以下、場合により図面を参照しつつ、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図面中、同一又は相当部分には同一符号を付することとし、重複する説明は省略する。
(電荷発生材料の分散電荷発生材料の分散方法)
図1は本発明の電荷発生材料の分散方法に好適に使用される処理装置の一例を示す概略構成図である。本発明の電荷発生材料の分散方法に用いられる装置としては、例えば、マイクロリアクター又はマイクロミキサーが用いられる。
図1に示した電荷発生材料の分散装置10は、電荷発生材料及び第1の溶剤を含む電荷発生材料含有液1a(第1の流体)を通す第1の流路L1と、結着樹脂及び該結着樹脂を溶解する第2の溶剤を含む結着樹脂溶液2a(第2の流体)を通す流路L2と、流路L1、L2それぞれの終端部に連結されており、電荷発生材料含有液1aと結着樹脂溶液2aとを合流させて層流を生じさせる流路L3と、を備える。
流路L1の上流側端部には電荷発生材料含有液1aが収容されたマイクロシリンジ1が、流路L2の上流側端部には結着樹脂溶液2aが収容されたマイクロシリンジ2がそれぞれ連結されている。
電荷発生材料含有液1aは、前述の通り電荷発生材料を含む液体であり、電荷発生材料は該液中に分散していることが好ましい。電荷発生材料としては、クロロダイアンブルー等のアゾ顔料、臭素化アントアントロン、ピレンキノン等のキノン顔料、キノシアニン顔料、ペリレン顔料、インジゴ顔料、ビスベンゾイミダゾール顔料、ピロロピロール顔料、フタロシアニン顔料、アズレニウム塩、スクエアリウム、キナクリドン等が挙げられ、本発明では電荷発生材料として上記化合物の中でもフタロシアニン顔料を用いる。
上記顔料の中でもレーザー・プリンターやフルカラー複写機等のデジタル記録用感光体の電荷発生材料として感光波長領域が半導体レーザの近赤外領域まで長波長化したものが既に実用化されている、フタロシアニン顔料が好ましく、特に、ヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料が好ましい。
電荷発生材料を分散させる溶剤(第1の溶剤)としては、メタノール、エタノール、n−ブタノール、ベンジルアルコール、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸メチル、酢酸n−ブチル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、メチレンクロライド、クロロホルム、トルエン、キシレン、クロロベンゼン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、水などが挙げられ、これらのうちの1種を単独で用いてもよく、2種以上の混合物として用いもよい。
電荷発生材料含有液1aの固形分濃度は、0.1〜20質量%であることが好ましく、1〜15質量%であることがより好ましい。電荷発生材料含有液1aの固形分濃度が0.1質量%未満であると、電荷発生層としての塗膜接着性や密着性が低下する傾向があり、20質量%を超えると、光感度や繰り返し安定性などの電子写真特性が低下する傾向がある。
電荷発生材料含有液1aの粘度は0.1〜250mPa・sであることが好ましく、1.0〜200mPa・sであることがより好ましい。
マイクロリアクター又はマイクロミキサーへの送液に先立ち、電荷発生材料の分散状態を向上させるため、電荷発生材料含有液1aをあらかじめ分散処理することが好ましい。この場合の分散処理の方法としては、サンドミル、コロイドミル、アトライター、ボールミル、ダイノーミル、高圧ホモジナイザー、超音波分散機、コボールミル、ロールミル等を用いた方法が挙げられる。作業効率の向上及び不純物の混入を防止する観点から、分散メディアを使用せずに分散処理を行うことができる高圧ホモジナイザー、超音波分散機等を用いることがより好ましい。
一方、結着樹脂溶液2aは結着樹脂及び該結着樹脂を溶解する溶剤を含む。結着樹脂としては、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリスルホン、ポリエステル、ポリイミド、ポリエステルカーボネート、ポリビニルブチラール、メタクリル酸エステル重合体、酢酸ビニル単独重合体又は共重合体、セルロースエステル、セルロースエーテル、ポリブタジエン、ポリウレタン、フェノキシ樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、フッ素樹脂、またはこれらの部分架橋硬化物等が挙げられ、これらの結着樹脂のうちの1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
また、該結着樹脂を溶解する溶剤(第2の溶剤)としては、具体的には、メタノール、エタノール、n−プロパノール、n−ブタノール、ベンジルアルコール、メチルセルソルブ、エチルセルソルブ、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸メチル、酢酸n−ブチル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、メチレンクロライド、クロロホルム、クロルベンゼン、トルエン等が挙げられる。これらの有機溶剤は1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
結着樹脂溶液2aの固形分濃度は0.1〜10質量%であることが好ましく、1.0〜7.0質量%であることがより好ましい。結着樹脂溶液2aの固形分濃度が0.1質量%未満であると、分散液中で電荷発生材料が沈降しやすくなり、塗膜の接着性の低下等により均一な塗膜が得られなくなる傾向があり、10質量%を超えると、結着樹脂溶液の粘度が上昇して、マイクロリアクター又はマイクロミキサーの流路への導入が困難となる傾向がある。
結着樹脂溶液2aの粘度は1〜500mPa・sであることが好ましく、10〜300mPa・sであることがより好ましい。
マイクロシリンジ1内の電荷発生材料含有液1a及びマイクロシリンジ2内の結着樹脂溶液2aは、それぞれ送液ポンプP1、P2により流路L1、L2に押し出され、フィルターF1、F2を通ってマイクロリアクター5に送液され、流路L3において合流する。
マイクロリアクター5の流路(チャンネル)L1、L2、L3はマイクロスケールである。即ち、流路L1、L2、L3の幅は、5000μm以下であり、好ましくは10〜1000μmであり、より好ましくは30〜500μmである。
電荷発生材料含有液1aの送液速度は0.001〜200ml/hrであることが好ましく、0.01〜100ml/hrであることがより好ましい。また、結着樹脂溶液2aの送液速度は0.001〜500ml/hrであることが好ましく、0.01〜300ml/hrであることがより好ましい。電荷発生材料含有液1a及び結着樹脂溶液2aの送液速度は上記範囲であれば、同じ送液速度であっても、異なっていてもよい。
従って、マイクロリアクターでは、流体の流量及び流速のいずれも小さく、レイノルズ数は200以下となる。なお、流路L1、L2、L3は、マイクロリアクター5内において上記構成を有していればよく、マイクロリアクター5から露出した部分の構成は特に制限されない。
マイクロリアクター5の流路L1、L2、L3は、固体基板上に微細加工技術により作製される。基板に使用される材料は、ガラス、セラミックス、シリコーン等である。また、耐酸性及び耐アルカリ性であれば、プラスチック樹脂を用いることもできる。
流路L1、L2、L3を形成するための微細加工方法としては、例えば、X線を用いたLIGA技術を用いる方法、フォトリソグラフィー法によりレジスト部を構造体として使用する方法、レジスト開口部をエッチング処理する方法、マイクロ放電加工法、レーザ加工法、ダイヤモンドのような硬い材料で作られたマイクロ工具を用いる機械的マイクロ切削加工法がある。これらの技術は単独で用いてもよく、組み合わせて用いてもよい。
また、マイクロリアクター5を組み立てる際には、接合技術が用いられる。接合技術は、大きく固相接合と液相接合に分けられる。固相接合には、陽極接合、直接接合、拡散接合等がある。また、液相接合には、融接、接着剤等がある。
マイクロリアクター5は、ヒーター7が設置されており、温度度制御装置9により、その温度は調節されている。また、ヒータとしては、金属抵抗やポリシリコン等が用いられ、ヒーター7を装置内に作りこんでもよい。また、温度制御のために、装置全体を温度制御された容器中にいれてもよい。
マイクロリアクター5は、従来の処理装置のように乱流ではなく層流による反応を可能とするものである。層流による反応では、例えば、2液を混合する場合には2液の界面を通した拡散により混合することができる。また、マイクロスケールの空間では比界面積が大きいため、このような界面での拡散混合を行う場合に有利である。
図2はマイクロリアクター5内において電荷発生材料含有液1aと結着樹脂溶液2aとが合流するときの状態を概念的に示す説明図である。図示の通り、電荷発生材料含有液1aと結着樹脂溶液2aとを流路L3にて合流させると、電荷発生材料含有液1aを主成分とする領域C、結着樹脂溶液2aを主成分とする領域A、及びこれらの混合領域である領域Bからなる層流を生じる。その結果、電荷発生材料含有液1a中の電荷発生材料は、混合領域Bを介して領域Cから領域Aに徐々に拡散する。拡散した電荷発生材料は、電荷発生材料分散液3a中に分散した状態で流路L3を通って容器3に収容される。
また、マイクロリアクター5に供給される第1の電荷発生材料含有液1aの温度は、好ましくは50℃以下、より好ましくは20℃以下、さらに好ましくは10℃以下である。また、第2の結着樹脂溶液2aの温度は第1の電荷発生材料含有液1aと同様の温度とすることが好ましい。なお、温度は、溶液が凝固しない温度に調節される。また、溶液の温度制御は、容器1が備える温度制御装置(図示せず)により行なわれる。
マイクロリアクター5において、混合に要する時間は、界面の断面積と液層の厚さに依存する。拡散理論に従うと、混合時間tはt=W2/D(W:流路幅、D:拡散係数)となり、流路幅を小さくすればするほど拡散時間は速くなる。すなわち、流路幅が1/10になれば、混合時間は1/100になる。また、単位体積当たりの表面積が大きいために熱交換の効率が極めて高く、温度制御が容易にできる。
第3の流路L3の流路長は、電荷発生材料含有液1aと結着樹脂溶液2aとが第3の流路L3を通る間に十分に混合される時間が確保される長さであれば、特に限定されない。また、第3の流路L3は、層流を生じさせるための領域が確保できれば、後段(下流側)において、波形状、鋸刃状等としてもよい。
このようにして電荷発生材料の分散された電荷発生材料分散液3aは、流路L3の下流側端部に配置された容器3に収容される。容器3としては、ビーカーやフラスコ等を使用できる。
次に図3を参照しながらマイクロミキサーを備える分散装置について説明する。図3に示した分散装置15は、マイクロリアクター5の代わりにマイクロミキサー12を備えること以外は図1に示した分散装置10と同様な構成である。マイクロミキサーは複数の液体を拡散混合するための混合空間、及び、この混合空間に複数の種類の流体をそれぞれ送液するためのマイクロチャンネルと呼ばれる複数の微細な供給路を備えている。マイクロチャンネルにおける流体は、通常、レイノルズ数を10〜数100程度と極めて小さく設定され、マイクロリアクターと同様に流体の流れは層流である。複数のマイクロチャンネルからは極めて薄い薄片状の層流状態で混合空間へと複数の流体が送液されるので、混合空間内においてはそれぞれのマイクロチャンネルから送液された流体同士を拡散混合させることができる。マイクロチャンネルの流路は、その断面を円形に換算した場合の等価直径が1000μm以下であることが好ましく、10〜700μmであることがより好ましい。
マイクロミキサーとしては、例えば、特表平9−512742号公報、PCT国際公開WO4 00/76648号公報に開示されているものがある。本発明において使用されるマイクロミキサーの具体的な例としては、ドイツのマインツ・マイクロ技術研究所(IMM:Institut fuer Mikrotechnik Mainz GmbH)やカールスルーエ研究センター(Forschungszentrum Karlsruhe)など公知のものが挙げられるが、それらに何ら限定されるものではない。
マイクロミキサーの混合空間における電荷発生材料含有液1aと結着樹脂溶液2aとの拡散混合は、これらの流体が接触する界面において生じるため、微小空間内で拡散混合を行うと相対的に界面の面積が大きくなり、拡散効率が著しく向上する。また分子の拡散そのものも拡散時間は距離の二乗に比例する。このことは、スケールを小さくするに従って複数の流体を能動的に混合しなくても、分子の拡散によって混合が進み、十分に分散が起こり易くなることを意味している。また、微小空間においては、スケールが小さいために層流支配の流れとなり、流体同士が層流状態となって互いに拡散し混合される。複数の液体の混合にマイクロミキサーを用いた場合、前述のようなマイクロリアクターを用いた場合よりも比界面積をより大きくすることができる。
マイクロミキサーの流路を形成するための微細加工技術としては、マイクロリアクターと同様に、例えば、X線を用いたLIGA技術を用いる方法、フォトリソグラフィー法によりレジスト部を構造体として使用する方法、レジスト開口部をエッチング処理する方法、マイクロ放電加工法、レーザ加工法、ダイヤモンドのような硬い材料で作られたマイクロ工具を用いる機械的マイクロ切削加工法がある。これらの技術は単独で用いてもよく、組み合わせて用いてもよい。
また、マイクロミキサーを組み立てる際には、接合技術が用いられる。接合技術は、大きく固相接合と液相接合に分けられる。固相接合には、陽極接合、直接接合、拡散接合等がある。また、液相接合には、融接、接着剤等がある。
マイクロミキサーのマイクロチャンネルに流体を送液する流速制御方法としては、一般に、マイクロミキサー外部に用意したポンプなどで発生させる圧力によって液を送る方法と、電気浸透流を用いる方法とがある。流速制御方法として用いられる方法はその目的により適宜選ばれるが、連続流動方式の圧力駆動方式が好ましく採用される。またマイクロミキサーは、ヒーターが設置されていてもよく、温度度制御装置により、その温度を調節してもよい。また、ヒーターとしては、金属抵抗やポリシリコン等が用いられ、ヒーターを装置内に作りこんでもよい。また、温度制御のために、装置全体を温度制御された容器中にいれてもよい。
なお、得られる電荷発生材料分散液の電荷発生材料及び結着樹脂の配合比は、それぞれの種類に応じて適宜選択されるものであるが、質量比で40:1〜1:4であることが好ましく、20:1〜1:2であることがより好ましい。電荷発生材料の配合量が結着樹脂の配合量の40倍(質量換算値)を超えると、電荷発生層25の成膜に用いる電荷発生層形成用塗布液の安定性が不十分となる傾向にある。他方、電荷発生材料の配合量が結着樹脂の配合量の1/4倍(質量換算値)未満であると、電子写真感光体の感度が不十分となる傾向にある。
上記のようなマイクロリアクター又はマイクロミキサーを用いて電荷発生材料分散液を製造すれば、例えば、電荷発生材料を分散させる場として一定量の容積を有する容器を用いた従来のバッチ方式と比較し、流速、電荷発生材料の濃度分布、温度などの分散条件を高精度に制御することが可能となる。このため、マイクロミキサーを用いた分散処理によれば、複数の流体が混合空間内に殆ど滞留することなく連続的に流通するので、電荷発生材料の滞留を十分に防止することができ、電荷発生材料の凝集が十分に防止される。
また、マイクロリアクター又はマイクロミキサーを用いて電荷発生材料分散液を製造すれば、実験的な製造設備により製造された少量の化学物質を大規模の製造設備により多量に製造(スケールアップ)する際には、従来、実験的な製造設備に対し、バッチ方式による大規模の製造設備での再現性を得るために多大の労力及び時間を要していたが、必要となる製造量に応じてマイクロリアクター又はマイクロミキサーを用いた製造ラインを並列化(ナンバーリング・アップ)することにより、このような再現性を得るための労力及び時間を大幅に減少できる可能性がある。
また、電荷発生材料を分散させる処理装置は、得られた電荷発生材料分散液をマイクロリアクター(又はマイクロミキサー)に循環させる返送流路を備えていてもよい。得られた電荷発生材料分散液をマイクロリアクター(又はマイクロミキサー)に返送することによって、より十分な分散混合処理を行うことができる。これにより、電荷発生材料の凝集がさらに十分に防止され、粗大粒子の含有量がより低減化された電荷発生材料分散液を最終的に得ることができる。
上記のようなマイクロリアクター又はマイクロミキサーによって電荷発生材料の分散された電荷発生材料分散液は、その種類に応じて、そのまま電子写真感光体の電荷発生材料として使用してもよく、必要に応じて引き続き溶剤処理や粉砕処理等の別の処理を施してもよい。
例えば、電荷発生材料の分散後に得られたヒドロキシガリウムフタロシアニンについて、更に溶剤処理で結晶変換を行う場合、使用される溶剤としては、アミド類(N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等)、エステル類(酢酸エチル、酢酸n−ブチル、酢酸iso−アミル類)、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン、メチルiso−ブチルケトン)等を用いることができる。
このように電荷発生材料含有液と結着樹脂溶液とをマイクロリアクター又はマイクロミキサー内で合流させて層流を生じさせることによって、電荷発生材料が電荷発生材料含有液1a側から結着樹脂溶液2a側に拡散して分散する際の拡散条件(電荷発生材料濃度、流体の流速、温度など)の変動が十分に抑制される。そのため、有機顔料を十分に高度に分散させ、有機顔料が電荷発生材料としての特性を安定的に発揮することが可能である。かかる電荷発生材料の分散電荷発生材料の分散方法は、電荷発生材料がCuKα特性X線に対するブラッグ角度(2θ±0.2°)の7.5°、9.9°、12.5°、16.3°、18.6°、22.1°、24.1°、25.1°及び28.3°に回折ピークを有するヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料であることが好ましい。
ここで、本発明に用いる電荷発生材料の製造方法について上記のヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料の製造方法を例にとって説明する。
ヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料(粗結晶)は、例えば、o−フタロジニトリル又は1,3−ジイミノイソインドリンと、三塩化ガリウムとを所定の溶媒中で反応させる方法(I型クロロガリウムフタロシアニン法);o−フタロジニトリル、アルコキシガリウム及びエチレングリコールを所定の溶媒中で加熱し反応させてフタロシアニン二量体(フタロシアニン・ダイマー)を合成する方法(フタロシアニン・ダイマー法)により製造することができる。
上記の反応における溶媒としては、α−クロロナフタレン、β−クロロナフタレン、α−メチルナフタレン、メトキシナフタレン、ジメチルアミノエタノール、ジフェニルエタン、エチレングリコール、ジアルキルエーテル、キノリン、スルホラン、ジクロロベンゼン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ジメチルスルホアミド等の不活性且つ高沸点の溶媒を用いることが好ましい。
ヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料(粗結晶)を硫酸、トリフルオロ酢酸等の酸で溶解した後、アンモニア水、水酸化ナトリウム水溶液等のアルカリ性水溶液又は冷水中で再析出させてI型ヒドロキシガリウムフタロシアニンを製造する(アシッドペースティング処理)。
I型ヒドロキシガリウムフタロシアニンを溶剤処理することにより、この結晶を変換してヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料を製造する。
上記溶剤処理に用いられる有機溶剤としては、アミド類(N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等)、エステル類(酢酸エチル、酢酸n−ブチル、酢酸i−アミル等)、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等)、及びジメチルスルホキシド等が挙げられる。
このようにして製造されたヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料は、CuKα特性X線に対するブラッグ角度(2θ±0.2°)の7.5°、9.9°、12.5°、16.3°、18.6°、22.1°、24.1°、25.1°及び28.3°に回折ピークを有する。
電荷発生材料として上記の回折ピークを有するヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料を電子写真感光体として用いると、優れた光感度、繰り返し安定性及び環境安定性が得られるとともに、十分な帯電性及び暗減衰特性が得られ、画質欠陥を十分に防止し、より長期間にわたって安定した画像品質を得ることが可能となる。
上記ヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料の中でも、特に600〜900nmの波長域での分光吸収スペクトルの最大波長ピークが810〜839nmの波長域にあるヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料は、特に分散性が高く、該顔料粒子の凝集が発生しにくい。このようなヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料は、上記のアシッドペースティング処理によって得られたI型ヒドロキシガリウムフタロシアニンの結晶を変換することによって得られる。I型ヒドロキシガリウムフタロシアニンからヒドロキシガリウムフタロシアニンへの結晶変換の際に吸収波長測定することで結晶変換状態をモニターし、600〜900nmの波長領域での分光吸収スペクトルにおける吸収ピーク波長が810〜839nmの範囲内となるまで、ヒドロキシガリウムフタロシアニンへの結晶変換を継続すればよい。結晶変換のための時間をこのように決定することにより、ヒドロキシガリウムフタロシアニン粒子が均一に微粒子化した状態で結晶変換を完了することが可能であるため、複数ロットの繰り返し結晶変換を実施した場合においてもロット間の品質ばらつきを抑えることが可能となる。
I型ヒドロキシガリウムフタロシアニンからヒドロキシガリウムフタロシアニンへの結晶変換する方法としては、湿式粉砕処理が好ましい。
湿式粉砕処理に用いられる装置としては、振動ミル、自動乳鉢、サンドミル、ダイノーミル、コボールミル、アトライター、遊星ボールミル、ボールミルなどのメデイアを分散媒体として使用する装置を用いることができる。結晶変換の進行スピードは、湿式粉砕処理工程のスケール、攪拌スピード、メディア材質などによって大きく影響される。結晶変換の時間は上記の結晶変換状態のモニタリングにより決定されるが、一般的には湿式粉砕処理の処理時間は5〜500時間であり、7〜300時間であることが好ましい。湿式粉砕処理時間が5時間未満であると、結晶変換が完結せず、電子写真特性の低下、特に光感度が不足し、湿式粉砕処理時間が500時間を超えると、粉砕ストレスの影響により光感度が低下を生じるほか、生産性低下、メディアの摩滅粉が混入するなどの問題が生じる。
湿式粉砕処理に使用される溶剤としては、メタノール、エタノール、n−ブタノール、ベンジルアルコール、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸メチル、酢酸n−ブチル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、メチレンクロライド、クロロホルム、トルエン、キシレン、クロロベンゼン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、水などが挙げられ、これらのうちの1種を単独で用いてもよく、2種以上の混合物として用いてもよい。これらの溶剤の使用量はヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料1質量部に対して通常1〜200質量部であり、1〜100質量部であることが好ましい。
湿式粉砕処理において使用するメディアの形状は球形状であることが好ましい。メディアの粒径は、0.1〜3.0mmであることが好ましく、0.2〜2.5mmであることがより好ましい。メディアの粒径が0.1mm未満であると、メディアとヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料とを分離しにくくなる傾向があり、メディアの粒径が3.0mmを超えると、粉砕効率が低下するため粒子径が小さくならずに凝集体が生成し易くなる傾向がある。なお、メディアが球形状でなく、円柱状や不定形状等の場合、粉砕効率が低下するとともに、粉砕によってメディアが磨耗し易く、磨耗粉が不純物となりヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料の特性を劣化させ易くなる。
メディアの材質は、いかなるものでも使用できるが、顔料中に混入した場合にも画質欠陥を発生しにくいものが好ましく、ガラス、ジルコニア、アルミナ、メノーなどを好ましく使用できる。
メディアの使用量は、使用する装置によっても異なるが、I型ヒドロキシガリウムフタロシアニン1質量部に対して、通常、50質量部以上とするものであるが、好ましくは55〜100質量部である。また、メディアの粒径が小さくなると同じ質量でも装置内に占めるメディア密度が高まり、混合溶液の粘度が上昇して粉砕効率が変化するため、メディアの粒径を小さくするに従い、適宜メディア使用量と溶剤使用量をコントロールすることによって最適な混合比で湿式処理を行うことが望ましい。
また、湿式粉砕処理の温度は、0〜100℃であることが好ましく、5〜80℃であることがより好ましく、10〜50℃であることがさらに好ましい。湿式粉砕処理における温度が0℃未満であると、結晶転移の速度が遅くなり作業効率が低下し、100℃を超えると、ヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料の溶解性が高くなり結晶成長しやすく微粒化が困難となる。
湿式分散処理を行う容器はいかなる材質のものでも使用できるが、顔料中に混入した場合にも画質欠陥を発生しにくいものが好ましく、ガラス、ジルコニア、アルミナ、メノー、ポリプロピレン、テフロン、ポリフェニレンサルファイドなどを好ましく使用できる。また、鉄、ステンレスなどの金属容器の内面にガラス、ポリプロピレン、テフロン、ポリフェニレンサルファイドなどをライニングしてもよい。
(電子写真感光体)
本発明の電子写真感光体は、その感光層が本発明の電荷発生材料分散液の製造方法により得られる電荷発生材料分散液を用いて形成された機能層を含むものである。
図4〜8は、本発明の電子写真感光体の好適な一実施形態を示す模式断面図であり、図4〜6に示す電子写真感光体20は、電荷発生材料を含有する層(電荷発生層25)と電荷輸送材料を含有する層(電荷輸送層26)とに機能が分離された感光層23を備えるものであり、図7〜8に示す電子写真感光体20は電荷発生物質と電荷輸送物質とを同一の層(単層型感光層28)に含有するものである。
図4に示す電子写真感光体20は、導電性基体21上に下引き層24、電荷発生層25、電荷輸送層26が順次積層された構造;図5に示す電子写真感光体20は、導電性基体21上に下引き層24、電荷発生層25、電荷輸送層26、保護層27が順次積層された構造;図6に示す電子写真感光体20は、導電性基体21上に下引き層24、電荷輸送層26、電荷発生層25、保護層27が順次積層された構造;をそれぞれ有している。
また、図7に示す電子写真感光体20は、導電性基体21上に下引き層24、単層型感光層28が順次積層された構造;図8に示す電子写真感光体20は、導電性基体21上に下引き層24、単層型感光層28、保護層27が順次積層された構造、をそれぞれ有している。
以下、電子写真感光体20の各要素について詳述する。
導電性基体21は、アルミニウム、ニッケル、クロム、ステンレス鋼などの金属;紙、プラスチック又はガラス上に、アルミニウム、銅、金、銀、白金、パラジウム、チタン、ニッケルークロム、ステンレス鋼、銅−インジウム等の金属や酸化インジウム・酸化錫などの導電性金属化合物を蒸着又はラミネートすることによって薄膜を設けたもの;紙、プラスチック又はガラス上に、カーボンブラック、酸化インジウム、酸化錫−酸化アンチモン粉、金属粉、沃化銅などを結着樹脂に分散して塗布することによって導電処理したもの、などが挙げられる。
また、本発明にかかる導電性基体21の形状としては特に制限はないが、ドラム状、シート状、プレート状などの形状を有するものが好適に使用される。さらに、本発明においては、導電性基体21の表面に必要に応じて鏡面切削、エッチング、陽極酸化、粗切削、センタレス研削、サンドブラスト、ウエットホーニングなどの表面処理を施してもよい。これらの表面処理により導電性基体21の表面を粗面化すると、レーザービームなどの可干渉光源を用いた場合に発生し得る電子写真感光体内での干渉光による木目状の濃度斑を防止することができる。
本発明の電子写真感光体は、図4〜8に示すように導電性基体21上に下引き層24を備えることが好ましい。
下引き層24の材料としては、有機金属化合物及びシランカップリング剤が挙げられ、結着樹脂を含んでいてもよい。
有機金属化合物としては、ジルコニウムキレート化合物、ジルコニウムアルコキシド化合物、ジルコニウムカップリング剤等の有機ジルコニウム化合物、チタンキレート化合物、チタンアルコキシド化合物、チタネートカップリング剤等の有機チタン化合物、アルミニウムキレート化合物、アルミニウムカップリング剤等の有機アルミニウム化合物、アンチモンアルコキシド化合物、ゲルマニウムアルコキシド化合物、インジウムアルコキシド化合物、インジウムキレート化合物、マンガンアルコキシド化合物、マンガンキレート化合物、スズアルコキシド化合物、スズキレート化合物、アルミニウムシリコンアルコキシ
ド化合物、アルミニウムチタンアルコキシド化合物、アルミニウムジルコニウムアルコキシド化合物等が挙げられるが、これらの中でも、有機ジルコニウム化合物、有機チタニル化合物、有機アルミニウム化合物は残留電位が低く良好な電子写真特性を示すため好ましく使用される。
シランカップリング剤としては、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス2−メトキシエトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、γ−2−アミノエチルアミノプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプロプロピルトリメトキシシラン、γ−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、β−3,4−エポキシシクロヘキシルトリメトキシシラン等が挙げられる。
結着樹脂としては、従来より下引き層に用いられるポリビニルアルコール、ポリビニルメチルエーテル、ポリ−N−ビニルイミダゾール、ポリエチレノキシド、エチルセルロース、メチルセルロース、エチレン−アクリル酸共重合体、ポリアミド、ポリイミド、カゼイン、ゼラチン、ポリエチレン、ポリエステル、フェノール樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、エポキシ樹脂、ポリビニルピロリドン、ポリビニルピリジン、ポリウレタン、ポリグルタミン酸、ポリアクリル酸等を用いることもできる。上記の材料は1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
また、下引き層24は、上記の材料中に電子輸送性顔料を混合、分散したものであってもよい。電子輸送性顔料としては、ペリレン顔料、ビスベンズイミダゾールペリレン顔料、多環キノン顔料、インジゴ顔料、キナクリドン顔料等の有機顔料;シアノ基、ニトロ基、ニトロソ基、ハロゲン原子等の電子吸引性の置換基を有するビスアゾ顔料;フタロシアニン顔料等の有機顔料;酸化亜鉛、酸化チタン等の無機顔料、等が挙げられる。これらの電荷輸送性顔料の中でも、ペリレン顔料、ビスベンズイミダゾールペリレン顔料及び多環キノン顔料は高い電子移動性を有しているので好ましく使用される。これらの電子輸送性顔料の含有量は、下引き層24中の固形分全量を基準として、好ましくは95質量%以下であり、より好ましくは90質量%以下である。下引き層24中の電子輸送性顔料の含有量が前記上限値を超えると、下引き層24の強度が低下して塗膜欠陥が生じやすくなる傾向にある。
下引き層24は、上記材料を用いて下引き層形成用塗布液を調製し、その塗布液を用いて形成される。
なお、電荷輸送性顔料を下引き層24中に混合、分散させる方法としては、上記下引き層24の材料を含む下引き層形成用塗布液に電子輸送性顔料を分散させる方法;電子輸送性顔料を分散させた溶液に上記下引き層24の材料を添加し混合する方法;樹脂に電子輸送性顔料を分散させた液に上記下引き層24の材料を添加し混合する方法;樹脂溶液に上記下引き層24の材料を添加し混合した後電子輸送性顔料を分散させる方法;電子輸送性顔料に上記下引き層24の材料を添加し混合した後樹脂溶液に分散させる方法、等が挙げられるが、混合/分散液においてゲル化や凝集等の発生を抑制することが重要である。
また、電子輸送性顔料を混合、分散する際には、ボールミル、ロールミル、サンドミル、アトライター、超音波等を用いることができる。この混合/分散工程は有機溶剤中で行われる。有機溶剤としては、有期金属化合物や樹脂を溶解し、また、電子輸送性顔料を混合、分散したときにゲル化や凝集を起こさないものであれば特に制限されない。具体的には、メタノール、エタノール、n−プロパノール、n−ブタノール、ベンジルアルコール、メチルセルソルブ、エチルセルソルブ、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサ
ノン、酢酸メチル、酢酸n−ブチル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、メチレンクロライド、クロロホルム、クロルベンゼン、トルエン、又はこれらの2種以上の混合物が挙げられる。
このようにして調製された下引き層形成用塗布液を導電性基体21上に塗布し、溶剤を蒸発させた後、乾燥させることによって下引き層24を成膜することができる。下引き層形成用塗布液の塗布方法としては、ブレードコーティング法、マイヤーバーコーティング法、スプレーコーティング法、浸漬コーティング法、ビードコーティング法、エアーナイフコーティング法、カーテンコーティング法等が挙げられる。また、乾燥工程における温度は好ましくは80〜170℃である。
このようにして得られる下引き層24の厚みは、好ましくは0.1〜20μmであり、より好ましくは0.2〜10μmである。
また、このような導電性基体21上に下引き層24を設けると、下記(i)〜(vi)に示す効果が得られる。
(i)導電性基体から感光層への不必要なキャリアの注入が防止されて画質が向上する;(ii)電子写真感光体の光減衰曲線の環境依存性(温度、湿度等)が低減して安定した画質が得られる;
(iii)適度な電荷輸送能により、長期にわたって繰り返し使用する場合にも電荷が蓄積されず、感度変動の発生が抑制される;
(iv)帯電電圧に対する適度な耐圧性により、絶縁破壊に起因する画像欠陥の発生が防止される;
(v)接着層として、感光層を基体に一体的に保持することができる;
(vi)基体の光反射が防止される。
電荷発生層25は、本発明の電荷発生材料分散液を塗布乾燥することによって形成される。
電荷発生材料としては、上述した本発明の電荷発生材料の分散電荷発生材料の分散方法により処理された電荷発生材料を含有し、また、本発明の電荷発生材料の分散電荷発生材料の分散方法により処理されていない電荷発生材料を含んでもよい。
本発明の電荷発生材料の分散電荷発生材料の分散方法により処理されていない電荷発生材料としては、多環キノン顔料、ぺリレン系顔料、アゾ系顔料、インジゴ顔料、キナクリドン顔料、フタロシアニン顔料等の公知の有機系顔料が挙げられる。中でも、フタロシアニン顔料が好ましく、フタロシアニン顔料としては、無金属フタロシアニン顔料、チタニルフタロシアニン顔料、銅フタロシアニン顔料、クロロガリウムフタロシアニン顔料、ヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料、バナジルフタロシアニン顔料、クロロインジウムフタロシアニン顔料、ジクロロスズフタロシアニン顔料等が挙げられる。
結着樹脂としては、具体的には、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、フェノキシ樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリアクリルアミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリビニルピリジン樹脂、セルロース系樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、カゼイン、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、変性塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、塩化ビニリデン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−アルキッド樹脂、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂等が挙げられる。
また、ポリ−N−ビニルカルバゾール、ポリビニルアントラセン、ポリビニルピレン等の有機光導電性ポリマーを結着樹脂として用いることもできる。なお、電荷発生層25の成膜後に他の層(電荷輸送層26等)を更に積層する場合、電荷発生層25の上に積層される層の塗布液の溶剤に溶解する樹脂は好ましくない。
電荷発生層25における電荷発生材料と結着樹脂との配合比は、それぞれの種類に応じて適宜選択されるものであるが、質量比で40:1〜1:4であることが好ましく、20:1〜1:2であることがより好ましい。電荷発生材料の配合量が結着樹脂の配合量の40倍(質量換算値)を超えると、電荷発生層25の成膜に用いる電荷発生層形成用塗布液の安定性が不十分となる傾向にある。他方、電荷発生材料の配合量が結着樹脂の配合量の1/4倍(質量換算値)未満であると、電子写真感光体の感度が不十分となる傾向にある。
電荷発生層25は、電荷発生材料と結着樹脂とを所定の溶剤に分散させて得られる電荷発生層形成用塗布液を所定の層(導電性基体21、電荷輸送層26、下引き層24等)上に塗布し、乾燥させることによって好適に得ることができる。
ここで、電荷発生層25の形成に用いる有機溶剤としては、具体的には、メタノール、エタノール、n−プロパノール、n−ブタノール、ベンジルアルコール、メチルセルソルブ、エチルセルソルブ、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸メチル、酢酸n−ブチル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、メチレンクロライド、クロロホルム、クロルベンゼン、トルエン等が挙げられる。これらの有機溶剤は1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
また、これらの有機溶剤に電荷発生材料と結着樹脂とを分散させる方法としては、サンドミル、コロイドミル、アトライター、ボールミル、ダイノーミル、高圧ホモジナイザー、超音波分散機、コボールミル、ロールミル等が挙げられるが、この際、分散によって電荷発生材料の結晶型が変化しない条件で行なうことが好ましい。
また、上記の電荷発生材料分散液を塗布する方法としては、ブレードコーティング法、ワイヤーバーコーティング法、スプレーコーティング法、浸漬コーティング法、ビードコーティング法、エアーナイフコーティング法、カーテンコーティング法等の通常の方法を用いることができる。
このようにして得られる電荷発生層25の膜厚は、好ましくは0.01〜5μm、より好ましくは0.03〜2μmである。電荷発生層25の膜厚が前記下限値未満であると成膜性が低下すると共に十分な機械的強度が得られにくくなる傾向にある。他方、電荷発生層25の膜厚が前記上限値を超えると電気特性上十分な光減衰が得られにくくなる傾向にある。
電荷輸送層26は、電荷輸送材料及び結着樹脂を含んで構成される。
電荷輸送材料としては、電荷を輸送する機能を有するものであれば特に制限されるものではないが、具体的には、p−ベンゾキノン、クロラニル、ブロマニル、アントラキノン等のキノン系化合物、テトラシアノキノジメタン系化合物、2,4,7−トリニトロフルオレノン等のフルオレノン化合物、キサントン系化合物、ベンゾフェノン系化合物、シアノビニル系化合物、エチレン系化合物等の電子輸送性化合物;トリアリールアミン系化合物、ベンジジン系化合物、アリールアルカン系化合物、アリール置換エチレン系化合物、スチルベン系化合物、アントラセン系化合物、ヒドラゾン系化合物等の正孔輸送性化合物、等が挙げられる。これらの電荷輸送材料は1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの電荷輸送材料の中でも、トリフェニルアミン系化合物及
びベンジジン系化合物は、高い電荷(正孔)輸送能と優れた安定性とを有しているので特に好ましい。
また、電荷輸送材料として、ポリ−N−ビニルカルバゾール、ポリシラン等の電荷輸送性を有する高分子電荷輸送材料を用いることができる。特に、特開平8−176293号公報や特開平8−208820号公報に開示されているポリエステル系高分子電荷輸送材料は高い電荷輸送性を有しており、特に好ましいものである。なお、電荷輸送材料として高分子電荷輸送材料を用いる場合には結着樹脂を用いずとも電荷輸送層26の成膜が可能であるが、高分子電荷輸送材料と後述する結着樹脂との混合物を用いて成膜してもよい。
結着樹脂としては、具体的には、ポリカーボネート樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリエステル樹脂、スチレン−アクリロニトリル共重合体、ポリスルホン、ポリメタクリル酸エステル、スチレン−メタクリル酸エステル共重合体、ポリオレフィン等が挙げられる。これらの結着樹脂は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
電荷輸送層26は、電荷輸送材料及び結着樹脂を所定の溶剤に分散させて得られる電荷輸送層形成用塗布液を、所定の層(導電性基体21、下引き層24、電荷発生層25等)上に塗布し、乾燥させることによって得ることができる。ここで、電荷輸送層形成用塗布液中の電荷輸送材料と結着樹脂との配合比(質量比)は、5:1〜1:5であることが好ましく、3:1〜1:3であることがより好ましい。電荷輸送材料の配合量が、結着樹脂の配合量の5倍(質量換算値)を超えると、電荷輸送層26の機械的強度が低下する傾向にある。他方、電荷輸送材料の配合量が結着樹脂の配合量の1/5倍(質量換算値)未満であると、光感度が低下する傾向にある。
また、電荷輸送層形成用塗布液に用いる溶剤としては、ベンゼン、トルエン、キシレン、クロルベンゼン等の芳香族炭化水素類;アセトン、2−ブタノン等のケトン類;塩化メチレン、クロロホルム、塩化エチレン等のハロンゲン化脂肪族炭化水素類;テトラヒドロフラン、エチルエーテル等の環状もしくは直鎖状のエーテル類、等有機溶剤の1種を単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
さらに、電荷輸送層形成用塗布液の塗布方法としては、ブレードコーティング法、マイヤーバーコーティング法、スプレーコーティング法、浸漬コーティング法、ビードコーティング法、エアーナイフコーティング法、カーテンコーティング法等が挙げられる。
このようにして得られる電荷輸送層26の厚みは、好ましくは5〜50μm、より好ましくは10〜40μmである。
図7〜8に示す電子写真感光体の単層型感光層28は、前述の電荷発生材料、電荷輸送材料、及び結着樹脂を含んで構成される。電荷発生材料、電荷輸送材料及び結着樹脂としては、電荷発生層25及び電荷輸送層26の説明において例示された電荷発生材料、電荷輸送材料、結着樹脂が挙げられる。
単層型感光層28中における電荷発生材料と電荷輸送材料との配合比は、質量比で1:10〜10:1であることが好ましく、5:1〜1:20であることがより好ましく、また、電荷発生材料と結着樹脂との配合比は、質量比で5:1〜1:20であることが好ましい。
単層型感光層28の成膜工程においては、電荷発生層25や電荷輸送層26と同様にして感光層形成用塗布液を調製し、その塗布液を塗布し、乾燥させることによって単層型感
光層28を形成することができる。
このようにして得られる単層型感光層28の膜厚は、5〜50μmであることが好ましく、10〜40μmであることがより好ましい。
本発明にかかる電子写真感光体においては、図5、6、8に示すように保護層27を設けることが好ましい。電子写真感光体が保護層27を備えている場合には、熱、電気、化学物質等に対する安定性と機械的強度との双方がより高められるとともに、水、放電生成物、トナー等による汚染防止効果がより向上する傾向にある。また、保護層27は電子写真感光体に安定性や機械的強度を付与したり汚染物質の表面への付着を防止したりする機能に加えて、電荷輸送層26としての機能をも有するので、この保護層27をそのまま積層型感光体の電荷輸送層26として用いることもできる。
保護層27の材料としては、上記下引き層24の説明において例示された有機金属化合物、シランカップリング剤、結着樹脂等、更に上記電荷輸送層26の説明において例示された電荷輸送材料が挙げられる。
保護層27は、上記の材料を所定の溶剤に分散させて得られる保護層形成用塗布液を、所定の層(電荷発生層25、電荷輸送層26等)上に塗布し、乾燥させることによって得ることができる。
ここで、保護層形成用塗布液に用いる溶剤及び塗布方法としては、それぞれ上記電荷輸送層26の説明において例示された溶剤及び塗布方法が挙げられる。
このようにして得られる保護層27の膜厚は、電子写真感光体の感光特性を損なわない限りにおいて特に制限されないが、例えば、電荷輸送層26上に保護層27を設ける場合、0.5〜20μmであることが好ましく、1〜10μmであることがより好ましい。
以上説明した本発明の電子写真感光体は、近赤外光もしくは可視光に発光するレーザービームプリンター、デジタル複写機、LEDプリンター、レーザーファクシミリなどの電子写真装置や、このような電子写真装置に備えられるプロセスカートリッジに搭載することができる。また本発明の電子写真感光体は一成分系、二成分系の正規現像剤あるいは反転現像剤とも合わせて用いることができる。また本発明の電子写真感光体は帯電ローラー
や帯電ブラシを用いた接触帯電方式の電子写真装置に搭載されて、電流リークの発生が少ない良好な特性が得られる。
(電子写真装置及びプロセスカートリッジ) 図9及び図10は、それぞれ本発明の電子写真装置の好適な一実施施形態の基本構成を概略的に示す断面図である。
図9に示す電子写真装置200は、本発明の電子写真感光体20と、電子写感光体20をコロナ放電方式により帯電させる帯電手段32と、帯電手段32に接続された電源33と、帯電手段32により帯電される電子写真感光体20を露光して静電潜像を形成する露光手段34と、露光手段34により形成された静電潜像をトナーにより現像してトナー像を形成する現像手段35と、現像手段35により形成されたトナー像を被転写体40に転写する転写手段36と、クリーニング手段37と、除電器38と、定着装置39とを備える。
また、図10に示す電子写真装置210は、本発明の電子写真感光体20を接触方式により帯電させる帯電手段32を備えていること以外は、図9に示した電子写真装置200と同様の構成を有する。特に、直流電圧に交流電圧を重畳した接触式の帯電手段を採用する電子写真装置においては、優れた耐摩耗性を有するため、好ましく使用できる。なお、この場合には、除電器38が設けられていないものもある。
ここで、帯電手段32としては、例えばローラー状、ブラシ状、フィルム状又はピン電極状の導電性又は半導電性の帯電部材を用いた接触型帯電器、コロナ放電を利用したスコロトロン帯電器やコロトロン帯電器などの非接触型帯電器などが用いられる。
露光手段34としては、前記電子写真感光体表面に、半導体レーザ、LED(light emitting diode)、液晶シャッターなどの光源を所望の像様に露光できる光学系装置などが用いられる。
現像手段35としては、一成分系、二成分系などの正規又は反転現像剤を用いた従来公知の現像手段などが用いられる。
転写手段36としては、ベルト、ローラー、フィルム、ゴムブレード等を用いた接触型転写帯電器、コロナ放電を利用したスコロトロン転写帯電器やコロトロン転写帯電器などが用いられる。
なお、図9及び10には示していないが、本発明の電子写真装置は中間転写手段を備えるものであってもよい。本発明にかかる中間転写手段としては、導電性支持体上にゴム、エラストマー、樹脂などを含む弾性層と少なくとも1層の被服層とが積層された構造を有するものを使用することができ、その材料としては使用される材料は、ポリウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリブタジエン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリエチレン系樹脂、フッ素樹脂等の樹脂に対して、導電性のカーボン粒子や金属粉等を分散混合させたもの等が挙げられる。また、前記中間転写手段の形状としては、ローラー状、ベルト状などが挙げられる。
図11は、本発明のプロセスカートリッジの好適な一実施形態の基本構成を概略的に示す断面図である。プロセスカートリッジ300は、本発明の電子写真感光体20とともに、帯電手段32、現像手段35、クリーニング手段37、露光のための開口部42、及び除電器38を、取り付けレール44を用いて組み合わせて一体化したものである。そして、このプロセスカートリッジ300は、転写手段36と、定着装置39と、図示しない他の構成部分とからなる電子写真装置本体に対して着脱自在としたものであり、電子写真装置本体とともに電子写真装置を構成するものである。
以上説明した本発明の電子写真装置及びプロセスカートリッジにおいては、本発明に係る電荷発生材料分散液を用いて電荷発生材料が形成された電子写真感光体を備えているため、画質欠陥を生じることなく長期間にわたって安定した画像品質を得ることできる。
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明を更に具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に何ら限定されるものではない。なお、以下の実施例において「部」は質量部を意味する。
(合成例1)
〔I型ヒドロキシガリウムフタロシアニンの合成〕
1,3−ジイミノイソインドリン30部及び三塩化ガリウム9.1部をジメチルスルホキシド230部中にて、160℃で6時間攪拌しながら反応させ、赤紫色結晶を得た。次いで、ジメチルスルホキシドにより洗浄した後、イオン交換水で洗浄後乾燥して、I型クロロガリウムフタロシアニン顔料の粗結晶28部を得た。
〔アシッドペースティング処理〕
次に、得られたI型クロロガリウムフタロシアニンの粗結晶10部を60℃の硫酸(濃度97%)300部に十分に溶解させ、これを25%アンモニア水600部とイオン交換水200部との混合溶液中に滴下した。析出した結晶を濾過により採取し、さらにイオン交換水で洗浄後乾燥して、I型ヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料8部を得た。
このようにして得られたI型ヒドロキシガリウムフタロシアニンについて、X線回折スペクトルの測定を行った。その結果を図12に示す。なお、本実施例におけるX線回折スペクトルの測定は、粉末法によりCuKα特性X線を用いて、以下の条件で行った。
使用測定器:理学電機社製X線回折装置Miniflex
X線管球:Cu
管電流:15mA
スキャン速度:5.0deg./min
サンプリング間隔:0.02deg.
スタート角度(2θ):5deg.
ストップ角度(2θ):35deg.
ステップ角度(2θ):0.02deg.
〔ヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料の合成〕
アシッドペースティング処理により得られたI型ヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料6部を、N,N−ジメチルホルムアミド90部及び外径0.9mmのガラス製球形状メディア350部とともに、ガラス製ボールミルを使用して25℃で144時間湿式粉砕処理した。このとき、結晶変換の進行度合いを湿式粉砕処理液の吸収波長測定によりモニターし、湿式粉砕処理後のヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料の600〜900nmの波長域での分光吸収スペクトルにおける最大ピーク波長(λMAX)が823nmであることを確認した。
次いで、得られたヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料をアセトンを用いて洗浄後乾燥し、CuKα特性X線を用いたX線回折スペクトルにおいて、ブラッグ角度(2θ±0.2°)7.5°、9.9°、12.5°、16.3°、18.6°、22.1、24.1°、25.1°及び28.3°に回折ピークを有するヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料5.5部を得た。得られたヒドロキシガリウムフタロシアニンのX線回折スペクトルを図13に、分光吸収スペクトルを図14に、それぞれ示す。
なお、分光吸収スペクトルの測定は、日立製作所社製のU−2000型分光光度計を用い、測定液は、室温で酢酸n−ブチル8mLにヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料0.6gを分散させて調製した。
(実施例1)
〔電荷発生材料含有液及び結着樹脂溶液の調製〕
合成例1で得られた電荷発生材料である、ヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料(以下、場合により単に「顔料」という)1部を酢酸nブチル50部に混合した。混合にはホモミキサー(エースホモジナイザー、日本精機社製)を使用し、毎分15000回転で2分間撹拌することによって、マイクロリアクターへの送液に先立ち、顔料の分散状態を向上させた。このようにして固形分濃度が1.96質量%である電荷発生材料分散液(第1の流体)を調製した。
一方、塩化ビニル酢酸ビニル共重合樹脂であるVMCH(商品名、日本ユニカー社製)1部を酢酸n−ブチル50部に溶解させた固形分濃度が1.96質量%である結着樹脂溶液(第2の流体)を調製した。
〔電荷発生材料分散液の調製〕
次に、図1に示した処理装置と同様の構成の処理装置を使用して顔料の分散を行った。
上記のようにして調製した電荷発生材料含有液及び結着樹脂溶液を各々ポンプを備えた2つのマイクロシリンジにそれぞれにセットし、一定流量でマイクロリアクター(IMT社製:ICC−SY15)のインレット部に送液した。温度制御装置で20℃に設定されたマイクロリアクターにおいて電荷発生材料の分散を行い、電荷発生材料が分散した電荷発生材料分散液を回収した。なお、マイクロリアクターにおける第1、第2及び第3の流路の幅はそれぞれ300μm、深さは50μmとし、第3の流路の長さは10cmとした。電荷発生材料含有液及び結着樹脂溶液の両方の流量(送液速度)を2.0ml/hrに設定して送液した。このときの電荷発生材料含有液又は結着樹脂溶液の漏洩や顔料の損失は全くなかった。
このようにして得られた電荷発生材料分散液中のヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料の平均粒径をレーザ回折散乱式粒度分布測定装置(LA700、堀場製作所製)を使用して測定した。また、粒度分布は一般的指標であるGSD(測定される粒度分布を分割された粒度範囲(チャネル)に対して、小粒子径から累積分布を描き、体積累積16%となる粒径を体積D16、体積累積84%となる粒径を体積D84とし、D84/D16より求められる値を体積平均粒度分布GSDとした)で表した。電荷発生材料分散液中の顔料の最大ピーク波長λMAX、平均粒径及びGSDの値を表1に、粒度分布を表すグラフを図17に示す。
<電荷発生材料の分散性評価>
得られた電荷発生材料分散液中の電荷発生材料の分散性評価のため、ガラスプレート上に電荷発生材料分散液を塗布乾燥させて電荷発生層を形成し、顕微鏡を用いて電荷発生材料の分散状態を観察した。その結果を表2に示す。なお、表2中、「良好」とは電荷発生層中に凝集体が見られなかったことを意味し、「不良」とは凝集体が観察されたり塗膜表面がざらついたりしたことを意味する。
(電子写真感光体シートの作成)
得られた電荷発生材料材料分散液を用いて、下記のようにして電子写真感光体を作製した。先ず、導電性基体として、40mmφ×319mmのアルミパイプを用意した。
次に、ポリビニルブチラール(商品名:エスレックBM−1、積水化学工業社製)6質量部、硬化剤としてブロック化イソシアネート(商品名:スミジュール3175、住友バイエルンウレタン社製)12部、一次粒径が30nmである酸化亜鉛(商品名:Nano Tech ZnO、シーアイ化成社製)41部、シリコーンボール(商品名:トスパール120、東芝シリコーン社製)1部、レベリング剤(商品名:シリコーンオイルSH29PA、東レダウコーニングシリコーン社製)100ppm及びメチルエチルケトン52部をバッチ式のミルにて10時間混錬して、下引層形成用塗布液を作製した。
この下引層作製用の塗布液を50μm厚のアルミニウムシート上に浸漬塗布し、150℃で30分間加熱乾燥して膜厚20.0μmの下引層を形成した。
次に、上記電荷発生材料分散液を下引層の表面に浸漬塗布し、100℃で10分間加熱乾燥して膜厚0.20μmの電荷発生層を形成した。
更に、電荷輸送物質としてN,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(3−メチル)−[1,1’ビフェニル]−4,4’−ジアミン4部、結着樹脂として粘度平均分子量が3万のビスフェノールZ型ポリカーボネート樹脂6部、テトラヒドロフラン80部及び2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール0.2部を混合し、電荷輸送層形成用塗布液を作成した。
得られた電荷輸送層形成用塗布液を、上記の電荷発生層の表面に浸漬塗布し、120℃で40分間加熱乾燥して膜厚20μmの電荷輸送層を形成し、目的の電子写真感光体シートを得た。
<電子写真感光体シートの電子写真特性評価試験>
このようにして得られた電子写真感光体シートの電子写真特性を評価するために、以下の手順で電子写真特性の測定を行った。
まず、20mmφの小面積マスクを使用し、20℃、50%RHの環境下において、静電複写紙試験装置(商品名:EPA8200、川口電機社製)を用いて−5.0kVのコロナ放電により電子写真感光体シートを負帯電させた。
次に、電子写真感光体シート表面上における照度が5.0μW/cm2となるように、電子写真感光体シートに対して干渉フィルターを用いて780nmに分光したハロゲンランプ光を照射した。このときの初期表面電位V0[V]、表面電位がV0の1/2になるまでの半減露光量E1/2[μJ/cm2]、及び、表面電位V0を計測してから1秒後の表面電位をV1として、{(V0−V1)/V0}×100で求められる暗減衰率(DDR)[%]を測定した。また、この電子写真感光体シートを電子写真装置に装着し、約2mm幅の線を縦横7mmおきに印字した画像を1万枚出力した後、上記と同様に初期表面電位V0、半減露光量E1/2及び暗減衰率(DDR)を測定した。これらの結果を表2に示す。
(電子写真感光体ドラムの作製)
直径30mmφのアルミパイプを用意し、導電性支持体として用いたこと以外は、上記電子写真感光体シートの作製と同様の手順により、下引層、電荷発生層、電荷輸送層を順次形成し、目的の電子写真感光体ドラムを得た。
(電子写真装置)
得られた電子写真感光体ドラムを図11に示す構成を有する電子写真装置(商品名:PR1000、日本電気社製)に装着し、以下の評価試験を行った。なお、帯電装置にはローラー帯電器(BCR)、露光装置には780nmの半導体レーザを使用したROS、現像装置には1成分系反転現像装置、転写装置にはローラー帯電器(BTR)を採用した。
<1万枚プリント試験>
32.5℃、90%RHの環境下、1ドット1スペースのハーフトーン画像及び全面白の画像(バックグラウンド画像)を出力してその画像を目視及びルーペで観察し、かぶり及びポジゴーストの有無を評価した。また、このとき電子写真感光体の暗電位Vdを測定した。
続いて、約2mm幅の線を縦横7mmおきに印字した画像を1万枚出力した後、上記と同様にハーフトーン画像及びバックグラウンド画像を出力し、その画像を目視及びルーペで観察して、かぶり及びポジゴーストの有無を評価した。これらの結果を表3に示す。
(実施例2)
マイクロリアクターへの送液に先立ち、顔料の分散状態を向上させるためにホモミキサーの代わりに出力600W、周波数40kHzで10分間超音波処理したこと以外は実施例1と同様にして電荷発生材料分散液を得た。
(実施例3)
電荷発生材料分散液の調製において、マイクロリアクターの代わりにマイクロミキサー(IMM社製:SSIMM)を用いたこと以外は実施例1と同様にして電荷発生材料分散液を得た。
なお、図3に示した処理装置と同様の構成の処理装置を使用して顔料の分散を行った。マイクロミキサーの流路は、マイクロミキサーが備えるスリットにより規定されており、スリット幅は40μm、深さは300μmである。電荷発生材料含有液及び結着樹脂溶液の両方の流量(送液速度)を20ml/hrに設定して送液した。このときの電荷発生材料含有液又は結着樹脂溶液の漏洩や顔料の損失は全くなかった。このようにして得られた電荷発生材料分散液中の顔料の最大ピーク波長λMAX、平均粒径及びGSDの値を表1に、粒度分布図を図18に示す。
(比較例1)
電荷発生材料分散液の調製において、マイクロリアクターの代わりに分散メディアを用いたペイントシェーカーを使用し、湿式混合により電荷発生材料の分散処理を行ったこと以外は実施例1と同様にして電荷発生材料分散液を得た。
分散メディアとして、直径1mmのガラスビーズを使用した。ヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料0.1部に対してポリビニルブチラール(積水化学社製:エスレックBM−S)1部及びシクロヘキサノン10部をガラスビーズとともにペイントシェーカーに収容し、1時間処理して電荷発生材料分散液を調製した。
ペイントシェーカーを用いて分散処理した電荷発生材料分散液の一部を乾燥させて溶剤を除去し、得られた固形分中のケイ素含有量を理学電機(株)製蛍光X線分析装置(システム3370E)で測定した結果、実施例1で調製した電荷発生材料分散液の一部を乾燥させて得られた固形分中のケイ素願流量と比較して12.6倍の含有量を示した。
このようにして得られた電荷発生材料分散液中の顔料の最大ピーク波長λMAX、平均粒径及びGSDの値を表1に、粒度分布図を図17に示す。
(比較例2)
電荷発生材料分散液の調製において、ペイントシェーカーによる電荷発生材料の分散処理の後に、電荷発生材料分散液に含まれるガラスビーズの磨耗粉を遠心分離処理により除去したこと以外は比較例1と同様にして電荷発生材料分散液を得た。
電荷発材料分散液を遠心分離機(コクサン製冷却装置付き高速遠心機H−251型)を用いて8000rpmで10分間遠心分離処理してガラスビーズの磨耗粉を除去した結果、電荷発生材料分散液としての歩留まりが20質量%低下した。
このようにして得られた電荷発生材料分散液中の顔料の最大ピーク波長λMAX、平均粒径及びGSDの値を表1に示す。
(合成例2)
〔I型ヒドロキシガリウムフタロシアニンの合成〕
o−フタロジニトリル73g、三塩化ガリウム25g、α−クロロナフタレン400mlを窒素雰囲気下200℃で4時間反応させた後、130℃で生成物を濾過した。得られた生成物をN,N−ジメチルホルムアミドを用いて130℃で1時間分散洗浄した後、濾過し、メタノールで洗浄後乾燥して、クロロガリウムフタロシアニンを45g得た。
〔アシッドペースティング処理〕
次に、得られたクロロガリウムフタロシアニン15gを10℃の硫酸(濃度97%)450gに溶解させ、氷水2300g中に攪拌下に滴下して再析出させた後、濾過した。2%アンモニア水で分散洗浄後、イオン交換水で十分に水洗した後、濾過により採取し、乾燥して低結晶性のヒドロキシガリウムフタロシアニンを13g得た。
〔ヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料の合成〕
上記アシッドペースティング処理により得られた低結晶性のヒドロキシガリウムフタロシアニン10部、N,N−ジメチルホルムアミド300部を1mmφのガラスビーズ450部と共にミリング処理を室温(22℃)下、6時間行った。このとき、結晶変換の進行度合いを湿式粉砕処理液の吸収波長測定によりモニターし、湿式粉砕処理後のヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料の600〜900nmの波長域での分光吸収スペクトルにおける最大ピーク波長(λMAX)が846nmであることを確認した。得られたヒドロキシガリウムフタロシアニンのX線回折スペクトルを図15に、分光吸収スペクトルを図16に、それぞれ示す。
(比較例3)
〔電荷発生材料分散液の調製〕
合成例2で得られた電荷発生材料である、ヒドロキシガリウムフタロシアニン結晶4部とシクロヘキサノン110部とを1mmφのガラスビーズとともにサンドミルに収容し、サンドミルに結着樹脂溶液を加えない状態で0.5時間湿式混合をした。その後、サンドミル内に結着樹脂溶液として、ポリビニルブチラール樹脂(商品名:エスレックBX−1、積水化学社製)2部をシクロヘキサノン40部に溶解した溶液を加えて、更に3.5時間分散した。これに150部の酢酸ブチルを加え、電荷発生材料分散液を得た。
このようにして得られた電荷発生材料分散液中の顔料の最大ピーク波長λ
MAX平均粒径及びGSDの値を表1に、粒度分布図を図18に示す。
実施例1及び2で製造した電荷発生材料分散液におけるヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料の平均粒径は比較例1〜2と比べてあまり変わらないが、粒度分布のばらつき状態を示すGSDは非常に小さく、粒径が整っている。このため、これらを用いた電子写真感光体の特性は、耐久性および画質に優れるものであった。他方、比較例1〜2で製造した電荷発生材料分散液におけるヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料は、粒径が不均一であり、GSD値が大きかった。このため、これらを用いた電子写真感光体の特性および画質も劣るものであった。
表1〜3に示すように、実施例1〜3に示した製造方法により得られた電荷発生材料分散液を用いた電子写真感光体は、従来の製造方法により得られる電子写真感光体と比較して、優れた電子写真特性を有し、分散性が良好で、細線の太りや細り、かぶりやポジ・ゴーストなどの画質欠陥を生じることなく、繰り返し使用時においても良好な画質が得られることが確認された。
1、2…マイクロシリンジ、1a…電荷発生材料含有液(第1の流体)、2a…結着樹脂溶液(第2の流体)、3…容器、5…マイクロリアクター、12…マイクロミキサー、L1,L2,L3…流路、20…電子写真感光体、21…導電性支持体、23…感光層、24…下引層、25…電荷発生層、26…電荷輸送層、27…保護層、32…帯電手段、33…電源、34…露光手段、35…現像手段、37…クリーニング手段、38…除電器、39…定着装置、40…転写手段、42…露光のための開口部、44…取り付けレール、200,210…電子写真装置、300…プロセスカートリッジ。