JP2000341242A - 回り込みキャンセラ - Google Patents

回り込みキャンセラ

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JP2000341242A JP11153430A JP15343099A JP2000341242A JP 2000341242 A JP2000341242 A JP 2000341242A JP 11153430 A JP11153430 A JP 11153430A JP 15343099 A JP15343099 A JP 15343099A JP 2000341242 A JP2000341242 A JP 2000341242A
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浩一郎 今村
Hiroyuki Hamazumi
啓之 濱住
Kazuhiko Shibuya
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 OFDM信号のデジタル伝送で、安定的な放
送波中継による単一周波数ネットワーク(SFN)の実
現可能な回り込みキャンセラを提供する。 【解決手段】 OFDM信号帯域内の信号の特性からO
FDM信号帯域内の回り込み伝送路特性を推定し(3,
4)、さらにOFDM信号帯域内の回り込み伝送路特性
を推定した結果からOFDM信号帯域外の回り込み伝送
路特性を外挿し(3,4)、外挿した回り込み伝送路特
性を用いてOFDM信号帯域内ばかりなくOFDM信号
帯域外の回り込みもキャンセルする(5)ことで、強い
回り込みが存在する場合に問題となるOFDM信号帯域
外における発振を防止して、安定的な放送波中継による
SFNを実現するものである。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、OFDM(Orth
ogonal Frequency Division Multiplexing) 信号からマ
ルチパスや送受アンテナ間の回り込みあるいは複数の送
信局により同一の信号が送信される複局送信時の本来受
信すべき親局以外からの受信などによる妨害波(以下、
回り込みと言う)の伝送路特性を推定しキャンセルする
回り込みキヤンセラに係り、特に、OFDM信号帯域内
の信号の特性からOFDM信号帯域内の伝送路特性を推
定し、さらにOFDM信号帯域内の伝送路特性を推定し
た結果からOFDM信号帯域外の伝送路特性を外挿する
ことで、OFDM信号帯域内ばかりでなくOFDM信号
帯域外の回り込みもキャンセルする回り込みキヤンセラ
に関するものである。
【0002】
【従来の技術】回り込みキヤンセラによって回り込みを
キャンセルする場合、OFDM信号の全てのキャリア、
またはOFDM信号に内挿されたCP(Continual Pilo
t signal) やSP(Scattered Pilot signal) などのパ
イロットキャリアを用いて回り込み伝送路特性を推定
し、回り込み伝送路特性の推定結果を用いて回り込みを
キャンセルする。しかしながら、従来の回り込みキヤン
セラではOFDM信号帯域内のキャリアからOFDM信
号帯域内の回り込み伝送路特性だけを推定していたた
め、キャンセルできる回り込みはOFDM信号帯域内だ
けに限定されていて、OFDM信号帯域外の回り込みの
成分はキャンセルできなかった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】回り込みの存在する伝
送路では、受信の希望波である親局波と回り込み波の位
相が同相となる周波数でレベルが上昇し、逆相となる周
波数でレベルが低下し、結果として周波数特性にリップ
ルが生じる。従釆の回り込みキヤンセラではOFDM信
号帯域内の複素周波数特性から推定した回り込み伝送路
特性を用いてOFDM信号帯域内の回り込みのみをキャ
ンセルしていたため、OFDM信号帯域外の回り込みの
成分はキャンセルできず周波数特性のリップルは残って
いた。特に親局波よりも回り込み波が強い場合、OFD
M信号帯域外のリップルの山の部分で発振が生じ、その
結果出力のOFDM信号が大きく劣化していた。
【0004】このOFDM信号帯域外における発振を抑
制する方法としてOFDM信号帯域だけを通過させるバ
ンドパスフィルタを使用することが考えられるが、OF
DM信号だけを通過させOFDM信号帯域外成分を完全
に遮断するような急峻なフィルタは実現が難しく、また
フィルタ帯域の端における位相回転がOFDM信号に与
える影響も無視できない。このためフィルタだけでOF
DM信号帯域外の発振を完全に抑制することは困難であ
った。
【0005】そこで本発明の目的は、OFDM方式によ
るデジタル伝送において、強い回り込みが存在する場合
に問題となるOFDM信号帯域内のみならずOFDM信
号帯域外における発振をも防止して、安定的な放送波中
継によるSFN(Single Freguency Network: 単一周波
数ネットワ−ク)を実現することの可能な回り込みキャ
ンセラを提供せんとするものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】この目的を達成するた
め、請求項1に記載された第1の発明による回り込みキ
ャンセラは、OFDM信号のデジタル伝送で、放送波中
継による単一周波数ネットワークを実現するため、中継
放送所の受信アンテナで受信された回り込み波をキャン
セルする中継放送所に設けられた回り込みキャンセラで
あって、前記中継放送所の受信アンテナで前記回り込み
波と加算され受信された親局波から前記回り込み波の複
製を減算して親局波のみを出力する減算器と、回り込み
観測信号を入力させその出力に前記回り込み波の複製を
出力させるFIRフィルタと、前記回り込み観測信号を
また入力させその出力に前記FIRフィルタに印加すべ
きFIRフィルタのフィルタ係数を生成して出力させる
フィルタ係数生成回路とを具えた回り込みキャンセラに
おいて、前記フィルタ係数生成回路が:受信したOFD
M信号を直交復調し複素ベースバンドOFDM信号を出
力する直交復調回路と;該直交復調回路の出力である複
素ベースバンドOFDM信号をFFTするFFT回路
と;該FFT回路の出力からOFDM信号帯域内の回り
込み伝送路特性を推定し出力するキャンセル残差演算回
路と;該キャンセル残差演算回路の出力であるOFDM
信号帯域内の回り込み伝送路特性をもってOFDM信号
帯域外の回り込み伝送路特性を外挿することでOFDM
信号の周波数帯域幅よりも広い帯域幅の回り込み伝送路
特性を出力する周波数帯域拡張回路と;を具え、該周波
数帯域拡張回路出力の回り込み伝送路特性をもってOF
DM信号帯域幅よりも広い周波数帯域に対して回り込み
をキャンセルできるよう構成したことを特徴とするもの
である。
【0007】また、請求項2に記載された第2の発明に
よる回り込みキャンセラは、上記第1の発明において、
前記周波数帯域拡張回路が:前記キャンセル残差演算回
路の出力である回り込み伝送路特性を時間軸のインパル
ス応答に変換して出力する逆フーリエ変換回路と;該変
換回路で出力されたインパルス応答のサイドローブを除
去するとともにメインローブのインパルス幅を狭くする
ゲート回路と;を具え、前記OFDM信号帯域内の回り
込み伝送路特性をOFDM信号帯域外へ連続して拡張す
るよう構成されたことを特徴とするものである。
【0008】また、さらに、請求項3に記載された第3
の発明による回り込みキャンセラは、上記第2の発明に
おいて、前記フィルタ係数生成回路が、前記周波数帯域
拡張回路の出力である回り込み伝送路特性のインパルス
応答の波形から振幅の小さな成分を除去することで、イ
ンパルス応答に含まれるノイズ成分を除去して出力する
フィルタ係数ゲート回路をさらに具えたことを特徴とす
るものである。
【0009】
【発明の実施の形態】以下添付図面を参照し、実施例に
より、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0010】従来の回り込み伝送路特性の推定では、O
FDM信号帯域内の信号だけを使って行うため、推定さ
れる回り込み伝送路特性は推定の際に使用したOFDM
信号帯域内の特性に限定される。OFDM信号帯域外の
回り込み伝送路特性の推定は、OFDM信号帯域内の信
号で推定した回り込み伝送路特性がOFDM信号帯域外
へ連続しているとして回り込み伝送路特性の外挿を行う
ことで実現される。OFDM信号帯域外へ外挿した回り
込み伝送路特性を用いて回り込みのキャンセルを行うこ
とで、OFDM信号帯域内ばかりでなく、OFDM信号
帯域外の回り込みのキャンセルも可能となる。
【0011】図1は、本発明による回り込みキャンセラ
を使用して中継放送所の送受アンテナ間の回り込みをキ
ャンセルする方法の原理的構成の一例をブロック線図に
て示している。図1において、1は本発明による回り込
みキャンセラ、2は中継放送機である。以下の説明にお
ける信号や伝達関数の表示については、大文字が複素
数、小文字が実数をそれぞれ表すものとする。また、ω
は角周波数、tはフィルタ係数におけるタップの位置を
それぞれ表すものとする。
【0012】このような構成において、親局からの希望
波は、図示の受信アンテナで回り込み波との合成波R
(ω)として受信され、受信信号として本発明による回
り込みキャンセラ1に入力される。回り込みキャンセラ
1は中継放送機2の入力である回り込み観測信号から回
り込みのOFDM信号帯域内の伝送路特性を推定し、O
FDM信号帯域内の回り込み伝送路特性を推定した結果
をOFDM信号帯域外へ外挿して、OFDM信号帯域よ
り広い周波数帯域を持つ回り込み伝送路特性を算出し、
算出した回り込み伝送路特性を回り込み観測信号に与え
ることで回り込み波の複製を作り出す。さらに受信信号
から回り込み波の複製を減算することで、回り込みキャ
ンセラ1の出力には親局からの希望波だけが出力され
る。この際、OFDM信号帯域内ばかりでなく、OFD
M信号帯域外の回り込みもキャンセルするため、回り込
み波が親局からの希望波よりも強い場合に従来の回り込
みキャンセラでは抑制できなかったOFDM信号帯域外
の発振についても抑制することが可能となる。
【0013】図2は、本発明による回り込みキャンセラ
1の実施例構成ブロック線図を示している。図2におい
て、3はフィルタ係数生成回路、4はFIR(Finite I
mpulse Response)フィルタ、5は減算器である。フィル
タ係数生成回路3は回り込み観測信号S(ω)を用いて
て回り込み観測信号の有効な周波数帯域よりも広い周波
数帯域を持つ回り込み伝送路特性を算出しF工Rフィル
タ4の係数P(t)として出力する。F工Rフィルタ4
は回り込み伝送路特性の推定結果であるフィルタ係数と
回り込み観測信号から回り込み波の複製を作り出し、減
算器5へ出力する。減算器5は回り込み波と希望波が合
成された受信アンテナからの受信信号からF工Rフィル
タ4の出力である回り込み波の複製を減算することで回
り込みをキャンセルし、希望波のみを出力する。
【0014】図3は、本発明による回り込みキャンセラ
の詳細なブロック線図を示している。図3において、6
は直交復調回路、7はFFT回路、8は送信信号発生
器、9は複素除算回路、10は主波成分抽出回路、11
はキャンセル残差演算回路、12は逆フーリエ変換回
路、13は周波数帯域拡張回路、14は係数更新回路、
15はフィルタ係数ゲート回路、16は遅延回路であ
る。なお、図3においては、図2と同一の信号処理を行
う部分には、同一符号を付して示している。
【0015】直交復調回路6において直交復調された回
り込み観測信号S(ω)は、FFT回路7でOFDM信
号の各キャリアに変換される。送信信号発生器8におい
て、FFT回路7の出力のキャリア信号をもとに既知の
振幅と位相を持つSP(Scattered Pilot signal)のキ
ャリア等、既知の送信信号X(ω)を作成し、回り込み
の一巡伝達関数を作成する複素除算回路9へ出力する。
複素除算回路9において、送信信号発生器8で得られた
既知のキャリアでFFT回路7の出力のキャリアを複素
除算して回り込み伝送路特性を示す伝達関数F(ω)を
得る。主波成分抽出回路10において、複素除算回路9
で得られた伝達関数から希望波の成分である主波成分を
算出する。キャンセル残差演算回路11において、複素
除算回路9で得られた伝達関数F(ω)と主波成分抽出
回路10で得られた希望波のキャリアの成分を用いて、
回り込み波とF工Rフィルタ4で作り出した回り込み波
の複製との差分の伝達関数E(ω)を得る。逆フーリエ
変換回路12において、回り込み波と回り込み波の複製
との差分の伝達関数をインパルス応答H(t)に変換す
る。周波数帯域拡張回路13において、逆フーリエ変換
回路12の出力の回り込み伝送路特性を示すインパルス
応答H(t)に対して周波数帯域を拡張する処理を行っ
たインパルス応答I(t)を出力する。係数更新回路1
4で、遅延回路16の出力である1シンボル前のフィル
タ係数W′(t)と周波数帯域拡張回路13の出力のイ
ンパルス応答I(t)に更新係数を掛け合わせたものと
を加算して出力W(t)する。フィルタ係数ゲート回路
15において、係数更新回路14の出力W(t)のフィ
ルタ係数と主波抽出回路10の出力である主波成分を比
較し、主波成分に対してノイズと見なすことができる振
幅の小さなフィルタ係数のタップを除去してFIRフィ
ルタ4へ出力P(t)する。
【0016】ここで、本発明による回り込みキヤンセラ
の原理を数式を用いて説明する。回り込み伝送路特性を
示す伝達関数をC(ω)、中継放送機の伝達関数をG
(ω)とする。親局からの希望波X(ω)は回り込み波
と合成されて受信アンテナで受信されるため、中継放送
機の入力信号をS(ω)とすると受信信号R(ω)は
(1)式で表される。 R(ω)=X(ω)+C(ω)G(ω)S(ω)
(1) FIRフィルタの係数を伝達関数で表してC′(ω)と
し、図2で求められるR(ω)−C′(ω)S(ω)=
S(ω)をも使用すると、回り込み系全体の一巡伝達関
数を示す伝達関数F(ω)は(2)式で表される。
【数1】 ここで、親局からの希望波X(ω)には、OFDM信号
の周波数方向に等間で内挿されているSP等のパイロッ
トキャリア、または、特殊シンボル等の既知のシンボル
などを用いて、(2)式のF(ω)を求める。回り込み
キャンセルの最適条件は、回り込み波とFIRフィルタ
で生成する回り込み波の複製が同じとなることであるか
ら、(3)式で表される。 C′(ω)=C(ω)G(ω) (3) ノイズの影響や回り込み伝送路特性の変動を考慮する
と、回り込み伝送路特性とフィルタ係数に差を生じるこ
とがある。この差によって現われるキャンセル残差をE
(ω)とすると、E(ω)は(4)式となる。 E(ω)=C(ω)G(ω)−C′(ω) (4) また、(4)式を(2)式を用いて変形すると(5)式
を得る。
【数2】 さらに、E(ω)を逆フーリエ変換してインパルス応答
H(t)に変換する。
【0017】ここで、H(t)は回り込み伝送路特性の
推定に用いたX(ω)やS(ω)の信号周波数帯域内の
回り込み伝送路特性しか持たないため、H(t)の持つ
周波数帯域を拡張する処理を行い、X(ω)やS(ω)
よりも広い周波数帯域の回り込み伝送路特性を持つI
(t)を得る。この処理については後で詳しく説明す
る。回り込み伝送路特性とフィルタ特性との差分により
生じたI(t)をOFDM信号における1シンボル前の
フィルタ係数であるW’(t)に加算して得られる新た
なフィルタ係数W(t)を(6)式に定義する。 W(t)=W′(t)+μI(t) (6)
【0018】ここで、μは更新係数であり、通常0<μ
≦1の値をとる。次にフィルタ係数W(t)のタップの
うち、ノイズ成分や主波成分と比較して十分に小さくノ
イズと区別できないような回り込み波の成分を除去する
処理を行い、ノイズ成分を除去したフィルタ係数P
(t)を得る。この処理についても後で詳しく説明す
る。FIRフィルタにおいて回り込み観測信号とフィル
タ係数P(t)の複素の畳み込み処理を行い、回り込み
の推定に用いたX(ω)やS(ω)よりも広い周波数帯
域の回り込み波の複製を作り、受信信号から回り込み波
の複製を減算することで回り込みをキャンセルする。回
り込みキャンセラでは、(6)式で示されるように、回
り込み伝送路特性が変動しても回り込みを常にキャンセ
ルするようにフィルタ係数の更新を行う。
【0019】図4は周波数帯域拡張回路13の詳細なブ
ロック線図を示している。図4において、17は絶対値
算出回路、18は最大値検出回路、19は閾値規定回
路、20は比較器、21はゲート回路である。回り込み
伝送路特性の周波数帯域拡張処理の原理について説明す
る。H(t)はOFDM信号帯域内の回り込み伝送路特
性E(ω)を逆フーリエ変換したものであるため、周波
数特性を矩形窓で切り取って逆フーリエ変換をしたとき
と同じように、H(t)はsinc関数(sin t /t)の
形をしている。H(t)の絶対値|H(t)|の波形
は、tが回り込み波の希望波からの遅延時間でピークと
なり、ピークの振幅は回り込み波と希望波の比を表す。
また、メインローブの半値幅はOFDM信号の周波数帯
域幅の逆数となり、もっとも振幅の大きなサイドローブ
はメインローブに対して約13dB小さくなる。一方、
周波数帯域幅に制限のない理想的な回り込み伝送路のイ
ンパルス応答は回り込み波の希望波からの遅延時間での
み振幅を持つインパルスとなり、サイドローブは存在し
ない。
【0020】ここで、OFDM信号帯域およびその近傍
の帯域の回り込み伝送路特性は、回り込み伝送路が空間
伝搬であるとすると、OFDM信号帯域内の回り込み伝
送路特性と大きく変わることはない。すなわち、sin
c関数の形となっているOFDM信号帯域内の回り込み
伝送路特性のインパルス応答を尖鋭化し、OFDM信号
帯域内の回り込み伝送路特性をOFDM信号帯域外へと
連続して拡張することで、OFDM信号帯域外の回り込
み伝送路特性を外挿し、回り込み伝送路特性の周波数帯
域を拡張する。
【0021】回り込み伝送路特性の周波数帯域の拡張
は、まず、絶対算出回路17で複素数であるH(t)の
絶対値|H(t)|を算出し出力する。最大値検出回路
18において、|H(t)|の最大値を求めメインロー
ブの振幅mとして出力する。閾値規定回路19におい
て、最大値検出回路18の出力mからH(t)に含まれ
るサイドローブを除去するための閾値aを算出する。こ
こでaは(7)式を満たす定数である。
【数3】 (7)式の左辺はもっとも大きなサイドローブの振幅を
示す。閾値aは、OFDM信号のサンプリング周波数や
OFDM信号の周波数帯域幅や回り込み伝送路のノイズ
等を考慮した上で、インパルス応答のサイドローブ部分
だけを除去し、回り込み波のインパルス応答のメインロ
ーブのピークだけが残り、回り込み波の回り込み伝送路
の一つ一つが一本のインパルスになる値に設定する。
【0022】比較器20において、|H(t)|<aを
比較し、比較結果が真であれば1を偽であれば0をゲー
ト回路21へ出力する。ゲート回路21において、比較
器20の出力が1であるH(t)については除去し、比
較器20の出力が0であるH(t)はそのままで出力す
る。すなわち、ゲート回路21の出力I(t)は(8)
式で表される。 I(t)= 0 |H(t)|<a (8) I(t)= H(t) |H(t)|≧a (8)式の処理を行うことで、OFDM信号帯域を拡張
した周波数帯域の回り込み伝送路特性のインパルス応答
I(t)を求めることができる。
【0023】図5(a)、(b)はこの原理に基づく回
り込み伝送路特性の周波数帯域拡張の過程を示してい
て、(a)は受信したOFDM信号から求めた回り込み
伝送路特性H(t)の絶対値の例、(b)は(a)のH
(t)からサイドローブを除去したインパルス応答I
(t)の絶対値である。また、図6(a)、(b)、
(c)、(d)はこの原理に基づく回り込み伝送路特性
の周波数帯域拡張前後の周波数特性を示していて、
(a)はH(t)の周波数振幅特性の例、(b)はH
(t)の周波数位相特性の例、(c)はI(t)の周波
数振幅特性の例、(d)はI(t)の周波数位相特性の
例をそれぞれ示している。また、図6(a)、(b)は
図5(a)に、図6(c)、(d)は図5(b)にそれ
ぞれ対応している。
【0024】回り込み伝送路特性の周波数帯域を広げる
方法として、時間軸のインパルス応答から求める方法と
は別に、周波数軸上で信号周波数帯域内の周波数特性を
連続して信号周波数帯域外に近似して拡張するという方
法があるが、図6を見てもわかる通り、複数の回り込み
がある場合の周波数特性は複雑であり、周波数特性の近
似式を算出して信号周波数帯域外へ外挿することは容易
ではない。それに対して、時間軸のインパルス応答で回
り込み伝送路特性の周波数帯域を広げる処理を行う場合
は、図4のような簡単な回路構成で実現でき、処理も簡
単であるという利点がある。
【0025】図7はフィルタ係数ゲート回路15の詳細
なブロック線図を示している。図7において、22は絶
対値算出回路、23はインパルス値算出回路、24は比
較器、25はゲート回路である。絶対値算出回路22に
おいて、係数更新回路14で更新されたフィルタ係数W
(t)の絶対値を計算し|W(t)|として出力する。
インパルス値算出回路23において、主波成分抽出回路
10の出力の主波成分から親局からの希望波のインパル
スの振幅dを求め、比較器24へ出力する。比較器24
で希望波のインパルスdに係数nを掛けた値と、|W
(t)|を比較し、|W(t)|<ndが真であれば1
を、偽であれば0をゲート回路25へ出力する。係数n
はフィルタ係数における親局からの希望波に対する比を
示しており、0<n≦1の値をとる。ゲート回路25に
おいて、比較器24の出力が1であるW(t)について
は除去し、比較器24の出力が0であるW(t)はその
ままで出力する。すなわち、ゲート回路25の出力P
(t)は(9)式で表される。P(t)= 0
|W(t)|<nd (9) P(t)= W(t) |W(t)|≧nd
【0026】(9)式の処理を行うことで、フィルタ係
数W(t)に含まれるノイズ成分を除去することがで
き、回り込みキャンセル後の信号がフィルタ係数のノイ
ズ成分によって劣化することを防ぐことができる。な
お、この処理は周波数帯域拡張回路13の処理を行わな
いH(t)のインパルス応答では、サイドローブとノイ
ズ成分の区別が困難であるが、W(t)のようにそれぞ
れの回り込み波が一本のインパルスとして示されている
インパルス応答では、単純にインパルスの振幅だけでノ
イズ成分との区別がつけられるため、簡単な回路構成で
ノイズ成分を除去し、精度のよい回り込みキヤンセラを
実現できる。
【発明の効果】
【0027】本発明によれば、回り込み伝送路特性の推
定に用いるOFDM信号より広い帯域幅をもつ回り込み
伝送路特性を供給することで、OFDM信号帯域内の回
り込みのキャンセルばかりでなく、OFDM信号帯域外
の回り込みのキャンセルも行うことが可能な回り込みキ
ヤンセラを実現でき、レベルの大きな回り込みがある中
継放送所においても、回り込みによる発振を抑制でき、
安定的な放送波中継が可能な回り込みキヤンセラを実現
できる。また、回り込みキヤンセラに供する回り込み伝
送路特性を表すフィルタ係数のノイズ成分を除去し、精
度のよい回り込みキヤンセラを実現できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明による回り込みキャンセラを使用して
中継放送所の送受アンテナ間の回り込みをキャンセルす
る方法の原理的構成の一例をブロツク線図で示す。
【図2】 本発明による回り込みキャンセラを簡単なブ
ロック線図で示す。
【図3】 本発明による回り込みキヤンセラを詳細な構
成ブロック線図で示す。
【図4】 図3中の周波数帯域拡張回路13の請求項2
に記述した詳細な信号処理系統を示す。
【図5】 回り込み伝送路特性の周波数帯域拡張の過程
をそれぞれインパルス応答波形で示す。
【図6】 回り込み伝送路特性の周波数帯域拡張の過程
をそれぞれ周波数特性で示す。
【図7】 図3中のフィルタ係数ゲート回路15の請求
項3に記述した詳細な信号処理系統を示す。
【符号の説明】
1 回り込みキャンセラ 2 中継放送機 3 フィルタ係数生成回路 4 FIRフィルタ 5 減算器 6 直交復調回路 7 FFT回路 8 送信信号発生器 9 複素除算回路 10 主波成分抽出回路 11 キャンセル残差演算回路 12 逆フーリエ変換回路 13 周波数帯域拡張回路 14 係数更新回路 15 フィルタ係数ゲート回路 16 遅延回路 17 絶対値算出回路 18 最大値検出回路 19 閾値規定回路 20 比較器 21 ゲート回路 22 絶対値算出回路 23 インパルス値算出回路 24 比較器 25 ゲート回路
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 澁谷 一彦 東京都世田谷区砧1丁目10番11号 日本放 送協会 放送技術研究所内 Fターム(参考) 5K022 DD00 DD13 DD19 5K046 BA00 BB00 EE37 EE57 EF11 PP00 5K072 AA00 AA22 AA28 BB14 CC00 CC33 DD15

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 OFDM信号のデジタル伝送で、放送波
    中継による単一周波数ネットワークを実現するため、中
    継放送所の受信アンテナで受信された回り込み波をキャ
    ンセルする中継放送所に設けられた回り込みキャンセラ
    であって、前記中継放送所の受信アンテナで前記回り込
    み波と加算され受信された親局波から前記回り込み波の
    複製を減算して親局波のみを出力する減算器と、回り込
    み観測信号を入力させその出力に前記回り込み波の複製
    を出力させるFIRフィルタと、前記回り込み観測信号
    をまた入力させその出力に前記FIRフィルタに印加す
    べきFIRフィルタのフィルタ係数を生成して出力させ
    るフィルタ係数生成回路とを具えた回り込みキャンセラ
    において、 前記フィルタ係数生成回路が:受信したOFDM信号を
    直交復調し複素ベースバンドOFDM信号を出力する直
    交復調回路と;該直交復調回路の出力である複素ベース
    バンドOFDM信号をFFTするFFT回路と;該FF
    T回路の出力からOFDM信号帯域内の回り込み伝送路
    特性を推定し出力するキャンセル残差演算回路と;該キ
    ャンセル残差演算回路の出力であるOFDM信号帯域内
    の回り込み伝送路特性をもってOFDM信号帯域外の回
    り込み伝送路特性を外挿することでOFDM信号の周波
    数帯域幅よりも広い帯域幅の回り込み伝送路特性を出力
    する周波数帯域拡張回路と;を具え、該周波数帯域拡張
    回路出力の回り込み伝送路特性をもってOFDM信号帯
    域幅よりも広い周波数帯域に対して回り込みをキャンセ
    ルできるよう構成したことを特徴とする回り込みキャン
    セラ。
  2. 【請求項2】 請求項1記載のキャンセラにおいて、前
    記周波数帯域拡張回路が:前記キャンセル残差演算回路
    の出力である回り込み伝送路特性を時間軸のインパルス
    応答に変換して出力する逆フーリエ変換回路と;該変換
    回路で出力されたインパルス応答のサイドローブを除去
    するとともにメインローブのインパルス幅を狭くするゲ
    ート回路と;を具え、前記OFDM信号帯域内の回り込
    み伝送路特性をOFDM信号帯域外へ連続して拡張する
    よう構成されたことを特徴とする回り込みキャンセラ。
  3. 【請求項3】 請求項2記載のキャンセラにおいて、前
    記フィルタ係数生成回路が、前記周波数帯域拡張回路の
    出力である回り込み伝送路特性のインパルス応答の波形
    から振幅の小さな成分を除去することで、インパルス応
    答に含まれるノイズ成分を除去して出力するフィルタ係
    数ゲート回路をさらに具えたことを特徴とする回り込み
    キャンセラ。
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