以下、場合により図面を参照しつつ、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図面中、同一又は相当部分には同一符号を付することとし、重複する説明は省略する。
(アシッドペースティング処理方法)
図1は本発明のアシッドペースティング処理方法に好適に使用される処理装置の一例を示す概略構成図である。
図1に示したアシッドペースティング処理装置10は、水又はアルカリ性溶液を含む流体1a(第1の流体)を通す第1の流路L1と、電荷発生材料用顔料及びその顔料を溶解する酸を含む流体2a(第2の流体)を通す流路L2と、流路L1、L2それぞれの終端部に連結されており、流体1aと流体2aとを合流させて層流を生じさせる流路L3と、を備える。
流路L1の上流側端部には流体1aが収容されたマイクロシリンジ1が、流路L2の上流側端部には流体2aが収容されたマイクロシリンジ2がそれぞれ連結されている。
流体1aは、前述の通り水又はアルカリ性溶液を含む溶液であり、好ましくは濃アルカリ性溶液を含む溶液である。流体1a中に含まれる水としては、イオン交換水、純水、又は蒸留水等の精製した水が好ましい。また、アルカリ性溶液としては、アンモニア水、水酸化ナトリウム水溶液、水酸化カリウム水溶液等が挙げられ、これらの中でもアンモニア水が好ましい。
第1の流体1aには、有機溶剤を混合することもできる。有機溶剤を混合することによって、結晶型の制御や顔料の品質のコントロールがより容易となる。有機溶剤としては、公知のものが使用できる。
また、第2の流体2aは電荷発生材料用顔料及び該顔料を溶解する酸を含む。 電荷発生材料用顔料としては、多環キノン顔料、ぺリレン系顔料、アゾ系顔料、インジゴ顔料、キナクリドン顔料、フタロシアニン顔料等の公知の有機系顔料が挙げられる。
上記顔料の中でもフタロシアニン顔料は、レーザー・プリンターやフルカラー複写機等のデジタル記録用感光体の電荷発生材料として、感光波長領域が半導体レーザーの近赤外領域まで長波長化したものが既に実用化されているが、後述する本発明の処理方法により、品質安定性にさらに優れたものとなる。
フタロシアニン顔料としては、特に限定されないが、例えば、無金属フタロシアニン顔料、チタニルフタロシアニン顔料、銅フタロシアニン顔料、クロロガリウムフタロシアニン顔料、ヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料、バナジルフタロシアニン顔料、クロロインジウムフタロシアニン顔料、ジクロロスズフタロシアニン顔料が挙げられる。
上記フタロシアニン顔料のうち、ヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料(粗結晶)は、例えば、o−フタロジニトリル又は1,3−ジイミノイソインドリンと、三塩化ガリウムとを所定の溶媒中で反応させる方法(I型クロロガリウムフタロシアニン法);o−フタロジニトリル、アルコキシガリウム及びエチレングリコールを所定の溶媒中で加熱し反応させてフタロシアニン二量体(フタロシアニン・ダイマー)を合成する方法(フタロシアニン・ダイマー法)により製造することができる。
上記の反応における溶媒としては、α−クロロナフタレン、β−クロロナフタレン、α−メチルナフタレン、メトキシナフタレン、ジメチルアミノエタノール、ジフェニルエタン、エチレングリコール、ジアルキルエーテル、キノリン、スルホラン、ジクロロベンゼン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ジメチルスルホアミド等の不活性且つ高沸点の溶媒を用いることが好ましい。
また、酸としては、硫酸、硝酸、塩酸、トリフルオロ酢酸等の公知の酸が挙げられるが、これらの中では、顔料を容易に溶解させることができる点で、硫酸が好ましく、95重量%以上の濃硫酸がより好ましい。
第2の流体2aに含まれる顔料と酸との混合割合は、顔料1重量部に対して10〜1000重量部が好ましく、15〜100重量部がより好ましい。顔料と酸との混合割合が、顔料1重量部に対して10重量部未満であると、顔料の溶解が不充分となる傾向があり、他方、1000重量部を越えると、再結晶が起こりにくくなる傾向がある。
また、顔料を酸に溶解する際の温度としては、100℃以下が好ましく、10〜80℃がより好ましい。また、第2の流体2aの液粘度は、250mPa・S以下であることが好ましい。
マイクロシリンジ1内の流体1a及びマイクロシリンジ2内の流体2aは、それぞれ送液ポンプP1、P2により流路L1、L2に押し出され、フィルターF1、F2を通ってマイクロリアクター5に送液され、流路L3において合流する。
マイクロリアクター5の流路(チャンネル)L1、L2、L3はマイクロスケールである。即ち、流路L1、L2、L3の幅は、5000μm以下であり、好ましくは10〜1000μmであり、より好ましくは30〜500μmである。従って、マイクロリアクターでは、流体の流量及び流速のいずれも小さく、レイノルズ数は200以下となる。
マイクロリアクター5の流路L1、L2、L3は、固体基板上に微細加工技術により作製される。基板に使用される材料は、ガラス、セラミックス、シリコン等である。また、耐酸性及び耐アルカリ性であれば、プラスチック樹脂を用いることもできる。
流路L1、L2、L3を形成するための微細加工方法としては、例えば、X線を用いたLIGA技術を用いる方法、フォトリソグラフィー法によりレジスト部を構造体として使用する方法、レジスト開口部をエッチング処理する方法、マイクロ放電加工法、レーザー加工法、ダイアモンドのような硬い材料で作られたマイクロ工具を用いる機械的マイクロ切削加工法がある。これらの技術は単独で用いてもよく、組み合わせて用いてもよい。
また、マイクロリアクター5を組み立てる際には、接合技術が用いられる。接合技術は、大きく固相接合と液相接合に分けられる。固相接合には、陽極接合、直接接合、拡散接合等がある。また、液相接合には、融接、接着剤等がある。
マイクロリアクター5は、ヒーター7が設置されており、温度度制御装置9により、その温度は調節されている。また、ヒータとしては、金属抵抗やポリシリコン等が用いられ、ヒーター7を装置内に作りこんでもよい。また、温度制御のために、装置全体を温度制御された容器中にいれてもよい。
マイクロリアクター5は、従来の処理装置のように乱流ではなく層流による反応を可能とするものである。層流による反応では、例えば、2液を混合する場合には2液の界面を通した拡散により混合することができる。また、マイクロスケールの空間では比界面積が大きいため、このような界面での拡散混合を行う場合に有利である。
図2はマイクロリアクター5内において流体1aと流体2aとが合流するときの状態を概念的に示す説明図である。図示の通り、流体1aと流体2aとを流路L3にて合流させると、流体1aを主成分とする領域C、流体2aを主成分とする領域A、及びこれらの混合領域である領域Bからなる層流を生じる。その結果、流体2a中の電荷発生材料用顔料は、混合領域Bを介して領域Aから領域Cに徐々に拡散し、再結晶する。再結晶した顔料は、混合流体3aと共に流路L3を通って容器3に収容される。
マイクロリアクター5が有する流路のうち、第1の流体1aを通す第1の流路L1の流路径D1は、図2に示したように、第2の流体2aを通す第2の流路L2の流路径D2より大きいことが好ましい。流路径D1を流路径D2より大きくすると、アシッドペーシング処理の際に、酸−アルカリによる中和反応や、顔料の再結晶に伴う発熱が抑制され、顔料の結晶型や粒子径を一層精度よく且つ効率的に制御することができる。流路径D1と流路径D2との比D1/D2は、下記式(2)で表される条件を満たすことがより好ましい。なお、D1/D2が、1以下であると発熱の抑制が不充分となる傾向があり、他方、500を超えると再結晶化が困難となる傾向がある。
1<(D1/D2)≦500 (2)
なお、流路L1、L2、L3は、マイクロリアクター5内において上記構成を有していればよく、マイクロリアクター5から露出した部分の構成は特に制限されない。
また、第1の流体1aの送液速度V1及び第2の流体2aの送液速度V2は、下記式(1)で表される条件を満たすように、第1及び第2の流体それぞれをマイクロリアクター5に送液することが好ましい。
1<(V1/V2)≦100 (1)
上記V1/V2が、1以下であると発熱の抑制が不充分となる傾向があり、他方、100を超えると再結晶化が困難となる傾向がある。
また、マイクロリアクター5に供給される第1の流体1aの温度は、好ましくは50℃以下、より好ましくは20℃以下、さらに好ましくは10℃以下である。また、第2の流体2aの温度は第1の流体1aと同様の温度とすることが好ましい。なお、温度は、溶液が凝固しない温度に調節される。また、溶液の温度制御は、容器1が備える温度制御装置(図示せず)により行なわれる。
マイクロリアクター5において、混合に要する時間は、界面の断面積と液層の厚さに依存する。拡散理論に従うと、混合時間tはt=W2/D(W:流路幅、D:拡散係数)となり、流路幅を小さくすればするほど拡散時間は速くなる。すなわち、流路幅が1/10になれば、混合時間は1/100になる。また、単位体積当たりの表面積が大きいために熱交換の効率が極めて高く、温度制御が容易にできる。従って、マイクロリアクター5を後述する本発明の処理方法に用いることで、顔料の結晶型や粒子径を精度よく且つ効率的に制御することができ、顔料に電荷発生材料としての十分な特性を安定的に付与することができる。
第3の流路L3の流路長は、混合流体3aが第3の流路L3を通る間に顔料の拡散混合と再結晶化の時間が確保される長さであれば、特に限定されない。また、第3の流路L3は、層流を生じさせるための領域が確保できれば、後段(下流側)において、波形状、鋸刃状等としてもよい。
このようにしてアシッドペースティング処理された顔料は、混合流体3aと共に流路L3の下流側端部に配置された容器3に収容される。容器3としては、ビーカーやフラスコ等を使用できる。
容器3に収容された混合流体3a中には、アシッドペースティング処理された電荷発生材料用顔料が析出している。この後、この混合物3aをろ過し、乾燥させることで、アシッドペースティング処理された顔料(電荷発生材料)が得られる。
アシッドペースティング処理された顔料は、その種類に応じて、そのまま電子写真感光体の電荷発生材料として使用してもよく、必要に応じて引き続き溶剤処理や粉砕処理等の別の処理を施してもよい。
例えば、アシッドペースティング処理後に得られたヒドロキシガリウムフタロシアニンについて、更に溶剤処理で結晶変換を行う場合、使用される溶剤としては、アミド類(N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等)、エステル類(酢酸エチル、酢酸n−ブチル、酢酸iso−アミル類)、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン、メチルiso−ブチルケトン)等を用いることができる。
このように本実施形態によれば、第1の流体1a及び第2の流体2aそれぞれをマイクロリアクター内で合流させて層流を生じさせることによって、顔料が第2の流体2a側から第1の流体1a側に拡散して再結晶する際の拡散条件(顔料の濃度、温度、比界面積等)の変動が十分に抑制される。そのため、顔料の結晶型や粒子径を精度よく且つ効率的に制御することができ、顔料に電荷発生材料としての十分な特性を安定的に付与することが可能となる。かかるアシッドペースティング処理方法は、電荷発生材料用顔料がヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料及びチタニルフタロシアニン顔料である場合に特に好適である。
例えば、上記アシッドペースティング処理方法でヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料を処理することでI型ヒドロキシガリウムフタロシアニンが得られる。なお、I型ヒドロキシガリウムフタロシアニンとは、CuKα特性X線に対するブラッグ角度(2θ±0.2°)の6.9°、13.2〜14.2°、16.5°及び26.4°に回折ピークを有するものである。
また、アシッドペースティング処理後のI型ヒドロキシガリウムフタロシアニンは、更に、溶剤と共に湿式処理することでV型ヒドロキシガリウムフタロシアニンに結晶変換することができる。なお、V型ヒドロキシガリウムフタロシアニンとは、CuKα特性X線に対するブラッグ角度(2θ±0.2°)の7.5°、9.9°、12.5°、16.3°、18.6°、25.1°及び28.3°に回折ピークを有するものである。
また、本発明のアシッドペースティング処理方法でチタニルフタロシアニン顔料を処理することでI型チタニルフタロシアニンが得られる。なお、I型チタニルフタロシアニンとは、CuKα特性X線に対するブラッグ角度(2θ±0.2°)の少なくとも9.5°、14.3°、18.0°、24.0°及び27.3°に回折ピークを示し、6.8°、7.5°、11.7°、及び28.6°に回折ピークを示さないものである。
(電子写真感光体)
本発明の電子写真感光体は、電荷発生材料として、本発明のアシッドペースティング処理方法により処理された電荷発生材料を用いたものである。
図3〜7は、本発明の電子写真感光体の好適な一実施形態を示す模式断面図であり、図3〜5に示す電子写真感光体20は、電荷発生材料を含有する層(電荷発生層25)と電荷輸送材料を含有する層(電荷輸送層26)とに機能が分離された感光層23を備えるものであり、図6〜7に示す電子写真感光体20は電荷発生物質と電荷輸送物質とを同一の層(単層型感光層28)に含有するものである。
図3に示す電子写真感光体20は、導電性基体21上に下引き層24、電荷発生層25、電荷輸送層26が順次積層された構造;図4に示す電子写真感光体20は、導電性基体21上に下引き層24、電荷発生層25、電荷輸送層26、保護層27が順次積層された構造;図5に示す電子写真感光体20は、導電性基体21上に下引き層24、電荷輸送層26、電荷発生層25、保護層27が順次積層された構造;をそれぞれ有している。
また、図6に示す電子写真感光体20は、導電性基体21上に下引き層24、単層型感光層28が順次積層された構造;図7に示す電子写真感光体20は、導電性基体21上に下引き層24、単層型感光層28、保護層27が順次積層された構造、をそれぞれ有している。
以下、電子写真感光体20の各要素について詳述する。
導電性基体21は、アルミニウム、ニッケル、クロム、ステンレス鋼などの金属;紙、プラスチック又はガラス上に、アルミニウム、銅、金、銀、白金、パラジウム、チタン、ニッケルークロム、ステンレス鋼、銅−インジウム等の金属や酸化インジウム・酸化錫などの導電性金属化合物を蒸着又はラミネートすることによって薄膜を設けたもの;紙、プラスチック又はガラス上に、カーボンブラック、酸化インジウム、酸化錫−酸化アンチモン粉、金属粉、沃化銅などを結着樹脂に分散して塗布することによって導電処理したもの、などが挙げられる。
また、本発明にかかる導電性基体21の形状としては特に制限はないが、ドラム状、シート状、プレート状などの形状を有するものが好適に使用される。さらに、本発明においては、導電性基体21の表面に必要に応じて鏡面切削、エッチング、陽極酸化、粗切削、センタレス研削、サンドブラスト、ウエットホーニングなどの表面処理を施してもよい。これらの表面処理により導電性基体21の表面を粗面化すると、レーザービームなどの可干渉光源を用いた場合に発生し得る電子写真感光体内での干渉光による木目状の濃度斑を防止することができる。
本発明の電子写真感光体は、図3〜7に示すように導電性基体21上に下引き層24を備えることが好ましい。
下引き層24の材料としては、有機金属化合物及びシランカップリング剤が挙げられ、結着樹脂を含んでいてもよい。
有機金属化合物としては、ジルコニウムキレート化合物、ジルコニウムアルコキシド化合物、ジルコニウムカップリング剤等の有機ジルコニウム化合物、チタンキレート化合物、チタンアルコキシド化合物、チタネートカップリング剤等の有機チタン化合物、アルミニウムキレート化合物、アルミニウムカップリング剤等の有機アルミニウム化合物、アンチモンアルコキシド化合物、ゲルマニウムアルコキシド化合物、インジウムアルコキシド化合物、インジウムキレート化合物、マンガンアルコキシド化合物、マンガンキレート化合物、スズアルコキシド化合物、スズキレート化合物、アルミニウムシリコンアルコキシド化合物、アルミニウムチタンアルコキシド化合物、アルミニウムジルコニウムアルコキシド化合物等が挙げられるが、これらの中でも、有機ジルコニウム化合物、有機チタニル化合物、有機アルミニウム化合物は残留電位が低く良好な電子写真特性を示すため好ましく使用される。
シランカップリング剤としては、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス2−メトキシエトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、γ−2−アミノエチルアミノプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプロプロピルトリメトキシシラン、γ−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、β−3,4−エポキシシクロヘキシルトリメトキシシラン等が挙げられる。
結着樹脂としては、従来より下引き層に用いられるポリビニルアルコール、ポリビニルメチルエーテル、ポリ−N−ビニルイミダゾール、ポリエチレノキシド、エチルセルロース、メチルセルロース、エチレン−アクリル酸共重合体、ポリアミド、ポリイミド、カゼイン、ゼラチン、ポリエチレン、ポリエステル、フェノール樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、エポキシ樹脂、ポリビニルピロリドン、ポリビニルピリジン、ポリウレタン、ポリグルタミン酸、ポリアクリル酸等を用いることもできる。上記の材料は1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
また、下引き層24は、上記の材料中に電子輸送性顔料を混合、分散したものであってもよい。電子輸送性顔料としては、ペリレン顔料、ビスベンズイミダゾールペリレン顔料、多環キノン顔料、インジゴ顔料、キナクリドン顔料等の有機顔料;シアノ基、ニトロ基、ニトロソ基、ハロゲン原子等の電子吸引性の置換基を有するビスアゾ顔料;フタロシアニン顔料等の有機顔料;酸化亜鉛、酸化チタン等の無機顔料、等が挙げられる。これらの電荷輸送性顔料の中でも、ペリレン顔料、ビスベンズイミダゾールペリレン顔料及び多環キノン顔料は高い電子移動性を有しているので好ましく使用される。これらの電子輸送性顔料の含有量は、下引き層24中の固形分全量を基準として、好ましくは95重量%以下であり、より好ましくは90重量%以下である。下引き層24中の電子輸送性顔料の含有量が前記上限値を超えると、下引き層24の強度が低下して塗膜欠陥が生じやすくなる傾向にある。
下引き層24は、上記材料を用いて下引き層形成用塗布液を調製し、その塗布液を用いて形成される。
なお、電荷輸送性顔料を下引き層24中に混合、分散させる方法としては、上記下引き層24の材料を含む下引き層形成用塗布液に電子輸送性顔料を分散させる方法;電子輸送性顔料を分散させた溶液に上記下引き層24の材料を添加し混合する方法;樹脂に電子輸送性顔料を分散させた液に上記下引き層24の材料を添加し混合する方法;樹脂溶液に上記下引き層24の材料を添加し混合した後電子輸送性顔料を分散させる方法;電子輸送性顔料に上記下引き層24の材料を添加し混合した後樹脂溶液に分散させる方法、等が挙げられるが、混合/分散液においてゲル化や凝集等の発生を抑制することが重要である。
また、電子輸送性顔料を混合、分散する際には、ボールミル、ロールミル、サンドミル、アトライター、超音波等を用いることができる。この混合/分散工程は有機溶剤中で行われる。有機溶剤としては、有期金属化合物や樹脂を溶解し、また、電子輸送性顔料を混合、分散したときにゲル化や凝集を起こさないものであれば特に制限されない。具体的には、メタノール、エタノール、n−プロパノール、n−ブタノール、ベンジルアルコール、メチルセルソルブ、エチルセルソルブ、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸メチル、酢酸n−ブチル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、メチレンクロライド、クロロホルム、クロルベンゼン、トルエン、又はこれらの2種以上の混合物が挙げられる。
このようにして調製された下引き層形成用塗布液を導電性基体21上に塗布し、溶剤を蒸発させた後、乾燥させることによって下引き層24を成膜することができる。下引き層形成用塗布液の塗布方法としては、ブレードコーティング法、マイヤーバーコーティング法、スプレーコーティング法、浸漬コーティング法、ビードコーティング法、エアーナイフコーティング法、カーテンコーティング法等が挙げられる。また、乾燥工程における温度は好ましくは80〜170℃である。
このようにして得られる下引き層24の厚みは、好ましくは0.1〜20μmであり、より好ましくは0.2〜10μmである。
また、このような導電性基体21上に下引き層24を設けると、下記(i)〜(vi)に示す効果が得られる。
(i)導電性基体から感光層への不必要なキャリアの注入が防止されて画質が向上する;
(ii)電子写真感光体の光減衰曲線の環境依存性(温度、湿度等)が低減して安定した画質が得られる;
(iii)適度な電荷輸送能により、長期にわたって繰り返し使用する場合にも電荷が蓄積されず、感度変動の発生が抑制される;
(iv)帯電電圧に対する適度な耐圧性により、絶縁破壊に起因する画像欠陥の発生が防止される;
(v)接着層として、感光層を基体に一体的に保持することができる;
(vi)基体の光反射が防止される。
電荷発生層25は、電荷発生材料、及び結着樹脂を含んで構成される。
電荷発生材料としては、上述した本発明のアシッドペースティング処理方法により処理された電荷発生材料を含有し、また、本発明のアシッドペースティング処理方法により処理されていない電荷発生材料を含んでもよい。
本発明のアシッドペースティング処理方法により処理されていない電荷発生材料としては、多環キノン顔料、ぺリレン系顔料、アゾ系顔料、インジゴ顔料、キナクリドン顔料、フタロシアニン顔料等の公知の有機系顔料が挙げられる。中でも、フタロシアニン顔料が好ましく、フタロシアニン顔料としては、無金属フタロシアニン顔料、チタニルフタロシアニン顔料、銅フタロシアニン顔料、クロロガリウムフタロシアニン顔料、ヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料、バナジルフタロシアニン顔料、クロロインジウムフタロシアニン顔料、ジクロロスズフタロシアニン顔料等が挙げられる。
結着樹脂としては、具体的には、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、フェノキシ樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリアクリルアミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリビニルピリジン樹脂、セルロース系樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、カゼイン、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、変性塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、塩化ビニリデン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−アルキッド樹脂、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂等が挙げられる。
また、ポリ−N−ビニルカルバゾール、ポリビニルアントラセン、ポリビニルピレン等の有機光導電性ポリマーを結着樹脂として用いることもできる。なお、電荷発生層25の成膜後に他の層(電荷輸送層26等)を更に積層する場合、電荷発生層25の上に積層される層の塗布液の溶剤に溶解する樹脂は好ましくない。
電荷発生層25における電荷発生材料と結着樹脂との配合比は、それぞれの種類に応じて適宜選択されるものであるが、重量比で40:1〜1:4であることが好ましく、20:1〜1:2であることがより好ましい。電荷発生材料の配合量が結着樹脂の配合量の40倍(重量換算値)を超えると、電荷発生層25の成膜に用いる電荷発生層形成用塗布液の安定性が不十分となる傾向にある。他方、電荷発生材料の配合量が結着樹脂の配合量の1/4倍(重量換算値)未満であると、電子写真感光体の感度が不十分となる傾向にある。
電荷発生層25は、電荷発生材料と結着樹脂とを所定の溶剤に分散させて得られる電荷発生層形成用塗布液を所定の層(導電性基体21、電荷輸送層26、下引き層24等)上に塗布し、乾燥させることによって好適に得ることができる。
ここで、電荷発生層25の形成に用いる有機溶剤としては、具体的には、メタノール、エタノール、n−プロパノール、n−ブタノール、ベンジルアルコール、メチルセルソルブ、エチルセルソルブ、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸メチル、酢酸n−ブチル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、メチレンクロライド、クロロホルム、クロルベンゼン、トルエン等が挙げられる。これらの有機溶剤は1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
また、これらの有機溶剤に電荷発生材料と結着樹脂とを分散させる方法としては、サンドミル、コロイドミル、アトライター、ボールミル、ダイノーミル、高圧ホモジナイザー、超音波分散機、コボールミル、ロールミル等が挙げられるが、この際、分散によって電荷発生材料の結晶型が変化しない条件で行なうことが好ましい。
また、上記の電荷発生層形成用塗布液を塗布する方法としては、サンドミル、コロイドミル、アトライター、ボールミル、ダイノーミル、高圧ホモジナイザー、超音波分散機、コボールミル、ロールミル等が挙げられる。
このようにして得られる電荷発生層25の膜厚は、好ましくは0.01〜5μm、より好ましくは0.03〜2μmである。電荷発生層25の膜厚が前記下限値未満であると成膜性が低下すると共に十分な機械的強度が得られにくくなる傾向にある。他方、電荷発生層25の膜厚が前記上限値を超えると電気特性上十分な光減衰が得られにくくなる傾向にある。
電荷輸送層26は、電荷輸送材料及び結着樹脂を含んで構成される。
電荷輸送材料としては、電荷を輸送する機能を有するものであれば特に制限されるものではないが、具体的には、p−ベンゾキノン、クロラニル、ブロマニル、アントラキノン等のキノン系化合物、テトラシアノキノジメタン系化合物、2,4,7−トリニトロフルオレノン等のフルオレノン化合物、キサントン系化合物、ベンゾフェノン系化合物、シアノビニル系化合物、エチレン系化合物等の電子輸送性化合物;トリアリールアミン系化合物、ベンジジン系化合物、アリールアルカン系化合物、アリール置換エチレン系化合物、スチルベン系化合物、アントラセン系化合物、ヒドラゾン系化合物等の正孔輸送性化合物、等が挙げられる。これらの電荷輸送材料は1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの電荷輸送材料の中でも、トリフェニルアミン系化合物及びベンジジン系化合物は、高い電荷(正孔)輸送能と優れた安定性とを有しているので特に好ましい。
また、電荷輸送材料として、ポリ−N−ビニルカルバゾール、ポリシラン等の電荷輸送性を有する高分子電荷輸送材料を用いることができる。特に、特開平8−176293号公報や特開平8−208820号公報に開示されているポリエステル系高分子電荷輸送材料は高い電荷輸送性を有しており、特に好ましいものである。なお、電荷輸送材料として高分子電荷輸送材料を用いる場合には結着樹脂を用いずとも電荷輸送層26の成膜が可能であるが、高分子電荷輸送材料と後述する結着樹脂との混合物を用いて成膜してもよい。
結着樹脂としては、具体的には、ポリカーボネート樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリエステル樹脂、スチレン−アクリロニトリル共重合体、ポリスルホン、ポリメタクリル酸エステル、スチレン−メタクリル酸エステル共重合体、ポリオレフィン等が挙げられる。これらの結着樹脂は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
電荷輸送層26は、電荷輸送材料及び結着樹脂を所定の溶剤に分散させて得られる電荷輸送層形成用塗布液を、所定の層(導電性基体21、下引き層24、電荷発生層25等)上に塗布し、乾燥させることによって得ることができる。ここで、電荷輸送層形成用塗布液中の電荷輸送材料と結着樹脂との配合比(重量比)は、5:1〜1:5であることが好ましく、3:1〜1:3であることがより好ましい。電荷輸送材料の配合量が、結着樹脂の配合量の5倍(重量換算値)を超えると、電荷輸送層26の機械的強度が低下する傾向にある。他方、電荷輸送材料の配合量が結着樹脂の配合量の1/5倍(重量換算値)未満であると、光感度が低下する傾向にある。
また、電荷輸送層形成用塗布液に用いる溶剤としては、ベンゼン、トルエン、キシレン、クロルベンゼン等の芳香族炭化水素類;アセトン、2−ブタノン等のケトン類;塩化メチレン、クロロホルム、塩化エチレン等のハロンゲン化脂肪族炭化水素類;テトラヒドロフラン、エチルエーテル等の環状もしくは直鎖状のエーテル類、等有機溶剤の1種を単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
さらに、電荷輸送層形成用塗布液の塗布方法としては、ブレードコーティング法、マイヤーバーコーティング法、スプレーコーティング法、浸漬コーティング法、ビードコーティング法、エアーナイフコーティング法、カーテンコーティング法等が挙げられる。
このようにして得られる電荷輸送層26の厚みは、好ましくは5〜50μm、より好ましくは10〜40μmである。
図6〜7に示す電子写真感光体の単層型感光層28は、前述の電荷発生材料、電荷輸送材料、及び結着樹脂を含んで構成される。電荷発生材料、電荷輸送材料及び結着樹脂としては、電荷発生層25及び電荷輸送層26の説明において例示された電荷発生材料、電荷輸送材料、結着樹脂が挙げられる。
単層型感光層28中における電荷発生材料と電荷輸送材料との配合比は、重量比で1:10〜10:1であることが好ましく、5:1〜1:20であることがより好ましく、また、電荷発生材料と結着樹脂との配合比は、重量比で5:1〜1:20であることが好ましい。
単層型感光層28の成膜工程においては、電荷発生層25や電荷輸送層26と同様にして感光層形成用塗布液を調製し、その塗布液を塗布し、乾燥させることによって単層型感光層28を形成することができる。
このようにして得られる単層型感光層28の膜厚は、5〜50μmであることが好ましく、10〜40μmであることがより好ましい。
本発明にかかる電子写真感光体においては、図4、5、7に示すように保護層27を設けることが好ましい。電子写真感光体が保護層27を備えている場合には、熱、電気、化学物質等に対する安定性と機械的強度との双方がより高められるとともに、水、放電生成物、トナー等による汚染防止効果がより向上する傾向にある。また、保護層27は電子写真感光体に安定性や機械的強度を付与したり汚染物質の表面への付着を防止したりする機能に加えて、電荷輸送層26としての機能をも有するので、この保護層27をそのまま積層型感光体の電荷輸送層26として用いることもできる。
保護層27の材料としては、上記下引き層24の説明において例示された有機金属化合物、シランカップリング剤、結着樹脂等、更に上記電荷輸送層26の説明において例示された電荷輸送材料が挙げられる。
保護層27は、上記の材料を所定の溶剤に分散させて得られる保護層形成用塗布液を、所定の層(電荷発生層25、電荷輸送層26等)上に塗布し、乾燥させることによって得ることができる。
ここで、保護層形成用塗布液に用いる溶剤及び塗布方法としては、それぞれ上記電荷輸送層26の説明において例示された溶剤及び塗布方法が挙げられる。
このようにして得られる保護層27の膜厚は、電子写真感光体の感光特性を損なわない限りにおいて特に制限されないが、例えば、電荷輸送層26上に保護層27を設ける場合、0.5〜20μmであることが好ましく、1〜10μmであることがより好ましい。
上述した電子写真感光体は、例えば、以下に説明する電子写真装置に使用される。
図8は、本発明の電子写真感光体が適用可能な電子写真装置の一例を示す概略構成図である。図8においては、本発明の電子写真感光体20が支持体31によって保持されており、電子写真感光体20は支持体31を中心として矢印の方向に所定の回転速度で回転可能となっている。
そして、電子写真感光体20の回転方向に沿って、帯電装置32、露光装置33、現像装置34、転写装置35、クリーニング装置37がこの順で配置されている。また、当該装置30は像定着装置36を備えており、被転写媒体39は転写装置35を経て像定着装置36へと搬送される。なお、回転過程において、電源(図示せず)から電圧の供給を受けた帯電装置32により、電子写真感光体20はその周面に正又は負の所定電位の均一帯電を受ける。
電子写真感光体20は、帯電装置32にて露光を受け、その外周面に露光像に対応した静電潜像が形成される。その後、現像装置34にて現像剤によりトナー像が形成され、転写装置35にてトナー像が被転写体39に転写される。トナー像が転写された後の被転写体39は像定着装置36にて像定着を受けて複写物としてプリントアウトされる。転写工程後の電子写真感光体20はクリーニング装置37にてその周面に残存したトナーの除去を受け、清浄面化されて繰り返し像形成に使用される。
帯電装置32としては、例えばローラー状、ブラシ状、フィルム状又はピン電極状の導電性又は半導電性の帯電部材を用いた接触型帯電器、コロナ放電を利用したスコロトロン帯電器やコロトロン帯電器等の非接触型帯電器等が挙げられる。
上記接触型帯電器としてローラー状帯電部材を備えるものを用いる場合、ローラー状帯電部材を電子写真感光体20に接触させることによって、駆動手段を設けることなくローラー状帯電部材を電子写真感光体と同じ周速度で回転させることができる。また、ローラー状帯電部材に所定の駆動手段を取り付け、電子写真感光体20の周速度と異なる周速度で回転させても良い。
ローラー状帯電部材の芯材としては、鉄、銅、真鍮、ステンレス、アルミニウム、ニッケル等の導電性を有する材料や、導電性粒子等を分散した樹脂成形品等を用いることができる。また、ローラー状帯電部材の弾性層の材料としては、EPDM、ポリブタジエン、天然ゴム、ポリイソブチレン、SBR、CR、NBR、シリコンゴム、ウレタンゴム、エピクロルヒドリンゴム、SBS、熱可塑性エラストマー、ノルボーネンゴム、フロロシリコーンゴム、エチレンオキシドゴム等のゴム材に、カーボンブラック、亜鉛、アルミニウム、銅、鉄、ニッケル、クロム、チタニウム等の金属、ZnO−Al2O3、SnO2−Sb2O3、In2O3−SnO2、ZnO−TiO2、MgO−Al2O3、FeO−TiO2、TiO2、SnO2、Sb2O3、In2O3、ZnO、MgO等の金属酸化物、等の導電性粒子あるいは半導電性粒子を分散した材料が好ましく用いられる。
さらに、ローラー状帯電部材の抵抗層及び保護層の材料としては、上記の導電性粒子あるいは半導電性粒子をアクリル樹脂、セルロース樹脂、ポリアミド樹脂、メトキシメチル化ナイロン、エトキシメチル化ナイロン、ポリウレタン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリビニル樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリチオフェン樹脂、PFA、FEP、PET等のポリオレフィン樹脂、スチレンブタジエン樹脂に分散し、その抵抗を制御したものが好ましく用いられる。
なお、抵抗層及び保護層の抵抗率は、好ましくは103〜1014Ωcm、より好ましくは106〜1012Ωcm、さらに好ましくは107〜1012Ωcmである。また、抵抗層及び保護層の膜厚はそれぞれ好ましくは0.01〜1000μm、より好ましくは0.1〜500μm、さらに好ましくは0.5〜100μmである。さらに、抵抗層及び保護層には、必要に応じてヒンダードフェノール、ヒンダードアミン等の酸化防止剤、クレー、カオリン等の充填剤や、シリコーンオイル等の潤滑剤を添加することができる。これらの層を形成する手段としてはブレードコーティング法、マイヤーバーコーティング法、スプレーコーティング法、浸漬コーティング法、ビードコーティング法、エアーナイフコーティング法、カーテンコーティング法等を用いることができる。
上記の接触型帯電器を用いて電子写真感光体を帯電させる場合、ローラー状帯電部材に電圧が印加されるが、印加電圧は直流電圧又は直流電圧に交流電圧を重畳したものが好ましい。電圧の範囲としては、直流電圧は要求される感光体帯電電位に応じて正又は負の50〜2000Vであることが好ましく、100〜1500Vであることがより好ましい。他方、直流電圧に交流電圧を重畳する場合は、ピーク間電圧が400〜1800Vであることが好ましく、800〜1600Vであることがより好ましく、1200〜1600Vであることがさらに好ましい。また、重畳する交流電圧の周波数は好ましくは50〜20000Hz、より好ましくは100〜5000Hzである。
また、露光装置33としては、電子写真感光体20表面に、半導体レーザー、LED(light emitting diode)、液晶シャッター等の光源を所望の像様に露光できる光学系装置等;現像装置34としては、一成分系、二成分系等の正規又は反転現像剤を用いた従来より公知の現像装置等;転写装置35としては、ベルト、ローラー、フィルム、ゴムブレード等を用いた接触型転写帯電器、コロナ放電を利用したスコロトロン転写帯電器やコロトロン転写帯電器等、が挙げられる。
なお、図8には示していないが、電子写真装置30は中間転写手段を備えるものであってもよい。中間転写手段としては、導電性支持体上にゴム、エラストマー、樹脂等を含む弾性層と少なくとも1層の被服層とが積層された構造を有するものを使用することができ、その材料としては使用される材料は、ポリウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリブタジエン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリエチレン系樹脂、フッ素樹脂等の樹脂に対して、導電性のカーボン粒子や金属粉等を分散混合させたもの等が挙げられる。また、中間転写手段の形状としては、ローラー状、ベルト状等が挙げられる。
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明を更に具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に何ら限定されるものではない。なお、以下の実施例において「部」は重量部を意味する。
(実施例1)
(I型ヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料の粗結晶)
3−ジイミノイソインドリン30部及び三塩化ガリウム9.1部をジメチルスルホキシド230部中にて、160℃で6時間攪拌しながら反応させ、赤紫色結晶を得た。次いで、ジメチルスルホキシドにより洗浄した後、イオン交換水で洗浄後乾燥して、I型クロロガリウムフタロシアニン顔料の粗結晶28部を得た。
(アシッドペースティング処理)
次に、図1に示した処理装置と同様の構成の処理装置を使用してアシッドペースティング処理を行った。
先ず、適当な容器に、25%アンモニア水600部とイオン交換水200部を混合し第1の溶液(流体)を作製した。次に、別の容器に、上記I型クロロガリウムフタロシアニン顔料の粗結晶10部を濃度97%の濃硫酸50部に溶解して、溶液の温度を50℃に保持したまま2時間撹拌し第2の溶液(流体)を作製した。
このようにして得られた第1及び第2の溶液をポンプを備えたマイクロシリンジにセットし、一定流量でマイクロリアクター(IMT社製:ICC−SY15)のインレット部に送液した。温度制御装置で10℃に設定されたマイクロリアクターにおいて顔料のアシッドペースティング処理を行い、再結晶化し析出したI型ヒドロキシガリウムフタロシアニンを含む第1及び第2の溶液の混合液を回収した。なお、マイクロリアクターにおける第1及び第2の流路の幅は、それぞれ100μmであり、それぞれの流路における流速は、1.5mm/sであった。
混合液をろ過し、さらにN,N−ジメチルホルムアミド及びイオン交換水で洗浄後乾燥して、アシッドペースティング処理物であるI型ヒドロキシガリウムフタロシアニン8部を得た。処理物であるI型ヒドロキシガリウムフタロシアニンの平均粒径をレーザ回折散乱式粒度分布測定装置(LA−700、堀場製作所製)を用いて測定した。また、BET式の比表面積測定装置(Flow SorbII2300、島津製作所社製)を用いて測定した。それぞれ、得られた結果を表1に示す。
更に、処理物であるI型ヒドロキシガリウムフタロシアニン結晶10重量部をジメチルホルムアミド110重量部、5mmφガラスビーズ250重量部と共に24時間ミリング処理(溶剤処理)し、結晶を分離した。その後、蒸留水900部で洗浄して、得られた湿ケーキを真空中、80℃で24時間乾燥し、電子写真感光体の電荷発生材料となるヒドロキシガリウムフタロシアニン結晶9.1重量部を得た。
(電子写真感光体)
得られた電子写真感光体の電荷発生材料となるヒドロキシガリウムフタロシアニン結晶を用いて、下記のようにして電子写真感光体を作製した。先ず、導電性基体として、40mmφ×319mmのアルミパイプを用意した。
次に、ポリビニルブチラール(商品名:エスレックBM−1、積水化学工業社製)8重量部をn−ブチルアルコール152重量部に加えて攪拌し、5重量%のポリビニルブチラール溶液を作製した。次に、トリブトキシジルコニウム・アセチルアセトネートの50%トルエン溶液(商品名:ZC540、松本交商社製)100重量部、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン(商品名:A1100、日本ユニカー社製)10重量部及びn−ブチルアルコール130重量部を混合した溶液を、上記ポリビニルブチラール溶液中に加えてスターラーで攪拌し、下引き層形成用塗布液を作製した。この塗布液を基体上に浸漬塗布し、150℃で10分間加熱乾燥して膜厚1.0μmの下引き層を形成した。
次に、ポリビニルブチラール(商品名:エスレックBM−S、積水化学工業社製)1重量部を予め酢酸n−ブチル49重量部に溶解した溶液に、上述したヒドロキシガリウムフタロシアニン結晶1重量部を加えて、ダイノミルで1.5時間の分散処理を行った。この分散液を酢酸n−ブチルで希釈し、固形分濃度3.0重量%の電荷発生層形成用塗布液を調製した。得られた塗布液を下引き層上にリング塗布機によって塗布し、100℃で10分間加熱乾燥して膜厚0.20μmの電荷発生層を形成した。また、分散処理後のヒドロキシガリウムフタロシアニン結晶の結晶型をX線回折によって調べ、分散前の結晶型と同一であり、変化のないことを確認した。
更に、N,N′−ビス−(p−トリル)−N,N′−ビス−(p−エチルフェニル)−3,3′−ジメチルベンジジン4部及びポリカーボネートZ樹脂6部をモノクロロベンゼン40部に溶解し、得られた電荷輸送層形成用塗布液を浸漬塗布装置によって電荷発生層上に塗布した。塗布後の感光体を、115℃で60分加熱乾燥して膜厚18μmの電荷輸送層を形成させて、実施例1の電子写真感光体を得た。
(電子写真装置)
得られた電子写真感光体を用い、図8に示す構成を有する電子写真装置(富士ゼロックス社製、商品名:DocuPrintC411)を作製し、以下の評価試験を行った。なお、帯電装置には、ローラー帯電器を用いた。
(帯電特性評価試験)
グリッド印加電圧−600Vで電子写真感光体を帯電させる工程(工程A)、その1秒後に780mmの半導体レーザを用いて7.0mJ/m2の光を照射して放電させる工程(工程B)、更に3秒後に50mJ/m2の赤色LED光を照射して除電させる工程(工程C)、といったプロセスにおいて、工程A〜Cでの電子写真感光体の帯電電位、並びに工程Aから1秒後の暗減衰(V0−V1)を測定した。得られた結果を表1に示す。
なお、表1中、「初期電位」の欄には、20℃、50%RH条件下で測定を行ったときの、1回目のプロセスでの工程A〜Cにおける帯電電位を示した。また、工程Aにおける電位の絶対値が大きいことは、電子写真感光体の受容電位が高くコントラストを高くできることを意味し;工程Bにおける電位の絶対値が小さいことは、電子写真感光体が高感度であることを意味し;工程Cにおける電位の絶対値が小さいことは、電子写真感光体の残留電位が少なく、画像メモリーやカブリが少ないことを意味する。
また、本実施例においては、初期電位(A)が590V以上であり、初期電位(B)が38V以下であり、初期電位(C)が10V以下であり、暗減衰が7V以下のものを実用的に十分なものと評価した。
(1万枚プリント試験)
30℃、85%RH条件下、10000枚プリント試験を行い、得られた画質における黒点の発生の有無を観察した。得られた結果を表1に示す。
(実施例2〜5)
実施例1と同様にして、I型ヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料の粗結晶を4例合成し、アシッドペースティング処理を施し、ミリング処理を施し、実施例2〜5のヒドロキシガリウムフタロシアニンを得た。実施例2〜5のアシッドペースティング処理後のI型ヒドロキシガリウムフタロシアニンの平均粒径、BET比表面積値を測定した。結果を表1に示す。
また、実施例1と同様にして、得られたヒドロキシガリウムフタロシアニンを用いて実施例2〜5の電子写真感光体を作製し、それを用いて実施例2〜5の電子写真装置を作製した。実施例2〜5の電子写真装置を用いて、実施例1と同様にして帯電特性評価試験及び1万枚プリント試験を行った。結果を表1に示す。
(比較例1)
実施例1と同様にしてI型ヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料の粗結晶を合成し、図9に示す従来の処理装置を使用してアシッドペースティング処理を行った。なお、図9に示す従来の処理装置100は、層流を生じさせることができない、乱流支配の装置である。
先ず、実施例1と同様に、第1の溶液101a及び第2の溶液102aを調製し、それぞれ攪拌槽101及び攪拌槽102に仕込んだ。
それぞれの溶液の温度を10℃に冷却した後、撹拌しながら高低差を利用して第2の溶液102aを少しずつ滴下し、アシッドペースティング処理を行った。攪拌槽101には冷却装置が備えられているが、槽内の顔料結晶が析出した溶液の温度は、アシッドペースティング処理開始直後と終了時で大きく変動し、終了時の温度は70℃を超えていた。
その後、実施例1と同様にして、図9に示す従来の処理装置を使用してアシッドペースティング処理を行なったI型ヒドロキシガリウムフタロシアニンをろ過して、洗浄した。その後、乾燥してI型ヒドロキシガリウムフタロシアニン8部を得た。アシッドペースティング処理後のI型ヒドロキシガリウムフタロシアニンの平均粒径及び及びBET比表面積値を測定した。結果を表1に示す。
また、実施例1と同様にして、処理後のI型ヒドロキシガリウムフタロシアニンを溶剤処理し、それを用いて比較例1の電子写真感光体を作製し、それを用いて比較例1の電子写真装置を作製した。比較例1の電子写真装置を用いて、実施例1と同様にして帯電特性評価試験及び1万枚プリント試験を行った。結果を表1に示す。
(比較例2〜4)
実施例1と同様にしてI型ヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料の粗結晶を合成し、図9に示す従来の処理装置を使用してI型ヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料の粗結晶にアシッドペースティング処理を施し、溶剤処理を施し、比較例2〜4のヒドロキシガリウムフタロシアニンを得た。比較例2〜4のアシッドペースティング処理後のヒドロキシガリウムフタロシアニンの平均粒径、BET比表面積値を測定した。結果を表1に示す。
また、実施例1と同様にして、得られたヒドロキシガリウムフタロシアニンを用いて比較例2〜4の電子写真感光体を作製し、それを用いて比較例2〜4の電子写真装置を作製した。比較例2〜4の電子写真装置を用いて、比較例1と同様にして帯電特性評価試験及び1万枚プリント試験を行った。結果を表1に示す。
(比較例5)
実施例1と同様にしてI型ヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料の粗結晶を合成し、図10に示す従来の処理装置200を使用してアシッドペースティング処理を行った。なお、図10に示す従来の装置200は、層流を生じさせることができない、乱流支配の装置である。
ここで、図10の処理装置200においては、第一の溶液201aが収容された貯槽201が定流量ポンプP201及びバルブV201を介して流路L201に接続されており、貯槽201中の第一の溶液201aをポンプP201によって流路L201に連続的に送液することが可能となっている。また、流路L201にはインジェクション部205が接続され、さらにインジェクション部205に接続された流路L201には第二の溶液202aが収容された貯槽202が定流量ポンプP202、濾過手段F202およびバルブV202を介して接続されており、貯槽202中の第二の溶液202aをポンプP202によってインジェクション部205に送液し、流路L201を流れてインジェクション部205に送液された第一の溶液201aに第二の溶液202aを注入することが可能となっている。さらに、インジェクション部205には流路L203が接続されており、インジェクション部205において混合された第一の溶液201aと第二の溶液202aとの混合物203aを、バルブV203を経て貯槽203に送液、収容することが可能となっている。
先ず、実施例1と同様に、第1の溶液201a及び第2の溶液202aを調製し、それぞれ貯層201及び貯槽202に仕込んだ。
それぞれの溶液の温度を10℃に冷却した後、第1の溶液201aを100ml/min、第2の溶液202aを10ml/minでそれぞれインジェクション部205に連続的に送液し、アシッドペーシング処理を行い、顔料を再結晶化させた。
その後、実施例1と同様にして、図10に示す従来の処理装置を使用してアシッドペースティング処理を行なったI型ヒドロキシガリウムフタロシアニンをろ過して、洗浄した。その後、乾燥してI型ヒドロキシガリウムフタロシアニン8部を得た。アシッドペースティング処理後のI型ヒドロキシガリウムフタロシアニンの平均粒径及び及びBET比表面積値を測定した。結果を表1に示す。
また、実施例1と同様にして、処理後のI型ヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料を溶剤処理し、それを用いて比較例5の電子写真感光体を作製し、それを用いて比較例5の電子写真装置を作製した。比較例5の電子写真装置を用いて、実施例1と同様にして帯電特性評価試験及び1万枚プリント試験を行った。結果を表1に示す。
(比較例6〜8)
実施例1と同様にしてI型ヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料の粗結晶を3例合成し、比較例5と同様にして図10に示す従来の処理装置を使用してアシッドペースティング処理を施し、ミリング処理を施し、比較例6〜8のI型ヒドロキシガリウムフタロシアニンを得た。比較例6〜8のアシッドペースティング処理後のI型ヒドロキシガリウムフタロシアニンの平均粒径、BET比表面積値を測定した。結果を表1に示す。
また、比較例5と同様にして、処理後のI型ヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料を溶剤処理し、それを用いて比較例6〜8の電子写真感光体を作製し、それを用いて比較例6〜8の電子写真装置を作製した。比較例6〜8の電子写真装置を用いて、比較例1と同様にして帯電特性評価試験及び1万枚プリント試験を行った。結果を表1に示す。
実施例1〜5で作製したI型ヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料は、平均粒径及びBET比表面積のばらつきが少なく、粒径が小さく比表面積の大きい安定した品質であった。他方、比較例1〜8で作製したI型ヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料は、平均粒径及びBET比表面積のばらつきが大きかった。
(実施例6〜10)
先ず、実施例1と同様にして、実施例6〜10のI型ヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料の粗結晶を得た。次に、実施例1のアシッドペースティング処理において、アンモニア水の使用量を300部とし、イオン交換水の使用量を150部として、第1の溶液を調製した。また、I型ヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料の粗結晶の使用量を5部とし、濃硫酸の使用量を95部として、第2の溶液を調製した。
このように調製した第1の溶液及び第2の溶液を用い、マイクロリアクターとして、IMT社製のICC−SY05を用いたこと以外は実施例1と同様にして、実施例6〜10のI型ヒドロキシガリウムフタロシアニンの粗結晶にアシッドペースティング処理を施した。このアシッドペースティング処理後の実施例6〜10のI型ヒドロキシガリウムフタロシアニンの平均粒径、及びBET比表面積値を測定した。得られた結果を、表2に示す。
更に、実施例1と同様にしてミリング処理(溶剤処理)を施し、実施例6〜10のV型ヒドロキシガリウムフタロシアニンを得た。
また、実施例1と同様にして、実施例6〜10のV型ヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料を用いて実施例6〜10の電子写真感光体を作製し、それを用いて実施例6〜10の電子写真装置を作製した。実施例6〜10の電子写真装置を用いて、実施例1と同様にして帯電特性評価試験及び1万枚プリント試験を行った。結果を表3に示す。
(比較例9〜12)
比較例1と同様にして、比較例9〜12のI型ヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料の粗結晶を合成し、図9に示す従来の処理装置を使用してアシッドペースティング処理を施した。比較例9〜12のアシッドペースティング処理後のI型ヒドロキシガリウムフタロシアニンの平均粒径、BET比表面積値を測定した。結果を表2に示す。さらに、比較例9〜12のアシッドペースティング処理後のI型ヒドロキシガリウムフタロシアニンに、ミリング処理(溶剤処理)を施し、比較例9〜12のV型ヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料を得た。
また、実施例1と同様にして、比較例9〜12のV型ヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料を用いて比較例9〜12の電子写真感光体を作製し、それを用いて比較例9〜12の電子写真装置を作製した。比較例9〜12の電子写真装置を用いて、実施例1と同様にして帯電特性評価試験及び1万枚プリント試験を行った。結果を表3に示す。
実施例6〜10で作製したI型ヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料は、平均粒径及びBET比表面積のばらつきが少なく、粒径が小さく比表面積の大きい安定した品質であった。他方、比較例9〜12で作製したI型ヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料は、従来の方法によりアシッドペースティング処理を施したことから、平均粒径及びBET比表面積のばらつきが大きかった。
(実施例11)
実施例1と同様にして、実施例11のヒドロキシガリウムフタロシアニンを得た。実施例11のアシッドペースティング処理後のヒドロキシガリウムフタロシアニンの平均粒径、BET比表面積値を測定した。結果を表4に示す。
なお、実施例11に用いたマイクロリアクターは、第1の流路が300μmであり、第2の流路が100μmであった。
また、実施例1と同様にして、実施例11のI型ヒドロキシガリウムフタロシアニンを用いて実施例11の電子写真感光体を作製し、それを用いて実施例11の電子写真装置を作製した。実施例11の電子写真装置を用いて、実施例1と同様にして、帯電特性評価試験及び1万枚プリント試験を行った。結果を表4に示す。
(実施例12)
実施例1と同様にして、実施例12のI型ヒドロキシガリウムフタロシアニンを得た。実施例12のアシッドペースティング処理後のI型ヒドロキシガリウムフタロシアニンの平均粒径、BET比表面積値を測定した。結果を表4に示す。
なお、実施例12に用いたマイクロリアクターにおいて、第1の流路の流速は15mm/sであり、第2の流路が1.5mm/sであった。
また、実施例1と同様にして、実施例12のI型ヒドロキシガリウムフタロシアニンを用いて実施例12の電子写真感光体を作製し、それを用いて実施例12の電子写真装置を作製した。実施例12の電子写真装置を用いて、実施例1と同様にして帯電特性評価試験及び1万枚プリント試験を行った。結果を表4に示す。
(実施例13)
先ず、1,3−ジイミノイソインドリン3部、チタニウムテトラブトキシド1.7部を1−クロルナフタレン20部中に入れ、190℃で5時間反応させた後、生成物を濾過し、アンモニア水、水、アセトンで洗浄し、チタニルフタロシアニン4.0部を得た。
次に、実施例1のアシッドペースティング処理において、ヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料の代わりに、上記チタニルフタロシアニン顔料を用い、その使用量を2部とし、濃硫酸の使用量を100部として、第2の溶液を調製した。このようにして作製した第2の溶液を用いこと以外は実施例1と同様にして、チタニルフタロシアニン顔料の粗結晶にアシッドペースティング処理を施した。このアシッドペースティング処理後のチタニルフタロシアニンの平均粒径、BET比表面積値を測定した。得られた結果を、表4に示す。
アシッドペースティング処理後のチタニルフタロシアニンを濾過し、希アンモニア水と水で洗浄した後、乾燥して、1.6部の非晶質チタニルフタロシアニンを得た。次に、このチタニルフタロシアニン粉末1.0部を、水10部及びモノクロルベンゼン1部の混合溶媒中で、50℃で1時間攪拌した後、濾過し、メタノールと水で洗浄して、実施例14のチタニルフタロシアニン結晶0.9部を得た。
また、実施例1と同様にして、実施例14のチタニルフタロシアニン顔料を用いて実施例14の電子写真感光体を作製し、それを用いて実施例14の電子写真装置を作製した。実施例14の電子写真装置を用いて、実施例1と同様にして帯電特性評価試験及び1万枚プリント試験を行った。結果を表4に示す。
(実施例14)
実施例13と同様にして、実施例14のチタニルフタロシアニン顔料を得た。アシッドペースティング処理後のチタニルフタロシアニンの平均粒径、BET比表面積値を測定した。結果を表4に示す。
なお、実施例14に用いたマイクロリアクターにおいて、第1の流路の流速は15mm/sであり、第2の流路が1.5mm/sであった。
また、実施例1と同様にして、処理後のチタニルフタロシアニンを用いて実施例14の電子写真感光体を作製し、それを用いて実施例14の電子写真装置を作製した。実施例14の電子写真装置を用いて、実施例1と同様にして帯電特性評価試験及び1万枚プリント試験を行った。結果を表4に示す。
(比較例13)
比較例1と同様にして、I型ヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料の粗結晶を合成し、図9に示す従来の処理装置を使用してアシッドペースティング処理を施し、ミリング処理を施し、比較例13のヒドロキシガリウムフタロシアニンを得た。アシッドペースティング処理後のヒドロキシガリウムフタロシアニンの平均粒径、BET比表面積値を測定した。結果を表4に示す。
また、比較例1と同様にして、得られたヒドロキシガリウムフタロシアニンを用いて比較例13の電子写真感光体を作製し、それを用いて比較例13の電子写真装置を作製した。比較例13の電子写真装置を用いて、比較例1と同様にして帯電特性評価試験及び1万枚プリント試験を行った。結果を表4に示す。
(比較例14)
比較例5と同様にして、I型ヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料の粗結晶を合成し、図10に示す従来の処理装置を使用してアシッドペースティング処理を施し、ミリング処理を施し、比較例14のヒドロキシガリウムフタロシアニンを得た。アシッドペースティング処理後のヒドロキシガリウムフタロシアニンの平均粒径、BET比表面積値を測定した。結果を表4に示す。
また、比較例5と同様にして、処理後のI型ヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料を用いて比較例14の電子写真感光体を作製し、それを用いて比較例14の電子写真装置を作製した。比較例14の電子写真装置を用いて、比較例1と同様にして帯電特性評価試験及び1万枚プリント試験を行った。結果を表4に示す。
(比較例15)
実施例13と同様にしてチタニルフタロシアニン顔料の粗結晶を合成し、比較例1と同様に図9に示す従来の処理装置を使用してアシッドペースティング処理を施し、ミリング処理を施し、比較例15のチタニルフタロシアニンを得た。アシッドペースティング処理後のチタニルフタロシアニンの平均粒径、BET比表面積値を測定した。結果を表4に示す。
また、実施例1と同様にして、得られたチタニルフタロシアニン顔料を用いて比較例15の電子写真感光体を作製し、それを用いて比較例15の電子写真装置を作製した。比較例15の電子写真装置を用いて、比較例1と同様にして帯電特性評価試験及び1万枚プリント試験を行った。結果を表4に示す。
(比較例16)
実施例13と同様にしてチタニルフタロシアニン顔料の粗結晶を合成し、比較例5と同様に図10に示す従来の処理装置を使用してアシッドペースティング処理を施し、ミリング処理を施し、比較例16のチタニルフタロシアニン顔料を得た。アシッドペースティング処理後のチタニルフタロシアニンの平均粒径、BET比表面積値を測定した。結果を表4に示す。
また、実施例1と同様にして、得られたチタニルフタロシアニン顔料を用いて比較例16の電子写真感光体を作製し、それを用いて比較例16の電子写真装置を作製した。比較例16の電子写真装置を用いて、比較例1と同様にして帯電特性評価試験及び1万枚プリント試験を行った。結果を表4に示す。