JP4469510B2 - 乳化重合用乳化剤 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、分岐の脂肪族炭化水素基又は2級の脂肪族炭化水素基を有する反応性の界面活性剤、及びその具体的用途に関する。
【0002】
【従来の技術】
界面活性剤とは乳化、分散、洗浄、湿潤、起泡等の幅広い性能を有している。それらの諸性能を利用して、従来から繊維をはじめとし、紙、ゴム、プラスチック、金属、塗料、顔料、土木建築等あらゆる分野に利用されている。特に最近は界面活性剤を使用した末端商品の高性能化への動きが活発化してきており、それに伴って、界面活性剤が有する副次的な欠点も指摘されている。
【0003】
例えば、界面活性剤は塗料、印刷インキ、接着剤等ではその製品の製造時、或いは製品の安定化、更には作業性等の点で欠かすことができない成分として製品中に含有されている。それら界面活性剤を含む製品が、塗布、印刷、接着或いは粘着等の作業で現実に使用される場合は、本来界面活性剤は不要であり、むしろ存在している界面活性剤によって、塗膜、印刷面、接着皮膜等の耐水性、耐油性等の性能を悪化させる場合が多い。
【0004】
また、乳化重合によってポリマーを製造する際に使用される乳化重合用乳化剤は、重合の開始反応や成長反応に関与するだけでなく、生成したエマルジョンの機械安定性、化学的安定性、凍結安定性及び貯蔵安定性等にも関与し、更にエマルジョンの粒子径、粘性及び起泡性等のエマルジョン物性、フィルム化した時の耐水性、耐候性、接着性、耐熱性等のフィルム物性にも大きな影響を及ぼすことが知られている。この場合の問題点として、存在している乳化剤により、乳化重合したエマルジョンの泡立ちが多くなること、接着性、耐水性、耐候性、耐熱性等のフィルム物性の低下等が指摘されている。また、懸濁重合によって製造されたポリマーにおいても、懸濁重合用分散剤による同様の現象が指摘されている。
【0005】
これらの問題は、界面活性剤がポリマー中にフリーで残存することに起因するものである。フリーの界面活性剤を減らす方法として、重合時又は成形時にポリマーと反応して結合してしまいポリマー中にフリーで残存しないような界面活性剤、いわゆる反応性界面活性剤(重合性界面活性剤とも言う)が開発されている。
【0006】
反応性界面活性剤については多くの構造が提案されているが、その疎水基に注目すると、例えば、特公昭49−46291号公報、特開昭58−203960号公報では、炭化水素基を有するスルホコハク酸エステル;特開昭62−100502号公報、特開昭63−23725号公報、特開平4−50202号公報、及び特開平4−50204号公報等では、アリル基又はプロペニル基を有する炭化水素置換フェノールのアルコキシレート;特開昭62−104802号公報等では、炭化水素基又はアシル基を有するグリセリン誘導体のアルコキシレート;特開昭62−11534号公報では、ホルムアルデヒドで架橋した(置換)フェノールの誘導体;特開昭63−319035号公報、特開平4−50204号公報等では、疎水基としてα−オレフィンオキシド由来のアルキル基等が挙げられる。尚、以上の従来技術では、炭化水素基とは、アルキル基、アルケニル基、アリール基等を含んでいる。
【0007】
こうした反応性界面活性剤の中でも、疎水基として(置換)フェニルエーテル基を有する反応性界面活性剤は、乳化性、分散性、重合安定性等が優れているために、多く使用されている。しかし、近年、ノニルフェノールが生物に対し擬似ホルモン作用を発現し、内分泌系を撹乱する作用があるのではないかという、いわゆるエンドクリン問題の懸念が浮上し、フェニルエーテル基を有する反応性界面活性剤についても代替品が模索されている。しかし、フェニルエーテル基以外の疎水基、例えば、アルキル基、アルケニル基等を有する反応性界面活性剤は、フェニルエーテル基を有する反応性界面活性剤よりも乳化性、分散性、重合安定性等の性能が劣るという欠点があった。
【0008】
【課題を解決するための手段】
そこで本発明者らは鋭意検討し、疎水基として分岐の脂肪族炭化水素基を有する反応性界面活性剤が、フェニルエーテル基を有する反応性界面活性剤と同等の性能を有し、しかも環境に対する悪影響が殆どないことを見い出し本発明を完成させた。即ち、本発明は、下記の一般式(1)又は(2)
{式中、R1は分岐脂肪族炭化水素基又は2級脂肪族炭化水素基を表わし、R2はアルキレン基を表わし、R3は水素原子又はメチル基を表わし、AO及びAO’は炭素数2〜4のオキシアルキレン基を表わし、Mは水素原子、アルカリ金属原子、アルカリ土類金属原子又はアンモニウム(但し、アルカリ土類金属原子は1/2)を表わし、m及びnは0〜100の数を表わし、a及びbは0又は1の数を表わす。}で表わされる反応性界面活性剤からなる乳化重合用乳化剤である。
【0009】
【発明の実施の形態】
一般式(1)において、R1は分岐脂肪族炭化水素基又は2級脂肪族炭化水素基を表わす。分岐脂肪族炭化水素基又は2級脂肪族炭化水素基は、対応する分岐アルコールの残基又は2級アルコールの残基である。このような分岐の脂肪族アルコールとしては、例えば、イソブタノール、ターシャリブタノール、イソペンタノール、ネオペンタノール、ターシャリペンタノール、イソヘキサノール、2−メチルペンタノール、イソヘプタノール、イソオクタノール、2−エチルヘキサノール、イソノナノール、3,4,4−トリメチルヘキサノール、イソデカノール、2−プロピルヘプタノール、イソウンデカノール、イソドデカノール、2−ブチルオクタノール、イソトリデカノール、イソテトラデカノール、イソミリスチルアルコール、2−ペンチルノナノール、イソペンタデカノール、イソヘキサデカノール、イソパルミチルアルコール、2−ヘキシルデカノール、イソヘプタデカノール、イソオクタデカノール、イソステアリルアルコール、2−ヘプチルウンデカノール、イソノナデカノール、イソエイコサノール、2−オクチルドデカノール、2−ノニルトリデカノール、2−デシルテトラデカノール、2−ウンデシルペンタデカノール、2−ドデシルヘキサデカノール、2−トリデシルヘプタデカノール、2−テトラデシルオクタデカノール、2−ペンタデシルノナデカノール、2−ヘキサデシルエイコサノール、1,1−ジメチル−2−プロペノール、3−メチル−3−ブテノール、3−メチル−2−ブテノール、イソヘキセノール、イソヘプテノール、イソオクテノール、イソノネノール、イソデセノール、イソウンデセノール、イソドデセノール、イソトリデセノール、イソテトラデセノール、イソペンタデセノール、イソヘキサデセノール、イソヘプタデセノール、イソオクタデセノール、イソオレイルアルコール、イソノナデセノール、イソエイコセノール等が挙げられる。
【0010】
また、このような脂肪族2級アルコールとしては、例えば、イソプロパノール、2−ブタノール、2−オクタノール、2級デカノール、2級ウンデカノール、2級ドデカノール、2級トリデカノール、イソトリデカノール、2級テトラデカノール、2級ペンタデカノール、2級ヘキサデカノール、2級ヘプタデカノール、2級オクタデカノール等が挙げられる。
【0011】
こうした分岐脂肪族炭化水素基又は2級脂肪族炭化水素基の中でも、炭素数が8〜36のものが好ましく、10〜28のものがより好ましい。また、分岐の多いものほど、一般式(1)又は一般式(2)で表わされる反応性界面活性剤の乳化性、分散性、重合安定性等が向上するので好ましく、特に、分子内に3個以上のメチル基を有するものが好ましい。このような多数の分岐を有する炭化水素基の中には、例えば、市販のイソトリデカノールのように、多数の構造異性体の混合物の場合もあり、これらについてはプロトンNMR等の分光化学的分析方法により、分子内のメチル基の数を測定することができる。
【0012】
一般式(1)又は(2)において、下記の一般式(3)
で表わされる部分は反応基を表わし、R2はアルキレン基を表わし、R3は水素原子又はメチル基を表わす。アルキレン基としては、例えば、メチレン、エチレン、プロピレン、ブチレン、ペンテン、ヘキセン、ヘプテン、オクテン、ノネン、デセン等を挙げることができ、原料の入手の容易さから、メチレン、エチレンが好ましい。
【0013】
また、(AO)m及び(AO’)nの部分は、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、テトラヒドロフラン(1,4−ブチレンオキシド)等の炭素数2〜4のアルキレンオキシドを付加重合する等の方法により得ることができる。(AO)m及び(AO’)nが、アルキレンオキシドの付加重合により形成される場合は、付加させるアルキレンオキシド等によりAO及びAO’が決定される。付加させるアルキレンオキシド等の重合形態は限定されず、1種類のアルキレンオキシドの単独重合、2種類以上のアルキレンオキシドのランダム共重合、ブロック共重合又はランダム/ブロック共重合等のいかなる形態であってよい。AO及びAO’としては、オキシエチレン基又はオキシプロピレン基が好ましく、オキシエチレン基が更に好ましい。(AO)m又は(AO’)nが2種類以上のアルキレンオキシドの共重合により形成される場合は、その一方はエチレンオキシドであることが好ましい。この場合、(AO)m又は(AO’)n中のオキシエチレン基の割合は、50重量%以上であることが更に好ましい。重合度m及びnは0〜100の範囲の数であり、好ましくは0〜20、より好ましくは0〜10、更に好ましくは0〜5である。
【0014】
一般式(1)又は(2)において、a及びbは0又は1の数である。また、Mは水素原子;リチウム、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属原子;マグネシウム、カルシウム等のアルカリ土類金属原子(但し、アルカリ土類金属原子は通常2価であるから、1/2)、又はアンモニウムを表わす。アンモニウムとしては、例えば、アンモニアのアンモニウム;モノメチルアミン、ジプロピルアミン等のアルキルアミンのアンモニウム;モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアルカノールアミンのアンモニウム等が挙げられる。
【0015】
一般式(1)又は(2)で表わされる反応性界面活性剤の製造方法は、種々の方法があり、特に限定されないが、副生成物が少なく好ましい製造方法としては、例えば、下記の一般式(4)
で表わされるマレイン酸ジエステルを中間体として、それをスルホン化する方法が挙げられる。この方法により製造する場合は、一般式(1)で表わされる化合物及び一般式(2)で表わされる化合物の混合物が製造される。
【0016】
一般式(4)で表わされるマレイン酸ジエステルは、a及びbが0の場合には、例えば、無水マレイン酸1モルに対して、HO−(AO)m−R1で表わされるアルコール1モルを反応させてマレイン酸部分エステルとした後、下記の一般式(5)
で表わされるアルコール1モルを反応させることにより得ることができる。
【0017】
aが0でbが1の場合には、例えば、前記マレイン酸部分エステル1モルに、下記の一般式(6)
で表わされるグリシジルエーテル1モルを反応させることにより得ることができる。
【0018】
また、aが1でbが0の場合には、例えば、無水マレイン酸1モルに対して、前記一般式(5)で表わされるアルコール1モルを反応させてマレイン酸部分エステルとした後、下記の一般式(7)
で表わされるグリシジルエーテル1モルを反応させることにより得ることができる。
【0019】
a及びbが1の場合には、例えば、マレイン酸1モルに対して、一般式(7)で表わされるグリシジルエーテル1モルを反応させてマレイン酸部分エステルとした後、一般式(7)で表わされるグリシジルエーテル1モルを反応させることにより得ることができる。
【0020】
マレイン酸の部分エステル化及びジエステル化の反応において、反応温度は、必要に応じて、50〜150℃の範囲の適当な温度を選択すればよい。触媒を用いる場合は、塩基触媒が好ましく、テトラブチルブロマイド、トリエチルベンジルアンモニウムクロラマイド等の4級アンモニウム塩が更に好ましい。
【0021】
一般式(4)で表わされるマレイン酸ジエステルのスルホン化剤としては、例えば、酸性亜硫酸ナトリウム、酸性亜硫酸カリウム、酸性亜硫酸アンモニウム、酸性亜硫酸カルシウム、酸性亜硫酸マグネシウム、メタ亜硫酸ナトリウム、メタ亜硫酸カリウム、メタ亜硫酸アンモニウム、メタ亜硫酸カルシウム、メタ亜硫酸マグネシウム、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸カリウム、亜硫酸アンモニウム、亜硫酸カルシウム、亜硫酸マグネシウム等の亜硫酸塩類の場合に選択的にマレイン酸残基のスルホン化が起こるので好ましく、酸性亜硫酸塩類が更に好ましい。
一般式(4)で表わされるマレイン酸ジエステルと亜硫酸塩類との反応比は、当量で行なってもよいが、亜硫酸塩類をやや過剰にして反応した方が、スルホン化生成物の収率が向上する場合もある。
【0022】
亜硫酸塩類は一般式(4)で表わされるマレイン酸ジエステルに溶解しにくく、反応が遅いため、溶媒として、水を用いることが好ましい。この場合、更に、反応時間の短縮と収率の向上を図るために、水に溶解する有機溶媒を用いてもよい。こうした有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコール類;アセトン、エチルメチルケトン等のケトン類;ジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル類が挙げられる。
スルホン化の反応温度は、30〜150℃が好ましく、50〜120℃が更に好ましい。反応は常圧下で行なってもよいが、0.1〜0.5MPa程度の加圧下で行なってもよい。
【0023】
尚、一般式(4)で表わされるマレイン酸ジエステルを合成する反応、及びそのスルホン化においては、反応性基の重合が起こる場合があることから、重合を禁止するため公知の重合禁止剤、例えば、ハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、ピロガノール、カテコール、フェノチアジン等の存在下で行うことが好ましい。
【0024】
本発明の界面活性剤は、従来、フェニルエーテル基を有する反応性界面活性剤が用いられてきた用途、即ち、乳化重合用乳化剤、懸濁重合用分散剤、樹脂用改質(撥水性向上、親水性調節、相溶性向上、帯電防止性向上、防曇性向上、耐水性向上、接着性向上、染色性向上、造膜性向上、耐候性向上、耐ブロッキング性向上等)剤、繊維加工助剤、無滴剤、繊維防汚加工剤等に使用することができる。また、特開平10−120712号公報のような共重合体型界面活性剤の原料、特開平6−65379号公報のような界面活性剤変性オルガノポリシロキサンの原料等としても使用することができる。
【0025】
本発明の界面活性剤を乳化重合用乳化剤として使用する場合は、従来公知の乳化重合用乳化剤の通常の使用量の範囲で任意に使用することができるが、概ね原料モノマーに対して、好ましくは0.1〜20質量%、更に好ましくは0.2〜10質量%使用することができる。また、本発明の乳化重合用乳化剤と他の反応性又は非反応性乳化剤との併用も可能である。また、乳化重合するモノマーに特に制限はないが、好ましくはアクリレート系エマルジョン、スチレン系エマルジョン、酢酸ビニル系エマルジョン、SBR(スチレン/ブタジエン)エマルジョン、ABS(アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン)エマルジョン、BR(ブタジエン)エマルジョン、IR(イソプレン)エマルジョン、NBR(アクリロニトリル/ブタジエン)エマルジョン等に使用することができる。
【0026】
アクリレート系エマルジョンとしては、例えば、(メタ)アクリル酸(エステル)同士、(メタ)アクリル酸(エステル)/スチレン、(メタ)アクリル酸(エステル)/酢酸ビニル、(メタ)アクリル酸(エステル)/アクリロニトリル、(メタ)アクリル酸(エステル)/ブタジエン、(メタ)アクリル酸(エステル)/塩化ビニリデン、(メタ)アクリル酸(エステル)/アリルアミン、(メタ)アクリル酸(エステル)/ビニルピリジン、(メタ)アクリル酸(エステル)/(メタ)アクリル酸アルキロールアミド、(メタ)アクリル酸(エステル)/N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸(エステル)/N,N−ジエチルアミノエチルビニルエーテル等が挙げられる。
【0027】
スチレン系エマルジョンとしては、スチレン単独の他、例えば、スチレン/アクリロニトリル、スチレン/ブタジエン、スチレン/フマルニトリル、スチレン/マレインニトリル、スチレン/シアノアクリル酸エステル、スチレン/酢酸フェニルビニル、スチレン/クロロメチルスチレン、スチレン/ジクロロスチレン、スチレン/ビニルカルバゾール、スチレン/N,N−ジフェニルアクリルアミド、スチレン/メチルスチレン、アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン、スチレン/アクリロニトリル/メチルスチレン、スチレン/アクリロニトリル/ビニルカルバゾール、スチレン/マレイン酸等が挙げられる。
【0028】
酢酸ビニル系エマルジョンとしては、酢酸ビニル単独の他、例えば、酢酸ビニル/スチレン、酢酸ビニル/塩化ビニル、酢酸ビニル/アクリロニトリル、酢酸ビニル/マレイン酸(エステル)、酢酸ビニル/フマル酸(エステル)、酢酸ビニル/エチレン、酢酸ビニル/プロピレン、酢酸ビニル/イソブチレン、酢酸ビニル/塩化ビニリデン、酢酸ビニル/シクロペンタジエン、酢酸ビニル/クロトン酸、酢酸ビニル/アクロレイン、酢酸ビニル/アルキルビニルエーテル等が挙げられる。
【0029】
本発明の界面活性剤を懸濁重合用分散剤として使用する場合は、従来公知の懸濁重合用分散剤の通常の使用量の範囲で任意に使用することができるが、概ね原料モノマーに対して、好ましくは0.1〜20質量%、更に好ましくは0.2〜10質量%使用することができる。また、本発明の懸濁重合用分散剤と他の反応性又は非反応性分散剤、例えば、ポリビニルアルコール等との併用も可能である。また、懸濁重合するモノマーに特に制限はなく、上記の重合性炭素−炭素二重結合を有する単量体の単独重合及び共重合に使用できるが、好ましくはハロゲン化オレフィン系、酢酸ビニル系等の重合に使用することができる。
【0030】
ハロゲン化オレフィン系の重合としては、例えば、塩化ビニル、塩化ビニリデン、塩化ビニル/マレイン酸(エステル)、塩化ビニル/フマル酸(エステル)、塩化ビニル/酢酸ビニル、塩化ビニル/塩化ビニリデン、塩化ビニリデン/酢酸ビニル、塩化ビニリデン/安息香酸ビニル等が挙げられる。
酢酸ビニル系の重合については上記と同様である。
【0031】
本発明の界面活性剤を樹脂改質剤として使用する場合、改質する樹脂の物性は例えば、親水性の調節、相溶性の向上、帯電防止性の向上、防曇性の向上、接着性の向上、染色性の向上、造膜性の向上、耐候性の向上、耐ブロッキング性の向上等である。改質の対象となる樹脂は特に限定されず、前記モノマーの重合によって製造されるあらゆるポリマーに使用可能である。また、例えば、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアリールエーテル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂等にも使用することができる。特に好ましく使用することができる樹脂は、塩化ビニル、塩化ビニリデン等のポリハロゲン化オレフィン類、エチレン、プロピレン等のポリα−オレフィン類等である。
【0032】
本発明の樹脂改質剤は、樹脂表面に塗工したり樹脂を加工する際に練りこむ等して樹脂に添加することができる。また、樹脂製造時にモノマー成分の一つとして他のモノマーと重合させれば、樹脂の分子中に本発明の樹脂改質剤が組み込まれ、永久帯電防止等の永久改質効果を得ることができる。
本発明の樹脂改質剤は、その化学構造中にエーテル鎖を有しているため、モノマーに対して優れた相溶性を示す。また、AO及びAO’を有する場合は、必要に応じて該オキシアルキレン基の重合度(m及びn)及び構成するオキシアルキレン基の種類を改質の目的及びモノマーとの相溶性に応じて選択することにより、親水性を容易に調節することができる。このため本発明の樹脂改質剤はモノマーとの相溶性とポリマーの改質効果を同時に向上させることができる。また、本発明の樹脂改質剤を使用することにより、使用された樹脂に永久帯電防止、防曇性を付与することが可能である。
【0033】
本発明の樹脂改質剤の使用量は、モノマーの種類、改質の目的、要求される性能等により、種々変えることができるが、モノマーに対して好ましくは0.1〜80質量%使用することができ、特に親水性の不充分な水溶性樹脂を親水性の高い樹脂にしようとする場合では、モノマーに対して1〜80質量%使用することがより好ましい。その他の用途、例えば、耐水性、接着性、帯電防止性、防曇性、染色性、造膜性、耐候性、耐ブロッキング性等の向上のため、或いはポリマーアロイのためのポリマーに相溶性を付与しようとする場合には、モノマーに対して0.1〜60質量%使用することが好ましい。
【0034】
本発明の樹脂改質剤を使用する場合には、樹脂物性の改善のためにジビニルベンゼン、エチレングリコールジメタクリレート、メチレンビスアクリルアミド等の架橋性ジビニル化合物等を通常の使用量の範囲で任意に使用することができる。更に、乳化重合用乳化剤、懸濁重合用分散剤、樹脂改質剤として使用する場合は、例えば、金属酸化剤の存在によって樹脂ポリマーを架橋させることも可能である。
【0035】
【実施例】
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明する。尚、以下の実施例等において%及び部は特に記載が無い限り質量基準である。また、EOはオキシエチレン基、POはオキシプロピレン基をそれぞれ表わす。
【0036】
(製造例1):本発明品1
還流冷却器、攪拌機、温度計、及び窒素導入管を備えたガラス製加圧反応装置に無水マレイン酸99g(1モル)、アリルアルコール58gを仕込み、反応装置内の雰囲気を窒素で置換後、徐々に加熱し60℃にて1時間攪拌した。続いて、イソトリデカノール(メチル基数4.3;1H−NMRにより測定した値である。)200g(1モル)、触媒としてベンジルトリエチルアンモニウムクロライド2g、ハイドロキノン4gを加えて、生成する水を系外に除去しながら130℃に加熱し、約5時間攪拌した。この後、酸性亜硫酸ナトリウム104g(1モル)、水1,200g、イソプロピルアルコール1,000gを加え、80℃で6時間攪拌を続けた。この後、イソプロピルアルコールを系外に留去し、水で濃度を調整して、本発明品1(但し70%水溶液)を得た。
【0037】
(製造例2):本発明品2
イソトリデカノールの代わりにイソステアリルアルコール{5,7,7−トリメチル−2−(1,3,3−トリメチルブチル)オクタノールの一般名称、メチル基数8}、酸性亜硫酸ナトリウムの代わりに酸性亜硫酸カリウムを用いた他は、製造例1と同様にして本発明品2(但し70%水溶液)を得た。
【0038】
(製造例3):本発明品3
イソトリデカノールの代わりにソフタノール30(商品名、日本乳化剤製、炭素数12〜14の2級アルコール(メチル基数2)のエチレンオキシド3モル付加物、水酸基価168mgKOH/g)を用いた他は、製造例1と同様にして本発明品3(但し70%水溶液)を得た。
【0039】
(製造例4):本発明品4
アリルアルコールの代わりにメタリルアルコールのエチレンオキシド10モル付加物を用いた他は、製造例1と同様にして本発明品4(但し70%水溶液)を得た。
【0040】
(製造例5):本発明品5
アリルアルコールの代わりにアリルアルコールのプロピレンオキシド5モル付加物を用いた他は、製造例1と同様にして本発明品5(但し70%水溶液)を得た。
【0041】
(製造例6):本発明品6
アリルアルコールの代わりにアリルアルコールのブチレンオキシド5モル付加物、イソトリデカノールの代わりにイソノニルアルコール(3,5,5−トリメチルヘキサノールの一般名称、メチル基数4)を用いた他は、製造例1と同様にして本発明品6(但し70%水溶液)を得た。
【0042】
(製造例7):本発明品7
アリルアルコールの代わりに10−ウンデセノール、イソトリデカノールの代りに2−エチルヘキサノール(メチル基数2)を用いた他は、製造例1と同様にして本発明品7(但し70%水溶液)を得た。
【0043】
(製造例8):本発明品8
イソトリデカノールの代わりにイソトリデシルグリシジルエーテル(メチル基数4.3;1H−NMRにより測定した値である。)を用いて90℃で反応させた他は、製造例1と同様にして本発明品8(但し70%水溶液)を得た。
【0044】
(製造例9):本発明品9
製造例1と同様の反応容器に、無水マレイン酸99g(1モル)とイソトリデカノール200g(1モル)を仕込み、反応装置内の雰囲気を窒素で置換後、90℃で3時間攪拌した。続いて触媒としてベンジルトリエチルアンモニウムクロライド2gを添加した後、アリルグリシジルエーテル114g(1モル)を90℃でフィードし、フィード終了後、90℃で5時間攪拌した。以下、製造例1と同様の方法にて、本発明品9の70%水溶液を得た。
【0045】
(製造例10):本発明品10
イソトリデカノールの代わりにイソステアリルアルコール、酸性亜硫酸ナトリウムの代わりに酸性亜硫酸カリウムを用いた他は、製造例9と同様にして本発明品10(但し70%水溶液)を得た。
【0046】
(製造例11):本発明品11
イソトリデカノールの代わりにソフタノール30(商品名、日本乳化剤製、炭素数12〜14の2級アルコール(メチル基数2)のエチレンオキシド3モル付加物、水酸基価168mgKOH/g)を用いた他は、製造例9と同様にして本発明品11(但し70%水溶液)を得た。
【0047】
(製造例12):本発明品12
アリルグリシジルエーテルの代わりにメタリルアルコールのエチレンオキシド10モル付加物のグリシジルエーテルを用いた他は、製造例9と同様にして本発明品12(但し70%水溶液)を得た。
【0048】
(製造例13):本発明品13
アリルグリシジルエーテルの代わりにアリルアルコールのプロピレンオキシド5モル付加物のグリシジルエーテルを用いた他は、製造例9と同様にして本発明品13(但し70%水溶液)を得た。
【0049】
(製造例14):本発明品14
アリルグリシジルエーテルの代わりにアリルアルコールのブチレンオキシド5モル付加物のグリシジルエーテル、イソトリデカノールの代わりにイソノニルアルコールを用いた他は、製造例9と同様にして本発明品14(但し70%水溶液)を得た。
【0050】
(製造例15):本発明品15
アリルアルコールのグリシジルエーテルの代わりに10−ウンデセニルグリシジルエーテル、イソトリデカノールの代わりに2−エチルヘキサノール(メチル基数2)を用いた他は、製造例9と同様にして本発明品15(但し70%水溶液)を得た。
【0051】
(製造例16):本発明品16
イソトリデカノールの代わりにイソトリデカノールのプロピレンオキシド10モル付加物を用いた他は、製造例9と同様にして本発明品16(但し70%水溶液)を得た。
以上の製造例1〜16を纏めると下記表1の通りである。
【0052】
【0053】
(比較品1)
【0054】
(比較品2)
(比較品3)
【0055】
<<実施例1>>
本発明の界面活性剤1〜16について、それぞれの水溶液の表面張力を、ウィルヘルミ法により測定した。結果を表2に示す。尚、試験条件は以下の通りである。
測定条件:0.1%水溶液 測定温度:25℃
【0056】
【0057】
<<実施例2>>
本発明の界面活性剤1〜16及び比較品1〜3について、それぞれのカーボンブラックの分散性能及びトルエンの乳化性能を測定した。結果を表3に示す。尚、試験方法は以下の通りである。
【0058】
<カーボンブラック分散性能試験方法>
容量100mLの共栓付メスシリンダーに、上記界面活性剤1g、カーボンブラック10gを入れ、水にて溶解分散させ100mLに調整した。次に、そのメスシリンダーを1分間に100回振盪した後、25℃にて1時間静置した。その後、液上面から30mLを抜き取り、グラスフィルターにて濾過した後、105℃にて、グラスフィルターを乾燥させ、グラスフィルター上の残査の質量を測定し、次式により分散性を算出した。
分散性能(%)={グラスフィルターの残査質量(g)/3(g)}×100
【0059】
<トルエンの乳化性能試験方法>
容量20mLの共栓付目盛り付き試験管に、上記界面活性剤の0.5%水溶液5mLとトルエン5mLを加えた。次に、その試験管を1分間に100回振盪した後、25℃にて1時間静置した。その後、乳化層の容量(mL)を測定し、次式により乳化性を算出した。
乳化性能(%)={乳化層の容量(mL)/10(mL)}×100
【0060】
【0061】
<<実施例3>>
本発明品3、6、15、及び比較品1〜3について、JIS−K0102の方法に従い、生分解性の試験を行った。即ち、BODは生物化学的酸素消費量であって、水中の好気性微生物によって消費される溶存酸素の量である。ここでは、試料を希釈水で希釈し、20℃で5日間放置したときに消費された溶存酸素の量である。また、TODは各試料の化学構造から求められる定数である。結果を以下の表4に示す。
【0062】
【0063】
<<実施例4>>
本発明の界面活性剤1〜16及び比較品1〜3について、乳化重合用乳化剤の性能を評価するために、アクリル酸エチル/アクリル酸ブチル/スチレンの混合物をモノマーとして乳化重合を行なった。得られたポリマーエマルジョンについて、その粒径、凝集物量、機械安定性、発泡性、及びポリマーエマルジョンから得られるフィルムについての耐水性を測定した。その結果を表5に示す。
【0064】
<重合方法>
還流冷却器、攪拌機、滴下ロート及び温度計を備えた反応容器に脱イオン水120gを仕込み、系内を窒素ガスで置換した。別に混合モノマー(アクリル酸エチル/アクリル酸ブチル/スチレン=40/30/30質量比)100gに本発明の界面活性剤1〜16又は比較品1〜3を4g溶解し、この内の10gと過硫酸アンモニウム0.08gを反応容器に加え、60℃で重合を開始した。そして残りのモノマーと界面活性剤の混合物を2時間にわたって反応器内に連続的に滴下し、滴下終了後2時間熟成しポリマーエマルジョンを得た。
【0065】
<粒径>
重合後の上記ポリマーエマルジョンの粒径を、電気泳動光散乱光度計(ELS−800、大塚電子製)を使用し、25℃にて測定した。
<凝集物量>
重合後の上記ポリマーエマルジョンを325メッシュの金網でろ過し、ろ過残渣を水で洗浄後、105℃にて2時間乾燥させ、この質量を測定し固形分に対する質量%で表した。
【0066】
<機械安定性>
重合後の上記ポリマーエマルジョンをディスパーにて、2,000rpmで2分間攪拌した後、上記の方法で凝集物量を測定し、機械安定性を評価した。
<発泡性>
重合後の上記ポリマーエマルジョンを水で2倍に希釈し、この希釈エマルジョン20mLを100mLの目盛り付き試験管に入れ、10秒間上下に激しく振盪させ、振盪直後及び5分後の泡量を測定した。
【0067】
<フィルムの耐水性>
重合後の上記ポリマーエマルジョンをガラス板に塗布して厚さ0.2mmのフィルムを作成し、このフィルムを50℃の水に浸漬し、白化してフィルムを通して8ポイントの文字が判別できなくなるまでの時間を測定し、耐水性を評価した。評価の基準は以下の通りである。
○:24時間以上経過しても文字が判別できた。
△:1時間以上経過すると文字が判別できなくなった。
×:1時間未満で文字が判別できなくなった。
【0068】
【0069】
<<実施例5>>
本発明の界面活性剤1〜16及び比較品1〜3について、懸濁重合用分散剤としての性能を評価するために、塩化ビニルをモノマーとして懸濁重合を行ない、得られた樹脂に対して以下の試験法により試験を行った。結果を表6に示す。
【0070】
<重合方法>
実施例4と同様の反応装置に脱イオン水100g、本発明の界面活性剤1〜16又は比較品1〜3を2g及びジ−2−エチルヘキシルパーオキジカーボネート0.2gを仕込み、反応装置内を7kPaとなるまで脱気して酸素を除いた後、塩化ビニルモノマーを100g仕込み、回転数500rpmで攪拌下に57℃に昇温して重合を行った。重合開始時、オートクレーブ内の圧力は0.8MPaであったが、重合開始7時間後、0.4MPaとなったので、この時点で重合を停止し、未反応の塩化ビニルモノマーをパージし、内容物を取り出し脱水乾燥した。
【0071】
<粒径分布>
得られた樹脂粒子のうち、250メッシュの篩(タイラーメッシュ基準の金網)を通過しない粒子の質量割合を測定した。
<耐水性試験>
以下の配合でゾルを調整し、ゾルを0.5mm厚として190℃で10分間加熱してシートとしたものを、23℃の水中に24時間浸漬した後の光透過率を測定した。
得られた樹脂 50部
フタル酸−ジ−2−エチルヘキシル 30部
Ba/Zn系安定剤 1部
【0072】
<熱性安定性試験>
耐水性試験に共したものと同じゾルをアルミニウム製モールドに注入し、190℃の熱風雰囲気下で30分後の色調の変化をA(変化少)〜E(変化大)の5段階で評価した。
【0073】
【0074】
<<実施例6>>
本発明の界面活性剤1〜16及び比較品1〜3について、樹脂改質剤としての性能を評価するために、スチレンの溶液重合を行ない、得られた樹脂に対して以下の試験法により試験を行った。尚、樹脂改質剤未添加のものをブランクとした。結果を表7に示す。
【0075】
<重合方法>
実施例4と同様の反応容器にキシレン100gを仕込み、系内を窒素ガスで置換した。別にスチレン150g、本発明の界面活性剤1〜16又は比較品1〜3を15g、過酸化ベンゾイル2g、ジ・ターシャリブチルパーオキサイド1gの混合溶液を調整し、反応温度130℃で上記混合溶液を2時間にわたり反応器内に連続的に滴下した。更に、キシレン10g、過酸化ベンゾイル0.5g、ジ・ターシャリブチルパーオキシド0.5gの混合溶液を滴下し、2時間反応させた。その後冷却して、ポリマー溶液を得た。
【0076】
<防曇性>
ガラス板状に、上記ポリマー溶液を塗布して、0.2mm厚のポリマーフィルム作製し、このポリマーフィルムに対する水の接触角を測定することにより防曇性を評価した。
【0077】
<帯電防止性>
上記ポリマーフィルムを温度20℃、湿度50%の雰囲気中に24時間放置後、表面固有抵抗を測定した。その後、家庭用台所洗剤で洗浄処理し、イオン交換水で十分に洗った後、表面の水分を乾燥除去してから温度20℃、湿度50%の雰囲気中に24時間放置後、表面固有抵抗を測定することにより帯電防止性を評価した。
【0078】
<帯電防止効果及び防曇性の持続性>
上記帯電防止効果及び防曇性の試験をした後のポリマーフィルムを、水を含ませた脱脂綿で50回水拭きした後、温度20℃、湿度35%の雰囲気中に30分間放置後、表面固有抵抗値及び水の接触角を測定した。
【0079】
【0080】
【発明の効果】
本発明の効果は、環境に対する影響が大きいとされるノニルフェニル基等のフェニルエーテル基を含有せず、フェニルエーテル基を含有する反応性界面活性剤と同等の性能を有する界面活性剤を提供したことにある。
Claims (3)
- 一般式(1)又は(2)において、R1の炭素数が8〜36である請求項1に記載の乳化重合用乳化剤。
- 一般式(1)又は(2)において、R1が3個以上のメチル基を有する分岐脂肪族炭化水素基である請求項1又は2に記載の乳化重合用乳化剤。
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