JP4193749B2 - 巻線型コイル製造方法 - Google Patents
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Description
図16に示すように、この巻線型コイルは、巻線101が巻装された巻芯102と鍔103とを有してなるコア100を備え、巻芯102から引き出された巻線101の端部が、鍔103の周壁上に設けられた電極104に接続されている。また、この巻線型コイルにおいては、鍔103の一部が除去されて、隅R部103aが形成されている。
しかし、このような形状のコア100を有する巻線型コイルでは、図17の(a)に示すように、巻線101の引き出し部分101aと鍔103の隅R部103aとの間には間隙ができ、コーティング処理時に用いたコーティング剤Cが、この間隙に溜まってしまう。このため、この間隙に溜まったコーティング剤Cが周囲環境の温度変化によって収縮すると、図17(b)に示すように、収縮したコーティング剤Cによって巻線101(引き出し部101a)が鍔103の表面側に引っ張られ、巻線101が断線することがある。同様に、コーティング剤Cの膨張によっても巻線101が断線することがある。
図18は、巻線の断線防止構造を備えた従来の巻線型コイルを示す側面図である。 図18に示すように、この巻線型コイルは、コア100の鍔103に傾斜面103bを形成し、巻線101の引き出し部分101aをこの傾斜面103bに沿わせた状態で、その端部を電極104に接続した構造になっている。
これにより、巻芯102から電極104への引き出し部分101aと鍔103との間の間隙を無くし、この部分へのコーティング剤Cの浸入および滞留を抑制し、コーティング剤Cの収縮及び膨張による巻線101の断線を防止しようとするものである。
また、この技術と同様に、巻線の引き出し部分を鍔の壁面に沿わせて断線を防止する巻線型コイルが特許文献2ないし特許文献4に開示されている。
図19は、コーティング剤が巻線型コイルと基板との間に浸入及び滞留した状態を示す巻線型コイルの側面図である。
図19(a)に示すように、従来の巻線型コイルを基板200に実装する際には、巻線型コイルの下側と基板200との間に、間隙が生じる。したがって、コーティングの際に、コーティング剤Cがこの間隙に浸入して滞留する場合が多々ある。このような状態になると、図19(b)に示すように、間隙に滞留したコーティング剤Cが収縮したときに、巻線101の引き出し部分101aが基板200側に引っ張られ、断線する場合がある。
また、この巻線型コイルがコモンモードチョークコイルなどのように、2本の巻線を用いたコイルである場合には、図20に示すように、2本の巻線をそれぞれ接続するための電極104a,104bを鍔103に分離形成する必要がある。そして、電極104a,104bを完全に分離するために溝状の股部Bを形成し、引き出し部分101a−1,101a−2をこの股部B両側の傾斜面103b−1,103b−2に沿わせて電極104a,104bに接続する。したがって、この巻線型コイルにおいては、股部Bに浸入して滞留したコーティング剤Cがその収縮及び膨張時に引き出し部分101a−2を引っ張ったり張り出したりして断線させるおそれがある。
なお、上記特許文献2ないし特許文献4に開示された技術においても、上記のような問題は解決することができない。
かかる構成により、コア形成工程において、巻芯及びこの巻芯の軸方向両端部に設けられた1対の鍔を有してなるコアが形成される。この際、鍔の内側壁から外側壁側に向かって凹む曲面部を有し且つこの曲面部が巻芯の周壁と段差無く連続する凹部が各鍔に設けられる。しかる後、電極形成工程によって、コアの各鍔の周壁上に電極が形成され、巻線工程において、コアが保持された状態で、巻線が巻芯に巻装される。そして、巻線接合工程によって、巻芯に巻装された巻線の端部が電極まで引き出されて接合される。この際、線材が巻線の引き出し部分を凹部の曲面部に対して押圧しながら、当該曲面部に沿って移動して、巻線の引き出し部分を凹部の曲面部に沿った状態にする。
かかる構成により、コア形成工程において、巻芯,この巻芯の軸方向両端部に設けられた鍔,及び各鍔に設けられ且つ巻芯の軸方向と略垂直な1対の脚部を有してなるコアが形成される。この際、各脚部の内側壁から外側壁側に向かって凹む曲面部を有し且つこの曲面部が巻芯の周壁と段差無く連続する凹部が各脚部に設けられる。そして、電極形成工程において、1対の脚部の先端部に、電極がそれぞれ形成された後、巻線工程によって、コアが保持された状態で、第1及び第2の巻線が巻芯に巻装される。しかる後、巻線接合工程において、第1の巻線の端部が1対の脚部の一方の電極まで引き出されて接合されると共に、第2の巻線の端部が1対の脚部の他方の電極まで引き出されて接合される。この際、線材が第1及び第2の巻線の引き出し部分を脚部に形成されている凹部の曲面部に対して押圧しながら、当該曲面部に沿って移動して、第1及び第2の巻線の引き出し部分を凹部の曲面部に沿った状態にする。
かかる構成により、脚部の股部に架かっていた引き出し部分が、股部から離れた巻芯の周壁側に移動させられるので、コーティング剤が股部に滞留した場合においても、引き出し部分がこのコーティング剤によって引っ張られたり張り出されたりするおそれはない。
図1及び図2に示すように、この実施例の巻線型コイル1は、コア2と電極3と1本の巻線4とを具備してなる。
1対の鍔6,6は、それぞれ略直方体状をなし、巻芯5の軸方向(図2の左右方向)の両端部に形成されており、各鍔6の内側下部には、凹部7が形成されている。
この凹部7は、鍔6の内側壁61から外側壁62側に向かって凹むように湾曲した曲面部70を有している。この曲面部70は、図3に示すように、巻芯5の下側の周壁50と段差無く連続しており、周壁50との境界から電極3側に迫り上がるように湾曲した円弧状をなす。
具体的には、図3に示すように、引き出し部分41が円弧状の曲面部70に沿うように引き出された後、その端部40が電極3の表面に圧着されている。すなわち、破線で示すように、引き出し部分41を引き出し始点P1から引き出し終点P2に直状に引き出した場合に比べて、引き出し部分41の長さが長く、引き出し部分41は所謂弛んだ状態になっている。したがって、図4の破線で示すように、引き出し部分41を引き出し始点P1から引き出し終点P2に直状に引き出した場合には、矢印方向に外力fが加わると、引き出し部分41に張力が生じ、断線する可能性が非常に高い。しかし、この実施例では、引き出し部分41に弛みを持たせているので、外力fに対して二点鎖線で示すように変位し、引き出し部分41が完全に弧状に張らない限り、実線で示す状態から変位しても、引き出し部分41に張力は生ぜず、負荷もかからない。
図5は、第1実施例の巻線型コイル製造方法を示す工程図である。
図5に示すように、この製造方法は、コア形成工程S1と電極形成工程S2と巻線工程S3と巻線接合工程S4とを備える。
コア形成工程S1は、巻線型コイル1のコア2を形成する工程である。
具体的には、磁性体又は非磁性体を成形し焼成することで、巻芯5と1対の鍔6,6とを有するコア2(図1及び図2参照)を形成する。この際、各鍔6の内側下部に、円弧状の曲面部70を有した凹部7を形成する。
電極形成工程S2は、コア2の各鍔6の下面上に電極3を形成する工程である。具体的には、Ag、Ag−Pd、Ag−Pt等のペーストを、各鍔6の下面にディップし又は印刷することによって、10μm〜30μmの膜層を形成する。そして、この膜層の表面に電気メッキ等の湿式メッキを施し、Ni、Sn、Sn−Pb等の1μm〜30μm程度のメッキ層を形成することで、電極形成工程S2を完了する。
図6は、巻線工程S3の巻始めの状態を示す概略図であり、図7は巻線工程S3の巻終わり状態を示す概略図である。
巻線工程S3は、図6に示すように、電極形成工程S2を経たコア2をチャック300で保持した状態で、巻線4を巻芯5に巻装する工程である。具体的には、一方の鍔6をチャック300で固定する。しかる後、巻線用ノズル310から抽出した巻線4の端部を一方側の電極3(図6の左側の電極)に位置決めする。かかる状態で、矢印で示すように、チャック300によってコア2を回転させることで、巻線4を巻芯5にスパイラル状に巻き付けていく(スピンドル方式)。そして、図7に示すように、巻線4を巻芯5に所望ターン数だけ巻き付けた後、巻線4の端部が他方側の電極3(図7の右側の電極)の上に来るように位置決めすることで、巻線工程S3を終了する。
図8は巻線接合工程S4の一過程である引き出し部分41の処理過程を示す概略平面図であり、図9は、引き出し部分41の処理過程を示す概略側面図である。
巻線接合工程S4は、上記巻線工程S3で巻芯5に巻装された巻線4の両端部40,40を両電極3,3まで引き出した状態で接合する工程である。
具体的には、図8及び図9に示すように、両曲面部70,70と平行に位置させた線材320,320を巻線4の両引き出し部分41,41の上に接触させた状態で配し、これら線材320,320を用いて、引き出し部分41,41を曲面部70,70に対して押圧しながら、線材320,320を、図8及び図9の矢印で示すように、曲面部70,70に沿って上昇移動させる。これにより、図9に示すように、電極3,3からコア2の両側に延出している巻線4の余り部分が電極3,3側に引き込まれ、引き出し部分41,41が、二点鎖線で示すように、曲面部70,70に隙間なく沿った状態で湾曲させられる。なお、引き出し部分41を確実に曲面部70に沿って隙間なく湾曲させるためには、線材320の半径を、曲面部70の曲率半径の0.1倍〜1.0倍に設定することが好ましい。
かかる引き出し部分41の湾曲処理過程を経た後、巻線4の両端部40,40を電極3,3に接続させる。具体的には、両端部40,40を電極3,3の表面に熱圧着することで、図3に示すように、潰れた両端部40,40が電極3,3の最外層のSn膜などにロウ付けされ、信頼性の高い接合が達成される。
以上のようにして、巻線4を電極3,3に接合した後、余分な巻線部分を端部40から切り離すことで、コーティング対応可能な信頼性の高い巻線型コイル1を得ることができる。
図10は、巻線型コイル1が示す断線防止作用を示す側面図である。
図10(a)に示すように、電極3,3を基板200のランドなど(図示せず)に半田付けすることで、巻線型コイル1を基板200に実装することができる。
このとき、巻線型コイル1がコーティングされていると、コーティング剤Cが巻線4の引き出し部分41と凹部7の曲面部70との間に浸入及び滞留するおそれがある。しかし、この実施例の製造方法で製造された巻線型コイル1においては、引き出し部分41が曲面部70に沿った状態で、巻線4の各端部40が各電極3に接合されているので、引き出し部分41と曲面部70との間に隙間が発生しない。したがって、コーティング剤Cが引き出し部分41と曲面部70との間に浸入及び滞留することはない。この結果、引き出し部分41と曲面部70との間に浸入及び滞留したコーティング剤Cによって引き出し部分41を断線させるという事態は生じない。
図11は、この発明の第2実施例に係る巻線型コイル製造方法によって製造される巻線型コイルを下方から見た斜視図である。
この実施例で製造される巻線型コイル1′は、2線巻きの巻線型コモンモードチョークコイルである。
これら1対の脚部65,66は、巻芯5の軸方向と略垂直に、即ち巻芯5の周壁50に対し垂直に立設されており、それらの先端部に電極31,32が形成されている。
各脚部65(66)は、凹部7−1(7−2)を有しており、この凹部7−1(7−2)は、各脚部65(66)の内側壁から外側壁側に向かって凹む曲面部70−1(70−2)を有している。そして、曲面部70−1(70−2)は、巻芯5の下側の周壁50と段差無く連続しており、周壁50との境界から電極31(32)側に迫り上がるように円弧状に湾曲している。
具体的には、第1の巻線4−1の引き出し部分41−1が凹部7−1の曲面部70−1に沿った状態にされ、端部40−1が電極31に接合されている。一方、第2の巻線4−2の引き出し部分41−2は、巻芯5の周壁50上を這って脚部66の曲面部70−2に至り、曲面部70−2を沿った状態で電極32に至っている。そして、端部40−2が電極32に接合されている。すなわち、引き出し部分41−1,41−2の全体がコア2に接触しており、引き出し部分41−1,41−2とコア2との間には、隙間が生じていない。これにより、引き出し部分41−2は、1対の脚部65,66の間の溝である股部67に破線で示すような架かり方をせず、股部67を避けている。
この実施例の製造方法も、上記第1実施例と同様に、コア形成工程S1と電極形成工程S2と巻線工程S3と巻線接合工程S4とを備える。
この実施例の巻線接合工程S4は、巻線工程S3で巻芯5に巻装された第1の巻線4−1の端部40−1を脚部65の電極31まで引き出して接合すると共に、第2の巻線4−2の端部40−2を脚部66の電極32まで引き出して接合する工程である。
具体的には、図11に示すように、線材320を各鍔6の曲面部70−1,70−2に渡って水平に配し、線材320を第1及び第2の巻線4−1,4−2の引き出し部分41−1,41−2の上に接触させる。かかる点は上記第1の実施例における引き出し部分41の処理過程と同様であるが、この実施例では、さらに、股部67に架かっている引き出し部分41−2を他の線材330を用いて股部67から避ける過程が線材320の処理工程実施後に実行される。
すなわち、線材330を股部67に挿入した状態で水平に配すると共に、図13に示すように、線材330を引き出し部分41−2の最上位部に接触させておく。そして、線材330によって股部67に架かる引き出し部分41−2を巻芯5側に押圧した状態で、下向き矢印で示すように、線材330を下降させる。しかる後、左向き矢印で示すように、股部67の幅方向に移動させる。
なお、上述の実施例では線材320による処理をした後に線材330による処理したが、線材320,330による処理を同時に実行してもよい。
その他の構成、作用及び効果は、上記第1実施例と同様であるので、その記載は省略する。
上記実施例では、凹部の曲面部として、断面形状が円弧状の曲面部70,70−1,70−2を例にあげて説明したが、これに限るものではなく、図14に示すように、断面形状が折れ線状の曲面部70−3を用いることもできる。このとき、折れ曲がり部Gの角度θは90度以上であることが好ましい。また、図15に示すように、複数の折れ曲がり部G1,G2を有した曲面部70−4を用いることもできる。
Claims (5)
- 巻芯及びこの巻芯の軸方向両端部に設けられた1対の鍔を有してなるコアを形成するコア形成工程と、このコア形成工程で得たコアの各鍔の周壁上に電極を形成する電極形成工程と、この電極形成工程を経たコアを保持した状態で、巻線を上記巻芯に巻装する巻線工程と、この巻線工程で上記巻芯に巻装された巻線の端部を上記電極まで引き出して接合する巻線接合工程とを具備する巻線型コイル製造方法であって、
上記コア形成工程は、上記鍔の内側壁から外側壁側に向かって凹む曲面部を有し且つこの曲面部が上記巻芯の周壁と段差無く連続する凹部を各鍔に設ける過程を含み、
上記巻線接合工程は、線材によって巻線の引き出し部分を上記凹部の曲面部に対して押圧しながら、当該線材を当該曲面部に沿って移動させることにより、上記巻線の引き出し部分を上記凹部の曲面部に沿わせた状態にする過程を含む、
ことを特徴とする巻線型コイル製造方法。 - 請求項1に記載の巻線型コイル製造方法において、
上記コア形成工程で設けられた上記凹部の曲面部の断面形状は、弧状である、
ことを特徴とする巻線型コイル製造方法。 - 巻芯,この巻芯の軸方向両端部に設けられた鍔,及び各鍔に設けられ且つ上記巻芯の軸方向と略垂直な1対の脚部を有してなるコアを形成するコア形成工程と、このコア形成工程で得た上記1対の脚部の先端部に、電極をそれぞれ形成する電極形成工程と、この電極形成工程を経たコアを保持した状態で、第1及び第2の巻線を上記巻芯に巻装する巻線工程と、この巻線工程で上記巻芯に巻装された上記第1の巻線の端部を上記1対の脚部の一方の電極まで引き出して接合すると共に、上記巻芯に巻装された上記第2の巻線の端部を上記1対の脚部の他方の電極まで引き出して接合する巻線接合工程とを具備する巻線型コイル製造方法であって、
上記コア形成工程は、上記各脚部の内側壁から外側壁側に向かって凹む曲面部を有し且つこの曲面部が上記巻芯の周壁と段差無く連続する凹部を各脚部に設ける過程を含み、
上記巻線接合工程は、線材によって上記第1及び第2の巻線の引き出し部分を上記脚部に形成されている凹部の曲面部に対して押圧しながら、当該線材を当該曲面部に沿って移動させることにより、上記第1及び第2の巻線の引き出し部分を上記凹部の曲面部に沿わせた状態にする過程を含む、
ことを特徴とする巻線型コイル製造方法。 - 請求項3に記載の巻線型コイル製造方法において、
上記巻線接合工程は、他の線材を、上記脚部の股部に挿入して、当該股部に架かる引き出し部分を巻芯側に押圧することにより、当該引き出し部分を股部から巻芯の周壁側に移動させる過程をも含む、
ことを特徴とする巻線型コイル製造方法。 - 請求項3または請求項4に記載の巻線型コイル製造方法において、
上記コア形成工程で設けられた上記各凹部の曲面部の断面形状は、弧状である、
ことを特徴とする巻線型コイル製造方法。
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