JP4165008B2 - 電磁継電器 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は電磁継電器、特に、鉄芯の磁極部に吸着する可動鉄片の吸着面に、2段形状の当接突部を形成した電磁継電器に関する。
【0002】
【従来の技術と発明が解決しようとする課題】
従来、電磁継電器としては、例えば、図3(A)に示すものがある。
すなわち、コイル1を巻回したスプール2の中心孔に鉄芯3を挿通し、突出する一端部を磁極部3aとする一方、突出する他端部を略L字形状のヨーク4にカシメ固定した電磁石部5と、前記ヨーク4の上端部に回動可能に支持された可動鉄片6と、この可動鉄片6の下端部に当接し、かつ、回動可能に支持されたカード7と、このカード7によって駆動され、自由端部に設けた可動接点8を対向する固定接点10,11に交互に接離する可動接触片9と、で構成された電磁継電器である。
【0003】
したがって、前記電磁石部5の励磁,消磁に基づき、可動鉄片6がヨーク4の上端部を支点に回動することにより、カード7を介して可動接触片9が回動し、その可動接点8が固定接点10,11に交互に接離する。
【0004】
前述の電磁継電器では、可動鉄片6が鉄芯3の磁極部3aに面接触状態で吸着すると、復帰電圧が低下する。このため、復帰電圧の余裕を確保すべく、前記吸着面に別体の遮磁板を貼り付けたり、あるいは、リベットをカシメ固定して間隙を形成していた。しかし、この方法では、別体の遮磁部材が必要であり、組立工数が多く、コストアップになるという不具合があった。
【0005】
そこで、例えば、図3(B)に示すように、比較的小さい当接突部12(アール0.5mm、高さ0.05ないし0.08mm)を突き出し加工で形成し、間隙を設けることが考えられている。しかし、前述の当接突部12は底面積が小さく、単位面積当たりの圧力が大きいので、可動鉄片6の回動に伴って磨耗しやすく、所定回数の開閉後における復帰電圧が所定の数値以下になってしまうという不具合がある。
【0006】
一方、例えば、図3(C)に示すように、比較的大きい当接突部13(アール2.2mm、高さ0.05ないし0.08mm)を形成することも考えられている。しかし、このように底面積を大きくすると、磁気抵抗が小さくなり、磁束の流れを抑制できない。このため、初期段階における復帰電圧の余裕がなくなり、可動鉄片6が復帰しにくくなって歩留まりが悪化するという問題点がある。
【0007】
本発明は、前記問題点に鑑み、初期段階において所望の復帰電圧の余裕を確保できるとともに、経時劣化が少なく、所望の遮磁効果を長期間維持できる電磁継電器を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明にかかる電磁継電器は、前記目的を達成すべく、鉄芯に巻回したコイルに電圧を印加して励磁することにより、可動鉄片が回動して前記鉄芯の磁極部に吸着する電磁継電器において、前記鉄芯の磁極部に吸着する可動鉄片の吸着面に、大突部に小突部を積み重ねた形状の当接突部を、突き出し加工で突設するとともに、底面積比を3対1ないし25対1とした前記大突部と前記小突部との高さ比を、1対1ないし7対1とした構成としてある。
【0009】
したがって、本発明によれば、初期段階では小突部が鉄芯の磁極部に吸着するので、磁束を抑制できる所定の間隙を確保できる。このため、所望の復帰電圧を維持しつつ、復帰電圧までの余裕を確保できる。さらに、前記小突部が磨耗しても、大突部が磁極部に吸着するので、復帰電圧の著しい低下を防止し、最低限の復帰電圧を長期間確保できる。
【0010】
当接突部は、円板状の大突部とドーム状の小突部とで形成した2段構造であってもよい。本実施形態によれば、プレス金型の製造が容易になるという効果がある。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明にかかる実施形態を図1ないし図2の添付図面に従って説明する。
本発明にかかる第1実施形態は、前述の従来例にかかる電磁継電器とほぼ同様である。そして、異なる点は、図1(A)に示すように、可動鉄片6の吸着面に、第1突部21と第2突部22とを順次積み重ねた2段形状の当接突部20を、突き出し加工で形成した点である。
【0012】
第1突部21は機械的磨耗の抑制を主目的とするものであり、球面の一部をカットしたドーム形状を有している。そして、第1突部21は第2突部22よりも大きい底面積を有し、その底面積比は3対1ないし25対1、特に、12対1が好適である。
面積比で3対1未満になると、第2突部22の面積が相対的に大きくなる。このため、磁気抵抗が小さくなり、第2突部による磁束を抑制するのに十分な間隔が得られず、初期段階の復帰電圧の余裕を確保できないからである。
また、第2突部22の面積が、底面積比で25対1を越えると、第2突部22の面積が相対的に小さくなる。このため、所定回数の開閉前に第2突部が機械的摩耗によって消滅し、復帰電圧が所定の数値以下となってしまうからである。
【0013】
さらに、第1突部21の高さは後述する第2突部22の高さと同等以上であることが好ましく、面積比が3対1の場合には高さ比は1対1、面積比が25対1の場合には高さ比は7対1、特に、面積比が12対1の場合には高さ比は25対6が好適である。
第2突部22の高さが、第1突部21との底面積比が3対1の場合に高さ比が1対1よりも低くなると、第2突部22の高さが相対的に低くなり、第2突部による磁束を抑制するのに十分な間隔が得られず、初期段階の復帰電圧の余裕を確保できないからである。
また、第2突部22の高さが、第1突部21との底面積比が25対1の場合に、高さ比が7対1よりも低くなると、第2突部の高さが相対的に低くなり、所定回数の開閉前に第2突部が機械的摩耗によって消滅し、復帰電圧が所定の数値以下となってしまうからである。
【0014】
第2突部22は、初期段階の高い復帰電圧を確保するためのものであり、必要に応じ、第1突部21の形状,寸法に応じて適宜選択でき、ドーム形状に限らず、任意の形状を選択できる。
【0015】
第2実施形態は、図1(B)に示すように、第1突部21が円板状である場合である。ただし、前記第1突部,第2突部21,22の形状,寸法は前述の第1実施形態とほぼ同様であるので、説明を省略する。
本実施形態によれば、第1突部21を形成するための金型成形の製造が容易になるという利点がある。
【0016】
なお、第1突部21,第2突部22は必ずしも平面円形である必要はなく、例えば、平面方形,平面6角形であってもよい。
【0017】
【実施例】
(実施例)
図3に図示した電磁継電器にかかる厚さ1.0mmの可動鉄片の吸着面に当接突部を突出し加工で形成したものをサンプルとした。
前記当接突部は、アール2.2mmの球面の一部からなる第1当接部と、アール0.5mmの球面の一部からなる第2当接部と、を順次積み重ねた図1(A)に示すような2段形状を有する。前記当接突部は、その全体の高さが0.08mmであり、特に、第2突部22の高さ寸法は0.019mmであった。
そして、前記サンプルを駆動して接点を連続的に開閉し、開閉回数に応じた復帰電圧の変化を測定した。測定結果を図2に示す。
【0018】
(比較例1)
前記可動鉄片の吸着面にアール2.2mmの球面の一部からなり、高さ0.08mmの図3(C)に示すような当接突部を形成した点を除き、他は前述の実施例1と同一条件で組立てた電磁継電器をサンプルとした。そして、これを連続的に開閉し、開閉回数に応じた復帰電圧の変化を測定した。測定結果を図2に示す。
【0019】
(比較例2)
可動鉄片の吸着面にアール0.5mmの球面の一部からなり、高さ0.08mmの図3(B)に示すような当接突部を形成した点を除き、他は前述の実施例1と同一条件で組立てた電磁継電器をサンプルとした。そして、これを連続的に開閉し、開閉回数に応じた復帰電圧の変化を測定した。測定結果を図2に示す。
なお、図2における初期スペックとは、初期段階において必要とされる復帰電圧の企画値を意味する。また、ライフ後スペックとは、所定回数の開閉動作後に必要とされる復帰電圧の企画値を意味する。
【0020】
図2(A),(B)に示す図表,グラフ図から明らかなように、実施例1によれば、初期スペックに対して余裕があるだけでなく、所定の開閉回数後も所望の復帰電圧を確保していることがわかる。
これに対し、比較例1はライフ後、すなわち、所定の開閉回数後も所望の復帰電圧を確保しているが、初期スペックに対して復帰電圧の余裕が小さい。また、比較例2は初期スペックに対して余裕はあるが、所定の開閉回数後に所望の復帰電圧以下に低下することが判った。
従って、本願発明にかかる実施例1によれば、初期スペックに対しても、ライフ後スペックに対しても所望の復帰電圧を確保できることが判った。
【0021】
なお、本発明を適用できる電磁継電器は前述の実施形態に限るものではなく、可動鉄片を備えた他のタイプの電磁継電器に適用してもよいことは勿論である。
【0022】
【発明の効果】
本発明によれば、初期段階では小突部が鉄芯の磁極部に吸着するので、磁束を抑制できる所定の間隙を確保できる。このため、所望の復帰電圧を維持しつつ、復帰電圧までの余裕を確保できる。さらに、前記小突部が磨耗しても、大突部が磁極部に吸着するので、復帰電圧の著しい低下を防止し、最低限の復帰電圧を長期間確保できるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明にかかる電磁継電器の実施形態を示す部分拡大図であり、図(A)は第1実施形態であり、図(B)は第2実施形態である。
【図2】 本発明の実施例にかかる実験データを示し、図(A)はグラフ図であり、図(B)はデータ表である。
【図3】 従来例にかかる電磁継電器を示し、図(A)は正面図であり、図(B)は可動鉄片の部分拡大図であり、(C)は可動鉄片の他の実施形態を示す部分拡大図である。
【符号の説明】
1…コイル、2…スプール、3…鉄芯、3a…磁極部、5…電磁石部、6…可動鉄片、7…カード、8…可動接点、9…可動接触片、10,11…固定接点、20…当接突部、21…第1突部、22…第2突部。

Claims (2)

  1. 鉄芯に巻回したコイルに電圧を印加して励磁することにより、可動鉄片が回動して前記鉄芯の磁極部に吸着する電磁継電器において、
    前記鉄芯の磁極部に吸着する可動鉄片の吸着面に、大突部に小突部を積み重ねた形状の当接突部を、突き出し加工で突設するとともに、底面積比を3対1ないし25対1とした前記大突部と前記小突部との高さ比を、1対1ないし7対1としたことを特徴とする電磁継電器。
  2. 当接突部を、円板状の大突部とドーム状の小突部とで形成したことを特徴とする請求項1に記載の電磁継電器。
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