JP4208462B2 - 界面活性剤 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、分岐の脂肪族炭化水素基、2級の脂肪族炭化水素基又は分岐の脂肪族アシル基を有する反応性の界面活性剤、及びその具体的用途に関する。
【0002】
【従来の技術】
界面活性剤は、乳化、分散、洗浄、湿潤、起泡等の幅広い性能を有している。それらの諸性能を利用して、従来から繊維をはじめとし、紙、ゴム、プラスチック、金属、塗料、顔料、土木建築等のあらゆる分野に利用されている。特に最近は界面活性剤を使用した末端商品の高性能化への動きが活発化してきており、それに伴って、界面活性剤が有する副次的な欠点も指摘されている。
【0003】
例えば、界面活性剤は、塗料、印刷インキ、接着剤等ではその製品の製造時、或いは製品の安定化、更には作業性等の点で欠かすことができない成分として製品中に含有されている。それら界面活性剤を含む製品が、塗布、印刷或いは接着、粘着等の作業で現実に使用される場合は、本来、界面活性剤は不要であり、むしろ存在している界面活性剤によって、塗膜、印刷面、接着皮膜等の耐水性、耐油性等の性能を悪化させる場合が多い。
【0004】
また、乳化重合によってポリマーを製造する際に使用される乳化重合用乳化剤は、重合の開始反応や生成反応に関与するだけでなく、生成したエマルジョンの機械安定性、化学的安定性、凍結安定性及び貯蔵安定性等にも関与し、更にエマルジョンの粒子径、粘性及び起泡性等のエマルジョン物性、フィルム化した時の耐水性、耐候性、接着性、耐熱性等のフィルム物性にも大きな影響を及ぼすことが知られている。この場合の問題点として、存在している乳化剤により、乳化重合したエマルジョンの泡立ちが多くなること、接着性、耐水性、耐候性、耐熱性等のフィルム物性の低下等が指摘されている。また、懸濁重合によって製造されたポリマーにおいても、懸濁重合用分散剤による同様の現象が指摘されている。
【0005】
これらの問題は、界面活性剤がポリマー中にフリーで残存することに起因するものである。フリーの界面活性剤を減らす方法として、重合時又は成形時にポリマーと反応して結合してしまいポリマー中にフリーで残存しないような界面活性剤、いわゆる反応性界面活性剤(重合性界面活性剤とも言う)が開発されている。
【0006】
反応性界面活性剤については多くの構造が提案されているが、その疎水基に注目すると、例えば、特公昭49−46291号公報では、炭化水素基を有するスルホコハク酸エステル;特開昭62−100502号公報、特開昭63−23725号公報、特開平4−50202号公報、及び特開平4−50204号公報等では、アリル基又はプロペニル基を有する炭化水素置換フェノールのアルコキシレート;特開昭62−104802号公報等では、炭化水素基又はアシル基を有するグリセリン誘導体のアルコキシレート;特開昭62−11534号公報では、ホルムアルデヒドで架橋した(置換)フェノールの誘導体;特開昭63−319035号公報、特開平4−50204号公報等では、疎水基としてα−オレフィンオキシド由来のアルキル基等が挙げられる。尚、以上の従来技術では、炭化水素基とは、アルキル基、アルケニル基、アリール基等を含んでいる。
【0007】
こうした反応性界面活性剤の中でも、疎水基としてフェニルエーテル基を有する反応性界面活性剤は、乳化性、分散性、重合安定性等が優れているために、多く使用されている。
しかし、近年、ノニルフェノールが生物に対し擬似ホルモン作用を発現し内分泌系を撹乱する作用があるのではないかという、いわゆるエンドクリン問題の懸念が浮上し、フェニルエーテル基を有する反応性界面活性剤についても代替品が模索されている。しかし、フェニルエーテル基以外の疎水基、例えば、通常のアルキル基、アルケニル基等を有する反応性界面活性剤は、フェニルエーテル基を有する反応性界面活性剤よりも性能が劣るという欠点があった。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
従って、本発明の目的は、上記した従来の問題点を解決し、環境に対する影響が大きいとされるノニルフェニル基等のフェニルエーテル基を含有せず、フェニルエーテル基を含有する反応性界面活性剤と同等の性能を有する界面活性剤を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
そこで本発明者らは鋭意検討し、疎水基として分岐の脂肪族炭化水素基又は分岐の脂肪族アシル基を有する反応性界面活性剤が、(置換)フェニルエーテル基を有する反応性界面活性剤と同等の性能を有し、しかも環境に対する悪影響がほとんどないことを見い出し本発明を完成させた。即ち、本発明は、下記の一般式(1)
[(式中、R1は炭素数8〜36であり、且つ、3個以上のメチル基を有する分岐脂肪族炭化水素基又は分岐の脂肪族アシル基を表わし、AO及びAO’は炭素数2〜4のオキシアルキレン基を表わし、Lは下記の一般式(2)で表わされる基を表わし、zは1〜10の数を表わし、Xは水素原子又は下記のアニオン性親水基又はカチオン性親水基を表わし、mは0〜1,000の数を表わし、nは0〜1,000の数を表わす。)
(式中、R2及びR3は水素原子又はメチル基を表わし、xは0〜12の数を表わし、yは0又は1の数を表わす。)
アニオン性親水基:−SO 3 M、−R 4 −SO 3 M、−R 5 −COOM、−PO 3 M 2 、−PO 3 MH又は−CO−R 6 −COOM(式中、Mは水素原子、アルカリ金属原子、アルカリ土類金属原子又はアンモニウム(但し、アルカリ土類金属原子は1/2)を表わし、R 4 及びR 5 はアルキレン基を表わし、R 6 は2塩基酸又はその無水物からカルボキシル基を除いた残基を表わす。)
カチオン性親水基:−R 7 −NR 8 R 9 R 10 ・Y、又は−Z−NR 8 R 9 R 10 ・Y
(式中、R 7 はアルキレン基を表わし、R 8 〜R 10 は炭素数1〜4のアルキル基、炭素数2〜4のアルカノール基又はベンジル基を表わし、Yはハロゲン原子又はメチル硫酸基を表わし、Zは−CH 2 CH(OH)CH 2 −又は−CH(CH 2 OH)CH 2 −で表わされる基を表わす。)]
で表わされる界面活性剤である。
また、本発明は、一般式(1)で表わされる界面活性剤からなる乳化重合用乳化剤、懸濁重合用分散剤、又は樹脂改質剤である。
【0010】
【発明の実施の形態】
次に、本発明の実施の形態を挙げて、本発明を詳細に説明する。
一般式(1)において、R1は分岐脂肪族炭化水素基又は分岐の脂肪族アシル基を表わす。分岐脂肪族炭化水素基は、対応する分岐脂肪族アルコールの残基である。
【0011】
このような分岐脂肪族アルコールとしては、例えば、イソブチルアルコール、ターシャリブチルアルコール、イソペンチルアルコール、ネオペンチルアルコール、ターシャリペンチルアルコール、イソヘキサノール、2−メチルペンタノール、イソヘプタノール、イソオクタノール、2−エチルヘキサノール、イソノナノール、3,4,4−トリメチルヘキサノール、イソデカノール、2−プロピルヘプタノール、イソウンデカノール、イソドデカノール、2−ブチルオクタノール、イソトリデカノール、イソテトラデカノール、イソミリスチルアルコール、2−ペンチルノナノール、イソペンタデカノール、イソヘキサデカノール、イソパルミチルアルコール、2−ヘキシルデカノール、イソヘプタデカノール、イソオクタデカノール、イソステアリルアルコール、2−ヘプチルウンデカノール、イソノナデカノール、イソエイコサノール、2−オクチルドデカノール、2−ノニルトリデカノール、2−デシルテトラデカノール、2−ウンデシルペンタデカノール、2−ドデシルヘキサデカノール、2−トリデシルヘプタデカノール、2−テトラデシルオクタデカノール、2−ペンタデシルノナデカノール、2−ヘキサデシルエイコサノール、1,1−ジメチル−2−プロペノール、3−メチル−3−ブテノール、3−メチル−2−ブテノール、イソヘキセノール、イソヘプテノール、イソオクテノール、イソノネノール、イソデセノール、イソウンデセノール、イソドデセノール、イソトリデセノール、イソテトラデセノール、イソペンタデセノール、イソヘキサデセノール、イソヘプタデセノール、イソオクタデセノール、イソオレイルアルコール、イソノナデセノール、イソエイコセノール等が挙げられる。
【0013】
また、分岐の脂肪族アシル基は、対応する分岐の脂肪酸の残基である。分岐の脂肪酸としては、例えば、イソブタン酸、イソペンタン酸、ネオペンタン酸、イソヘキサン酸、2−メチルペンタン酸、ネオヘキサン酸、イソヘプタン酸、ネオヘプタン酸、イソオクタン酸、2−エチルヘキサン酸、ネオオクタン酸、イソノナン酸、3,4,4−トリメチルヘキサン酸、ネオノナン酸、イソデカン酸、2−プロピルヘプタン酸、ネオデカン酸、イソウンデカン酸、イソドデカン酸、2−ブチルオクタン酸、イソトリデカン酸、イソテトラデカン酸、イソミリスチン酸、2−ペンチルノナン酸、イソペンタデカン酸、イソヘキサデカン酸、イソパルミチン酸、2−ヘキシルデカン酸、イソヘプタデカン酸、イソオクタデカン酸、イソステアリン酸、2−ヘプチルウンデカン酸、イソノナデカン酸、イソエイコサン酸、2−オクチルドデカン酸、2−ノニルトリデカン酸、2−デシルテトラデカン酸、2−ウンデシルペンタデカン酸、2−ドデシルヘキサデカン酸、2−トリデシルヘプタデカン酸、2−テトラデシルオクタデカン酸、2−ペンタデシルノナデカン酸、2−ヘキサデシルエイコサン酸、イソオレイン酸等が挙げられる。
【0014】
こうした分岐脂肪族炭化水素基及び分岐の脂肪族アシル基は、炭素数が8〜36のものであり、10〜28のものがより好ましい。また、分岐数の多いものほど、一般式(1)で表わされる界面活性剤の乳化性、分散性、重合安定性等が向上するので好ましく、特に、分子内に3個以上のメチル基を有するものである。このような多数の分岐を有する炭化水素基又はアシル基の中には、例えば、市販のイソトリデカノールのように、多数の構造異性体の混合物の場合もあり、これらはH1−NMR等の分光化学的分析方法により、分子内のメチル基の数を測定することができる。
【0015】
一般式(1)において、(AO)m及び(AO’)nの部分は、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、テトラヒドロフラン(1,4−ブチレンオキシド)等の炭素数2〜4のアルキレンオキシドを付加重合する等の方法により得ることができる。(AO)m及び(AO’)nが、アルキレンオキシドの付加重合により形成される場合は、付加させるアルキレンオキシド等によりAO及びAO’が決定する。付加させるアルキレンオキシド等の重合形態は限定されず、1種類のアルキレンオキシドの単独重合、2種類以上のアルキレンオキシドのランダム共重合、ブロック共重合又はランダム/ブロック共重合等であってよい。重合度mは0〜1,000の範囲の数であり、Xが水素原子の場合は好ましくは1〜200、より好ましくは3〜100、更に好ましくは10〜50である。Xがイオン性親水基の場合は、重合度mは好ましくは1〜200、より好ましくは2〜100、更に好ましくは2〜50である。
【0016】
AOとしては、オキシエチレン基が最も好ましい。AOが2種以上の基である場合は、1種はオキシエチレン基であることが好ましく、(AO)mの部分は、好ましくはオキシエチレン基を50〜100モル%、より好ましくは60〜100モル%含有するポリオキシアルキレン鎖であると良い。
【0017】
AO’は、R1 が炭素数8〜10程度の分岐脂肪族炭化水素基又は分岐の脂肪族アシル基の場合は、AO’は、炭素数3又は4のオキシアルキレン基であることが好ましい。重合度nは、0〜1,000の範囲の数であり、好ましくは0〜100、より好ましくは0〜50、更に好ましくは0〜30であり、特に、R1が炭素数8〜10程度の分岐脂肪族炭化水素基又は分岐の脂肪族アシル基の場合は、重合度nは2〜30が好ましい。一般式(1)で表わされる界面活性剤は、m及びnの数により親水性乃至疎水性を調整することができ、用途に応じて適切な重合度とすることが好ましい。
【0018】
また、一般式(1)において、Lは、下記一般式(2)で表わされる基を表わす。一般式(2)で表わされる基は、本発明の界面活性剤における反応基である。
R2及びR3は水素原子又はメチル基を表し、xは0〜12の数を表わし、yは0又は1の数を表わす。
【0019】
一般式(2)で表わされる基としては、例えば、ビニル、1−プロペニル、アリル、メタリル、2−ブテニル、3−ブテニル、4−ペンテニル、3−メチル−3−ブテニル、5−ヘキセニル、8−ノネニル、10−ドデセニル等のアルケニル基;アクリル、メタクリル、2−ブテノイル、3−メチル−3−ブテノイル、2−ドデセノイル等の不飽和アシル基が挙げられる。これらの中でも、原料の入手の容易さや反応性から、アリル、メタリル、アクリル及びメタクリルが好ましい。また、一般式(2)で表わされる基は、他のラジカル重合性の反応基と共重合(ラジカル重合又はイオン重合)することができる。また、Si−H基を有するオルガノポリシロキサンのように、重合性の反応基以外の基を有する化合物とも反応させることができる。
【0020】
一般式(1)において、zは1〜10の数を表わす。製造方法等によっては、zが異なるものの混合物となる場合があるが、混合物である場合にはzは平均値を表わす。zが1に近い数であるほど、本発明の界面活性剤の乳化性、分散性、重合安定性等が向上する傾向がある。このため、乳化性、分散性、重合安定性等を重視する場合には、zは1〜8の数が好ましく、1〜5の数が更に好ましく、1〜3の数が最も好ましい。
【0021】
一方、zが1よりも大きい数の場合には、本発明の界面活性剤を用いた乳化重合若しくは懸濁重合により得られた樹脂の、耐水性や機械的強度が向上する傾向がある。尚、zが10よりも大きい数の場合には、乳化重合若しくは懸濁重合における重合安定性等が低下し、例えば、重合反応中の凝集物が発生し易くなる。従って、樹脂の耐水性や機械的強度を重視する場合には、zが1よりも大きい数であることが好ましく、本発明の界面活性剤が、zが1であるものとzが2以上のものとの混合物である場合には、zが平均で1.1〜8であることが好ましい。
【0022】
一般式(1)において、Xは水素原子又はイオン性親水基を表わす。イオン性親水基としては、アニオン性親水基、カチオン性親水基が挙げられる。このうちアニオン性親水基としては、−SO3M、−R4−SO3M、−R5−COOM、−PO3M2、−PO3MH又は−CO−R6−COOMで表わされる基が挙げられる。
【0023】
上記のアニオン性親水基を表わす式中、Mは、水素原子、リチウム、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属原子;マグネシウム、カルシウム等のアルカリ土類金属原子(但し、アルカリ土類金属原子は通常2価であるから、1/2);又はアンモニウムを表わす。アンモニウムとしては、例えば、アンモニアのアンモニウム、モノメチルアミン、ジプロピルアミン等のアルキルアミンのアンモニウム又はモノエタノ−ルアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアルカノールアミンのアンモニウム等が挙げられる。
R4及びR5は、メチレン、エチレン、プロピレン、ブチレン、ペンテン、ペンタメチレン、ヘキサメチレン等のアルキレン基を表わす。なかでも原料の都合から、メチレン、エチレン、プロピレン、ブチレン等の炭素数1〜4のアルキレン基が好ましい。
【0024】
R6は、二塩基酸又はその無水物からカルボキシル基を除いた残基である。二塩基酸としては、例えば、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、トリデカン二酸、テトラデカン二酸等の飽和脂肪族ジカルボン酸;シクロペンタンジカルボン酸、ヘキサヒドロフタル酸、メチルヘキサヒドロフタル酸等の飽和脂環族ジカルボン酸;フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、トリレンジカルボン酸、キシリレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸;マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、メサコン酸等の不飽和脂肪族ジカルボン酸;テトラヒドロフタル酸、メチルテトラヒドロフタル酸、ナジック酸(エンドメチレンテトラヒドロフタル酸)、メチルナジック酸、メチルブテニルテトラヒドロフタル酸、メチルペンテニルテトラヒドロフタル酸等の不飽和脂環族ジカルボン酸等が挙げられる。これらは製造段階では無水物の形で用いられてもよい。
こうした、アニオン性親水基の中でも、−SO3M、−PO3M2又は−PO3MHで表わされる基が好ましい。
【0025】
また、Xはカチオン性親水基でもよい。カチオン性親水基としては、−R7−NR8R9R10・Y、又は−Z−NR8R9R10・Yで表わされる基が挙げられる。上記のカチオン性親水基を表わす式中、Yはハロゲン原子又はメチル硫酸基(−CH3SO4)を表わす。ハロゲン原子としては、塩素原子、臭素原子、よう素原子等が挙げられる。また、R7は炭素数1〜4のアルキレン基を表わす。炭素数1〜4のアルキレン基としては、例えば、上記アニオン親水基のR4で挙げたのと同様のアルキレン基を挙げることができる。
【0026】
R8、R9及びR10は、それぞれ独立に、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数2〜4のアルカノール基又はベンジル基を表わす。炭素数1〜4のアルキル基としては、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、2級ブチル、ターシャリブチル等が挙げられる。また、炭素数2〜4のアルカノール基としては、2−ヒドロキシエチル基、2−ヒドロキシプロピル基、2−ヒドロキシブチル基等が挙げられる。また、Zは−CH2CH(OH)CH2−又は−CH(CH2OH)CH2−で表わされる基である。
【0027】
一般式(1)で表わされる界面活性剤の製造方法は、特に限定されない。例えば、Xが水素原子の場合は、(a)一般式(2)で表わされる反応基を有するグリシジルエーテル若しくはグリシジルエステルと、分岐の脂肪族アルコール、2級脂肪族アルコール又は分岐の脂肪酸等との反応物に、公知の方法でmモルのアルキレンオキシドを付加することにより得ることができる。或いは、(b)分岐の脂肪族アルコール又は2級脂肪族アルコールのグリシジルエーテル若しくは分岐の脂肪酸のグリシジルエステルと、一般式(2)で表わされる反応基を有するアルコール若しくはカルボン酸との反応物に、公知の方法でmモルのアルキレンオキシドを付加することによっても得ることができる。グリシジルエーテル又はグリシジルエステルと、アルコール又はカルボン酸との反応の完了を確認するには、例えば、IR吸収、エポキシ当量等を測定すれば終点を確認することできる。尚、前記(a)の製造方法において、一般式(2)で表わされる反応基を有するグリシジルエーテル若しくはグリシジルエステルと、分岐の脂肪族アルコール、2級脂肪族アルコール又は分岐の脂肪酸等との反応物中に、未反応の分岐の脂肪族アルコール、2級脂肪族アルコール又は分岐の脂肪酸が残存している場合には、必要に応じて、これらの未反応物を除去精製してからアルキレンオキシドを付加してもよい。
【0028】
また、上記製造に当たっては必要に応じて触媒を使用することができる。使用できる触媒は、エポキシの開環反応に使用するものであれば特に限定されない。例えば、第3級アミン、第4級アンモニウム塩、三フッ化ホウ素又はそのエーテル錯塩、塩化アルミニウム、酸化バリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等が挙げられる。
【0029】
アルキレンオキシドを付加させる際の反応条件は、特に制限されない。通常は、室温〜150℃、圧力0.01〜1MPaで、必要ならば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、三フッ化ホウ素等を触媒として使用できる。Xがイオン性親水基の場合は、上記反応で得られた化合物に更にイオン性親水基の導入反応を行う。
【0030】
イオン性親水基を表わす式中、−SO3Mで表わされるアニオン性親水基を導入するために硫酸エステル化する場合は、アニオン性親水化剤として、例えば、スルファミン酸、硫酸、無水硫酸、発煙硫酸、クロロスルホン酸等を使用することができる。硫酸エステル化する場合の反応条件は、特に限定されないが、通常温度は室温〜150℃、圧力は常圧〜0.5MPa程度の加圧下、反応時間は1〜10時間程度である。
【0031】
イオン性親水基を表わす式中、−R4−SO3Mで表わされるアニオン性親水基を導入する場合は、アニオン性親水化剤として、例えば、プロパンサルトン、ブタンサルトン等を使用することができる。スルホン酸化する場合の反応条件は、特に限定されないが、通常温度は室温〜100℃、圧力は常圧〜0.5MPa程度の加圧下、反応時間は1〜10時間程度である。必要に応じて、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリを触媒として使用してもよい。また、必要に応じて、溶剤を加えてもよい。
【0032】
イオン性親水基を表わす式中、−R5−COOMで表わされるアニオン性親水基を導入するためにカルボン酸化する場合は、アニオン親水化剤としては、例えばクロロ酢酸(R5がメチル基に相当)、クロロプロピオン酸(R5がエチル基に相当)又はこれらの塩等を使用することができる。カルボン酸化する場合の反応条件は、特に限定されないが、通常、温度は室温〜150℃、圧力は常圧〜0.5MPa程度の加圧下、反応時間は1〜10時間程度である。必要に応じて、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリを触媒として使用してもよい。
【0033】
イオン性親水基を表わす式中、−PO3M2又は−PO3MHで表わされるアニオン性親水基を導入するためにリン酸エステル化する場合は、アニオン親水化剤としては、例えば、五酸化二リン、ポリリン酸、オルトリン酸、オキシ塩化リン等を使用することができる。リン酸化する場合には、モノエステル型の化合物とジエステル型の化合物が混合体として得られるが、これらは分離してもよいし、分離が難しい場合はそのまま混合物として使用してもよい。リン酸エステル化する場合の反応条件は、特に限定されないが、通常、温度は室温〜150℃、圧力は常圧、反応時間は1〜10時間程度である。
【0034】
イオン性親水基を表わす式中、−CO−R6−COOMで表わされるアニオン性親水基を導入するために二塩基酸化する場合は、アニオン親水化剤としては、前述した二塩基酸又はその無水物等が使用できる。例えば、マレイン酸(R6がCH=CH基に相当)、フタル酸(R6がフェニル基に相当)又はこれらの塩若しくはこれらの無水物等が挙げられる。二塩基酸化する場合の反応条件は、特に限定されないが、通常、温度は室温〜150℃、圧力は常圧、反応温度は1〜10時間程度である。必要に応じて、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリを触媒として使用してもよい。
また、アニオン性親水化を行った場合は、その後に水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ、アンモニア、アルキルアミン又はモノエタノールアミン、ジエタノールアミン等のアルカノールアミン等で中和を行ってもよい。
【0035】
イオン性親水基を表わす式中、−R7−NR8R9R10・Yで表わされるカチオン性親水基を導入する場合は、まず、塩化チオニル、臭化チオニル、ホスゲン等のハロゲン化剤により、Xが水素原子である一般式(1)で表わされる化合物の水酸基をハロゲン化し、その後、3級アミン化合物を反応させることにより導入することができる。また、3級アミン化合物の代わりに2級アミン化合物を反応させた後に、ハロゲン化アルキル、硫酸ジメチル等を反応させてもよい。水酸基をハロゲン化する場合の反応条件は、特に限定されないが、通常、温度は室温〜100℃、圧力は常圧〜0.5MPa程度の加圧下、反応温度は1〜10時間程度である。また、アミノ化する場合の反応条件も、特に限定されないが、通常、温度は室温〜150℃、圧力は常圧〜0.5MPa程度の加圧下、反応温度は1〜10時間程度である。必要に応じて、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリを触媒として使用してもよい。
【0036】
イオン性親水基を表わす式中、−Z−NR8R9R10・Yで表わされるカチオン性親水基を導入する場合は、まず、エピクロロヒドリン、エピブロモヒドリン等のエピハロヒドリンを、Xが水素原子である一般式(1)で表わされる化合物に反応させ、その後、更に3級アミン化合物を反応させることにより導入することができる。また、3級アミン化合物の代わりに2級アミン化合物を反応させた後に、ハロゲン化アルキル、硫酸ジメチル等を反応させてもよい。エピハロヒドリンを反応させる場合の反応条件は、特に限定されないが、通常、温度は室温〜100℃、圧力は常圧〜0.3MPa程度の加圧下、反応温度は1〜10時間程度である。必要に応じて、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ触媒、又は硫酸、リン酸、塩化鉄、フッ化ホウ素、塩化スズ等の酸触媒を使用してもよい。また、アミノ化する場合の反応条件も、特に限定されないが、通常、温度は室温〜150℃、圧力は常圧〜0.5MPa程度の加圧下、反応温度は1〜10時間程度である。必要に応じて、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリを触媒として使用してもよい。
【0037】
本発明の界面活性剤は、従来、フェニルエーテル基を有する反応性界面活性剤が用いられてきた用途、即ち、乳化重合用乳化剤、懸濁重合用分散剤、樹脂用改質(撥水性向上、親水性調節、相溶性向上、帯電防止性向上、防曇性向上、耐水性向上、接着性向上、染色性向上、造膜性向上、耐候性向上、耐ブロッキング性向上等)剤、繊維加工助剤、無滴剤、繊維防汚加工剤等に使用することができる。また、共重合型界面活性剤(例えば、特開平10−120712号等に記載されている。)の原料や界面活性剤変性オルガノポリシロキサン(例えば、特開平6−65379号等に記載されている。)の原料としても使用することができる。
【0038】
本発明の界面活性剤を乳化重合用乳化剤として使用する場合は、従来公知の乳化重合用乳化剤の通常の使用量の範囲で任意に使用することができるが、概ね原料モノマーに対して、好ましくは0.1〜20質量%、更に好ましくは0.2〜10質量%使用することができる。また、本発明の乳化重合用乳化剤と他の反応性又は非反応性乳化剤との併用も可能である。また、乳化重合するモノマーに特に制限はないが、好ましくは、アクリレート系エマルジョン、スチレン系エマルジョン、酢酸ビニル系エマルジョン、SBR(スチレン/ブタジエン)エマルジョン、ABS(アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン)エマルジョン、BR(ブタジエン)エマルジョン、IR(イソプレン)エマルジョン、NBR(アクリロニトリル/ブタジエン)エマルジョン等に使用することができる。
【0039】
アクリレート系エマルジョンとしては、例えば、(メタ)アクリル酸(エステル)同士、(メタ)アクリル酸(エステル)/スチレン、(メタ)アクリル酸(エステル)/酢酸ビニル、(メタ)アクリル酸(エステル)/アクリロニトリル、(メタ)アクリル酸(エステル)/ブタジエン、(メタ)アクリル酸(エステル)/塩化ビニリデン、(メタ)アクリル酸(エステル)/アリルアミン、(メタ)アクリル酸(エステル)/ビニルピリジン、(メタ)アクリル酸(エステル)/アルキロールアミド、(メタ)アクリル酸(エステル)/N,N―ジメチルアミノエチルエステル、(メタ)アクリル酸(エステル)/N,N−ジエチルアミノエチルビニルエーテル等が挙げられる。
【0040】
スチレン系エマルジョンとしては、スチレン単独の他、例えば、スチレン/アクリロニトリル、スチレン/ブタジエン、スチレン/フマルニトリル、スチレン/マレインニトリル、スチレン/シアノアクリル酸エステル、スチレン/酢酸フェニルビニル、スチレン/クロロメチルスチレン、スチレン/ジクロロスチレン、スチレン/ビニルカルバゾール、スチレン/N,N−ジフェニルアクリルアミド、スチレン/メチルスチレン、アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン、スチレン/アクリロニトリル/メチルスチレン、スチレン/アクリロニトリル/ビニルカルバゾール、スチレン/マレイン酸等が挙げられる。
【0041】
酢酸ビニル系エマルジョンとしては、酢酸ビニル単独の他、例えば、酢酸ビニル/スチレン、酢酸ビニル/塩化ビニル、酢酸ビニル/アクリロニトリル、酢酸ビニル/マレイン酸(エステル)、酢酸ビニル/フマル酸(エステル)、酢酸ビニル/エチレン、酢酸ビニル/プロピレン、酢酸ビニル/イソブチレン、酢酸ビニル/塩化ビニリデン、酢酸ビニル/シクロペンタジエン、酢酸ビニル/クロトン酸、酢酸ビニル/アクロレイン、酢酸ビニル/アルキルビニルエーテル等が挙げられる。
【0042】
本発明の界面活性剤を懸濁重合用分散剤として使用する場合は、従来公知の懸濁重合用分散剤の通常の使用量の範囲で任意に使用することができるが、概ね原料モノマーに対して、好ましくは0.1〜20質量%、更に好ましくは0.2〜10質量%使用することができる。また、本発明の懸濁重合用分散剤と他の反応性又は非反応性分散剤、例えばポリビニルアルコール等との併用も可能である。また、懸濁重合するモノマーに特に制限はなく、上記の重合性炭素−炭素二重結合を有する単量体の単独重合及び共重合に使用できるが、好ましくはハロゲン化オレフィン系、酢酸ビニル系等の重合に使用することができる。
【0043】
ハロゲン化オレフィン系の重合としては、例えば、塩化ビニル、塩化ビニリデン、塩化ビニル/マレイン酸(エステル)、塩化ビニル/フマル酸(エステル)、塩化ビニル/酢酸ビニル、塩化ビニル/塩化ビニリデン、塩化ビニリデン/酢酸ビニル、塩化ビニリデン/安息香酸ビニル等が挙げられる。
【0044】
本発明の界面活性剤を樹脂改質剤として使用する場合、改質する樹脂の物性は、例えば、親水性の調節、相溶性の向上、帯電防止性の向上、防曇性の向上、接着性の向上、染色性の向上、造膜性の向上、耐候性の向上、耐ブロッキング性の向上等である。改質の対象となる樹脂は特に限定されず、前記モノマーの重合によって製造されるあらゆるポリマーに使用可能である。また、例えば、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアリールエーテル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂等にも使用することができる。特に好ましく使用することができる樹脂は、塩化ビニル、塩化ビニリデン等のポリハロゲン化オレフィン類、エチレン、プロピレン等のポリα−オレフィン類等である。
【0045】
本発明の樹脂改質剤は、樹脂表面に塗工したり樹脂を加工する際に練りこむ等して樹脂に添加することができる。また、樹脂製造時にモノマー成分の一つとして他のモノマーと重合させれば、樹脂の分子中に本発明の樹脂改質剤が組み込まれ、永久帯電防止等の永久改質効果を得ることができる。
本発明の樹脂改質剤は、その化学構造中にエーテル鎖を有しているため、モノマーに対して優れた相溶性を示す。また、AO及びAO’を有する場合は、必要に応じて該オキシアルキレン基の重合度(m及びn)及び構成するオキシアルキレン基の種類を改質の目的及びモノマーとの相溶性に応じて選択することにより、親水性を容易に調節することができる。このため本発明の樹脂改質剤はモノマーとの相溶性とポリマーの改質効果を同時に向上させることができる。また、本発明の樹脂改質剤を使用することにより、使用された樹脂に永久帯電防止、防曇性を付与することが可能である。
【0046】
本発明の樹脂改質剤の使用量は、モノマーの種類、改質の目的、要求される性能等により、種々変えることができるが、モノマーに対して好ましくは0.1〜80質量%使用することができ、特に親水性の不充分な水溶性樹脂を親水性の高い樹脂にしようとする場合では、モノマーに対して1〜80質量%使用することがより好ましい。その他の用途、例えば耐水性、接着性、帯電防止性、防曇性、染色性、造膜性、耐候性、耐ブロッキング性等の向上のため、或いはポリマーアロイのためのポリマーに相溶性を付与しようとする場合には、モノマーに対して0.1〜60質量%使用することが好ましい。
【0047】
本発明の樹脂改質剤を使用する場合には、樹脂物性の改善のためにジビニルベンゼン、エチレングリコールジメタクリレート、メチレンビスアクリルアミド等の架橋性ジビニル化合物等を通常の使用量の範囲で任意に使用することができる。更に、乳化重合用乳化剤、懸濁重合用分散剤、樹脂改質剤として使用する場合は例えば金属酸化剤の存在によって樹脂ポリマーを架橋させることも可能である。
【0048】
【実施例】
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明する。尚、以下の実施例等において%及び部は特に記載が無い限り質量基準である。
(製造例1)
攪拌機、温度計、及び窒素導入管を備えた3Lのステンレス製加圧反応装置に、イソトリデカノール(メチル基数4.3:1H−NMRにより測定した値である。)1,000g(5モル)及び触媒として水酸化ナトリウム10gを仕込み、反応装置内の雰囲気を窒素で置換後、アリルグリシジルエーテル570g(5モル)を90℃でフィードし、フィード終了後、90℃で5時間熟成して、化合物(A)を得た。化合物(A)942g(3モル)に、130℃でエチレンオキシド1,320g(30モル)をフィードし、フィード終了後、2時間熟成して、本発明の界面活性剤(1)を得た。
【0049】
(製造例2)
界面活性剤(1)377g(0.5モル)に、更に、130℃でエチレンオキシド440g(10モル)をフィードし、フィード終了後、2時間熟成して、本発明の界面活性剤(2)を得た。
【0050】
(製造例3)
攪拌機、温度計及び窒素導入管を備えた500mLのガラス製4つ口フラスコに、化合物(A)157g(0.5モル)を入れ、0〜5℃に冷却した。これに、クロロスルホン酸115gを滴下ロートを使用して滴下した。滴下後、同温度で1時間攪拌を行い、発生するHClを窒素を吹き込んで除去した。その後、水酸化ナトリウム水溶液で中和してナトリウム塩とし、本発明の界面活性剤(3)を得た。
【0051】
(製造例4)
界面活性剤(1)を、製造例3と同様にクロロスルホン酸で処理して硫酸エステルとした後、アンモニア水溶液で中和し、本発明の界面活性剤(4)を得た。
【0052】
(製造例5)
製造例3と同様のフラスコに、界面活性剤(1)452g(0.6モル)を入れ、40℃で五酸化二リン28.4g(0.6モル)を1時間かけて添加した後、80℃で2時間熟成した。この後、水酸化ナトリウム水溶液で中和し、本発明の界面活性剤(5)を得た。
【0053】
(製造例6)
製造例3と同様のフラスコに、製造例1で得られた本発明の界面活性剤(1)377g(0.5モル)と、無水マレイン酸49g(0.5モル)を入れ、80℃で攪拌してエステル化した後、水酸化カリウム水溶液で中和し、本発明の界面活性剤(6)を得た。
【0054】
(製造例7)
製造例1と同様の加圧反応装置に、界面活性剤(1)377g(0.5モル)を入れ、製造例1と同様の条件で、エチレンオキシド440g(10モル)とプロピレンオキシド290g(5モル)の混合物を反応させ、本発明の界面活性剤(7)を得た。
【0055】
(製造例8)
製造例3と同様のフラスコに、界面活性剤(1)377g(0.5モル)と3フッ化ホウ素・エーテル錯体5gを入れ、エピクロルヒドリン38g(0.5モル)を滴下して反応させた後、トリエタノールアミン75g(0.5モル)でアンモニウム化して、本発明の界面活性剤(8)を得た。
【0056】
(製造例9及び10)
イソトリデシルアルコールの代わりに、5,7,7−トリメチル−2−(1,3,3−トリメチルブチル)オクタノール(メチル基数8)、アリルグリシジルエーテルの代わりにメタリルグリシジルエーテルを用いた他は、製造例1及び2に準じて本発明の界面活性剤(9)及び(10)を得た。
【0057】
(製造例11)
界面活性剤(9)を、製造例3と同様にクロロスルホン酸で処理して硫酸エステルとした後、水酸化カリウムで中和し、本発明の界面活性剤(11)を得た。
【0058】
(製造例12)(欠番とする)
【0060】
(製造例13)(欠番とする)
【0061】
(製造例14)
イソトリデシルアルコールの代わりにイソミリスチルアルコール(メチル基数4)、アリルグリシジルエーテルの代わりにメタクリルグリシジルエステル、触媒として水酸化ナトリウムの代わりに3フッ化ホウ素・エーテル錯体、エチレンオキシドの代わりにエチレンオキシドとテトラヒドロフランの混合物を用いた他は製造例1に準じて本発明の界面活性剤(14)を得た。
【0062】
(製造例15)
界面活性剤(14)を、製造例3と同様にクロロスルホン酸で処理して硫酸エステルとした後、水酸化ナトリウムで中和し、本発明の界面活性剤(15)を得た。
【0063】
(製造例16)
イソトリデシルアルコールの代わりにイソトリデカン酸(メチル基数4.3:1H−NMRにより測定した値である。)、触媒として水酸化ナトリウムの代わりに3フッ化ホウ素・エーテル錯体を用いた他は製造例1に準じて本発明の界面活性剤(16)を得た。
【0064】
(製造例17)
イソトリデシルアルコールの代わりにイソウンデシルアルコール(メチル基数3.5:1H−NMRにより測定した値である。)を用いた他は製造例1及び4に準じて本発明の界面活性剤(17)を得た。
【0065】
(製造例18)
アリルグリシジルエーテルの量を570g(5モル)から1,140g(10モル)に増やした他は製造例1に準じて本発明の界面活性剤(18)を得た。尚、界面活性剤(18)は、一般式(1)において、zが2のものに該当する。
【0066】
(製造例19)
イソトリデカノール1,000g(5モル)の代わりに、イソウンデシルアルコール860g(5モル)を用い、アリルグリシジルエーテルの量を570g(5モル)から855g(7.5モル)に増やした他は製造例1に準じて本発明の界面活性剤(19)を得た。尚、界面活性剤(19)は、一般式(1)において、zが1.5のものに該当する。
【0067】
(製造例20)
界面活性剤(1)の代わりに界面活性剤(19)を用いた他は、製造例4に準じて本発明の界面活性剤(20)を得た。
(製造例21)
界面活性剤(1)の代わりに界面活性剤(19)を用いた他は、製造例5に準じて本発明の界面活性剤(21)を得た。
(製造例22)
アリルグリシジルエーテルの量を855g(7.5モル)から1,710g(15モル)に増やした他は製造例19及び20に準じて本発明の界面活性剤(22)を得た。尚、界面活性剤(22)は、一般式(1)において、zが3のものに該当する。
【0068】
(製造例23)
攪拌機、温度計、及び窒素導入管を備えた3Lのステンレス製加圧反応装置に、イソウンデカノール172g(1モル)及び触媒として水酸化ナトリウム2gを仕込み、反応装置内の雰囲気を窒素で置換後、アリルグリシジルエーテル171g(1.5モル)を90℃でフィードし、フィード終了後、90℃で5時間熟成した。この後、130℃でブチレンオキシド360g(5モル)をフィードし、次いでエチレンオキシド1,320g(30モル)フィードし、フィード終了後、2時間熟成して、本発明の界面活性剤(23)を得た。尚、界面活性剤(23)は、一般式(1)において、zが1.5のものに該当する。
【0069】
(製造例24)
本発明の界面活性剤(17)及び本発明の界面活性剤(20)を質量比で同量混合したものを、本発明の界面活性剤(24)とした。界面活性剤(24)は一般式(1)において、zが1.2のものに該当する。
【0070】
以上の製造例で得られた本発明の界面活性剤は以下のとおりである。尚、構造式中、EOはオキシエチレン基を、またPOはオキシプロピレン基を表わす。また、THFはテトラヒドロフラン残基(1,4−ブチレンオキサイド残基)を表わす。
【0071】
【0072】
【0073】
【0074】
【0075】
【0076】
また、以下の実施例における比較品は以下のとおりである。
【0077】
<<実施例1>>
本発明の界面活性剤(1)〜(11)、(14)〜(24)について、それぞれの水溶液の表面張力を、ウィルヘルミ法により測定した。結果を表1に示す。尚、試験条件は以下の通りである。
測定条件:0.1%水溶液
測定温度:25℃
【0078】
【0079】
<<実施例2>>
本発明の界面活性剤(1)〜(11)、(14)〜(24)及び比較品1〜4について、それぞれのカーボンブラックの分散性能及びトルエンの乳化性能を測定した。結果を表2に示す。尚、試験方法は以下の通りである。
<カーボンブラック分散性能試験方法>
容量100mLの共栓付メスシリンダーに、上記界面活性剤1g、及びカーボンブラック10gを入れ、水にて溶解分散させ100mLに調整した。次に、そのメスシリンダーを1分間に100回振盪した後、25℃にて1時間静置した。その後、液上面から30mLを抜き取り、グラスフィルターにて濾過した後、105℃にて、グラスフィルターを乾燥させ、グラスフィルター上の残査の質量を測定し、次式により分散性能(%)を算出した。
分散性能(%)={グラスフィルターの残査質量(g)/3(g)}×100
【0080】
<トルエンの乳化性能試験方法>
容量20mLの共栓付目盛り付き試験管に、上記界面活性剤の0.5%水溶液5mLとトルエン5mLを加えた。次に、その試験管を1分間に100回振盪した後、25℃にて1時間静置した。その後、乳化層の容量(mL)を測定し、次式により乳化性能(%)を算出した。
乳化性能(%)={乳化層の容量(mL)/10(mL)}×100
【0081】
【0082】
<<実施例3>>
本発明の界面活性剤(1)、(16)、(22)、比較品2及び4について、JIS−K−0102の方法に従い、生分解性の試験を行った。即ち、BODは生物化学的酸素消費量であって、水中の好気性微生物によって消費される溶存酸素の量である。ここでは、試料を希釈水で希釈し、20℃で5日間放置したときに消費された溶存酸素の量である。また、TODは各試料の化学構造から求められる定数である。結果を以下の表3に示す。
【0083】
【0084】
<<実施例4>>
本発明の界面活性剤(1)〜(11)、(14)〜(24)及び比較品1〜4について、乳化重合用乳化剤としての性能を見るために、アクリル酸2−エチルヘキシル/アクリル酸の混合物をモノマーとして乳化重合を行なった。得られたポリマーエマルジョンについて、その粒径、凝集物量、機械安定性、発泡性、及びポリマーエマルジョンから得られるフィルムについての耐水性を測定した。その結果を表4に示す。
【0085】
<重合方法>
還流冷却器、攪拌機、滴下ロート及び温度計を備えた反応容器に脱イオン水120gを仕込み、系内を窒素ガスで置換した。別に混合モノマー(アクリル酸2−エチルヘキシル/アクリル酸=97/3:質量比)100gに本発明の界面活性剤(1)〜(11)、(14)〜(24)又は比較品1〜4を4g溶解し、この内の10gと過硫酸アンモニウム0.08gを反応容器に加え、60℃で重合を開始した。そして残りのモノマーと界面活性剤の混合物を2時間にわたって反応器内に連続的に滴下し、滴下終了後2時間熟成しポリマーエマルジョンを得た。
【0086】
<粒径>
重合後の上記ポリマーエマルジョンの粒径を、電気泳動光散乱光度計(ELS−800、大塚電子製)を使用し、25℃にて測定した。
<凝集物量>
重合後の上記ポリマーエマルジョンを325メッシュの金網で濾過し、濾過残渣を水で洗浄後、105℃にて2時間乾燥させ、この質量を測定し固形分に対する質量%で表した。
<機械安定性>
重合後の上記ポリマーエマルジョンをディスパーにて、2,000rpmで2分間攪拌した後、上記の方法で凝集物量を測定し、機械安定性を評価した。
【0087】
<発泡性>
重合後の上記ポリマーエマルジョンを水で2倍に希釈し、この希釈エマルジョン20mLを100mLの目盛り付き試験管に入れ、10秒間上下に激しく振盪させ、振盪直後及び5分後の泡量を測定した。
<フィルムの耐水性>
重合後の上記ポリマーエマルジョンをガラス板に塗布して厚さ0.2mmの塗膜を作成し、この塗膜を有するガラス板を50℃の水に浸漬し、白化した塗膜を通して8ポイントの文字が判別できなくなるまでの時間を測定し、耐水性を評価した。評価の基準は以下のとおりである。
◎:48時間経過後も文字が判別できた。
○:24時間経過後も文字が判別できたが、48時間
経過後は文字が判別できなくなった。
△:1時間以上経過すると文字が判別できなくなった。
×:1時間未満で文字が判別できなくなった。
【0088】
【0089】
<<実施例5>>
本発明の界面活性剤(1)〜(11)、(14)〜(24)及び比較品1〜4について、乳化重合用分散剤としての性能を見るために、アクリル酸エチル/アクリル酸ブチル/スチレンの混合物をモノマーとして乳化重合を行なった。得られたポリマーエマルジョンについて、得られたポリマーエマルジョンについて、その粒径、凝集物量、機械安定性及びポリマーエマルジョンから得られる塗膜についての耐水性並びに耐衝撃性を測定した。その結果を表5に示す。
【0090】
<重合方法>
混合モノマーが、アクリル酸エチル/アクリル酸ブチル/スチレン=49/49/2:質量比の混合物である他は、実施例4と同様にしてポリマーエマルジョンを得た。
<耐衝撃性>
重合後の上記ポリマーエマルジョンを、軟鋼板(200mm×100mm×4mm)に塗布して厚さ0.5mmの塗膜を有する試験片を作成し、この試験片についてJIS−K−5400(塗料一般試験方法)の耐衝撃性A法に準拠して、耐衝撃性試験を行なった。尚、試験は10回行ない、おもり(落下鋼球)の衝撃によって生じた塗膜の割れ、剥がれを目視により判定し、以下の基準により評価した。
○:おもりによる、割れ、剥がれが認められない、又は1回認められた。
△:おもりによる、割れ、剥がれが2〜3回認められた。
×:おもりによる、割れ、剥がれが4回以上認められた。
【0091】
【0092】
<<実施例6>>
本発明の界面活性剤(1)〜(7)、(9)〜(11)、(17)〜(24)及び比較品1〜4について、懸濁重合用分散剤としての性能を見るために、塩化ビニルをモノマーとして懸濁重合を行ない、得られた樹脂に対して以下の試験法により試験を行った。結果を表6に示す。
【0093】
<重合方法>
攪拌機、温度計、及び窒素導入管を備えた500mLのステンレス製加圧反応装置に、脱イオン水100g、本発明の界面活性剤(1)〜(7)、(9)〜(11)、(17)〜(24)又は比較品1〜4を2g、及びジ−2−エチルヘキシルパーオキシカーボネート0.2gを仕込み、反応装置内を7kPaとなるまで脱気して酸素を除いた後、塩化ビニルモノマーを100g仕込み、回転数500rpmで攪拌下に57℃に昇温して重合を行った。重合開始時、オートクレーブ内の圧力は0.8MPaであったが、重合開始7時間後、0.4MPaとなったので、この時点で重合を停止し、未反応の塩化ビニルモノマーをパージし、内容物を取り出し脱水乾燥した。
【0094】
<粒径分布>
得られた樹脂粒子のうち250メッシュの篩(タイラーメッシュ基準の金網)を通過しない粒子の質量割合を測定した。
<耐水性試験>
以下の配合でゾルを調整し、ゾルを0.5mm厚として190℃で10分間加熱してシートとしたものを、23℃の水中に24時間浸漬した後の光透過率(%)を測定した。
・得られた樹脂 50部
・フタル酸−ジ−2−エチルヘキシル 30部
・Ba/Zn系安定剤 1部
<熱性安定性試験>
耐水性試験に共したものと同じゾルをアルミニウム製モールドに注入し、190℃の熱風雰囲気下で30分後の色調の変化をA(変化少)〜E(変化大)の5段階で評価した。
【0095】
【0096】
<<実施例7>>
本発明の界面活性剤(1)〜(11)、(14)〜(24)及び比較品1〜4について、樹脂改質剤としての性能を見るために、スチレンの溶液重合を行ない、得られた樹脂に対して以下の試験法により試験を行った。なお、樹脂改質剤未添加のものをブランクとした。結果を表7に示す。
【0097】
<重合方法>
実施例4と同様の反応容器にキシレン100gを仕込み、系内を窒素ガスで置換した。別にスチレン150g、本発明の界面活性剤(1)〜(11)、(14)〜(24)又は比較品1〜4を15g、過酸化ベンゾイル2g、ジ・ターシャリブチルパーオキシド1gの混合溶液を調整し、反応温度130℃で上記混合溶液を2時間にわたり反応器内に連続的に滴下した。更に、キシレン10g、過酸化ベンゾイル0.5g、ジ・ターシャリブチルパーオキシド0.5gの混合溶液を滴下し、2時間反応させた。その後冷却して、ポリマー溶液を得た。
<防曇性>
ガラス板状に、上記ポリマー溶液を塗布して、0.2mm厚のポリマーフィルムを作製し、このポリマーフィルムに対する水の接触角(°)を測定することにより防曇性を評価した。
【0098】
<帯電防止性>
上記ポリマーフィルムを温度20℃、湿度50%の雰囲気中に24時間放置後、表面固有抵抗を測定した。
【0099】
<帯電防止効果及び防曇性の持続性>
上記帯電防止効果及び防曇性の試験をした後のポリマーフィルムを、水を含ませた脱脂綿で50回水拭きした後、温度20℃、湿度35%の雰囲気中に30分間放置後、表面固有抵抗値及び水の接触角を測定した。
【0100】
【0101】
【発明の効果】
本発明の効果は、環境に対する影響が大きいとされるノニルフェニル基等のフェニルエーテル基を含有せず、フェニルエーテル基を含有する反応性界面活性剤と同等の性能を有する界面活性剤を提供したことにある。
Claims (5)
- 下記の一般式(1)
[(式中、R1は炭素数8〜36であり、且つ、3個以上のメチル基を有する分岐脂肪族炭化水素基又は分岐の脂肪族アシル基を表わし、AO及びAO’は炭素数2〜4のオキシアルキレン基を表わし、Lは下記の一般式(2)で表わされる基を表わし、zは1〜10の数を表わし、Xは水素原子又は下記のアニオン性親水基又はカチオン性親水基を表わし、mは0〜1,000の数を表わし、nは0〜1,000の数を表わす。)
(式中、R2及びR3は水素原子又はメチル基を表わし、xは0〜12の数を表わし、yは0又は1の数を表わす。)
アニオン性親水基:−SO 3 M、−R 4 −SO 3 M、−R 5 −COOM、−PO 3 M 2 、−PO 3 MH又は−CO−R 6 −COOM(式中、Mは水素原子、アルカリ金属原子、アルカリ土類金属原子又はアンモニウム(但し、アルカリ土類金属原子は1/2)を表わし、R 4 及びR 5 はアルキレン基を表わし、R 6 は2塩基酸又はその無水物からカルボキシル基を除いた残基を表わす。)
カチオン性親水基:−R 7 −NR 8 R 9 R 10 ・Y、又は−Z−NR 8 R 9 R 10 ・Y
(式中、R 7 はアルキレン基を表わし、R 8 〜R 10 は炭素数1〜4のアルキル基、炭素数2〜4のアルカノール基又はベンジル基を表わし、Yはハロゲン原子又はメチル硫酸基を表わし、Zは−CH 2 CH(OH)CH 2 −又は−CH(CH 2 OH)CH 2 −で表わされる基を表わす。)]
で表わされる界面活性剤。 - 一般式(1)において、zが1〜8の数である請求項1に記載の界面活性剤。
- 請求項1又は2に記載の界面活性剤からなる乳化重合用乳化剤。
- 請求項1又は2に記載の界面活性剤からなる懸濁重合用分散剤。
- 請求項1又は2に記載の界面活性剤からなる樹脂改質剤。
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