JP4166855B2 - イオン交換された物質の製造法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、カチオン交換されたモレキュラーシーブを製造する方法に関する。さらに詳細には、本発明は、アンモニウム含有形態のモレキュラーシーブと、適切なリチウムカチオン源および/または他のカチオン源とを、アンモニアが接触ゾーンから取り出されるような条件下で接触させることによってカチオン交換されたゼオライトを製造する方法に関する。
【0002】
【従来の技術および発明が解決しようとする課題】
工業的に使用される多くのゼオライトは、ナトリウムカチオン形、カリウムカチオン形、またはナトリウム−カリウム混合カチオン形で合成するのが最も経済的である。例えば、ゼオライトA(米国特許第2882243号)、ゼオライトX(米国特許第2882244号)、およびモルデン沸石〔L.B.Sand:“Molecular Sieves”,Society of Chemistry and Industry,London(1968),p71−76〕は、通常はナトリウムカチオン形で合成されているが、ゼオライトLSX(ケイ素対アルミニウムの比が約1である;UK1580928)とゼオライトL(米国特許第3216789号)は、通常はナトリウム−カリウム混合カチオン形で合成されている。ゼオライトLは、カリウムイオン形でも容易に合成することができる。
【0003】
これらのゼオライトは、合成されたままの状態でも有用な特性を有しているけれども、それらの吸着特性および/または触媒特性をさらに高めるために、イオン交換を行うのが好ましい。この点については、Breck の包括的論文の第8章に詳細に説明されている(Donald W.Breck:“Zeolite Molecular Sieves”,Pub.Wiley,New York,1973)。ゼオライトの従来のイオン交換は、バッチ式プロセスまたは連続的プロセスを使用して、粉末形態または凝集形態のゼオライトを、導入しようとするカチオンの塩の水溶液と接触させることによって行われる。これらの手順は、Breck の文献(上記)の第7章に詳細に説明されており、また最近Townsend によってレビューされている(R.P.Townsend:“Ion Exchange in Zeolite”,in Studies in Surface Science and Catalysis,Elsevier(Amsterdam)(1991),Vol.58,“Introduction to Zeolite Science and Practice”,p359−390)。多くの単独カチオン交換および/または混合カチオン交換されたゼオライトを製造するのに、従来の交換手順を経済的に使用することができる。しかしながら、特に、ナトリウムゼオライト、カリウムゼオライト、またはナトリウム−カリウムゼオライトのリチウム交換、ルビジウム交換、および/またはセシウム交換の場合、オリジナルカチオンのほうがゼオライトにとって好ましい(すなわち、オリジナルカチオンの中程度または高度の交換を果たすには、大過剰のリチウムカチオン、ルビジウムカチオン、および/またはセシウムカチオンが必要とされる、ということを意味している)だけでなく、これらの塩自体が高価である。このことは、こうした特定のイオン交換形は、製造する上で一般的な吸着剤グレードのゼオライトより相当のコストアッップになる、ということを示している。ゼオライトの最終形のコストを最小限に抑えるために、またこれら過剰イオンの環境への排出を防ぐために、ゼオライトから交換されて出てきたオリジナルイオンと過剰イオンとが混ざり合ったままの残留交換溶液および洗浄液から重要な過剰イオンを回収するには、多くの作業がなされなければならない。リチウム含有ゼオライトは、酸素の非低温製造において使用するための高性能吸着剤として高い実用性を有しており、またルビジウム交換またはセシウム交換されたゼオライトは、芳香族化合物の異性体の吸着分離用として及び触媒として有用な特性を有しているので、この問題は工業的に重大なことである。
【0004】
米国特許第4859217号は、オリジナルのナトリウムイオンの88%以上がリチウムイオンで置換されたゼオライトX(ケイ素対アルミニウム比が1:1.25であるのが好ましい)が酸素からの窒素の吸着分離用として非常に優れた特性を有する、と開示している。ベースのナトリウム形またはナトリウム−カリウム形のゼオライトXが、従来のイオン交換法と化学量論的に4〜12倍過剰のリチウム塩を使用してイオン交換された。
【0005】
さらに、広範囲の他のリチウム含有ゼオライトが、有利な窒素吸着特性の点から特許請求されている: すなわち、米国特許第5179979号、第5413625号、および第5152813号は、リチウム交換およびアルカリ土類交換された二成分交換ゼオライトXを説明しており;米国特許第5258058号、5417957号、および第5419891号は、リチウム交換および他の二価イオン交換された形の二成分交換ゼオライトXを説明しており;米国特許第5464467号は、リチウム交換および三価イオン交換された形の二成分交換ゼオライトXを説明しており;EPA0685429とEPA0685430は、リチウムを含有したゼオライトEMTを説明しており;そして米国特許第4925460号は、リチウムを含有した斜方沸石ゼオライトを説明している。いずれの場合も従来のイオン交換法が施されており、ゼオライト中のオリジナルのナトリウムイオンおよび/またはカリウムイオンを置き換えるのに必要とされる化学量論量よりかなり過剰のリチウムが使用されている。二成分交換ゼオライトの場合、リチウムイオン交換工程の前に第二のカチオンとの交換を行うことによって(米国特許第5464467号)、あるいは両方の交換を同時に行うことによって(EPA0729782)リチウム塩の使用量を若干減らせる場合があるが、いずれの場合も、ナトリウムイオンとカリウムイオン所望の程度の交換を達成するには、まだ大過剰のリチウムイオンが必要とされる。
【0006】
アルカリ金属交換されたゼオライトの特性と用途が、「“Catalysis Reviews, Science and Engineering”,1996,Vol.38,N4,p.521」中の学術論文“Basic Zeolite:Characterization and Uses in Adsorption and Catalysis”においてBarthomeuf によりレビューされている。
【0007】
米国特許第4613725号は、ルビジウム置換されたゼオライトXを使用してキシレンからエチルベンゼンを分離する方法を開示している。
【0008】
JPA55035029は、キシレン異性体の混合物からp−キシレンを分離するための有用な特性を有する、セシウム−、リチウム−、および/またはカリウム置換されたゼオライトを開示している。
【0009】
米国特許第5118900号は、ナトリウム低含量の天然ホージャサイトもしくはゼオライトYと少なくとも1種のアルカリ金属水酸化物(好ましくはKOH)とを含むオレフィン二量化用触媒を開示している。前記触媒において、金属水酸化物はゼオライトに担持されていて、1〜25重量%の範囲で存在している。DE3330790は、ゼオライトのセシウム塩(好ましくは、水酸化物、ホウ酸塩、またはリン酸塩)および必要に応じてリチウム塩(好ましくはLiOH)との交換によって得られるアルカリ金属交換形のゼオライトXまたはゼオライトYを使用して、対応するキシレンとメタノールからエチルトルエンを製造するための触媒を開示している。
【0010】
ベースゼオライトを所望カチオンの塩と密な固定状態接触させる(必要に応じて混合物を加熱する)ときも、ゼオライトのカチオン交換が起こることが実証されている。この点に関しては、“Studies in Surface Science and Catalysis,Vol.105C,Elsevier(Amsterdam)(1996)”中のH.G.Kargeによる“Solid State Reactions of Zeolite”、および“Progress in Zeolite and Microporous Materials”(H.Chon,S.-K.Ihm and Y.S.Uh(Editors)p1901−1948)において詳細に説明されている。ナトリウムゼオライトYと金属塩化物(塩化リチウムと塩化カリウムを含む)との間の固体状態イオン交換が、G.Borbely, H.K.Beyer, L.Radics, P.Sander,およびH.G.Karge による“Zeolites(1989)9,428−431”に、そしてNH4Yと金属塩化物(塩化リチウムと塩化カリウムを含む)との間の固体状態イオン交換が、H.K.Beyer,H.G.Karge およびG.Borbely による“Zeolite(1988)8,79−82”に説明されている。従来技術による固体状態イオン交換法が有する大きな問題は、イオン交換されたゼオライトがオリジナルカチオンの塩との混合物の形で得られるという点である。ゼオライト中に元々含まれているカチオンの塩を除去するために、得られたイオン交換ゼオライトを洗浄すると、イオン交換ゼオライト中へのオリジナルカチオンの少なくとも部分的な戻り交換が起こる場合が多い。
【0011】
高価なリチウムカチオン、ルビジウムカチオン、およびセシウムカチオンの塩を大過剰に使用する必要がなく、またコストのかかるエネルギー集約的なカチオン回収操作を施す必要のない、リチウム−、ルビジウム−、および/またはセシウム交換されたゼオライトを製造する方法が求められている。本発明はこのような方法を提供する。
【0012】
【課題を解決するための手段】
広い実施態様によれば、本発明は、イオン交換可能なモレキュラーシーブ、イオン交換可能なクレー、イオン交換可能な非晶質アルミノケイ酸塩、およびこれらの混合物から選ばれるアンモニウムイオン含有物質と、周期表の第IA族元素のイオン、周期表の第IB族元素のイオン、周期表の第IIB族元素の一価イオン、周期表の第IIIA族元素の一価イオン、およびこれらの混合物から選ばれる1種以上のカチオン源とを、反応ゾーンにおいて、第IA族元素のイオン、第IB族元素のイオン、第IIB族元素のイオン、および第IIIA族元素のイオンのうちの1種以上によるアンモニウムイオンの置換を起こさせ、そして前記反応ゾーンから少なくとも1種の反応生成物であってアンモニアまたは揮発性のアンモニウム化合物からなる前記反応生成物を取り出せるような条件下で接触させることを含んだ、イオン交換された物質の製造法を含む。
【0013】
本実施態様の好ましい態様においては、アンモニウムイオンと置き換わるイオンは、リチウム、ルビジウム、セシウム、およびこれらの混合物から選ばれる。より好ましい態様においては、アンモニウムイオンがリチウムイオンで置き換えられる。さらに好ましい態様においては、リチウムイオン源が水酸化リチウムまたはその前駆体である。
【0014】
上記実施態様の他の好ましい態様においては、反応ゾーンは水性媒体である。この態様では、アンモニウムイオン含有物質と第IA族元素もしくは第IB族元素のイオンとの間の反応は、0〜100℃の範囲の温度で行うのが好ましい。反応は、7以上のpH値で行うのが好ましく、10以上のpH値で行うのが最も好ましい。
【0015】
上記の広い実施態様の他の態様においては、アンモニウム含有物質と第IA族元素、第IB族元素、第IIB族元素、または第IIIA族元素のイオンとの間の反応が固体状態にて(例えば、実質的に乾燥状態にて)行われる。この態様では、反応は、0〜550℃の範囲の温度で行うのが好ましい。
【0016】
本発明の上記の広い実施態様においては、反応を1バール未満の絶対圧力にて(すなわち減圧にて)行って、少なくとも1種のガス状もしくは揮発性の反応生成物を反応ゾーンから確実に取り出すことができる。あるいはこれとは別に、反応中にパージガスで反応ゾーンをフラッシングする。反応はさらに、少なくとも1種のガス状もしくは揮発性の反応生成物が反応ゾーンから効果的に取り出せるように方策が採られれば、1バールより高い圧力で行うこともできる。
【0017】
広い実施態様の好ましい態様においては、アンモニウムイオン含有物質が、イオン交換可能なモレキュラーシーブ、イオン交換可能なクレー、イオン交換可能な非晶質アルミノケイ酸塩、およびこれらの混合物から選ばれる物質と水溶性アンモニウム化合物とを接触させることによって得られる。望ましい水溶性アンモニウム化合物は、硫酸アンモニウム、塩化アンモニウム、硝酸アンモニウム、酢酸アンモニウム、またはこれらの混合物である。
【0018】
本発明のさらに好ましい態様においては、アンモニウムイオン含有物質は、1種以上のイオン交換可能なモレキュラーシーブを含む。この態様では、イオン交換可能なモレキュラーシーブは天然および合成ゼオライトから選ばれる。選択されるイオン交換可能なモレキュラーシーブは、ゼオライトA、ゼオライトX、ゼオライトY、ゼオライトEMT、およびこれらの混合物から選ばれる1種以上の合成モレキュラーシーブであるのがさらに好ましい。最も好ましい態様においては、イオン交換可能なモレキュラーシーブは、ケイ素対アルミニウムの原子比が0.9〜1.1という骨格を有するゼオライトXである。
【0019】
他の態様においては、アンモニウムイオン含有物質は、ナトリウムイオン含有物質、カリウムイオン含有物質、またはナトリウムイオン・カリウムイオン含有物質と水溶性アンモニウム塩とを接触させることによって得られる。好ましい水溶性アンモニウム塩は、硫酸アンモニウム、塩化アンモニウム、硝酸アンモニウム、酢酸アンモニウム、またはこれらの混合物である。
【0020】
広い実施態様の他の好ましい態様においては、アンモニウムイオンを含有したゼオライトX、ゼオライトY、ゼオライトEMT、またはこれらの混合物は、ナトリウムイオン含有物質と水溶性カリウム塩および水溶性アンモニウム塩とを接触させることによって得られる。
【0021】
より好ましい態様においては、アンモニウムイオンを含有したゼオライトX、ゼオライトY、ゼオライトEMT、またはこれらの混合物は、ナトリウムイオンを含有したゼオライトX、ゼオライトY、ゼオライトEMT、またはこれらの混合物を先ず水溶性カリウム塩と、次いで水溶性アンモニウム塩と接触させることによって得られる。
【0022】
本発明の他の態様においては、イオン交換された物質が1種以上の多価カチオンをさらに含有する。これらは、処理される物質中に元々存在していてもよいし、あるいはプロセス中のいかなる時点において導入してもよい。好ましい実施態様においては、アンモニウムイオン含有物質が1種以上の多価カチオンをさらに含有する。より好ましい実施態様においては、最初に処理されるナトリウムイオン含有物質、カリウムイオン含有物質、またはナトリウムイオン・カリウムイオン含有物質が、1種以上の多価カチオンをさらに含有する。好ましい多価カチオンは、カルシウムイオン、マグネシウムイオン、バリウムイオン、ストロンチウムイオン、鉄(II)イオン、コバルト(II)イオン、マンガン(II)イオン、亜鉛イオン、カドミウムイオン、錫(II)イオン、鉛(II)イオン、アルミニウムイオン、スカンジウムイオン、インジウムイオン、クロム(III)イオン、鉄(III)イオン、イットリウムイオン、およびランタニド系列のイオンの1種以上である。多価カチオンは、1種以上の三価カチオンを含むのが最も好ましい。
【0023】
本発明の特定の実施態様においては、ナトリウムイオンを含有したゼオライト(好ましくは、ゼオライトX、ゼオライトY、ゼオライトA、ゼオライトEMT、またはこれらの混合物)を二価カチオンまたは三価カチオンで部分的にイオン交換し、次いで水溶性アンモニウム塩でイオン交換して、ゼオライト上に残留しているナトリウムイオンの置換と、ゼオライト上に含まれているカリウムイオンの置換を、ゼオライト上の二価カチオンまたは三価カチオンに実質的に影響を及ぼすことなく起こさせる。次いで、このアンモニウムイオン含有ゼオライトを、好ましくは水性媒体中でリチウムイオン源(好ましくは水酸化リチウム)と反応させ、これによってアンモニウムイオンをリチウムイオンで置き換え、反応ゾーンからアンモニアを放出させる。本実施態様の好ましい態様においては、ゼオライトはゼオライトXであり、最も好ましい態様においては、ゼオライトは、ケイ素対アルミニウムの原子比が約0.9〜約1.1(例えば約1)という骨格を有するゼオライトXである。この最も好ましい態様においては、ゼオライトが、カリウムイオンを交換可能なカチオンとして有しているか、あるいはアンモニウムイオンによるイオン交換の前に、少なくとも部分的にカリウムイオンでイオン交換されている。
【0024】
本発明は、一般には、所望の組成のカチオン交換された物質を極めて効果的な仕方で製造するための、従来実施されている方法のもつ問題点を解消した方法を開示している。本発明のイオン交換法は、反応生成物の少なくとも1種が反応ゾーンから取り除かれるような条件下で行う。このような条件下にて、大過剰の交換用カチオンを使用する必要なく、イオン交換が実質的に完了するまで反応を続ける。イオン交換は液相で行ってもよく、このとき少なくとも1種の反応生成物がガス状または揮発性であって、パージして反応ゾーンから排出することができる。イオン交換は固体状態反応であってもよく、この場合も反応生成物の少なくとも1種がガス状または揮発性であって、系から蒸発もしくは昇華する。本発明の原理は、物質中のカチオンの交換を起こしやすいいかなる物質に対しても適用することができる。本発明が適用できる特殊な分野は、特定のタイプの交換可能なカチオンまたは異なったタイプの交換可能なカチオンの混合物を明確な量で含有する沸石モレキュラーシーブ(ゼオライト)の製造である。
【0025】
本発明の開示内容にしたがって処理しようとするイオン交換物質は、交換可能なカチオンを含有した多くの物質のいずれであってもよい。このような物質としては、ホージャサイト、斜方沸石、オフレタイト(offretite)、毛沸石、モルデン沸石、シャプチロ沸石、束沸石、方沸石、グメリン沸石、およびレビナイト等の天然ゼオライト;FAU、EMT、LTA、CHA、LTL、およびMOR構造タイプのゼオライト等の合成ゼオライト;モンモリロナイト等のクレー;ならびに非晶質アルミノケイ酸塩;を含めたモレキュラーシーブがある。本発明の方法は、ゼオライトA、ゼオライトX、ゼオライトY、ゼオライトEMT、またはこれらの混合物のイオン交換に対して特に適している。
【0026】
イオン交換しようとする物質は通常、初期においてナトリウムイオンおよび/またはカリウムイオンを交換可能なカチオンとして有している。イオン交換しようとする物質はさらに、二価または三価のカチオンを有していてもよい。イオン交換しようとする物質中に存在していてもよい二価カチオンとしては、周期表第IIA族元素(マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、およびバリウム)のイオン、および多価元素〔鉄(II)、コバルト(II)、マンガン(II)、クロム(II)、亜鉛、カドミウム、錫(II)、鉛(II)、およびニッケル等〕の二価イオン形などがある。イオン交換しようとする物質中に存在していてもよい三価カチオンとしては、アルミニウムイオン、スカンジウムイオン、ガリウムイオン、イットリウムイオン、鉄(III)イオン(すなわち第二鉄イオン)、クロム(III)イオン(すなわち第二クロムイオン)、インジウムイオン、およびランタニド系列のイオンなどがある。ランタニド系列のイオンとしては、ランタンイオン、セリウムシオン、プラセオジムイオン、ネオジムイオン、プロメチウムイオン、サマリウムイオン、ユーロピウムイオン、ガドリニウムイオン、テルビウムイオン、ジスプロシウムイオン、ホルミウムイオン、エルビウムイオン、ツリウムイオン、イッテルビウムイオン、およびルテチウムイオンなどがある。上記多価イオンのいずれか2種以上の混合物も、本発明の吸着剤を製造するのに使用することができる。好ましい三価カチオンとしては、アルミニウムイオン、セリウムイオン、ランタンイオン、ならびにランタン、セリウム、プラセオジム、およびネオジムの合計濃度が少なくとも約40%(好ましくは、混合物中のランタニドイオンの総数の少なくとも約75%)であるようなランタニド混合物などがある。
【0027】
イオン交換しようとする物質中に最初から存在している二価および/または三価カチオンの量は、本発明の方法にとって重要なポイントではない。このような多価カチオンが存在する場合は、一般には、多価カチオンは、イオン交換しようとする物質中のカチオンの総数を基準として最大約50%までの濃度にて存在する。
【0028】
導入しようとする一価イオンは、第IA族元素や第IB族元素のカチオン、あるいは第IIB族元素や第IIIA族元素の一価カチオンから選ぶことができる。市販のイオン化合物が高価である場合は極めて大きな経済的利点が達成される。なぜなら、本発明はこうした物質を過剰には必要とせず、化学量論的に若干過剰な量を必要とするだけであり、一方、従来法では、こうした物質を大過剰に必要とするからである。
【0029】
イオン交換のための好ましい一価カチオンは、ナトリウムイオンとカリウムイオン以外の周期表第IA族元素のイオン、および第IB族元素のイオンである。このクラスに含まれるものとしては、リチウムイオン、ルビジウムイオン、セシウムイオン、銅(I)イオン、銀イオン、および金イオンなどがある。本発明の方法は、リチウム、ルビジウム、およびセシウムとのイオン交換に対して特に有用であり、イオン交換しようとする物質中にリチウムイオンを導入するのに最も有用である。
【0030】
本発明の方法は複数工程からなり、ナトリウムイオンおよび/またはカリウムイオンをアンモニウムイオンで置き換える第1の工程、および物質中のアンモニウムイオンを所望の一価イオンで置き換える第2の工程を含む。
【0031】
本発明は一般に、アンモニウムイオン形をとっていて、選択された一価イオンを導入できる物質を必要とするが、特定の場合においては、アンモニウムに類似のイオン(例えばアルキルアンモニウムイオン)を代わりに使用することもできる。イオン交換しようとする物質のアンモニウム形は、水溶性のアンモニウム塩による従来のイオン交換によって得ることができる。直接的方法によるアンモニウム交換の程度が構造面での制約によって制限される場合、アンモニウムイオンとの化学的類似性を示すが、より高い分極率を有する追加イオン(例えば、K+、Ag+、またはTl+)の存在下で交換を行えば、完全なイオン交換を達成することができる。このような間接的交換は、出発物質を先ず追加イオンで交換し、次いでこうした得られた物質をアンモニウム塩の水溶液と接触させることによって、あるいは追加カチオンの存在下にて、アンモニウム塩の水溶液による出発物質の連続的向流交換を施すことによって行うことができる。いずれの場合においても、プロセス中に追加イオンは消費されない。アンモニウム交換は、生成物中に残留しているオリジナルカチオンの量が最終生成物に対する要件に適合するような程度に行うのが望ましい。なぜなら、その後の工程中において、これらイオンのさらなる実質的な交換は起こらないからである。
【0032】
アンモニウム交換は、攪拌機付き容器中で、周囲温度より高い温度にて、そして好ましくは系の沸点よりやや低い温度にて、アンモニウム塩水溶液を使用して行うことができる。実質的に完全な交換が望ましいので、アンモニウム交換に対して多段階プロセスを使用するのが好ましい。連続的向流法(例えば、ベルトフィルターにより)を適用することによって同じ結果を達成することができる。目標とするアンモニウム交換レベルは、リチウムイオン交換の所望レベルによって決定される。場合によっては、ゼオライトのカリウム形からアンモニウム交換をスタートするのが有用であることがある。カリウム形は、例えば、アンモニウム交換法と類似の条件下にて、合成したままの状態のゼオライトをカリウム塩含有水溶液で処理することによって得ることができる。イオン交換プロセスが連続的である場合(例えば、ベルトフィルターにより)、カリウム交換工程は中間工程であり、したがっていったんプロセスが定常状態を達成すると、カリウムのさらなる追加は必要ない(損失に対する補償は除く)。この方法により、合成したままの状態の物質から高度に交換された生成物を製造するのに、プロセス全体が極めて効率的となる。
【0033】
本発明の最終工程においては、イオン交換しようとする物質のアンモニウム形を、アンモニアまたは揮発性のアンモニウム含有化合物が反応ゾーンから取り出されるような条件下で、所望イオンを含んだ化合物と接触させる。この工程は、カチオン源が水酸化物またはその前駆体(すなわち、水と反応して水酸化物を形成する場合は酸化物または金属そのもの、あるいは水溶液が約10以上のpH値を有する場合は該カチオンの塩)であるような水性環境において行うのが好ましい。反応は、系が液体状態のままであるような温度にて行うことができるが、より高い温度、好ましくは50℃以上の温度が適用されれば、反応速度は実質的に増大する。生成したアンモニアは、通常の周囲温度より高い温度にてイオン交換スラリー中に空気または他の適切なガスを吹き込むことによって、スラリーからパージすることができる。適切なパージガスは、反応物やイオン交換生成物と反応しないガスである(さもないと、所望の反応に悪影響を及ぼしたり、反応を阻害したりする)。反応ゾーンから排出されるガス状アンモニアは、回収を望む場合は従来の方法と装置を使用して適切な酸性溶液中に再吸収させることができ、引き続きアンモニウム交換用に再使用することができる。リチウム交換工程に必要とされるリチウムの量は、アンモニウムイオンの全置換とアンモニウムイオンのアンモニアへの全転化に必要とされる化学量論量(又はそれより若干過剰な量)である。この過剰量は、一般には化学量論量の10%未満であり、過剰のリチウムは無駄にはならない。なぜなら、リチウム交換用溶液は、フレッシュな水酸化リチウムと混合すれば、引き続いたバッチのリチウム交換に対して少なくともある程度は再使用することができるからである。リチウム交換工程は、種々ある方法のいずれでも行うことができる。例えば、攪拌機付き容器中で、水酸化リチウム含有溶液を連続的に、又は1つ以上のスラグにて加えて行うことができる。あるいは、アンモニウムイオン交換されたゼオライトの凝集形態物の上に、カラム中において水酸化リチウム含有溶液を通すことによって行うことができる。
【0034】
これとは別に、最終交換工程は、カチオン源が水酸化物、酸化物、またはカチオンの塩〔この塩のアニオンが、アンモニウムと揮発性化合物を形成する(例えば塩化物)〕である場合に、水が存在しなくても行うことができる。このようなケースでは、成分を機械的に混合し、反応生成物が揮発性となる温度にまで加熱する。水酸化物または酸化物がカチオン源である場合、反応は、周囲温度あるいはそれより低い温度でも行うことができ、反応を完全に起こさせるのには機械的な活性化だけが必要である。カチオンの塩を使用する場合、反応温度は、対応するアンモニウム塩の昇華温度を越えなくてはならない。
【0035】
本発明の方法は、従来の方式では交換させるのが困難なカチオンを明確な混合物の形で含有したイオン交換物質を製造するのに特に適している。このようなケースでは、イオン交換物質のアンモニウム形を、所望のカチオンを含んだ化合物の化学量論混合物と接触させる。このとき必要とされる過剰量は、イオン交換物質に対して最も低い選択性を示すカチオンから生じる。
【0036】
最終生成物が、アンモニウムもしくはオリジナルカチオンよりイオン交換物質中に強く保持されるカチオン(例えば、希土類金属イオン)を含有する場合、これらのカチオンは、最新のイオン交換法によってプロセスのどの段階でも導入できるが、アンモニウム塩の必要量を最小限に抑えるために、アンモニウム交換の前に導入するのが好ましい。
【0037】
イオン交換物質は粉末形態でもよいし、あるいは凝集・成形して粒状物(押出ペレット)にしてもよい。一般には、アンモニウムイオン交換工程の前、またはリチウムイオン交換工程の後に、凝集操作を行うのが好ましい。結晶質もしくは非晶質のバインダー、あるいは使用に適したバインダーとイオン交換物質との組合せ物を凝集剤として使用することができ、またいかなる凝集法も使用することができる。代表的なバインダーと凝集法が、1995年8月11日付け出願の米国特許出願08/515184号と1996年6月18日付け出願の08/665714号、および米国特許第5464467号(これらの特許文献を参照のこと)に開示されている。
【0038】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、特に明記しない限り、部、パーセント、および比は重量基準である。
【0039】
実施例1
リチウムLSXの製造
East German Wirtschaftspatent DD WP 043221,1963 に記載の手順にしたがって、Si/Al の原子比が1.0である低ケイ素X(low silicon X;LSX)を合成した。カリウム・ナトリウム混合形の低シリカXゼオライト(low silica X zeolite)(本明細書ではNa,K−LSXと呼ぶ)の乾燥粉末100gと2リットルの1N濃度K2SO4 溶液とを80℃で1時間、3回接触させることによって、ゼオライトをカリウムで交換した。各工程の後、ゼオライト粉末を1リットルの脱イオン水で洗浄した。得られたK−LSXゼオライトと1リットルの2N濃度(NH42SO4 とを80℃で2時間接触させた。イオン交換中における物質に対する構造的損傷を避けるために、少量の25%アンモニア水溶液を加えることによって硫酸アンモニウム溶液のpHを8.5に調節した。イオン交換後、ゼオライトを1リットルの脱イオン水で洗浄した。この手順を4回繰り返して、所望のレベルの残留アルカリ金属イオンを得た。
【0040】
こうして得られたNH4−LSXから、脱イオン水を使用して、20重量%の固体を含有したスラリーを作製した。スラリーの見かけのpH値が常に11〜12となるような速度にて、攪拌しながら5%LiOH水溶液をこのスラリーに滴下した。これと同時に、発生したアンモニアを系から除去するために、約100リットル/時の割合で空気をスラリー中に吹き込んだ。トータルとして化学量論的に過剰の10%LiOHをスラリーに加えた。LiOHの付加中は、スラリーの温度を50℃に保持した。最後に、アンモニアの除去を完全にするために、反応混合物を80℃に加熱した。次いでスラリーを濾過し、プロトン交換を避けるために、少量のLiOHの添加によってpH9に調節した1リットルの脱イオン水で洗浄した。
【0041】
実施例2
三価イオンを含んだリチウムLSXの製造
リチウム金属カチオンと三価希土類金属カチオン(RE)の混合物とを含有したLSXのサンプルを、実施例1にしたがって製造した10gのNH4−LSXとLa3+、Ce3+、Pr3+、およびNd3+ を含んだトータル3.5ミリモルのRE混合物とを、周囲温度で6時間接触させることによって作製した。こうして得られたNH4,RE−LSXを、実施例1に記載の手順にしたがってLiOH溶液で処理して、リチウム以外のアルカリ金属イオンを本質的に含まないLi,RE−LSX生成物を得た。
【0042】
実施例3
三価イオンを含んだリチウムLSXの製造
100gの合成したままの状態のNa,K−LSXと、35ミリモルの希土類金属カチオン(La3+、Ce3+、Pr3+、およびNd3+)混合物を含有した1リットルの溶液とを周囲温度で6時間接触させることによって、REを含有したLSXゼオライトを製造した。得られたNa,K,RE−LSXを3回、2リットルの1N濃度K2SO4 溶液と80℃にて2時間接触させ、濾過し、そして各接触後に1リットルの脱イオン水で洗浄した。次いで、得られたK,RE−LSXを、実施例1に記載の手順にしたがって硫酸アンモニウム溶液とLiOH溶液で処理して、Li,RE−LSXゼオライトを得た。
【0043】
実施例4
リチウムLSXの製造
実施例1に記載の手順にしたがってNH4−LSXを製造した。次いでこのサンプルを、化学量論的に10%過剰の水非含有LiCl と機械的に混合した。本混合物を、下記のプログラムにしたがって350℃に加熱した。
【0044】
・ 1K/分の割合で120℃に加熱
・ 120℃で2時間保持
・ 1.33K/分の割合で200℃に加熱
・ 200℃で2時間保持
・ 2.5K/分の割合で350℃に加熱
・ 350℃で3時間保持
・ 周囲温度に冷却
得られたサンプルを9のpH値を有するLiOH溶液1リットルで洗浄し、そして乾燥した。
【0045】
実施例5
三価イオンを含んだリチウムLSXの製造
実施例3に記載の手順にしたがってNH4,RE−LSXを製造した。次いでこのサンプルを、化学量論的に10%過剰のLiOH・H2Oと機械的に混合した。本混合物を、下記のプログラムにしたがって350℃に加熱した。
【0046】
・ 1K/分の割合で120℃に加熱
・ 120℃で2時間保持
・ 1.33K/分の割合で200℃に加熱
・ 200℃で2時間保持
・ 2.5K/分の割合で350℃に加熱
・ 350℃で3時間保持
・ 周囲温度に冷却
得られたサンプルを9のpH値を有するLiOH溶液1リットルで洗浄し、そして乾燥し、活性化した。
【0047】
実施例6
三価イオンを含んだリチウムLSXの製造
実施例4に記載の手順にしたがって製造したLi−LSXサンプル(10g)と、トータルで3.5ミリモルの希土類金属カチオン混合物(La3+、Ce3+、Pr3+、およびNd3+)を含有した100mlの溶液とを、周囲温度で6時間接触させた。濾過および洗浄後、リチウム以外のアルカリ金属イオンを実質的に含まないLi,RE−LSXを得た。
【0048】
実施例7
リチウムLSXの製造
NH4−LSXの5kgサンプルを実施例1に記載の手順にしたがって製造した。但し、アンモニウム交換を80℃ではなく50℃で行った。本生成物を20リットルの脱イオン水で再びスラリー化し、適度に攪拌しながら50℃に加熱した。化学量論的に10%過剰の10%LiOH水溶液を、2時間にわたって0.5リットルずつ加えた。この間、スラリーを攪拌し、加圧空気を約1200リットル/時の割合でスラリー中に吹き込んだ。LiOHの付加が終了した後、攪拌と吹き込みをさらに8時間続けた。得られた生成物を濾過し、pH値が9のLiOH水溶液50リットルで洗浄した。この物質から、1.6〜2.5mmの直径を有し、バインダー含量が15%である球状ビーズを製造した。
【0049】
比較例8
比較のための、三価イオンを含んだリチウムLSXの製造
ゼオライト1g当たり3.6N濃度のNaCl 溶液8mlによる90℃での3回の静的交換を施して合成Na,K−LSXのイオン交換を行うことによって、先ずNa−LSXを製造した。各交換の後、サンプルをNaOH水溶液(0.01N)で洗浄した。
【0050】
58.7gの市販RE塩混合物〔モリコープ(Molycorp)5240〕を周囲温度で4リットルの水中に溶解することによって、RE塩水溶液を作製した。これに462.2gの上記Na−LSXを加え、本混合物を一晩攪拌した。このスラリーを濾過し、乾燥した。897gのLiCl(化学量論的に8倍過剰)を4リットルの水中に溶解して得られる塩化リチウム水溶液(LiOHでpH9に調節)に、413gの乾燥Na,RE−LSXを加えた。この最初のリチウムイオン交換工程は、80℃にて約19時間行った。残留するナトリウム含量を少なくするために、400gのLiCl(化学量論的にさらに40倍過剰)を1リットルの水中に溶解して得られる第2の塩化リチウム水溶液(LiOHでpH9に調節)と、得られたLi,RE,Na−LSX形40gとを80℃にて約18時間接触させた。スラリーを濾過し、乾燥した。
【0051】
実施例9
実施例1〜7と比較例8の組成
ARL−3510順次ICP分光計を使用する誘導結合プラズマ原子分光分析によって、全てのサンプルを分析した。得られた組成を表1に示すが、交換可能なカチオンの実測当量は1に正規化されている。
【0052】
【表1】
Figure 0004166855
【0053】
実施例10
実施例1〜7および比較例8の吸着特性
リチウムLSXサンプルと三価イオンを含んだリチウムLSXサンプルに関して、窒素(N2)と酸素(O2)に対する吸着等温線を、ステンレス鋼製の減圧/加圧システム中に収容されたCahn 2000シリーズの微量天秤を使用して、重量分析法により測定した。MKSバラトロン(Baratron)タイプの圧力センサーを使用して、1〜10000ミリバールの範囲の圧力測定を行った。各サンプルの約100mg部分を慎重に脱気し、5℃/分の割合で500℃に加熱した。窒素と酸素に対する吸着等温線を、窒素に関しては20〜6600ミリバールの範囲で、そして酸素に関しては20〜2000ミリバールの範囲で25℃にて測定し、データを単一もしくは複数サイトのラングミュア等温線モデルに適合させた。窒素データに対する適合を使用して、サンプルの1気圧での窒素容量、および25℃における窒素に対する有効容量を算出した。1250ミリバールでの窒素容量と250ミリバールでの窒素容量との間の差として定義される有効窒素容量により、この範囲での高圧力と低圧力の間で操作されるPSAプロセスにおける吸着剤の能力の良好な指標が得られる。1500ミリバールおよび25℃において、サンプルが空気中の酸素より窒素に対して高い選択性を有することは、ラングミュア混合則〔例えば、A.L.Myers:AlChE:29(4),(1983),p691−693を参照〕を使用して、窒素と酸素に対する単一ガス等温線から得られた。選択性に関しては通常の定義を適用した。選択性(S)は式
S=(xN2/yN2)/(xO2/yO2
で表され、このときxN2 とxO2 はそれぞれ、吸着相における窒素と酸素のモル分率であり、yN2 とyO2 はそれぞれ、ガス相における窒素と酸素のモル分率である。
【0054】
上記実施例のリチウムLSXサンプルと三価イオンを含んだリチウムLSXサンプルに対する吸着結果を表2に示す。
【0055】
【表2】
Figure 0004166855
【0056】
実施例9の表1に記載の分析データは、ナトリウムおよび/またはカリウムの残留レベルの低いリチウム含有LSX型ゼオライトを、大過剰のリチウム含有塩を使用する必要なく本発明の新規交換法を使用して製造できる、ということを明確に示している。実施例1と7は、Li−LSX物質の製造に関して、本発明の液相交換の実施態様を示している。実施例3と2は、リチウムイオン・多価イオン混合交換LSX物質の液相での製造を示しており、この場合、多価イオンの交換が、ベースゼオライトの中間アンモニウム形の製造の、それぞれ前と後に行われている。実施例5〜6は、Li−LSX物質とLi,RE−LSX物質の製造に関して、本発明の固体状態交換の実施態様を示している。実施例4は試験しなかった。
【0057】
比較例8は、従来技術の液相交換法による、リチウムイオン・三価イオン交換されたLSXの製造を示している。第1のリチウム交換工程の後、化学量論的に8倍過剰のリチウム交換塩を使用したにも関わらず、生成物はなお17%の残留ナトリウム(当量基準にて)を含有していた。残留ナトリウム含量の少ないサンプルを得るためには、大過剰のリチウムを使用する第2の交換工程が必要とされた。最も効率的とされる向流もしくはシミュレートされた向流の、従来技術による液相交換法を使用する場合、ナトリウムおよび/またはカリウムの残量レベルの低い、リチウムイオン交換されたゼオライトサンプルまたはリチウムイオン・多価イオン交換されたゼオライトサンプルを得るためには、化学量論的に少なくとも約4倍過剰のリチウム交換塩が必要とされる。
【0058】
実施例10の表2に示されている吸着データから、本発明の開示技術(化学量論的にわずか10%過剰のリチウム交換塩を使用)を使用して製造した物質の吸着特性が、従来技術の交換法にしたがって大過剰のリチウム交換塩を使用して製造したものの吸着特性と同等であることが確認される。
【0059】
特定の装置集成体と特定の実験に関して本発明を説明してきたが、これらの特徴は本発明の代表的なものに過ぎず、種々の変形が可能である。例えば、リチウム、ルビジウム、および/またはセシウム交換法は、イオン交換可能な物質の粉末状サンプルに対しても、あるいは凝集したサンプルに対しても行うことができる。本発明の範囲は、特許請求の範囲にしたがって規定される。

Claims (30)

  1. イオン交換可能なモレキュラーシーブ、イオン交換可能なクレー、イオン交換可能な非晶質アルミノケイ酸塩、およびこれらの混合物からなる群から選ばれるアンモニウムイオン含有物質と、第IA族元素のイオン、第IB族元素のイオン、第IIB族元素の一価イオン、第IIIA族元素の一価イオン、およびこれらの混合物からなる群から選ばれるカチオン源とを、反応ゾーンにおいて接触させ、前記カチオンのうちの少なくとも1種によるアンモニウムイオンの置換を起こさせ、そして前記反応ゾーンから少なくとも1種の反応生成物であってアンモニアまたは揮発性のアンモニウム化合物からなる前記反応生成物を取り出ことを含む、イオン交換された物質の製造法。
  2. 前記カチオンが、第IA族元素のイオン、第IB族元素のイオン、およびこれらの混合物からなる群から選ばれる、請求項1記載の製造法。
  3. 前記カチオンがリチウムイオン、ルビジウムイオン、セシウムイオン、またはこれらの混合物である、請求項2記載の製造法。
  4. 前記アンモニウムイオンがリチウムイオンで置換されている、請求項3記載の製造法。
  5. 前記カチオン源が水酸化リチウムまたはその前駆体である、請求項4記載の製造法。
  6. 前記反応ゾーンが水性媒体である、請求項5記載の製造法。
  7. 前記接触を0〜100℃の範囲の温度にて行う、請求項6記載の製造法。
  8. 前記接触を7以上のpH値にて行う、請求項7記載の製造法。
  9. 前記接触を10以上のpH値にて行う、請求項7記載の製造法。
  10. 前記接触を固相中で行う、請求項1記載の製造法。
  11. 前記接触を固相中で行う、請求項4記載の製造法。
  12. 前記接触を0〜550℃の範囲の温度にて行う、請求項10記載の製造法。
  13. 前記接触を0〜550℃の範囲の温度にて行う、請求項11記載の製造法。
  14. 前記接触を1バール未満の絶対圧力にて行う、請求項6、9、10、11、12、または13のいずれか一項に記載の製造法。
  15. 前記接触中に、前記反応ゾーンをパージガスでフラッシングする、請求項6、9、10、11、12、または13のいずれか一項に記載の製造法。
  16. 前記アンモニウムイオン含有物質が、イオン交換可能なモレキュラーシーブ、イオン交換可能なクレー、イオン交換可能な非晶質アルミノケイ酸塩、およびこれら物質の混合物から選ばれる物質と水溶性アンモニウム化合物とを接触させることによって得られる、請求項1記載の製造法。
  17. 前記水溶性アンモニウム化合物が、硫酸アンモニウム、塩化アンモニウム、硝酸アンモニウム、酢酸アンモニウム、およびこれらの混合物からなる群から選ばれる、請求項16記載の製造法。
  18. 前記物質が少なくとも1種のイオン交換可能なモレキュラーシーブを含む、請求項1記載の製造法。
  19. 前記少なくとも1種のイオン交換可能なモレキュラーシーブが天然および合成ゼオライトから選ばれる、請求項18記載の製造法。
  20. 前記少なくとも1種のイオン交換可能なモレキュラーシーブが、ゼオライトA、ゼオライトX、ゼオライトY、ゼオライトEMT、およびこれらの混合物から選ばれる1種以上の合成モレキュラーシーブである、請求項19記載の製造法。
  21. 前記少なくとも1種のイオン交換可能なモレキュラーシーブが、ケイ素対アルミニウムの原子比が0.9:1.1であるような骨格を有するゼオライトXである、請求項20記載の製造法。
  22. 前記アンモニウムイオン含有物質が、ナトリウムイオン含有物質、カリウムイオン含有物質、またはナトリウムイオン・カリウムイオン含有物質と、水溶性アンモニウム塩とを接触させることによって製造される、請求項1記載の製造法。
  23. 前記水溶性アンモニウム塩が、硫酸アンモニウム、塩化アンモニウム、硝酸アンモニウム、酢酸アンモニウム、またはこれらの混合物である、請求項22記載の製造法。
  24. 前記アンモニウムイオン含有物質が、ナトリウム含有物質と水溶性カリウム塩および水溶性アンモニウム塩とを接触させることによって得られる、請求項1記載の製造法。
  25. 前記アンモニウムイオン含有物質が、ナトリウムイオン含有物質を先ず水溶性カリウム塩と、次いで水溶性アンモニウム塩と接触させることによって得られる、請求項24記載の製造法。
  26. 前記イオン交換された物質が1種以上の多価カチオンをさらに含有する、請求項1記載の製造法。
  27. 前記アンモニウムイオン含有物質が1種以上の多価カチオンをさらに含有する、請求項22記載の製造法。
  28. 前記ナトリウムイオン含有物質、前記カリウムイオン含有物質、または前記ナトリウムイオン・カリウムイオン含有物質が1種以上の多価カチオンをさらに含有する、請求項22記載の製造法。
  29. 前記多価カチオンが、カルシウムイオン、マグネシウムイオン、バリウムイオン、ストロンチウムイオン、鉄(II)イオン、コバルト(II)イオン、マンガン(II)イオン、亜鉛イオン、カドミウムイオン、錫(II)イオン、鉛(II)イオン、アルミニウムイオン、ガリウムイオン、スカンジウムイオン、インジウムイオン、クロム(III)イオン、鉄(III)イオン、イットリウムイオン、ランタニド系列のイオン、およびこれらの混合物から選ばれるカチオンを含む、請求項26〜28のいずれか一項に記載の製造法。
  30. 前記多価カチオンが1種以上の三価カチオンを含む、請求項29記載の製造法。
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