JP4195181B2 - 回り込みキャンセラ及び伝搬路特性測定装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、OFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing:直交周波数分割多重)方式によるデジタル放送やデジタル伝送において、放送波中継によるSFN(Single Frequency Network:単一周波数ネットワーク)を実現する際に発生する中継放送所の送受アンテナ間での電波の回り込み(以下、「回り込み」という。)を回路的に打ち消すための回り込みキャンセラに関するものであり、特に、親局からの信号に含まれるマルチパスの伝搬路特性を正確に推定することによって、親局からの信号に含まれるマルチパスを精度よくキャンセルすることができる回り込みキャンセラに関するものである。
【0002】
また、本発明は、OFDM信号に含まれる回り込みとマルチパスのうちの少なくとも一方の伝搬路特性を測定する伝搬路特性測定装置に関するものである。
【0003】
【従来の技術】
このような回り込みキャンセラは、例えば、本発明者らによる特願平10-162189号、特願平11-147885号、特願平11-156234号、特願平11-153430号、特願平11-266567号、特願平11-98829号、特願2000−156549号及び特願2000−219277号に記載されている。
【0004】
特願平10-162189号には、BST(Band Segmented Transmission)−OFDM用の回り込みキャンセラの基本構成が記載されている。
【0005】
特願平11-147885号には、複素除算による正規化手段を付加し、周波数同期回路への要求条件を緩和する構成が記載されている。
【0006】
特願平11-156234号には、DQPSK−OFDMなどのデジタル位相変調方式において、位相の逓倍によって総合伝達関数を算出する構成が記載されている。
【0007】
特願平11-153430号には、推定した回り込み波のインパルス応答において非線形処理を施し、回り込み伝搬路特性を周波数軸上で外挿する構成が記載されている。
【0008】
特願平11-266567号には、ISDB−T(Integrated Services Digital Broadcasting-Terrestrial)方式において、セグメント間で変調方式が互いに相違する場合の総合伝達関数の算出方式に関する構成が記載されている。
【0009】
特願平11-98829号には、OFDM復調に用いるFFT処理の矩形時間窓のタイミング誤差による総合伝達関数の誤差を補正する構成が記載されている。
【0010】
特願2000−156549号には、トランスバーサルフィルタのタップ係数を、過去のタップ係数から線形予測を行って設定することによって、回り込みの変動に対する回り込みキャンセラの追従特性を向上させる構成が記載されている。
【0011】
特願2000−219277号には、OFDM信号帯域外の雑音成分を除去するバンドパスフィルタと、バンドパスフィルタを挿入することによってキャンセルすることができなくなる遅延時間の短いマルチパスを等化するマルチパスキャンセル回路を付加して、回り込みキャンセラの安定動作及び遅延時間の短いマルチパスの等化を両立させる構成が記載されている。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記特願平10-162189号、特願平11-147885号、特願平11-156234号、特願平11-153430号、特願平11-266567号、特願平11-98829号、特願2000−156549号及び特願2000−219277号に記載されている回り込みキャンセラは、いずれも回り込み伝搬路特性を正しく推定するためのアルゴリズムにて動作しているので、親局からの信号に含まれるマルチパスの推定には誤差を生じ、マルチパスの受信電力が親局からの直接波(希望波)の受信電力とほぼ同程度の場合、推定誤差によってキャンセル動作が正常に行えなくなるおそれがある。
【0013】
また、マルチパスを含む信号の伝搬路特性を精度よく測定することが所望されている。
【0014】
本発明の目的は、マルチパス伝搬路特性を正確に推定し、マルチパスを精度よくキャンセルすることができる回り込みキャンセラを提供することである。
【0015】
本発明の他の目的は、マルチパスを含む信号の伝搬路特性を精度よく測定することができる伝搬路特性測定装置を提供することである。
【0016】
【課題を解決するための手段】
本発明による回り込みキャンセラは、
回り込み及びマルチパスを含む信号が入力される被減算端子と、これら回り込み及びマルチパスの複製が入力される減算端子とを有する減算器、
その減算器の演算結果に基づいて、前記回り込み及びマルチパスの複製を生成するフィルタ、
並びに、前記減算器の演算結果に基づいて、前記フィルタの係数を生成する回路を具え、
その回路が、
前記回り込みの特性を推定する手段と、
前記マルチパスの特性を推定する手段と、
前記両手段の出力である回り込みの特性及びマルチパスの特性に基づいて、前記フィルタの係数を決定する手段とを有することを特徴とするものである。
【0017】
本発明によれば、マルチパスの特性を推定し、それに基づいてフィルタの係数を設定しているので、マルチパスを精度よくキャンセルして、マルチパスによるキャンセル誤差を著しく小さくすることができ、その結果、マルチパスの受信電力が親局からの直接波(希望波)の受信電力とほぼ同程度の場合や、マルチパス及び回り込みの変動が比較的大きい場合でも、回り込みキャンセラの動作を安定させることができる。
【0018】
本発明による他の回り込みキャンセラは、
回り込み及びマルチパスを含む信号が入力される被減算端子と、これら回り込み及びマルチパスの複製が入力される減算端子とを有する第1減算器、
その第1減算器の演算結果が入力される被減算端子と、前記マルチパスの複製が入力される減算端子とを有する第2減算器、
その第2減算器の演算結果に基づいて、前記回り込み及びマルチパスの複製を生成する第1フィルタ、
前記第2減算器の演算結果に基づいて、前記マルチパスの複製を生成する第2フィルタ、
並びに、前記第2減算器の演算結果に基づいて、前記第1及び第2フィルタの係数をそれぞれ生成する回路を具え、
その回路が、
前記回り込みの特性を推定する手段と、
前記マルチパスの特性を推定する手段と、
前記両手段の出力である回り込みの特性及びマルチパスの特性に基づいて、前記第1及び第2フィルタの係数をそれぞれ決定する手段とを有することを特徴とするものである。
【0019】
本発明によれば、第1減算器及び第1フィルタによってキャンセルできない所定の値以下の遅延時間のマルチパスをキャンセルすることができるので、回り込みキャンセラの動作を更に安定させることができる。
【0020】
本発明による伝搬路特性測定装置は、
マルチパス及び回り込みを含む信号が入力され、その信号の周波数領域のデータから総合伝達関数を算出し、その総合伝達関数を出力する手段と、
その総合伝達関数の周波数方向の複素の平均を算出し、その平均を、前記信号の主波成分として出力する手段と、
前記両手段の出力である総合伝達関数及び主波成分に基づいて、親局からの直接波の成分を除去したマルチパス伝搬路特性を決定する手段とを具えることを特徴とするものである。
【0021】
本発明によれば、総合伝達関数及び主波成分に基づいて、親局からの直接波の成分で正規化したマルチパス伝搬路特性を決定するので、信号の直接波とマルチパスとのDU比(Desired to Undesired)比及び位相差を精度よく測定できる。また、伝搬路特性から直接波の成分が除去されるので、従来の伝搬路特性装置では精度よく測定できなかった直接波との時間差が少なくマルチパスを精度よく測定できる。
【0022】
本発明による他の伝搬路特性測定装置は、
前記両出力する手段の出力である総合伝達関数及び主波成分に基づいて、親局からの直接波の成分を除去した回り込み伝搬路特性を決定する手段を更に具えることを特徴とするものである。
【0023】
本発明によれば、回り込み伝搬路特性も考慮した伝搬路特性を測定することができ、特に回り込みの存在する中継放送所における測定の精度が更に向上する。
【0024】
【発明の実施の形態】
本発明による回り込みキャンセラ及び伝搬路特性測定装置の実施の形態を、図面を参照して詳細に説明する。なお、以下の説明における信号や伝達関数の表示については、大文字が複素数を示すベクトルを表すものとし、小文字が実数を表すものとする。また、ωは角周波数を表すものとする。
【0025】
図1は、本発明による回り込みキャンセラの第1の実施の形態を有するシステムの第1例のブロック図である。これは、本発明による回り込みキャンセラを使用して、受信信号に含まれるマルチパス及び中継放送所の送受アンテナ間での回り込みをキャンセルする方法の原理の一例を示すものである。
【0026】
なお、本例では、回り込み信号の複製を生成するトランスバーサルフィルタとして、FIR(Finite Impulse Response)フィルタを使用する。
【0027】
図1において、X(ω)は、親局からの希望波の周波数スペクトラムを表し、H(ω)は、マルチパス伝搬路1の伝達関数を表し、R(ω)は、受信変換部2に入力される受信OFMD信号の周波数スペクトラムを表し、G1(ω)は、受信変換部2の伝達関数を表し、S(ω)は、観測点Pにおける信号の周波数スペクトラムを表し、G2(ω)は、送信変換部3の伝達関数を表し、C(ω)は、回り込み伝搬路4の伝達関数を表し、C’(ω)は、FIRフィルタ5の伝達関数を表す。
【0028】
図1において、受信アンテナ6は、親局からの希望波X(ω)と、親局からの信号に含まれるマルチバス伝搬路1からのマルチパスH(ω)X(ω)と、回り込み伝搬路4からの回り込みC(ω)G2(ω)S(ω)との合成波を受信して、受信信号R(ω)を受信変換部2に出力する。
【0029】
受信変換部2は、受信アンテナ6からの受信信号R(ω)に対するフィルタ処理、周波数変換処理等を行った後の信号G1(ω)R(ω)を回り込みキャンセラ7に入力する。
【0030】
回り込みキャンセラ7に入力された信号G1(ω)R(ω)は、減算器8の被減算端子に入力される。減算器8は、信号G1(ω)R(ω)から、後に説明する減算端子への入力信号信号C’(ω)S(ω)を減算して、その結果をバンドパスフィルタ(BPF)9に出力する。
【0031】
BPF9は、減算器8の出力信号に対してバンドパスフィルタ処理を行い、観測点PにおけるOFDM信号S(ω)としてフィルタ係数生成回路10及びFIRフィルタ5に出力するとともに、回り込みキャンセラ7の出力として送信変換部3に出力する。ここで、BPF9は、図1に示すシステムにおいてOFDM信号が通過する受信アンテナ6から送信アンテナ11に至る経路の中で最も狭帯域となるバンドパスフィルタである。なお、BPF9の詳細な構成は、例えば、上記特願2000-219277号に記載されている。
【0032】
フィルタ係数生成回路10に入力された観測点Pにおける時間領域のOFDM信号は、FFT(Fast Fourier Transform)回路12において1シンボル分の有効シンボル期間データをFFTされることによって周波数領域のデータに変換され、そのデータは、周波数特性算出回路13に出力される。
【0033】
周波数特性算出回路13は、周波数領域のデータから総合伝達関数を算出し、それを、主波成分抽出回路14、回り込み特性推定回路15及びマルチパス特性推定回路16に出力する。ここで、フィルタ係数生成回路10によるフィルタ係数生成回数を表す時刻n(nを自然数とする。)におけるOFDMシンボルのキャリア番号k(KをOFDMキャリア本数を示す自然数とした場合、0≦k<Kの関係を有する。)に相当する総合伝達関数の複素データをF(k,n)と定義する。
【0034】
周波数特性算出回路13の動作は、例えば、上記特願平11−266567号に記載されている。
【0035】
主波成分抽出回路14は、周波数特性算出回路13から出力された総合伝達関数F(k,n)の平均を計算し、その平均値(複素数)を、F(k,n)に含まれる主波成分D(n)として回り込み特性推定回路15及びマルチパス特性推定回路16に出力する。ここで、時刻nの主波成分を示すD(n)は、
【0036】
【数1】
となる。
【0037】
主波成分抽出回路14の詳細な構成は、例えば、上記特願平11−147885号に記載されている。
【0038】
回り込み特性推定回路15は、キャンセル残差E1(k,n)を、回り込み特性式
【0039】
【数2】
を用いて総合伝達関数F(k,n)及び主波成分D(n)から算出し、そのキャンセル残差E1(k,n)を逆フーリエ変換して、回り込み伝搬路特性を示すインパルス応答T1(t,n)を、式
【0040】
【数3】
T1(t,n)=IFFT[E1(k,n)]
によって求め、インパルス応答T1(t,n)をイメージタップ除去回路17に出力する。ここで、IFFT[]は高速逆フーリエ変換を示し、tは、FIRフィルタのタップ番号を表す自然数であり、マルチパス及び回り込みのインパルス応答の遅延時間に対応する値である。
【0041】
マルチパス特性推定回路16は、キャンセル残差E2(k,n)を、マルチパス特性式
【0042】
【数4】
を用いて総合伝達関数F(k,n)及び主波成分D(n)から算出し、そのキャンセル残差E2(k,n)を逆フーリエ変換して、マルチパス伝搬路特性を示すインパルス応答T2(t,n)を、式
【0043】
【数5】
T2(t,n)=IFFT[E2(k,n)]
によって求め、インパルス応答T2(t,n)をイメージタップ除去回路17に出力する。
【0044】
イメージタップ除去回路17は、インパルス応答T1(t,n)及びT2(t,n)から、各々のインパルス応答に発生するイメージ成分を除去したインパルス応答T0(t,n)を算出して、それを周波数大域拡張回路18に出力する。
【0045】
ここで、イメージタップ除去回路17の動作を説明する。
図2A及びBはそれぞれ、1波の回り込み波が存在する場合の総合伝達関数F(k,n)を回り込み特性式で解いた結果のインパルス応答T1(t,n)及びマルチパス特性式で解いた結果のインパルス応答T2(t,n)の絶対値を示す図である。
【0046】
図3A及びBはそれぞれ、親局からの電波に直接波以外の1波のマルチパス波が存在する場合の総合伝達関数F(k,n)を回り込み特性式で解いた結果のインパルス応答T1(t,n)及びマルチパス特性式で解いた結果のインパルス応答T2(t,n)の絶対値を示す図である。
【0047】
図2Aでは、インパルス応答が一つであるのに対して、図2Bでは、図2Aと同一のインパルスの後にイメージ(虚像)a1,a2,a3のインパルス応答が存在している。一方、図3Bでは、インパルス応答が一つであるのに対して、図3Aでは、図3Bと同一のインパルスの後にイメージ(虚像)b1,b2,b3,b4のインパルス応答が存在している。本来のインパルス応答は、T1(t,n)及びT2(t,n)の両方に共通して存在している。
【0048】
すなわち、回り込みをマルチパス特性式で解く場合及びマルチパスを回り込み特性式で解く場合、インパルス応答の回り込みもマルチパスも存在しないタップの位置にイメージが生じる。これらのイメージを除去して出力するのがイメージタップ除去回路17の基本動作である。イメージタップ除去回路17におけるイメージの除去は、式
【0049】
【数6】
又は
【0050】
【数7】
によって行う。すなわち、T1(t,n)及びT2(t,n)に共通でない部分のタップは、イメージであると判定して除去する。この場合、αを、イメージ除去のためのしきい値とし、本例では、ノイズを考慮して0.05程度の値とする。
【0051】
図4A−Dはそれぞれ、1波のマルチパス及び1波の回り込みが存在する場合の総合伝達関数F(k,n)を回り込み特性推定回路15及びマルチパス特性推定回路16に入力したときの出力にそれぞれ対応する回り込み特性式の解T1(t,n)及びマルチパス特性式の解T2(t,n)の複素ベクトルデータの例をそれぞれI軸及びQ軸のデータで示す図である。すなわち、図4Aは、回り込み特性式の解I軸を表し、図4Bは、マルチパス特性式の解I軸を表し、図4Cは、回り込み特性式の解Q軸を表し、図4Dは、マルチパス特性式の解Q軸を表す。
【0052】
図5A及びBは、解T1(t,n)及び解T2(t,n)をイメージタップ除去回路17に入力した際の出力T0(t,n)を示す図である。図5A及びBに示すように、図4A−Dに示すような解T1(t,n)及び解T2(t,n)のイメージc1,c2,d1,d2,d3,d4,d5,e1,e2,e3,e4,e5,f1,f2,f3,f4,f5のインパルス応答が除去され、図4A−Dのマルチパスg,i又はh,j及び回り込みk,m又はl,nにそれぞれ対応するマルチパスo,p及び回り込みq,rのみが残る。これによって、イメージタップ除去回路17が有効に作用していることがわかる。
【0053】
周波数帯域拡張回路18は、イメージタップ除去回路17の出力T0(t,n)の有する周波数特性を拡張したインパルス応答I(t,n)を算出し、それを係数更新回路19に出力する。
【0054】
図6は、イメージタップ除去回路17からの出力T0(t,n)を周波数帯域拡張回路18に入力した場合の出力I(t,n)を示す図である。図6に示すインパルス応答は、図5のインパルス応答に比べて幅が狭くなっており、したがって、周波数特性が拡張されていることがわかる。
【0055】
周波数帯域拡張回路18の詳細な構成は、例えば、上記特願平11−153430号に記載されている。
【0056】
係数更新回路19は、周波数帯域拡張回路18からの出力I(t,n)と、後に説明する遅延回路20からの出力W(t,n−1)とを用いて、式
【0057】
【数8】
W’(t,n)=W(t,n−1)+μI(t,n)
の演算を行い、W’(t,n)をフィルタ係数ゲート回路21に出力する。
【0058】
フィルタ係数ゲート回路21は、係数更新回路19から出力れさるW’(t,n)からノイズ成分を除去したフィルタ係数W(t,n)を、遅延回路20及びFIRフィルタ5に出力する。
【0059】
フィルタ係数ゲート回路21の詳細な構成は、例えば、上記特願平11−153430号に記載されている。
【0060】
なお、FIRフィルタ24に供給されるフィルタ係数W(t,n)のうち、実際にフィルタ係数として使用されるものは、FIRフィルタ5のタップ長をM(Mを自然数とする。)とし、減算器8から出力された信号がBPF9、観測点P及びFIRフィルタ5を経由して減算器8の減算端子に入力されるまでに要するフィードバックの最小遅延時間を動作クロック回数で表したものをτ(τを自然数とする。)とした場合、フィルタのタップ番号tがτ<t≦τ+Mを満足する部分に限定される。
【0061】
すなわち、図1に示すシステムに含まれる回り込みキャンセラでは、0<t≦τの遅延時間のマルチパスと、t>τ+Mの遅延時間のマルチパス及び回り込みをキャンセルすることができない。ただし、t>τ+Mの遅延時間のマルチパス及び回り込みについては、FIRフィルタ5のタップ長Mを大きくすることによってそれらをキャンセルすることができる。
【0062】
図7は、本発明による回り込みキャンセラの第2の実施の形態のブロック図である。図7において、図1と同一の構成要素については同一符号を付す。
【0063】
図7に示す回り込みキャンセラ7aは、BFP9と観測点Pとの間に配置されたマルチパスキャンセル回路22と、フィルタ係数生成回路10内に存在するとともにフィルタ係数ゲート回路21とFIRフィルタ5との間に配置されたフィルタ係数分配回路23とを更に具える。マルチパスキャンセル回路22は、FIRフィルタ24と、減算器25とを有する。
【0064】
フィルタ係数分配回路23は、フィルタ係数ゲート回路21から出力されるフィルタ係数W(t,n)を、
【0065】
【数9】
と、
【0066】
【数10】
とに分割し、フィルタ係数WL(t,n)をFIRフィルタ24に供給するとともに、フィルタ係数WU(t,n)をFIRフィルタ5に供給する。
【0067】
FIRフィルタ24は、フィルタ係数WL(t,n)及び観測点PにおけるOFDM信号を用いてマルチパスの複製を生成し、それを減算器25の減算端子に出力する。減算器25は、被減算端子に入力されたBPF9の出力信号から減算端子に入力されたFIRフィルタ24からの出力信号を減算し、その結果を、観測点Pを通じて送信変換部4(図1)に出力する。
【0068】
マルチパスキャンセル回路22の目的は、BPF9の遅延が原因でFIRフィルタ5及び減算器8によってキャンセルできない減算器8へのフィードバック遅延τ以下の遅延時間のマルチパスをキャンセルすることにある。
【0069】
マルチパスキャンセル回路22の詳細な構成は、例えば、上記特願2000−180877号に記載されている。
【0070】
図8は、本発明による回り込みキャンセラの第3の実施の形態のブロック図である。図8において、図1又は7と同一の構成要素については同一符号を付す。
【0071】
回り込みキャンセラ7bと回り込みキャンセラ7a(図7)との相違点は、原理的に遅延τ以下の回り込みが存在し得ないことから、フィルタ係数生成回路10bにおいて、フィルタ係数分配回路23をマルチパス特性推定回路16の後段に配置し、マルチパスキャンセル回路22のフィルタ係数とFIRフィルタ5のフィルタ係数とを別々に更新するように構成したところにあり、このために、フィルタ係数生成回路10bは、周波数帯域拡張回路18、係数更新回路19、フィルタ係数ゲート回路20及び遅延回路21にそれぞれ対応する周波数帯域拡張回路26、係数更新回路27、フィルタ係数ゲート回路28及び遅延回路29を更に有する。
【0072】
フィルタ係数分配回路23は、マルチパス特性式の解T2(t,n)を
【0073】
【数11】
と、
【0074】
【数12】
とに分割し、T2L(t,n)を周波数帯域拡張回路26に出力するとともに、T2U(t,n)をイメージタップ除去回路17に出力する。
【0075】
イメージタップ除去回路17は、インパルス応答T1(t,n)及びT2U(t,n)から、各々のインパルス応答に発生するイメージ成分を除去したインパルス応答T0U(t,n)を算出し、それを周波数帯域拡張回路18に出力する。ここで、t≦τにおいて、T2U(t,n)が0であるので、イメージタップ除去回路17の出力のT0U(t,n)もt≦τにおいて0となる。
【0076】
本実施の形態において、フィルタ係数WU(t,n)及びWL(t,n)はそれぞれ、FIRフィルタ5及び24に供給される。このようにフィルタ係数を別々に更新することによって、フィルタ係数算出までの処理時間を短縮し、周波数帯域拡張回路を個別に有することによる伝搬路特性の変動に対する追従特性を向上させることができる。
【0077】
図9は、本発明による伝搬路特性測定装置の第1の実施の形態のブロック図である。図9において、図1又は7と同一の構成要素については同一符号を付す。
【0078】
図9に示す伝搬路特性測定装置30は、FFT回路12、周波数特性算出回路13、主波成分抽出回路14、回り込み特性推定回路15、マルチパス特性推定回路16及びイメージタップ除去回路17の他に、モニタ表示回路31及びデータ記録回路32を具える。
【0079】
伝搬路特性測定装置30には、回り込み及びマルチパスを含む被測定OFDM信号が入力される。入力された被測定OFDM信号は、FFT回路12、周波数特性算出回路13、主波成分抽出回路14、回り込み特性推定回路15、マルチパス特性推定回路16及びイメージタップ除去回路17において、回り込みキャンセラの上記実施の形態で説明したのと同様に処理される。イメージタップ除去回路17からの出力信号は、モニタ表示回路31及びデータ記録回路32に供給される。
【0080】
モニタ表示回路31は、イメージタップ除去回路17の出力信号を伝搬路特性としてモニタなどで表示できるように処理し、外部に出力する。ここで、モニタは、伝搬路特性測定装置内に配置するように構成することもできる。データ記録回路32は、イメージタップ除去回路17の出力信号を、伝搬路特性としてメモリ、記録媒体等に記録するように記録装置へ出力する。ここで、記録装置は、伝搬路特性測定装置内に配置するように構成することもできる。
【0081】
伝搬路特性測定装置30においては、図8のフィルタ係数生成回路10bにしめすように、フィルタ係数分配回路をマルチパス特性推定回路の後段に配置することもできる。この場合、イメージタップ除去回路17の出力信号及びフィルタ係数分配回路の出力信号を合成して、モニタ表示回路31及びデータ記録回路32に出力する。
【0082】
伝搬路特性測定装置30は、回り込みの存在する中継放送所における受信信号又は送信信号を分岐して、被測定OFDM信号として伝搬路特性を測定する場合の構成回路であり、中継放送所における信号以外の任意の受信点における受信信号の伝搬路特性を測定する場合には、回り込みが存在せず、その結果、回り込み特性推定回路15及びイメージタップ除去回路17が必要でなくなる。任意の受信点における伝搬路特性を測定する伝搬路特性測定装置の第2の実施の形態を図10に示す。図10において、図1,7又は9と同一の構成要素については同一符号を付す。
【0083】
図10に示す伝搬路特性測定装置33は、図9に示す伝搬路特性測定装置30から回り込み特性測定回路15及びイメージタップ除去回路17を除去し、マルチパス特性推定回路16の出力信号をモニタ表示回路31及びデータ記録回路32に直接入力している。なお、図10に示す伝搬路特性測定装置を用いて、回り込みの存在する中継放送所におけるOFDM信号の伝搬路特性を測定することもできるが、回り込みの測定結果に図2Bに示すようなイメージによる誤差を生じる。
【0084】
図9及び10に示す伝搬路特性測定装置30,33と従来の伝搬路特性測定装置との相違点は、マルチパス特性推定回路16において、上記マルチパス特性式[数4]を使用しているので、親局からの直接波とマルチパスとのDU(Desired to Undesired)比及び位相差を精度よく測定できる点である。また、マルチパス特性推定回路16から出力される伝搬路特性は、親局からの直接波の成分が除去されており、その結果、従来の伝搬路特性測定装置では精度よく測定できなかった親局からの直接波との時間差が少ないマルチパスを、精度よく測定することができる。
【0085】
本発明は、上記実施の形態に限定されるものではなく、幾多の変更及び変形が可能である。
例えば、フィルタとして、FIRフィルタ以外の他の任意のタイプのフィルタを使用することができる。また、図1,7,8の係数更新回路19の代わりに、例えば上記特願平2000−156549号に記載されているような予測型係数更新回路を用いることかできる。さらに、上記実施の形態で用いた式以外の他の任意の式を用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明による回り込みキャンセラの第1の実施の形態を有するシステムの第1例のブロック図である。
【図2】 1波の回り込み波が存在する場合の総合伝達関数F(k,n)を回り込み特性式で解いた際のインパルス応答T1(t,n)及びマルチパス特性式で解いた際のインパルス応答T2(t,n)の絶対値を示す図である。
【図3】 親局からの電波に主波以外の1波のマルチパス波が存在する場合の総合伝達関数F(k,n)を回り込み特性式で解いた際のインパルス応答T1(t,n)及びマルチパス特性式で解いた際のインパルス応答T2(t,n)の絶対値を示す図である。
【図4】 回り込み特性式の解T1(t,n)及びマルチパス特性式の解T2(t,n)の複素ベクトルデータの例をそれぞれI軸及びQ軸のデータで示す図である。
【図5】 解T1(t,n)及び解T2(t,n)をイメージタップ除去回路17に入力した際の出力T0(t,n)を示す図である。
【図6】 イメージタップ除去回路17からの出力T0(t,n)を周波数帯域拡張回路18に入力した場合の出力I(t,n)を示す図である。
【図7】 本発明による回り込みキャンセラの第2の実施の形態のブロック図である。
【図8】 本発明による回り込みキャンセラの第3の実施の形態のブロック図である。
【図9】 本発明による伝搬路特性測定装置の第1の実施の形態のブロック図である。
【図10】 本発明による伝搬路特性測定装置の第2の実施の形態のブロック図である。
【符号の説明】
1 マルチパス伝搬路
2 受信変換部
3 送信変換部
4 回り込み伝搬路
5,24 FIRフィルタ
6 受信アンテナ
7,7a,7b 回り込みキャンセラ
8,25 減算器
9 BPF
10,10a,10b フィルタ係数生成回路
11 送信アンテナ
12 FFT回路
13 周波数特性算出回路
14 主波成分抽出回路
15 回り込み特性推定回路
16 マルチパス特性推定回路
17 イメージタップ除去回路
18,26 周波数帯域拡張回路
19,27 係数更新回路
20,28 遅延回路
21,29 フィルタ係数ゲート回路
22 マルチパスキャンセル回路
23 フィルタ係数分配回路
30,33 伝搬路特性測定装置
31 モニタ表示回路
32 データ記録回路
P 観測点
Claims (4)
- 回り込み及びマルチパスを含む信号が入力される被減算端子と、これら回り込み及びマルチパスの複製が入力される減算端子とを有する減算器、
その減算器の演算結果に基づいて、前記回り込み及びマルチパスの複製を生成するフィルタ、
並びに、前記減算器の演算結果に基づいて、前記フィルタの係数を生成する回路を具え、
その回路が、
前記回り込みの特性を推定する手段と、
前記マルチパスの特性を推定する手段と、
前記両手段の出力である回り込みの特性及びマルチパスの特性に基づいて、前記フィルタの係数を決定する手段とを有することを特徴とする回り込みキャンセラ。 - 回り込み及びマルチパスを含む信号が入力される被減算端子と、これら回り込み及びマルチパスの複製が入力される減算端子とを有する第1減算器、
その第1減算器の演算結果が入力される被減算端子と、前記マルチパスの複製が入力される減算端子とを有する第2減算器、
その第2減算器の演算結果に基づいて、前記回り込み及びマルチパスの複製を生成する第1フィルタ、
前記第2減算器の演算結果に基づいて、前記マルチパスの複製を生成する第2フィルタ、
並びに、前記第2減算器の演算結果に基づいて、前記第1及び第2フィルタの係数をそれぞれ生成する回路を具え、
その回路が、
前記回り込みの特性を推定する手段と、
前記マルチパスの特性を推定する手段と、
前記両手段の出力である回り込みの特性及びマルチパスの特性に基づいて、前記第1及び第2フィルタの係数をそれぞれ決定する手段とを有することを特徴とする回り込みキャンセラ。 - マルチパス及び回り込みを含む信号が入力され、その信号の周波数領域のデータから総合伝達関数を算出し、その総合伝達関数を出力する手段と、
その総合伝達関数の周波数方向の複素の平均を算出し、その平均を、前記信号の主波成分として出力する手段と、
前記両手段の出力である総合伝達関数及び主波成分に基づいて、親局からの直接波の成分を除去したマルチパス伝搬路特性を決定する手段とを具えることを特徴とする伝搬路特性測定装置。 - 前記両出力する手段の出力である総合伝達関数及び主波成分に基づいて、親局からの直接波の成分を除去した回り込み伝搬路特性を決定する手段を更に具えることを特徴とする請求項3記載の伝搬路特性測定装置。
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