処理、熱風処理、オゾン・紫外線照射処理等が挙げられ、また、凹凸化法としては、サンドブラスト法、溶剤処理法等が挙げられる。これらの表面処理法は透明基材フィルムの種類に応じて適宜選ばれるが、一般にはコロナ放電処理法が効果及び操作性等の面から、好ましく用いられる。
[3]ハードコートフィルムの特性
本発明のハードコートフィルムは、基材の上にダイヤモンド微粒子を含有するハードコート層を設けた、高い表面硬度を有するフィルムである。ハードコート層にダイヤモンド微粒子を含有させることで、優れた耐擦傷性と高い硬度をフィルムに持たせることができ、フィルムの鉛筆硬度が上がり、高表面硬度を実現することができるようになる。鉛筆硬度は、JIS K5600-5-4が規定する鉛筆硬度評価方法により求められる値であり、フィルムの表面硬度を量る指標となる。鉛筆硬度が4H以上であれば、フィルムとしては十分な表面硬度を有し、好ましくは5H以上である。
[4]その他の層
(1)透明導電層
ハードコートフィルムには、図2に示すように、ハードコート層3が形成された面とは反対の面に透明導電層4を設けることができる。透明導電層5としては、酸化錫(SnO2等)、酸化インジウム、酸化アンチモン、酸化亜鉛(ZnO)、酸化カドミウム、インジウム錫酸化物(ITO)等の金属酸化物、金、銀、銅、アルミニウム、錫、ニッケル等の金属膜が挙げられる。その中でも、金属酸化膜は、成長が速く、中でもZnO、SnO2等の単一金属からなる酸化物が化学量論比による制御が容易で高性能な薄膜が得られる点で好ましい。透明導電層の形成方法は特に限定されず、スパッタリング法、真空蒸着法、イオンプレーティング法、低圧プラズマ、塗工法、常圧プラズマCVD法等が挙げられる。透明導電層の厚さは、表面抵抗が発現し、透明性が保たれる厚みであることが好ましく、赤外線及び電磁波の低減性能が発現し、可視光透過率が60%以上であるためには、膜厚は30〜200 nmであるのが好ましい。
(2)反射防止層
ハードコートフィルムには、本発明の目的を阻害しない範囲で、ハードコート層3の上に反射防止層を設けることができる。反射防止層4としては、TiO2、ZrO2、SiO2、MgF等が用いられる。高性能な反射防止機能を付与するには、TiO2層とSiO2層との積層体を用いるのが好ましい。このような積層体としては、ハードコート層上に屈折率の高いTiO2層(屈折率:約1.8〜2.1)を形成し、このTiO2層上に屈折率の低いSiO2層(屈折率:約1.4〜1.5)を形成してなる2層積層体、さらにこの2層積層体上に、TiO2層及びSiO2層をこの順に形成してなる4層積層体が好ましい。このような2層積層体又は4層積層体の反射防止層を設けることにより、特定波長の光の反射率を低くすることができる。
反射防止層の膜厚をd、屈折率をn、入射光の波長をλとしたとき、反射防止層の膜厚とその屈折率との間でnd=λ/4なる関係式が成立するように反射防止層を設ける。反射防止層の屈折率が基材の屈折率より小さい場合は、上記関係式が成立する条件では反射率が最小となる。従って、得られる反射防止層の屈折率nが分かっていれば、膜厚dは反射防止層の製造における成膜速度とその処理時間で決定でき、特定の入射光の波長λ(単色光)に対して反射率を最小にすることができる。
2層以上の薄膜で反射防止層を形成する場合は、最上層(表面層)を低屈折率材料のλ/4膜近辺となるようにし、基材上から高屈折率材料と低屈折率が交互に配置するのが好ましい。ここで、表面から2層目以降の膜厚は、波長450〜650nmでの反射率が小さくなるように設定され、屈折率との兼ね合いになるが、一般にλ/2膜以下の厚さとなる。これにより、単層の反射防止層よりも低反射の波長領域を広げることができる。
上記反射防止層の積層方法は特に限定されず、スパッタリング、蒸着、低圧プラズマCVD、塗工等が挙げられる。好ましくは、常圧プラズマCVD法である。
2.ダイヤモンド微粒子の製造方法
ダイヤモンド微粒子としては、爆射法により得られた未精製のナノダイヤモンド(BDと言うこともある。)、又はそれを酸化処理しグラファイト系炭素の一部又は全部を除去したナノダイヤモンドが好ましい。前記酸化処理して得られるナノダイヤモンドとしては、後述のグラファイト相の一部が除去されたナノダイヤモンド(グラファイト-ダイヤモンド粒子と呼ぶ)及びグラファイト相がほとんど除去された精製ナノダイヤモンド粒子が好ましい。
酸化処理したナノダイヤモンドの比重は、グラファイト系炭素(グラファイトの比重:2.25 g/cm3)の残存量が少なくなればなるほどダイヤモンドの比重(3.50 g/cm3)に近づく。従って、精製度が高くグラファイト系炭素の残存量が少ないほど比重が高くなる。本発明で用いるナノダイヤモンドの比重は2.55 g/cm3(ダイヤモンド24体積%)以上3.48 g/cm3(ダイヤモンド98体積%)以下であるのが好ましく、3.0 g/cm3(ダイヤモンド84体積%)以上3.46 g/cm3(ダイヤモンド97体積%)以下であるのがより好ましく、3.38 g/cm3(ダイヤモンド90体積%)以上3.45 g/cm3(ダイヤモンド96体積%)以下であるのが最も好ましい。なおナノダイヤモンド中のダイヤモンドの体積%は、前記ダイヤモンドの比重3.50 g/cm3及びグラファイトの比重2.25 g/cm3を用いて、ナノダイヤモンドの比重から算出した。
未精製の粗ダイヤモンドの酸化処理方法としては、(a) 硝酸等の共存下で高温高圧処理する方法(酸化処理A)、(b)水及び/又はアルコールからなる超臨界流体中で処理する方法(酸化処理B)、(c)水及び/又はアルコールからなる溶媒に酸素を共存させて、前記溶媒の標準沸点以上の温度及び0.1 MPa(ゲージ圧)以上の圧力で処理する方法(酸化処理C)、又は(d)380〜450℃で酸素を含む気体により処理する方法(酸化処理D)が挙げられる。これらの酸化処理は、単独で行ってもよいし、組合せて行っても良い。酸化処理を組合せる場合は、爆射法で得られた未精製の粗ダイヤモンドにまず酸化処理Aを施し、さらに酸化処理B〜Cのいずれかを施すのが好ましい。
爆射法で得られた未精製の粗ダイヤモンドに酸化処理Aを施すことによりグラファイト相の一部が除去されたナノダイヤモンド(グラファイト-ダイヤモンド粒子)が得られ、このグラファイト-ダイヤモンド粒子に酸化処理B〜Cのいずれかの処理を施すことにより前記グラファイト相をさらに除去することができる。
(1) 爆射法によるBDの合成
爆射法によるBDの合成は、例えば、水と多量の氷を満たした純チタン製の耐圧容器に、電気雷管を装着した爆薬[例えば、TNT(トリニトロトルエン)/HMX(シクロテトラメチレンテトラニトラミン)=50/50]を胴内に収納させ、片面プラグ付き鋼鉄製パイプを水平に沈め、この鋼鉄製パイプに鋼鉄製のヘルメット状カバーを被覆して、前記爆薬を爆裂させることにより行うことができる。反応生成物としてのBDは容器中の水及び氷中から回収する。
前記爆射法は、Science, Vol. 133, No.3467(1961), pp1821-1822、特開平1-234311号、特開平2-141414号、Bull. Soc. Chem. Fr. Vol. 134(1997), pp. 875-890、Diamond and Related materials Vol. 9(2000), pp861-865、Chemical Physics Letters, 222(1994), pp. 343-346、Carbon, Vol. 33, No. 12(1995), pp. 1663-1671、Physics of the Solid State, Vol. 42, No. 8 (2000), pp. 1575-1578、K. Xu. Z. Jin, F. Wei and T. Jiang, Energetic Materials, 1, 19(1993)、特開昭63-303806号、特開昭56-26711報、英国特許第1154633号、特開平3-271109号、特表平6-505694号(WO93/13016号)、炭素, 第22巻, No. 2, 189〜191頁(1984)、Van Thiei. M. & Rec., F. H., J. Appl. Phys. 62, pp. 1761〜1767 (1987)、特表平7-505831号 (WO94/18123号)、米国特許第5861349号及び特開2006-239511号等に記載の方法を用いることができる。
(2)酸化処理工程
(i)酸化処理A
爆射法で得られた未精製の粗ダイヤモンド(BD)は、まず酸化処理Aを施すのが好ましい。酸化処理Aを施すことによりグラファイト相の一部が除去されたグラファイト-ダイヤモンド粒子が得られる。酸化処理Aは、(a) 爆射法で得られたBDを、酸中で酸化性分解処理する工程、(b)酸化性分解処理したBDを、さらに厳しい条件で処理する酸化性エッチング処理工程、(c)酸化性エッチング処理後の液を中和する工程、(d)脱溶媒工程、及び(e)洗浄工程からなり、必要に応じてグラファイト-ダイヤモンド粒子分散液の(f)pH及び濃度を調製する工程、又は(g) 乾燥して微粉末とする工程からなる。
(a) 酸化性分解処理工程
回収したBDを55〜56質量%の濃硝酸、又は濃硝酸と濃硫酸との混合物とともに、1.4 MPa程度の圧力及び150〜180℃程度の温度で10〜30分間処理し、電気雷管等の混入金属、炭素等の夾雑物等の不純物を分解する。
(b) 酸化性エッチング処理工程
酸化性分解処理したBDは、濃硝酸中で酸化性分解処理よりもさらに厳しい条件(例えば、1.4 MPa、200〜240℃)で行う。このような条件で10〜30分処理すると、BD表面を被覆する硬質炭素、すなわちグラファイトを大部分除去することができる。
(c) 中和工程
酸化性エッチング処理後のグラファイト-ダイヤモンド粒子を含む硝酸水溶液(pHが2〜6.95)に、それ自身又はその分解反応生成物が揮発性の塩基性物質を加えて中和反応させる。塩基性物質の添加によりpH7.05〜12に上昇する。前記塩基性物質を使用することにより、凝集したグラファイト-ダイヤモンド粒子内に浸透した塩基が、粒子内の硝酸と反応し、ガス化することにより凝集体を個々のグラファイト-ダイヤモンド粒子に解体するといった効果が得られる。この工程により、グラファイト-ダイヤモンド粒子の大きな比表面積及び孔部吸着空間が形成されるものと思われる。
塩基性材料としては、アンモニア、ヒドラジン、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、エタノールアミン、プロピルアミン、イソプロピルアミン、ジプロピルアミン、アリルアミン、アニリン、N,N-ジメチルアニリン、ジイソプロピルアミン、ジエチレントリアミンやテトラエチレンペンタミンのようなポリアルキレンポリアミン、2-エチルヘキシルアミン、シクロヘキシルアミン、ピペリジン、ホルムアミド、N,N-メチルホルムアミド、尿素等を挙げることができる。
(d) 脱溶媒工程
得られたグラファイト-ダイヤモンド粒子を含む液は、遠心分離、デカンテーション等により脱溶媒するのが好ましい。
(e) 水洗工程
脱溶媒したグラファイト-ダイヤモンド粒子はデカンテーション法により水洗するのが好ましい。洗浄操作は3回以上行うのが好ましい。水洗したグラファイト-ダイヤモンド粒子は、再度遠心分離し、脱水するのが好ましい。
(f) pH及び濃度を調製する工程
グラファイト-ダイヤモンド粒子分散液は、pH 4〜10、好ましくはpH5〜8、より好ましくはpH6〜7.5に調節する。グラファイト-ダイヤモンド粒子濃度は0.05〜16%、好ましくは0.1〜12%、より好ましくは1〜5%に調製するのが好ましい。
グラファイト相を有するナノダイヤモンド(グラファイト-ダイヤモンド粒子)はさらに酸化処理B〜Dを施すことによりグラファイト層をさらに除去するのが好ましい。もちろんBDに直接酸化処理B〜Dを施しても良い。
(ii)酸化処理B
酸化処理Bは、(a) グラファイト相を有するナノダイヤモンドと、酸化性化合物と、水及び/又はアルコールからなる溶媒とからなる混合物A(単に「混合物A」とよぶことがある)を調製し、(b) この混合物Aを、溶媒の臨界点以上の温度及び圧力にした状態でグラファイト相を有するナノダイヤモンドを処理し、(c) 得られた精製ダイヤモンド粒子を含む液を遠心分離して溶媒を除去する工程を有する。さらに、脱溶媒した精製ダイヤモンド粒子を(d)水洗及び遠心分離により脱水する工程を設けるのが好ましい。工程(c)と(d)の間に、必要に応じて、脱溶媒した精製ダイヤモンド粒子を(e)塩基性溶液で中和する工程、及び(f)弱酸で処理する工程を設けてもよい。工程(c)又は(d)で得られた精製ダイヤモンド粒子は乾燥して微粉末にする。
(a) 混合物Aの調製工程
混合物Aは、グラファイト相を有するナノダイヤモンドの粉末に、酸化性化合物、及び水及び/又はアルコールからなる溶媒を混合することにより調製する。又は、前記溶媒にあらかじめグラファイト相を有するナノダイヤモンドを分散した液に、前記酸化性化合物又はその溶液を添加して調製しても良い。混合物Aには、酸化性化合物による酸化反応を促進させるため、塩基性化合物又は酸化性化合物を添加しても良い。
酸化性化合物としては、硝酸、過酸化水素、過炭酸ナトリウム、過炭酸カリウム、過ホウ酸ナトリウム、過ホウ酸カリウム、次亜塩素酸ナトリウム、次亜塩素酸カリウム、亜塩素酸ナトリウム、亜塩素酸カリウム、塩素酸リチウム、塩素酸ナトリウム、塩素酸カリウム、過塩素酸リチウム、過塩素酸ナトリウム、過塩素酸カリウム、過マンガン酸ナトリウム、過マンガン酸カリウム、マンガン酸ナトリウム、マンガン酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、重クロム酸カリウム、クロム酸カリウム等が挙げられ、硝酸及び過酸化水素が好ましい。特に酸化性化合物を単独で使用する場合は、過酸化水素を使用するのが最も好ましい。
酸性化合物としては、硝酸、硫酸、塩酸、リン酸、ホウ酸、フッ酸、臭化水素酸等の無機酸、及び蟻酸、酢酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸等の有機酸が挙げられ、無機酸が好ましく、硝酸がより好ましい。
塩基性化合物としては、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化バリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、四ホウ酸リチウム、四ホウ酸ナトリウム、四ホウ酸カリウム、アンモニア等が挙げられる。
酸化性化合物と酸性化合物とを組合せて使用する場合は、過酸化水素と硝酸との組合せが好ましく、酸化性化合物と塩基性化合物とを組合せて使用する場合は、過酸化水素とアンモニアとの組合せが好ましい。
溶媒としては、水、アルコール又はこれらの混合液を用いる。アルコールとしては炭素数1〜3の低級アルコールが好ましい。低級アルコールの具体例として、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール及びこれらの混合液が挙げられる。
(b) 超臨界処理工程
混合物Aを溶媒の臨界点以上の温度及び圧力で処理する。処理温度は溶媒の臨界温度以上、600℃以下であるのが好ましく、550℃以下であるのがより好ましい。処理圧力は溶媒の臨界圧力以上、100 MPa以下であるのが好ましく、70 MPa以下であるのがより好ましく、50 MPa以下であるのが最も好ましい。処理時間は温度及び圧力により適宜設定すればよいが、1〜24時間が好ましい。
(c) 脱溶媒工程
酸化処理Aと同様にして行う。
(d) 水洗工程
酸化処理Aと同様にして行う。
(e) 中和工程
工程(c)で脱溶媒した精製ダイヤモンド粒子を、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の塩基で中和してもよい。塩基性溶液の濃度は0.01〜0.5 mol/Lが好ましい。脱溶媒した精製ダイヤモンド粒子に塩基性溶液を添加し、超音波処理するのが好ましい。
(f) 弱酸処理工程
工程(e)で中和した精製ダイヤモンド粒子を弱酸溶液で洗浄するのが好ましい。弱酸溶液の例として、0.01〜0.5 mol/Lの塩酸が挙げられる。中和した精製ダイヤモンド粒子に弱酸溶液を添加し、超音波処理するのが好ましい。
(iii)酸化処理C
酸化処理Cは、(a) グラファイト相を有するナノダイヤモンドと、水及び/又はアルコールからなる溶媒とからなる混合物Bを調製し、(b) この混合物Bに酸素を共存させた状態で、処理溶媒の標準沸点以上の温度及び0.1 MPa(ゲージ圧)以上の圧力でグラファイト相を有するナノダイヤモンドを処理し、(c) 得られた精製ダイヤモンド粒子を含む液を遠心分離して溶媒を除去する工程を有する。さらに、脱処理溶媒した精製ダイヤモンド粒子を(d)水洗及び遠心分離により脱水する工程を設けるのが好ましい。工程(c)又は(d)で得られた精製ダイヤモンド粒子は乾燥して微粉末にする。
(a)混合物Bの調製工程
混合物Bは、グラファイト相を有するナノダイヤモンドと、水及び/又はアルコールからなる溶媒とを混合することにより調製する。混合物B中のグラファイト相を有するナノダイヤモンドの濃度は、0.05〜16質量%が好ましく、0.1〜12質量%がより好ましく、1〜10質量%が最も好ましい。この濃度が16質量%を超えると、精製が不十分となる恐れがある。一方0.05質量%未満であると、回収時のロスの割合が多くなり生産性が悪化する。
溶媒としては、前記混合物Aの調製で用いることのできるものと同じものが使用できる。
(b) 精製処理工程
混合物Bをオートクレーブに入れ、酸素を導入する。酸素の導入量は、グラファイト相を有するナノダイヤモンド中のグラファイト1 gに対して、0.1モル以上が好ましく、0.15モル以上がより好ましく、0.2モル以上が最も好ましい。この導入量の上限は特に制限されない。
処理溶媒の標準沸点Tb以上及び0.1 MPa(ゲージ圧)以上となるように、オートクレーブ内の温度及び圧力を調整する。処理溶媒のTb以上及び0.1 MPa(ゲージ圧)以上にする限り、処理溶媒を亜臨界状態[Tb以上の温度及び0.1 MPa(ゲージ圧)以上の圧力で、かつ臨界温度Tc未満及び/又は臨界圧力Pc未満の状態]にしてもよいし、超臨界状態にしてもよい。亜臨界又は超臨界状態の酸素及び処理溶媒により、グラファイト相を効率的に選択酸化することができる。
処理温度の下限は(処理溶媒の臨界温度Tc-150℃)が好ましく、(Tc−100℃)がより好ましい。処理温度の上限は800℃が好ましく、600℃がより好ましい。処理圧力の下限は、処理溶媒の臨界圧力Pcの30%が好ましく、Pcの50%がより好ましく、Pcの70%が最も好ましい。処理圧力の上限は70 MPaが好ましく、50 MPaがより好ましい。処理時間は温度及び圧力により適宜設定すればよいが、0.1〜24時間が好ましい。
(c) 脱溶媒工程
酸化処理Aと同様にして行う。
(d) 水洗工程
酸化処理Aと同様にして行う。
(iv)酸化処理D
酸化処理Dは、前記グラファイト相を有するナノダイヤモンドを反応管に入れ、常圧下で酸素を含む気体を流しながら380〜450℃に加熱する工程を有する。加熱温度は400〜430℃であるのが好ましい。酸素を含む気体は、酸素ガス、空気等を使用できるが、簡便さから空気が好ましい。
(3)メディア分散処理
酸化処理を効率よく行い、着色の少ない精製ダイヤモンド粒子を得るために、酸化処理B〜Dの前にBD又はグラファイト-ダイヤモンド粒子をビーズミル等の公知のメディア分散法により粉砕するのが好ましい。ビーズミルによる分散は、ジルコニアビーズを使用するのが好ましい。BD又はグラファイト-ダイヤモンド粒子をメディア分散することにより、メジアン径を100 nm以下にするのが好ましく、50 nm以下にするのがより好ましく、30 nm以下にするのが最も好ましい。
本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はそれらに限定されるものではない。
実施例1
(1)ダイヤモンド微粒子の作製
TNT(トリニトロトルエン)とRDX(シクロトリメチレントリニトロアミン)を60/40の比で含む0.65 kgの爆発物を3 m3の爆発チャンバー内で爆発させて生成するBDを保存するための雰囲気を形成した後、同様の条件で2回目の爆発を起こしBDを合成した。爆発生成物が膨張し熱平衡に達した後、15 mmの断面を有する超音速ラバルノズルを通して35秒間ガス混合物をチャンバーより流出させた。チャンバー壁との熱交換及びガスにより行われた仕事(断熱膨張及び気化)のため、生成物の冷却速度は280℃/分であった。サイクロンで捕獲した生成物(黒色の粉末、BD)の比重は2.55 g/cm3、メジアン径(動的光散乱法)は220 nmであった。このBDは比重から計算して、76体積%のグラファイト系炭素と24体積%のダイヤモンドからなっていると推定された。
このBDを60質量%硝酸水溶液と混合し、160℃、14気圧、20分の条件で酸化性分解処理を行った後、130℃、13気圧、1時間で酸化性エッチング処理を行った。酸化性エッチング処理により、BDからグラファイトが一部除去された粒子が得られた。この粒子を、アンモニアを用いて、210℃、20気圧、20分還流し中和処理した後、自然沈降させデカンテーションにより35質量%硝酸での洗浄を行い、さらにデカンテーションにより3回水洗し、遠心分離により脱水し、120℃で加熱乾燥し、グラファイト相を有するナノダイヤモンドの粉末を得た。このナノダイヤモンドの粉末の比重は3.38 g/cm3であり、メジアン径は5.5μm(動的光散乱法)であった。比重から計算して、90体積%のダイヤモンドと10体積%のグラファイト系炭素からなっていると推定された。
得られたナノダイヤモンドの粉末をビーズミルにより分散処理した。ビーズミルによる分散は、アシザワファインテック株式会社製スターミルLMZを用いて行った。243 gの前記ナノダイヤモンドの粒子を水/トリエチレングリコール(50:50の容量比)に分散して5質量%の水分散液を調製し、ディゾルバーで予備分散した。0.1 mm径のジルコニアビーズを0.15 Lのベッセルに充填し、10 m/sの周速で回転子を回転させながら、前記ナノダイヤモンドの粉末の分散液を0.12 L/minで供給し、連続的に分散処理を行った。約2.0 h分散処理した後のナノダイヤモンドの粒子はメジアン径40 nmであった。
ビーズミルによって分散処理したナノダイヤモンドの粒子の2.0質量%水分散液30 mLを、オートクレーブ(容量50 mL、SUS316製)に入れ、酸素導入管、温度計及び調圧弁を有する蓋で密封し、炉内に設置した。オートクレーブ内の空気を酸素で置換した後、オートクレーブ内が1.0 MPa(ゲージ圧)の圧力となるように、室温で酸素を導入した。オートクレーブを平均昇温速度6.5℃/分で昇温し、400±5℃の温度及び5±1 MPaの圧力で2時間保持した。オートクレーブを室温まで冷却した後、大気圧まで減圧し、精製されたナノダイヤモンドを含む液を回収した。この液は、上澄みと薄い灰色を呈する精製ナノダイヤモンドの沈殿とに分離していた。
前記精製ナノダイヤモンドを含む液を、自然沈降させデカンテーションにより3回水洗し、さらに遠心分離により脱水し、120℃で加熱乾燥し、精製ナノダイヤモンドの粉末を得た。得られた精製ナノダイヤモンド粉末は、メジアン径9.2μm、比重3.46 g/cm3であった。この比重から算出した組成は、ダイヤモンド97体積%及びグラファイト3体積%であった。
(2)ハードコートフィルムの作製
厚さ188μmのポリエチレンテレフタレートフィルム[東洋紡績(株)製、商品名「A4300」]の易接着コート面に、紫外線硬化型アクリレートハードコート剤[GE東芝シリコーン(株)製、商品名「UVHC1105」固形分濃度100重量%]100部、紫外線硬化型シリコーン樹脂[チッソ(株)製、商品名「サイラプレーンFM-7711」(分子量1000)]0.4部、得られた精製ナノダイヤモンド粉末5質量部、及びイソプロピルアルコール100部を硬化後の膜厚が5μmになるようにマイヤーバーで塗工し、80℃で2分間乾燥した後、紫外線を照射量1000mJ/cm2で照射してハードコート層を形成した。
実施例2
基材フィルムとして、ポリエチレンテレフタレートフィルム(東洋紡社製、O-PET、75μm)の表面にスパッタリングで100 nmのITO層を形成させたシートを上部電極として得た。この上部電極の表面固有抵抗は300Ω/cm2であった。
前記ITO層を形成させたシートの上部電極を有しない側に、紫外線硬化型アクリレートハードコート剤[GE東芝シリコーン(株)製、商品名「UVHC1105」固形分濃度100重量%]100部、紫外線硬化型シリコーン樹脂[チッソ(株)製、商品名「サイラプレーンFM-7711」(分子量1000)]0.2部、実施例1で得られた精製ナノダイヤモンド粉末5質量部、及びイソプロピルアルコール100部を硬化後の膜厚が5μmになるようにマイヤーバーで塗工し、80℃で2分間乾燥した後、紫外線を照射量1000mJ/cm2で照射してハードコート層を形成した。
実施例3
厚さ188μmのポリエチレンテレフタレートフィルム[東洋紡績(株)製、商品名「A4300」]の易接着コート面に、紫外線硬化型アクリレートハードコート剤[大日本インキ化学工業(株)製、商品名「ユニディックC7-164」固形分濃度50重量%]70部、フィラー含有紫外線硬化型アクリレートハードコート剤[大日本インキ化学工業(株)製、商品名「ユニディックV-9101」固形分濃度45重量%]30部、紫外線硬化型シリコーン樹脂[チッソ(株)製、商品名「サイラプレーンFM-7711」(分子量1000)]0.4部、及び実施例1で得られた精製ナノダイヤモンド粉末4質量部を硬化後の膜厚が5μmになるようにマイヤーバーで塗工し、80℃で2分間乾燥した後、紫外線を照射量1000mJ/cm2で照射してハードコート層を形成した。

Claims (10)

  1. 基材上にハードコート層が形成されたハードコートフィルムであって、前記ハードコート層が、ダイヤモンド微粒子を含み、前記ダイヤモンド微粒子が爆射法で得られた2.55〜3.48 g/cm 3 の比重を有するナノダイヤモンドであり、前記ダイヤモンド微粒子がケイ素原子もフッ素原子も含有しないことを特徴とするハードコートフィルム。
  2. 請求項1に記載のハードコートフィルムにおいて、前記ダイヤモンド微粒子の比重が3.38〜3.48 g/cm 3 であることを特徴とするハードコートフィルム。
  3. 請求項1又は2に記載のハードコートフィルムにおいて、前記ハードコート層が、硬化材料により形成されたことを特徴とするハードコートフィルム。
  4. 請求項3に記載のハードコートフィルムにおいて、前記硬化材料が、熱硬化型樹脂、紫外線硬化型材料、電子線硬化型材料、及び二液混合型硬化型樹脂からなる群から選ばれた少なくとも1種であることを特徴とするハードコートフィルム。
  5. 請求項1〜4のいずれかに記載のハードコートフィルムにおいて、前記ハードコート層が、さらに無機微粒子を含むことを特徴とするハードコートフィルム。
  6. 請求項5に記載のハードコートフィルムにおいて、前記無機微粒子が、雲母、合成雲母、シリカ、アルミナ、酸化カルシウム、チタニア、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、フッ化マグネシウム、スメクタイト、合成スメクタイト、バーミキュライト、ITO(酸化インジウム/酸化錫)、ATO(酸化アンチモン/酸化錫)、酸化錫、酸化インジウム、酸化カドミウム及び酸化アンチモンからなる群から選ばれた少なくとも1種であることを特徴とするハードコートフィルム。
  7. 請求項1〜6のいずれかに記載のハードコートフィルムにおいて、前記ハードコート層の厚さが、0.1〜50μmであることを特徴とするハードコートフィルム。
  8. 請求項1〜7のいずれかに記載のハードコートフィルムにおいて、前記基材が、ポリエステル、アクリル樹脂、ポリオレフィン、又はフッ素樹脂からなることを特徴とするハードコートフィルム。
  9. 請求項1〜8のいずれかに記載のハードコートフィルムにおいて、前記基材の、前記ハードコート層が形成された面とは反対の面に透明導電層が形成されていることを特徴とするハードコートフィルム。
  10. 請求項1〜9のいずれかに記載のハードコートフィルムにおいて、タッチパネル用として用いられることを特徴とするハードコートフィルム。
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