JP4182648B2 - 半導体紫外線受光素子およびその製造方法 - Google Patents
半導体紫外線受光素子およびその製造方法 Download PDFInfo
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、新規な構造を有する半導体紫外線受光素子およびその製造方法に関する。本発明の半導体紫外線受光素子は、例えば、紫外線を計測するための光センサーに好適である。
【0002】
【従来の技術】
近年、紫外線や短波長光の工業的利用は多方面に渡っている。特に、紫外線は、半導体集積素子の製造工程において、露光時の解像度の向上を図るために盛んに利用されており、近年の半導体集積素子の超微細化に伴って、製造工程の縮小光学系によるフォトリソ工程において使用される紫外線の光源は、水銀灯(365nm)から、さらに短波長のエキシマーレーザのKrF(248nm)やArF(193nm)へと変化してきている。このように、光(紫外線や短波長を含む)を工業的に利用する際には、それらの光の強度を正確に測定する技術が要求される。
【0003】
従来から、紫外線の強度測定には、シリコンフォトダイオードなどの汎色性の検出器に、長波長カット短波長透過フィルターとこのフィルターの可視域での二次光透過域をカットする長波長カット短波長透過フィルターとを組み合わせたものが紫外線検出センサーとして使用されている。しかしながら、このようなカットフィルターは、良好な組み合わせ得ることが困難であると共に、積層化により紫外光感度が低くなり、また、常に透過可視光に対する誤差やフィルター劣化による経時変化が大きく、寿命が短いという問題を有していた。
【0004】
また、シリコンフォトダイオードは短波長光の場合には表面吸収により活性部に光が届かなかったり、表面欠陥による再結合等により400nm以下の波長域において低感度になるという問題を有していた。さらに、300nm以下では感度が波長により大きく変動するため正確な光量を求められないという問題も有していた。
【0005】
また、短波長に感度のあるGaPなどの半導体と長波長カット短波長透過フィルターの組み合わせも使用されている。この場合も、300nm以下の紫外線の場合には、二次光域に感度を持つため、短波長透過長波長カットフィルターも必要になる。このようなフィルターは短波長領域に透過する材料が限られるため、フィルターが高価になる。結果として、このような領域の紫外線センサーは寿命が短く、低感度でかつ高価であった。
【0006】
また、干渉フィルターを使用する場合、目的の紫外光を得るためには、フィルターの角度依存性が大きいため、入射角のふれ幅は限りなく小さくする必要があり、理想的には垂直入射が望まれる。このため、光路を垂直に保つためにセンサーへの導光部を長くせざるを得ず、このため正確なセンサーほど長いものになる。さらに、このセンサーを用いて、太陽光などの全天から放射される散乱紫外線を測定するには、大掛かりの装置が必要であった。
【0007】
さらに、光源が水銀灯などの場合には数本の輝線からなり、たとえば低圧水銀灯では185nmと254nmさらに強度は弱いものの365nmや可視光の発光がある。これらの中から選択的に目的の紫外線光量を測定するには分光器のような大型の装置と組み合わせる必要があり、簡単なことではなかった。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
そこで、本発明は、上記課題を解決するべくなされたものであり、より詳細には、紫外線等の光の強度を正確に測定可能な安価でかつ安定で、長寿命の半導体紫外線受光素子およびその製造方法を提供することを目的とする。また、本発明は、必要とする任意の波長の光を独立に測定可能な波長選択性を有する半導体紫外線受光素子およびその製造方法を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するための手段としては、以下の通りである。
<1> 少なくとも、導電性基板上に形成される、Al、Gaおよび窒素を含む光半導体層と、
該光半導体層の上に配される電極と、
前記光半導体層の前記電極が配された面及び該電極を被覆するように設けられ、Al、Gaおよび窒素を含み、Alの量を前記光半導体層に含まれるAlの量よりも増加させ、かつ、Gaの量を前記光半導体層に含まれるGaの量よりも減少させてなる表面層と、の積層構造を有することを特徴とする半導体紫外線受光素子。
【0010】
<2> 前記光半導体層が、紫外線領域に感度を有することを特徴とする<1>に記載の半導体紫外線受光素子。
【0012】
<3> 前記表面層が、前記光半導体層が感度を有する波長領域より短波長の光の少なくとも一部を吸収するカットフィルター機能を有することを特徴とする<1>または<2>のいずれかに記載の半導体紫外線受光素子。
【0015】
<4> 前記電極が、紫外線を透過することを特徴とする<1>〜<3>のいずれかに記載の半導体紫外線受光素子。
【0016】
<5> 前記導電性基板が、紫外線を透過することを特徴とする<1>〜<4>いずれかに記載の半導体紫外線受光素子。
【0017】
<6> 少なくとも、導電性基板表面に、Al、Gaおよび窒素を含む光半導体層を形成する光半導体層形成工程と、前記光半導体層の上に電極を配する工程と、前記光半導体層の前記電極が配された面及び該電極を被覆するように、Al、Gaおよび窒素を含み、Alの量を前記光半導体層に含まれるAlの量よりも増加させ、かつ、Gaの量を前記光半導体層に含まれるGaの量よりも減少させてなる表面層を形成する表面層被覆工程からなることを特徴とする半導体紫外線受光素子の製造方法。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して本発明の実施形態の一例を詳細に説明する。ここで、図1(a)は本発明の第1の実施形態としての半導体紫外線受光素子の構造を示す拡大断面図であり、図1(b)は本発明の第2の実施形態としての半導体紫外線受光素子の構造を示す拡大断面図である。図1(a)および(b)に示すように、半導体紫外線受光素子は、導電性基板110と、光半導体層120と、電極130と、表面層140とが順次積層された構造を有する。
【0019】
また、光半導体層120は、例えば、図1(b)に示すように複数の層からなっていてもよい。図1(b)においては、導電性基板110上に、p型半導体層122、i型半導体層124、および、n型半導体層126からなる光半導体層120、さらに電極130が順次設けられている。なお、図1(b)に示す光半導体層120においては、p型半導体層122、i型半導体層124、および、n型半導体層126がこの順で設けられているが、p型半導体層122とn型半導体層126とは、順序が逆に設けられていてもよい。
【0020】
本発明の半導体紫外線受光素子においては、照射された光が光半導体層120で吸収されて、導電性基板110と電極130との間から光電流として検出される。従って、半導体紫外線受光素子は、図1に示す矢印Aおよび矢印Bのどちらか一方から入射された光が、光半導体層120に到達することを必要とする。これにより、矢印Aから光が入射する場合は、導電性基板110が透明性を有する材料で形成され、矢印Bから光が入射する場合は、電極130および表面層140が透明性を有する材料で形成される。ここで、透明性(透明)とは、半導体紫外線受光素子において使用される所定波長領域、例えば紫外線領域、の光を高率で透過(例えば、透過率10%以上、好ましくは30%以上)する性質をいう。以下の記載についても同様である。
【0021】
<導電性基板>
導電性基板110は、基板自体が導電性であっても、絶縁性の支持体表面を導電化処理したものであってもよく、また、結晶であるか非晶質であるかは問わない。基板自体が導電性である導電性基板110としては、アルミニウム、ステンレススチール、ニッケル、クロム等の金属およびその合金結晶、Si、GaAs、GaP、GaN、SiC、ZnOなどの半導体を挙げることができる。
【0022】
また、絶縁性の支持体としては、高分子フィルム、ガラス、石英、セラミック等を挙げることができる。絶縁性の支持体の導電化処理は、上記導電性基板110の具体例で挙げた金属または金、銀、銅等を蒸着法、スパッター法、イオンプレーティング法などにより成膜して行うことができる。
【0023】
上述のように、導電性基板110が光の入射側に配される場合(矢印Aから光が入射する場合)、当該導電性基板110は透明性を有する必要がある。そのため、透明性を有する導電性基板110(以下、透明導電性基板とする)の透明性支持体としては、ガラス、石英、サファイア、MgO、SiC、ZnO、LiF、CaF2等の透明な無機材料、また、弗素樹脂、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、エポキシ等の透明な有機樹脂のフィルムまたは板状体、さらに、オプチカルファイバー、セルフォック光学プレート等が使用できる。
【0024】
前記透明性支持体は、それ自体が導電性であればそのまま透明導電性基板110として使用されるが、導電性でない場合は、導電化処理または透明性電極の形成を必要とする。前記導電化処理または透明性電極の形成は、ITO、酸化亜鉛、酸化錫、酸化鉛、酸化インジウム、ヨウ化銅等の透明導電性材料を用い、蒸着、イオンプレーティング、スパッタリングなどの方法により形成したもの、あるいはAl、Ni、Au等の金属を蒸着やスパッタリングなどにより半透明になる程度に薄く成膜して行われる。
【0025】
<光半導体層>
光半導体層120は、Al、Gaおよび窒素を含有し、必要に応じてその他の成分を含有する。
光半導体層120としては、非単結晶質状でもよく、単結晶質状でもよい。非単結晶質状である場合には、非晶質状でもよく、微結晶質状でもよく、これらの混合された状態であってもよい。
【0026】
結晶質状の場合、その結晶系は、立方晶あるいは6方晶系のいずれか一つであっても、複数の結晶系が混合された状態でもよい。結晶としては、柱状成長した結晶でもよく、X線回折スペクトルで単一ピークであり、結晶面方位が高度に配向したものでもよく、単結晶でもよい。
【0027】
光半導体層120が非単結晶の場合には、当該光半導体層120に0.5at%〜50at%の水素が含有していてもよく、一配位のハロゲン元素が含有されていてもよい。前記光半導体層120の水素含有量が0.5at%未満では、結晶粒界での結合欠陥とあるいは非晶質相内部での結合欠陥や未結合手を水素との結合によって無くし、バンド内に形成する欠陥準位を不活性化するのに不十分であり、結合欠陥や構造欠陥が増大し、暗抵抗が低下し光感度がなくなるため実用的な半導体紫外線受光素子として機能することができない場合がある。
【0028】
これに対し、光半導体層120の水素含有量が50at%を超えると、電気的な特性が劣化すると共に硬度などの機械的性質が低下することがある。さらに、前記光半導体層120が酸化されやすくなり、耐候性が悪化することもある。
【0029】
ここで、光半導体層120の水素含有量(at%)については、ハイドジェンフォワードスキャタリング(HFS)により絶対値を測定することができる。また、加熱による水素放出量の測定によっても水素含有量を推定することができる。さらに、本発明の半導体紫外線受光素子の製造工程において、光半導体層120の形成時に、同時にシリコン、サファイア等の赤外透明な基板に同様の光半導体層を形成することで、赤外吸収スペクトルによって該光半導体の水素含有量を容易に測定することできる。なお、赤外吸収スペクトルによって水素結合状態も判明する。
【0030】
水素を含む光半導体層120の構造は、例えば、透過電子線回折で測定した場合、全くリング状の回折パターンがなく、ぼんやりしたハローパターンの完全に長距離秩序の欠如しているものから、ハローパターンの中にリング状の回折パターンが見られるもの、さらに、その中に輝点が見られるものまで使用できる。このような光半導体層120は、透過電子線回折より広範囲を観測するX線回折測定においては、ほとんど何もピークが得られないことが多い。
【0031】
また、透過電子線回折の測定いおいて、リング状の回折パターンと共に輝点が多数見られるもの、さらに、ほとんどスポット状の輝点のみであってもX線回折測定において、多結晶あるいは最も強いピーク強度が単結晶にくらべると弱く、かつ、他に弱い他の面方位のピークが混在している場合もある。さらに、ほとんど一つの面方位からなるX線回折スペクトルを示す場合もある。
【0032】
水素を含む光半導体層120の赤外吸収スペクトル測定では、水素との結合ピークが存在すると共に、III族原子(Al、GaおよびIn)とN原子との結合の振動吸収ピークの半値幅が、非晶質構造が主体の場合には150cm-1以上であり、微結晶性の場合には100cm-1以下である。ここで、半値幅とは、III族原子とN原子の結合を主体とする吸収位置での複数のピークからなる吸収帯の最高強度とバックグランドを除いた強度の1/2の値での吸収帯の幅である。
【0033】
微結晶の大きさは、その径として、5nm〜5μmであり、X線回折や電子線回折および断面の電子顕微鏡写真を用いた形状測定などによって測定することができる。
【0034】
また、光半導体層120の吸光係数は、分光光度計で吸収量を測定し、層厚で除したものを自然対数系で表したものであり、400nmの光透過量は、透明(ここでは、紫外線透過性)とみなせるためには20000cm-1以下が好ましく、10000cm-1以下がより好ましい。これらの値は、バンドギャップとしてはほぼ3.0eV以下に相当する。
【0035】
光半導体層120の原料としては、AlおよびGaのうちから選ばれる1以上の元素を含む有機金属化合物を用いることができる。
前記有機金属化合物としては、例えば、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、ターシャリーブチルアルミニウム、トリメチルガリウム、トリエチルガリウム、ターシャリーブチルガリウムなどの液体や固体を気化して単独にあるいはキャリアガスでバブリングすることによって混合状態で使用することができる。キャリアガスとしては、水素、N2、メタン、エタンなどの炭化水素、CF4、C2F6などのハロゲン化炭素などを用いることができる。
【0036】
窒素原料としては、N2、NH3、NF3、N2H4、メチルヒドラジンなどの気体、または、液体を気化あるいはキャリアガスでバブリングすることによって使用することができる。
【0037】
光半導体層120の組成において、III族元素の量の総和mと、窒素の量nとの関係が、0.5:1.0≦m:n≦1.0:0.5を満たすことが好ましく、この範囲を外れると、III族元素とV族元素(N)との結合において四面体型結合を取る部分が少なく、欠陥が多くなり、良好な光半導体層120として機能しなくなる場合がある。
【0038】
光半導体層120の光学ギャップは、III族元素の混合比によって任意に変えることができる。GaN:Hを基準にすると、3.2〜3.5eVより大きくする場合には、Alを加えることによって6.5eV程度まで大きくすることができ、3.2eV以下にする場合Inを加えることによって1.9eV程度まで、それぞれに透明のまま波長域を変化させることができる。
【0039】
ここで、光学ギャップは波長(eV)と吸収係数(αe)の2乗のプロットより、低エネルギーの直線部分を外挿した点から求める。あるいは、吸収係数が10000cm-1の波長(eV)としてもよい。吸収係数は、バックグランドを除外した吸光度を用いるか、膜厚依存性を測定して求められる。
【0040】
また、光半導体層120は、p、n制御のために元素を膜中にドープすることができる。
ドープし得るn型用の元素としてはIa族のLi、Ib族のCu、Ag、Au、IIa族のMg、IIb族のZn、IVa族のSi、Ge、Sn、Pb、VIa族のS、Se、Teを用いることができる。
【0041】
ドープし得るp型用の元素としては、Ia族のLi、Na、K、Ib族のCu、Ag、Au、IIa族のBe、Mg、Ca、Sr、Ba、Ra、IIb族のZn、Cd、Hg、IVa族のC、Si、Ge、Sn、Pb、VIa族のS、Se、Te、VIb族のCr、Mo、W、VIIIa族のFe、Co、Niなどを用いることができる。
【0042】
光半導体層120中の水素は、ドーパントに結合し不活性化しないように、欠陥準位をパッシベーションするための水素が、ドーパントよりもIII族元素および窒素元素に選択的に結合する必要があり、この点から、特に、n型用の元素としては、特に、Si、Ge、Snが好ましく、p型用の元素としては、特に、Be、Mg、Ca、Zn、Srが好ましい。
【0043】
ドーピングの際には、n型用としては、SiH4、Si2H6、GeH4、GeF4、SnH4を、p型用としては、BeH2、BeCl2、BeCl4、シクロペンタジエニルマグネシウム、ジメチルカルシウム、ジメチルストロンチウム、ジメチル亜鉛、ジエチル亜鉛など、をガス状態で使用できる。また、これらの元素を光半導体層120にドーピングするには、熱拡散法、イオン注入法等の公知の方法を採用することができる。
【0044】
図1に示すように、本発明の半導体紫外線受光素子において、簡単には、単層の光半導体層120を形成することによってショットキー型の素子とすることもできるし、pnダイオード構成やpin構成などを作製することによってさらに高効率化することができる。
【0045】
光半導体層120は、Alと、Gaと窒素(と水素)とを含むn型あるいはp型の半導体層から構成されてもよいし、さらに高濃度のドーピングを行った膜p+あるいはn+層を挿入してもよいし、低濃度のドーピングを行った膜p−あるいはn−層を挿入してもよい。
【0046】
また、光半導体層120は、図1(b)に示されるように、多層構造であってもよい。この場合、光半導体層120は、透明性や障壁の形成のために、p型半導体層122、i型半導体層124、および、n型半導体層126の各層は、それぞれ異なるAlxGa y (x=0〜1.0、y=0〜1.0)で表せるAl、GaとNの組成を持っていてもよいし、p型半導体層122、i型半導体層124、および、n型半導体層126のそれぞれの層が複数のAlxGa y N:H(x=0〜1.0、y=0〜1.0)の組成から成っていてもよい。
【0047】
以下、図2を参照して、光半導体層120の形成方法を説明するが、これに限定されるものではない。ここで、図2は光半導体層120を形成する層形成装置100の概略構成図である。なお、層形成装置100は、プラズマを活性化手段とするものである。図2に示すように、層形成装置100は、排気して真空にし得る容器1と、排気口2と、基板ホルダー3と、基板加熱用ヒーター4と、容器1に接続された石英管5、6と、高周波コイル7と、マイクロ波導波管8と、石英管5、6にそれぞれ連通しているガス導入管9、10と、石英管5、6にそれぞれ接続しているガラス導入管11、12とを有する。また、後述するように、層形成装置100は、ある特定の組成を有する表面層140を形成することも可能である。
【0048】
この層形成装置100においては、窒素元素源として、例えば、N2を用い、ガス導入管9から石英管5に導入する。例えば、マグネトロンを用いたマイクロ波発振器(図示せず)に接続されたマイクロ波導波管8に、2.45GHzのマイクロ波が供給され、石英管5内に放電を発生させる。別のガス導入管10から、例えばH2を石英管6に導入する。高周波発振器(図示せず)から高周波コイル7に13.56MHzの高周波を供給し、石英管6内に放電を発生させる。放電空間の下流側に配されたガス導入管12より、例えば、トリメチルガリウムを導入することによって、基板ホルダー3にセットされた導電性基板110上に、窒素ガリウムからなる光半導体層120を形成(成膜)することができる。
【0049】
なお、前記ガス導入管12から導入されたガスは、トリメチルガリウムであったが、代わりにアルミニウムを含む有機金属化合物を用いることもできるし、またそれらを混合することもできる。また、これらの有機金属化合物は、ガス導入管11から混合して導入してもよいし、別々に導入してもよい。
【0050】
導電性基板110の温度としては、100℃〜600℃が好ましい。一般に、導電性基板110の温度が高い場合、および/または、III族原料ガスの流量が少ない場合には、微結晶の光半導体層120が形成されやすい。また、導電性基板110の温度が300℃より低く、III族原料ガスの流量が少ない場合には、微結晶の光半導体層120が形成されやすく、基板温度が300℃より高く、低温条件よりもIII族原料ガスの流量が多い場合であっても、微結晶の光半導体層120が形成されやすい。さらに、例えば、H2放電を行った場合には、行なわない場合よりも光半導体層120の微結晶化を進めることができる。
【0051】
また、C、Si、Ge、Snから選ばれた少なくとも一つ以上の元素を含むガス、あるいはBe、Mg、Ca、Zn、Srから選ばれた少なくとも1つ以上の元素を含むガスを放電空間の下流側(ガス導入管11またはガス導入管12)から導入することによってn型、p型などの任意の伝導型の非晶質あるいは微結晶の窒化物半導体を得ることができる。C元素を導入する場合には、条件によっては有機金属化合物の炭素を使用してもよい。
【0052】
上述のような層形成装置100において、放電エネルギーにより形成される活性窒素あるいは活性水素を独立に制御してもよいし、NH3のような窒素と水素原子を同時に含むガスを用いてもよい。さらにH2を加えてもよい。また、有機金属化合物から活性水素が遊離生成する条件を用いることもできる。このようにすることによって、導電性基板110上には活性化されたIII族原子、窒素原子が制御された状態で存在し、かつ、水素原子がメチル基やエチル基をメタンやエタン等の不活性分子にするために低温にも拘わらず、炭素がほとんど入らないか、入っても極低量の、膜欠陥が抑えられた非晶質あるいは微結晶の膜が生成できる。
【0053】
上述のような層形成装置100において、活性化手段としては、高周波発振器、マイクロ波発振器、エレクトロサイクロトロン共鳴方式やヘリコンプラズマ方式であってもよいし、これらを一つ用いてもよいし、二つ以上を用いてもよい。また、二つともマイクロ波発振器であってもよいし、2つとも高周波発振器であってもよい。また、図1においては、高周波発振器とマイクロ波発振器とを用いたが、2つともマイクロ波発振器であってもよいし、2つとも高周波発振器であってもよい。さらに、2つともエレクトロサイクロトロン共鳴方式やヘリコンプラズマ方式を用いてもよい。高周波発振器による高周波放電の場合、誘導型でも容量型でもよい。
【0054】
異なる活性化手段(励起手段)を用いる場合には、同じ圧力で同時に放電が生起できるようにする必要があり、放電内と容器1内の層形成部(成膜部)との間に圧力差を設けてもよい。また、同一圧力で行う場合、異なる活性化手段(励起手段)、例えば、マイクロ波発振器と高周波発振器とを用いると、励起種の励起エネルギーを大きく変えることができ、膜質制御に有効である。
光半導体層120は、反応性蒸着法やイオンプレーティング、リアクティブスパッターなど少なくとも水素が活性化された雰囲気で形成されることが可能である。
【0055】
<電極>
電極130は、導電性基板110の対向電極として形成される。電極130としては、例えば、Al、Ni、Au、Cr、Co、AgおよびPtなどの金属およびその合金結晶や多層膜などを用いることができる。上述のように、矢印Bから光が入射する場合は、前記電極130は透明性を有する必要がある。そのため、透明性電極としては、ITO、酸化亜鉛、酸化錫、酸化鉛、酸化インジウム、ヨウ化銅等の透明導電性材料を用いることができるが、入射光が300nm以下の場合には、Al、Ni、Au、Cr、Co、AgおよびPt等の金属を蒸着やスパッタリングにより光が透過するように薄く成膜したものが用いられる。前記膜の厚さは、5nm〜100nmであり、薄すぎると光透過率は大きいが電気抵抗が高くなり、また厚すぎると光が透過しない。
【0056】
<表面層>
表面層140は、少なくとも、物理的、化学的な刺激から半導体紫外線受光素子の活性部(導電性基板110、光半導体層120および電極130)を保護する機能を有する。例えば、表面層140は、物理的な傷などに対する保護の役目を果たす他、半導体紫外線受光素子の活性部が湿度や化学物質などから受ける影響を低減することができる。また、集積化した半導体紫外線受光素子を加工する際の保護層としても機能する。これにより、本発明の半導体紫外線受光素子は、耐久性、耐湿性に優れるため長寿命化を図ることができる。
【0057】
ここで、保護機能を有する表面層140としては、特に限定されず、例えば、無機材料、酸化物窒化物、有機高分子材料などのあらゆるものが用いられる。また、層厚としては、0.01〜500μmが好ましく、0.1〜500μmがより好ましい。
なお、表面層140側から光が入射する場合(矢印Bから光が入射する場合)には、表面層140としては、少なくとも、光半導体層120で受光・検出したい光を吸収することのないものを使用する。
但し、本発明における表面層はAl、Gaおよび窒素を含むものである。
【0058】
また、表面層140が、光半導体層120の感度を有する波長領域以外の光の少なくとも一部を吸収する場合には、表面層140はカットフィルターとしての機能をも有する。例えば、光半導体層120が、ある特定波長領域(例えば、紫外線領域)に感度を有するのであれば、表面層140は当該特定波長領域より短波長の光の少なくとも一部を吸収するものを使用することが好ましい。
【0060】
本発明における表面層140は、紫外線領域での透明性と物理的強度および化学的安定性、耐熱性、電気絶縁性などの点から、Al、Gaおよび窒素を含む窒化物よりなる膜であることを特徴とする。特に、該窒化膜は、低温で形成することができるため、既述の光半導体層120と同じ装置、同じ方法を利用することができる。さらに、膜中には水素が含まれていてもよいし、また絶縁性を調整するためドーピングされていてもよい。ドーピング元素としては、C、Si、Ge、Snから選ばれた少なくとも1以上の元素、あるいはBe、Mg、Ca、Zn、Srから選ばれた少なくとも1以上の元素を、少なくとも1以上用いることができる。
【0061】
前記窒化膜が、光半導体層120が感度を有する波長領域より短波長側に吸収を持つようにする場合には、AlおよびGaのうち元素の原子番号が小さい元素の量を増加させ、原子番号の大きい元素の量を減少させる。つまり、光半導体層120が、AlxGa1−xN、表面層140がAlyGa1−yNで表されるならば、x<yとすることで、表面層140の吸収波長領域が短波長側に変化する。この結果、表面層140側から光が入射した場合(矢印Bから光が入射する場合)には、ある波長をピークとして、短波長側と長波長側に感度が無い選択的な半導体紫外線受光素子が製造可能となる。
【0062】
以上説明したように、表面層140が保護機能に加え、カットフィルター機能をも有している場合、光半導体層120は必要とする任意の波長の光を独立に、かつ、選択的に受光することができる。従って、本発明の半導体紫外線受光素子は、高い波長選択性を有するものとすることができる。
【0063】
【実施例】
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明は、下記実施例に限定されるものではない。
【0064】
〔参考例1〕
図2に示す層形成装置100を用いて、参考例1の半導体紫外線受光素子を作製した。
【0065】
−導電性基板の形成工程−
洗浄したコーニング7059(ガラス基板、コーニング社製)上に、スパッター法により、厚みが200nmで2mm×2mmのITO電極を形成し、導電性基板を形成した。
【0066】
−光半導体層の形成工程−
以下、上述した層形成装置100によって、導電性基板上に光半導体層を形成した。導電性基板は、容器1内の基板ホルダー3に設置した。排気口2を介して容器1内を真空排気した後、基板加熱ヒーター4により導電性基板を380℃に加熱した。
【0067】
N2ガスをガス導入管9より直径25mmの石英管5内に2000sccm導入し、マイクロ波導波管8を介して2.45GHzのマイクロ波を出力250Wにセットし、チューナでマッチングを取り放電を行った。この時の反射波は0Wであった。
H2ガスはガス導入管10より直径30mmの石英管6内に1000sccm導入した。13.56MHzの高周波電力の出力を100Wにセットした。反射波は0Wであった。
【0068】
この状態でガス導入管12より0℃で保持されたトリメチルガリウム(TMGa)の蒸気を、水素をキヤリアガスとして用い、バブリングしながらマスフローコントローラーを通して0.3sccm導入した。さらに、水素をキヤリアガスとしてシクロペンタジエニルマグネシウムを1sccm導入した。ここで、トリメチルガリウムと、ドーパントであるシクロペンタジエニルマグネシウムとは、ガス導入管12において、合流・混合されて、導入される。この時、バラトロン真空計で測定した反応圧力は66.5Pa(0.5Torr)であった。成膜を60分行い0.2μmのi型のGaN:H膜(光半導体層)を形成した。
【0069】
−電極の形成工程−
形成したGaN:H膜の上に、蒸着法によって、直径2mm、厚さ10nmのAu膜を形成し、半透明電極を得た。この時、同時に、導線と端子部分も蒸着した。
【0070】
−表面層の形成工程−
端子部分のみマスキングして、光半導体層と電極が積層形成された導電性基板を、もう一度、層形成装置100に設置し、基板加熱ヒーター4により400℃に加熱した。その後、上述した光半導体層と同じ方法で水素化AlNを成膜した。使用した原料ガスは、トリメチルアルミニウムであって、ドーピングを行わなかった以外は光半導体層の作成条件と同じとした。成膜を30分行い、0.1μmのi型のAlN:H膜(表面層)を形成した。これにより、図1(a)に示すような半導体紫外線受光素子を作製した。
【0071】
−評価実験−
作製された半導体紫外線受光素子に、低圧水銀灯(波長254nm、5W)の紫外線を表面層140側から照射したところ、0Vで0.5μAの光電流が流れた。この時、低圧水銀灯と表面層140との距離は20mmであった。
また、作製された半導体紫外線受光素子の分光感度のピークは340nmであり、短波長側の200nmまで感度は十分であった。さらに、暗電流は10−10A以下であった。半導体紫外線受光素子の表面層をピンセットで擦ったところ傷はつかなかった。
【0072】
〔実施例1〕
参考例1において、光半導体層の形成工程と、表面層の形成工程とを以下に示す工程に代えた他は、参考例1と同様にして実施例1の半導体紫外線受光素子を作製した。
【0073】
−光半導体層の形成工程−
以下、上述した層形成装置100を用い、導電性基板上に光半導体層を形成した。ITOを用い導電化処理を行った導電性基板は、容器1内の基板ホルダー3に設置した。排気口2を介して容器1内を真空排気した後、基板加熱ヒーター4により導電性基板を380℃に加熱した。
【0074】
N2ガスをガス導入管9より直径25mmの石英管5内に2000sccm導入し、マイクロ波導波管8を介して2.45GHzのマイクロ波を出力250Wにセットし、チューナでマッチングを取り放電を行った。この時の反射波は0Wであった。
H2ガスはガス導入管10より直径30mmの石英管6内に1000sccm導入した。13.56MHzの高周波電力の出力を100Wにセットした。反射波は0Wであった。
【0075】
この状態でガス導入管12より0℃で保持されたトリメチルガリウム(TMGa)の蒸気を、水素をキヤリアガスとして用い、バブリングしながらマスフローコントローラーを通して0.1sccm導入した。さらに、水素をキヤリアガスとしてトリメチルアルミニウムの蒸気を、水素をキヤリアガスとして用い、バブリングしながらマスフローコントローラーを通して0.1sccm導入した。加えて、水素をキヤリアガスとしたシクロペンタジエニルマグネシウムを1sccm導入した。ここで、トリメチルガリウムと、トリメチルアルミニウムと、ドーパントであるシクロペンタジエニルマグネシウムとは、ガス導入管12に接続されたミキサー(図示せず)によって混合され、導入される。この時、バラトロン真空計で測定した反応圧力は66.5Pa(0.5Torr)であった。成膜を60分行い0.2μmのi型のAlGaN:H膜(光半導体層)を形成した。
【0076】
−表面層の形成工程−
半透明電極と同時に形成された端子部分のみマスキングして、光半導体層と電極が積層形成された導電性基板を、もう一度、層形成装置100に設置し、基板加熱ヒーター4により400℃に加熱した。その後、光半導体層と同じ方法で水素化AlGaNを成膜した。使用した原料ガスは、トリメチルガリウムと、トリメチルアルミニウムであって、トリメチルアルミニウムは0.2sccmとし、GaとAlとの混合比が1:2になるようにした。また、ドーピングを行わなかった以外は光半導体層120の作成条件と同じとした。成膜を30分行い、0.1μmのi型のAlGaN:H膜(表面層)を形成した。これにより、図1(a)に示すような本発明の半導体紫外線受光素子を作製した。
【0077】
−評価実験−
作製された半導体紫外線受光素子に、低圧水銀灯(波長254nm、5mW)の紫外線を表面層140側から照射したところ、0Vで0.8μAの光電流が流れた。この時、低圧水銀灯と表面層140との距離は20mmであった。
また、作製された半導体紫外線受光素子の分光感度のピークは270nmであり、220〜340nmの間に感度を有していた。また、前記半導体紫外線受光素子は254nmと、365nmの波長を分離することができる。さらに、暗電流は10−10A以下であった。半導体紫外線受光素子の表面層140をピンセットで擦ったところ傷はつかなかった。
【0078】
【発明の効果】
本発明の半導体紫外線受光素子は、保護機能、さらに所望によりカットフィルター機能を果たす表面層を有する。従って、本発明は、表面層の保護機能により強度を正確に測定可能である安価で、かつ、安定で長寿命の半導体紫外線受光素子を提供することできる。また、本発明は、表面層にカットフィルター機能を付与した場合、必要とする任意の波長の光を独立に測定可能な波長選択性を有する半導体紫外線受光素子を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 (a)は本発明の第1の実施形態としての半導体受光素子の構造を示す拡大断面図であり、(b)は本発明の第2の実施形態としての半導体受光素子の構造を示す拡大断面図である。
【図2】 光半導体層および表面層を形成する層形成装置の概略構成図である。
【符号の説明】
1 容器
2 排気口
3 基板ホルダー
4 基板加熱用ヒーター
5、6 石英管
7 高周波コイル
8 マイクロ波導波管
9〜12 ガス導入管
100 層形成装置
110 導電性基板
120 光半導体層
122 p型光半導体層
124 i型光半導体層
126 n型光半導体層
130 電極
140 表面層
Claims (6)
- 少なくとも、導電性基板上に形成される、Al、Gaおよび窒素を含む光半導体層と、
該光半導体層の上に配される電極と、
前記光半導体層の前記電極が配された面及び該電極を被覆するように設けられ、Al、Gaおよび窒素を含み、Alの量を前記光半導体層に含まれるAlの量よりも増加させ、かつ、Gaの量を前記光半導体層に含まれるGaの量よりも減少させてなる表面層と、の積層構造を有することを特徴とする半導体紫外線受光素子。 - 前記光半導体層が、紫外線領域に感度を有することを特徴とする請求項1に記載の半導体紫外線受光素子。
- 前記表面層が、前記光半導体層が感度を有する波長領域より短波長の光の少なくとも一部を吸収するカットフィルター機能を有することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の半導体紫外線受光素子。
- 前記電極が、紫外線を透過することを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の半導体紫外線受光素子。
- 前記導電性基板が、紫外線を透過することを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の半導体紫外線受光素子。
- 少なくとも、導電性基板表面に、Al、Gaおよび窒素を含む光半導体層を形成する光半導体層形成工程と、
前記光半導体層の上に電極を配する工程と、
前記光半導体層の前記電極が配された面及び該電極を被覆するように、Al、Gaおよび窒素を含み、Alの量を前記光半導体層に含まれるAlの量よりも増加させ、かつ、Gaの量を前記光半導体層に含まれるGaの量よりも減少させてなる表面層を形成する表面層被覆工程からなることを特徴とする半導体紫外線受光素子の製造方法。
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