JP4132578B2 - 回り込みキャンセラ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、OFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing:直交周波数分割多重)方式によるデジタル放送やデジタル伝送における中継所(具体的には中継装置)に係り、特に、SFN(Single Frequency Metwork:単一周波数ネットワーク)における放送波中継放送所の送受信アンテナ間での電波の回り込み(以下、単に回り込みと言う)を除去するための回り込みキャンセラに関する。
【0002】
【従来の技術】
これまでの回り込みキャンセラとしては、本発明者らの発明に係る回り込みキャンセラの6件の特許出願(特願平10−162189号、特願平11−147885号、特願平11−156234号、特願平11−153430号、特願平11−266567号および特願平11−98829号)がある。
【0003】
上記それぞれの特許出願の発明について各2,3行で説明をするならば、それぞれ以下の通りである。
1.「回り込みキャンセラ」(特願平10−162189号)
BST(Band Segmented Transmission)−OFDM用の回り込みキャンセラの基本構成に関する発明
2.「回り込みキャンセラ」(特願平11−147885号)
複素除算による正規化手段を付加し、周波数同期回路への要求条件を緩和する発明
3.「回り込みキャンセラ」(特願平11−156234号)
DQPSK−OFDMなどの差動変調方式において、位相の逓倍により閉ループ伝達関数を観測する発明
4.「回り込みキャンセラ」(特願平11−153430号)
推定した回り込み波のインパルス応答において非線形処理を施し、そのインパルス応答の周波数帯域を拡張する発明
5.「回り込みキャンセラ」(特願平11−266567号)
ISDB−T(Integrated Services Digital Broardcasting-Terrestrial)方式において、セグメント間で変調方式が異なる場合の閉ループ伝達関数の推定方法に関する発明
6.「OFDM復調装置」(特願平11−98829号)
OFDM復調時には、FFT処理の前に用いる矩形窓のタイミング誤差により、観測される閉ループ伝達関数に誤差を生じるが、この誤差を補正するための発明
【0004】
これら従来の特許出願の明細書に記載されている直接中継方式の放送波中継に適用した回り込みキャンセラの2つの基本的な構成例を示し、簡単に説明する。
ここに、直接中継方式とは、受信信号の復調/判定/再変調を行わず、親局の信号をそのまま増幅して再輻射する方式のことである。
図5は、このように受信信号の復調/判定/再変調を行わないで、親局信号をそのまま増幅して再輻射する直接中継方式(SFN)による回り込みキャンセラを用いた中継放送装置の一構成例を示している。
【0005】
図5において、SFN用の中継放送所は同一周波数で再輻射する(中継放送所の中継器は増幅器6で示される)ため、送信アンテナ7から受信アンテナ1に電波が回り込む。破線で囲って示す回り込みキャンセラでは、減算器2、FIR(Finite-duration Inpulse Response) フィルタ3およびFIRフィルタ係数生成回路4を用いて回り込み波の複製を作成し、減算器2によって回り込み波の打ち消しを行う。なお、FIRフィルタ3およびFIRフィルタ係数制御回路4に供給される信号が取り出される点(以後、観測点と言う)は、バンドパスフィルタ5の入力である。図5において、点線で囲った回り込みキャンセラの入出力信号に周波数変換回路を挿入し、回り込みのキャンセルを周波数帯を変えて行ったとしても、(例えば、高周波信号、中間周波信号、等価複素ベースバンド信号)本質的には変わりがない。
【0006】
図6も、図5と同様、直接中継方式による回り込みキャンセラを用いた中継放送装置の他の構成例を示している。本図においても、各回路部分には図7と同一の符号を付して示している。図5の構成と異なる点は、観測点Pが、図5の場合はバンドパスフィルタ5の入力となっていたのに対し、図6では増幅器6の出力となっている。図6についても図5と同様、回り込みキャンセラの入出力信号に周波数変換回路を挿入し、回り込みキャンセルをどの周波数帯を使って行ったとしても本質的に変わりがない。
【0007】
ここで、上述した回り込みキャンセラにおいて使用され、インパルス応答計算回路と係数更新回路とで構成されるFIRフィルタ係数生成回路4について説明する。
まず、インパルス応答計算回路について、図7を用いて説明する。観測点P(図5、図6参照)の信号をs(t)とし、これをFFT回路8によりFFTした信号を
【外3】
とする。ここで、〔外3〕はOFDM信号の1シンボル当たりの総キャリア数をKとしたときの、時刻nにおけるK次元ベクトルである。また、nは整数で、離散的に〔外3〕を観測する時刻を表す。ここで扱う信号は特に断らない限り、複素数の信号である。このK次元ベクトルの複素数の信号〔外3〕を複素除算回路9に入力して、これをパイロット信号発生回路10で発生したパイロット信号(ベクトル)
【外4】
で除算して閉ループ伝達関数(ベクトル)
【外5】
を求める。
【数3】
【0008】
ただし、ISDB−Tなどの地上デジタル放送方式におけるパイロット信号(SP:Scattered Pilot)信号は、キャリア方向およびシンボル方向に間欠的に挿入されているため、SP信号が無い部分については直線内挿をはじめとする内挿処理を行う必要がある。内挿処理の詳細については、濱住ほか、“地上デジタル放送SFNのための放送波中継用回り込みキャンセラ”、信学技報EMCJ98−111(1999−03)や、林ほか、“DFDM復調における対応等化方式の検討”、TV学技報,Vol. 20,No.53,p.p.55−60,Oct. 1996等を参照されたい。
また、SP信号が挿入されない差動変調方式の場合については、上述した「回り込みキャンセラ」と題する出願のうち、SPなどの基準信号を用いることなく閉ループ伝達関数を推定することを可能にした特願平11−156234号の出願明細書を参照されたい。
【0009】
次に閉ループ伝達関数〔外5〕から、キャンセル残差演算回路11でキャンセル残差(ベクトル)
【外6】
を求める。
【数4】
ここに、スカラー量
【外7】
は次式で定義されるものである。
【数5】
次に、逆FFT(IFFT)回路12でIFFTを施し、インパルス応答(ベクトル)
【外8】
に変換する。
【数6】
【0010】
FIR係数生成回路4(図5,図6参照)の後段をなす係数更新回路を図8に示す。係数更新回路は、図示のように、乗算器13、加算器14および遅延回路15を含み、次の逐次更新式でFIRフィルタのタップ係数(ベクトル)
【外9】
を更新する。
【数7】
ここに、μは更新係数(実数)である。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
以上、回り込みキャンセルを構成するFIRフィルタ係数生成回路について、(1)式から(5)式を用いて説明した。しかし、この手法は、一連のFIRフィルタ係数生成処理に遅延時間が存在するため、回り込み波に時間的な変動がある場合、回り込みキャンセル効果が低減するという問題点がある。
【0012】
実際のハードウエアを考慮した場合、係数更新回路に入力する信号〔外8〕は、(1)式から(5)式の処理に要する遅延時間のため後記する1サンプル過去のインパルス応答(ベクトル)
【外10】
が入力されることになる。従って
【数8】
FIRフィルタに書き込まれる係数(ベクトル)は
【外11】
すなわち時刻n−1の係数となり、回り込みが変動する環境下では観測点の信号を受信し、回り込み特性を計算してFIRフィルタの係数を更新するまでの時間遅れにより回り込み除去性能が低下する。
【0013】
本発明の目的は、回り込み波に時間的な変動がある場合においても、回り込み除去性能の低下を抑え、かつ変動追従特性を改善するように構成した回り込みキャンセラを提供することにある。
【0014】
【課題を解決するための手段】
減算器と、該減算器の減算端子にその出力信号が供給されるように実質的に接続された回り込み信号の複製を発生する信号処理部とを具えてなり、前記減算器の被減算端子には前記回り込み信号を含んでいる受信OFDM信号が実質的に供給され、前記減算器の出力端子には中継器の入力端子が実質的に接続され、そして前記信号処理部の入力端子には、前記中継器の入出力信号のいずれか一方の信号が分岐されて実質的に供給されるように構成され、前記信号処理部はトランスバーサルフィルタと該フィルタのタップ係数制御用のフィルタ係数生成回路とで構成されている回り込みキャンセラにおいて、前記フィルタ係数生成回路が、前記中継器の入出力信号のいずれか一方の信号についてインパルス応答を計算して出力するインパルス応答計算回路と、該インパルス応答計算回路の出力が供給されて、前記フィルタのタップ係数を更新する係数更新回路と、前記インパルス応答計算回路の出力が供給され、過去の回り込み波のインパルス応答の変化量から現在の前記フィルタのタップ係数を予測して、該予測結果に基づいて前記係数更新回路のタップ係数出力を制御する予測回路とを具える、回り込みキャンセラであって、
前記係数更新回路と前記予測回路とで構成される予測型係数更新回路の回路部分を、
の計算を行うように、複数の遅延回路、乗算器、加算器を用いて構成し、且つ
前記時刻nにおける予測係数ベクトル
と前記時刻nより1ステップ過去の予測係数ベクトル
との差を入力とし、離散的な係数更新時刻n(整数)の間隔をL等分した各々の時刻n,l(整数)における予測内挿係数
の計算を行うように、減算器、乗算器、除算器および加算器を用いて構成したことを特徴とするものである。
【0015】
また、本発明回り込みキャンセラは、前記係数更新回路と前記予測回路とで構成される予測型係数更新回路の回路部分を、〔数1〕の計算を行うように、複数の遅延回路、乗算器、加算器を用いて構成したことを特徴とするものである。
【0016】
また、本発明回り込みキャンセラは、前記係数更新回路と前記予測回路とで構成される予測型係数更新回路の回路部分を、本発明による、少なくとも予測係数ベクトル〔外1〕と予測係数ベクトル〔外2〕との差を入力とし、離散的な係数更新時刻n(整数)の間隔をL等分した各々の時刻n,l(整数)における予測内挿係数〔数2〕の計算を行うように、減算器、乗算器、除算器および加算器を用いて構成したことを特徴とするものである。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下に添付図面を参照し、発明の実施の形態に基づいて本発明を詳細に説明する。
上記のように、本発明回り込みキャンセラは、回り込みキャンセラを構成するトランスバーサルフィルタたとえばFIRフィルタ係数生成回路内の係数更新回路に、過去の回り込み波のインパルス応答の変化量から現在のFIRフィルタ係数を予測する予測回路を付加し、予測型係数更新回路を構成することにより、回り込み波に時間的な変動がある場合においても、変動追従特性の低下を抑えるようにしたものである。
【0018】
図1は、本発明回り込みキャンセラの第1の実施形態をブロック図にて示している。この図1を含めて、次に説明する本発明による第2の実施形態を示す図2においても、図5および図6(従来の回り込みキャンセラを用いた中継放送装置の構成例)におけるのと同一回路部分には、同一の符号を付して示している。
【0019】
本発明回り込みキャンセラは、減算器2とFIRフィルタ3の部分(回路接続を含めて)は従来のもの(図5,図6参照)と変らないので、本発明によって新規に構成したFIRフィルタ係数生成回路4について説明する。
図1において、FIRフィルタ係数生成回路4は、観測点Pにおけるインパルス応答を計算するインパルス応答計算回路16と、予測型係数更新回路17によって構成されている。本発明の重要なポイントである予測型係数更新回路17は、従来からの係数更新回路18(図8参照)に、過去の回り込み波のインパルス応答の変化量から現在のFIRフィルタ係数を予測する予測回路19を付加して実現したものである。
【0020】
図2は、本発明回り込みキャンセラの第2の実施形態をブロック図にて示している。
本実施形態は、第1の実施形態においては図5に示した従来の回り込みキャンセラに対応して、インパルス応答の観測点Pが増幅器6の入力側の点であったのに対し、増幅器6の出力側の点が観測点Pとなっている(図6に示した従来の回り込みキャンセラに対応)ことで、第1の実施形態と異なっている。
【0021】
図3は、本発明回り込みキャンセラの第3の実施形態をブロック図にて示している。
本実施形態およびその拡張である第4の実施形態は、第1および第2の実施形態において、予測型係数更新回路17を、図1,図2に示すような係数更新回路18と予測回路19とに分離した回路構成とするのでなく一体化した予測型係数更新回路としたものである。
【0022】
すなわち、図3に示す予測型係数更新回路においては、3個の遅延回路20と、4個の乗算器21と2個の加算器22とが図示のように相互に接続され、前述の(6)式のインパルス応答(ベクトル)〔外10〕と過去のインパルス応答(ベクトル)
【外12】
の両方を観測することにより、インパルス応答の変動成分を予測し補正するように構成されている。
【0023】
この予測型係数更新回路の動作原理を数式により説明する。係数更新時刻nにおける真の回り込み伝搬路の特性に対応するFIRフィルタの係数(ベクトル)を
【外13】
とし、FIRフィルタの係数の予測係数ベクトルを〔外1〕とする。
いま、〔外1〕を求めるにあたり、1ステップ過去の真の回り込み伝搬路の特性に対応するFIRフィルタの係数ベクトル〔外11〕と
【外14】
との差を求め、この差により〔外11〕を補正することを考える。予測補正係数をμp とすると、予測係数ベクトル〔外1〕は、次式で与えられる。
【数9】
ここで、観測点の信号を受信し、回り込み特性を計算してFIRフィルタの係数を更新するまでの時間遅れ(係数計算遅延)がない理想状態での更新の式は、インパルス応答(ベクトル)
【外15】
に対する更新係数をμとして、
【数10】
で表すことができる。
【0024】
(8),(9)式を(7)式に代入して次式を得る。
【数11】
ここで、
【外16】
と置き換えることにより、次式を得る。
【数12】
この式が、図3の予測型係数更新回路(本実施形態は、2次の場合)によって実現される。
【0025】
(11)式は、時刻nにおけるフィルタ係数の予測係数ベクトル〔外1〕は、時刻nより以前の時刻n−1およびn−2のそれぞれにおける予測係数ベクトル〔外2〕および
【外17】
に、それぞれ係数a1 ,a2 を乗じたものの総和と、時刻nより以前の時刻n−1およびn−2のそれぞれにおけるインパルス応答ベクトル〔外10〕および〔外12〕に、それぞれb1 ,b2 を乗じたものとの総和との和によって表わされることを示し、従って、図3に示すように、それぞれ複数の遅延回路、乗算器および加算器によって、(11)式の計算が行われることは容易に理解できよう。
【0026】
上記(11)式は、一般にM次への拡張が可能であり、この場合の係数更新式は次式のようになる。
【数13】
図4はM次に拡張した場合の予測型係数更新回路の構成例(本発明回り込みキャンセラの第4の実施形態)である。
【0027】
この(12)式で与えられる予測係数ベクトル〔外1〕は、あくまで離散時刻nごとに得られる値であり、インパルス応答ベクトル〔外15〕の計算時間が長くなると、nの間隔が長くなり、回り込みの変動に対する追従特性が低下する。
【0028】
これにつき検討する。
図9は、(12)式で与えられる予測係数ベクトルを計算するにあたって、OFDM信号と予測係数のタイミング関係を示している。
図9において、下方に示す矢印線は離散的に係数更新を行う時間軸上のタイミングを示している。
図9(a)は、シンボル番号iごとに送信されてくるOFDM信号(観測点におけるOFDM信号)を示している。
また、図9の例では、インパルス応答ベクトル〔外15〕の計算による遅延時間を2シンボルとして表している。従って、係数更新時刻nの時間間隔は、OFDM信号のシンボル時刻iの時間間隔に対して3倍となっている。
【0029】
この場合、図9(b),(c)に示すように、OFDM信号の1シンボルからインパルス応答ベクトル〔外15〕を計算し、その計算結果から予測係数ベクトル〔外1〕を求めているが、OFDM信号Siの時刻にFIRフィルタに対して反映される予測係数ベクトルは、主としてインパルス応答ベクトルの計算に要する遅延時間のため、計算による遅延時間分だけ過去のOFDM信号から求めざるを得ない。図9においては、この様子を、OFDM信号Si−3を時刻n−1で取り込むものとし、計算したインパルス応答ベクトルを〔外10〕で表している。
【0030】
このように、離散的な時刻nで更新したFIRフィルタの係数は、次の時刻n+1がくるまで更新されず、前の予測係数ベクトル〔外1〕が保持される(図9(c)参照)。すなわち、インパルス応答ベクトルの計算をOFDM信号の2シンボルに1回として、計算しないシンボル区間については、1ステップ過去の予測係数ベクトルを保持している。
しかし、1ステップ過去の予測係数ベクトルを保持するということは、回り込みの変動に対する追従特性を低下させることになる
【0031】
この問題を解決するには、次の3つの方法が考えられる。
1)計算を高速化し、予測係数ベクトルの算出に要する遅延時間をできるだけ小さくする。
2)並列処理を駆使し、予測係数ベクトルの算出に要する遅延時間をできるだけ小さくする。
3)離散的な係数更新時刻nごとに得られる係数から内挿した係数を作り、少しずつ係数を更新する。
【0032】
上記1)の方法は、DSP(Digital Signal Processor)などのデバイスに依存し、非常に高速計算の可能なデバイスが入手可能な時代には実現できる。しかし、現在はまだこのようなDSPは入手できない。また、2)の方法は、DSPデバイスを複数使用して、回路的な工夫をすることにより実現できないことはないが、ハードウェアが複雑化する欠点がある。
【0033】
これに対し、3)の方法は、(12)式で与えられる予測係数ベクトルのように、離散的な時刻nごとに予測係数を更新するのでなく、内挿係数を作成し、少しずつ予測係数を更新していくもので、以下に説明するように、簡単な計算処理を追加するのみで実現することができる(これを、第5の実施形態という)。
【0034】
また、上記1),2)の方法では、予測係数ベクトルの計算に要する時間を1シンボル以下にすることは原理的にできない。その理由は、計算にFFTを用いるため、OFDM信号の1シンボル期間が終了しないと計算を開始できないためである。これに対して、第5の実施形態では、予測誤差の問題はあるものの、係数計算の時間を1シンボル期間以下にすることができる。
【0035】
この方法(上記3)の方法)においては、まず、離散的な係数更新時刻nの間隔をL等分する。ここで、L等分した各々の時刻をn,lで表すものとする。なお、lは、0,1,・・・,l,・・・,L−1の範囲の整数である。予測係数ベクトルから内挿するにあたっては、予測係数ベクトル〔外1〕と予測係数ベクトル〔外2〕との差から時刻n,lにおける予測内挿係数ベクトルを求めることを考える。いま、初期値l=0における予測係数ベクトル〔外1〕と予測係数ベクトル〔外2〕の値が、それぞれ
【数14】
と
【数15】
であるとし、予測内挿重み付け係数をμpiとすれば、予測内挿係数ベクトル
【外18】
は次式のようになる。
【数16】
【0036】
この(13)式の計算は、予測係数ベクトル〔外1〕と予測係数ベクトル〔外2〕を入力とし、減算器、乗算器、除算器および加算器によって構成される図10に示す回路によって実現される。
【0037】
以上のようにして求められた予測内挿係数ベクトル((13)式)と、(12)式で与えられる予測係数ベクトルとの違いが明確になるように、双方の係数ベクトルの時間関係を図11に示す。
図11は、同図中に図11(d)が示されている点を除いて図9と同じである。
【0038】
以上は、予測内挿係数ベクトル〔外18〕を、予測係数ベクトル〔外1〕と予測係数ベクトル〔外2〕との差から求めるものとしたが、これは、予測係数ベクトル〔外1〕と予測係数ベクトル〔外2〕に加えて、予測係数ベクトル
【外19】
や予測係数ベクトル
【外20】
などを追加した過去の全ての予測係数から予測内挿係数ベクトル〔外18〕を求めることも可能である。
【0039】
次に、本発明回り込みキャンセラの回り込みの変動に対する追従特性を評価するために、シミュレーションによって作成した図12から図14までのグラフを用いて特性を比較する。
まず、図12は、本発明による予測アルゴリズムを使用しない場合の回り込みの変動とキャンセル誤差の関係を計算した結果を示している。この場合、計算のパラメータとしては、ISDB−T方式を想定し、モード3、ガードインターバル比1/8、係数計算のための遅延時間として15ms、回り込みの変動周波数は2Hzで、正弦波状に変化するものとした。
【0040】
また、この場合(図12)においては、回り込みキャンセルアルゴリズムのμの値として、1.0を用いた。図中、横軸は時間であり、縦軸はそれぞれの特性の振幅値である。
図12から、回り込み変動特性に対して、トランスバーサル(FIR)フィルタ出力特性は階段状となることに加え、位相遅れを生じ、キャンセル残差が発生することが理解できる。
【0041】
次に、図13は、上述の(12)式で与えられる予測係数ベクトルの予測アルゴリズムを使用した場合の回り込みの変動とキャンセル誤差の関係を計算した結果を示している。この場合の計算パラメータも図12の場合と同一であるが、本実施形態(第4の実施形態)では、予測アルゴリズムを使用しているため、このアルゴリズムの予測重み付け係数μp =0.8が追加となっている。
図12と比較した場合、トランスバーサル(FIR)フィルタの出力特性の位相遅れは、予測により改善されているものの、係数制御の時間間隔が15msと大きいため、階段状の特性となって、キャンセル残差があまり小さくならないことが理解できる。
【0042】
最後に、図14は、上述の(13)式で与えられる予測内挿係数ベクトルの予測アルゴリズムを使用した場合の回り込みの変動とキャンセル誤差の関係を計算した結果を示している。この場合の計算パラメータも図12の場合と同一である。図14から分かるように、本実施形態(第5の実施形態)では、予測処理に加え内挿処理を行っているので、キャンセル残差が大幅に小さくなっていることが理解できる。
【0043】
【発明の効果】
本発明によれば、回り込み波に時間的な変動がある場合においても、トランスバーサルフィルタ、例えば、FIRフィルタの係数の誤差を少なくし、変動追従特性を向上することができる。その結果、台風などにより回り込み波の変動が激しくなるような環境においても、安定に動作する回り込みキャンセラを提供することが可能になる。
【0044】
また、上述した第5の実施形態のように、予測処理に加え内挿処理を行った場合には、回り込みの変動に対する追従特性を一層改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明回り込みキャンセラの第1の実施形態をブロック図にて示している。
【図2】 本発明回り込みキャンセラの第2の実施形態をブロック図にて示している。
【図3】 本発明回り込みキャンセラの第3の実施形態をブロック図にて示している。
【図4】 本発明回り込みキャンセラの第4の実施形態をブロック図にて示している。
【図5】 直接中継方式による従来の回り込みキャンセラを用いた中継放送装置の一構成例を示している。
【図6】 直接中継方式による従来の回り込みキャンセラを用いた中継放送装置の他の構成例を示している。
【図7】 FIRフィルタ係数生成回路を構成する従来のインパルス応答計算回路を示している。
【図8】 FIRフィルタ係数生成回路を構成する従来の係数更新回路を示している。
【図9】 第4の実施形態で与えられる予測係数ベクトルを計算するにあたって、OFDM信号と予測係数のタイミング関係を示している。
【図10】 本発明回り込みキャンセラの第5の実施形態をブロック図にて示している。
【図11】 予測内挿係数ベクトル(第5の実施形態)と予測係数ベクトル(第4の実施形態)との双方の係数ベクトルの時間関係を示している。
【図12】 本発明による予測アルゴリズムを使用しない場合の回り込みの変動とキャンセル誤差の関係を計算した結果を示している。
【図13】 第4の実施形態で与えられる予測係数ベクトルの予測アルゴリズムを使用した場合の回り込みの変動とキャンセル誤差の関係を計算した結果を示している。
【図14】 第5の実施形態で与えられる予測内挿係数ベクトルの予測アルゴリズムを使用した場合の回り込みの変動とキャンセル誤差の関係を計算した結果を示している。
【符号の説明】
1 受信アンテナ
2 減算器
3 FIRフィルタ
4 FIRフィルタ係数生成回路
5 バンドパスフィルタ
6 増幅器
7 送信アンテナ
8 FFT回路
9 複素除算回路
10 パイロット信号発生回路
11 キャンセル残差演算回路
12 IFFT回路
13,21,24 乗算器
14,22,26 加算器
15,20 遅延回路
16 インパルス応答計算回路
17 予測型係数更新回路
18 係数更新回路
19 予測回路
23 減算器
25 除算器
Claims (1)
- 減算器と、該減算器の減算端子にその出力信号が供給されるように実質的に接続された回り込み信号の複製を発生する信号処理部とを具えてなり、前記減算器の被減算端子には前記回り込み信号を含んでいる受信OFDM信号が実質的に供給され、前記減算器の出力端子には中継器の入力端子が実質的に接続され、そして前記信号処理部の入力端子には、前記中継器の入出力信号のいずれか一方の信号が分岐されて実質的に供給されるように構成され、前記信号処理部はトランスバーサルフィルタと該フィルタのタップ係数制御用のフィルタ係数生成回路とで構成されている回り込みキャンセラにおいて、前記フィルタ係数生成回路が、前記中継器の入出力信号のいずれか一方の信号についてインパルス応答を計算して出力するインパルス応答計算回路と、該インパルス応答計算回路の出力が供給されて、前記フィルタのタップ係数を更新する係数更新回路と、前記インパルス応答計算回路の出力が供給され、過去の回り込み波のインパルス応答の変化量から現在の前記フィルタのタップ係数を予測して、該予測結果に基づいて前記係数更新回路のタップ係数出力を制御する予測回路とを具える、回り込みキャンセラであって、
前記係数更新回路と前記予測回路とで構成される予測型係数更新回路の回路部分を、
前記時刻nにおける予測係数ベクトル
と前記時刻nより1ステップ過去の予測係数ベクトル
との差を入力とし、離散的な係数更新時刻n(整数)の間隔をL等分した各々の時刻n,l(整数)における予測内挿係数
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2000156549A JP4132578B2 (ja) | 1999-12-13 | 2000-05-26 | 回り込みキャンセラ |
Applications Claiming Priority (3)
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