JP4008530B2 - 界面活性剤 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、界面活性剤に関し、更に、本発明は、該界面活性剤の具体的用途に関する。
【0002】
【従来の技術】
界面活性剤とは乳化、分散、洗浄、湿潤、起泡等の幅広い性能を有している。それらの諸性能を利用して、従来から繊維をはじめとし、紙、ゴム、プラスチック、金属、塗料、顔料、土木建築等あらゆる分野に利用されている。特に最近は界面活性剤を使用した末端商品の高性能化への動きが活発化してきており、それに伴って、界面活性剤が有する副次的な欠点も指摘されている。
【0003】
例えば、界面活性剤は塗料、印刷インキ、接着剤などではその製品の製造時、あるいは製品の安定化、更には作業性などの点で欠かすことができないものとして製品中に含有される。それら界面活性剤を含む製品が、塗布、印刷あるいは接着、粘着等の作業で現実に使用される場合は、本来、界面活性剤は不要であり、むしろ存在している界面活性剤によって、塗膜、印刷面、接着皮膜等の耐水性、耐油性等の性能を悪化させる場合が多い。
【0004】
又、樹脂を乳化重合によって製造する場合、通常の乳化剤を使用して乳化重合したエマルジョンには乳化剤に起因するエマルジョンの泡立ちが多くなること、又、エマルジョンからフィルムを作製した場合に乳化剤が遊離した状態でフィルム中に残るため、接着性、耐水性、耐侯性、耐熱性等のフィルム物性の低下などの問題点が指摘されている。
【0005】
又、従来懸濁重合用分散剤としては、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等のセルロース誘導体、ゼラチンあるいはポリビニルアルコール等の水溶性高分子等が使用されていた。しかし、この様な分散剤は重合後のビニル樹脂中にフリーで残存してしまい、それに起因してビニル樹脂の耐水性、耐候性、耐久性等の樹脂の物性を下げてしまうという問題があった。
【0006】
上記の様な欠点を解消するため、近年分子中に界面活性能を有する基と、重合性基を有する基を有し、乳化剤として作用するだけでなく、重合中徐々に重合体に、化学的な結合で取り込まれていく反応性界面活性剤に関する提案がなされている。
【0007】
例えば、(メタ)アリルエーテル基を有する反応性界面活性剤としては、親水基にポリエーテル鎖を有する化合物(特開昭63−319035号公報、特開昭63−151344号公報、特開昭63−214300号公報、特開昭63−54927号公報、特開昭63−54930号公報)、親水基にカルボン酸基を有する化合物(特開平7−18009号公報、特開平7−18010号公報、特開平9−31113号公報)、親水基にスルホン酸基を有する化合物(特開平1−99638号公報、特開昭63−214336号公報、特開昭63−54928号公報、特開昭62−286528号公報)、親水基にリン酸基を有する化合物(特開平1−99639号公報、特開昭63−214334号公報、特開昭63−12334号公報)等が挙げられる。
【0008】
一方、(メタ)アクリル酸エステル基を有する反応性界面活性剤としては、親水基にポリエーテル鎖を有する化合物(特開昭63−185436号、特開昭63−77530号公報)、親水基にスルホン酸基を有する化合物(特開平1−27627号公報、特開昭63−77531号公報)、親水基にリン酸基を有する化合物(特開平1−27628号公報、特開昭63−84625号公報、特開昭63−72333号公報)、親水基にカルボン酸基を有する化合物(特開平7−18011号公報)等が挙げられる。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
上記のような従来の反応性界面活性剤は、親水基としてポリオキシアルキレン基を含むものが殆どであったが、このような反応性界面活性剤を乳化剤として使用した乳化重合で得られたポリマーは、耐熱性や耐水性に問題があった。又、ABSのように乳化重合して得られたエマルションから塩析、酸析等の方法でポリマーを回収する場合は、凝集性が不十分となる欠点があった。
従って、本発明の目的は、乳化重合用乳化剤等として使用した場合に、ポリマーの耐熱性や耐水性を損なうことがない新規な界面活性剤を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
即ち、本発明は、下記の一般式(1)
【化2】
(式中、R1は、プロペニル基、アリル基又はメタリル基を表わし、R2は、炭化水素基を表わし、R3は、炭素数4以上の2価の炭化水素基を表わし、mは、0〜4の数を表わし、Mは、水素原子、金属原子又はアンモニウムを表わす。)で表わされる界面活性剤である。更に、本発明は、該界面活性剤の具体的用途にある。
【0011】
【発明の実施の形態】
上記一般式(1)において、R1は、プロペニル基、アリル基又はメタリル基を表わす。又、R2は、炭化水素基を表わす。炭化水素基としては例えば、アルキル基、アルケニル基、アリール基、シクロアルキル基、シクロアルケニル基等である。
【0012】
アルキル基としては例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、ターシャリブチル、ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、ターシャリペンチル、へキシル、ヘプチル、オクチル、2−エチルヘキシル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、トリデシル、イソトリデシル、ミリスチル、ペンタデシル、パルミチル、ヘプタデシル、ステアリル、イコシル、ドコシル、テトラコシル、トリアコンチル、2一オクチルドデシル、2−ドデシルヘキサデシル、2−テトラデシルオクタデシル、モノメチル分岐一イソステアリル等が挙げられる。
【0013】
アルケニル基としては例えば、ビニル、アリル、プロペニル、ブテニル、イソブテニル、ペンテニル、イソペンテニル、へキセニル、へプテニル、オクテニル、ノネニル、デセニル、ウンデセニル、ドデセニル、テトラデセニル、オレイル等が挙げられる。
【0014】
アリ一ル基としては例えば、フェニル、トルイル、キシリル、クメニル、メシチル、ベンジル、フェネチル、スチリル、シンナミル、ベンズヒドリル、トリチル、エチルフェニル、プロピルフェニル、ブチルフェニル、ペンチルフェニル、へキシルフェニル、ヘプチルフェニル、オクチルフェニル、ノニルフェニル、デシルフェニル、ウンデシルフェニル、ドデシルフェニル、フェニルフェニル、ベンジルフェニル、スチレン化フェニル、p−クミルフェニル、α−ナフチル、β−ナフチル基等が挙げられる。
【0015】
シクロアルキル基、シクロアルケニル基としては例えば、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、メチルシクロペンチル、メチルシクロヘキシル、メチルシクロヘプチル、シクロペンテニル、シクロヘキセニル、シクロヘプテニル、メチルシクロペンテニル、メチルシクロヘキセニル、メチルシクロヘプテニル基等が挙げられる。
【0016】
中でも、一般式(1)で表わされる化合物が、界面活性剤としての十分な疎水性を発揮するためには、R2は、アルキル基、アルケニル基又はアリ一ル基が好ましく、炭素数1〜18のアルキル基又はアルケニル基又は炭素数6〜24のアリール基がより好ましい。mは、R2の置換数を表わし、0〜4の数を表わすが、0〜2が好ましい。
【0017】
R3は、炭素数4以上の2価の炭化水素基を表わす。例えば、ブチレン、ペンタメチレン、ヘキサメチレン、ヘプタメチレン、オクタメチレン、ノナメチレン、デカメチレン、ウンデカメチレン、ドデカメチレン、トリデカメチレン、テトラデカメチレン、ペンタデカメチレン、ヘキサデカメチレン、ヘプタデカメチレン、オクタデカメチレン、ノナデカメチレン、イコサメチレン等のα,ω−2価炭化水素基、プロピルメチレン、ブチルメチレン、ペンチルメチレン、ヘキシルメチレン、ヘプチルメチレン、オクチルメチレン、ノニルメチレン、デシルメチレン、ウンデシルメチレン、ドデシルメチレン、トリデシルメチレン、テトラデシルメチレン、ペンタデシルメチレン、ヘキサデシルメチレン、ヘプタデシルメチレン、オクタデシルメチレン、ノナデシルメチレン、イコシルメチレン等のα,α−2価炭化水素基、エチルエチレン、プロピルエチレン、ブチルエチレン、ペンチルエチレン、ヘキシルエチレン、ヘプチルエチレン、オクチルエチレン、ノニルエチレン、デシルエチレン、ウンデシルエチレン、ドデシルエチレン、トリデシルエチレン、テトラデシルエチレン、ペンタデシルエチレン、へキサデシルエチレン、ヘプタデシルエチレン、オクタデシルエチレン、ノナデシルエチレン、イコシルエチレン等のα,β−2価炭化水素基、α,γ−2価炭化水素基、α,δ−2価炭化水素基等が挙げられる。
【0018】
Mは、水素原子、金属原子又はアンモニウムを表わす。金属原子としては例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属原子、マグネシウム、カルシウム等のアルカリ土類金属原子(但し、アルカリ土類金属原子は通常2価であるから、1/2)等が挙げられ、アンモニウムとしては例えば、アンモニアのアンモニウム、モノメチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、モノエチルアミン、ジエチルアミン、モノプロピルアミン、ジプロピルアミン、メチルエチルアミン、メチルプロピルアミン、エチルプロピルアミン等のアルキルアミンのアンモニウム又はモノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、メチルエタノールアミン、エチルエタノールアミン等のアルカノールアミン等のアンモニウム等が挙げられる。
【0019】
本発明の一般式(1)で表わされる化合物の製造方法は特に限定されないが、一般的には例えば、まずフェノール類とアルカリ金属とのアルコラートとハロゲン化(メタ)アリルとの反応、若しくはハロゲン化(メタ)アリルとフェノールをアルカリの存在下に加熱反応して得られる(メタ)アリルフェノールエーテル類を、クライゼン転移させて(メタ)アリルフェノール類を得る。次いで、必要に応じて、アルカリ存在下で加熱することによりアリル基をプロペニル基に変換する。その後、上記(メタ)アリルフェノール類又はプロペニルフェノール類を、下記の一般式(2)
【化3】
X−R4−COOM’(2)
[式中、Xは、ハロゲン原子を表わし、R4は、一般式(1)のR4と同一であり、M’は、水素原子、金属原子又はアンモニウムを表わす。]
で表わされるハロゲン化カルボン酸(塩)とアルカリ存在下、エーテル化することにより得られる。又、必要に応じて、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、アンモニア、トリエタノールアミン等のアルカリ又はアミン等で中和又は塩交換をしてもよい。エ一テル化反応の反応性、及び生成する一般式(1)で表わされる化合物を界面活性剤として使用する場合の乳化安定性を考慮した場合には、ω一ハロゲン化カルボン酸(塩)を使用することが好ましい。このような製造方法により一般式(1)で表わされる化合物を製造した場合、R4は、使用した一般式(2)で表わされるハロゲン化カルボン酸(塩)により決定される。
【0020】
本発明の一般式(1)で表わされる化合物は、界面活性能を有することから特に界面活性剤として好ましく使用することができる。従って、消泡剤、乳化剤、洗浄剤、分散剤、離型剤、繊維処理剤、接着剤、防曇剤、艶だし剤、ウレタンフォーム等の整泡剤、塗料用添加剤、帯電防止剤、滑剤、樹脂の内部潤滑剤、樹脂改質剤として使用することができ、特にビニル基等のラジカル重合系と反応性を有する界面活性剤として乳化重合用乳化剤、懸濁重合用分散剤、樹脂用改質(撥水性向上、親水性調節、相溶性向上、帯電防止性向上、防曇性向上、耐水性向上、接着性向上、染色性向上、造膜性向上、耐候性向上、耐ブロッキング性向上等)剤等に使用することができる。又、共重合体型界面活性剤(例えば特願平8−271026号等)の原料としても使用することができる。
【0021】
本発明の界面活性剤を乳化重合用乳化剤として使用する場合は、従来公知の乳化重合用乳化剤の通常の使用量の範囲で任意に使用することができるが、概ね原料モノマーに対して、好ましくは0.1〜20重量%、更に好ましくは0.2〜10重量%使用することができる。又、本発明の乳化重合用乳化剤と他の反応性又は非反応性乳化剤との併用も可能である。又、乳化重合する単量体に特に制限はないが、好ましくはアクリレート系エマルジョン、スチレン系エマルジョン、酢酸ビニル系エマルジョン、SBR(スチレン/ブタジエン)エマルジョン、ABS(アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン)エマルジョン、BR(ブタジエン)エマルジョン、IR(イソプレン)エマルジョン、NBR(アクリロニトリル/ブタジエン)エマルジョン等に好適に使用できる。
【0022】
アクリレート系エマルジョンとしては例えば、(メタ)アクリル酸(エステル)同士、(メタ)アクリル酸(エステル)/スチレン、(メタ)アクリル酸(エステル)/酢酸ビニル、(メタ)アクリル酸(エステル)/アクリロニトリル、(メタ)アクリル酸(エステル)/ブタジエン、(メタ)アクリル酸(エステル)/塩化ビニリデン、(メタ)アクリル酸(エステル)/アリルアミン、(メタ)アクリル酸(エステル)/ビニルピリジン、(メタ)アクリル酸(エステル)/アルキロールアミド、(メタ)アクリル酸(エステル)/N,N−ジメチルアミノエチルエステル、(メタ)アクリル酸(エステル)/N,N−ジエチルアミノエチルビニルエーテル等が挙げられる。
【0023】
スチレン系エマルジョンとしては、スチレン単独の他例えば、スチレン/アクリロニトリル、スチレン/ブタジエン、スチレン/フマルニトリル、スチレン/マレインニトリル、スチレン/シアノアクリル酸エステル、スチレン/酢酸フェニルビニル、スチレン/クロロメチルスチレン、スチレン/ジクロロスチレン、スチレン/ビニルカルバゾール、スチレン/N,N−ジフェニルアクリルアミド、スチレン/メチルスチレン、アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン、スチレン/アクリロニトリル/メチルスチレン、スチレン/アクリロニトリル/ビニルカルバゾール、スチレン/マレイン酸等が挙げられる。
【0024】
酢酸ビニル系エマルジョンとしては、酢酸ビニル単独の他例えば、酢酸ビニル/スチレン、酢酸ビニル/塩化ビニル、酢酸ビニル/アクリロニトリル、酢酸ビニル/マレイン酸(エステル)、酢酸ビニル/フマル酸(エステル)、酢酸ビニル/エチレン、酢酸ビニル/プロピレン、酢酸ビニル/イソブチレン、酢酸ビニル/塩化ビニリデン、酢酸ビニル/シクロペンタジエン、酢酸ビニル/クロトン酸、酢酸ビニル/アクロレイン、酢酸ビニル/アルキルビニルエーテル等が挙げられる。
【0025】
本発明の界面活性剤を懸濁重合用分散剤として使用する場合は、従来公知の懸濁重合用分散剤の通常の使用量の範囲で任意に使用することができるが、概ね原料モノマーに対して、好ましくは0.1〜20重量%、更に好ましくは0.2〜10重量%使用することができる。又、本発明の懸濁重合用分散剤と他の反応性又は非反応性分散剤、例えばボリビニルアルコール等との併用も可能である。又、懸濁重合する単量体に特に制限はなく、上記の重合性炭素−炭素二重結合を有する単量体の単独重合及び共重合に使用できるが、好ましくはハロゲン化オレフイン系、酢酸ビニル系等の重合に好適に使用できる。
【0026】
ハロゲン化オレフィン系の重合としては、塩化ビニル、塩化ビニリデン、塩化ビニル/マレイン酸(エステル)、塩化ビニル/フマル酸(エステル)、塩化ビニル/酢酸ビニル、塩化ビニル/塩化ビニリデン、塩化ビニリデン/酢酸ビニル、塩化ビニリデン/安息香酸ビニル等が挙げられる。
酢酸ビニル系の重合については上記と同様である。
【0027】
本発明の界面活性剤を乳化重合用乳化剤又は懸濁重合用分散剤として使用する場合は共重合可能な二重結合基を有するため、従来、非反応型乳化剤を使用した場合に問題となっていたエマルジョン又はサスペンジョンの泡立ち、エマルジョン又はサスペンジョンから得られるポリマーの諾物性(耐水性・耐候性・接着性等)の低下、製造工程から排出される排水中に乳化剤又は分散剤を含有するために起こる排水負荷、環境破壊等の種々の問題点を解決出来る。又、析出操作時に出る排水に該乳化剤又は該分散剤が含まれないため、排水負荷・環境破壊に繋がらないという利点を有する。この点については特にABS樹脂の製造時に顕著である。
【0028】
本発明の化合物は、従来の反応性界面活性剤と異なりポリオキシアルキレン基を有しないために、乳化重合用乳化剤等として使用した場合に、従来のポリオキシアルキレン基を含む反応性界面活性剤に比べて、得られたポリマーの耐熱性や耐水性を低下させるということが無い。又、ABS樹脂のように乳化重合して得られたエマルジョンからポリマーを塩析、酸析等の方法で回収する場合に、ポリマーの凝集性が低下するということがない。これは、ポリオキシアルキレン基を有さないという特定の構造を持つ本発明の化合物の特有の効果である。
【0029】
本発明の界面活性剤を乳化重合用乳化剤又は懸濁重合用分散剤として使用した乳化重合又は懸濁重合により得られたポリマーエマルジョンは、塗料、接着剤、粘着剤、インク、フイルム、コーテイング剤、紙塗工剤、サイズ剤、シーラー等に使用することができる。
【0030】
本発明の界面活性剤を樹脂改質剤として使用する場合、改質する樹脂の物性は例えば、親水性の調節、相溶性の向上、帯電防止性の向上、防曇性の向上、耐水性の向上、接着性の向上、染色性の向上、造膜性の向上、耐候性の向上、耐ブロッキング性の向上等である。改質の対象となる樹脂は特に限定されず、前記単量体の重合によって製造されるあらゆる樹脂に使用可能である。又、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアリールエーテル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂等にも使用することができる。中でも、改質の対象となる樹脂として好ましいものは塩化ビニル、塩化ビニリデン等のポリハロゲン化オレフイン類、エチレン、プロピレン等のポリα−オレフイン類等である。本発明の樹脂改質剤は、樹脂表面に塗工したり樹脂を加工する際に練りこむ等して添加することができる。又、樹脂製造時に単量体成分の一つとして他の単量体と重合させることにより樹脂の分子中に本発明の樹脂改質剤が組み込まれ、永久帯電防止等の永久改質効果を得ることができる。
【0031】
本発明の樹脂改質剤の使用量は、単量体の種類、改質の目的、要求される性能などにより、種々変えることができるが、単量体に対して好ましくは0.1〜80重量%使用する事ができ、特に親水性の不充分な水溶性樹脂を親水性の高い重合体にしようとする場合等では、単量体に対して1〜80重量%使用することがより好ましい。その他の用途、例えば耐水性、接着性、帯電防止性、防曇性、染色性、造膜性、耐侯性、耐ブロッキング性等の向上のため、あるいはポリマーアロイのための重合体に相溶化性を付与しようとする場合等には単量体に対して0.1〜60重量%使用することが好ましい。
【0032】
本発明の樹脂改質剤を使用する場合には樹脂物性の改善のためにジビニルベンゼン、エチレングリコールジメタクリレート、メチレンビスアクリルアミド等の架橋性ジビニル化合物等を通常の使用量の範囲で任意に使用することができる。更に、乳化重合用乳化剤、懸濁重合用分散剤、樹脂改質剤として使用する場合は例えば金属酸化剤の存在によって樹脂ボリマーを架橋させることも可能である。
【0033】
【実施例】
以下、本発明を実施例により、具体的に説明する。尚、以下の実施例等において%及び部は特に記載が無い限り重量基準である。
(製造例1)
撹拌機、還流器、温度計を備えた反応器にフェノール94g(1モル)、炭酸カリウム76g(1.1モル)、アリルクロライド84g(1.1モル)及び溶媒としてアセトン200gを仕込み、8時間還流させた。次に、水1kgでうすめ、油状の生成物をエーテルで抽出した。その後エ一テルを留去し、220℃で3時間撹拌した後、分留により精製して2−アリルフェノール109g(収率81%)を得た。この2−アリルフェノール67g(0.5モル)にナトリウムメチラート28%メタノール溶液1.3gを加え120℃で2時間加熱しアリル基を転移させて2−プロペニルフェノールとした後、6−ブロモヘキサン酸117g(0.6モル)及び溶媒としてメタノール100gを仕込み、ナトリウムメチラート28%メタノール溶液116g(0.6モル)を50℃で3時間かけて滴下した後、昇温し10時間還流させた。この後、塩化メチレン100g、5%硫酸水200gを加え、撹拌後静置して水層を除去した。この後、水200gで3回水洗し、次に、残った反応生成物を48%水酸化ナトリウムでpH8.0まで中和し、本発明の化合物1を得た。
【0034】
(製造例2)
実施例1と同様の操作でp−クミルフェノール、メタリルクロライド、4−クロロペンタン酸及び48%水酸化カリウム水溶液を原料にして本発明の化合物2を得た。但し、実施例1で行ったアリル基をプロペニル基に転移させる操作(ここではメタリル基をメチルプロペニル基に転移)は行わなかった。
【0035】
(製造例3)
実施例1と同様の操作でp−メチルフェノール、アリルクロライド、11−ブロモウンデカン酸及び48%水酸化カリウム水溶液を原料にして本発明の化合物3を得た。但し、実施例1で行ったアリル基をプロペニル基に転移させる操作は行わなかった。
【0036】
(製造例4)
実施例1と同様の操作で2,4−ジメチルフェノール、アリルクロライド、4−クロロペンタン酸及び48%水酸化カリウム水溶液を原料にして本発明の化合物4を得た。
【0037】
(製造例5)
実施例1と同様の操作でノニルフェノール、アリルクロライド、4−クロロペンタン酸及び48%水酸化カリウム水溶液を原料にして本発明の化合物5を得た。但し、実施例1で行ったアリル基をプロペニル基に転移させる操作は行わなかった。
【0038】
上記製造例1〜5で得られた本発明の化合物は以下のとおり。
本発明の化合物1:
【化4】
【0039】
本発明の化合物2:
【化5】
【0040】
本発明の化合物3:
【化6】
【0041】
本発明の化合物4:
【化7】
【0042】
本発明の化合物5:
【化8】
【0043】
以上の本発明の化合物について、実施例1において界面活性剤としての試験を、実施例2〜5において乳化重合用乳化剤としての試験を、実施例6において懸濁重合用分散剤としての試験を、実施例7及び8において樹脂改質剤としての試験を行った。尚、比較品として使用した化合物は以下のとおり。
比較品1:オレイン酸カリウム
比較品2:ノニルフェノール40モルエチレンオキサイド付加物
比較品3:ポリオキシアルキレン基を有する下記の反応性界面活性剤:
【化9】
【0044】
比較品4:ポリオキシアルキレン基を有する下記の反応性界面活性剤:
【化10】
【0045】
比較品5:ポリオキシアルキレン基を有する下記の反応性界面活性剤:
【化11】
【0046】
比較品6:ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム
比較品7:ステアリン酸モノグリセライド
【0047】
(実施例1:分散性試験)
容量100mlの共栓付メスシリンダーに、界面活性剤として本発明の化合物1〜5を1g、カーボンブラックを10gを入れ、水にて溶解分散させ100mlに調整した。次に、そのメスシリンダーを1分間に100回振とうした後、25℃にて1時間静置した。その後、液上面から30cc抜き取りグラスフィルターにて濾過し、105℃にて乾燥し、グラスフイルター上の残渣の重量よりカーボンブラック分散性を次式により測定した。
分散性能(%)=[グラスフィルターの残渣重量(g)/3]×100
【0048】
【表1】
【0049】
(実施例2:乳化安定性試験)
100mlの共栓付きメスシリンダーに、水49ml及び乳化重合用乳化剤として本発明の化合物1〜5又は比較品1〜5の1gを入れて溶解させた後、モノマー50mlを入れた。そのメスシリンダーを1分間に100回振とうした後、25℃にて24時間静置してエマルジョン層の量を測定した。尚、モノマーとしては、スチレン又はアクリル酸ブチルを用いた。
【0050】
【表2】
【0051】
(実施例3:SBR乳化重合能)
撹拌機、圧力計及び温度計を備えた耐圧反応容器に、乳化重合用乳化剤として本発明の化合物1〜5又は比較品1〜5の1.5g、スチレン50g、ブタジエン50g、過硫酸カリウム0.5g、t−ドデシルメルカプタン0.2g及び水100gを仕込み、窒素気流下70℃で5時間反応し、金網でろ過して、重合体ラテツクスを得た。以上の方法で得られた重合体ラテックスに対して以下の方法により評価・測定を行った。
【0052】
<評価・測定方法>
(1)重合安定性
重合後の上記重合体ラテックスを250メッシュの金網でろ過し、ろ過残渣を水で洗浄後、105℃にて2時間乾燥し、この重量を測定して固形分に対する重量%で表した。
(2)機械安定性
重合後の上記重合体ラテックス50gをマロン法安定度試験器で10kg、1000rpmの条件で5分間回転させ、生成した凝塊物を100メツシュの金網で濾過し、濾過残渣を水で洗浄後、105℃にて2時間乾燥し、この重量を測定して固形分に対する重量%で表した。
(3)発泡量
重合後の上記重合体ラテックスを水で2倍に希釈し、この希釈ラテックス20mlを100mlの目盛り付き試験管に入れ、10秒間上下に強振した時の泡量(ml)を測定した。
(4)フイルムの吸水率
重合後の上記重含体ラテックスから0.5mmのポリマーフィルムを作製し、50℃の温水に48時間浸漬後、重量変化を測定して浸漬前のポリマーフィルムに対する重量%で表した。
【0053】
【表3】
【0054】
(実施例4:ABS乳化重合能)
撹拌機、圧力計及び温度計を備えた耐圧反応容器に、乳化重合用乳化剤として本発明の化合物1〜5又は比較品1〜5の2g、ブタジエン100g、過硫酸カリウム0.3g、リン酸カリウム1g、水酸化カリウム0.1g、t−ドデシルメルカプタン0.2g及び水100gを仕込み、窒素気流下50℃で反応を開始した。反応が進むにつれて5℃刻みで昇温し、75℃になってから50時間熟成し、次に、ろ過してポリブタジエンラテックスを得た。
次に、還流冷却器、撹拌器、滴下ロート及び温度計を備えた反応容器に上記のポリブタジエンラテックス30g(固形分)、水70g(ポリブタジエンラテックス中の水を含む)を仕込み、窒素ガスで置換した。別にスチレン50g、アクリロニトリル20gと、乳化重合用乳化剤として本発明の化合物1〜5又は比較品1〜5の1gを混合溶解し、このうち7gと過硫酸カリウム0.5gを反応容器に加え、60℃でグラフト反応を開始した。残りのモノマー/乳化重合用乳化剤混合物を2時間にわたって反応容器内に連続滴下し、滴下終了後、更に2時間熟成し、次に、ろ過してABS重合体エマルジョンを得た。
得られた重合体エマルジョンに酸化防止剤として2,6−ジ−tert−ブチルフェノールを1g添加した後、濃硫酸1gを加えて凝集させ、ろ過して固形物と廃液に分けた。固形物を水洗乾燥して白色粉状のABS樹脂を得た。
【0055】
<評価・測定方法>
(1)重合安定性
上記ポリブタジエンラテックス及び重合後の上記ABS重合体エマルジョンを250メッシュの金網でろ過し、ろ過残渣を水で洗浄後、105℃にて2時間乾燥し、この重量を測定して固形分に対する重量%で表した。
(2)酸析性試験
重合後の上記重合体エマルジョンに濃硫酸を添加し、50℃で5分間撹拌後、静置した。その後、該重合体エマルジョンの凝集性を目視にて観察し、以下の基準で評価した。
◎:完全にエマルジョンが凝集し、上澄み液が透明であった。
○:大部分のエマルジョンが凝集し、上澄み液はやや白濁していた。
×:一部のエマルジョンが凝集し、上澄み液は明らかに白濁していた。
(3)COD(化学的酸素要求量)及びBOD(生物的酸素要求量)
JIS−K−0102(工業排水試験法)に準拠し、酸析後の廃水のCOD及びBODを測定した。
(4)アイゾット衝撃試験
上記ABS樹脂を200℃、69kg/cm2で射出成型してアイゾット衝撃試験用の試験片を作製し、JIS−K−7202(硬質プラスチックのアイゾット衝撃試験方法)に準拠し、上記ABS樹脂のアイゾット衝撃試験を行った。又、同様に試験片を130℃の恒温槽に空気気流下で48時間放置し、同様のアイゾット衝撃試験を行った。
【0056】
【表4】
*乳化重合用乳化剤として比較品2を使用して得られたエマルジョンは酸析性が不十分であったため、以後の試験を行うことができなかった。
【0057】
(実施例5:アクリレート乳化重合能)
還流冷却器、撹拌機、滴下ロート及び温度計を備えた反応容器に、水120gを仕込み、系内を窒素ガスで置換した。別に、アクリル酸エチル80gと、乳化重合用乳化剤として本発明の化合物1〜5又は比較品1〜5の4gを混合溶解し、このうち8.4gと、過硫酸カリウム0.08gと、亜硫酸ナトリウム0.04gを反応容器に加え、50℃で重合を開始した。その後、残りのモノマー/乳化重合用乳化剤混含物を2時間にわたって反応容器内に連続的に滴下し、滴下終了後、2時間熟成しエマルジョンを得た。以上の方法で得られた重合体エマルジョンに対して以下の方法により評価・測定を行った。
【0058】
<評価・測定方法>
(1)重合体安定性
重合後の上記重合体エマルジョンを325メッシュの金網でろ過し、ろ過残渣を水で洗浄後、105℃にて2時間乾燥し、この重量を測定して固形分に対する重量%で表した。
(2)機械安定性
重合後の上記重合体エマルジョン50gをマロン法安定度試験器で10kg、1000rpmの条件で5分間回転させ、生成した凝塊物を100メツシュの金網で濾過し、濾過残渣を水で洗浄後、105℃にて2時間乾燥し、この重量を測定して固形分に対する重量%で表した。
(3)発泡量
重合後の上記重合体エマルジョンを水で2倍に希釈し、この希釈エマルジョン20mlを100mlの目盛り付き試験管に入れ、10秒間上下に強振した時の泡量(ml)を測定した。
(4)フイルムの吸水率重合後の上記重合体ラテックスから0.5mmのポリマーフィルムを作製し、50℃の温水に24時間浸漬後、重量変化を測定して浸漬前のポリマーフィルムに対する重量%で表した。
【0059】
【表5】
【0060】
(実施例6:塩化ビニル懸濁重合能)
グラスライニングオートクレーブに、脱イオン水150g、懸濁重合用分散剤として本発明の化合物l〜5又は比較品1〜5の2g及びジ−2−エチルヘキシルパーオキシジカーボネート0.2gを仕込み、オートクレーブ内を50mmHgとなるまで脱気して酸素を除いた後、塩化ビニルモノマーを100g仕込み、回転数500rpmで撹拌下に57℃に昇温して重合を行った。
重合開始時、オートクレーブ内の圧力は8.0kg/cmGであったが、重合開始7時間後、4.0kg/cmGとなったので、この時点で重合を停止し、未反応の塩化ビニルモノマーをパージし、内容物を取り出し脱水乾燥した。上記の方法で得られたボリ塩化ビニルについて、以下の方法により試験を行った。
【0061】
(1)粒径分布
タイラーメッシュ基準の金網を使用した乾式篩分析により、得られた樹脂粒径のうち250メッシュを通過しない粒子の重量割合を測定した。
(2)フイルムの耐水性
上記の方法により得られたポリ塩化ビニルから0.5mm厚のポリマーフィルムを作製し、50℃の温水に浸漬させ、フィルムが白化するまでに要する時間を測定し、以下の基準で評価した。
◎:1目以上、○:1時間以上、×:1時間未満
【0062】
【表6】
【0063】
[実施例7:樹脂改質剤(共重合型)]
還流冷却器、撹拌器、滴下ロート及び温度計を備えた反応容器にキシレン100gを仕込み、系内を窒素ガスで置換した。別に、スチレン150g、樹脂改質剤として本発明の化合物1〜5の7.5g、過酸化ベンゾイル2g及びジ・ターシャリ−ブチルパーオキサイド1gの混合溶液を調製し、反応温度130℃で上記混合溶液を2時間にわたり反応器内に連続的に滴下した。更に、キシレン100g、過酸化ベンゾイル0.5g及びジ・ターシャリ−ブチルパーオキサイド0.5gの混合溶液を滴下し、2時間反応させた。その後、冷却し、キシレンを90g添加して重合体溶液を得た。
【0064】
比較のため、本発明の樹脂改質剤を加えずに反応させた重合体溶液を上記の方法と同様の方法にて調整し、比較品6及び7を重合体溶液の固形分に対して1%溶解させたものをそれぞれ用意した。
上記の方法で得られた各重合体溶液から、0.2mm厚のポリマーフィルムを常法により作製し、それぞれ以下の方法で帯電防止性、防曇性及び帯電防止効果並びに防曇性の持続性を評価した。
【0065】
(1)フイルムの帯電防止性
上記ポリマーフィルムを温度20℃、湿度35%の雰囲気中に24時間放置後、表面固有抵抗を測定した。
(2)フイルムの防曇性
上記ポリマーフイルムに対する水の接触角を測定した。
(3)帯電防止効果及び防曇性の持続性
上記(1)及び(2)の試験をした後のポリマーフィルムを、水を含ませた脱脂綿で50回水拭きした後、温度20℃、湿度35%の雰囲気中に30分間放置後、表面固有抵抗値及び水の接触角を測定した。
【0066】
【表7】
【0067】
[実施例8:樹脂改質剤(練り込み型)]
ポリスチレンの樹脂ペレット100gと、樹脂改質剤として本発明の化合物1〜5又は比較品6及び7の5gとを混練機に仕込み、210℃で30分間混練した。その後、10cm×10cm×5cmの型に流し込み、試験片を作成した。この試験片について、実施例7と同様に試験・評価を行った。
【0068】
【表8】
【0069】
【発明の効果】
本発明の効果は、新規な界面活性剤を提供したことにある。本発明の界面活性剤を乳化重合乳化剤又は懸濁重合分散剤として使用すれば、乳化重合又は懸濁重合で得られた樹脂の耐水性、耐候性、耐久性等を低下させることなく、特にABS樹脂のように塩析、酸析等を行う場合は樹脂の凝集性を低下させることはない。又、樹脂改質剤として使用すれば樹脂に様々な物性を付与することができる。
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