JP4190709B2 - 色素の退色防止剤 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、色素の退色防止剤に関し、特に食品、飼料、医薬品、医薬部外品、及び化粧品などに添加する色素の退色及び変色防止、並びに食品素材などに元々存在する色素成分の退色及び変色を防止することができる色素の退色防止剤に関するものである。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】
食品、飼料、医薬品、医薬部外品、及び化粧品などには必ずといっていいほど着色料(色素)が用いられている。これらの中でも、カロテノイド系色素、フラボノイド系色素、アントシアニン系色素、アントラキノン系色素、ベタシアニン系色素、ジケトン系色素、アザフィロン系色素、ポルフィリン系色素などの天然成分から抽出分離した天然系色素が安全面でも環境面でも重宝されており、従来の合成着色料に取って代わってきている。
【0003】
しかしながら、これらの天然系色素は不安定であり、酸素、加熱処理や光照射により、変色及び退色し易いことが知られており、特に最近では、中身が良く見えるようなガラス容器、ペットボトル、ビニール包装等の透明容器が消費者に好まれ、長時間蛍光燈などの光に曝露される機会が多くなってきており、経時的に色調の変化及び退色などが生じ、商品価値が著しく低下してしまうという問題がある。
【0004】
このため、色素の変色及び退色を防ぐ方法について様々な提案がなされている。例えば、▲1▼容器を特別なものとして遮光を行う方法、▲2▼窒素ガス等の不活性ガスの雰囲気下に置き、酸化による変色及び退色を防ぐ方法、▲3▼アスコルビン酸、エリソルビン酸等の合成抗酸化剤を用いて変色及び退色を防ぐ方法、▲4▼カテキン類、クロロゲン酸、没食子酸、タンニン類等の天然抗酸化剤、その他天然系添加物を用いて変色及び退色を防ぐ方法などが提案されている。
【0005】
これらの中でも、上記▲3▼,▲4▼の酸化防止剤を添加する方法は簡便であり、汎用性も広く、特に▲4▼の天然系添加物が安全性の面からも好適である。例えばマンサク科に属するハマメリスの水又は含水アルコール抽出物を有効成分とする退色防止剤(特開平6−207172号公報)、ヤマモモ科植物を含む色素の安定化法(特開平6−234935号公報)、南天の葉の抽出エキスを有効成分として含有するアントシアニン系色素及び/又はカロテノイド系色素の退色防止剤(特開平8−224068号公報)、茶類の水及び/又は水混和性有機溶媒による抽出物を有効成分とするカロテノイド系色素用退色防止剤(特公平7−59181号公報)などが数多く提案されている。
【0006】
しかしながら、上記▲1▼の容器を特別なものにして遮光する方法はコスト面で大きな負担になるという問題がある。また、上記▲2▼の窒素ガス等の不活性ガスの雰囲気を用いる方法は一部の製品にしか利用することができず、汎用性に欠けるという問題がある。
【0007】
一方、上記▲3▼,▲4▼の酸化防止剤は、効果が十分でないこと、抗酸化剤そのものが持つ風味が製品の風味に悪影響を与えてしまうという欠点がある。また、▲3▼の合成抗酸化剤を添加して酸化を防ぐ方法は、人体に対する影響の面から安全性についても懸念される。
【0008】
このようなことから、より色素の退色及び変色防止効果が強く、長期間に亘って優れた色素安定化効果が維持し得、しかも食品、医薬品、医薬部外品、飼料及び化粧品の見かけや風味に悪影響を与えることのない安全かつ安価な色素の退色防止剤の開発が強く望まれている。
【0009】
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、長期間に亘って優れた色調が維持し得、食品、飼料、医薬品、医薬部外品、及び化粧品などの香り、風味、性状に何ら悪影響を及ぼすことなく、安全かつ安価で大量生産可能な色素の退色防止剤を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段及び発明の実施の形態】
本発明者は、上記課題を解決するため、数多くの植物成分を用いて色素の退色及び変色防止効果について鋭意研究を重ねた結果、藤茶の抽出物が食品、飼料、医薬品、医薬部外品、及び化粧品などの見かけ、風味に何ら悪影響を及ぼすことなく長期間に亘って色素の変色及び退色を確実に防止できることを知見した。
【0011】
即ち、藤茶抽出物を有効成分とする退色防止剤、好ましくはアンペロプシンを主成分とする色素の退色防止剤が、カロテノイド系色素、フラボノイド系色素、アントシアニン系色素、アントラキノン系色素、ベタシアニン系色素、ジケトン系色素、アザフィロン系色素及びポルフィリン系色素から選ばれる1種又は2種以上の天然系色素を元々含む食品素材などが光、酸素、熱又は湿度により経時的に退色及び変色することを確実に防止できること、及びこれら色素を添加して着色した食品、飼料、医薬品、医薬部外品、及び化粧品などが光、酸素、熱又は湿度により経時的に退色及び変色することを確実に防止することができ、商品価値を損うことがないと共に、これら製品の香り、風味、性状などに何ら悪影響を及ぼすことなく、安全かつ安価に大量生産可能なものであることを見出し、本発明をなすに至った。
【0012】
従って、本発明は、下記の色素の退色防止剤を提供する。
請求項1:
藤茶〔Ampelopsis cantoniensis(Hook. et Arn.)Panch.、Ampelopsis grossedentata(Hand.−Mazz.)W.T.Wang〕抽出物を有効成分として含有することを特徴とするアザフィロン系色素又はクチナシ青色色素の退色防止剤。
請求項2:
藤茶の枝葉部を水、親水性有機溶媒又はこれらの混合液により抽出処理して得られた抽出物を有効成分として含有する請求項1記載の色素の退色防止剤。
請求項3:
有効成分の主成分がアンペロプシンである請求項1又は2記載の色素の退色防止剤。
【0013】
なお、藤茶抽出物に含まれていて色素の退色及び変色防止効果を示す成分は、藤茶の枝葉部に高濃度に含まれているアンペロプシン(ampelopsin)が有効成分の主成分であると考えられているが、藤茶抽出物には、アンペロプシン以外にも種々のフラボノイド、その他の成分も含まれており、これら多成分が相俟って、カロテノイド系色素、フラボノイド系色素、アントシアニン系色素、アントラキノン系色素、ベタシアニン系色素、ジケトン系色素、アザフィロン系色素及びポルフィリン系色素から選ばれる1種又は2種以上の天然系色素の優れた退色防止効果及び変色防止効果を発揮し得るものと考えられる。
【0014】
以下、本発明について更に詳しく説明する。
本発明の色素の退色防止剤は、藤茶抽出物を有効成分として含み、特に有効成分の主成分がアンペロプシンであることを特徴とするものである。
【0015】
この場合、藤茶〔Ampelopsis cantoniensis(Hook. et Arn.)Planch.、Ampelopsis grossedentata(Hand.−Mazz.)W.T.Wang〕は、ブドウ科に属する植物であって、中国の中部から南部にわたる広い地域で自生する多年生の蔓性植物であり、台湾では栽培もされており、中国では古来よりその葉をお茶として用いると共に、風邪、のどの痛みなどの治療用の民間薬としても利用されてきた安全性の高い植物である。
【0016】
ここで、本発明の色素の退色防止剤は、上記藤茶の枝葉部を抽出原料とし、植物の抽出に一般に用いられている抽出方法により得ることができる。
【0017】
例えば、藤茶の枝葉部を生のまま又は乾燥した後、そのまま又は粗砕機を用い粉砕して溶媒抽出に供することにより得ることができる。抽出に用いる溶媒としては、水又は親水性有機溶媒及びこれらの混合液を室温乃至溶媒の沸点程度の温度で用いることが好ましい。
【0018】
この場合、親水性有機溶媒としては、例えばメタノール、エタノール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール等の炭素数1〜5の低級アルコール;アセトン、メチルエチルケトン等の低級脂肪族ケトン;1,3−ブチレングリコール、プロピレングリコール、イソプロピレングリコール、グリセリン等の炭素数2〜5の多価アルコールなどが挙げられ、これら親水性有機溶媒と水との混合溶媒などを用いることができる。なお、水と親水性有機溶媒との混合系溶媒を使用する場合には、低級アルコールの場合は水10質量部に対して1〜90質量部、低級脂肪族ケトンの場合は水10質量部に対して1〜40質量部、多価アルコールの場合は水10質量部に対して10〜90質量部添加することが好ましい。
【0019】
本発明において、色素の退色防止剤成分を抽出するにあたり特殊な抽出方法を採用する必要はなく、室温乃至還流加熱下で、任意の装置を用いて抽出することができる。具体的には、抽出溶媒を満たした処理槽に抽出原料を投入し、時々攪拌して可溶性成分を溶出する。その後、濾過して抽出残査を除き、得られた抽出液を濃縮、乾燥すると、色素の退色防止成分を含有する抽出物を得ることができる。抽出条件は、抽出溶媒として水を用いた場合には、通常50〜90℃で30分〜2時間程度である。また、抽出溶媒として水とエタノールとの混合溶媒を用いた場合には、通常40〜80℃で30分〜2時間程度である。なお、溶媒で抽出することにより得られる抽出液は、抽出溶媒が安全性の高いものであればそのまま配合して本発明の色素の退色防止剤として用いることができる。
【0020】
また、得られる抽出液を脱色、脱臭、活性向上等を目的として精製することもできる。精製手段としては、特に制限されず、活性炭処理、樹脂吸着処理、イオン交換樹脂処理、液−液向流分配等の方法が挙げられる。例えばセパビーズSP−207、ダイヤイオンHP−20(いずれも三菱化学(株)製)等の多孔性樹脂と濃縮液とを接触させる樹脂吸着精製法などを採用することができる。なお、樹脂に吸着された有効成分は水、エタノール等で溶出させることができる。
【0021】
このようにして得られる藤茶抽出物には、その有効成分の主成分であるアンペロプシンが30質量%以上、好ましくは50質量%以上含まれており、特に抽出液を精製処理した場合には、アンペロプシンが80質量%以上の高濃度に含まれているものである。
【0022】
上述のようにして得られる藤茶の抽出液又は抽出物は、いずれも原料に由来する好ましい風味を有し、そのままでも色素の退色防止剤として利用可能であるが、必要ならば、色素の退色防止効果の向上等を目的として、他の酸化防止剤、助剤と混合して製剤化してもよい。
【0023】
酸化防止剤としては、例えばL−アスコルビン酸、L−アスコルビン酸ナトリウム、エリソルビン酸、エリソルビン酸ナトリウム、没食子酸、dl−α−トコフェロール、亜硫酸ナトリウム、カテキン、エラグ酸、酵素処理ルチン、カンゾウ油性抽出物、クエルセチン、フェルラ酸、ブドウ種子抽出物、ローズマリー抽出物、ルチン、クローブ抽出物、ヤマモモ抽出物などが挙げられる。助剤としては、例えばアラニン等のアミノ酸類、クエン酸等の有機酸及びその塩類、リン酸及びその塩類、重合リン酸塩類、グリセリン脂肪酸エステル、フィチン酸などが挙げられる。
【0024】
また、製剤化に当たりアラビアガム、デキストリン、ブドウ糖、乳糖、界面活性剤、エタノール、プロピレングリコール、グリセリン等を配合することも、藤茶抽出物の溶解促進と増量、希釈による取り扱い性の向上に有効である。また、剤形も、粉末状、顆粒状、ペースト状、液状などの任意の剤形を採用することができる。
【0025】
本発明の色素の退色防止剤の対象となる着色料である色素としては、カロテノイド系色素、フラボノイド系色素、アントシアニン系色素、アントラキノン系色素、ベタシアニン系色素、ジケトン系色素、アザフィロン系色素及びポルフィリン系色素から選ばれる天然物を起源とする色素が好適に挙げられ、これらの1種を単独で又は2種以上を組合わせて用いることができる。また、天然系色素を含む植物体、動物体、微生物体又はその加工品、搾汁液、水若しくは有機溶剤による抽出液又は上記搾汁液、抽出液の精製加工品も用いることができる。本発明は、アザフィロン系色素又はクチナシ青色色素の退色防止剤である。
【0026】
カロテノイド系色素は、ニンジン、カボチャ、トマト、卵黄、バター等の植物、動物、微生物界を通じて広く分布する黄〜赤色を呈する色素である。例えばα−カロチン、β−カロチン、γ−カロチン、カプサンチン、カプソルビン、アスタキサンチン、カンタキサンチン、ゼアキサンチン、ロドキサンチン、リコピン、クリプトキサンチン、クロセチン、クロシン、ビキシン、ノルビキシン等の化合物、アナトー色素、トウガラシ色素、エビ色素、オキアミ色素、オレンジ色素、カニ色素、イモ、デュナリエラ、ニンジン又はパーム油から抽出した抽出カロチン色素、トマト色素、パプリカ色素、ファフィア色素、ヘマトコッカス色素、マリーゴールド色素、クチナシ黄色色素又はその他動物、植物若しくは微生物由来のカロテノイド色素などが挙げられる。
【0027】
フラボノイド系色素は、植物の葉をはじめ、根、茎、花、果実、種子などに存在する化合物の総称であり、更に、フラボン、フラボノール、カルコン、オーロン、アントシアニンなどに分類される。例えばカキ色素、カロブ色素、カンゾウ色素、シタン色素、スオウ色素、ベニバナ赤色色素、ベニバナ黄色色素、コウリャン色素、タマネギ色素、カカオ色素、タマリンド色素などが挙げられる。
【0028】
アントシアニン系色素は、フラボノイド系色素に含まれる1つのグループとして広く植物界に分布し、赤〜青色を呈する色素である。例えば赤キャベツ色素、赤米色素、エルダーベリー色素、カウベリー色素、グースベリー色素、クランベリー色素、サーモンベリー色素、シソ色素、スイムブルーベリー色素、ストローベリー色素、ダークスイートチェリー色素、チェリー色素、ハイビスカス色素、ハクルベリー色素、ブドウ果汁色素、ブドウ果皮色素、ブラックカーラント色素、ブラックベリー色素、ブルーベリー色素、プラム色素、ホワートルベリー色素、ボイセンベリー色素、マルベリー色素、ムラサキイモ色素、ムラサキトウモロコシ色素、ムラサキヤマイモ色素、ラズベリー色素、レッドカーラント色素、ローガンベリー色素などが挙げられる。
【0029】
ベタシアニン(ベタレイン)系色素は、アカザ科ビートの赤い根より、抽出して得られる赤色を呈する色素であり、色素主成分はベタニンとイソベタニンである。例えばベタニン色素、バセライン色素、アマランチン色素、ゴンフレニン色素などが挙げられる。ベタニン色素はアカザ科植物又は赤ビートから作られ、バセライン色素はツルムラサキから作られ、アマランチン色素はハゲイトウから作られる。
【0030】
アントラキノン(キノン)系色素は、高等植物、菌類、昆虫などに存在するキノン化合物に含まれ、赤〜橙黄色を呈する色素であり、合成色素であるタール色素以上に光や熱に安定であること、タンパク質に対する染着性に優れているという特徴を有する。例えば、コチニール色素、シコン色素、ラック色素、アカネ色素などが挙げられる。
【0031】
ジケトン系色素としては、例えばショウガ科ウコンの根茎の乾燥品より抽出して得られる黄色を呈するウコン色素などが挙げられる。
【0032】
アザフィロン系色素は、子のう菌類ベニコウジカビの菌体より含水エタノール又は含水プロピレングリコールで抽出して得られる赤色を呈する色素であり、色素主成分はモナスコルブリン、アンカフラビンなどである。例えばベニコウジ色素、ベニコウジ黄色色素などが挙げられる。
【0033】
ポルフィリン系色素としては、例えばアカザ科ホウレンソウ、アブラナ科カブ、イラクサ科イラクサ、クロレラ科クロレラ、クワ科クワ、シナノキ科タイワンツナリ、セリ科ニンジン、マメ科ムラサキウマゴヤシ、ムラサキかコンフリー、ユレモ科スピルリナ、又はその他同属植物より抽出して得られる緑色を呈する色素であり、色素主成分はクロロフィルである。
【0034】
なお、上記以外にも、糖類、デンプン加水分解物、糖蜜などの食用炭水化物を熱処理して得られる褐色、赤褐色を呈する色素であるカラメル、アカネ科のクチナシの果実の抽出液に含まれる青色を呈する色素であるクチナシ青色素等の天然系色素の退色防止剤として用いることができる。
【0035】
色素の退色防止剤として使用する藤茶抽出物の使用量は、対象物の種類、使用形態など諸条件によって異なり、一概に規定することはできないが、藤茶抽出物として製品全体の0.001〜0.2質量%の添加でよく、色素成分に対して0.1〜20質量%の使用量で有効な結果が得られる。
【0036】
本発明の藤茶抽出物を有効成分として含有する色素の退色防止剤は、カロテノイド系色素、フラボノイド系色素、アントシアニン系色素、アントラキノン系色素、ベタシアニン系色素、ジケトン系色素、アザフィロン系色素及びポルフィリン系色素から選ばれる1種又は2種以上の天然系色素に直接添加混合することによって、これら色素を元々含む食品素材などが光、酸素、熱又は湿度により退色及び変色することを防止することができると共に、これら色素を用いて着色した各種製品に添加配合することによって、これら製品の光、酸素、熱又は湿度による退色及び変色を防止できるものである。このような製品としては各種食品、飼料、医薬品、医薬部外品、化粧品などが挙げられる。
【0037】
各種食品としては、例えばおかき、せんべい、おこし、まんじゅう、飴等の和菓子、クッキー、ビスケット、クラッカー、パイ、スポンジケーキ、カステラ、ドーナツ、ワッフル、プリン、バタークリーム、カスタードクリーム、シュークリーム、チョコレート、チョコレート菓子、キャラメル、キャンデー、チューインガム、ゼリー、ホットケーキ、パン等の各種洋菓子、ポテトチップス等のスナック菓子、アイスクリーム、アイスキャンデー、シャーベット等の氷菓、乳酸飲料、乳酸菌飲料、濃厚乳性飲料、果汁飲料、無果汁飲料、果肉飲料、機能性飲料、透明炭酸飲料、果汁入り炭酸飲料、果実着色炭酸飲料等の清涼飲料水、ワイン、ワインソーダ、リキュール、カクテル、チューハイ等のアルコール飲料、フルーツヨーグルト、チーズ、バター等の乳製品、豆乳等の大豆加工食品、マーマレード、ジャム、コンサーブ、果実のシロップ漬、フラワーペースト、ピーナツペースト、フルーツペースト等のペースト類、漬物類、ハム、ソーセージ、ベーコン、ドライソーセージ、ビーフジャーキー等の畜肉製品類、魚肉ハム、魚肉ソーセージ、蒲鉾、ちくわ、はんぺん、てんぷら等の魚貝類製品又はその干物、うに、いかの塩辛、貝の干物等の各種珍味類、のり、小魚、貝類、するめ、野菜、山菜、茸、昆布等で作られる佃煮類、即席カレー、レトルトカレー等のカレー類、ケチャップ、マヨネーズ等の各種調味料類、各種レンジ食品又は冷凍食品などの各種食品に含まれる原料由来の色素又は添加された色素の退色及び変色防止の目的に使用することができる。
【0038】
飼料としては、各種キャットフード、ドッグフード、観賞魚の餌、養殖魚の餌などに含まれる原料由来の色素又は添加された色素の退色及び変色防止の目的に使うことができる。
【0039】
各種医薬品、医薬部外品、化粧品としては、例えば錠剤、カプセル剤、ドリンク剤、トローチ、うがい薬、歯磨き、口中清涼剤、口臭防止剤、スキンローション、クリーム類、口紅、その他に含まれる原料由来の色素又は添加された色素の退色及び変色防止の目的に使うことができる。
【0040】
なお、上記食品、飼料、医薬品、医薬部外品、又は化粧品などの製造において、本発明色素の退色防止剤の添加時期は、特に限定されるものではなく、製造工程の任意の時期が選ばれる。
【0041】
【実施例】
以下、製造例、実施例及び比較例を示し、本発明を更に具体的に説明するが、本発明は下記実施例に制限されるものではない。
【0042】
〔製造例1〕
藤茶乾燥枝葉200gに50質量%エタノール2000mlを加え、還流冷却器を付けて、80℃にて1時間抽出を行った後、濾紙にて濾過し、抽出液を得た。得られた抽出液を減圧下に濃縮、乾燥を行い、製造例1の藤茶抽出物50g(粉末)を得た(収率25%)。
【0043】
〔製造例2〕
藤茶乾燥枝葉200gに水2000mlを加え、90℃にて1時間抽出を行った後、濾紙にて濾過し、抽出液Aを得た。また、抽出残渣に再び水2000mlを加え、同様に90℃で1時間加熱抽出を行った後、濾紙にて濾過し、抽出液Bを得た。得られた抽出液A,Bを合せて抽出液とした。
【0044】
得られた抽出液(A+B)を多孔性樹脂(HP−20;三菱化学(株)製)300mlを充填したガラスカラムに流して、アンペロプシンなど有効成分を吸着させた。
続いて有効成分を吸着した多孔性樹脂に600mlの水を流して洗浄した後、80%エタノールを流して吸着成分を脱着、溶出した。得られた溶出液を減圧下で濃縮、乾燥を行い、製造例2の藤茶抽出物20g(粉末)を得た(収率10%)。
【0045】
製造例1,2で得られた藤茶抽出物について、下記条件でアンペロプシンの定量を行った。結果を表1に示す。
【0046】
<高速液体クロマトグラフィーの条件>
検出器 :紫外部吸収検出器(測定波長290nm)
カラム充填剤:10μmの化学結合型オクタデシルシラン
カラム管 :内径4.6mm、長さ250mmのステンレス管
カラム温度 :40℃
移動相 :アセトニトリル/0.1質量%リン酸=15/85(質量比)混液
流速 :1ml/分
【0047】
【表1】
【0048】
〔参考例1,2、比較例1,2〕
色価50のクチナシ黄色色素をpH4.0に調整したクエン酸緩衝液にて1質量%となるように希釈し、クチナシ黄色色素溶液を調製した。次いで、この色素溶液に製造例1又は製造例2の藤茶抽出物(色素の退色防止剤)をそれぞれ0.005質量%、0.01質量%、0.02質量%添加した。
【0049】
得られた色素溶液を無色透明の100ml瓶に100ml入れ、10℃にて蛍光燈照射下(2000ルクス)保管し、440nmにおける吸光度を経時的に測定し、下記式から色素残存率を求めた。結果を表2に示す。また、色素残存率の経日変化を図1に示す。
【0050】
比較例1として緑茶カテキンを0.05質量%添加したもの、比較例2として藤茶抽出物を無添加のものを調製し、同様に保管し、440nmにおける吸光度を経時的に測定した。結果を表2に示す。また、色素残存率の経日変化を図1に示す。
【0051】
【数1】
【0052】
【表2】
【0053】
表2及び図1の結果から、藤茶抽出物を含む参考例1,2は、優れた色素の退色防止効果を有することが認められる。
【0054】
〔実施例1,比較例3〕
砂糖80gと、無水クエン酸3gと、クエン酸ナトリウム5gとを水1000mlに溶解し、pH4.5に調整したシロップ液に下記(1)〜(5)の各種色素を0.1質量%添加し、製造例2の藤茶抽出物を0.005質量%、0.01質量%それぞれ添加した。
【0055】
得られたシロップ液を無色透明の100ml瓶に100ml入れ、直射日光(20000〜30000ルクス)に一日曝した後、各々の色素の極大吸収波長における吸光度を測定し、下記式により色素残存率を求めた。結果を表3に示す。
【0056】
比較例3として製造例2の藤茶抽出物を無添加のシロップ液を調製し、同様に処理し、吸光度を測定して、色素残存率を求めた。結果を表3に示す。
【0057】
【数2】
【0058】
<色素の種類>
(1)パプリカ橙色色素(極大吸収波長480nm)
(2)クチナシ青色色素(極大吸収波長600nm)
(3)ベニコウジ色素 (極大吸収波長500nm)
(4)赤キャベツ色素 (極大吸収波長530nm)
(5)ブルーベリー色素(極大吸収波長520nm)
【0059】
【表3】
【0060】
〔実施例2、参考例3〜7、比較例4〜9〕
グラニュー糖70gと、無水クエン酸1.25gと、クエン酸ナトリウム0.20gと、レモンフレーバー1.0gとを水1000mlに溶解し、pH3.0に調整した清涼飲料水に下記(1)〜(5)の各種色素を0.2質量%添加し、製造例2の藤茶抽出物を0.005質量%、0.01質量%それぞれ添加した。
【0061】
得られた清涼飲料水を500mlの透明ペットボトルに500ml入れ、10℃にて蛍光燈照射下(2000ルクス)保管し、各種色素の極大吸収波長において吸光度を経時的に測定し、下記式から色素残存率を求めた。結果を表4に示す。
【0062】
比較例4〜9として、各種色素について藤茶抽出物を無添加の清涼飲料水を調製し、同様に保管し、吸光度を測定して、下記式から色素残存率を求めた。結果を表4に示す。
【0063】
【数3】
【0064】
<色素の種類>
(1)アナトー黄色色素 (極大吸収波長440nm)
(2)ベニコウジ赤色色素(極大吸収波長500nm)
(3)赤キャベツ色素 (極大吸収波長530nm)
(4)パプリカ橙色色素 (極大吸収波長480nm)
(5)ベニバナ・クチナシ緑色色素(極大吸収波長440nm,600nm)
【0065】
【表4】
【0066】
〔実施例3、比較例10〕
下記配合の原料を混合擂り潰し、ケーシング詰めしたものを85℃、20分ボイルした後、冷却し、カットして蒲鉾を作成した。
冷凍すり身 100g
食塩 3g
水 45g
上白糖 5g
グルタミン酸ナトリウム 1g
馬鈴薯澱粉 10g
製造例1の藤茶抽出物 0.1g
ソルビン酸カリウム 0.1g
ベニコウジ色素 1g
計 165.2g
【0067】
比較例10として、製造例1の藤茶抽出物を無添加の蒲鉾を実施例10と同様に作製した。
【0068】
得られた実施例3と比較例10の蒲鉾を10℃にて2000ルクス蛍光燈照射を行い、経日的に退色の程度を観察し、下記基準で評価した。結果を表5に示す。
【0069】
<評価基準>
+++:元の色調を完全に維持している
++ :元の色調を維持している
+ :元の色調をやや維持している
± :やや退色又は変色している
− :かなり退色又は変色している(ほとんど色が残っていない)
【0070】
【表5】
【0071】
以下、製造例1,2で得られた藤茶抽出物を配合した他の処方例を実施例、参考例として下記に示した。
【0072】
〔参考例8〕 ハードキャンディ
製造例1で得られた藤茶抽出物を用いて、下記組成のハードキャンディを常法により製造した。
グラニュー糖 75g
水あめ 33g
水 30g
カミツレエキス 2g
ラベンダーエキス 2g
赤キャベツ色素 0.2g
クエン酸 0.6g
藤茶抽出物(製造例1) 0.01g
【0073】
〔参考例9〕 ゼリー
製造例2で得られた藤茶抽出物を用いて、下記組成のゼリーを常法により製造した。
砂糖 80g
ハチミツ 10g
クエン酸 3.5g
ビタミンC 1.0g
100%オレンジ果汁 2.0g
プルーンエキス 2.0g
カラギーナン 2.0g
ローカストビーンガム 3.0g
第一リン酸カリウム 2.0g
クエン酸ナトリウム 3.0g
パプリカ橙色色素 2.0g
藤茶抽出物(製造例2) 0.02g
水 残部
計 1000g
【0074】
〔実施例4〕 福神漬
製造例1で得られた藤茶抽出物を用いて、下記組成の福神漬を常法により製造した。
しょうゆ 50ml
淡口アミノ酸液 140ml
グルタミン酸ナトリウム 20g
アミノ酸系複合調味料 10g
ソルビット液 300g
カンゾウエキス 2g
砂糖 150g
コハク酸ナトリウム 2g
50%乳酸 10ml
食酢(酸度4%) 40ml
ベニコウジ色素 30g
クチナシ黄色色素 10g
藤茶抽出物(製造例1) 2g
食塩 60g
水 残部
計 1000ml
【0075】
〔参考例10〕 化粧水
製造例2で得られた藤茶抽出物を用いて、下記組成の化粧水を常法により製造した。
グリセリン 50g
プロピレングリコール 50g
ポリエチレングリコール 20g
オレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン(20EO) 20g
エタノール 70g
水酸化カリウム 0.1g
香料 0.1g
パラオキシ安息香酸メチル 1.0g
ベニバナ色素 2.0g
藤茶抽出物(製造例2) 0.1g
水 残部
計 1000g
【0076】
〔参考例11〕 ヘアリンス
製造例2で得られた藤茶抽出物を用いて、下記組成のヘアリンスを常法により製造した。
塩化ステアリルトリメチルアンモニウム 15g
ポリオキシエチレンセチルエーテル 10g
セチルアルコール 20g
オクチルドデカノール 10g
カチオン化セルロース 5g
プロピレングリコール 50g
香料 0.1g
コチニール色素 1.0g
藤茶抽出物(製造例2) 0.02g
水 残部
計 1000g
【0077】
【発明の効果】
本発明によれば、香り、呈味、性状に何ら悪影響を及ぼすことなくカロテノイド系色素、フラボノイド系色素、アントシアニン系色素、アントラキノン系色素、ベタシアニン系色素、ジケトン系色素、アザフィロン系色素及びポルフィリン系色素から選ばれる1種又は2種以上の天然系色素又はこれら色素成分を含む食品、飼料、医薬品、医薬部外品、及び化粧品などの退色及び変色を容易かつ確実に防止することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】色素残存率の経日変化を示したグラフである。
Claims (3)
- 藤茶〔Ampelopsis cantoniensis(Hook. et Arn.)Panch.、Ampelopsis grossedentata(Hand.−Mazz.)W.T.Wang〕抽出物を有効成分として含有することを特徴とするアザフィロン系色素又はクチナシ青色色素の退色防止剤。
- 藤茶の枝葉部を水、親水性有機溶媒又はこれらの混合液により抽出処理して得られた抽出物を有効成分として含有する請求項1記載の色素の退色防止剤。
- 有効成分の主成分がアンペロプシンである請求項1又は2記載の色素の退色防止剤。
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