以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。本明細書において、「(メタ)アクリレート」とは、「アクリレート」又はそれに対応する「メタクリレート」を意味し、「(メタ)アクリル酸」、「(メタ)アクリル酸エステル」、「(メタ)アクリロイル」等においても同義である。
(積層体)
図1は、本発明に係る積層体の一実施形態を示す模式断面図である。図1に示される積層体100は、基材2と、基材2上に設けられた樹脂硬化物層(「保護層」又は「保護膜」という場合もある。)5とを備える。樹脂硬化物層5は、無機微粒子4と、本発明に係るポリカーボネート系樹脂が含まれる樹脂組成物(以下、「本実施形態のポリカーボネート系樹脂組成物」という場合もある。)の硬化物3とを含む層である。
基材2を構成する材料は、特に限定されないが、例えば、光学用ハードコートフィルム又は樹脂ウインドウ等の基材として用いられる樹脂であってよい。基材2を構成する材料としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂;ポリカーボネート系樹脂;ポリメチルメタクリレート等のアクリル系樹脂;ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、脂環式構造含有重合体等のポリオレフィン系樹脂;セロファン、ジアセチルセルロース樹脂、トリアセチルセルロース樹脂、アセチルセルロースブチレート樹脂等のセルロース樹脂;ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、エチレン−酢酸ビニル共重合体等のビニル系樹脂;ポリスチレン樹脂;ポリスルホン樹脂;ポリエーテルエーテルケトン樹脂;ポリエーテルスルホン樹脂;ポリエーテルイミド樹脂;ポリイミド樹脂;フッ素樹脂;ポリアミド樹脂;エポキシ樹脂;ポリウレタン樹脂等が挙げられる。
上記材料の中でも、タッチパネル又は各種ディスプレイの表面保護用フィルム等の光学用フィルム用途としては、透明性、耐衝撃性及び経済性の観点から、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂及びポリオレフィン系樹脂が好ましい。耐熱性が要求される用途としては、脂環式構造含有ポリオレフィン系樹脂、及びフッ素樹脂が好ましい。車両用窓ガラス用途としては、透明性及び耐衝撃性の観点から、ポリカーボネート系樹脂が好ましい。
本発明に係るポリカーボネート系樹脂は、(メタ)アクリロイル基と、脂環式骨格又は脂環式骨格の少なくとも1つの炭素原子が酸素原子、窒素原子若しくは硫黄原子で置換された骨格とを有する樹脂である。ここで、「ポリカーボネート」とは、分子内に2つ以上のカーボネート基を有する化合物である。「脂環式骨格」とは、炭素原子が環状に結合した炭素環式構造のうち、芳香環を除いた構造である。
ポリカーボネート系樹脂が脂環式骨格を有する場合、脂環式骨格の炭素数は、耐擦傷性の観点から、3〜18が好ましく、3〜10がより好ましい。脂環式骨格としては、例えば、シクロプロピレン基、シクロへキシレン基、シクロデカニレン基等のシクロアルキレン基が挙げられる。
ポリカーボネート系樹脂が、脂環式骨格の少なくとも1つの炭素原子が酸素原子、窒素原子若しくは硫黄原子で置換された骨格を有する場合、当該骨格の炭素数は、耐擦傷性の観点から、3〜18が好ましく、3〜6がより好ましい。当該骨格としては、例えば、下記化学式(A−1)で表される2価の有機基が挙げられる。
ポリカーボネート系樹脂は、例えば、(I)(A)脂環式骨格又は脂環式骨格の少なくとも1つの炭素原子が酸素原子、窒素原子若しくは硫黄原子で置換された骨格を有するポリカーボネートポリオール(以下、「(A)成分」ともいう。)と(B)ポリイソシアネート系化合物(以下、「(B)成分」ともいう。)及び/又は(C)ポリカルボン酸系化合物(以下、「(C)成分」ともいう。)との反応物と、(d1)分子内に1つ以上の水酸基を有する(メタ)アクリル酸エステル化合物(以下、「(d1)成分」ともいう。)と、を反応させて得られる樹脂(以下、「ポリカーボネート系樹脂(I)」ともいう。)であってよい。
本明細書において反応物とは反応により生成した生成物をいう。
ポリカーボネート系樹脂(I)は、例えば、(A)成分と必要に応じて(E)上記(A)成分以外のポリオール(以下、「(E)成分」ともいう。)とを含むポリオール成分に、(B)成分及び/又は(C)成分を反応させた後、(d1)成分を反応させて得られた樹脂であってよい。
ポリカーボネート系樹脂(I)の二重結合当量は、耐擦傷性の観点から、150〜3000g/eqが好ましい。ここで、二重結合当量は、下記式で定義され、分子内に含まれる重合性二重結合量の尺度となる。
二重結合当量=樹脂の分子量/同一分子内の重合性二重結合の数
ポリカーボネート系樹脂(I)において、(A)成分の水酸基のモル数MAと、(B)成分のイソシアネート基のモル数MB及び(C)成分のカルボキシル基のモル数MCの総和との比(MA):(MB+MC)は、耐擦傷性の観点から、1:1.1〜1:3が好ましく、1:1.2〜1:2.5がより好ましい。また、(d1)成分の水酸基のモル数Md1と、MB及びMCの総和からMAを差し引いた値との比(Md1):(MB+MC−MA)は、耐擦傷性の観点から、0.8:1〜2:1が好ましい。
ウレタン骨格は凝集性があり、ウレタン骨格を有する樹脂は強靭で耐擦傷性に優れることから、ポリカーボネート系樹脂(I)としては、(A)成分と(B)成分との反応物に(d1)成分を反応させて得られる樹脂、及び、(A)成分と(B)成分及び(C)成分との反応物に(d1)成分を反応させて得られる樹脂が好ましく、(A)成分と(B)成分との反応物に(d1)成分を反応させて得られる樹脂がより好ましい。
ポリカーボネート系樹脂(I)の調製における(C)成分の配合量は、耐擦傷性の観点から、(B)成分及び(C)成分の合計質量を基準として、0〜50質量%が好ましく、0〜30質量%がより好ましい。
ポリカーボネート系樹脂は、(II)(A)成分と必要に応じて(B)成分及び/又は(C)成分との反応物と、(d2)(メタ)アクリル酸又は上記(d1)成分以外の(メタ)アクリル酸エステル化合物(以下、「(d2)成分」ともいう。)と、を反応させて得られる樹脂(以下、「ポリカーボネート系樹脂(II)」ともいう。)であってもよい。
ポリカーボネート系樹脂(II)は、例えば、(II−1)(A)成分と必要に応じて(E)成分とを含むポリオール成分に、(d2)成分を反応させて得られた樹脂(以下、「ポリカーボネート系樹脂(II−1)樹脂」ともいう。)であってよい。
ポリカーボネート系樹脂(II−1)樹脂の二重結合当量は、耐擦傷性の観点から、150〜3000g/eqが好ましい。
ポリカーボネート系樹脂(II−1)樹脂において、(d2)成分のカルボキシル基又はカルボキシレート基のモル数Md2と、(A)成分の水酸基のモル数MAとの比(Md2):(MA)は、耐擦傷性の観点から、0.8:1〜20:1が好ましい。
ポリカーボネート系樹脂(II)は、(II−2)(A)成分と必要に応じて(E)成分とを含むポリオール成分に、(B)成分及び/又は(C)成分を反応させた後、(d2)成分を反応させて得られた樹脂(以下、「ポリカーボネート系樹脂(II−2)」ともいう。)であってもよい。
ポリカーボネート系樹脂(II−2)の二重結合当量は、耐擦傷性の観点から、150〜3000g/eqが好ましい。
ポリカーボネート系樹脂(II−2)において、(d2)成分のカルボキシル基又はカルボキシレート基のモル数Md2と、(A)成分の水酸基のモル数MAから(B)成分のイソシアネート基のモル数MB及び(C)成分のカルボキシル基のモル数MCを差し引いた値との比(Md2):(MA−MB−MC)は、耐擦傷性の観点から、0.8:1〜20:1が好ましい。
ウレタン骨格は凝集性があり、ウレタン骨格を有する樹脂は強靭で耐擦傷性に優れることから、ポリカーボネート系樹脂(II)としては、ポリカーボネート系樹脂(II−2)のうち、(A)成分と(B)成分との反応物に(d2)成分を反応させて得られる樹脂、及び、(A)成分と(B)成分及び(C)成分との反応物に(d2)成分を反応させて得られる樹脂が好ましく、(A)成分と(B)成分との反応物に(d2)成分を反応させて得られる樹脂がより好ましい。
ポリカーボネート系樹脂(II)の調製における(C)成分の配合量は、耐擦傷性の観点から、(B)成分及び(C)成分の合計質量を基準として、0〜50質量%が好ましく、0〜30質量%がより好ましい。
本発明に係るポリカーボネート系樹脂の二重結合当量は、耐擦傷性の観点から、150〜3000g/eqが好ましい。
本発明に係るポリカーボネート系樹脂において、(E)成分を用いる場合、耐擦傷性の観点から、上記反応系における(E)成分の配合量は、(A)成分及び(E)成分の合計質量を基準として、0〜80質量%が好ましく、0〜50質量%がより好ましく、0〜10質量%がさらに好ましい。
以下、上記の(A)成分、(d1)成分、(d2)成分、(B)成分、(C)成分及び(E)成分について順に説明する。
(A)成分は、脂環式骨格又は脂環式骨格の少なくとも1つの炭素原子が酸素原子、窒素原子若しくは硫黄原子で置換された骨格を有するポリカーボネートポリオールである。ここで、「ポリカーボネートポリオール」とは、分子内に2つ以上のカーボネート基及び2つ以上の水酸基を有する化合物である。
(A)成分の平均水酸基価は、耐擦傷性の観点から、50〜250mgKOH/gが好ましく、90〜200mgKOH/gがより好ましい。
(A)成分が脂環式骨格を有する場合、脂環式骨格の炭素数は、耐擦傷性の観点から、3〜18が好ましく、3〜10がより好ましい。脂環式骨格としては、例えば、シクロプロピレン基、シクロへキシレン基、シクロデカニレン基等のシクロアルキレン基が挙げられる。
(A)成分が、脂環式骨格の少なくとも1つの炭素原子が酸素原子、窒素原子若しくは硫黄原子で置換された骨格を有する場合、当該骨格の炭素数は、耐擦傷性の観点から、3〜18が好ましく、3〜6がより好ましい。当該骨格としては、例えば、下記化学式(A−1)で表される2価の有機基が挙げられる。
(A)成分は、例えば、(a1)脂環式骨格又は脂環式骨格の少なくとも1つの炭素原子が酸素原子、窒素原子若しくは硫黄原子で置換された骨格を有するポリオール(以下、「(a1)成分」ともいう。)と、炭酸誘導体との従来公知の反応により得られる化合物であってよい。(A)成分は、(a1)成分と(a2)上記(a1)成分以外のポリオール(以下、「(a2)成分」ともいう。)との混合物と、炭酸誘導体との従来公知の反応により得られる化合物であってもよい。
(a1)成分は、脂環式骨格又は脂環式骨格の少なくとも1つの炭素原子が酸素原子、窒素原子若しくは硫黄原子で置換された骨格を有するポリオールである。ここで、「ポリオール」とは、分子内に2つ以上の水酸基を有する化合物である。
(a1)成分が脂環式骨格を有する場合、脂環式骨格の炭素数は、耐擦傷性の観点から、3〜18が好ましく、3〜10がより好ましい。脂環式骨格としては、例えば、シクロプロピレン基、シクロへキシレン基、シクロデカニレン基等のシクロアルキレン基が挙げられる。
(a1)成分が、脂環式骨格の少なくとも1つの炭素原子が酸素原子、窒素原子若しくは硫黄原子で置換された骨格を有する場合、当該骨格の炭素数は、耐擦傷性の観点から、3〜18が好ましく、3〜6がより好ましい。当該骨格としては、例えば、下記化学式(A−1)で表される2価の有機基が挙げられる。
(a1)成分としては、例えば、イソソルビド、イソマンニド、イソイディッド等の下記化学式(A−2)で表される化合物;シクロヘキサンジメタノール、シクロプロパンジメタノール等のシクロアルカンのジオール化合物;水添ビスフェノールA、水添ビスフェノールF等の水添ビスフェノール化合物;トリシクロデカンジメタノールなどが挙げられる。これらの中でも、耐擦傷性の観点から、化学式(A−2)で表される化合物が好ましい。化学式(A−2)で表される化合物は、単一の立体異性体であってもよく、異なる立体異性体の混合物であってもよい。(a1)成分は1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
(a2)成分は、上記(a1)成分以外のポリオールである。すなわち、(a2)成分は、脂環式骨格及び脂環式骨格の少なくとも1つの炭素原子が酸素原子、窒素原子若しくは硫黄原子で置換された骨格を有しないポリオールである。
(a2)成分としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、2−メチル−1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオール、1,10−デカンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオールなどの脂肪族ジオール類;ビスフェノールAなどの芳香族ジオール類;グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールなどの多価アルコール類等が挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
炭酸誘導体としては、例えば、ジフェニルカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジエチレンカーボネート、ホスゲン等が挙げられる。
(A)成分としては、市販品を用いることもできる。市販品としては、例えば、BENEBiOL HS0840B(三菱化学製)、BENEBiOL HS0850(三菱化学製)等のイソソルビド系ポリカーボネートジオール、ETERNACOLL UM90(3/1)(宇部興産製)、ETERNACOLL UM90(1/1)(宇部興産製)、ETERNACOLL UM90(1/3)(宇部興産製)、ETERNACOLL UC100(宇部興産製)等のシクロヘキサンジメタノール系ポリカーボネートジオール等が挙げられる。
(d1)成分は、分子内に1つ以上の水酸基を有する(メタ)アクリル酸エステル化合物である。(d1)成分としては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート等の下記一般式(d−1)で表される化合物;ペンタエリスリトールモノ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート等の多価アルコールの(メタ)アクリレート;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートにラクトンを公知の方法で付加反応させたカプロラクトン変性2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらの中でも、反応性の観点から、下記一般式(d−1)において、R1が水素原子、nが1〜5である化合物、及び、3つ以上の水酸基を有する多価アルコールの(メタ)アクリレートが好ましく、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレートがより好ましい。
[式(d−1)中、R
1は水素原子又はメチル基を表し、A
1Oは炭素数2〜4のアルキレンオキシ基を表し、nは1〜20の整数を表す。なお、nは、炭素数2〜4のアルキレンオキサイドの平均付加モル数を意味する。]
(d2)成分は、(メタ)アクリル酸又は上記(d1)成分以外の(メタ)アクリル酸エステル化合物である。すなわち、(d2)成分は、(メタ)アクリル酸又は分子内に水酸基を有しない(メタ)アクリル酸エステル化合物である。(d2)成分としては、例えば、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸エステルなどの下記一般式(d−2)で表される化合物;エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレートなどの下記一般式(d−3)で表される化合物が挙げられる。これらの中でも、エステル交換させる際、副生成物のアルコールが除去しやすい観点から、下記一般式(d−2)で表される化合物が好ましく、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチルがより好ましい。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
[式(d−2)中、R
2は水素原子又はメチル基を表し、R
3は水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基を表す。]
[式(d−3)中、R
4及びR
5はそれぞれ独立に水素原子又はメチル基を表し、A
2Oは炭素数2〜4のアルキレンオキシ基を表し、mは1〜20の整数を表す。なお、mは炭素数2〜4のアルキレンオキサイドの平均付加モル数を意味する。]
(B)成分は、ポリイソシアネート系化合物である。ここで、「ポリイソシアネート」とは、分子内に2つ以上のイソシアネート基を有する化合物である。ポリイソシアネート系化合物はポリイソシアネートの誘導体又は変性体であってもよい。(B)成分は、(A)成分の水酸基とウレタン結合してポリウレタンプレポリマーを形成し、そのことにより樹脂の物性等を種々改質することが可能となる。(B)成分としては、例えば、脂肪族ポリイソシアネート、脂環族ポリイソシアネート、芳香族ポリイソシアネート等の低分子量ポリイソシアネート、これらのポリイソシアネートのイソシアヌレート体、これらのポリイソシアネートのトリオン体及びこれらのポリイソシアネートの誘導体や変性体等が挙げられる。これらの中でも、分子内に2つのイソシアネート基を有するジイソシアネートが好ましい。
脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、トリメチレンジイソシアネート、1,2−プロピレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、1,2−ブチレンジイソシアネート、2,3−ブチレンジイソシアネート、1,3−ブチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、2,4,4−又は2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート;リジンエステルトリイソシアネート、1,4,8−トリイソシアナトオクタン、1,6,11−トリイソシアナトウンデカン、1,8−ジイソシアナト−4−イソシアナトメチルオクタン、1,3,6−トリイソシアナトヘキサン、2,5,7−トリメチル−1,8−ジイソシアナト−5−イソシアナトメチルオクタン等の分子内に3つ以上のイソシアネート基を有する脂肪族ポリイソシアネートが挙げられる。
脂環族ポリイソシアネートとしては、例えば、1,3−シクロペンタンジイソシアネート、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、1,3−シクロヘキサンジイソシアネート、3−イソシアナトメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルイソシアネート(別名:イソホロンジイソシアネート)、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、2,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、メチル−2,6−シクロヘキサンジイソシアネート、1,3−又は1,4−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン等の脂環族ジイソシアネート;1,3,5−トリイソシアナトシクロヘキサン、1,3,5−トリメチルイソシアナトシクロヘキサン、2,5−ビスイソシアナトメチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、2,6−ビスイソシアナトメチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、2−(3−イソシアナトプロピル)−2,5−ジ(イソシアナトメチル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、2−(3−イソシアナトプロピル)−2,6−ジ(イソシアナトメチル)−ビシクロ(2.2.1)ヘプタン、3−(3−イソシアナトプロピル)−2,5−ジ(イソシアナトメチル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、5−(2−イソシアナトエチル)−2−イソシアナトメチル−3−(3−イソシアナトプロピル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、6−(2−イソシアナトエチル)−2−イソシアナトメチル−3−(3−イソシアナトプロピル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、5−(2−イソシアナトエチル)−2−イソシアナトメチル−2−(3−イソシアナトプロピル)−ビシクロ[2.2.1]−ヘプタン、6−(2−イソシアナトエチル)−2−イソシアナトメチル−2−(3−イソシアナトプロピル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプタン等の分子内に3つ以上のイソシアネート基を有する脂環族ポリイソシアネートが挙げられる。
芳香族ポリイソシアネートとしては、例えば、m−フェニレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、2,4’−又は4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートもしくはその混合物、2,4−又は2,6−トリレンジイソシアネートもしくはその混合物、4,4’−トルイジンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルエーテルジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート;トリフェニルメタン−4,4’,4’’−トリイソシアネート、1,3,5−トリイソシアネートベンゼン、2,4,6−トリイソシアネートトルエン、4,4’−ジフェニルメタン−2,2’,5,5’−テトライソシアネート等の分子内に3つ以上のイソシアネート基を有する芳香族ポリイソシアネートが挙げられる。
ポリイソシアネートの誘導体としては、例えば、上記のポリイソシアネートのダイマー、ポリイソシアネートのトリマーなどのイソシアヌレート環含有ポリイソシアネート;ビウレット結合を有するポリイソシアネート;アロファネート結合を有するポリイソシアネート;炭酸ガスと上記ポリイソシアネート単量体との反応により得られる2,4,6−オキサジアジントリオン環を有するポリイソシアネート;カルボジイミド結合を有するポリイソシアネート;ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート等が挙げられる。
ポリイソシアネートの変性体としては、例えば、上記のポリイソシアネートやポリイソシアネートの誘導体と、ポリオール又はポリアミンとを、ポリイソシアネートのイソシアネート基が、ポリオールのヒドロキシル基又はポリアミンのアミノ基よりも過剰となるような当量比で反応させることによって得られるポリオール変性体やポリアミン変性体;メチルエチルケトンオキシム、ジメチルピラゾール、ジエチルマロネート、カプロラクタム、フェノール等でイソシアネートを封鎖したブロックイソシアネート等が挙げられる。
これらの中で、光による黄変低減の観点から、脂肪族ポリイソシアネートとしては、ヘキサメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、2,4,4−又は2,及び2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、脂環族ポリイソシアネートとしては、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、1,3−シクロヘキサンジイソシアネート、3−イソシアナトメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルイソシアネート(別名:イソホロンジイソシアネート)、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、及び2,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)が好ましい。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
(C)成分は、ポリカルボン酸系化合物である。ここで、「ポリカルボン酸」とは、分子内に2つ以上のカルボキシル基を有する化合物である。ポリカルボン酸系化合物は、ポリカルボン酸の誘導体であってもよい。誘導体としては酸無水物及びエステルが挙げられる。(C)成分としては、例えば、多官能塩基酸又はその無水物、多官能塩基酸エステル化合物などの酸成分が挙げられる。多官能塩基酸又はその無水物としては、例えば、アジピン酸、コハク酸、フタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、テレフタル酸、トリメリット酸及びこれらの無水物が挙げられる。多官能塩基酸エステル化合物などの酸成分としては、例えば、アジピン酸メチルエステルなどの多官能塩基酸メチルエステル;アジピン酸エチルエステルなどの多官能塩基酸エチルエステル;アジピン酸エチレングリコールエステルなどの多官能塩基酸エチレングリコールエステルが挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
(E)成分は、上記(A)成分以外のポリオールである。すなわち、(E)成分は、脂環式骨格を有するポリカーボネートポリオール及び脂環式骨格の少なくとも1つの炭素原子が酸素原子、窒素原子若しくは硫黄原子で置換された骨格を有するポリカーボネートポリオール以外のポリオールである。(E)成分としては、例えば、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、並びに、脂環式骨格及び脂環式骨格の少なくとも1つの炭素原子が酸素原子、窒素原子若しくは硫黄原子で置換された骨格を有しないポリカーボネートポリオールが挙げられる。
ポリエーテルポリオールとしては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等が挙げられる。
ポリエステルポリオールとしては、例えば、低分子量ポリオール及び/又はポリエーテルポリオールと、アジピン酸、コハク酸、フタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、テレフタル酸等の二塩基酸又はその無水物の酸成分と、の反応物が挙げられる。
脂環式骨格及び脂環式骨格の少なくとも1つの炭素原子が酸素原子若しくは、窒素原子若しくは硫黄原子で置換された骨格を有しないポリカーボネートポリオールとしては、例えば、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオール、1,10−デカンジオールなどのポリオールと、ジフェニルカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジエチレンカーボネート、ホスゲン等の炭酸誘導体と、の従来公知の反応により得られる化合物が挙げられる。
上記以外の(E)成分としては、例えば、シクロヘキサンジメタノール、水添ビスフェノールA、水添ビスフェノールF、トリシクロデカンジメタノールなどの脂環式構造を有するポリオール、イソソルビド、イソマンニド、イソイディッドなどの脂環式構造の少なくとも1つの炭素原子が酸素原子で置換された骨格を有するポリオール;エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、2−メチル−1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオール、1,10−デカンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオールなどのグリコール類;グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールなどの多価アルコール類;ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールSなどのビスフェノール類;フェノールノボラック、クレゾールノボラックなどのノボラック類が挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
本発明に係るポリカーボネート系樹脂は、公知の方法で製造することが可能である。
ポリカーボネート系樹脂(I)は、例えば、(A)成分と(B)成分を(A)成分の水酸基が(B)成分のイソシアネート基と75%以上反応するまで70〜90℃の条件下で反応させ、その後、さらに(d1)成分を添加して、触媒、重合禁止剤の存在下、70〜90℃で残存イソシアネート濃度が0.1質量%以下になるまで反応させることにより製造することができる。
(ポリカーボネート系樹脂(I)の製造に用いられる触媒としては、例えば、トリエチルアミン、N一エチルモルホリン、トリエチレンジアミン等のアミン系触媒;トリメチルチンラウレート、ジブチルチンジラウレート等のスズ系触媒;チタン系、亜鉛系、ビスマストリス(2−エチルヘキサノアート)等のビスマス系化合物等の有機金属塩等に代表される公知のウレタン重合触媒が挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
ポリカーボネート系樹脂(I)の製造に用いられる重合禁止剤としては、例えば、ハイドロキノン、ハイドロキノンモノエチルエーテル、ジブチルヒドロキシトルエン等のフェノール類;フェノチアジン、ジフェニルアミン等のアミン類;ジブチルジチオカルバミン酸銅等の銅塩;酢酸マンガン等のマンガン塩;ニトロ化合物;ニトロソ化合物等が挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。重合禁止剤は、これらのうち、フェノール類が好ましい。
ポリカーボネート系樹脂(II)は、例えば、(A)成分と(d2)成分を(A)成分の水酸基が(d2)成分のカルボキシル基又はカルボキシレート基と75%以上反応するまで、触媒、重合禁止剤の存在下、70〜90℃の条件下で反応させることにより製造することができる。
ポリカーボネート系樹脂(II)の製造に用いられる触媒としては、例えば、トリメチルチンラウレート、ジブチルチンジラウレート等のスズ系触媒、チタン系、亜鉛系、ビスマス系化合物等の有機金属塩;パラトルエンスルホン酸等のエステル化触媒等が挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
ポリカーボネート系樹脂(II)の製造に用いられる重合禁止剤としては、例えば、ハイドロキノン、ハイドロキノンモノエチルエーテル、ジブチルヒドロキシトルエン等のフェノール類;フェノチアジン、ジフェニルアミン等のアミン類;ジブチルジチオカルバミン酸銅等の銅塩;酢酸マンガン等のマンガン塩;ニトロ化合物;ニトロソ化合物等が挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。重合禁止剤は、これらのうち、フェノール類が好ましい。
本実施形態のポリカーボネート系樹脂組成物は、上記本発明に係るポリカーボネート系樹脂を含む。
本実施形態のポリカーボネート系樹脂組成物には、必要に応じて、光重合開始剤を配合することもできる。光重合開始剤の種類は特に限定されず、公知のものが使用可能である。光重合開始剤としては、例えば、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、ベンジルジメチルケタール、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾフェノン等が挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
光重合開始剤を使用する場合のその添加量は、本実施形態のポリカーボネート系樹脂組成物中の本発明に係るポリカーボネート系樹脂の質量を基準として、1〜10質量%が好ましく、3〜5質量%がより好ましい。
本実施形態のポリカーボネート系樹脂組成物は、さらに必要に応じて、溶剤、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、アクリレート化合物、光安定剤、紫外線吸収剤、触媒、熱重合開始剤、重合禁止剤、シリコーン消泡剤、レベリング剤、増粘剤、垂れ防止剤、有機・無機顔料・染料の各種添加剤、添加助剤等を含むことができる。
溶剤としては、例えば、ヘキサン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、ヘプタン、ノナン、オクタン、イソオクタン、デカン等の脂肪族炭化水素系溶剤;ベンゼン、トルエン、キシレン、クメン、エチルベンゼン等の芳香族炭化水素系溶剤;ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、メチル−tert−ブチルエーテル、メチルセロソルブ、セロソルブ、ブチルセロソルブ、メチルカルビトール、カルビトール、ブチルカルビトール、ジエチルカルビトール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,3−ジオキサン、1,4−ジオキサン等のエーテル系溶剤;ジメチルケトン、エチルメチルケトン、ジエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジイソプロピルケトン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤;ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチレンカーボネート等の炭酸エステル系溶剤;メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、シクロヘキサノール、ジアセトンアルコール、3−メトキシ−3−メチル−1−ブタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール等のアルコール系溶剤;酢酸エチル、酢酸n−ブチル、酢酸イソブチル、酢酸n−アミル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、3−メトキシ−3−メチル−1−ブチルアセテート等のエステル系溶剤;アセトニトリル等のニトリル系溶剤、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、アルコキシ−N−イソプロピル−プロピオンアミド、ヒドロキシアルキルアミドなどの脂肪族アミド系溶剤;N−メチル−2−ピロリドン、N−エチル−ピロリドンなどの脂環族アミド系溶剤;水などが挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
無機微粒子4は、特に限定されない。無機微粒子4としては、例えば、雲母、合成雲母、シリカ、アルミナ、酸化カルシウム、チタニア、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、フッ化マグネシウム、スメクタイト、合成スメクタイト、バーミキュライト、ITO(酸化インジウム/酸化錫)、ATO(酸化アンチモン/酸化錫)、酸化錫、酸化インジウム、酸化カドミウム、酸化アンチモン、ダイヤモンド等が挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でも、耐擦傷性の観点から、シリカ、アルミナ、酸化カルシウム、チタニア、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、フッ化マグネシウム、ITO(酸化インジウム/酸化錫)、ATO(酸化アンチモン/酸化錫)、酸化錫、酸化インジウム、酸化カドミウム、及びダイヤモンドが好ましい。
樹脂硬化物層5中の無機微粒子4の含有量は、樹脂硬化物層5の乾燥質量を基準として、0.001〜70質量%であるのが好ましく、0.005〜50質量%であるのがより好ましい。無機微粒子4の含有量が上記範囲内であると、樹脂硬化物層5がより優れた擦傷防止効果を有することができる。
無機微粒子4の平均粒子径は、一次粒径として、5〜300nmが好ましく、10〜200nmがより好ましい。無機微粒子4の平均粒子径が上記範囲内であると、樹脂硬化物層5がより優れた表面の平滑性とより優れた擦傷防止効果とを有することができる。
樹脂硬化物層5の厚みは、0.1〜50μmとすることができ、耐擦傷性の観点から、1〜30μmが好ましい。
(コーティング剤)
本実施形態のコーティング剤は、上記本発明に係るポリカーボネート系樹脂と、上記無機微粒子とを含む。コーティング剤は、1剤タイプであっても、本発明に係るポリカーボネート系樹脂を含む第1剤と、無機微粒子を含む第2剤との2剤タイプであってもよい。
本実施形態のコーティング剤における本発明に係るポリカーボネート系樹脂の含有量は、コーティング剤全量を基準として、3〜98.999質量%が好ましい。
本実施形態のコーティング剤における無機微粒子の含有量は、コーティング剤全量を基準として、0.0001〜70質量%が好ましい。
コーティング剤は、必要に応じて、溶剤、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、アクリレート化合物、光安定剤、紫外線吸収剤、触媒、熱・光重合開始剤、重合禁止剤、シリコーン消泡剤、レベリング剤、増粘剤、沈殿防止剤、垂れ防止剤、難燃剤、有機・無機顔料・染料の各種添加剤、添加助剤等を含むことができる。
溶剤は、上記ポリカーボネート系樹脂組成物に用いられる溶剤と同じものを使用することができる。コーティング剤に用いられる溶剤としては、基材への密着性の観点から、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶剤、酢酸エチル、酢酸n−ブチル、酢酸イソブチル等のエステル系溶剤、アセトニトリル等のニトリル系溶剤などが好ましい。
コーティング剤中の溶剤の含有量は、所望する物性により異なるため限定されない。溶剤の含有量は、例えば、コーティング剤中の樹脂成分(固形分を形成する成分)100質量部に対して、10〜1000質量部が好ましく、塗装適性の観点から、40〜300質量部とすることがより好ましい。
コーティング剤の製造方法は、特に限定されない。コーティング剤は、例えば、本実施形態のポリカーボネート系樹脂組成物に無機微粒子4を添加し分散させることで製造できる。ポリカーボネート系樹脂組成物に無機微粒子4を分散させる方法としては、例えば、従来公知の混合、分散方法等が挙げられる。無機微粒子4をより確実に分散させるためには、分散機を用いて分散処理を行うことが好ましい。分散機としては、例えば、二本ロール、三本ロール、ビーズミル、ボールミル、サンドミル、ペブルミル、トロンミル、サンドグラインダー、セグバリアトライター、遊星式撹拌機、高速インペラー分散機、高速ストーンミル、高速度衝撃ミル、ニーダー、ホモジナイザー、超音波分散機等が挙げられる。
本実施形態のコーティング剤は、タッチパネルの保護膜の形成;タッチパネル用保護シートにおける保護膜の形成;自動車用の窓ガラス、内外装材及びホイールの保護膜の形成;住宅用の窓ガラス、内外装材、床材、便器及び厨房設備の保護膜の形成;プラスチックレンズ、太陽電池モジュール、DVD等の光情報媒体の保護膜の形成等の用途に好適に用いることができる。
(積層体の製造方法)
図2は、本発明に係る積層体の製造方法の一実施形態を示す工程図である。図2に示される積層体100の製造方法は、基材2上に、本発明に係るポリカーボネート系樹脂が含まれる本実施形態のポリカーボネート系樹脂組成物13と無機微粒子4とを含んでなる粒子含有樹脂層15を形成する工程(図2(a))、及び、粒子含有樹脂層15を硬化する工程(図2(b))、を備える。
粒子含有樹脂層15は、例えば、基材2に上記本実施形態のコーティング剤を塗布することによって形成することができる。
コーティング剤の塗布方法は、特に限定されない。塗布方法は、基材2の形状に応じて適宜選択することができる。塗布方法としては、例えば、バーコート法、ディップコート法、フローコート法、スプレーコート法、スピンコート法、ローラーコート法等が挙げられる。これらの中でも、複雑な形状に対応しやすいディップコート法、フローコート法、及びスプレーコート法が好ましい。
コーティング剤の塗膜の厚みは、乾燥後の粒子含有樹脂層の厚みが0.1〜50μmとなるように設定することができる。
粒子含有樹脂層15中の樹脂成分を高分子化し固化することにより、粒子含有樹脂層15を硬化することができる。粒子含有樹脂層15の硬化は、例えば、必要に応じて粒子含有樹脂層15を加熱して粒子含有樹脂層15に含まれる溶剤を除去する工程を行った後、UV(紫外線)、EB(電子線)、赤外線、可視光線、X線、電子線、α線、β線、γ線等の活性エネルギー線Lを照射することにより行うことができる。活性エネルギー線Lは、装置コストや生産性の観点から、EB又はUVを利用することが好ましい。活性エネルギー線Lの光源としては、UVランプ、超高圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、中圧水銀ランプ、低圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、Arレーザー、He−Cdレーザー、固体レーザー、キセノンランプ、高周波言秀導水銀ランプ、太陽光等が好ましい。活性エネルギー線Lの照射量は、活性エネルギー線Lの種類に応じて適宜選択することができる。例えば、EB照射の場合には、1〜10Mradが好ましい。また、UV照射の場合は、50〜5,000mJ/cm2が好ましい。粒子含有樹脂層15の硬化時の雰囲気は、空気、窒素、アルゴン等の不活性ガスが挙げられる。活性エネルギー線Lは、フィルム又はガラスと金属金型との間の密閉空間で照射してもよい。
図3及び4は、本発明に係る積層体の製造方法の別の実施形態を示す工程図である。図3は、基材上に粒子含有樹脂層を形成する工程を示し、図4は、粒子含有樹脂層を硬化する工程を示す。図3及び4に示される積層体110の製造方法は、基材2上に本発明に係るポリカーボネート系樹脂が含まれる塗工液(例えば、上記本実施形態のポリカーボネート系樹脂組成物)を塗布して塗膜を形成する工程(図3(a))と、塗膜上に無機微粒子4を吹き付けて粒子含有樹脂層16を形成する工程(図3(b))と、粒子含有樹脂層16を硬化する工程(図4(a))と、を備える。
積層体110では、無機微粒子4が樹脂硬化物層6の基材2とは反対側に偏在させることができる。これにより、樹脂硬化物層6の耐擦傷性を向上しつつ、樹脂硬化物層6と基材2との密着性を向上することができる。また、図1に示される積層体100の場合と比べて、用いる無機微粒子4の量を減らすことができ、より経済的であるという利点もある。
本実施形態においては、樹脂硬化物層が、樹脂硬化物層全量を基準として、無機微粒子を0.0001〜70質量%の割合で含有することが好ましく、0.0005〜50質量%の割合で含有することがより好ましい。
積層体110を製造する場合のポリカーボネート系樹脂組成物の塗布方法は、上記のコーティング剤の塗布方法と同じであってよい。また、粒子含有樹脂層16を硬化する方法は、上記の粒子含有樹脂層15を硬化する場合と同じであってよい。無機微粒子4を吹き付ける方法は、例えば、無機微粒子4をそのまま噴霧してもよいし、無機微粒子4を溶媒に分散させて噴霧してもよい。溶媒としては、特に限定しないが、水、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等が挙げられる。噴霧は、通常の噴霧器等を用いて行うことができる。
塗膜の厚みは、0.1〜50μmとすることができる。
本発明に係る積層体の別の製造方法として、基材2を形成する材料と、上記コーティング剤とを共押出しにより積層してもよいし、それぞれを押出成形して単層のシートを形成し、それらをドライラミネーション、熱ラミネーション等により貼り合わせてもよい。
樹脂硬化物層(保護層)5,6の厚さは、応力緩和の観点から、0.1〜50μm程度であることが好ましく、1〜30μmであることがより好ましい。
積層体100,110は、基材2上に、無機微粒子4と本実施形態のポリカーボネート系樹脂組成物の硬化物3とが含まれる樹脂硬化物層(保護層)5,6の1層のみが形成されているいわゆる1コートタイプと、下層を形成するプライマー層と樹脂硬化物層5,6とから構成されるいわゆる2コートタイプのいずれも選択できる。プライマー層(下層)を形成する樹脂としては、各種ブロックイソシアネート成分及びポリオール成分からなるウレタン樹脂;アクリル樹脂;ポリエステル樹脂;エポキシ樹脂;メラミン樹脂;アミノ樹脂;ポリエステルアクリレート、ウレタンアクリレート、エポキシアクリレート、ホスファゼンアクリレート、メラミンアクリレート、アミノアクリレート等の各種多官能アクリレート等を挙げることができる。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でも、アクリル樹脂及びウレタンアクリレートが好ましい。これらは未反応状態のものを塗布後、所定の反応をさせて硬化樹脂とすること、あるいは反応後の樹脂を直接塗布し硬化樹脂層を形成することのいずれも適用可能である。後者は、通常、樹脂を溶媒に溶解し溶液とした後、塗布され、その後溶媒が除去される。また、前者の場合も溶媒を使用することが一般的である。
本発明に係る積層体は、例えば、保護膜を備えるタッチパネル;タッチパネル用保護シート;保護膜を備える自動車用の窓ガラス、内外装材及びホイール;保護膜を備える住宅用の窓ガラス、内外装材、床材、便器及び厨房設備;保護膜を備えるプラスチックレンズ、太陽電池モジュール及びDVD等の光情報媒体として適用することができる。
以下に、本発明を実施例によりさらに説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら制限されるものではない。
<ポリカーボネート系樹脂原料>
ポリカーボネート系樹脂の原料として下記の成分を準備した。
(A)成分
・PCD1:イソソルビド系ポリカーボネートジオール(商品名:BENEBiOL HS0840B、三菱化学製、水酸基価:140.3mgKOH/g、数平均分子量:800)
・PCD2:シクロヘキサンジメタノール系ポリカーボネートジオール(商品名:ETERNACOLL UM90(3/1)、宇部興産製、水酸基価:124.7mgKOH/g、数平均分子量:900)
・PCD3:イソソルビド系ポリカーボネートジオール(商品名:BENEBiOL HS0850、三菱化学製、水酸基価:140.3mgKOH/g、数平均分子量:800)
(B)成分
・イソホロンジイソシアネート(分子量:222)
・ヘキサメチレンジイソシアネート(分子量:168)
(C)成分
・アジピン酸(分子量:146)
(d1)成分
・2−ヒドロキシエチルアクリレート(分子量:116)
・ペンタエリスリトールトリアクリレート(分子量:298)
(d2)成分
・アクリル酸(分子量:72)
(E)成分
・PCD4:ポリヘキサメチレンカーボネートジオール(水酸基価:112.2mgKOH/g、数平均分子量:1000)
<無機微粒子>
下記の無機微粒子を準備した。
・ナノダイヤ:(商品名:V−ダイヤ、ビジョン開発製、平均粒子径:200nm)
・シリカ:(商品名:MEK−ST−ZL、日産化学工業製、平均粒子径:83nm、メチルエチルケトン分散タイプ、シリカ分30質量%)
<ポリカーボネート系樹脂の合成>
[合成例1]
撹拌機、還流冷却管、温度計、窒素及び酸素の混合気体の吹き込み管を備えた4ツ口フラスコにPCD1を160.8g、イソホロンジイソシアネートを89.2g、メチルエチルケトンを62.5g、ウレタン反応触媒としてビスマストリス(2−エチルヘキサノアート)0.05gを加え、80〜90℃で1時間反応させ、遊離イソシアネート基含有量が5.4質量%のウレタンプレポリマーを得た。60℃まで冷却した後、重合禁止剤としてハイドロキノンモノメチルエーテル0.3g、ビスマストリス(2−エチルヘキサノアート)0.05g、メチルエチルケトン11.7gを加え、2−ヒドロキシエチルアクリレートを46.6g滴下して80〜90℃にて3時間反応させて、メチルエチルケトン20質量%含む、即ち樹脂組成物の樹脂成分濃度が80質量%であるポリウレタンアクリレート系のポリカーボネート系樹脂組成物を得た。なお、上記反応はすべて上記混合気体を吹き込みながら行った。
得られたポリカーボネート系樹脂組成物のポリオール中の(A)成分のポリカーボネートポリオールの質量比は100質量%であり、ポリオールのOH基のモル数:ポリイソシアネートのNCO基のモル数は、1:2であり、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートのOH基のモル数:ポリイソシアネートのNCO基のモル数からポリオールのOH基のモル数を差し引いた値は、1:1である。
[合成例2]
撹拌機、還流冷却管、温度計、窒素及び酸素の混合気体の吹き込み管を備えた4ツ口フラスコにPCD1を182.5g、イソホロンジイソシアネートを67.5g、メチルエチルケトンを62.5g、ウレタン反応触媒としてビスマストリス(2−エチルヘキサノアート)0.05gを加え、80〜90℃で2時間反応させ、遊離イソシアネート基含有量が2.0質量%のウレタンプレポリマーを得た。60℃まで冷却した後、重合禁止剤としてハイドロキノンモノメチルエーテル0.3g、ビスマストリス(2−エチルヘキサノアート)0.05g、メチルエチルケトン11.3gを加え、ペンタエリスリトールトリアクリレートを45.3g滴下して80〜90℃にて3時間反応させて、メチルエチルケトン20質量%含む、即ち樹脂組成物の樹脂成分濃度が80質量%であるポリウレタンアクリレート系のポリカーボネート系樹脂組成物を得た。なお、上記反応はすべて上記混合気体を吹き込みながら行った。
得られたポリカーボネート系樹脂組成物のポリオール中の(A)成分のポリカーボネートポリオールの質量比は100質量%であり、ポリオールのOH基のモル数:ポリイソシアネートのNCO基のモル数は、1:1.33であり、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートのOH基のモル数:ポリイソシアネートのNCO基のモル数からポリオールのOH基のモル数を差し引いた値は、1:1である。
[合成例3]
撹拌機、還流冷却管、温度計、窒素及び酸素の混合気体の吹き込み管を備えた4ツ口フラスコにPCD2を188.1g、イソホロンジイソシアネートを61.9g、メチルエチルケトンを62.5g、ウレタン反応触媒としてビスマストリス(2−エチルヘキサノアート)0.05gを加え、80〜90℃で2時間反応させ、遊離イソシアネート基含有量が1.9質量%のウレタンプレポリマーを得た。60℃まで冷却した後、重合禁止剤としてハイドロキノンモノメチルエーテル0.3g、ビスマストリス(2−エチルヘキサノアート)0.05g、メチルエチルケトン4.0gを加え、2−ヒドロキシエチルアクリレートを16.2g滴下して80〜90℃にて3時間反応させて、メチルエチルケトン20質量%含む、即ち樹脂組成物の樹脂成分濃度が80質量%であるポリウレタンアクリレート系のポリカーボネート系樹脂組成物を得た。なお、上記反応はすべて上記混合気体を吹き込みながら行った。
得られたポリカーボネート系樹脂組成物のポリオール中の(A)成分のポリカーボネートポリオールの質量比は100質量%であり、ポリオールのOH基のモル数:ポリイソシアネートのNCO基のモル数は、1:1.33であり、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートのOH基のモル数:ポリイソシアネートのNCO基のモル数からポリオールのOH基のモル数を差し引いた値は、1:1である。
[合成例4]
撹拌機、還流冷却管、温度計、窒素及び酸素の混合気体の吹き込み管を備えた4ツ口フラスコにPCD3を113.7g、PCD4を71.1g、イソホロンジイソシアネートを47.3g、ヘキサメチレンジイソシアネートを17.9g、メチルエチルケトンを62.5g、ウレタン反応触媒としてビスマストリス(2−エチルヘキサノアート)0.05gを加え、80〜90℃で2時間反応させ、遊離イソシアネート基含有量が2.9質量%のウレタンプレポリマーを得た。60℃まで冷却した後、重合禁止剤としてハイドロキノンモノメチルエーテル0.3g、ビスマストリス(2−エチルヘキサノアート)0.05g、メチルエチルケトン6.2gを加え、2−ヒドロキシエチルアクリレートを24.7g滴下して80〜90℃にて3時間反応させて、メチルエチルケトン20質量%含む、即ち樹脂組成物の樹脂成分濃度が80質量%であるポリウレタンアクリレート系のポリカーボネート系樹脂組成物を得た。なお、上記反応はすべて上記混合気体を吹き込みながら行った。
得られたポリカーボネート系樹脂組成物のポリオール中の(A)成分のポリカーボネートポリオールの質量比は61.5質量%であり、ポリオールのOH基のモル数:ポリイソシアネートのNCO基のモル数は、1:1.5であり、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートのOH基のモル数:ポリイソシアネートのNCO基のモル数からポリオールのOH基のモル数を差し引いた値は、1:1である。
[合成例5]
撹拌機、還流冷却管、温度計、窒素及び酸素の混合気体の吹き込み管を備えた4ツ口フラスコにPCD1を145.9g、アジピン酸53.3g、エステル化触媒としてパラトルエンスルホン酸2.5gを仕込み、180℃で縮合水を除去しながらエステル化を8時間行った。なお、上記反応は上記混合気体を吹き込みながら行った。その後ポリエステルの酸価が115以下になったのを確認し、真空ポンプにより徐々に真空度を上げて反応させ、酸価106.3KOHmg/gのエステルプレポリマーを得た。60℃まで冷却した後、再度上記混合気体を吹き込みながら重合禁止剤としてハイドロキノンモノメチルエーテル0.3g、2−ヒドロキシエチルアクリレート50.8gを加え、110〜120℃で縮合水を除去しながらエステル化を8時間行った。60℃まで冷却し、メチルエチルケトン59.2gを加え、メチルエチルケトン20質量%含む、即ち樹脂組成物の樹脂成分濃度が80質量%であるポリエステルアクリレート系のポリカーボネート系樹脂組成物を得た。
得られたポリカーボネート系樹脂組成物のポリオール中の(A)成分のポリカーボネートポリオールの質量比は100.0質量%であり、ポリオールのOH基のモル数:二塩基酸のCOOH基のモル数は、1:2であり、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートのOH基のモル数:二塩基酸のCOOH基のモル数からポリオールのOH基のモル数を差し引いた値は、1:0.83である。
[合成例6]
撹拌機、還流冷却管、温度計、窒素及び酸素の混合気体の吹き込み管を備えた4ツ口フラスコにPCD1を211.9g、アクリル酸38.1g、重合禁止剤としてハイドロキノンモノメチルエーテル0.3g、エステル化触媒としてパラトルエンスルホン酸2.5gを仕込み、120℃で縮合水を除去しながらエステル化を15時間行い、酸価1.8のエステルプレポリマーを得た。60℃まで冷却した後、メチルエチルケトン60.1gを加え、メチルエチルケトン20質量%含む、即ち樹脂組成物の樹脂成分濃度が80質量%であるポリカーボネート系樹脂組成物を得た。なお、上記反応はすべて上記混合気体を吹き込みながら行った。
得られたポリカーボネート系樹脂組成物のポリオール中の(A)成分のポリカーボネートポリオールの質量比は100.0質量%であり、ポリオールのOH基のモル数:アクリル酸のCOOH基のモル数は、1:1である。
[合成例7]
撹拌機、還流冷却管、温度計、窒素及び酸素の混合気体の吹き込み管を備えた4ツ口フラスコにPCD1を209.2g、ヘキサメチレンジイソシアネートを22.0g、ウレタン反応触媒としてビスマストリス(2−エチルヘキサノアート)0.05gを加え、80〜90℃で1時間反応させ、遊離イソシアネート基含有量が0.0質量%のウレタンプレポリマーを得た。60℃まで冷却した後、重合禁止剤としてハイドロキノンモノメチルエーテル0.3g、アクリル酸18.8gを加え、120℃で縮合水を除去しながらエステル化を15時間行い、酸価0.9のウレタンプレポリマーを得た。60℃まで冷却した後、メチルエチルケトン60.2gを加え、メチルエチルケトン20質量%含む、即ち樹脂組成物の樹脂成分濃度が80質量%であるポリウレタンアクリレート系のポリカーボネート系樹脂組成物を得た。なお、上記反応はすべて上記混合気体を吹き込みながら行った。
得られたポリカーボネート系樹脂組成物のポリオール中の(A)成分のポリカーボネートポリオールの質量比は100.0質量%であり、アクリル酸のCOOH基のモル数:ポリオールのOH基のモル数からポリイソシアネートのNCO基のモル数を差し引いた値は、1:1である。
[合成例8]
撹拌機、還流冷却管、温度計、窒素及び酸素の混合気体の吹き込み管を備えた4ツ口フラスコにPCD1を211.6g、アジピン酸19.3g、エステル化触媒としてパラトルエンスルホン酸2.5gを仕込み、180℃で縮合水を除去しながらエステル化を8時間行った。ポリエステルの酸価が0.5以下になったのを確認後、60℃まで冷却した後、重合禁止剤としてハイドロキノンモノメチルエーテル0.3g、アクリル酸19.0gを加え、120℃で縮合水を除去しながらエステル化を15時間行い、酸価0.9のエステルプレポリマーを得た。60℃まで冷却した後、メチルエチルケトン60.1gを加え、メチルエチルケトン20質量%含む、即ち樹脂組成物の樹脂成分濃度が80質量%であるポリエステルアクリレート系のポリカーボネート系樹脂組成物を得た。なお、上記反応はすべて上記混合気体を吹き込みながら行った。
得られたカーボネート系樹脂組成物のポリオール中の(A)成分のポリカーボネートポリオールの質量比は100.0質量%であり、アクリル酸のCOOH基のモル数:ポリオールのOH基のモル数から二塩基酸のCOOH基のモル数を差し引いた値は、1:1である。
[合成例9]
撹拌機、還流冷却管、温度計、窒素及び酸素の混合気体の吹き込み管を備えた4ツ口フラスコにPCD4を173.1g、イソホロンジイソシアネートを76.9g、メチルエチルケトンを62.5g、ウレタン反応触媒としてビスマストリス(2−エチルヘキサノアート)0.05gを加え、80〜90℃で2時間反応させ、遊離イソシアネート基含有量が4.7質量%のウレタンプレポリマーを得た。60℃まで冷却した後、重合禁止剤としてハイドロキノンモノメチルエーテル0.3g、ビスマストリス(2−エチルヘキサノアート)0.05g、メチルエチルケトン10.0gを加え、2−ヒドロキシエチルアクリレート40.2gを滴下して80〜90℃にて2時間反応させて、メチルエチルケトン20質量%含む、即ち樹脂組成物の樹脂成分濃度が80質量%であるポリウレタンアクリレート系のポリカーボネート系樹脂組成物を得た。なお、上記反応はすべて上記混合気体を吹き込みながら行った。
得られたポリカーボネート系樹脂組成物のポリオール中の(A)成分のポリカーボネートポリオールの質量比は0質量%であり、ポリオールのOH基のモル数:ポリイソシアネートのNCO基のモル数は、1:2であり、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートのOH基のモル数:ポリイソシアネートのNCO基のモル数からポリオールのOH基のモル数を差し引いた値は1:1である。
[合成例10]
撹拌機、還流冷却管、温度計、窒素及び酸素の混合気体の吹き込み管を備えた4ツ口フラスコにPCD4を159.2g、アジピン酸46.5g、エステル化触媒としてパラトルエンスルホン酸2.5gを仕込み、180℃で縮合水を除去しながらエステル化を8時間行った。なお、上記反応は上記混合気体を吹き込みながら行った。その後ポリエステルの酸価が98以下になったのを確認し、真空ポンプにより徐々に真空度を上げて反応させ、酸価89.3KOHmg/gのエステルプレポリマーを得た。60℃まで冷却した後、再度上記混合気体を吹き込みながら重合禁止剤としてハイドロキノンモノメチルエーテル0.3g、2−ヒドロキシエチルアクリレート44.3gを加え、110〜120℃で縮合水を除去しながらエステル化を8時間行った。60℃まで冷却し、メチルエチルケトン59.6gを加え、メチルエチルケトン20質量%含む、即ち樹脂組成物の樹脂成分濃度が80質量%であるポリエステルアクリレート系のポリカーボネート系樹脂組成物を得た。
得られたポリカーボネート系樹脂組成物のポリオール中の(A)成分のポリカーボネートポリオールの質量比は0.0質量%であり、ポリオールのOH基のモル数:二塩基酸のCOOH基のモル数は、1:2であり、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートのOH基のモル数:二塩基酸のCOOH基のモル数からポリオールのOH基のモル数を差し引いた値は1:0.83である。
[合成例11]
撹拌機、還流冷却管、温度計、窒素及び酸素の混合気体の吹き込み管を備えた4ツ口フラスコにPCD4を218.5g、アクリル酸31.5g、重合禁止剤としてハイドロキノンモノメチルエーテル0.3g、エステル化触媒としてパラトルエンスルホン酸2.5gを仕込み、120℃で縮合水を除去しながらエステル化を15時間行い、酸価1.5のエステルプレポリマーを得た。60℃まで冷却した後、メチルエチルケトン60.5gを加え、メチルエチルケトン20質量%含む、即ち樹脂組成物の樹脂成分濃度が80質量%であるポリカーボネート系樹脂組成物を得た。なお、上記反応はすべて上記混合気体を吹き込みながら行った。
得られたポリカーボネート系樹脂組成物のポリオール中の(A)成分のポリカーボネートポリオールの重量比は0.0重量%であり、ポリオールのOH基のモル数:アクリル酸のCOOH基のモル数は1:1である。
[合成例12]
撹拌機、還流冷却管、温度計、窒素及び酸素の混合気体の吹き込み管を備えた4ツ口フラスコにPCD4を216.3g、ヘキサメチレンジイソシアネートを18.2g、ウレタン反応触媒としてビスマストリス(2−エチルヘキサノアート)0.05gを加え、80〜90℃で1時間反応させ、遊離イソシアネート基含有量が0.0質量%のウレタンプレポリマーを得た。60℃まで冷却した後、重合禁止剤としてハイドロキノンモノメチルエーテル0.3g、アクリル酸15.6gを加え、120℃で縮合水を除去しながらエステル化を15時間行い、酸価0.8のウレタンプレポリマーを得た。60℃まで冷却した後、メチルエチルケトン60.6gを加え、メチルエチルケトン20質量%含む、即ち樹脂組成物の樹脂成分濃度が80質量%であるポリウレタンアクリレート系のポリカーボネート系樹脂組成物を得た。なお、上記反応はすべて上記混合気体を吹き込みながら行った。
得られたポリカーボネート系樹脂組成物のポリオール中の(A)成分のポリカーボネートポリオールの重量比は0.0重量%であり、アクリル酸のCOOH基のモル数:ポリオールのOH基のモル数からポリイソシアネートのNCO基のモル数を差し引いた値とのモル比は1:1である。
上記の各合成例で用いた(A)成分、(B)成分、(C)成分、(d1)成分、(d2)成分及び(E)成分の量を表1〜3に示す。なお、表1〜3中の各成分量の数値の単位は「g」である。
(積層体の作製)
[実施例1]
合成例1の組成物(組成物1)100gをメチルエチルケトンにて希釈し、ポリカーボネート系樹脂組成物濃度を40質量%に調整した後、ナノダイヤモンド0.8g、光重合開始剤としてイルガキュア184(BASFジャパン製)を1.6g混合し、コーティング剤を得た。コーティング剤を乾燥膜厚が10μmになるようにポリカーボネート樹脂板にバーコータで塗布した。熱風乾燥機にて60℃で10分乾燥し、紫外線照射装置(製品名:EYE GRANDAGE ECS−301、アイグラフィックス社製、光源:メタルハライド)を用い、500mJ/cm2を照射して樹脂硬化物層(保護膜)を形成した。以上の方法により積層体を作製した。
[実施例2]
実施例1のナノダイヤモンド量を0.08gに変更したこと以外は実施例1と同じ方法で積層体を作製した。
[実施例3]
実施例1のナノダイヤモンドをシリカ34.3gに変更したこと以外は実施例1と同じ方法で積層体を作製した。
[実施例4]
実施例1の組成物1を合成例2の組成物(組成物2)に変更したこと以外は実施例1と同じ方法で積層体を作製した。
[参考例5]
実施例1の組成物1を合成例3の組成物(組成物3)に変更したこと以外は実施例1と同じ方法で積層体を作製した。
[実施例6]
実施例1の組成物1を合成例4の組成物(組成物4)に変更したこと以外は実施例1と同じ方法で積層体を作製した。
[実施例7]
実施例1の組成物1を合成例5の組成物(組成物5)に変更したこと以外は実施例1と同じ方法で積層体を作製した。
[実施例8]
実施例1の組成物1を合成例6の組成物(組成物6)に変更したこと以外は実施例1と同じ方法で積層体を作製した。
[実施例9]
実施例1の組成物1を合成例7の組成物(組成物7)に変更したこと以外は実施例1と同じ方法で積層体を作製した。
[実施例10]
実施例1の組成物1を合成例8の組成物(組成物8)に変更したこと以外は実施例1と同じ方法で積層体を作製した。
[実施例11]
100gの組成物1をメチルエチルケトンにて希釈し、ポリカーボネート系樹脂組成物濃度を40質量%に調整した後、光重合開始剤としてイルガキュア184(BASFジャパン製)を1.6g混合し、塗工液を得た。得られた塗工液を乾燥膜厚が10μmになるようにポリカーボネート樹脂板にバーコータで塗布した。次に、この塗膜上に、噴霧器を用いて樹脂硬化物層(保護膜)中のナノダイヤモンド濃度が1質量%となるように2質量%のナノダイヤモンドのメチルエチルケトン分散液を噴霧した。熱風乾燥機にて60℃で10分乾燥し、紫外線照射装置(製品名:EYE GRANDAGE ECS−301、アイグラフィックス社製、光源:メタルハライド)を用い、500mJ/cm2を照射して樹脂硬化物層(保護膜)を形成した。以上の方法により積層体を作製した。
[比較例1]
保護膜を積層せず実施例1の基材のみとした。
[比較例2]
ナノダイヤモンドを加えなかったこと以外は実施例1と同じ方法で積層体を作製した。
[比較例3]
実施例1の組成物1を合成例9の組成物(組成物9)に変更したこと以外は実施例1と同じ方法で積層体を作製した。
[比較例4]
実施例1の組成物1を合成例10の組成物(組成物10)に変更したこと以外は実施例1と同じ方法で積層体を作製した。
[比較例5]
実施例1の組成物1を合成例11の組成物(組成物11)に変更したこと以外は実施例1と同じ方法で積層体を作製した。
[比較例6]
実施例1の組成物1を合成例12の組成物(組成物12)に変更したこと以外は実施例1と同じ方法で積層体を作製した。
上記の各実施例及び比較例で用いた成分の量を表4〜6に示す。なお、表4〜6中、各成分量の単位は「g」である。
得られた積層体について、初期密着性及び耐擦傷性を以下に示す方法で評価した。評価結果を表4〜6に示す。
<初期密着性>
作製した積層体の樹脂硬化物層(保護膜)に、JIS K5600−5−6(1999年)に従いカッターナイフで縦横各11本の1mm間隔の切り込みを入れて100マスの碁盤目を形成し、この碁盤目上にニチバン(株)製のセロハンテープを貼り付け、セロハンテープを剥離した。セロハンテープ剥離後の残存膜のマス目の数で密着性を評価し、95枚以上残存した場合を合格とした。
<耐擦傷性>
JIS K5600−5−9(2000年)に従い、テーバー磨耗試験機(東洋精機製作所社製、型式:ROTARY ABRASION TESTER)に磨耗輪(製品名:CALIBRASE(登録商標)CS−10F、TABER社製)を装着し、荷重500g下での500回転後のヘーズ(曇価)を測定し、試験後と試験前の曇価差ΔH(%)を算出した。ヘーズはJIS K7136(2000年)に従い、ヘーズメーター(スガ試験機株式会社製、型式:HGM−2DP)を用いて測定した。ΔH(%)が小さいものほど、耐擦傷性が良好と評価し、5以下を合格とした。
表4〜表6に示した結果から明らかなように、本実施形態の積層体は、高い耐擦傷性を有していることが確認された。