JP4165771B2 - ラミネート用二軸延伸ポリエステルフイルム - Google Patents

ラミネート用二軸延伸ポリエステルフイルム Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はラミネート用ポリエステルフイルムに関するものである。更に詳しくは成形性、耐衝撃性、味特性に優れ、成形加工によって製造される金属缶に好適な金属板ラミネート用フイルムに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、金属缶の缶内面及び外面は腐食防止を目的として、エポキシ系、フェノ−ル系等の各種熱硬化性樹脂を溶剤に溶解または分散させたものを塗布し、金属表面を被覆することが広く行われてきた。しかしながら、このような熱硬化性樹脂の被覆方法は塗料の乾燥に長時間を要し、生産性が低下したり、多量の有機溶剤による環境汚染など好ましくない問題がある。
【0003】
これらの問題を解決する方法として、金属缶の材料である鋼板、アルミニウム板あるいは該金属板にめっき等各種の表面処理を施した金属板にフイルムをラミネ−トする方法がある。そして、フイルムのラミネ−ト金属板を絞り成形やしごき成形加工して金属缶を製造する場合、フイルムには次のような特性が要求される。
【0004】
(1)金属板との接着性に優れていること。
(2)成形性に優れ、成形後にピンホールなどの欠陥を生じないこと。
(3)金属缶に対する衝撃によって、ポリエステルフイルムが剥離したり、クラック、ピンホールが発生したりしないこと。
(4)缶の内容物の香り成分がフイルムに吸着したり、フイルムの臭いによって内容物の風味がそこなわれないこと(以下味特性と記載する)。
【0005】
これらの要求を解決するために多くの提案がなされており、例えば特開昭64−22530号公報には特定の密度、面配向係数を有するポリエステルフイルム、特開平2−57339号公報には特定の結晶性を有する共重合ポリエステルフイルム等が開示されている。しかしながら、これらの提案は上述のような多岐にわたる要求特性を総合的に満足できるものではなく、特に高度な成形性、優れた味特性が要求される用途では十分に満足できるレベルにあるとは言えなかった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は上記した従来技術の問題点を解消することにあり、成形性、耐熱性、耐衝撃性、味特性に優れ、特に成形加工によって製造される成形性、耐衝撃性、味特性に優れた金属缶に好適な金属板ラミネート用二軸延伸フイルムを提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
前記した本発明の目的は、フィルムを構成するポリエステル単位の90モル%以上がエチレンテレフタレート単位であり、固体高分解能NMRによる構造解析における1、4位のベンゼン環炭素の緩和時間T1ρが150msec以上445msec以下であることを特徴とするラミネート用二軸延伸ポリエステルフィルムによって達成することができる。
【0008】
本発明は、鋭意検討の結果、フィルム分子鎖の安定性、運動性を制御したフィルムを得ることにより、成形性、味特性が良好で、特に耐衝撃性に優れるフィルムが得られることを見出したものである。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明におけるポリエステルとは、ジカルボン酸成分とグリコ−ル成分からなるポリマであり、ジカルボン酸成分としては、例えばテレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、ジフェニルジカルボン酸、ジフェニルスルホンジカルボン酸、ジフェノキシエタンジカルボン酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、フタル酸等の芳香族ジカルボン酸、シュウ酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、ダイマ−酸、マレイン酸、フマル酸等の脂肪族ジカルボン酸、シクロヘキシンジカルボン酸等の脂環族ジカルボン酸、p−オキシ安息香酸等のオキシカルボン酸等を挙げることができる。なかでもこれらのジカルボン酸成分のうち、テレフタル酸が耐熱性、味特性の点から好ましい。一方、グリコ−ル成分としては例えばエチレングリコ−ル、プロパンジオ−ル、ブタンジオ−ル、ペンタンジオ−ル、ヘキサンジオ−ル、ネオペンチルグリコ−ル等の脂肪族グリコ−ル、シクロヘキサンジメタノ−ル等の脂環族グリコール、ビスフェノールA、ビスフェノールS等の芳香族グリコール等が挙げられる。中でもこれらのグリコール成分のうちエチレングリコールが好ましい。なお、これらのジカルボン酸成分、グリコ−ル成分は2種以上を併用してもよい。
【0010】
また、本発明の効果を阻害しない限りにおいて、トリメリット酸、トリメシン酸、トリメチロ−ルプロパン等の多官能化合物を共重合してもよい。
【0011】
本発明において、耐熱性、味特性、の点で、ポリエステル中にアンチモン化合物、ゲルマニウム化合物、チタン化合物から任意に選択される金属化合物の金属元素量が0.01ppm以上1000ppm未満とすることが好ましく、さらに好ましくは0.05ppm以上800ppm未満、特に好ましくは0.1ppm以上500ppm未満である。主としてゲルマニウム化合物が含有されていると、製缶工程で乾燥、レトルト処理などの高温熱履歴を受けた後の味特性が良好となるので好ましい。また、主としてアンチモン化合物を含有すると、副生成するジエチレングリコール量が低減でき耐熱性が良好となるので好ましい。また熱安定剤としてリン化合物を10〜200ppm、好ましくは15〜100ppm加えても良い。リン化合物としては、リン酸や亜リン酸化合物などが挙げられるが、特に限定するものではない。
【0012】
本発明のアンチモン化合物またはゲルマニウム化合物またはチタン化合物をポリエステルに含有させる方法は従来公知の任意の方法を採用することができ特に限定されないが、通常ポリエステルの製造が完結する以前の任意の段階において、重合触媒としてアンチモン化合物またはゲルマニウム化合物、チタン化合物を添加することが好ましい。このような方法としては例えば、ゲルマニウム化合物を例にすると、ゲルマニウム化合物粉体をそのまま添加する方法や、あるいは特公昭54−22234号公報に記載されているように、ポリエステルの出発原料であるグリコ−ル成分中にゲルマニウム化合物を溶解させて添加する方法等を挙げることができる。ゲルマニウム化合物としては、例えば二酸化ゲルマニウム、結晶水含有水酸化ゲルマニウム、あるいはゲルマニウムテトラメトキシド、ゲルマニウムテトラエトキシド、ゲルマニウムテトラブトキシド、ゲルマニウムエチレングリコキシド等のゲルマニウムアルコキシド化合物、ゲルマニウムフェノレ−ト、ゲルマニウムβ−ナフトレ−ト等のゲルマニウムフェノキシド化合物、リン酸ゲルマニウム、亜リン酸ゲルマニウム等のリン含有ゲルマニウム化合物、酢酸ゲルマニウム等を挙げることができる。中でも二酸化ゲルマニウムが好ましい。アンチモン化合物としては、特に限定されないが例えば、三酸化アンチモンなどのアンチモン酸化物、酢酸アンチモンなどが挙げられる。チタン化合物としては、特に限定されないがテトラエチルチタネート、テトラブチルチタネートなどのアルキルチタネート化合物などが好ましく使用される。
【0013】
本発明におけるポリエステルは、好ましくはジエチレングリコール成分量が0.01〜3.0重量%、さらに好ましくは0.02〜2.5重量%、特に好ましくは0.1〜2.0重量%であることが製缶工程での良好な成形性や熱処理、製缶後のレトルト処理などの多くの熱履歴を受けても良好な耐衝撃性を維持する上で望ましい。このことは、200℃以上での耐酸化分解性が向上するものと考えられ、さらに公知の酸化防止剤を0.0001〜1重量%添加してもよい。
【0014】
また、味特性を良好にする上で、フィルム中のアセトアルデヒドの含有量を好ましくは30ppm以下、さらに好ましくは25ppm以下、特に好ましくは20ppm以下が望ましい。アセトアルデヒドの含有量が30ppmを越えると味特性に劣る。フィルム中のアセトアルデヒドの含有量を30pm以下とする方法は特に限定されるものではないが、例えばポリエステルを重縮反応等で製造する際の熱分解によって生じるアセトアルデヒドを除去するため、ポリエステルを減圧下あるいは不活性ガス雰囲気下において、ポリエステルの融点以下の温度で熱処理する方法、好ましくはポリエステルを減圧下あるいは不活性ガス雰囲気下において150℃以上、融点以下の温度で固相重合する方法、ベント式押出機を使用して溶融押出する方法、ポリマを溶融押出する際に押出温度を高融点ポリマ側の融点+30℃以内、好ましくは融点+25℃以内で、短時間、好ましくは平均滞留時間1時間以内で押出す方法等を挙げることができる。
【0015】
また、本発明のポリエステルは味特性の点から、ポリエステル中のオリゴマの含有量を1.0重量%以下とすることが好ましく、さらに好ましくは0.8重量%以下、より好ましくは0.7重量%以下とすることが好ましい。ポリエステル中のオリゴマ含有量が1.0重量%を越えると味特性に劣り好ましくない。ポリエステル中のオリゴマ含有量が1.0重量%以下とする方法は特に限定されるものではないが、上述のポリエステル中のアセトアルデヒド含有量を低減させる方法と同様の方法等を採用することで達成できる。
【0016】
本発明におけるポリエステルとしてはポリエステルエチレンテレフタレートを主たる構成成分とするポリエステルが好ましく、繰り返し単位の90モル%以上がエチレンテレフタレートであることが成形性、耐経時性向上の点から好ましい。また、さらに好ましくは95モル以上あることが、特に味特性、耐衝撃性を向上させる点からも望ましい。ポリエステルは、耐熱性、味特性、耐経時性等の点から融点が230℃以上であることが好ましく、さらに好ましくは240℃以上、特に好ましくは250℃以上である。
【0017】
また、本発明において特に耐衝撃性、味特性を良好にするためには、好ましくはポリエステルの固有粘度が0.5以上1.0以下、さらに好ましくは固有粘度が0.55以上1.0以下、特に好ましくは固有粘度が0.6以上1.0以下であると、ポリマ分子鎖の絡み合い密度が高まるためと考えられるが耐衝撃性、味特性をさらに向上させることができるので好ましい。
【0018】
本発明のポリエステルの製造は、従来公知の任意の方法を採用することができ、特に限定されるものではない。例えばポリエチレンテレフタレ−トにイソフタル酸成分を共重合し、ゲルマニウム化合物として二酸化ゲルマニウムを添加する場合で説明する。テレフタル酸成分、イソフタル酸成分とエチレングリコ−ルをエステル交換またはエステル化反応せしめ、次いで二酸化ゲルマニウム、リン化合物を添加し、引き続き高温、減圧下で一定のジエチレングリコール含有量になるまで重縮合反応せしめ、ゲルマニウム元素含有重合体を得る。次いで得られた重合体をその融点以下の温度において減圧下または不活性ガス雰囲気下で固相重合反応せしめ、アセトアデルヒドの含有量を減少させ、所定の固有粘度、カルボキシル末端基を得る方法等を挙げることができる。
【0019】
本発明のポリエステルを製造する際には、従来公知の反応触媒、着色防止剤を使用することができ、反応触媒としては例えばアルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物、亜鉛化合物、鉛化合物、マンガン化合物、コバルト化合物、アルミニウム化合物、アンチモン化合物、チタン化合物等、着色防止剤としては例えばリン化合物等挙げることができる。
【0020】
また、本発明のフイルムの取扱い性、加工性を向上させるために、平均粒子径0.1〜10μmの公知の内部粒子、無機粒子および/または有機粒子などの外部粒子の中から任意に選定される粒子が0.01〜10重量%含有されていることが好ましく、さらには平均粒子径0.1〜5μmの内部粒子、無機粒子および/または有機粒子が0.01〜3重量%含有されていることが好ましい。内部粒子の析出方法としては公知の技術を採用できるが、例えば特開昭48−61556号公報、特開昭51−12860号公報、特開昭53−41355号公報、特開昭54−90397号公報などに記載の技術が挙げられる。さらに特開昭55−20496号公報、特開昭59−204617号公報などの他の粒子との併用も行うことができる。10μmを越える平均粒子径を有する粒子を使用するとフィルムの欠陥が生じ易くなるので好ましくない。無機粒子および/または有機粒子としては、例えば湿式および乾式シリカ、コロイド状シリカ、酸化チタン、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、硫酸バリウム、アルミナ、マイカ、カオリン、クレ−等の無機粒子およびスチレン、シリコ−ン、アクリル酸類等を構成成分とする有機粒子等を挙げることができる。なかでも湿式および乾式コロイド状シリカ、アルミナ等の無機粒子およびスチレン、シリコーン、アクリル酸、メタクリル酸、ポリエステル、ジビニルベンゼン等を構成成分とする有機粒子等を挙げることができる。これらの内部粒子、無機粒子および/または有機粒子は二種以上を併用してもよい。
【0021】
中心線平均粗さRaは好ましくは味特性、成形性の点から0.001〜0.08μm、さらに好ましくは0.002〜0.06μmである。さらに、最大粗さRtとの比Rt/Raが5〜50、好ましくは8〜40であると高速製缶性が向上する。
【0022】
本発明において、ポリエステルフィルムを少なくとも2層以上から構成される積層二軸延伸ポリエステルフィルムより構成する場合、非ラミネート面とラミネート面の層の固有粘度差が0.01〜0.5であることが、優れたラミネート特性、耐衝撃性、味特性を発現させる点からも好ましい。
【0023】
フィルム構成としては、単層、A/Bの2層、B/A/BあるいはA/B/Cの3層、さらには3層より多層の積層構成であってもよい。
【0024】
本発明のフィルム構成がA層、B層の2層より構成される場合、A層の厚みとしては0.1μm以上25μm以下が好ましく、耐衝撃性の点でB層を改質した際は、味特性、耐衝撃性を両立するうえで1μm以上15μm以下が好ましく、より好ましくは2μm以上10μm以下である。粒子はA層、B層のいずれに添加しても良いがB層の中心線平均粗さRaは好ましくは0.005〜0.08μm、さらに好ましくは0.008〜0.06μmである。さらに、最大粗さRtとの比Rt/Raが5〜50、好ましくは8〜40であると高速製缶性が向上する。また、A層の中心線平均粗さRaは好ましくは0.001〜0.05μm、さらに好ましくは0.002〜0.04μmであると味特性が向上するので好ましい。
【0025】
本発明の二軸延伸フイルムの厚さは、金属にラミネートした後の成形性、金属に対する皮膜性、耐衝撃性、味特性の点で、5〜60μmであることが好ましく、さらに好ましくは10〜40μmである。積層厚みとしては、A層の厚みを0.01〜5μmとすることが味特性、成形性の点で好ましく、さらに好ましくは、0.1〜3μm、特に好ましくは0.5〜2μmである。B層の厚みとしては4〜60μmであることが好ましく、さらに好ましくは8〜30μmである。
【0026】
本発明は、固体高分解能NMRによる構造解析における1、4位のベンゼン環炭素の緩和時間T1ρが150msec以上であることを必須とするものであり、好ましくは180msec以上、さらに好ましくは200msec以上である。緩和時間T1ρが150msec未満であれば、ラミネート後のフィルムの耐衝撃性において何の効果も得られない。緩和時間T1ρは分子運動性を表すものであり、T1ρが大きいほど運動性は低くなる。本発明は、二軸延伸フィルムの状態において、1、4位のベンゼン環炭素のT1ρが150msec以上であることが必要であるが、これはこの部位の分子整列性を制御し、結晶構造にも似た安定構造を形成する場合であり、優れた耐衝撃性を発現する。緩和時間T1ρを150msec以上に達成する方法としては、フィルム製造時に縦延伸工程で高温予熱法、高温延伸法を組み合わせて採用することによって達成できるが、特に限定されるものでなく、例えば原料の固有粘度、触媒、ジエチレングリコール量や延伸条件、熱処理条件などの適性化によっても達成できる。フィルム製造時の縦延伸の予熱温度としては、90℃以上が好ましく、より好ましくは100℃以上、更に好ましくは110℃以上である。また延伸温度は105℃以上が好ましく、より好ましくは110℃以上、更に好ましくは115℃以上である。
【0027】
さらに固体高分解能NMRによる構造解析におけるカルボニル炭素の緩和時間T1ρが250msec以上、好ましくは300msec以上であることが耐衝撃性を一層向上させる点から好ましい。
【0028】
本発明において、面配向係数が0.14以下であることが優れた成形性を発現させる点から好ましい。面配向係数が0.14を越えるとフィルム全体の配向が高度になり、ラミネート後の成形が困難となり好ましくない。
【0029】
本発明において、優れた成形性を得るために、フィルムの破断伸度はフィルム長手、横の両方向で25℃で170%以上であることがが好ましく、さらに好ましくは180%以上、特に好ましくは200%以上である。伸度が170%未満であると成形性が低下し、好ましくない。
【0030】
本発明におけるフィルム及び/または積層フィルムの製造方法としては、特に限定されないが例えば各ポリエステルを必要に応じて乾燥した後、単独及び/または各々を公知の溶融積層用押出機に供給し、スリット状のダイからシート状に押出し、静電印加などの方式によりキャスティングドラムに密着させ冷却固化し未延伸シートを得る。該シートをキャスティングドラムに密着させ冷却固化して得た未延伸シートをフイルムの長手方向及び幅方向に延伸することにより二軸延伸フィルムを得る。延伸倍率は目的とするフイルムの配向度、強度、弾性率等に応じて任意に設定することができるが、好ましくはフィルムの品質の点でテンター方式によるものが好ましく、長手方向に延伸した後、幅方向に延伸する逐次二軸延伸方式、長手方向、幅方向をほぼ同時に延伸していく同時二軸延伸方式が望ましい。延伸倍率としてはそれぞれの方向に1.5〜4.0倍、好ましくは1.8〜4.0倍である。長手方向、幅方向の延伸倍率はどちらを大きくしてもよく、同一としてもよい。また、延伸速度は1000%/分〜200000%/分であることが望ましく、延伸温度はポリエステルのガラス転移温度以上であれば任意の温度とすることができるが、80〜150℃が好ましく、本発明においては優れた成形性を発現させ、高伸度を得るために100℃〜150℃が好ましい。更に二軸延伸の後にフイルムの熱処理を行うが、この熱処理はオ−ブン中、加熱されたロ−ル上等、従来公知の任意の方法で行なうことができる。熱処理温度は140℃以上255℃以下の任意の温度とすることができるが、好ましくは150〜245℃である。また熱処理時間は任意とすることができるが、通常1〜60秒間行うのが好ましい。熱処理はフイルムをその長手方向および/または幅方向に弛緩させつつおこなってもよい。さらに、再延伸を各方向に対して1回以上行ってもよく、その後熱処理を行っても良い。
【0031】
さらに本発明のフィルムは各種コーティングを施こしても良く、特に限定するものではない。
【0032】
本発明では150℃×30分での熱収縮率が7%以下であることが好ましい。熱収縮率が7%以下、好ましくは6%以下、さらに好ましくは5%以下であると金属との熱ラミネート性が優れるだけでなく、耐衝撃性が向上する。
【0033】
さらに、本発明のフィルムを製造するにあたり、必要により酸化防止剤、可塑剤、帯電防止剤、耐候剤、末端封鎖剤等の添加剤も適宜使用することができる。特に、酸化防止剤の併用は製缶工程での熱履歴によるポリエステルBの劣化を防止し好ましい。その量としては、全フィルム重量に対し0.001〜1重量%程度が好ましい。
【0034】
また、コロナ放電処理などの表面処理を施すことにより接着性を向上させることはさらに特性を向上させる上で好ましい。その際、E値としては5〜40、好ましくは10〜35である。
【0035】
本発明の金属板とは特に限定されないが、成形性の点で鉄やアルミニウムなどを素材とする金属板が好ましい。さらに、鉄を素材とする金属板の場合、その表面に接着性や耐腐食性を改良する無機酸化物被膜層、例えばクロム酸処理、リン酸処理、クロム酸/リン酸処理、電解クロム酸処理、クロメート処理、クロムクロメート処理などで代表される化成処理被覆層を設けてもよい。特に金属クロム換算値でクロムとして6.5〜150mg/m2 のクロム水和酸化物が好ましく、さらに、展延性金属メッキ層、例えばニッケル、スズ、亜鉛、アルミニウム、砲金、真ちゅうなどを設けてもよい。スズメッキの場合0.5〜15mg/m2 、ニッケルまたはアルミニウムの場合1.8〜20g/m2 のメッキ量を有するものが好ましい。
【0036】
本発明の金属ラミネート用フィルムは、絞り成形やしごき成形によって製造されるツーピース金属缶の内面被覆用に好適に使用することができる。また、ツーピース缶の蓋部分、あるいはスリーピース缶の胴、蓋、底の被覆用としても良好な金属接着性、成形性を有するため好ましく使用することができる。
【0037】
【実施例】
以下実施例によって本発明を詳細に説明する。なお特性は以下の方法により測定、評価した。
【0038】
(1)緩和時間T1ρ
固体NMRの測定装置は、日本電子製スペクトロメータJNM−GX270、日本電子製固体アンプ、MASコントローラNM−GSH27MU、日本電子製プローブNM−GSH27T VT.W)を用いた。測定は13C核のT1ρ(回転座標における縦緩和)測定を実施した。
【0039】
測定は、温度24.5℃、湿度50RH%、静磁場強度6.34T(テスラ)下で、1 H、13Cの共鳴周波数はそれぞれ270.2MHz、67.9MHzである。ケミカルシフトの異方性の影響を消すためにMAS(マジック角度回転)法を採用した。回転数は3.5〜3.7kHzで行った。パルス系列の条件は、1 Hに対して90°、パルス幅4μsec、ロッキング磁場強度62.5kHzとした。1 Hの分極を13Cに移すCP(クロスポーラリゼーション)の接触時間は1.5msecである。また保持時間τとしては、0.001 ,0.5 ,0.7 ,1 ,3 ,7 ,10,20,30,40,50msecをもちいた。保持時間τ後の13Cの磁化ベクトルの自由誘導減衰(FID)を測定した(FID測定中1 Hによる双極子相互作用の影響を除去するために高出力デカップリングを行った。なお、S/N比を向上させるため、512回の積算を行った)。また、パルス繰り返し時間としては、5sec〜15secの間で行った。
【0040】
T1ρ値は、通常
I(t) =Σ(Ai)exp(−t /T1ρi )
(Ai:T1ρi に対する成分の割合)
で記述することができ、各保持時間に対して観測されたピーク強度を片対数プロットすることにより、その傾きから求めることができる。ここでは2成分系(T1ρ1 :非晶成分、T1ρ2 :結晶成分)で解析し、下記の式を用い最小2乗法フィッティングによりその値を求めた。
【0041】
I(t) =fa1 ・exp( −t /T1ρ1)+fa2 ・exp( −t /T1ρ2 )
fa1 :T1ρ1 に対する成分の割合
fa2 :T1ρ2 に対する成分の割合
fa1 +fa2 =1
ここでT1ρとしてはT1ρ2 を用いる。
【0042】
(2)ポリエステルの融点
ポリエステルを結晶化させ、示差走査熱量計(パ−キン・エルマ−社製DSC−2型)により、10℃/minの昇温速度で測定した。
【0043】
(3)ポリエステルの固有粘度
ポリエステルをオルソクロロフェノ−ルに溶解し、25℃において測定した。
【0044】
(4)面配向係数(fn)
面配向係数(fn)は次式により定義される。
【0045】
fn={(Nx+Ny)/2}−Nz
上記式において、Nx、Ny、Nzはそれぞれフィルムの縦、横、厚さ方向の屈折率である。屈折率はアッベの屈折率の接眼側に偏光板アナライザーを取り付け、単色光NaD線で、ヨウ化メチレンをマウント液としてそれぞれの屈折率を測定する。
【0046】
(5)成形性
50m/分でフィルムと140〜250℃に加熱されたTFS鋼板(厚さ0.3mm)をB層が接着面となるようにラミネート、急冷した後、絞り成形機(成形比(最大厚み/最小厚み)=1.45、及び1.95)で80〜100℃において成形可能温度領域で成形した缶を得た。得られた缶内に1%の食塩水を入れて、食塩水中の電極と金属缶に6vの電圧をかけて3秒後の電流値を読み取り、10缶測定後の平均値を求めた。
【0047】
A級:0.001mA未満
B級:0.001mA以上0.01mA未満
C級:0.01mA以上0.1mA未満
D級:0.1mA以上
【0048】
(6)耐衝撃性
絞り成形加工が良好な缶について、水を満注し、各試験について10個ずつを高さ1.25mから塩ビタイル床面に落とした後、電極と金属缶に6vの電圧をかけて3秒後の電流値を読み取り、10缶測定後の平均値を求めた。
【0049】
A級:0.001mA未満
B級:0.001mA以上0.01mA未満
C級:0.01mA以上0.1mA未満
D級:0.1mA以上
【0050】
(7)味特性
缶(直径6cm、高さ12cm)に120℃×30分の加圧蒸気処理を行った後、香料水溶液d−リモネン25ppm水溶液を350ml充填し、40℃密封後45日放置し、その後開封して官能検査によって、臭気の変化を以下の基準で評価した。
【0051】
A級 臭気に全く変化が見られない。
B級 臭気にほとんど変化が見られない。
C級 臭気にやや変化が見られる。
D級 臭気に変化が大きく見られる。
【0052】
[実施例1〜5]
表1に示すポリエステルを乾燥、溶融後、ダイより押出し、急冷固化して未延伸フィルムを得た。
【0053】
次いで、この未延伸フィルムを表1に示す温度で、3倍に縦延伸後、3倍に横延伸し、続いて熱固定して二軸延伸フィルムを得た。得られたフィルムの厚みは25μmであった。
【0054】
このフィルムについて上記の各種評価を実施した。その結果を表1に示したが、いずれも良好であった。
【0055】
[実施例6]
表2に示すポリエステルをそれぞれ独立に乾燥、溶融後、ダイより共押出し、急冷固化して未延伸フィルムを得た。
【0056】
次いで、この未延伸フィルムを表2に示す温度で、3倍に縦延伸後3倍に横延伸し、続いて熱固定して二軸延伸フィルムを得た。得られたフィルムの厚みは25μmであった。
【0057】
このフィルムについて上記の各種評価を実施した。その結果を表2に示したが、いずれも良好であった。
【0058】
[比較例1〜2]
ポリエステルの組成と延伸条件を表1のように変更する以外は、実施例1と同様に行った。その結果を表1に示す。
【0059】
【表1】
Figure 0004165771
【表2】
Figure 0004165771
なお、表中の略号は以下の通りである。
【0060】
PET:ポリエチレンテレフタレート
PET/I:イソフタル酸共重合ポリエチレンテレフタレート(数字は共重合モル%)
【0061】
【発明の効果】
本発明の金属板ラミネート用二軸延伸ポリエステルフィルムは缶などに成形する際の成形性に優れているだけでなく、味特性、耐衝撃性に優れた特性を有し、成形加工によって製造される金属缶に好適に使用することができる。

Claims (5)

  1. フィルムを構成するポリエステル単位の90モル%以上がエチレンテレフタレート単位であり、固体高分解能NMRによる構造解析における1、4位のベンゼン環炭素の緩和時間T1ρが150msec以上445msec以下であることを特徴とするラミネート用二軸延伸ポリエステルフィルム。
  2. フィルムを構成するポリエステル単位の95モル%以上がエチレンテレフタレート単位であることを特徴とする請求項1に記載のラミネート用二軸延伸ポリエステルフィルム。
  3. 面配向係数が0.14以下であることを特徴とする請求項1または2に記載のラミネート用二軸延伸ポリエステルフィルム。
  4. ポリエステルフィルムが少なくとも2層以上から構成され、非ラミネート面とラミネート面を形成する各層の固有粘度差が0.01〜0.5であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のラミネート用積層二軸延伸ポリエステルフイルム。
  5. 金属板にラミネートして使用することを特徴とする請求項1乃至のいずれかに記載のラミネート用二軸延伸ポリエスエルフィルム。
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