JP4210002B2 - コンタクトプローブ及びコンタクトピンの研磨方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、半導体ICチップやLCD(液晶表示体)等の被検査物の各電極端子にコンタクトピンを接触させて電気的なテストを行うためのコンタクトプローブ及びこのコンタクトプローブのコンタクトピンの研磨方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、プローブ装置は、ICチップやLSI等の半導体チップ、またはLCD(液晶表示体)等の各端子にコンタクトプローブのコンタクトピンを押圧接触させ、プリント基板を介してテスターに接続して電気的なテストに用いられる。コンタクトプローブ1は、例えば図8に示すようにNi基合金等からなる複数本のパターン配線2…の上に接着剤層を介してフィルム3が被着され、フィルム3から突出するパターン配線2…の先端部はコンタクトピン2a…とされている。またフィルム3の幅広の基部1bには窓部4が形成され、この窓部4にはパタ−ン配線2…の引き出し配線部5…が設けられている。
尚、フィルム3はポリイミド等の樹脂フィルム層からなり、或いはポリイミド等の樹脂フィルム層に銅箔Cu等の金属フィルム層がグラウンドとして積層されたもの等でもよい。
【0003】
このようなコンタクトプローブ1は図9及び図10に示すようにマウンティングベースやトップクランプやボトムクランプ等のメカニカルパーツ7に組み込まれてプローブ装置8とされ、コンタクトピン2a…を半導体ICチップやLCD等のパッドやバンプ等の端子に接触させることになる。
即ち、図9及び図10に示すプローブ装置8において、円板形状をなし中央窓部10aを有するプリント基板10の上に、例えばトップクランプ11を取り付け、またコンタクトプローブ1の先端部1aを両面テープ等でその下面に取り付けたマウンティングベース12を、トップクランプ11にボルト等で固定する。そして略額縁形状のボトムクランプ14でコンタクトプローブ1の基部1bを押さえつけることによりプリント基板10の下面の電極16に接触状態に保持する。
その際、プリント基板10とコンタクトプローブ1の基部1bは位置決めピンによって相互の位置決めがなされる。
これによって、コンタクトプローブ1の先端部1aがマウンティングベース12の下面で下方に向けた傾斜状態に保持され、コンタクトプローブ1の基部1bのパターン配線2の引き出し配線部5がボトムクランプ14の弾性体15で窓部4を通してプリント基板10の下面の電極16に押しつけられて接触状態に保持されることになる。
【0004】
ところで、上述のコンタクトプローブ1の各コンタクトピン2a…を含む各パターン配線2…はマスク露光技術を用いてフォトリソ・めっき法によって製作されており、コンタクトピン2aの先端部は図11に示されるように略半円弧の板状に形成される。ここで、コンタクトピン2aの先端部20はフィルム3に被着される上面21と被検査物である半導体ICチップ18のパッド18aに当接する先端円弧状の下面22と側面23とで構成されている。
しかしながら、コンタクトピン2aはフォトリソ・めっき法で製作されるためにピン表面即ちパッド18aに接触する下面22にめっきによる微細な凹凸が生じていた。そのために下面22をパッド18aに接触させると接触抵抗がばらつくことになり、安定したコンタクト性が得られなかった。
そのため、従来では、パッド18aへのコンタクト時に接触抵抗を少なくするために、図11に示すように下面22と側面23の凸曲面状の先端部23aとの境界が略平面状に斜めに研磨されて接触面24を形成していた。
【0005】
ICチップ18のパッド18aにコンタクトピン2aをコンタクトさせる際、例えばパッド18aを水平に配置したとして、パッド18aに対するコンタクトピン2aの傾斜角度θを例えば20°前後に設定するようになっている。
他方、アルミニウム合金や金などで形成されるパッド18aの表面は空気中で酸化して薄い酸化膜や吸着物で覆われているために、オーバードライブをかけて図12に示すようにパッド18aの表面の酸化膜や吸着物を先端部20の下面22の接触面24で擦り取り(スクラブという)、内部のアルミニウムや金などの金属を露出させてコンタクトピン2aとの確実な導通を図る必要がある。
このようなコンタクトピン2aの接触面24は例えば図13に示す研磨方法で研磨されて製作される。即ち各コンタクトプローブ1をプリント基板10が装着されたメカニカルパーツ7に電気的テスト時と同様に装着する(図10参照)。コンタクトピン2aの傾斜角度は電気的テストの時と同一の角度θ(例えばθ=20°)に設定する。そして下方に研磨板26をほぼ水平に配置してコンタクトピン2aとの角度をθ(=20°)に設定する。
そして角度θを維持しつつコンタクトピン2aを研磨板26に対して相対移動させてコンタクトピン2aの下面22の先端側領域を研磨することで、平滑化された接触面24が製作される。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら上述のような研磨方法では、接触面24はコンタクトピン2aの先端部23aから5〜40μm程度の長さLaしか研磨できなかった。一方、パッド18aに対するコンタクトピン2aはオーバードライブをかけることによりパッド表面上でしなって下面22が接触するために平滑化された接触面24が5〜40μm程度の長さでは安定したコンタクト性能が得られず、接触抵抗がばらつくという欠点を改善できなかった。
また、上述した従来の研磨方法を用いて研磨板26へのコンタクト回数を増やして接触面24の長さLaと研磨面積を増大することで、図14に示すようにコンタクトピン2aの先端部23aから長手方向への研磨長さLa及び研磨面積を増大させることは可能であるが、この場合、研磨されて平滑化された接触面24は研磨板26とほぼ平行になるためにパッド18aの上面とほぼ平行になってしまう。そのため、コンタクトピン2aのパッド18aへのコンタクト角度がθ=20°であっても接触面24のパッド18aに対する角度は0°前後になるためにオーバードライブ時にスクラブをかけることができず、安定した接触抵抗を確保することができなかった。
【0007】
本発明は、このような実情に鑑みて、安定したコンタクト性能を確保できるようにしたコンタクトピンを備えたコンタクトプローブを提供することを目的とする。
また本発明の他の目的は、安定したコンタクト性能が得られるコンタクトピンの研磨方法を提供することである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明に係るコンタクトプローブは、フィルムが被着された複数のパターン配線の各先端がフィルムから突出してコンタクトピンとされ、前記コンタクトピンを被検査物のパッドの表面上に押圧して摺動させ前記パッドに接触させるコンタクトプローブにおいて、コンタクトピンの前記パッドへ接触する側の一面がその先端側で研磨されて平滑面とされ、この平滑面は一面に対して傾斜していると共にコンタクトピンの先端部から長手方向に沿って前記コンタクトピンが前記パッドの表面上を摺動するスクラブ長さより長く形成されていることを特徴とする。
また、本発明に係るコンタクトプローブの製造方法は、フィルムが被着された複数のパターン配線の各先端が前記フィルムから突出してコンタクトピンとされ、前記コンタクトピンを被検査物のパッドの表面上に押圧して摺動させ前記パッドに接触させるコンタクトプローブの製造方法において、前記コンタクトピンの前記パッドへ接触する側の一面をその先端側で研磨して平滑面とし、この平滑面は前記一面に対して傾斜していると共にコンタクトピンの先端部から長手方向に沿って前記コンタクトピンが前記パッドの表面上を摺動するスクラブ長さより長く形成することを特徴とする。
平滑面が前記コンタクトピンが前記パッドの表面上を摺動するスクラブ長さより長く形成されていることで、コンタクトピンにオーバードライブをかけて被検査物の端子の表面に圧接させスクラブをかけて、端子表面の酸化膜が削れてコンタクトピンの平滑面が従来のものより長い範囲にわたって確実に端子表面に接触することができ、各コンタクトピンにおいて接触抵抗が小さくなると共に安定した接触が得られ、被検査物の電気的テストを的確且つ正確に行うことができる。
尚、コンタクトピンの平滑面は一面(下面)から先端側に向かうに従って漸次一面に対向する二面(上面)に近づくよう一面(下面)に対して傾斜して形成されている。
【0009】
また、平滑面はコンタクトピンの先端から長手方向に沿って最大150μmまでの長さにわたって形成されていてもよい。
150μm以上平滑面を形成しても端子への接触が行われないので無駄になり、意味がない。
尚、好ましくは50μm〜100μmの範囲にわたって平滑面を形成すればよい。
少なくともこの範囲にわたってコンタクトピンに平滑面を形成すれば、被検査物の端子表面との接触面積を確保して接触抵抗を小さくできる上に安定した接触が得られる。
【0010】
本発明に係るコンタクトプローブは、前記コンタクトピンは、前記長手方向に直交する断面が四角形状とされ、前記先端部は、略半円の板状であって、略円柱周面状の凸曲面の側面を有し、前記平滑面の前記一面に対して傾斜している研磨角度は、前記コンタクトピンの前記パッドへ接触するコンタクト角度より小さいことを特徴とする。
このコンタクトプローブによれば、研磨の際にコンタクト回数が多いために研磨された平滑面が研磨面と略平行になったとしても、電気的テストの際の被検査物の端子へのコンタクト角度が研磨の角度より大きいために、端子表面に対してコンタクトピンの平滑面が平行状態にはならず所定の傾斜角度を以て接触することになり、確実にスクラブをかけることができて端子表面の酸化膜を除去して大きな接触面積を確保でき、凹凸が小さい平滑面によって安定した接触と小さな接触抵抗を得られる。
【0011】
またコンタクトピンが研磨面に対して傾斜する角度は、5°以上で20°未満の範囲に設定されていてもよい。
電気的テストの時のコンタクト角度は通常20°に設定されているから、これより小さい研磨角度を得ることで、コンタクト時に端子表面に対してコンタクトピンの平滑面が平行状態にはならず確実にスクラブをかけることができ、また5°より小さい角度で研磨するとコンタクトプローブを保持するメカニカルパーツが研磨面に接触するおそれが生じる。
またコンタクトピンの研磨面に対する傾斜角度は、5°〜15°の範囲に設定されていてもよい。
被検査物の端子に対するコンタクト角度より5°以上小さい角度とすることで、平滑面による確実なスクラブを達成できる。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図1乃至図4により説明するが、上述の従来技術と同一または同様の部分には同一の符号を用いて説明する。
図1は実施の形態によるコンタクトプローブの先端部分の斜視図、図2は図1に示すコンタクトプローブの全体のA−A線中央縦断面図、図3はコンタクトピンを斜め下方から見た要部斜視図、図4は実施の形態によるコンタクトピンをICチップのパッドにコンタクトさせた状態を示す側面図である。
図1乃至図3に示す実施の形態によるコンタクトプローブ30は、図8に示すコンタクトプローブ1とほぼ同一構成とされ、図1及び図2に示すようにNi基合金等からなる複数本のパターン配線32の上に図示しない接着剤層を介してフィルム3が被着され、フィルム3から突出するパターン配線32の先端部はコンタクトピン32a…とされている。またフィルム3の幅広の基部(図2参照)には窓部4が形成され、この窓部4にはパタ−ン配線32の引き出し配線部34が設けられている。
そして、フィルム3はパターン配線32が被着されたポリイミド等の樹脂フィルム層36にCu,Ni等の金属フィルム層37がグラウンドとして積層されて構成されているが、樹脂フィルム層36だけで構成されていてもよい。
【0013】
コンタクトピン32aは、その長手方向に直交する断面が例えば四角形状とされ、その先端はフィルム3に被着される面につながる上面40と、上面40に対向すると共にパッド18aに接触させられ得る下面41と、上下面40,41間に設けられた側面42とで構成されている。
またコンタクトピン32aの先端は略半円の板状とされているために、側面42の先端部42aは略円柱周面状の凸曲面とされ、下面41の先端は下面41から側面42の先端部42aの途中にかけて研磨によって斜めにカットされて下面41に対して角度αをなす略平面状の平滑面43とされている。
この平滑面43は、図2及び図3で示すようにコンタクトプローブ30がプローブ装置8に装着されて例えば半導体ICチップ18のパッド18aと接触させられる面になる。平滑面43は各コンタクトピン32aそれぞれの下面41から先端部42aにかけて形成され、先端部42aからコンタクトピン32aの長手方向に沿って長さLにわたって研磨されている。平滑面43は下面41の例えば全幅にわたって形成されていることが好ましい。
【0014】
ここで、コンタクトピン32aの平滑面43の長さLは50μm〜150μmの範囲とされている。長さLが50μmより小さいとパッド18aとの接触時に小さく且つ安定した接触抵抗による十分なコンタクト性能を発揮できず、150μmを越えて形成してもパッド18aに接触することはなくコンタクト性能の向上は認められない。従ってこの範囲とすることで接触抵抗を小さく且つ安定して維持できて良好なコンタクト性能を確保できる。
尚、パッド18aの長さ即ちコンタクトピン32aが略スクラブする方向の長さは70〜80μm程度あり、電気的テストに際して図4に示すようにコンタクトピン32aをパッド18aの表面に押圧して摺動するスクラブ長さDは例えば30〜60μm程度あるために、好ましくは平滑面43の長さLは50μm〜100μm程度設けるとよい。このように平滑面43を構成すれば、スクラブによる押圧及び摺動長さ全体にわたって酸化膜が剥がされたパッド18aの領域全体に平滑面43を確実に接触させることができ、広い面積にわたって確実に導通接触を図ることができて接触抵抗を低減できる。
【0015】
次にこのようなコンタクトピン32aの平滑面43の形成方法、即ちコンタクトピン32aの研磨方法について説明する。
図5において、コンタクトピン32aを備えたコンタクトプローブ30が図13に示すコンタクトプローブ1と同様にメカニカルパーツ7に装着された状態で、対向する一対のコンタクトプローブ30,30のコンタクトピン32a,32aはパッド18aの上面即ち水平面に対して所定のコンタクト角度θ(例えばθ=20°)に設定されている。
これに対して研磨治具45が各コンタクトピン32a,32aに対向して配設されており、この研磨治具45は傾斜面をなす基部46上に平面板状の研磨板47が載置されて傾斜状態に支持されている。研磨板47は、各コンタクトピン32aに対向する研磨面47aが水平面に対して傾斜角度γ(例えばγ=10°)に傾斜して位置している。そのため、図5に示す例ではコンタクトピン32aの下面41は研磨面47aに対して研磨角度β(=θーγ:この例ではβ=10°)に設定されている。
【0016】
ここで、研磨板47の研磨面47aとして、セラミック板、研磨紙等を用いるものとし、研磨紙としては例えばエメリー紙やコンタクトピン研磨用の研磨紙等を用いるものとする。また研磨角度βはコンタクト角度θより小さければ良く、コンタクトプローブ30のコンタクト角度θは通常20°に設定されているので、例えば20°未満から5°の範囲とする。5°より小さい研磨角度βに設定するとコンタクトプローブ30を保持するメカニカルパーツ7に研磨面47aが接触するおそれがあり、好ましくない。
また、研磨角度βは好ましくは15°〜5°の範囲に設定する。上限を15°とすれば、コンタクト角度θを20°に設定した時のコンタクトではパッド18aに対して平滑面43のコンタクト角度(=γ)が5°以上となるために確実にスクラブをかけられる。尚、研磨角度βを10°以下に設定すれば、平滑面43のコンタクト角度が10°以上に設定されるので一層好ましい。
しかも研磨により、パッド18aと接触するコンタクトピン32aの下面41の先端付近(針腹面)に製造過程で付着した異物や汚れなどが除去され、更に研磨で製作された平滑面43がより滑らかで平坦化されてパッド18a表面との接触面積が増大する。またコンタクト時に平滑面43のパッド18aに対する入射(接触)角度がより平行に近くなってコンタクト面積が増大する。尚、コンタクト時の平滑面43とパッド18a表面とが完全に平行になってしまうとスクラブしなくなるので、コンタクト角度を確保して研磨することが必要である。
【0017】
このような図5に示す構成のもとで、研磨板47に対してメカニカルパーツ7を相対的に上下動させてコンタクトピン32aを研磨面47aに1回または複数回コンタクトさせれば、研磨面47aに対するコンタクトピン32aの傾斜角度βが(θ−γ)に設定されているために、従来の研磨方法と比較してコンタクトピン32aの下面41に対する研磨面積が大きくコンタクトピン32aの長さ方向に長くなり、先端部42aから長い距離Lにわたる平滑面43が形成されることになる。
尚、研磨板47の配置構成として、図5に示す構成に代えて平面上に凹部を形成して研磨板47の先端部を凹部内に配置させることで角度γに傾斜配置してもよい。また、図5に示すプローブ装置8において対向する二枚のコンタクトプローブ30の各コンタクトピン32aに対して二枚の研磨板47を略V字状をなすように対向させてそれぞれ角度γに傾斜配置させ、対向する二枚のコンタクトプローブ30の各コンタクトピン32aを同時に研磨しても良い。
尚、別の研磨方法として、図6に示す方法を用いても良い。
即ち、研磨板49を水平面上に配置し、この研磨板49に対してコンタクトプローブ30のコンタクトピン32aを研磨角度βに配設して、研磨板49に対してコンタクトピン32aを角度βの傾斜状態に維持したまま上下方向に相対移動させて1または複数回コンタクトさせることで、下面42の先端側を研磨して平滑面43を形成する。このようにして平滑面43を形成してもよい。
その際、コンタクトプローブ30はメカニカル7に装着するのではなくて図示しない研磨用の治具に保持させて研磨角度βを確保し研磨することができる。
この場合、平滑面43は研磨板49とほぼ平行になるが、コンタクト角度θが研磨角度βより大きいのでスクラブをかけられる。
【0018】
本実施の形態によるコンタクトプローブ30は上述のように構成されており、次にその作用を説明する。
図4において、図9及び図10に示すものと同様にメカニカルパーツ7にコンタクトプローブ30が装着され、パターン配線32の配線引き出し部5がボトムクランプ14によってプリント基板10の電極16に押圧されて通電させられている。各コンタクトピン32aはICチップ18の各パッド18a表面に対してコンタクト角度θを以て傾斜配置されることになる。
この状態で、オーバードライブをかけてコンタクトピン32aに対してパッド18aを相対移動させて、平滑面43をパッド18a表面に押圧接触させつつ摺動させてスクラブをかければ、平滑面43(と先端部42aとの交差稜線である先端部43a)でパッド18a表面のアルミ酸化膜を剥離させることができ、しかも平滑面43の長さLにわたる長い範囲で平滑面43をアルミ酸化膜が剥がれたパッド18a表面と面接触させることができる。
これによって接触抵抗を低減し接触抵抗のバラツキを抑えて安定したコンタクト性能を確保できる。
【0019】
上述のように本実施の形態によれば、平滑面43がコンタクトピン32aの先端部42aから50μm〜150μmの範囲の長さにわたって形成されていることで、スクラブをかけてコンタクトピン32aの平滑面43を従来のものより長い範囲にわたって確実にパッド18a表面に面接触させることができ、各コンタクトピン32aにおいて接触抵抗が小さくなると共に安定した接触が得られ、ICチップ18等の被検査物の電気的テストを的確且つ正確に行うことができる。
【0020】
次に本実施の形態の実施例について説明する。
実施例として、コンタクトピン32aの平滑面43の長さLを100μmに設定した。また比較例として同じく平滑面の長さLaを10μmに設定した。そして、実施例と比較例のコンタクトピンをそれぞれ40サンプル製作して、それぞれをNo.1〜40とした。コンタクト対象物としてアルミニウム合金製のパッドを用い、このパッドと各サンプルのコンタクトピンを備えたパターン配線、そしてプリント基盤の回路を介してテスターに接続し、テスターで各回路の電気抵抗を測定した。
この場合、パッドとコンタクトピンとの接触抵抗のみを測定できないが、テスターやプリント基板の回路は同一のものを用いたので、各測定値間で全体の抵抗値に差異は生じることはなく、またパターン配線自体も各サンプルで同形同大、同一材質、同一断面積となっているために抵抗値の差異は生じない。従って各サンプルの測定された回路抵抗値の差異はコンタクトピンの平滑面とパッドとの接触抵抗値の差異として表れることになる。
【0021】
実施例と比較例の各サンプルNo.1〜40の測定された回路抵抗値は図7に示す表1のようになった。
この表1において、各サンプルNo.1〜40の正規分布において、実施例では最大値(max)1.6Ω、最小値(min)1.45Ω、平均(ave)1.51Ω、分散σ2のσは0.03となった。
これに対して比較例では最大値2.62Ω、最小値1.54Ω、平均1.77Ω、σは0.23となった。
これらの結果から、実施例では接触抵抗値が小さい上に各測定値のバラツキが非常に少なく、安定した小さい接触抵抗値が得られた。
【0022】
【発明の効果】
上述のように本発明に係るコンタクトプローブは、コンタクトピンの被検査物へ接触する面が平滑面とされ、この平滑面はコンタクトピンの先端部から長手方向に沿って前記コンタクトピンが前記パッドの表面上を摺動するスクラブ長さより長く形成されているから、コンタクトピンにオーバードライブをかけたスクラブ時に、酸化膜や吸着物を剥がしてコンタクトピンの平滑面を従来のものより長い範囲にわたって確実に被検査物の端子表面に接触させることができ、各コンタクトピンにおいて接触抵抗が小さくなると共に安定した接触が得られ、被検査物の電気的テストを的確且つ正確に行うことができる。
また、平滑面はコンタクトピンの先端から長手方向に沿って50μmを超えて150μmまでの長さにわたって形成されており、150μm以上平滑面を形成しても端子への接触が行われないので無駄になる。
【0023】
本発明に係るコンタクトプローブは、前記平滑面の前記一面に対して傾斜している研磨角度は、前記コンタクトピンの前記パッドへ接触するコンタクト角度より小さくしたから、研磨された平滑面が研磨面と略平行になっても、電気的テストの際の被検査物の端子へのコンタクト角度が研磨角度より大きいために、端子表面に対してコンタクトピンの平滑面が平行状態にはならず所定のコンタクト角度を以て接触して確実にスクラブをかけることができて端子表面の酸化膜や吸着物を除去して接触面積を大きく確保でき、安定した接触と小さな接触抵抗を得られる。
しかも研磨により、端子表面と接触するコンタクトピンの平滑面に付着した異物や汚れなどが除去されると共に平滑面がより滑らかで平坦化されて端子表面との接触面積が増大する。また端子表面に接触する平滑面の針入射角度がより平行に近くなってコンタクト面積が増大する。
【0024】
またコンタクトピンの研磨面に対する傾斜角度は、5°以上で20°未満の範囲に設定されているから、電気的テストの際のコンタクト時に端子表面に対してコンタクトピンの平滑面が平行状態にはならず確実にスクラブをかけることができ、また傾斜角度を5°以上としたのでコンタクトプローブを保持するメカニカルパーツ等が研磨面に接触するおそれがない。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施の形態によるコンタクトプローブの先端部分の斜視図である。
【図2】 図1に示すコンタクトプローブ全体のA−A線中央縦断面図である。
【図3】 実施の形態によるコンタクトプローブのコンタクトピンの部分を下面方向から見た斜視図である。
【図4】 図3に示すコンタクトピンをICチップのパッドにコンタクトさせてスクラブをかけた状態の側面図である。
【図5】 実施の形態によるコンタクトプローブのコンタクトピンを研磨して平滑面を形成する研磨方法を示す説明図である。
【図6】 図5による研磨方法とは別の研磨方法を示す要部側面図である。
【図7】 実施例と比較例によるコンタクトピンとパッドとの接触状態における回路抵抗値を示す測定データの図表である。
【図8】 従来のコンタクトプローブの平面図である。
【図9】 プローブ装置の分解斜視図である。
【図10】 図9に示すプローブ装置の要部縦断面図である。
【図11】 従来のコンタクトプローブのコンタクトピンを斜め下方から見た斜視図である。
【図12】 従来のコンタクトピンとICチップのパッドとの接触及びスクラブ状態を示す側面図である。
【図13】 従来のコンタクトピンの研磨方法を示す説明図である。
【図14】 従来のコンタクトピンの研磨方法の別の例を示す側面図である。
【符号の説明】
3 フィルム
30 コンタクトプローブ
32 配線パターン
32a コンタクトピン
43 平滑面
47,49 研磨板
47a 研磨面
Claims (4)
- フィルムが被着された複数のパターン配線の各先端が前記フィルムから突出してコンタクトピンとされ、前記コンタクトピンを被検査物のパッドの表面上に押圧して摺動させ前記パッドに接触させるコンタクトプローブにおいて、
前記コンタクトピンの前記パッドへ接触する側の一面がその先端側で研磨されて平滑面とされ、この平滑面は前記一面に対して傾斜していると共にコンタクトピンの先端部から長手方向に沿って前記コンタクトピンが前記パッドの表面上を摺動するスクラブ長さより長く形成されていることを特徴とするコンタクトプローブ。 - 前記平滑面はコンタクトピンの先端部から長手方向に沿って50μmを超えて150μmまでの長さにわたって形成されていることを特徴とする請求項1記載のコンタクトプローブ。
- 前記コンタクトピンは、前記長手方向に直交する断面が四角形状とされ、
前記先端部は、略半円の板状であって、略円柱周面状の凸曲面の側面を有し、
前記平滑面の前記一面に対して傾斜している研磨角度は、前記コンタクトピンの前記パッドへ接触するコンタクト角度より小さいことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のコンタクトプローブ。 - フィルムが被着された複数のパターン配線の各先端が前記フィルムから突出してコンタクトピンとされ、前記コンタクトピンを被検査物のパッドの表面上に押圧して摺動させ前記パッドに接触させるコンタクトプローブの製造方法において、
前記コンタクトピンの前記パッドへ接触する側の一面をその先端側で研磨して平滑面とし、この平滑面は前記一面に対して傾斜していると共にコンタクトピンの先端部から長手方向に沿って前記コンタクトピンが前記パッドの表面上を摺動するスクラブ長さより長く形成することを特徴とするコンタクトプローブの製造方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP18826199A JP4210002B2 (ja) | 1999-07-01 | 1999-07-01 | コンタクトプローブ及びコンタクトピンの研磨方法 |
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JP18826199A JP4210002B2 (ja) | 1999-07-01 | 1999-07-01 | コンタクトプローブ及びコンタクトピンの研磨方法 |
Publications (2)
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