JP3603873B2 - 回り込みキャンセラ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は回り込みキャンセラに関し、特に、地上波デジタル放送などの単一周波数ネットワークにおいて、中継局の受信アンテナで観測される自局送信アンテナからの回り込み波や親局波と相関を持たない妨害波を除去する回り込みキャンセラに関する。
【0002】
【従来の技術】
2003年からサービス開始予定の地上波デジタル放送は、変調方式に直交周波数分割多重(OFDM:Orthogonal Frequency Division Multiplexing)を採用することが決定している。OFDMはマルチパス妨害に強いため、すべてのサービスエリアにおいて同じ周波数を利用する単一周波数ネットワーク(SFN:Single Frequency Network)を構築することが可能である。しかしながら、SFNの中継局では、送信アンテナから発射された電波が自局受信アンテナへ回り込み、その回り込み波の電力が親局波の電力と比べて大きくなると、中継局内でループ発振が起こる。そのため、回り込み波を除去して発振を防ぐ技術の開発が必要とされる。
【0003】
回り込み波を除去する方法としては、適応等化器に代表される時間領域信号処理,アダプティブアレーやサイドローブキャンセラに代表される空間領域信号処理、さらに両者を組合わせた時空間領域信号処理がある。
【0004】
時間領域信号処理により回り込み波を抑圧する手法は、たとえば今村浩一郎,濱住啓之,渋谷一彦,佐々木誠らによる“地上デジタル放送SFNにおける放送波中継用回り込みキャンセラの基礎検討”,映像情報メディア学会誌,vol.54,No.11,pp.1568−1575,2000がある。
【0005】
また、この回り込みキャンセラを用いた屋外実験の結果は、今村浩一郎,濱住啓之,渋谷一彦,佐々木誠,大和田雄之,佐伯暖,金井隆夫,福原黎児,高瀬徹,川瀬克行らによる“北淡垂水中継局における放送波中継SFN実験”,映像情報メディア学会技術報告,vol.24,No.43,pp.17−23,2000に記載されている。以下、この回り込みキャンセラの原理について、図7〜図9を参照しながら説明する。ただし、説明を簡単にするために、あらゆる雑音成分については省略する。
【0006】
なお、各変数の表記において、tは時間領域信号,ωは周波数領域信号を示す。nはOFDMシンボル時刻を表わし、n+1は変数の更新を表わす。nに関しては、説明において特に必要としない部分は省略する。
【0007】
図7は回り込みキャンセラの構成を示すブロック図である。図7において、d(t),D(ω)は親局波とそのフーリエ変換を示し、u(t),U(ω)は回り込み波とそのフーリエ変換を示し、y(t),Y(ω)は中継局のアンテナ1で受信される信号とそのフーリエ変換を示し、g(t),G(ω)は中継局の増幅器2のインパルス応答とそのフーリエ変換(すなわち伝達関数)を示し、c(t),C(ω)は回り込み伝送路のインパルス応答とそのフーリエ変換(すなわち伝達関数)を示す。wT(t),WT(ω)は有限インパルス応答(FIR:Finite Impulse Response)フィルタ_T3の係数の時間領域表現(すなわち、インパルス応答)とそのフーリエ変換である周波数領域表現(すなわち伝達関数)を示し、r(t),R(ω)はFIRフィルタ_T3の出力信号(回り込み波の複製信号)とそのフーリエ変換を示し、s(t),S(ω)は観測点における信号(キャンセラ出力信号)とそのフーリエ変換を表わしている。
【0008】
図7に示したFIRフィルタ_T3は図8に示すような構成となっている。図8において、FIRフィルタ_T3は、加算器32と、乗算器33と、は単位遅延演算子(z−1)31とを含む。回り込み波の複製信号r(t)はFIRフィルタ_T係数演算部4から得られるFIRフィルタ_T3の係数wT(t)とキャンセラ出力信号s(t)から次式により計算される。
【0009】
r(t)=wT(t)*s(t) …(1)
ここで、“*”は畳み込み演算を表わす。式(1)をフーリエ変換で表わすと、
R(ω)=WT(ω)S(ω) …(2)
となる。
【0010】
次に、回り込みキャンセラの原理について説明する。図7より、中継局で受信される回り込み波のスペクトルU(ω)は、
U(ω)=C(ω)G(ω)S(ω) …(3)
と表わされる。これにより中継局で受信される信号のスペクトルY(ω)は、
Y(ω)=D(ω)+U(ω)=D(ω)+C(ω)G(ω)S(ω)…(4)
となる。また、観測点における信号のスペクトルS(ω)は、
S(ω)=Y(ω)−R(ω)=Y(ω)−WT(ω)S(ω)…(5)
である。式(4)を式(5)に代入して整理すると、
S(ω)=D(ω)/[1−{C(ω)G(ω)−WT(ω)}]…(6)
が得られる。したがって、観測点における総合伝達関数をF(ω)とすれば、
F(ω)=S(ω)/D(ω)=1/[1−{C(ω)G(ω)−WT(ω)}]…(7)
となる。
【0011】
回り込みキャンセラが理想的に動作している状態での観測点における信号は、
S(ω)=D(ω) …(8)
であるから、式(6)よりキャンセル条件は、
WT(ω)=C(ω)G(ω) …(9)
となる。
【0012】
ここで、回り込みキャンセラによる回り込み波の複製R(ω)=WT(ω)S(ω)と実際の回り込み波U(ω)=C(ω)G(ω)S(ω)との誤差を考慮して回り込み残差E(ω)を式(10)で定義する。
【0013】
ET(ω)=C(ω)G(ω)−WT(ω) …(10)
式(7)の関係を式(10)に代入すると、
ET(ω)=1−1/F(ω)=1−D(ω)/S(ω) …(11)
を得る。これにより、観測点の信号S(ω)を測定し、D(ω)として既知のパイロット信号を用いれば、回り込み残差ET(ω)を求めることができる。ET(ω)を利用してFIRフィルタ_T係数WT(ω)を更新することにより、回り込み波をキャンセルすることができる。
【0014】
フィルタ係数の更新は図7のFIRフィルタ_T係数演算部4で行なわれる。その演算過程を図9に示す。シンボル時刻の観測点信号s(n,t)のフーリエ変換S(n,ω)と既知のパイロット信号から生成された送信信号の推定値D(n,ω)から、式(7)で複素除算することによりF(n,ω)が計算され、式(11)によりET(n,ω)が計算される。ET(n,ω)を逆フーリエ変換することにより、回り込み残差のインパルス応答eT(n,t)が得られる。FIRフィルタ_T係数更新ステップサイズをμTとすれば、フィルタ係数の勾配(変化量ΔwT(n,t))は、
ΔwT(n,t)=μTeT(n,t) …(12)
となり、更新後のフィルタ係数は次式で表わされる。
【0015】
wT(n+1,t)=wT(n,t)+ΔwT(n,t) …(13)
このフィルタ係数を逐次的に更新することにより、式(9)の条件を満足するキャンセル動作が行なわれる。
【0016】
上述の説明のように、この回り込みキャンセラは、観測点での受信信号と既知のパイロット信号とから閉ループ伝達関数を推定後、回り込み波の複製信号をFIRフィルタで生成し、受信信号(親局波+回り込み波)から減ずることで回り込み波成分を打ち消すものであり、時間領域キャンセラと呼ばれている。この時間領域キャンセラにより、複数の回り込み波が到来する場合にも精度よく回り込み波を除去することができる。
【0017】
空間領域信号処理により回り込み波を除去する手法は、たとえばL. C. Godara, ”Application of Antenna Arrays to Mobile Communications, Part 2: Beam−Forming and Direction−of−Arrival Considerations,”Proceedings of the IEEE, Aug. 1997や、菊間信良著,アレーアンテナによる適応信号処理,科学技術出版,1999などに詳しく紹介されている。空間領域信号処理のうち、電波伝搬環境に対して適応的にアンテナ指向性を制御する技術はアダプティブアレーと呼ばれている。
【0018】
アダプティブアレーを動作させるためには、到来する変調波に対する何らかの事前情報が必要であり、それによりいくつかの手法に分けられる。その中でも最小平均二乗誤差(MMSE:Minimum Mean Square Error)に基づくアダプティブアレーは既知のパイロット信号を事前情報とするため、妨害波方向に正確にヌル(受信感度が0)を指向することができるとともに、妨害波の到来方向が変化した場合にもヌルが妨害波方向に自動的に追従するので、実際の伝搬環境に適した手法であるといえる。また、親局波の受信電力より回り込み波の受信電力が大きい場合にも適用可能である。以下、広帯域信号に対応したMMSE型アダプティブアレーについて図10〜図12を参照しながら簡単に説明する。
【0019】
図10はMMSE型広帯域アダプティブアレーを示し、図11はFIRフィルタ_p(p=1〜P)の構成である。図10において、♯1〜♯Pは受信アレーアンテナ素子を示し、x1(t)〜xP(t)は素子1〜Pでの受信信号を示し、w1〜wP(t)はFIRフィルタ_1〜Pのインパルス応答を示し、y1(t)〜yP(t)は素子1〜Pの出力信号を示し、y(t)はアレーアンテナ出力信号であり、d(t)は既知のパイロット信号(参照信号)であり、e(t)は誤差信号である。
【0020】
次に、動作について説明する。素子pでの出力信号yp(t)は
【0021】
【数1】
【0022】
となる。ここでNsはFIRフィルタ_1〜Pのタップ数である。アレーアンテナ出力信号y(t)は各素子での出力信号の和であるが、各素子での各タップにおける受信信号とフィルタ係数を並べて、それぞれ次のようなNsP×1ベクトル
x(t)=[x1(t),…,x1(t−(Ns−1)),…,xP(t),…,xP(t−(Ns−1))]T …(15a)
w(t)=[w1(0),…,w1(Ns―1),…,wP(0),…,wP(Ns−1)]T …(15b)
として定義すれば、y(t)は
【0023】
【数2】
【0024】
と表せる。ただし、上付き添え字の‘T’は転置を表す。
誤差信号eS(t)は、
eS(t)=d(t)−y(t) …(17)
であり、誤差信号の二乗の期待値(平均二乗誤差)E[|eS(t)|2]は次のようになる。
【0025】
ここで、E[・]は期待値演算子を表わす。w(t)を適切に選択することにより、平均二乗誤差は最小化される。
【0026】
式(18)を最小化するw(t)を逐次的に更新する手法はいくつかあるが、ここでは最急降下法(LMS:Least Mean Square)に基づく手法について説明する。最急降下法に基づく最適化アルゴリズムは式(19)で表わされる。
【0027】
w(n+1,t)=w(n,t)−(μS/2)∂E[|eS(n,t)|2]/∂w(n,t) …(19)
ここで、nはサンプル時刻であり、μSはFIRフィルタ_1〜P係数更新ステップサイズであり、∂/∂w(n,t)はw(n,t)の偏微分演算子を表わす。式(18)より
であるから(上付き添え字“*”は複素共役を表わす)、式(19)は
となる。
【0028】
図12は図10に示したFIRフィルタ_1〜P係数演算部の演算過程を示す図である。図12のサンプル値平均処理ブロックによりE[x(n,t)e*S(n,t)]を計算するが、期待値の演算は実際には困難なため、期待値演算子を取り除いて、
w(n+1,t)=w(n,t)+μS{x(n,t)e*S(n,t)}*…(22)
とするか、もしくは適当な有限個(J個)のサンプル値の平均をとって
【0029】
【数3】
【0030】
とする。ただし、tjはシンボル時刻nにおけるj番目のサンプル時刻を表す。FIRフィルタ係数を逐次的に更新する他の手法としては、SMI(Sample Matrix Inversion)やRLS(Recursive Least Squares)などがある。これらの手法については説明を省略する。
【0031】
アダプティブアレーを地上波デジタル放送用中継局に適用する場合は、親局波の既知のパイロット信号であるスキャッタードパイロット(SP:Scattered Pilot)もしくはコンティニュアルパイロット(CP:Continual Pilot)を参照信号として利用する。このとき、アダプティブアレーは回り込み波の方向にヌルを指向する空間領域キャンセラとして機能する。ただし、ヌルを形成するには、親局波と回り込み波の時間相関が小さいという条件が必要である。
【0032】
近年時間領域信号処理と空間領域信号処理とを組合わせた時空間領域信号処理についても数多く検討されているが、これらは単にアダプティブアレーやサイドローブキャンセラと適応等化器を接続した構成であるもの、もしくはそれらに従来のダイバーシチ技術などを組合わせた構成による高性能化を特徴としたものが大半を占めている。これらの検討例については説明を省略する。
【0033】
【発明が解決しようとする課題】
前述の回り込みキャンセラ(時間領域キャンセラ)はFIRフィルタのタップ数に対応して多数の回り込み波や親局波マルチパスを除去でき、同期変調方式と差動変調方式の両方式に対応できるという利点があるものの、親局波とは相関を持たない妨害波を除去できないという欠点がある。その理由は、FIRフィルタT3では回り込み波や親局波マルチパスの複製しか生成できないためである。また、地上波デジタル放送が本格的に導入され、現行のアナログ放送からデジタル放送に移行する際にサイマル放送(デジタル放送とアナログ放送の同時放送)が予定されているが、このとき現行アナログ放送波はデジタル放送波と相関を持たないため、時間領域回り込みキャンセラで除去することは不可能である。
【0034】
なお、以下の説明では、親局波と相関を持たない妨害波を単に「妨害波」と呼び、その他の妨害波は回り込み波,親局波マルチパスなど、具体的に表現するものとする。
【0035】
また、回り込みキャンセラは、親局波と回り込み波の電力比(D/U比)が0[dB]より小さい場合、発振を起こす恐れがある。これは、時間領域キャンセラの安定条件を満たさないためである。前述の“北淡垂水中継局における放送波中継SFN実験”においても、D/U=0[dB]がキャンセル能力の限界となっている。
【0036】
また、前述のMMSEアダプティブアレイ(空間領域キャンセラ)は、妨害波を除去でき、親局波と回り込み波の電力比(D/U比)が0[dB]より小さい場合にも対応できるという利点があるものの、素子数以上の回り込み波や妨害波を除去できないという欠点がある。その理由は、除去可能な回り込み波や妨害波の総数が[アレイアンテナ素子数−1]以下という制限があるので自由度が不足するためである。また、アダプティブアレイを動作させるには、親局波信号と出力信号との差(誤差信号)が必要であるため、既知のパイロット信号が必要となる。
【0037】
上記のように、両キャンセラは相補関係にある。そこで、回り込み波除去能力を大幅に改善するには両者を組合わせた時空間領域キャンセラが効果的である。
【0038】
しかし、時空間領域キャンセラと空間領域キャンセラの両キャンセラそれぞれに独立の評価関数を与えて同時に動作させると、両者のフィルタ係数が最適値に収束する保証は失われてしまい、発散する恐れがある。その理由は、空間領域キャンセラにおいて妨害波よりも回り込み波を優先して除去してしまう可能性があり、妨害波の成分が時間領域キャンセラに入り込み誤差を発生することが想定されるため、最適なフィルタ係数を得ることはできない。
【0039】
さらに、空間領域キャンセラの回り込み波成分の除去効果を無視してさらに時間領域キャンセラで同じ回り込み波を除去するように動作してしまうといった過補償(キャンセル)現象が想定されるため、キャンセラが発散する恐れがある。
【0040】
さらに、時間領域キャンセラと空間領域キャンセラそれぞれにフーリエ変換/逆フーリエ変換が必要となるため、計算量やハードウェア規模が大きくなるという種々の問題がある。
【0041】
それゆえに、この発明の主たる目的は、妨害波も除去でき、親局波よりも電力の大きい回り込み波を除去でき、アンテナ素子数よりも多くの回り込み波を除去でき、同期変調方式と差動変調方式の両方式に対応でき、発散することなく安定に動作し、ハードウェア規模が小さい回り込みキャンセラを提供することである。
【0042】
【課題を解決するための手段】
この発明は、各アンテナ素子の受信信号の重み付けをFIRフィルタにより行った後合成するアダプティブアレーを基本構成とする空間領域キャンセラと、FIRフィルタと時間領域キャンセラの入力信号からFIRフィルタの出力信号を減算する減算器を基本構成とする時間領域キャンセラとを縦続接続した回り込みキャンセラにおいて、時間領域キャンセラの観測点での出力信号をフーリエ変換して周波数領域信号を出力するフーリエ変換手段と、親局波の伝送モードや各セグメントの変調方式に応じて、親局波のパイロット信号と制御情報信号とを生成する親局波信号生成手段と、親局波信号生成手段によって生成されたパイロット信号および制御情報信号とフーリエ変換手段からの周波数領域信号との差分を演算して誤差信号を出力する誤差信号演算手段と、誤差信号演算手段から出力された誤差信号を逆フーリエ変換して時間領域信号に変換する逆フーリエ変換手段と、時間領域信号に変換された誤差信号の二乗平均値を最小化するように空間領域キャンセラおよび時間領域キャンセラの各FIRフィルタ係数の勾配を求め、各FIRフィルタ係数を一括更新するFIRフィルタ係数演算手段を備えたことを特徴とする。
【0043】
他の発明は、各アンテナ素子の受信信号の重み付けをFIRフィルタにより行った後合成するアダプティブアレーを基本構成とする空間領域キャンセラと、FIRフィルタと時間領域キャンセラの入力信号からFIRフィルタの出力信号を減算する減算器を基本構成とする時間領域キャンセラとを縦続接続した回り込みキャンセラにおいて、時間領域キャンセラの観測点での出力信号をフーリエ変換して周波数領域信号を出力するフーリエ変換手段と、親局波の伝送モードや各セグメントの変調方式に応じて、親局波のパイロット信号と制御情報信号とを生成する親局波信号生成手段と、親局波信号生成手段によって生成されたパイロット信号および制御情報信号とフーリエ変換手段からの周波数領域信号との差分を演算して誤差信号を出力する誤差信号演算手段と、誤差信号演算手段から出力された誤差信号の大きさの変化から、空間領域キャンセラまたは時間領域キャンセラを選定して動作させるキャンセラを示すフラグを出力するキャンセラ選定手段と、キャンセラ選定手段によって時間領域キャンセラが選定されていることに応じて伝達関数を演算する伝送路推定手段と、伝送路推定手段によって演算された伝達関数に基づいて、回り込み残差を演算する回り込み残差演算手段と、誤差信号演算手段から出力された誤差信号および回り込み残差演算手段から出力された回り込み残差を逆フーリエ変換して時間領域信号に変換する逆フーリエ変換手段と、時間領域信号に変換された誤差信号と空間領域キャンセラ受信信号とから空間領域キャンセラのFIRフイルタ係数の勾配を計算し、新たな係数に更新する第1のフイルタ係数演算手段と、時間領域信号に変換された回り込み残差から時間領域キャンセラのFIRフィルタ係数の勾配を計算し、新たな係数に更新する第2のフィルタ係数演算手段を備えたことを特徴とする。
【0044】
また、親局波信号生成手段は、DBPSK復調により制御情報信号を生成することを特徴とする。
【0045】
また、誤差信号演算手段はパイロット信号および制御情報信号以外のサブキャリアについては誤差信号として0を出力することを特徴とする。
【0046】
また、キャンセラ選定手段は、各サブキャリアの誤差信号をサブキャリア方向に平均した平均誤差に対して、さらに任意の2つの期間についてシンボル方向に平均し、その大小により動作させるキャンセラを選定することを特徴とする。
【0047】
さらに、逆フーリエ変換手段は、空間領域キャンセラを示すフラグが出力されていることに応じて、誤差信号を時間領域信号に変換してその結果を第1のフイルタ係数演算手段に出力し、時間領域キャンセラを示すフラグが出力されていることに応じて、回り込み残差を時間領域信号に変換してその結果を第2のフイルタ係数演算手段に出力することを特徴とする。
【0048】
【発明の実施の形態】
図1はこの発明の一実施形態における回り込みキャンセラのブロック図である。図1において、回り込みキャンセラは受信アンテナ1と増幅器2と送信アンテナ5と空間領域キャンセラ6と時間領域キャンセラ7とフーリエ変換部8と親局波信号生成部9と誤差信号演算部10と逆フーリエ変換部11とFIRフィルタ_1〜P&FIRフィルタ_T係数演算部12とから構成されている。
【0049】
空間領域キャンセラ6はFIRフィルタ_1〜_Pにより妨害波や回り込み波を除去するものであり、時間領域キャンセラ7は観測点での受信信号と既知のパイロット信号から閉ループ伝達関数を推定後、回り込み波の複製信号をFIRフィルタ_T3で生成し、受信信号から減ずることで回り込み波成分を打消す。フーリエ変換部8はフーリエ変換により観測点信号を周波数領域信号に変換する。親局波信号生成部9は親局波の伝送モードや各セグメントの変調方式に応じて親局波のSP,CP,AC,TMCCを生成して誤差信号演算部10に与える。
【0050】
誤差信号演算部10は親局波信号生成部9から与えられるSP,CP,AC,TMCCサブキャリアにおける親局波信号と、フーリエ変換部8から与えられる観測点信号の差分を計算し、誤差信号(周波数領域信号)を逆フーリエ変換部11に出力する。逆フーリエ変換部11は逆フーリエ変換により周波数領域信号を時間領域信号に変換してFIRフィルタ_1〜P&FIRフィルタ_T係数演算部12に与える。FIRフィルタ_1〜P&FIRフィルタ_T係数演算部12は、誤差の大きさを評価するための評価関数として誤差信号(時間領域信号)の二乗平均値Jを用い、Jを最小化するように各FIRフィルタ係数の勾配を求め、各FIRフィルタ_1〜PのFIRフィルタ係数を一括更新する。
【0051】
なお、図1においてPは受信アレイアンテナ素子数を示し、d(t)は空間領域キャンセラ6から見て正面方向(0°方向)から到来する親局波信号を示し、i1(t)〜iP(t)は各素子に到来する妨害波信号を示している。ここで、妨害波信号とは、中継局に到来する親局波以外の信号であり、自局送信アンテナからの回り込み波,親局マルチパス,他局妨害波などがすべて含まれている。また、x1(t)〜xP(t)は各素子での受信信号を示し、w1(t)〜wP(t)はFIRフィルタ_1〜Pのインパルス応答を示し、y(t)は空間領域キャンセラ6の出力信号を示し、s(t)は観測点信号(時間領域キャンセラ出力信号)を示し、wT(t)はFIRフィルタ_T3のインパルス応答を示し、S(ω)は観測点信号のフーリエ変換を示し、D(ω)は親局波信号のフーリエ変換を示し、E(ω)は誤差信号のフーリエ変換を示し、e(t)は誤差信号を示している。
【0052】
次に、動作について説明する。素子pにおける受信信号xp(t)は次式で表わされる。
【0053】
xp(t)=d(t)+ip(t)…(24)
これにより、空間領域キャンセラ6の出力信号y(t)は次式で表わされる。
【0054】
【数4】
【0055】
ここで、NSは空間領域キャンセラ6のFIRフィルタのタップ数,wp(τ)は素子pにおけるFIRフィルタのτ番目のタップ係数を表わす。
【0056】
y(t)をベクトルで表現すると次式で表わされる。
y(t)=wT(t)x(t)…(26)
ここで、w(t)とx(t)は次のように表わされる。
【0057】
w(t)=[wT 1(t),wT 2(t),…,wT P(t)]T
wp(t)=[wp(0),wp(1),…,wp(Ns−1)]T
x(t)=[xT 1(t),xT 2(t),…,xT P(t)]T
xp(t)=[xp(t),xp(t−1),…,xp(t−(Ns−1))]Tw(t)はすべての素子のFIRフィルタ係数を並べた空間領域キャンセラFIRフィルタ係数ベクトルである。
【0058】
時間領域キャンセラ7の出力信号である観測点信号s(t)は次式で表わされる。
【0059】
【数5】
【0060】
ここで、NTは時間領域キャンセラのFIRフィルタのタップ数であり、wT(τ)はFIRフィルタのτ番目のタップ係数である。
【0061】
s(t)をベクトルで表現すると次式のようになる。
s(t)=y(t)−wT T(t)s(t)…(28)
ここで、wT(t)とs(t)は次のように表わされる。
【0062】
wT(t)=[wT(0),wT(1),…,wT(NT−1)]T
s(t)=[s(t),s(t−1),…,s(t−(NT−1))]T
wT(t)は時間領域キャンセラFIRフィルタ係数ベクトルである。
【0063】
式(26),(28)より、s(t)は次式で表わすことができる。
s(t)=wT(t)x(t)−wT T(t)s(t)…(29)
親局波信号と観測点信号との差を誤差信号e(t)として次式で定義する。
【0064】
e(t)=d(t)−s(t)…(30)
この発明の一実施形態では、空間領域キャンセラ6と時間領域キャンセラ7のFIRフィルタ係数を更新する方法として、誤差信号の平均二乗誤差Jを評価関数とする最急降下法を利用する。シンボル時刻nにおける誤差信号の平均二乗誤差Jは次式で表わされる。
【0065】
ここで、E[・]は期待値演算を表わす。空間領域キャンセラFIRフィルタ係数ベクトルw(n,t)と時間領域キャンセラFIRフィルタ係数ベクトルwT(n,t)に関するJの勾配は次式のようになる。
【0066】
∂J/∂w(n,t)=−2E[x*(n,t)(d(n,t)−s(n,t))]=−2E[x*(n,t)e(n,t)]…(33)
∂J/∂wT(n,t)=2E[s*(n,t)(d(n,t)−s(n,t))]=2E[s*(n,t)e(n,t)]…(34)
なお、式(33),(34)の期待値演算は次式で計算する。
【0067】
【数6】
【0068】
ここで、NはFFTサイズを表わす。最急降下法により両キャンセラのFIRフィルタ係数を次式で更新する。
【0069】
【数7】
【0070】
ここで、μn(n)は正規化ステップサイズであり、次式で表わされる。
【0071】
【数8】
【0072】
また、αとβは正の実数である。式(37)に示すように、この実施形態による回り込みキャンセラでは、両キャンセラのFIRフィルタ係数を1シンボルごとに一括更新する。FIRフィルタ_1〜P&FIRフィルタ_T係数演算部12は誤差信号e(n,t)から両キャンセラのFIRフィルタ係数を更新するものであり、図2に示すように構成される。図2に示す2つのサンプル値平均処理ブロック121,122では式(35),(36)が計算され、正規化ステップサイズ計算ブロック123では式(38)のμn(n)が計算される。
【0073】
ところで、式(30)の誤差信号e(t)は、中継局では親局波信号が未知の信号であるため、直接計算することができない。しかし、親局波信号にはBPSK変調されたSP,CPなどのパイロット信号やDBPSK変調されたAC,TMCCなどの制御情報伝送信号が含まれているため、これらを利用してe(t)を求める。以下その手順について説明する。
【0074】
最初に、フーリエ変換部8ではシンボル時刻nにおける観測点信号s(n,t)をNサンプル分抽出し、フーリエ変換により周波数領域信号S(n,ω)に変換する。
【0075】
S(n,ω)=F{s(n,t)}…(39)
ここで、F{}はフーリエ変換を表わす。その後、S(n,ω)は親局波信号生成部9と誤差信号演算部10とに送られる。
【0076】
親局波信号生成部9では、親局波信号のセグメント情報やシンボル番号に応じて、誤差信号を計算するために必要な親局波信号を生成して誤差信号演算部10へ出力する。生成方法は、親局波信号の各セグメントの変調方式により異なる。
【0077】
変調方式が同期変調方式である場合、そのセグメントには一定のサブキャリア間隔でSPが配置されている。SPが配置されているサブキャリアωspにおける送信信号D(n,ωsp)は事前に割当てられているので、その値を誤差信号演算部10へ出力する。なお、D(n,ωsp)は周波数領域信号であり、±4/3のいずれかの値をとる。また、シンボル時刻が変わってもその値は不変である。
【0078】
変調方式が差動変調方式である場合、そのセグメントにはACとTMCCが複数本ランダムに配置されており、またセグメントの最低周波数サブキャリアにはCPが配置されている。CPが配置されているサブキャリアωcpにおける送信信号D(n,ωcp)は事前に割当てられているので、その値を誤差信号演算部10へ出力する。なお、D(n,ωcp)は周波数領域信号であり、±4/3のいずれかの値をとる。また、シンボル時刻が変わってもその値は不変である。
【0079】
ACまたはTMCCが配置されているサブキャリアωatについては、DBPSK復調して親局波信号を推定する。図3はその演算過程を示す図である。図3において、シンボル時刻nにおけるS(n,ωat)をシンボル時刻n−1におけるS(n−1,ωat)で複素除算した値の実部の符号から親局波信号の位相変化分を判定し、シンボル時刻n−1における親局波信号との積をとることにより、シンボル時刻nにおける親局波信号を推定できる。これを式で表わすと次のようになる。
【0080】
【数9】
【0081】
ここで、Sign[]は符号関数であり、Re{}は実部を抽出する関数である。式(40)により求められたD(n,ωat)を誤差信号演算部10へ出力する。なお、D(n,ωat)は周波数領域信号であり、±4/3のいずれかの値をとる。また、シンボル時刻n=0における親局波信号D(0,ωat)は事前に割当てられているので、その値を利用する。
【0082】
誤差信号演算部10では、まず次式により周波数領域における誤差信号を計算する。
【0083】
E(n,ωsp)=D(n,ωsp)−S(n,ωsp)…(41)
E(n,ωcp)=D(n,ωcp)−S(n,ωcp)…(42)
E(n,ωat)=D(n,ωat)−S(n,ωat)…(43)
なお、SP,CP,AC,TMCC以外のサブキャリアについてはE(n,ω)=0とする。その後、すべてのサブキャリアにおけるE(n,ω)を逆フーリエ変換部11へ出力する。
【0084】
逆フーリエ変換部11では、周波数領域における誤差信号E(n,ω)を逆フーリエ変換により時間領域表現e(n,t)に変換する。
【0085】
e(n,t)=F−1{E(n,ω)}…(44)
ここで、F−1{}は逆フーリエ変換を表す。
【0086】
以上の手順により、誤差信号e(n,t)を求めることができる。
図4はこの発明の第2の実施形態における回り込みキャンセラのブロック図である。図4において、この実施形態における回り込みキャンセラは、受信アンテナ1と増幅器2と送信アンテナ5と空間領域キャンセラ6と時間領域キャンセラ7とフーリエ変換部8と親局波信号生成部9と誤差信号演算部10と逆フーリエ変換部11とを含み、これらの構成は図1と同じである。
【0087】
さらに、回り込みキャンセラには、キャンセラ選定部13と、伝送路推定部14と回り込み誤差演算部15とFIRフィルタ_1〜P係数演算部16とFIRフィルタ_T係数演算部17とを含む。キャンセラ選定部13は誤差信号演算部10から与えられる誤差信号の大きさの変化から動作させるキャンセラ(空間領域キャンセラ6または時間領域キャンセラ7のいずれか)を選定し、0または1の値を持つフラグ(フラグ=0:空間領域キャンセラ6、フラグ=1:時間領域キャンセラ7)を出力する。伝送路推定部14はフラグ=1のとき、親局波信号生成部9で生成された親局波信号とフーリエ変換部8の出力により伝達関数を計算する。
【0088】
回り込み残差演算部15は、伝達路推定部14から与えられる伝達関数から回り込み残差(周波数領域信号)を計算する。FIRフィルタ_1〜P係数演算部16は、誤差信号(時間領域信号)と空間領域キャンセラ受信信号とから空間領域キャンセラ6のFIRフィルタ係数の勾配を計算し、新しい係数に更新する。FIRフィルタ_T係数演算部17は、回り込み残差から時間領域キャンセラ7のFIRフィルタ係数の勾配を計算し、新しい係数に更新する。
【0089】
なお、図4における記号のうち、F(ω)は伝達関数を示し、ET(ω)は回り込み誤差のフーリエ変換を示し、eS(t)は誤差信号を示し、eT(t)は回り込み誤差を示し、それ以外の記号は図1と同じである。
【0090】
次に、動作について説明する。シンボル時刻nにおける観測点信号s(n,t)をフーリエ変換部8により周波数領域信号S(n,ω)に変換し、周波数領域における誤差信号E(n,ω)を計算するまでは図1の実施形態と同様の動作を行なう。その後、E(n,ω)はキャンセら選定部13と逆フーリエ変換部11へ出力される。キャンセラ選定部13は誤差信号演算部10からのE(n,ω)の大きさの変化分から動作させるキャンセラ(空間領域キャンセラまたは時間領域キャンセラのいずれか)を選定し、0または1の値を持つフラグ(フラグ=0:空間領域キャンセラ6,フラグ=1:時間領域キャンセラ7)を出力する。
【0091】
図5は図1に示したキャンセラ選定部13の具体例を示すブロック図である。図5において、平均処理ブロック131に誤差信号E(n,ω)が与えられる。平均処理ブロック131はE(n,ω)のサブキャリア方向の平均値Ea(n)を計算する。計算は、たとえば以下の式を利用することができる。
【0092】
【数10】
【0093】
ここで、Im{}は虚部を抽出する関数である。
次に、Ed(n)を計算する。
【0094】
【数11】
【0095】
ここで、Neは乗算器の数を示す。Ed(n)は、シンボル時刻n〜n−(Ne−1)におけるEa(n)の平均値とシンボル時刻n−Ne〜n−(2Ne−1)におけるEa(n)の平均値との差である。キャンセラが収束中のときは一般にEd(n)>0となり、キャンセラがある程度収束するとEa(n)はある値を中心に変動するため、Ed(n)<0となることがある。なお、単位遅延演算子の初期値は想定されるEa(n)の最大値よりも大きな値に設定しておく。
【0096】
最後に、キャンセラ選定ブロック132で以下の処理により動作させるキャンセラを示すフラグを決定し、伝送路推定部14と逆フーリエ変換部11へ出力する。
【0097】
【数12】
【0098】
すなわち、キャンセラが収束途中の場合はフラグ=0を出力し、空間領域キャンセラ6を動作させる。空間領域キャンセラ6では、妨害波や親局波よりも電力の大きい回り込み波などをキャンセルする。空間領域キャンセラ6がある程度収束すればフラグ=1を出力することになり、空間領域キャンセラ6で除去しきれない回り込み波を時間領域キャンセラ7で除去する。これにより、キャンセラ全体として親局波以外の到来波を除去することが可能となる。
【0099】
伝送路推定部14では、フラグ=1のとき、シンボル時刻nにおける観測点信号s(n,t)のフーリェ変換である周波数領域信号S(n,ω)と親局波信号生成部9から与えられるD(n,ω)から伝達関数F(n,ω)を計算する。F(n,ω)の計算方法は変調方式により異なる。
【0100】
変調方式が同期変調方式である場合、そのセグメントには一定のサブキャリア間隔でSPが配置されている。SPが配置されているサブキャリアωSPにおける伝達関数F(n,ωSP)は次式で与えられる。
【0101】
F(n,ωSP)=S(n,ωSP)/D(n,ωSP)…(50)
SP以外のサブキャリアについてはF(n,ωSP)を利用してキャリア方向フィルタによる内挿処理を行ない、F(n,ω)を推定する。
【0102】
変調方式が差動変調方式である場合、その伝達関数の振幅A(n,ω)は次式で計算される。
【0103】
【数13】
【0104】
伝達関数の位相は以下のようにして計算される。なお、以下の計算では、セグメントのサブキャリア数をKsとし、サブキャリア番号をk(k=0〜Ks−1)として表すことにする。差動変調方式セグメントの最低周波数サブキャリアにはCPが配置されているので、CPが配置されているサブキャリアk=0における伝達関数の位相θ(n,0)は次式で計算される。
【0105】
【数14】
【0106】
CP以外のサブキャリアについては、まずS(n,k)の位相φ(n,k)を計算後、次式により差動変調信号の変調成分を除去する。
【0107】
【数15】
【0108】
ここで、Mpは変調多値数であり、ACとTMCC(BPSK変調)はMp=2,データキャリア(π/4シフトDQPSK変調)はMp=4である。また、floorは引数の値を超えない最大の整数を出力する関数である。
【0109】
ただし、データキャリアはシンボルごとにπ/4ずつ位相点がシフトするので、第(53)式を計算する際は、1シンボルおきにφ(n,k)からπ/4を減算したものを改めてφ(n,k)としてφm(n,k)を計算する。
【0110】
上述の方法により計算されたφm(n,k)は強制的に±π/Mpの領域内に変換されるため、隣り合うサブキャリア間に不連続が生じる場合がある。そのため、以下の方法によりφm(n,k)を連続化して伝達関数の位相θ(n,k)を求める。
【0111】
【数16】
【0112】
最後に、次式を計算して、差動変調方式の伝達関数F(n,ω)を求める。
F(n,ω)=A(n,ω)exp{jθ(n,ω)} (55)
このF(n,ω)は回り込み残差演算部15へ出力される。なお、フラグ=0のときは動作しない。回り込み残差演算部15では、伝送路推定部14から出力されたF(n,ω)から、次式により回り込み残差ET(n,ω)(周波数領域信号)を計算する。
【0113】
ET(n,ω)=1−1/F(n,ω) (56)
なお、フラグ=0のときは動作しない。
【0114】
逆フーリエ変換部11では、逆フーリエ変換により周波数領域信号を時間領域信号に変換する。フラグ=0のときは逆フーリエ変換により誤差信号E(ω)を時間領域信号eS(t)に変換して、FIRフィルタ_1〜P係数演算部16へ出力する。フラグ=1のときは、逆フーリエ変換により回り込み残差ET(ω)を時間領域信号eT(t)に変換して、FIRフィルタ_T係数演算部17へ出力する。
【0115】
FIRフィルタ_1〜P係数演算部16では、誤差信号と空間領域キャンセラ受信信号から空間領域キャンセラ6のFIRフィルタ係数の勾配を計算して、新しい係数に更新する。その演算過程は図12と同じであるので説明を省略する。
【0116】
FIRフィルタ_T係数演算部17では、回り込み残差eT(n,t)から時間領域キャンセラ7のFIRフィルタ係数の勾配を計算して、新しい係数に更新する。その演算過程を図6に示す。最初に、eT(n,t)に次式で表される非線形処理(インパルス応答の尖鋭化)を施して、周波数帯域内の回り込み伝送路特性を周波数帯域外へ拡張する。
【0117】
【数17】
【0118】
ここで、α(0≦α≦1)は任意の実数であるが、0.5以上の値に設定するとその効果は顕著に現われる。
【0119】
次に、e´T(n,t)を用いてFIRフィルタ_T係数を更新する。
ω´T(n+1,t)=ωT(n,t)+μTe´T(n,t) (58)
ここで、μTはFIRフィルタ_T係数更新ステップサイズである。
【0120】
最後に、ω´T(n+1,t)に次式で表される非線形処理を施して、ω´T(n+1,t)に含まれる雑音成分を除去する。
【0121】
【数18】
【0122】
ここで、βは希望波に対する雑音レベルの比(搬送波対雑音比)程度に設定する。第(59)式により求められたωT(n+1,t)が時間領域キャンセラの新しいFIRフィルタ_T係数となる。
【0123】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0124】
【発明の効果】
以上のように、この発明によれば、空間領域キャンセラと時間領域キャンセラとを組合せた時空間領域キャンセラを構成することにより、妨害波,親局波よりも電力の大きい回り込み波やアンテナ素子数よりも多くの回り込み波を除去することができる。しかも、両キャンセラを1つの評価関数で動作させることにより、フィルタ係数が発散することなく最適値に収束させることができる。親局波信号生成部で親局波に挿入されているSPとCPのパイロット信号を生成し、またDBPSK復調によりACとTMCCの情報伝送信号を生成することにより、同期変調方式と差動変調方式の両方式に対応可能である。さらに、SP,CP,AC,TMCCサブキャリアのみの誤差信号を利用することで、フィルタ係数の更新に必要な誤差信号を高精度で得ることができる。
【0125】
さらに、両キャンセラの利点を有しているため、いずれか単独で用いた場合よりも優れたキャンセル特性を実現できる。
【0126】
また、他の発明では、動作させるキャンセラを選定する方法として、任意のしきい値を設定せずに誤差信号のサブキャリア方向の平均値の時間変化から判定する方法を適用したことにより、伝搬環境に応じて適切なキャンセラを選定することができる。
【0127】
さらに、逆フーリエ変換を実施するための空間領域キャンセラを動作させるのに必要な誤差信号と、時間領域キャンセラを動作させるのに必要な回り込み誤差の2系統の信号をフラグにより切換えることにより、本来は2つの必要な逆フーリエ変換部を1つにすることができ、装置化した場合のハードウェアを省略できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の第1の実施形態における回り込みキャンセラの構成を示すブロック図である。
【図2】図1に示したFIRフィルタ_1〜P&FIRフィルタ_T係数演算部の構成を示すブロック図である。
【図3】親局波信号生成部のACとTMCCの生成過程を示す図である。
【図4】この発明の第2の実施形態における回り込みキャンセラの構成を示すブロック図である。
【図5】図4に示したキャンセラ選定部の構成を示すブロック図である。
【図6】図4に示したFIRフィルタ_T係数演算部の構成を示すブロック図である。
【図7】従来の回り込みキャンセラを示すブロック図である。
【図8】図7に示したFIRフィルタ_Tの構成を示すブロック図である。
【図9】図7に示したFIRフィルタ_T係数演算部の構成を示すブロック図である。
【図10】MMSE型広帯域アダプティブアレイを示すブロック図である。
【図11】図10に示したFIRフィルタ_pの構成を示すブロック図である。
【図12】LMSに基づくFIRフィルタ_p係数更新過程を示すブロック図である。
【符号の説明】
1 受信アンテナ、2 増幅器、3 FIRフィルタ_T、5 送信アンテナ、6 空間領域キャンセラ、7 時間領域キャンセラ、8 フーリエ変換部、9親局波信号生成部、10 誤差信号演算部、11 逆フーリエ変換部、12 FIRフィルタ_1〜P&FIRフィルタ_T係数演算部、13 キャンセラ選定部、14 伝送路推定部、15 回り込み残差演算部、16 FIRフィルタ_1〜P係数演算部、17 FIRフィルタ_T係数演算部。
Claims (6)
- 各アンテナ素子の受信信号の重み付けをFIRフィルタにより行った後合成するアダプティブアレーを基本構成とする空間領域キャンセラと、FIRフィルタと時間領域キャンセラの入力信号から前記FIRフィルタの出力信号を減算する減算器を基本構成とする時間領域キャンセラとを縦続接続した回り込みキャンセラにおいて、
前記時間領域キャンセラの観測点での出力信号をフーリエ変換して周波数領域信号を出力するフーリエ変換手段、
親局波の伝送モードや各セグメントの変調方式に応じて、親局波のパイロット信号と制御情報信号とを生成する親局波信号生成手段、
前記親局波信号生成手段によって生成されたパイロット信号および制御情報信号と前記フーリエ変換手段からの周波数領域信号との差分を演算して誤差信号を出力する誤差信号演算手段、
前記誤差信号演算手段から出力された誤差信号を逆フーリエ変換して時間領域信号に変換する逆フーリエ変換手段、および
前記時間領域信号に変換された誤差信号の二乗平均値を最小化するように、前記空間領域キャンセラおよび前記時間領域キャンセラの各FIRフィルタ係数の勾配を求め、各FIRフィルタ係数を一括更新するFIRフィルタ係数演算手段を備えたことを特徴とする、回り込みキャンセラ。 - 各アンテナ素子の受信信号の重み付けをFIRフィルタにより行った後合成するアダプティブアレーを基本構成とする空間領域キャンセラと、FIRフィルタと時間領域キャンセラの入力信号から前記FIRフィルタの出力信号を減算する減算器を基本構成とする時間領域キャンセラとを縦続接続した回り込みキャンセラにおいて、
前記時間領域キャンセラの観測点での出力信号をフーリエ変換して周波数領域信号を出力するフーリエ変換手段、
親局波の伝送モードや各セグメントの変調方式に応じて、親局波のパイロット信号と制御情報信号とを生成する親局波信号生成手段、
前記親局波信号生成手段によって生成されたパイロット信号および制御情報信号と前記フーリエ変換手段からの周波数領域信号との差分を演算して誤差信号を出力する誤差信号演算手段、
前記誤差信号演算手段から出力された誤差信号の大きさの変化から、前記空間領域キャンセラまたは前記時間領域キャンセラを選定して動作させるキャンセラを示すフラグを出力するキャンセラ選定手段、
前記キャンセラ選定手段によって時間領域キャンセラが選定されていることに応じて伝達関数を演算する伝送路推定手段、
前記伝送路推定手段によって演算された伝達関数に基づいて、回り込み残差を演算する回り込み残差演算手段、
前記誤差信号演算手段から出力された誤差信号および前記回り込み残差演算手段から出力された回り込み残差を逆フーリエ変換して時間領域信号に変換する逆フーリエ変換手段、
前記時間領域信号に変換された誤差信号と前記空間領域キャンセラ受信信号とから前記空間領域キャンセラのFIRフイルタ係数の勾配を計算し、新たな係数に更新する第1のフイルタ係数演算手段、および
前記時間領域信号に変換された回り込み残差から前記時間領域キャンセラのFIRフィルタ係数の勾配を計算し、新たな係数に更新する第2のフィルタ係数演算手段を備えたことを特徴とする、回り込みキャンセラ。 - 前記親局波信号生成手段は、DBPSK復調により前記制御情報信号を生成することを特徴とする、請求項1または2に記載の回り込みキャンセラ。
- 前記誤差信号演算手段は前記パイロット信号および制御情報信号以外のサブキャリアについては誤差信号として0を出力することを特徴とする、請求項1または2に記載の回り込みキャンセラ。
- 前記キャンセラ選定手段は、各サブキャリアの誤差信号をサブキャリア方向に平均した平均誤差に対して、さらに任意の2つの期間についてシンボル方向に平均し、その大小により動作させるキャンセラを選定することを特徴とする、請求項2に記載の回り込みキャンセラ。
- 前記逆フーリエ変換手段は、前記空間領域キャンセラを示すフラグが出力されていることに応じて、前記誤差信号を時間領域信号に変換してその結果を前記第1のフイルタ係数演算手段に出力し、前記時間領域キャンセラを示すフラグが出力されていることに応じて、前記回り込み残差を時間領域信号に変換してその結果を前記第2のフイルタ係数演算手段に出力することを特徴とする、請求項2に記載の回り込みキャンセラ。
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