JP3787041B2 - 回り込みキャンセラ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、OFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing) 信号からマルチパスや送受アンテナ間の回り込みあるいは複数の送信局により同一の信号が送信される複局送信時の本来受信すべき親局以外からの受信などによる妨害波(以下、回り込みと言う)の伝送路特性を推定しキャンセルする回り込みキヤンセラに係り、特に、OFDM信号帯域内の信号の特性からOFDM信号帯域内の伝送路特性を推定し、さらにOFDM信号帯域内の伝送路特性を推定した結果からOFDM信号帯域外の伝送路特性を外挿することで、OFDM信号帯域内ばかりでなくOFDM信号帯域外の回り込みもキャンセルする回り込みキヤンセラに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
回り込みキヤンセラによって回り込みをキャンセルする場合、OFDM信号の全てのキャリア、またはOFDM信号に内挿されたCP(Continual Pilot signal) やSP(Scattered Pilot signal) などのパイロットキャリアを用いて回り込み伝送路特性を推定し、回り込み伝送路特性の推定結果を用いて回り込みをキャンセルする。しかしながら、従来の回り込みキヤンセラではOFDM信号帯域内のキャリアからOFDM信号帯域内の回り込み伝送路特性だけを推定していたため、キャンセルできる回り込みはOFDM信号帯域内だけに限定されていて、OFDM信号帯域外の回り込みの成分はキャンセルできなかった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
回り込みの存在する伝送路では、受信の希望波である親局波と回り込み波の位相が同相となる周波数でレベルが上昇し、逆相となる周波数でレベルが低下し、結果として周波数特性にリップルが生じる。従釆の回り込みキヤンセラではOFDM信号帯域内の複素周波数特性から推定した回り込み伝送路特性を用いてOFDM信号帯域内の回り込みのみをキャンセルしていたため、OFDM信号帯域外の回り込みの成分はキャンセルできず周波数特性のリップルは残っていた。特に親局波よりも回り込み波が強い場合、OFDM信号帯域外のリップルの山の部分で発振が生じ、その結果出力のOFDM信号が大きく劣化していた。
【0004】
このOFDM信号帯域外における発振を抑制する方法としてOFDM信号帯域だけを通過させるバンドパスフィルタを使用することが考えられるが、OFDM信号だけを通過させOFDM信号帯域外成分を完全に遮断するような急峻なフィルタは実現が難しく、またフィルタ帯域の端における位相回転がOFDM信号に与える影響も無視できない。このためフィルタだけでOFDM信号帯域外の発振を完全に抑制することは困難であった。
【0005】
そこで本発明の目的は、OFDM方式によるデジタル伝送において、強い回り込みが存在する場合に問題となるOFDM信号帯域内のみならずOFDM信号帯域外における発振をも防止して、安定的な放送波中継によるSFN(Single Freguency Network: 単一周波数ネットワ−ク)を実現することの可能な回り込みキャンセラを提供せんとするものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
この目的を達成するため、請求項1に記載された第1の発明による回り込みキャンセラは、OFDM信号のデジタル伝送で、放送波中継による単一周波数ネットワークを実現するため、中継放送所の受信アンテナで受信された回り込み波をキャンセルする中継放送所に設けられた回り込みキャンセラであって、前記中継放送所の受信アンテナで前記回り込み波と加算され受信された親局波から前記回り込み波の複製を減算して親局波のみを出力する減算器と、回り込み観測信号を入力させその出力に前記回り込み波の複製を出力させるFIRフィルタと、前記回り込み観測信号をまた入力させその出力に前記FIRフィルタに印加すべきFIRフィルタのフィルタ係数を生成して出力させるフィルタ係数生成回路とを具えた回り込みキャンセラにおいて、前記フィルタ係数生成回路が:受信したOFDM信号をFFTして周波数領域のキャリア信号に変換するFFT手段と;該FFT手段から出力される周波数領域のキャリア信号からOFDM信号帯域内の伝達関数を算出する伝達関数算出手段と、該伝達関数算出手段から出力される伝達関数からOFDM信号帯域内の回り込みのキャンセル残差の周波数特性を算出して出力するキャンセル残差演算手段と;該キャンセル残差演算手段から出力されるキャンセル残差の周波数特性を逆フーリエ変換して前記FIRフィルタに印加するフィルタ係数のもととなるインパルス応答に変換して出力する逆フーリエ変換手段と;を少なくとも具え、前記キャンセル残差演算手段の出力であるOFDM信号帯域内のキャンセル残差の周波数特性を用いてOFDM信号帯域外の回り込みのキャンセル残差の周波数特性に外挿する周波数帯域拡張手段を具えることでOFDM信号の周波数帯域幅よりも広い周波数帯域に対して回り込みをキャンセルできるように構成したことを特徴とするものである。
【0007】
また、請求項2に記載された第2の発明による回り込みキャンセラは、上記第1の発明において、前記周波数帯域拡張手段が:前記逆フーリエ変換手段からのキャンセル残差のインパルス応答の信号が入力されており、入力された前記キャンセル残差のインパルス応答の振幅を算出して出力する絶対値算出回路と;該絶対値算出回路から出力されるインパルス応答の振幅の最大値を検出して出力する最大値検出回路と;該最大値検出回路から出力されるインパルス応答の最大値を用いて閾値を算出して出力する閾値規定回路と;該閾値規定回路から出力される閾値と前記絶対値算出回路から出力されるインパルス応答の振幅を比較して閾値よりも大きな振幅のインパルス応答の情報を出力する比較器と;該比較器からの情報と前記逆フーリエ変換手段からのキャンセル残差のインパルス応答の信号が入力され、入力された信号のうち前記比較器からの情報から前記閾値よりも大きな振幅のインパルス応答はそのまま出力し、それ以外は0を出力するように構成したゲート回路と;を具え、前記OFDM信号帯域内の周波数特性をOFDM信号帯域外へ連続して拡張するように構成されたことを特徴とするものである。
【0008】
また、さらに、請求項3に記載された第3の発明による回り込みキャンセラは、上記第1または第2の発明において、前記フィルタ係数生成回路が:前記周波数帯域拡張手段から前記FIRフィルタの間に、前記FIRフィルタに印加すべきフィルタ係数となるインパルス応答の振幅を算出して出力する第2の絶対値算出回路と;前記伝達関数算出手段から出力される信号を平均化することで得られる主波成分を用いてインパルス応答におけるノイズ成分の振幅の閾値を設定するインパルス値算出回路と;該インパルス値算出回路から出力される閾値と前記第2の絶対値算出回路から出力されるインパルス応答の振幅を比較して閾値よりも大きな振幅のインパルス応答の情報を出力する第2の比較器と;該第2の比較器からの情報と前記フィルタ係数となるインパルス応答の信号が入力され、入力された信号のうち前記第2の比較器からの情報から前記閾値よりも大きな振幅のインパルス応答はそのまま出力し、それ以外は0を出力するように構成したゲート回路と;から構成されるフィルタ係数ゲート回路をさらに具え、前記FIRフィルタに印加すべきフィルタ係数に含まれるノイズ成分を除去して出力するように構成したことを特徴とするものである。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下添付図面を参照し、実施例により、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0010】
従来の回り込み伝送路特性の推定では、OFDM信号帯域内の信号だけを使って行うため、推定される回り込み伝送路特性は推定の際に使用したOFDM信号帯域内の特性に限定される。OFDM信号帯域外の回り込み伝送路特性の推定は、OFDM信号帯域内の信号で推定した回り込み伝送路特性がOFDM信号帯域外へ連続しているとして回り込み伝送路特性の外挿を行うことで実現される。OFDM信号帯域外へ外挿した回り込み伝送路特性を用いて回り込みのキャンセルを行うことで、OFDM信号帯域内ばかりでなく、OFDM信号帯域外の回り込みのキャンセルも可能となる。
【0011】
図1は、本発明による回り込みキャンセラを使用して中継放送所の送受アンテナ間の回り込みをキャンセルする方法の原理的構成の一例をブロック線図にて示している。図1において、1は本発明による回り込みキャンセラ、2は中継放送機である。以下の説明における信号や伝達関数の表示については、大文字が複素数、小文字が実数をそれぞれ表すものとする。また、ωは角周波数、tはフィルタ係数におけるタップの位置をそれぞれ表すものとする。
【0012】
このような構成において、親局からの希望波は、図示の受信アンテナで回り込み波との合成波R(ω)として受信され、受信信号として本発明による回り込みキャンセラ1に入力される。回り込みキャンセラ1は中継放送機2の入力である回り込み観測信号から回り込みのOFDM信号帯域内の伝送路特性を推定し、OFDM信号帯域内の回り込み伝送路特性を推定した結果をOFDM信号帯域外へ外挿して、OFDM信号帯域より広い周波数帯域を持つ回り込み伝送路特性を算出し、算出した回り込み伝送路特性を回り込み観測信号に与えることで回り込み波の複製を作り出す。さらに受信信号から回り込み波の複製を減算することで、回り込みキャンセラ1の出力には親局からの希望波だけが出力される。この際、OFDM信号帯域内ばかりでなく、OFDM信号帯域外の回り込みもキャンセルするため、回り込み波が親局からの希望波よりも強い場合に従来の回り込みキャンセラでは抑制できなかったOFDM信号帯域外の発振についても抑制することが可能となる。
【0013】
図2は、本発明による回り込みキャンセラ1の実施例構成ブロック線図を示している。図2において、3はフィルタ係数生成回路、4はFIR(Finite Impulse Response)フィルタ、5は減算器である。
フィルタ係数生成回路3は回り込み観測信号S(ω)を用いてて回り込み観測信号の有効な周波数帯域よりも広い周波数帯域を持つ回り込み伝送路特性を算出しF工Rフィルタ4の係数P(t)として出力する。F工Rフィルタ4は回り込み伝送路特性の推定結果であるフィルタ係数と回り込み観測信号から回り込み波の複製を作り出し、減算器5へ出力する。減算器5は回り込み波と希望波が合成された受信アンテナからの受信信号からF工Rフィルタ4の出力である回り込み波の複製を減算することで回り込みをキャンセルし、希望波のみを出力する。
【0014】
図3は、本発明による回り込みキャンセラの詳細なブロック線図を示している。図3において、6は直交復調回路、7はFFT回路、8は送信信号発生器、9は複素除算回路、10は主波成分抽出回路、11はキャンセル残差演算回路、12は逆フーリエ変換回路、13は周波数帯域拡張回路、14は係数更新回路、15はフィルタ係数ゲート回路、16は遅延回路である。なお、図3においては、図2と同一の信号処理を行う部分には、同一符号を付して示している。
【0015】
直交復調回路6において直交復調された回り込み観測信号S(ω)は、FFT回路7でOFDM信号の各キャリアに変換される。送信信号発生器8において、FFT回路7の出力のキャリア信号をもとに既知の振幅と位相を持つSP(Scattered Pilot signal)のキャリア等、既知の送信信号X(ω)を作成し、回り込みの一巡伝達関数を作成する複素除算回路9へ出力する。複素除算回路9において、送信信号発生器8で得られた既知のキャリアでFFT回路7の出力のキャリアを複素除算して回り込み伝送路特性を示す伝達関数F(ω)を得る。主波成分抽出回路10において、複素除算回路9で得られた伝達関数から希望波の成分である主波成分を算出する。キャンセル残差演算回路11において、複素除算回路9で得られた伝達関数F(ω)と主波成分抽出回路10で得られた希望波のキャリアの成分を用いて、回り込み波とF工Rフィルタ4で作り出した回り込み波の複製との差分の伝達関数E(ω)を得る。逆フーリエ変換回路12において、回り込み波と回り込み波の複製との差分の伝達関数をインパルス応答H(t)に変換する。周波数帯域拡張回路13において、逆フーリエ変換回路12の出力の回り込み伝送路特性を示すインパルス応答H(t)に対して周波数帯域を拡張する処理を行ったインパルス応答I(t)を出力する。係数更新回路14で、遅延回路16の出力である1シンボル前のフィルタ係数W′(t)と周波数帯域拡張回路13の出力のインパルス応答I(t)に更新係数を掛け合わせたものとを加算して出力W(t)する。フィルタ係数ゲート回路15において、係数更新回路14の出力W(t)のフィルタ係数と主波抽出回路10の出力である主波成分を比較し、主波成分に対してノイズと見なすことができる振幅の小さなフィルタ係数のタップを除去してFIRフィルタ4へ出力P(t)する。
【0016】
ここで、本発明による回り込みキヤンセラの原理を数式を用いて説明する。
回り込み伝送路特性を示す伝達関数をC(ω)、中継放送機の伝達関数をG(ω)とする。親局からの希望波X(ω)は回り込み波と合成されて受信アンテナで受信されるため、中継放送機の入力信号をS(ω)とすると受信信号R(ω)は(1)式で表される。
R(ω)=X(ω)+C(ω)G(ω)S(ω) (1)
FIRフィルタの係数を伝達関数で表してC′(ω)とし、図2で求められるR(ω)−C′(ω)S(ω)=S(ω)をも使用すると、回り込み系全体の一巡伝達関数を示す伝達関数F(ω)は(2)式で表される。
【数1】
ここで、親局からの希望波X(ω)には、OFDM信号の周波数方向に等間で内挿されているSP等のパイロットキャリア、または、特殊シンボル等の既知のシンボルなどを用いて、(2)式のF(ω)を求める。
回り込みキャンセルの最適条件は、回り込み波とFIRフィルタで生成する回り込み波の複製が同じとなることであるから、(3)式で表される。
C′(ω)=C(ω)G(ω) (3)
ノイズの影響や回り込み伝送路特性の変動を考慮すると、回り込み伝送路特性とフィルタ係数に差を生じることがある。この差によって現われるキャンセル残差をE(ω)とすると、E(ω)は(4)式となる。
E(ω)=C(ω)G(ω)−C′(ω) (4)
また、(4)式を(2)式を用いて変形すると(5)式を得る。
【数2】
さらに、E(ω)を逆フーリエ変換してインパルス応答H(t)に変換する。
【0017】
ここで、H(t)は回り込み伝送路特性の推定に用いたX(ω)やS(ω)の信号周波数帯域内の回り込み伝送路特性しか持たないため、H(t)の持つ周波数帯域を拡張する処理を行い、X(ω)やS(ω)よりも広い周波数帯域の回り込み伝送路特性を持つI(t)を得る。この処理については後で詳しく説明する。
回り込み伝送路特性とフィルタ特性との差分により生じたI(t)をOFDM信号における1シンボル前のフィルタ係数であるW’(t)に加算して得られる新たなフィルタ係数W(t)を(6)式に定義する。
W(t)=W′(t)+μI(t) (6)
【0018】
ここで、μは更新係数であり、通常0<μ≦1の値をとる。
次にフィルタ係数W(t)のタップのうち、ノイズ成分や主波成分と比較して十分に小さくノイズと区別できないような回り込み波の成分を除去する処理を行い、ノイズ成分を除去したフィルタ係数P(t)を得る。この処理についても後で詳しく説明する。
FIRフィルタにおいて回り込み観測信号とフィルタ係数P(t)の複素の畳み込み処理を行い、回り込みの推定に用いたX(ω)やS(ω)よりも広い周波数帯域の回り込み波の複製を作り、受信信号から回り込み波の複製を減算することで回り込みをキャンセルする。
回り込みキャンセラでは、(6)式で示されるように、回り込み伝送路特性が変動しても回り込みを常にキャンセルするようにフィルタ係数の更新を行う。
【0019】
図4は周波数帯域拡張回路13の詳細なブロック線図を示している。
図4において、17は絶対値算出回路、18は最大値検出回路、19は閾値規定回路、20は比較器、21はゲート回路である。
回り込み伝送路特性の周波数帯域拡張処理の原理について説明する。H(t)はOFDM信号帯域内の回り込み伝送路特性E(ω)を逆フーリエ変換したものであるため、周波数特性を矩形窓で切り取って逆フーリエ変換をしたときと同じように、H(t)はsinc関数(sin t /t)の形をしている。H(t)の絶対値|H(t)|の波形は、tが回り込み波の希望波からの遅延時間でピークとなり、ピークの振幅は回り込み波と希望波の比を表す。また、メインローブの半値幅はOFDM信号の周波数帯域幅の逆数となり、もっとも振幅の大きなサイドローブはメインローブに対して約13dB小さくなる。一方、周波数帯域幅に制限のない理想的な回り込み伝送路のインパルス応答は回り込み波の希望波からの遅延時間でのみ振幅を持つインパルスとなり、サイドローブは存在しない。
【0020】
ここで、OFDM信号帯域およびその近傍の帯域の回り込み伝送路特性は、回り込み伝送路が空間伝搬であるとすると、OFDM信号帯域内の回り込み伝送路特性と大きく変わることはない。すなわち、sinc関数の形となっているOFDM信号帯域内の回り込み伝送路特性のインパルス応答を尖鋭化し、OFDM信号帯域内の回り込み伝送路特性をOFDM信号帯域外へと連続して拡張することで、OFDM信号帯域外の回り込み伝送路特性を外挿し、回り込み伝送路特性の周波数帯域を拡張する。
【0021】
回り込み伝送路特性の周波数帯域の拡張は、まず、絶対算出回路17で複素数であるH(t)の絶対値|H(t)|を算出し出力する。最大値検出回路18において、|H(t)|の最大値を求めメインローブの振幅mとして出力する。閾値規定回路19において、最大値検出回路18の出力mからH(t)に含まれるサイドローブを除去するための閾値aを算出する。ここでaは(7)式を満たす定数である。
【数3】
(7)式の左辺はもっとも大きなサイドローブの振幅を示す。閾値aは、OFDM信号のサンプリング周波数やOFDM信号の周波数帯域幅や回り込み伝送路のノイズ等を考慮した上で、インパルス応答のサイドローブ部分だけを除去し、回り込み波のインパルス応答のメインローブのピークだけが残り、回り込み波の回り込み伝送路の一つ一つが一本のインパルスになる値に設定する。
【0022】
比較器20において、|H(t)|<aを比較し、比較結果が真であれば1を偽であれば0をゲート回路21へ出力する。ゲート回路21において、比較器20の出力が1であるH(t)については除去し、比較器20の出力が0であるH(t)はそのままで出力する。すなわち、ゲート回路21の出力I(t)は(8)式で表される。
I(t)= 0 |H(t)|<a (8)
I(t)= H(t) |H(t)|≧a
(8)式の処理を行うことで、OFDM信号帯域を拡張した周波数帯域の回り込み伝送路特性のインパルス応答I(t)を求めることができる。
【0023】
図5(a)、(b)はこの原理に基づく回り込み伝送路特性の周波数帯域拡張の過程を示していて、(a)は受信したOFDM信号から求めた回り込み伝送路特性H(t)の絶対値の例、(b)は(a)のH(t)からサイドローブを除去したインパルス応答I(t)の絶対値である。また、図6(a)、(b)、(c)、(d)はこの原理に基づく回り込み伝送路特性の周波数帯域拡張前後の周波数特性を示していて、(a)はH(t)の周波数振幅特性の例、(b)はH(t)の周波数位相特性の例、(c)はI(t)の周波数振幅特性の例、(d)はI(t)の周波数位相特性の例をそれぞれ示している。また、図6(a)、(b)は図5(a)に、図6(c)、(d)は図5(b)にそれぞれ対応している。
【0024】
回り込み伝送路特性の周波数帯域を広げる方法として、時間軸のインパルス応答から求める方法とは別に、周波数軸上で信号周波数帯域内の周波数特性を連続して信号周波数帯域外に近似して拡張するという方法があるが、図6を見てもわかる通り、複数の回り込みがある場合の周波数特性は複雑であり、周波数特性の近似式を算出して信号周波数帯域外へ外挿することは容易ではない。それに対して、時間軸のインパルス応答で回り込み伝送路特性の周波数帯域を広げる処理を行う場合は、図4のような簡単な回路構成で実現でき、処理も簡単であるという利点がある。
【0025】
図7はフィルタ係数ゲート回路15の詳細なブロック線図を示している。
図7において、22は絶対値算出回路、23はインパルス値算出回路、24は比較器、25はゲート回路である。
絶対値算出回路22において、係数更新回路14で更新されたフィルタ係数W(t)の絶対値を計算し|W(t)|として出力する。インパルス値算出回路23において、主波成分抽出回路10の出力の主波成分から親局からの希望波のインパルスの振幅dを求め、比較器24へ出力する。比較器24で希望波のインパルスdに係数nを掛けた値と、|W(t)|を比較し、|W(t)|<ndが真であれば1を、偽であれば0をゲート回路25へ出力する。係数nはフィルタ係数における親局からの希望波に対する比を示しており、0<n≦1の値をとる。ゲート回路25において、比較器24の出力が1であるW(t)については除去し、比較器24の出力が0であるW(t)はそのままで出力する。すなわち、ゲート回路25の出力P(t)は(9)式で表される。
P(t)= 0 |W(t)|<nd (9)
P(t)= W(t) |W(t)|≧nd
【0026】
(9)式の処理を行うことで、フィルタ係数W(t)に含まれるノイズ成分を除去することができ、回り込みキャンセル後の信号がフィルタ係数のノイズ成分によって劣化することを防ぐことができる。なお、この処理は周波数帯域拡張回路13の処理を行わないH(t)のインパルス応答では、サイドローブとノイズ成分の区別が困難であるが、W(t)のようにそれぞれの回り込み波が一本のインパルスとして示されているインパルス応答では、単純にインパルスの振幅だけでノイズ成分との区別がつけられるため、簡単な回路構成でノイズ成分を除去し、精度のよい回り込みキヤンセラを実現できる。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、回り込み伝送路特性の推定に用いるOFDM信号より広い帯域幅をもつ回り込み伝送路特性を供給することで、OFDM信号帯域内の回り込みのキャンセルばかりでなく、OFDM信号帯域外の回り込みのキャンセルも行うことが可能な回り込みキヤンセラを実現でき、レベルの大きな回り込みがある中継放送所においても、回り込みによる発振を抑制でき、安定的な放送波中継が可能な回り込みキヤンセラを実現できる。
また、回り込みキヤンセラに供する回り込み伝送路特性を表すフィルタ係数のノイズ成分を除去し、精度のよい回り込みキヤンセラを実現できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明による回り込みキャンセラを使用して中継放送所の送受アンテナ間の回り込みをキャンセルする方法の原理的構成の一例をブロツク線図で示す。
【図2】 本発明による回り込みキャンセラを簡単なブロック線図で示す。
【図3】 本発明による回り込みキヤンセラを詳細な構成ブロック線図で示す。
【図4】 図3中の周波数帯域拡張回路13の請求項2に記述した詳細な信号処理系統を示す。
【図5】 回り込み伝送路特性の周波数帯域拡張の過程をそれぞれインパルス応答波形で示す。
【図6】 回り込み伝送路特性の周波数帯域拡張の過程をそれぞれ周波数特性で示す。
【図7】 図3中のフィルタ係数ゲート回路15の請求項3に記述した詳細な信号処理系統を示す。
【符号の説明】
1 回り込みキャンセラ
2 中継放送機
3 フィルタ係数生成回路
4 FIRフィルタ
5 減算器
6 直交復調回路
7 FFT回路
8 送信信号発生器
9 複素除算回路
10 主波成分抽出回路
11 キャンセル残差演算回路
12 逆フーリエ変換回路
13 周波数帯域拡張回路
14 係数更新回路
15 フィルタ係数ゲート回路
16 遅延回路
17 絶対値算出回路
18 最大値検出回路
19 閾値規定回路
20 比較器
21 ゲート回路
22 絶対値算出回路
23 インパルス値算出回路
24 比較器
25 ゲート回路
Claims (3)
- OFDM信号のデジタル伝送で、放送波中継による単一周波数ネットワークを実現するため、中継放送所の受信アンテナで受信された回り込み波をキャンセルする中継放送所に設けられた回り込みキャンセラであって、前記中継放送所の受信アンテナで前記回り込み波と加算され受信された親局波から前記回り込み波の複製を減算して親局波のみを出力する減算器と、回り込み観測信号を入力させその出力に前記回り込み波の複製を出力させるFIRフィルタと、前記回り込み観測信号をまた入力させその出力に前記FIRフィルタに印加すべきFIRフィルタのフィルタ係数を生成して出力させるフィルタ係数生成回路とを具えた回り込みキャンセラにおいて、
前記フィルタ係数生成回路が:受信したOFDM信号をFFTして周波数領域のキャリア信号に変換するFFT手段と;該FFT手段から出力される周波数領域のキャリア信号からOFDM信号帯域内の伝達関数を算出する伝達関数算出手段と、該伝達関数算出手段から出力される伝達関数からOFDM信号帯域内の回り込みのキャンセル残差の周波数特性を算出して出力するキャンセル残差演算手段と;該キャンセル残差演算手段から出力されるキャンセル残差の周波数特性を逆フーリエ変換して前記FIRフィルタに印加するフィルタ係数のもととなるインパルス応答に変換して出力する逆フーリエ変換手段と;を少なくとも具え、
前記キャンセル残差演算手段の出力であるOFDM信号帯域内のキャンセル残差の周波数特性を用いてOFDM信号帯域外の回り込みのキャンセル残差の周波数特性に外挿する周波数帯域拡張手段を具えることでOFDM信号の周波数帯域幅よりも広い周波数帯域に対して回り込みをキャンセルできるように構成したことを特徴とする回り込みキャンセラ。 - 請求項1記載の回り込みキャンセラにおいて、前記周波数帯域拡張手段が:前記逆フーリエ変換手段からのキャンセル残差のインパルス応答の信号が入力されており、入力された前記キャンセル残差のインパルス応答の振幅を算出して出力する絶対値算出回路と;該絶対値算出回路から出力されるインパルス応答の振幅の最大値を検出して出力する最大値検出回路と;該最大値検出回路から出力されるインパルス応答の最大値を用いて閾値を算出して出力する閾値規定回路と;該閾値規定回路から出力される閾値と前記絶対値算出回路から出力されるインパルス応答の振幅を比較して閾値よりも大きな振幅のインパルス応答の情報を出力する比較器と;該比較器からの情報と前記逆フーリエ変換手段からのキャンセル残差のインパルス応答の信号が入力され、入力された信号のうち前記比較器からの情報から前記閾値よりも大きな振幅のインパルス応答はそのまま出力し、それ以外は0を出力するように構成したゲート回路と;を具え、前記OFDM信号帯域内の周波数特性をOFDM信号帯域外へ連続して拡張するように構成されたことを特徴とする回り込みキャンセラ。
- 請求項1または2記載の回り込みキャンセラにおいて、前記フィルタ係数生成回路が:前記周波数帯域拡張手段から前記FIRフィルタの間に、前記FIRフィルタに印加すべきフィルタ係数となるインパルス応答の振幅を算出して出力する第2の絶対値算出回路と;前記伝達関数算出手段から出力される信号を平均化することで得られる主波成分を用いてインパルス応答におけるノイズ成分の振幅の閾値を設定するインパルス値算出回路と;該インパルス値算出回路から出力される閾値と前記第2の絶対値算出回路から出力されるインパルス応答の振幅を比較して閾値よりも大きな振幅のインパルス応答の情報を出力する第2の比較器と;該第2の比較器からの情報と前記フィルタ係数となるインパルス応答の信号が入力され、入力された信号のうち前記第2の比較器からの情報から前記閾値よりも大きな振幅のインパルス応答はそのまま出力し、それ以外は0を出力するように構成したゲート回路と;から構成されるフィルタ係数ゲート回路をさらに具え、前記FIRフィルタに印加すべきフィルタ係数に含まれるノイズ成分を除去して出力するように構成したことを特徴とする回り込みキャンセラ。
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