JP4190586B2 - 抗カリエスチューインガム、キャンディー、ゲル、練り歯磨および歯磨剤 - Google Patents
抗カリエスチューインガム、キャンディー、ゲル、練り歯磨および歯磨剤 Download PDFInfo
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Description
発明の背景
1.発明の分野
本発明は、口腔内へカルシウムイオンおよび燐酸イオンを徐々にかつ絶えず適する治療上有用な時間にわたり放出させるチューインガム、キャンディー、菓子類、ゲル、練り歯磨もしくは歯磨剤に対する添加物としての無毒性かつ微溶性のカルシウムおよび燐酸化合物の使用からなっている。放出された燐酸カルシウムイオンは、部分無機質除去された歯のエナメル質もしくは象牙質に拡散してカリエス病巣の無機質補充および修復をもたらしうる。さらに、放出された燐酸カルシウムイオンは歯垢(dental plaque)へも拡散して歯の無機質補充をもたらすと共に砂糖摂取後のプラークにおけるカリエス攻撃を減少もしくは消滅させることもできる。従って、これら処方物は弗化物の使用なしに効果的なカリエス予防作用をもたらしうる。さらに、放出された燐酸カルシウムイオンは開口象牙質細管(open dentinal tubules)および露出象牙質表面における燐酸カルシウムミネラルの沈着をもたらして、過敏性の歯を減感させることもできる。これら作用物質は最小の悪作用しか持たず、使用者の側で殆ど努力を必要としない。
2.関連技術の要約
チューインガムは治療剤を歯に供給する効果的ベヒクルであるという能力を有する。何故なら、これらは被験者の側にて最小の努力で歯に対する作用物質の持続した接触を可能にするからである。カリエス予防剤を歯に供給するベヒクルとしてのチューインガムの認識された所望性にも拘わらず、カリエス予防性チューインガムの効果的具体例は当業界にて全く開発されていない。
チューインガムにおける有力なカリエス予防剤を用いる従来の試みの効果は、エドガーおよびゲッデス[1990、ブリティッシュ・デンタル・ジャーナル、第24巻、第173〜176頁]により検討された。たとえば、燐酸ジカルシウム二水塩(DCPD;CaHPO4・2H2O)が7.5重量%の投与量で使用されると共に、唾液におけるカルシウム(Ca)および燐酸(PO4)濃度に対する効果につき評価された[ピッケルおよびビロッチ、1965、ジャーナル・アラバマ・メジカル・ソサエティ、第2巻、第286〜287頁]。10重量%のDCPOを含有するチューインガムが2種の異なる臨床試験にてカリエス予防効果につき評価された[フィンおよびジャミソン、1967、ジャーナル・アメリカン・デンタル・アソシエーション、第74巻、第987〜995頁;リチャードソン等、1972、ジャーナル・キャナディアン・デンタル・アソシエーション、第6巻、第213〜218頁]。リチヤードソンの研究からの結果は、砂糖−DCPDガムが砂糖のみを含有するガムよりも低いカリエス尺度をもたらしたが、砂糖−DCPOガムのカリエス発生率は砂糖フリーのガムと同等であることを示した。この研究におけるカリエス予防ガムとしてのDCPOの限界的な効果程度は、DCPOがカリエス予防剤として無効果であることを示すと当業界で承認された。この研究の結果、燐酸カルシウム含有ガムをカリエス予防剤として使用することに当業界では殆ど興味も活動もなされていない。
最近、風船ガムにて2種の新たな燐酸カルシウム添加物を用いる可能性が、唾液ミネラル飽和レベルを増大させおよび/または唾液生成を増加させる際の効果につき評価された[ショウ等、1994、ジャーナル・デンタル・リサーチ、第73巻、第26〜32頁]。これらインビボ試験において、燐酸モノカルシウム一水塩(MCPM;Ca(H2PO4)・2H2O)および無水燐酸ジカルシウム(DCPA;CaHPO4)と燐酸テトラカルシウム(TTCP;Ca4(PO4)2O)との当モル混合物がチューインガム添加物として使用された。これら試験は、MCPMガムとDCPA/TTCPガムとの両者が16分間の噛む時間にわたり唾液中のカルシウム濃度および燐酸濃度を増加させることを示した。増加の程度は、DCPDを含有するガムによって生ずるよりもずつと大であった。歯無機質に関する飽和の程度は両実験ガムにより顕著に増大し、一層高い増加がDCPA/TTCPガムによって生じた。
タングに係る米国特許第5,037,639号、第5,268,167号、第5,427,768号および第5,437,857号は、歯の無機質補充に関するチューインガム添加物としての非晶質燐酸カルシウム(Ca3(PO4)2)およびその誘導体の使用を開示している。しかしながら、ACPチューインガムが実際に歯に無機質補充するという証拠は開示されていない。
上記添加物の幾種かは或る種の条件下で或る程度の効能を有するが、それぞれ欠点を伴っている。DCPA/TTCP混合物は多大な調製方法を必要とし、TTCPは高温度(1500℃)の炉内で作成し、次いで各燐酸カルシウム塩を所望の粒子寸法まで磨砕した後に市販のDCPAと配合せねばならない。ACP化合物は水性系で沈殿させねばならず、従って変動しうる組成および比較的不確定な粒子寸法を有する。さらにガムベースもしくはゲルにおけるACPの安定性も制限されると思われ、所望の使用寿命を達成するには安定化剤が必要とされる。
他のカルシウム含有化合物が、現場での歯の無機質補充における効果につき研究されている。グリーンベルクに係る米国特許第5,378,131号は、デンタルヘルス用途につきチューインガム添加物としてのグリセロ燐酸カルシウムの使用を開示いている。この米国特許はさらに、乳酸カルシウムおよびグルコン酸カルシウムを含め数種の他のカルシウム化合物を使用してチューインガム添加物と使用した際のカリエス予防作用を達成することを開示している。しかしながら、添加物としてカルシウム化合物を含有するチューインガムは、唾液におけるカルシウム濃度レベルを上昇させうるに過ぎない。事実、燐酸濃度レベルは、唾液燐酸レベルがガムを噛むことにより刺激される唾液増加と共に減少することを示すので、カルシウム含有ガムを噛む結果として低下することが予想される[チョウ等、同上]。従って、グリーンベルクにより開示されたこれらカルシウム含有チューインガムは、カリエス予防性でなく抗う食性である。従って、口腔内へ燐酸イオンを放出すると共にカルシウムイオン濃度を増大させて、従来技術で知られたガムには見られないカリエス予防作用を与えるようなベヒクルにつき当業界にてニーズが存在する。
カリエス予防剤を供給するためのベヒクルとしてチューインガムの所望性が認識さているのに対し、キャンディーは一般にカルシウムイオンおよび燐酸イオンを口腔環境に供給する手段として認識されていない。この主たる理由は、キャンディーの主成分である砂糖が歯カリエスの主たる原因となる点にある。しかしながら、砂糖フリーのキャンディー(すなわち著量の発酵可能な炭水化物を含有しないキャンディー)の出現により、キャンディーは歯カリエスのための治療剤を供給する効果的手段となりうる。
発明の要約
本発明は、カルシウムイオンおよび燐酸イオンを人被験者の口内に放出するよう処方されるチューインガム、砂糖フリーのキャンディーおよび菓子類、ゲル、練り歯磨および歯磨剤を提供する。
第1面にて本発明は、酸性チューインガムを含むと共に微溶性燐酸カルシウム塩をも含む燐酸カルシウム含有組成物を提供する。最も好適な具体例において、燐酸カルシウム塩は燐酸α−トリカルシウムである。他の好適具体例において、燐酸カルシウム塩は無水燐酸ジカルシウム、燐酸ジカルシウム二水塩、燐酸オクタカルシウムもしくは燐酸テトラカルシウムである。好ましくは、微溶性燐酸カルシウム塩は重量でガム処方物の約0.5〜約10%を示す(重量%もしくはwt%)。より好ましくは、微溶性燐酸カルシウム塩はガム処方物の約1〜約5重量%を占める。本発明のチューインガムにおいて微溶性燐酸カルシウム塩は約50μm未満の粒子寸法を有し、より好ましくは約1〜約20μmの粒子寸法を有する。
第2面において本発明は、カルシウム化合物と燐酸塩とを含む燐酸カルシウム含有チューインガムを提供する。好適具体例においてガムは酸性ガムである。他の好適具体例においてガムは中性ガムである。さらに他の好適具体例において、カルシウム化合物は微溶性カルシウム化合物である。この種の具体例において、微溶性カルシウム化合物はグリセロ燐酸、乳酸、グルコン酸もしくはフマル酸のカルシウム塩である。他の具体例においてカルシウム化合物は可溶性化合物であって、好ましくは酢酸カルシウムもしくは塩化カルシウムである。これら具体例において、ガムは可溶性カルシウム化合物からのカルシウムイオンの放出を遅延させてカルシウムイオンを5〜15分間にて放出させるよう処方される。
好ましくは、この本発明の第2面で提供されるガムはチューインガムの約0.5〜10重量%にてカルシウム化合物を含有するよう処方される。より好ましくは、カルシウム化合物はこれらチューインガムの約1〜約5重量%を占める。さらに、この本発明の面におけるガムで用いられるカルシウム化合物は50μm未満、より好ましくは約1〜約20μmの粒子寸法を有する。
この本発明の面によるガムはさらに燐酸塩をも含有するよう処方される。好適燐酸塩は限定はしないがNa2HPO4、NaH2PO4およびCa(H2PO4)2・H2Oを包含する。好ましくは、この本発明の面によるガムはチューインガムの約0.5〜10重量%の燐酸塩を含有するよう処方される。より好ましくは、燐酸塩はこれらチューインガムの約1〜約5重量%を占める。さらに、この本発明の面によるガムで用いられる燐酸塩は50μm未満、より好ましくは約1〜約20μmの粒子寸法を有する。
第3面において本発明は、キャンディーもしくは菓子を含むと共に燐酸カルシウム塩をも含む燐酸カルシウム含有組成物を提供する。好適具体例において、キャンディーもしくは菓子は砂糖フリーである。最も好適な具体例において、燐酸カルシウム塩は燐酸α−トリカルシウムである。他の好適具体例において、燐酸カルシウム塩は燐酸β−トリカルシウム、一塩基性燐酸モノカルシウム、無水燐酸ジカルシウム、燐酸ジカルシウム二水塩、燐酸オクタカルシウム、燐酸テトラカルシウム、並びにその混合物および組合せ物である。好ましくは燐酸カルシウム塩はキャンディー処方物の約0.5〜約10重量%(重量%もしくはwt%)を占める。より好ましくは、燐酸カルシウム塩はキャンディー処方物の約1〜約5重量%を占める。砂糖フリーの本発明のキャンディーにおいて、燐酸カルシウム塩は約50μm未満の粒子寸法、より好ましくは約1〜約20μmの粒子寸法を有する。微溶性燐酸カルシウム塩も適するが、ここに詳細に説明する本発明のキャンディーおよび菓子類の好適具体例に基づき本発明のこの具体例には必要とされない。砂糖フリーのキャンディーおよび菓子類が好適であるが、砂糖(特に蔗糖)を用いて作成される本発明のキャンディーおよび菓子類の燐酸カルシウム含有の具体例も本発明の範囲内である。この種の具体例においては、本発明のキャンディーおよび菓子類における燐酸カルシウム成分のカリオスタチックおよび無機質補充の利点が砂糖のカリエス発生傾向を相殺することも認められよう。
第4面において、本発明はカルシウム化合物と燐酸塩とを含む燐酸カルシウム含有キャンディーもしくは菓子を提供する。好適具体例において、キャンディーもしくは菓子は砂糖フリーである。好適具体例において、カルシウム化合物はグリセロ燐酸、乳酸、グルコン酸もしくはフマル酸の微溶性カルシウム塩である。他の好適具体例において、カルシウム化合物は可溶性化合物であり、好ましくは酢酸カルシウムもしくは塩化カルシウムである。これら具体例において、キャンディーは可溶性カルシウム化合物からのカルシウムイオンの放出を遅延させてカルシウムイオンが5〜15分間かけて放出されるよう処方される。
好ましくは、本発明のこの面で提供されるキャンディーはキャンディーの約0.5〜10重量%にてカルシウム化合物を含有するよう処方される。より好ましくはカルシウム化合物はこれらキャンディーの約1〜約5重量%を占める。さらに、この本発明の面でキャンディーに用いられるカルシウム化合物は50μm未満、より好ましくは約1〜約20μmの粒子寸法を有する。
本発明のこの面におけるキャンディーはさらに燐酸塩をも含有するよう処方される。好適燐酸塩は限定はしないがNa2HPO4、NaH2PO4およびCa(H2PO4)2・H2Oを包含する。好ましくは、この本発明の面におけるキャンディーは約0.5〜10重量%にて燐酸塩を含有するよう処方される。より好ましくは、燐酸塩はこれらキャンディーの約1〜約5重量%を占める。さらに、この本発明の面のキャンディーにて用いられる燐酸塩は50μm未満、より好ましくは約1〜約20μmの粒子寸法を有する。
砂糖フリーのキャンディーおよび菓子類が好適であるが、砂糖(特に蔗糖)を用いて作成される本発明によるキャンディーおよび菓子類の燐酸カルシウム含有の具体例も本発明のこの面の範囲内である。
第5面において本発明は、燐酸α−トリカルシウム、燐酸テトラカルシウムおよび燐酸モノカルシウム一水塩よりなる群から選択される燐酸カルシウム化合物を含む燐酸カルシウム含有の無機質補充用ゲルを提供する。本発明のこれら燐酸カルシウム含有の或る種の具体例は、燐酸カルシウム化合物と必要に応じゲルの他の成分との乾燥混合物として提供され、使用の直前に水または有利な添加物(たとえば香料など)を含有する他の液体の添加によりゲルまで再構成される。本発明のこの面の他の具体例においては、微溶性カルシウム化合物と燐酸塩を含むゲルとからなるゲルの組合せ物が提供される。好適具体例において、ゲルはカルボキシメチルセルロースもしくはヒドロキシプロピルメチルセルロースである。他の好適具体例において、微溶性カルシウム化合物はグリセロ燐酸、乳酸、グルコン酸もしくはフマル酸のカルシウム塩である。
好ましくは、この本発明の面で提供されるゲルはゲルの約0.5〜10重量%にて微溶性カルシウム化合物を含有するよう処方される。より好ましくは、微溶性カルシウム化合物はこれらゲルの約1〜約5重量%を占める。さらに、この本発明の面のゲルで提供される微溶性カルシウム化合物は50μm未満、より好ましくは約1〜約20μmの粒子寸法を有する。
この本発明の面における組合せゲルの具体例も、燐酸塩を含むゲルを含有するよう処方される。好適燐酸塩は限定はしないがNa2HPO4、NaH2PO4およびCa(H2PO4)2・H2Oを包含する。好ましくは、この本発明の面における無機質補充用ゲルはゲルの約0.5〜10重量%にて燐酸塩を含有するよう処方される。より好ましくは、燐酸塩はこれらゲルの約1〜約5重量%を占める。さらに、この本発明の面のゲルで提供される燐酸塩は50μm未満、より好ましくは約1〜約20μmの粒子寸法を有する。
好適具体例において、本発明のゲルはカルシウム含有および燐酸塩含有ゲルのそれぞれが処方されて使用直前まで別々に保つよう提供される。使用に際し、各ゲルを混合して歯の咬合面、近位面、頸部面および平滑面を包含する歯に施す。本発明により提供される歯物質の無機質補充は、本発明のゲルを歯表面と約5分間〜約12時間または1晩にわたり接触させ続けることにより達成される。ゲルを含むゲル化剤を包含する高分子量の結晶成長抑制剤も本発明のゲルに含ませる。さらに弗素イオンもこの種のゲルに有利に添加することができる。
第6面において本発明は、燐酸塩含有の練り歯磨もしくは歯磨剤を提供する。好適具体例において、この本発明の面における練り歯磨および歯磨剤は燐酸α−トリカルシウム、燐酸テトラカルシウムおよび燐酸モノカルシウム一水塩よりなる群から選択される燐酸カルシウム塩を含む。本発明の或る種のこれら燐酸カルシウム含有の具体例は燐酸カルシウム化合物と必要に応じゲルの他の成分との乾燥混合物として提供され、使用直前に水または有利な添加物(たとえば香料など)を含有する他の液体の添加によりゲルまで再構成される。他の好適具体例において、本発明の歯磨剤および練り歯磨は2種の歯磨ペースト、すなわち微溶性カルシウム化合物を含む1種の歯磨ペーストおよび燐酸塩を含む他の歯磨ペーストの組合せからなっている。これら歯磨剤の微溶性カルシウム成分および燐酸塩成分の他に、本発明の歯磨剤はたとえば弗素化合物、並びに歯磨剤の慣用成分のような活性成分をも含む。好適具体例において、微溶性カルシウム化合物はグリセロ燐酸、乳酸、グルコン酸もしくはフマル酸のカルシウム塩である。
好ましくは、この本発明の面で提供される練り歯磨および歯磨剤は練り歯磨もしくは歯磨剤の約0.5〜10重量%にて燐酸カルシウム塩もしくは微溶性カルシウム化合物を含有するよう処方される。より好ましくは、微溶性カルシウム化合物は、これら練り歯磨および歯磨剤の約1〜約5重量%を占める。さらに、本発明のこの面の練り歯磨および歯磨剤で提供される微溶性カルシウム化合物は50μm未満、より好ましくは約1〜約20μmの粒子寸法を有する。
組合せ物として処方される本発明のこの面における練り歯磨もしくは歯磨剤の具体例も、燐酸塩を含む練り歯磨もしくは歯磨剤を含有するよう処方される。好適燐酸塩は限定はしないがNa2HPO4、NaH2PO4およびCa(H2PO4)2・H2Oを包含する。好ましくは本発明のこの面における練り歯磨および歯磨剤は約0.5〜10重量%の燐酸塩を含有するよう処方される。より好ましくは、燐酸塩は約1〜約5重量%を占める。さらに、本発明のこの面の練り歯磨および歯磨剤で提供される燐酸塩は50μm未満、より好ましくは約1〜約20μmの粒子寸法を有する。
微溶性カルシウム含有および燐酸塩含有の歯磨剤のそれぞれを処方して使用直前まで分離して保つ本発明の練り歯磨および歯磨剤も提供される。使用に際し、練り歯磨および歯磨剤を混合して歯の咬合面、近位面、頸部面および平滑面を包含する歯に施す。本発明により提供される歯物質の無機質補充は、本発明の練り歯磨および歯磨剤を歯表面と約1〜約5分間にわたり接触させ続けることにより達成される。弗化物もこの種の練り歯磨および歯磨剤に有利に添加することができる。さらに本発明の練り歯磨および歯磨剤には巨大分子の結晶成長抑制剤、好ましくはセルロース化合物、特に好ましくはカルボキシメチルセルロース或いはピロ燐酸ナトリウムおよびカリウムも含ませるのが有利である。
さらに本発明は、歯に無機質補充してデンタルカリエスおよび他の歯の病気を減少または排除する方法をも提供する。人被験者が単に本発明のガム、キャンディーもしくは菓子類を噛み、練り歯磨もしくは歯磨剤を使用し、或いは本発明のゲルを施してカルシウムイオンおよび燐酸イオンを口中および歯上に放出させる本発明の方法が提供される。好適具体例においてはガムを噛み、キャンディーもしくは菓子を噛み、或いはロゼンジ、練り歯磨もしくは歯磨剤を使用するように使用し、或いはゲルを約1〜約5分間、より好ましくは約3〜約10分間、特に好ましくは約5〜約15分間もしくは20分間にわたり施して口中へのカルシウムイオンおよび燐酸イオンの放出および歯との接触を行わせる。好適具体例において、本発明のゲルは歯に対し約8時間もしくは1晩にわたり接触し続けるよう施される。
本発明による方法の好適使用は、人における歯病巣の無機質補充である。本発明による方法の他の好適使用は、人における歯垢(dental plaque)の無機質補充である。本発明の方法に関するさらに他の好適使用は、人の歯に対するカリエス性攻撃の減少である。さらに本発明の方法は好適には、過敏性人の歯の減感および開口象牙質細管および人の歯における露出象牙質表面の無機質補充についても使用される。
本発明のガム、キャンディー、菓子類、練り歯磨、歯磨剤およびゲル、並びに歯を処置および無機質補充するためのこの種の具体例を用いる有用な方法の或る種の好適具体例につき、本発明の以下のセクションで一層詳細に説明する。
発明の詳細な説明
ヒドロキシアパタイト材料は人骨および歯の基本的性質を有することが暫く知られていた。相当の研究が初期歯病巣の無機質補充(この種の病巣に対するヒドロキシアパタイトCa5(PO4)3OHの沈着によるプラーク沈着を含む)に向けられ、ヒドロキシアパタイトは病巣の箇所にて歯表面に組み込まれる。
歯エナメル質の無機質補充がインビボおよびインビトロの両者にて実験的に行われている。これら研究は、ヒドロキシアパタイトに関し過飽和された唾液および合成溶液の無機質補充特性に集中している。ここで提供されるチューインガム、キャンディーおよび菓子類、練り歯磨、歯磨剤およびゲルは、ヒドロキシアパタイト沈着性燐酸カルシウム組成物を歯にインビボにて供給するベヒクルとして有用である。これら供給ベヒクルの利点は、カルシウムイオンおよび燐酸イオンを口中に放出する燐酸カルシウムおよび化合物がチューインガム、キャンディー、菓子、練り歯磨、歯磨剤もしくはゲルにて簡単な混合物として提供される点である。何故なら、歯への供給は単に本発明の供給ベヒクルを人が使用することにより(たとえば燐酸カルシウム含有ガム、キャンディーまたは菓子類を噛むと共に燐酸カルシウム含有練り歯磨、歯磨剤およびゲルを使用することによる)効果的に達成されるからである。
カルシウムおよび燐酸イオンを放出する化合物は、他の意味で食品添加物として認識される多くの市販の他の化合物から選択される。本発明に包含される全てのこれら添加物は無毒性であることを意図する。本発明の目的で、「無毒性」という用語はたとえば「フード・アンド・ドラッグ・アドミニストレーションにより「一般に安全と承認される」という表現により説明されるような安全性の承認および確認された規定に一致することを意図する。暫く食品に添加されており、その目的用途の条件下で安全と認められるような化合物もこの規定に包含される。カルシウム塩および/または燐酸塩を包含する本発明の添加物は、規則に基づく所定レベルにて口腔使用につき充分無毒性であると共に所望の使用寿命にわたり安定でなければならない。
好適なカルシウムイオン放出性化合物は、生物学上適合性酸の微溶性カルシウム含有塩および他の塩基性カルシウム化合物、すなわち中性pHの条件下で約0.1%より大かつ約10%未満の溶解度を有するカルシウム化合物である。微溶性カルシウム化合物は限定はしないがグルコン酸、グリセロ燐酸、乳酸およびフマル酸のカルシウム塩、Ca(OH)2、CaO、燐酸モノカルシウム、無水燐酸ジカルシウム、燐酸ジカルシウム二水塩、燐酸α−トリカルシウム、燐酸オクタカルシウム、燐酸テトラカルシウム並びにその組み合わせ物および混合物を包含する。
本発明の成分として有用な主として2種類のガム、すなわち中性pHガムおよび酸性pHガムが存在する。酸性pHガムは特に果実着香されたチューインガムおよび風船ガムを包含する。中性pHガムは全ゆるミント着香ガムおよび他の非果実着香ガムを包含する。試験された燐酸カルシウム化合物(燐酸モノカルシウム一水塩を除く)はいずれも、ガムが酸性pHを持たずに唾液に酸性pH(すなわち7.0未満のpH)を発生しなければ、下表IIIに示すようにカルシウムイオンもしくは燐酸イオンを放出しうることが判明した。この新たな知見は、燐酸ジカルシウム二水塩含有のミント着香(中性pH)ガムがどうして限界的カリエス予防効果だけを示すと従来報告されたのかを説明することができる[フィンおよびジャミソン(1967)同上およびリチャードソン等(1972)同上、参照]。これに反し、燐酸モノカルシウム一水塩(MCPM)は非酸性ガムから唾液中へカルシウムイオンおよび燐酸イオンを放出しうることが判明した(表III)。しかしながらMCPMの酸度は、或る種のガムフレーバーには適合しえない酸味を発生する。さらにMCPMは、ガムが2%もしくは3%より多いMCPMを含有すれば不快な後味をも発生する。従って最も有用な燐酸カルシウム含有ガムは酸性pHガムであって、消費されるガムの少量部分のみを示す。
しかしながら中性ガムは或る種の条件下で、特にカルシウム含有および燐酸含有の化合物をガムに別々に添加することによりカリエス予防性燐酸カルシウム剤を放出しうることが驚くことに判明した。数種の無毒性カルシウム化合物は微溶性であり、チューインガム添加物として使用すればカルシウムイオンを唾液中へ徐々にかつ連続的に放出する(表IV参照)。これら化合物はグルコン酸、乳酸、フマル酸およびグリセロ燐酸のカルシウム塩を包含する。燐酸カルシウムとは異なり、これらカルシウム含有化合物の溶解度は実質的にpHとは無関係であって、酸性ガムおよび中性pHガムの両者で良好に機能しうるこられら添加物をもたらす。著量のカルシウムイオン放出を得るには、カルシウム源は中性pHにて0.5%より大である溶解度を持たねばならず、2%以上の溶解度が好適である。好適カルシウム塩は微溶性であり、すなわち中性pHにて10%未満の溶解度を有する。炭酸カルシウム、並びにクエン酸カルシウムおよび酒石酸カルシウム(2種の一般的に使用される食用酸のカルシウム塩)は効果的放出をもたらすには不溶性であり過ぎる(表IV参照)。他方、たとえば酢酸カルシウムおよび塩化カルシウムのような高溶解性のカルシウム含有化合物は、これら化合物がチューインガムからのカルシウムイオンの持続放出を可能にしないため、限られた有用性しか持たない。(しかしながら、可溶性カルシウム化合物はたとえば溶解するのに5分間もしくはそれ以上を要するキャンディーおよび菓子類のような本発明の他の供給ベヒクルにつき有用である)。
本発明のカルシウムイオン放出性化合物のカリエス予防効果は、無毒性燐酸塩を第2添加物として添加することにより顕著に増大される。好適燐酸塩は燐酸ナトリウムを包含する(特に好ましくはNa2HPO4とNaH2PO4との当モル混合物を含み、pHを7に維持する)。本発明によるカルシウムイオン放出性添加物への燐酸ナトリウムの添加は、歯の表面に対しインビボで燐酸カルシウムミネラル(ヒドロキシアパタイトを含む)を沈着させうる量にてカルシウムイオンおよび燐酸イオンの両者の所望の放出をもたらす(表IV参照)。代案具体例において、微溶性カルシウム源はたとえばカルシウムイオンおよび燐酸イオンの両者の供給源として作用するたとえばMCPMのような燐酸カルシウム塩と混合することもできる。
本発明のキャンディーおよび菓子類は好ましくはたとえばソルビトール、マニトール、アスパルテームおよびサッカリンのような甘味料を含む。砂糖(特に蔗糖、果糖、ブドウ糖およびその組み合わせ物)を含有するキャンディーおよび菓子類も本発明により提供される。たとえば柑橘類および天然にて酸性である他の香料のような着香料を用いて、上記したように有利な酸性環境を与える。さらに、本発明のガムおよび歯磨剤にて有用なカルシウム化合物よりも実質的に高い溶解度を有するカルシウム化合物も、本発明で提供されるキャンディーおよび菓子類に使用することができる。この種のカルシウム化合物の例は限定はしないが塩化カルシウムおよび酢酸カルシウムである。本発明の好適キャンディーは噛みえない硬質キャンディーである。好ましくは、本発明のキャンディーおよび菓子を占めるカルシウムおよび燐酸化合物の粒子をキャンディーもしくは菓子の全体に均一分布させる。好適具体例において本発明のキャンディーおよび菓子類は、カルシウムイオンおよび燐酸イオンがキャンディーおよび菓子類からこれらが溶解する際に放出されるよう処方される。カルシウムイオンおよび燐酸イオンの放出速度はキャンディーおよび菓子類におけるこれらイオンの濃度および分布、並びにキャンディーおよび菓子類の溶解速度に依存し、この溶解速度はキャンディーもしくは菓子の表面積およびその組成に依存する。これら処方物において、カルシウムおよび燐酸含有化合物の溶解度はキャンディーもしくは菓子の溶解速度よりも比較的低くしかカルシウムイオンおよび燐酸イオンの放出速度に貢献しない。カルシウムイオンおよび燐酸イオンの放出速度論は従ってこれらパラメータに基づき当業者により処理することができる。
本発明の無機質補充用ゲルは限定はしないが寒天、ゼラチン、カルボキシメチルセルロース、キチン、アカシアガム、アラビアゴム、チサンタンガム、ヒドロキシエチルセルロースおよびヒドロキシプロピルメチルセルロースを包含する食品にて常用されるような無毒性のゲル化性化合物を含む。本発明のゲルは、長時間の露出に際し口腔組織の刺激を回避する中性pHを有するよう処方される。さらに各ゲルは、所望のコンシステンシーをもたらすのに充分な水もしくは他の水溶液、並びに高分子量の結晶成長抑制剤、さらに着香料および着色料をも含む。高分子量の結晶成長抑制剤は上記したようなゲル化剤自身、さらにホスホ蛋白(たとえばテルミンおよびコン、1976、カルシフィケーション・ティシュー・リサーチ、第22巻、第149〜157頁)、ポリカルボキシレート(たとえばホウィ・マイエルス等、1955、ミネラル・スケール・フォーメーション・アンド・インヒビション、アムヤド編、プレナム・プレス:ニューヨーク、第15章、第169〜182頁に開示)、並びにポリホスホリル化ポリビニルアルコール(たとえばシマバヤシ等、1995、ミネラル・スケール・フォーメーション・アンド・インヒビション、アムヤド編、プレナム・プレス:ニューヨーク、第14章、第157〜168に記載)を包含する。さらに、この種のゲルは本発明のガムにつき上記したような微溶性カルシウム塩もしくは燐酸塩をも含む。
本発明の燐酸カルシウム含有ゲルは好ましくは、燐酸カルシウム化合物と必要に応じ乾燥着香料、甘味料、ゲル化剤および上記他の成分とを含む乾燥粉末として提供される。これら具体例において、ゲルは水または有利な添加物(たとえば着色料、香料、甘味料、ゲル化剤など)を含む他の液体の添加により再構成される。
本発明の歯磨剤および練り歯磨は、限定はしないがたとえばソルビトールもしくはサッカリンのような甘味料、たとえば水和シリカのような研磨剤、たとえばラウリル硫酸ナトリウムのような発泡剤、たとえば各種のセルロースもしくはガムのような結合剤、たとえばグリセリンのような滑剤、たとえば酸化チタンのような白色化剤、食品着色料および水を包含する歯磨剤および練り歯磨の常用成分を含む。
本発明のゲルと同様に、本発明の歯磨剤および練り歯磨は有利には、燐酸カルシウム化合物と必要に応じ乾燥着香料、甘味料、ゲル化剤および他の上記成分とを含む乾燥粉末として提供される。これら具体例において、ゲルは水または有利な添加物(たとえば着色料、香料、甘味料、ゲル化剤など)を含む他の液体を添加して再構成される。
歯科用途における特に重要な添加剤は弗素含有化合物である。本発明の練り歯磨およびゲルの具体例においては、たとえばNaF、CaF2、SnF2、Na2PO3FもしくはNa2SiF6のような弗素塩を、これらがHAおよびフロオロアパタイトの生成速度を増大させるのに充分な量にて添加する。好ましくは本発明の具体例は約200〜2200ppmの弗素含有量を有する。本発明の練り歯磨ゲルの使用に際し放出される弗素の合計量は0.05〜10mgである。
本発明のチューインガムを用いる際、本発明のガム、キャンディーおよび他の供給ベヒクルからのカルシウムイオンおよび燐酸イオンの持続放出を少なくとも約3〜5分間、好ましくは少なくとも約3〜10分間、特に好ましくは少なくとも約3〜15分間にわたり維持すべきである。
以下、限定はしないが実施例により或る種の本発明の好適具体例につきさらに説明する。
実施例
燐酸カルシウム含有ガムの作成
燐酸カルシウム含有ガムを次のように作成した。乳酸カルシウム、グルコン酸カルシウム、グリセロ燐酸カルシウム、一塩基性燐酸モノカルシウム、燐酸水素二ナトリウムおよび燐酸二水素ナトリウムは全て食品級薬品として市販入手した。燐酸α−トリカルシウム(α−TCP)は、2モルの市販入手しうるDCPAと1モルの市販入手しうる炭酸カルシウム(CaCO3)とを含有する混合物を1200℃まで6時間加熱して作成した。使用したガムはLifeSavor(商標)ペパーミントガム(中性pHガムとして)またはLifeSavors(商標)グレープ着香風船ガム(酸性pHガム)とした。実験ガムは、燐酸カルシウム添加物を比較ガムに均一分散させて作成した。
ガムから唾液中へのカルシウムイオンおよび燐酸イオンの放出
被験者が噛んだ際にカルシウムイオンおよび燐酸イオンを口中へ放出する本発明の燐酸カルシウム含有チューインガムの能力を次のように判定した。通常の唾液流(1分間当たり≧0.2mLの唾液)を有する3人の人被験者が燐酸カルシウムの各種の処方物を含む或いは含まないガムを0〜16分間にわたり噛んだ。唾液試料を0〜2分間もしくは14〜16分間のいずれかの間隔で採取した。唾液試料におけるカルシウムイオン濃度をカルシウム電極を用いて測定した[オリオン;フォーゲル等、1987、ジャーナル・デンタル・リサーチ、第66巻、第1691〜1697頁参照]。唾液における燐酸イオン濃度を分光測定法により測定した[フォーゲル等、同上]。
これら試験の結果を下表Iに示す。表Iにおけるデータは、1〜5重量%のα−TCPを含有する酸性pHガムを噛んだ後に放出される唾液における唾液カルシウムイオン濃度に対する効果を示す。5%α−TCPガムからのカルシウムイオン放出は、5%(DCPA/TTCP)ガムの場合と統計上同等であった。
プラーク組成に対するガム咀嚼に対する効果
被験者が噛んだ際にプラークに無機質補充する本発明の燐酸カルシウム含有チューインガムの能力を次のように判定した。通常の唾液流を有する12名の人被験者が各種の燐酸カルシウムの処方物を含む或いは含まないガムを噛んだ。これら実験において、プラークを各実験の前に48時間にわたり蓄積させた。プラークの基線試料を各実験の開始前に採取し、次いで被験者は10%蔗糖溶液により約1分間にわたり口腔を濯いだ。次いで被験者は比較ガムもしくは実験ガムを0〜15分間にわたり噛んだ。各被験者の上側および下側臼歯から得られた2種の保存プラーク試料をガム咀嚼を開始した7〜15分間後に採取すると共に、1分間の唾液試料を各プラーク試料の直前に集めた。各試料につきプラークpHをミクロ電極(ガラスpH電極;フォーゲル等、1990、ジャーナル・デンタル・リサーチ、第69巻、第1316〜1323頁)を用いて測定した。さらに、プラーク液を遠心分離によりプラーク固体から分離すると共に、0.1M過塩素酸で酸性化させて燐酸カルシウムの沈殿(唾液中における燐酸カルシウムレベルの増大および試料採取後の唾液から二酸化炭素として溶解炭酸陰イオンの除去の結果)を防止した。唾液試料における遊離カルシウムイオン濃度を上記カルシウム電極を用いて測定した。唾液における全カルシウムおよび燐酸イオン濃度を分光測定法(フォーゲル等により記載、同上)により測定した。唾液およびプラークpH、並びにカルシウムイオンおよび燐酸イオン濃度に関するデータを用いて、プラークにおける歯ミネラルに関する飽和程度を計算した。
これら実験からの結果を表IIに示す。表IIにおけるデータは、2.5%α−TCPを含有するチューインガムがプラークにおけるカルシウムイオンおよび燐酸イオンの各濃度を顕著に増加させたことを示す。これら増加は蔗糖摂取後におけるプラーク中のミネラル飽和の減少を防止し、蔗糖により生ずる酸性攻撃を完全に消滅させた。これに対し、比較ガムを用いた被験者群は蔗糖濯ぎ後におけるプラークミネラル飽和レベル減少を受け、これはカリエス危険性の増加を示した。
カルシウムイオンおよび燐酸イオンの放出に対するガム組成の効果
2種類のガムを本発明の各成分として試験した;すなわち中性pHガムおよび酸性pHガム。試験した酸性pHガムの例は表Iに上記したようなライフセーバー(商標)グレープ風船ガムとした。試験した中性pHガムは、表Iを含むデータを得るため上記したように行った実験にて、ライフセーバー(商標)ペパーミントガムとした。
中性pHガムでの実験の結果を表IIIに示す。表IIIにおけるデータは、カルシウムイオンおよび燐酸イオンが中性ガム(ライフセーバー(商標)ペパーミントガム)から効率的に放出されないことを示す。事実、試験した燐酸カルシウム化合物(MCPMを除く)はいずれも、ガムが酸性pHを持たずに唾液中に酸性pHを生ぜしめなければ、カルシウムイオンもしくは燐酸イオンを放出しえなかった(すなわち7.0未満のpH;表Iにおけるデータを表IIIにおけるデータと比較)。
他の実験においては、中性ガムを用いて所定の条件下でカリエス予防性燐酸カルシウム剤を放出させた。これは、別々にカルシウム含有化合物と燐酸含有化合物とをガムに添加して達成された。別途のカルシウム含有添加物として用いたカルシウム含有化合物はグルコン酸、乳酸、フマル酸およびグリセロ燐酸のカルシウム塩とした。これら化合物を用いた結果を表IVに示す。これら実験において、これらカルシウム含有化合物の溶解度は実質的にpHとは無関係であることが判明した(酸性pHを必要とする燐酸カルシウム化合物とは異なる)。炭酸カルシウム、並びに2種の一般的に使用される食用酸(クエン酸および酒石酸)のカルシウム塩は、効果的放出をもたらすには不溶性が高過ぎた(表IV)。カルシウム化合物から得られるカリエス予防効果は、Na2HPO4とNaH2PO4との当モル混合物を添加(pHを7に維持)することにより顕著に増大された。これは唾液中への燐酸イオンの顕著な放出をもたらした。さらにデータは、カルシウム源(たとえばグリセロ燐酸カルシウム)と燐酸源(たとえば燐酸ナトリウム)とのガムにおける組み合わせがカルシウムイオンと燐酸イオンとの両者の所望の放出をもたらすことを示した。さらに、微溶性カルシウム源(たとえばグリセロ燐酸カルシウム)をMCPM(これはカルシウムイオンおよび燐酸イオンの両者につき供給源として作用する)と共に使用しうることも判明した。
燐酸カルシウム含有の無機質補充用練り歯磨の作成
本発明の無機質補充用練り歯磨の1具体例はカルシウム含有成分と燐酸含有成分とで構成され、これらを別々の容器に貯蔵して練り歯磨の湿潤成分の存在下における尚早なヒドロキシアパタイトの発生を防止する。第1例においては、燐酸カルシウム含有練り歯磨を表Vに記載したように作成する。この例においては、カルシウム源をグリセロ燐酸カルシウムとし、燐酸源を燐酸一水素・七水塩および燐酸二水素ナトリウムとする。さらに燐酸含有成分は有利には弗素源として弗化ナトリウムをも含有する。燐酸カルシウム含有の練り歯磨の第2例を表VIに示す。この例においては、カルシウム源をグルコン酸カルシウムとし、燐酸源を燐酸モノカルシウム一水塩とする。燐酸含有成分はさらに有利には弗素源としてモノフルオロ燐酸ナトリウム弗化ナトリウムの代わりにを含有する。何故なら、後者の弗素源は燐酸モノカルシウム一水塩と反応して弗化カルシウムおよびフルオロアバタイトを生成する(すなわち、使用に際し練り歯磨における燐酸塩もしくは弗化物の放出を防止する)からである。両実施例において練り歯磨は、カルシウム源の成分および燐酸源の成分を確立させた包装手段および歯科技術で公知の他の方法を用いて使用に際し等しい量(重量)で用いるよう処方される。
本発明の無機質補充用練り歯磨の他の具体例は、燐酸カルシウム源を含有する乾燥粉末で構成する。好適燐酸カルシウム組成物は燐酸テトラカルシウム、燐酸α−トリカルシウムおよび燐酸モノカルシウムである。使用に際し、粉末を液体(すなわち水)と混合してペーストを生成させることができる。次いで、このペーストを歯に施す。
燐酸カルシウム含有ゲルの作成
全ての無機質補充用ゲルはカルシウム含有成分と燐酸含有成分とで構成し、これらを別々の容器に貯蔵してゲルの湿潤成分の存在下におけるヒドロキシアパタイトの尚早な発生を防止する。処方を表VIIに示す第1例において、これら成分は液体成分および乾燥(粉末)成分で構成する。この具体例においては液体を使用直前に粉末と合してスムースなゲルを得、次いでこれを無機質補充が所望される領域(たとえば敏感な歯根表面および歯の咀嚼表面におけるカリエス病巣を含む)に施す。本発明のこの面の実施に際し、ここに説明したゲルの約10gの量が無機質補充目的に有利に用いられることが予想され、表VIIに示した実施例が処方される。
処方を表VIIIに示す第2例において、処方は一方がカルシウム源を含むと共に他方が燐酸源を含む2種のゲルの等しい量で構成し、これらを使用直前に混合して均質ゲルを生成させる。
燐酸カルシウム含有キャンディーの作成
砂糖フリーのキャンディー(表IX)および砂糖含有キャンディー(表X)の両者につき説明する。本発明のこの面においては、カルシウム源と燐酸源とをこれら2種の化合物間における尚早なヒドロキシアパタイト生成反応を考慮せずに同じ相にて合することができる。何故なら、実質的にこの種のキャンディーには遊離水が存在しないからである。
上記の開示は本発明の特定具体例を例示するものであり、本発明の思想および範囲において全ゆる改変をなしうることが当業者には了解されよう。
Claims (16)
- ゲル、練り歯磨、もしくは歯磨剤の形態であり、唾液中でカルシウムイオンと燐酸イオンの高められた放出を可能にする歯科用組成物であって、
(a)微溶性のカルシウム化合物を含み、微溶性のカルシウム化合物が、中性のpHで0.1%より大かつ10%未満の溶解度を有する無毒性のカルシウム化合物から選択される、第1のゲル、練り歯磨、もしくは歯磨剤成分と、
(b)無毒性の燐酸塩を含み、前記燐酸塩が前記カルシウム化合物の重量と等しい重量で含まれる、第2のゲル、練り歯磨、もしくは歯磨剤成分と、
を組み合わせてなり、
前記カルシウム化合物と前記燐酸塩とは、唾液の存在下で混合されたとき、プラーク組成に対して、カルシウムイオンと燐酸イオンとの持続放出を与える、歯科用組成物。 - さらにフッ素含有化合物を含む、請求項1に記載の歯科用組成物。
- 前記フッ素含有化合物が、NaF、CaF2、SnF2、Na2PO3F、またはNaSiF6のいずれかであり、組成物中に200〜2200ppm含まれる、請求項2に記載の歯科用組成物。
- さらに高分子の結晶成長抑制剤を含む、請求項1に記載の歯科用組成物。
- 前記高分子の結晶成長抑制剤がセルロース化合物である、請求項4に記載の歯科用組成物。
- 前記高分子の結晶成長抑制剤がカルボキシメチルセルロース、ピロリン酸ナトリウムあるいはピロリン酸カリウムである、請求項4または5に記載の歯科用組成物。
- 前記微溶性のカルシウム化合物が、グリセロ燐酸、乳酸、グルコン酸およびフマル酸のカルシウム塩よりなる群から選択される、請求項1に記載の歯科用組成物。
- 前記微溶性のカルシウム化合物が組成物中に0.5〜10重量%含まれる、請求項1に記載の歯科用組成物。
- 前記微溶性のカルシウム化合物が組成物中に1〜5重量%含まれる、請求項1に記載の歯科用組成物。
- 前記微溶性のカルシウム化合物が50μm未満の粒子寸法を有する、請求項1に記載の歯科用組成物。
- 前記微溶性のカルシウム化合物が1〜20μmの粒子寸法を有する、請求項1に記載の歯科用組成物。
- 前記燐酸塩が、Na2HPO4、NaH2PO4、およびCa(H2PO4)2・H2Oよりなる群から選択される、請求項1に記載の歯科用組成物。
- 前記燐酸塩が50μm未満の粒子寸法を有する、請求項1に記載の歯科用組成物。
- 前記燐酸塩が1〜20μmの粒子寸法を有する、請求項1に記載の歯科用組成物。
- ゲル、練り歯磨、もしくは歯磨剤の形態であり、唾液に晒された際に、カルシウムイオンと燐酸イオンとの高められた濃度を与えるための歯科用組成物であって、
(a)中性のpHで水に対して10%未満の溶解度を有する無毒性で微溶性のカルシウム化合物であり、グリセロ燐酸、乳酸、グルコン酸およびフマル酸のカルシウム塩よりなる群から選択されるカルシウム化合物を0.5〜10重量%含む、第1のゲル、練り歯磨、もしくは歯磨剤成分と、
(b)水に可溶な無毒性の燐酸塩を0.5〜10重量%含む、第2のゲル、練り歯磨、もしくは歯磨剤成分と、
を組み合わせてなる歯科用組成物。 - 前記燐酸塩が、Na2HPO4、NaH2PO4、およびCa(H2PO4)2・H2Oよりなる群から選択される、請求項15に記載の歯科用組成物。
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