JP4164775B2 - ヘテロ接合バイポーラトランジスタ及びその製造方法 - Google Patents

ヘテロ接合バイポーラトランジスタ及びその製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はヘテロ接合バイポーラトランジスタ及びその製造方法に関するものであり、特に、InP/InGaAs系ヘテロ接合バイポーラトランジスタ(HBT)におけるベース/コレクタ間寄生容量低減の手段或いはエミッタ/ベース間寄生容量低減の手段に特徴のあるヘテロ接合バイポーラトランジスタ及びその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、GaAsやInGaAs等の電子移動度の大きなIII-V族化合物半導体を用いたヘテロ接合バイポーラトランジスタ等の化合物半導体装置は、高周波素子或いは高速スイッチング素子として広く用いられている。
【0003】
しかし、GaAs等のIII-V族化合物半導体を用いたHBTにおいては、Siバイポーラトランジスタとは異なり、イオン注入技術が発達していないため、イオン注入法によって高不純物濃度の外部ベース引出領域を形成することが困難であり、そのため、メサ型構造を余儀なくされている。
【0004】
ここで、図6を参照して、従来のnpnエミッタアップ型のInP/InGaAs系HBTを説明する。
図6参照
まず、半絶縁性InP基板31上に、有機金属気相成長法(MOVPE法)を用いて、n+ 型In0.53Ga0.47Asサブコレクタ層32、i型In0.53Ga0.47As真性コレクタ層33、p+ 型In0.53Ga0.47Asベース層34、n型InPエミッタ層35、n+ 型InP第2エミッタ層36、及び、n+ 型In0.53Ga0.47Asキャップ層37を順次エピタキシャル成長させる。
【0005】
次いで、WSiからなるエミッタ電極38をマスクとしてn+ 型In0.53Ga0.47Asキャップ層37乃至n型InPエミッタ層35をエッチングしてエミッタメサを形成してp+ 型In0.53Ga0.47Asベース層34を露出させ、次いで、ベース電極39をエミッタ電極38及びエミッタメサにおける段切れを利用してエミッタ電極38に対して自己整合的に形成する。
【0006】
次いで、ベース電極39、p+ 型In0.53Ga0.47Asベース層34、i型In0.53Ga0.47As真性コレクタ層33、及び、n+ 型In0.53Ga0.47Asサブコレクタ層32の一部をエッチングしてベースメサを形成し、次いで、フォトレジストパターンを利用したリフトオフ法によってコレクタ電極40を形成することによってHBTの基本構造が完成する。
【0007】
この様な電子デバイスにとって、寄生抵抗の低減は素子の高性能化にとって本質的な問題となるが、真性な速度性能が高いInP/InGaAs系HBTにおいては、ベース/コレクタ間容量やエミッタ/ベース間容量等の寄生容量や抵抗の影響をより受けやすくなる。
【0008】
例えば、HBTの動作特性を表す指標となる最大発振周波数fmax は、fT を遮断周波数、RB をベース抵抗、CBCをベース/コレクタ間容量とすると、
max ={fT /(8πRB ・CBC)}1/2
で表され、ベース抵抗RB が小さいほど、且つ、寄生容量となるベース/コレクタ間容量CBCが小さいほど、最大発振周波数fmax を大きくすることができる。
【0009】
したがって、最大発振周波数fmax を大きくするためにはベース/コレクタ間容量CBCを小さくする必要があり、GaAs系HBTにおいては、そのためにベース引出電極の直下に酸素等をイオン注入して不活性化することが行われている。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、InP/InGaAs系HBTの場合、GaAs系半導体装置に比べてイオン注入技術が未発達であり、ベース引出電極直下のコレクタ層(コレクタアップ型の場合には、エミッタ層)を十分不活性化することができず、したがって、ベース/コレクタ間容量CBC或いはエミッタ/ベース間容量CEBを十分低減することができなかった。
【0011】
したがって、本発明は、InP/InGaAs系HBTのベース/コレクタ間容量CBC或いはエミッタ/ベース間容量CEBを低減することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
図1は本発明の原理的構成の説明図であり、この図1を参照して本発明における課題を解決するための手段を説明する。
なお、図1(a)は、ベース電極の形状を示す平面図であり、また、図1(b)は図1(a)のA−A′を結ぶ一点鎖線に沿った概略的断面図である。
図1(a)及び(b)参照
(1)本発明は、ヘテロ接合バイポーラトランジスタにおいて、エミッタアップ型ヘテロ接合バイポーラトランジスタのコレクタ層1の少なくとも一部をInP層2で構成すると共に、InP層2上方にベース層4及びベース電極8を構成し、ベース電極8は〈010〉方向及び〈001〉方向の辺を有するベース引出領域を有し、InP層2の一部であって、ベース引出領域直下にのみベース層4の形状より後退する後退部10を設けるとともに、ベース電極8の他の辺が〈01−1〉方向、〈0−1−1〉方向、及び、〈0−11〉方向となり、ベース電極8が5角形であることを特徴とする。
【0013】
この様に、コレクタを構成するInP層2の一部であって、ベース引出領域直下にのみベース層4の形状より後退する後退部10を設けることによって、イオン注入法を用いることなく、ベース引出領域に伴うベース/コレクタ間容量CBCを十分低減することができる。
特に、ベース電極8の他の辺が〈01−1〉方向、〈0−1−1〉方向、及び、〈0−11〉方向となり、前記ベース電極8が5角形とすることによって、{010}面によって構成される領域のみを選択に除去して後退部10を構成することができる。
なお、この場合のInP層2は、コレクタ層1の一部を構成するものでも、或いは、コレクタ層1の全体を構成するものであっても良い。
【0014】
なお、この場合の{010}面とは、(010)面だけではなく、(001)面、(0−10)面、或いは、(00−1)面等の(010)面と結晶学的に等価な全ての面を意味するものであり、通常は、成長基板の主面を{100}面と表示しているので、ベースメサ9の側面を{010}面とするものである。
また、本明細書においては、明細書作成の便宜上、“1バー”で表記されるべき指数を“−1”で表記する。
【0015】
(2)また、本発明は、上記(1)において、InP層2とベース層4との間に少なくともInGaAs層3を介在させたことを特徴とする。
【0016】
この様に、InP層2とベース層4との間に、InP層2よりも禁制帯幅の小さなInGaAs層3を介在させることによって、エミッタ層5から注入されたキャリアに対するベース/コレクタ接合のバリアの実効的高さを低くすることができ、それによって、キャリアの到達効率を高めることができる。
【0017】
(3)また、本発明は、上記(2)において、InP層2とInGaAs層3との間に、両者の中間の禁制帯幅を有するInGaAsP層を介在させたことを特徴とする。
【0018】
この様に、InP層2とInGaAs層3との間に、両者の中間の禁制帯幅を有するInGaAsP層を介在させることによって、エミッタ層5から注入されたキャリアに対するベース/コレクタ接合のバリアの実効的高さをより低くすることができ、キャリアの到達効率をより高めることができる。
【0019】
(4)また、本発明は、ヘテロ接合バイポーラトランジスタにおいて、コレクタアップ型ヘテロ接合バイポーラトランジスタのエミッタ層5の少なくとも一部をInP層6で構成すると共に、InP層6上方にベース層4及びベース電極8を構成し、ベース電極8は〈010〉方向及び〈001〉方向の辺を有するベース引出領域を有し、InP層6の一部であって、ベース引出領域直下にのみベース層4の形状より後退する後退部を設けるとともに、ベース電極8の他の辺が〈01−1〉方向、〈0−1−1〉方向、及び、〈0−11〉方向となり、ベース電極8が5角形であることを特徴とする。
【0020】
この様に、エミッタを構成するInP層6の一部であって、ベース引出領域直下にのみベース層4の形状より後退する後退部を設けることによって、イオン注入法を用いることなく、ベース引出領域に伴うエミッタ/ベース間容量CEBを十分低減することができる。 なお、この場合のInP層6は、エミッタ層5の一部を構成するものでも、或いは、エミッタ層5の全体を構成するものであっても良い。
この場合も、ベース電極8の他の辺が〈01−1〉方向、〈0−1−1〉方向、及び、〈0−11〉方向となり、前記ベース電極8が5角形とすることによって、{010}面によって構成される領域のみを選択に除去して後退部10を構成することができる。
【0023】
)また、本発明は、ヘテロ接合バイポーラトランジスタの製造方法において、エミッタアップ型ヘテロ接合バイポーラトランジスタのコレクタ層1の少なくとも一部をInP層2で構成すると共に、InP層2上方にベース層4及びベース電極8を構成し、ベース電極8は〈010〉方向及び〈001〉方向の辺を有するベース引出領域を有し、InP層2の一部であって、ベース引出領域直下のみがベース層4の形状より後退するようにエッチングして後退部10を形成するとともに、前記ベース電極の他の辺が〈01−1〉方向、〈0−1−1〉方向、及び、〈0−11〉方向となり、前記ベース電極が5角形であることを特徴とする。
【0024】
この様に、コレクタ層1の少なくとも一部をInP層2で構成し、InP層2の特定の結晶面を優先的にエッチングするエッチング液を用いてエッチングすることによって、InP層2の一部であって、ベース引出領域直下のみベース層4の形状より後退するようにエッチングして後退部10を再現性良く形成することができる。
特に、ベース電極8の形状を、ベースメサ9の側面の一部が{010}面によって構成されるように成形することによって、InP層2の{010}面を優先的にエッチングするエッチング液を用いることによって、後退部10を{010}面を形成した領域に制御性良く形成することができる。
【0025】
)また、本発明は、上記()において、InP層2とベース層4との間に少なくともInGaAs層3を介在させたことを特徴とする。
【0026】
)また、本発明は、上記()において、InP層2とInGaAs層3との間に、両者の中間の禁制帯幅を有するInGaAsP層を介在させたことを特徴とする。
【0027】
)また、本発明は、ヘテロ接合バイポーラトランジスタにおいて、コレクタアップ型ヘテロ接合バイポーラトランジスタのエミッタ層5の少なくとも一部をInP層6で構成すると共に、InP層6上方にベース層4及びベース電極8を構成し、ベース電極8は〈010〉方向及び〈001〉方向の辺を有するベース引出領域を有し、InP層6の一部であって、ベース引出領域直下のみがベース層4の形状より後退するようにエッチングして後退部を形成するとともに、前記ベース電極の他の辺が〈01−1〉方向、〈0−1−1〉方向、及び、〈0−11〉方向となり、前記ベース電極が5角形であることを特徴とする。
【0028】
この様に、エミッタ層5の少なくとも一部をInP層6で構成し、InP層6の特定の結晶面を優先的にエッチングするエッチング液を用いてエッチングすることによって、InP層6の一部であって、ベース引出領域直下のみをベース層4の形状より後退するようにエッチングして後退部を制御性良く形成することができる。
この場合も、ベース電極8の形状を、ベースメサ9の側面の一部が{010}面によって構成されるように成形することによって、InP層2の{010}面を優先的にエッチングするエッチング液を用いることによって、後退部10を{010}面を形成した領域に制御性良く形成することができる。
【0029】
(9)また、本発明は、上記(5)乃至(8)のいずれかにおいて、後退部は、HCl及びH 3 PO 4 からなるエッチャントを用いて形成されることを特徴とする。
【0030】
この様に、InP層2の{010}面を優先的にエッチングするHCl+H3 PO4 からなるエッチング液を用いることによって、後退部10を{010}面を形成した領域に制御性良く形成することができる。
【0031】
【発明の実施の形態】
ここで、図2乃至図4を参照して、本発明の第1の実施の形態の製造工程を説明する。
なお、図3(c)及び図4(e)は、夫々ベース電極の形状を示す平面図であり、また、図3(d)及び図4(f)は、夫々図3(c)及び図4(e)のA−A′を結ぶ一点鎖線に沿った概略的断面図である。
【0032】
図2(a)及び(b)参照
まず、〈0−1−1〉方向にオリエンテーションフラットを設けた(100)面を主面とする半絶縁性InP基板11上に、MOVPE法を用いて、厚さ及び不純物濃度が、例えば、350nm及び1×1019cm-3のn+ 型InGaAsサブコレクタ層12、厚さが、例えば、200nmでアンドープのi型InPコレクタ層13、厚さが、例えば、100nmでアンドープのi型InGaAsコレクタ層14、厚さ及び不純物濃度が、例えば、50nm及び3×1019cm-3のp+ 型InGaAsベース層15、厚さ及び不純物濃度が、例えば、50nm及び3×1017cm-3のn型InPエミッタ層16、厚さ及び不純物濃度が、例えば、25nm及び5×1018cm-3のn+ 型InP第2エミッタ層17、及び、厚さ及び不純物濃度が、例えば、50nm及び1×1019cm-3のn+ 型InGaAsキャップ層18を順次成長させる。
【0033】
なお、この場合の各InGaAs層の組成はInPに格子整合するIn0.53Ga0.47Asであり、また、i型InGaAs(In0.53Ga0.47As)コレクタ層14を介在させることによって、ベース/コレクタ接合に形成される電子に対するバリアの実効的な高さを低減することができる。
【0034】
次いで、エミッタ電極19となる厚さが、例えば、400nmのWSi層を堆積させたのち、WSi層をエッチングしてエミッタ電極19を形成し、次いで、H3 PO4 :H2 2 :H2 Oからなるエチャントを用いて、エミッタ電極19をマスクとしてn+ 型InGaAsキャップ層18をエッチングし、次いで、HCl:H3 PO4 からなるエッチャントを用いて、n+ 型InP第2エミッタ層17及びn型InPエミッタ層16をエッチングしてエミッタメサ20を形成する。
【0035】
図3(c)参照
次いで、ベース引出領域の辺が〈010〉方向及び〈001〉方向となり、且つ、他の辺が〈01−1〉方向、〈0−1−1〉方向、及び、〈0−11〉方向となる5角形の開口部を有するレジストマスク(図示せず)を設けたのち、ベース電極21となるPt/Ti/Pt/Au多層導電体膜を蒸着し、レジストマスク及びエミッタ電極19を利用したリフトオフ法によって、エミッタ電極19に対して自己整合的にベース電極21を形成する。
【0036】
図3(d)参照
次いで、レジストマスク22を用いてエミッタ/ベース界面を被覆保護したのち、H3 PO4 :H2 2 :H2 Oからなるエチャントを用いて、ベース電極21をマスクとして、p+ 型InGaAsベース層15及びi型InGaAsコレクタ層14をエッチングしてベースメサ23の一部を形成する。
【0037】
図4(e)及び(f)参照
次いで、HCl:H3 PO4 からなるエチャントを用いて、ベース電極21をマスクとして、i型InPコレクタ層13をエッチングしてベースメサ23を形成する。
【0038】
この場合、HCl:H3 PO4 からなるエチャントは、InPの{010}面、即ち、露出している主面としての(100)面、ベースメサ23の側面を構成する(010)面及び(001)面を優先的にエッチングするので、ベース引出領域の直下に後退部24が形成される。
【0039】
次いで、図示しないものの、レジストマスク22を除去したのち、新たなレジストパターンを利用したリフトオフ法によってTi/Pt/Auからなるコレクタ電極をn+ 型InGaAsサブコレクタ層12上に形成することによってHBTの基本構造が完成する。
【0040】
この様に、本発明の第1の実施の形態においては、コレクタ層の一部をi型InPコレクタ層13で構成し、且つ、ベース電極21の形状を〔010〕方向、即ち、〈010〉方向と結晶学的に等価な方向を含む5角形状に成形しているので、エッチングの面方位依存性を利用することによってベース電極21の直下の一部、即ち、ベース引出電極の直下に後退部24を制御性良く形成することができる。
【0041】
したがって、後退部24によって、イオン注入法を用いることなく、ベース/コレクタ間容量CBCを十分低減することができるので、InP/InGaAs系HBTの最大発振周波数fmax を大きくすることができる。
【0042】
なお、この場合には、n型InPエミッタ層16とn+ 型InGaAsキャップ層18との間に、高不純物濃度のn+ 型InP第2エミッタ層17を設けているので、伝導帯側において、n+ 型InP第2エミッタ層17/n+ 型InGaAsキャップ層18との間に形成されるエネルギー不連続ΔEC によるバリアの厚さを薄くすることができ、トンネル電流が流れやすくなるので、エミッタ直列抵抗を小さくすることができる。
【0043】
次に、図5を参照して、本発明の第2の実施の形態を説明するが、i型InPコレクタ層13とi型InGaAsコレクタ層14との間に2層のi型InGaAsP層を設ける以外は上記の第1の実施の形態と同様である。
なお、図5(a)は、ベース電極の形状を示す平面図であり、また、図5(b)は、図5(a)のA−A′を結ぶ一点鎖線に沿った概略的断面図である。
【0044】
図5(a)及び(b)参照
まず、〈0−1−1〉方向にオリエンテーションフラットを設けた(100)面を主面とする半絶縁性InP基板11上に、MOVPE法を用いて、厚さ及び不純物濃度が、例えば、350nm及び1×1019cm-3のn+ 型InGaAsサブコレクタ層12、厚さが、例えば、200nmでアンドープのi型InPコレクタ層13、厚さが、例えば、20nmでアンドープの1.0eV組成のi型InGaAsP層25、厚さが、例えば、20nmでアンドープの0.82eV組成のi型InGaAsP層26、厚さが、例えば、60nmでアンドープのi型InGaAsコレクタ層14、厚さ及び不純物濃度が、例えば、50nm及び3×1019cm-3のp+ 型InGaAsベース層15、厚さ及び不純物濃度が、例えば、50nm及び3×1017cm-3のn型InPエミッタ層16、厚さ及び不純物濃度が、例えば、25nm及び5×1018cm-3のn+ 型InP第2エミッタ層17、及び、厚さ及び不純物濃度が、例えば、50nm及び1×1019cm-3のn+ 型InGaAsキャップ層18を順次成長させる。
【0045】
なお、この場合の各InGaAs層の組成もInPに格子整合するIn0.53Ga0.47Asであり、また、i型InGaAs(In0.53Ga0.47As)コレクタ層14、0.82eV組成のi型InGaAsP層26、及び、1.0eV組成のi型InGaAsP層25を介在させることによって、ベース/コレクタ接合に形成される電子に対するバリアの実効的な高さを段階的に効果的に低減することができる。
【0046】
次いで、エミッタ電極19となる厚さが、例えば、400nmのWSi層を堆積させたのち、WSi層をエッチングしてエミッタ電極19を形成し、次いで、H3 PO4 :H2 2 :H2 Oからなるエチャントを用いて、エミッタ電極19をマスクとしてn+ 型InGaAsキャップ層18をエッチングし、次いで、HCl:H3 PO4 からなるエッチャントを用いて、n+ 型InP第2エミッタ層17及びn型InPエミッタ層16をエッチングしてエミッタメサ20を形成する。
【0047】
次いで、図5(a)に示すように、ベース引出領域の辺が〈010〉方向及び〈001〉方向となり、且つ、他の辺が〈01−1〉方向、〈0−1−1〉方向、及び、〈0−11〉方向となる5角形の開口部を有するレジストマスク(図示せず)を設けたのち、ベース電極21となるPt/Ti/Pt/Au多層導電体膜を蒸着し、レジストマスク及びエミッタ電極19を利用したリフトオフ法によって、エミッタ電極19に対して自己整合的にベース電極21を形成する。
【0048】
次いで、レジストマスク22を用いてエミッタ/ベース界面を被覆保護したのち、H3 PO4 :H2 2 :H2 Oからなるエチャントを用いて、ベース電極21をマスクとして、p+ 型InGaAsベース層15及びi型InGaAsコレクタ層14をエッチングしてベースメサ23の一部を形成する。
【0049】
次いで、酒石酸:H2 Oからなるエチャントを用いて、ベース電極21をマスクとして、i型InGaAsP層26,25をエッチングしたのち、HCl:H3 PO4 からなるエチャントを用いてi型InPコレクタ層13をエッチングしてベースメサ23を形成する。
【0050】
この場合も、HCl:H3 PO4 からなるエチャントは、InPの{010}面、即ち、露出している主面としての(100)面、ベースメサ23の側面を構成する(010)面及び(001)面を優先的にエッチングするので、ベース引出領域の直下に後退部24が形成される。
【0051】
次いで、図示しないものの、レジストマスク22を除去したのち、新たなレジストパターンを利用したリフトオフ法によってTi/Pt/Auからなるコレクタ電極をn+ 型InGaAsサブコレクタ層12上に形成することによってHBTの基本構造が完成する。
【0052】
この様に、本発明の第2の実施の形態においては、第1の実施の形態と同様に、コレクタ層の一部をi型InPコレクタ層13で構成し、且つ、ベース電極21の形状を〔010〕方向を含む5角形状に成形しているので、エッチングの面方位依存性を利用することによってベース電極21の直下の一部、即ち、ベース引出電極の直下に後退部24を制御性良く形成することができる。
【0053】
また、この第2の実施の形態においては、i型InGaAsコレクタ層14とi型InPコレクタ層13との間に、0.82eV組成のi型InGaAsP層26及び1.0eV組成のi型InGaAsP層25を介在させているので、第1の実施の形態よりもベース/コレクタ接合に形成される電子に対するバリアの実効的な高さを効果的に低減することができる。
【0054】
以上、本発明の各実施の形態を説明してきたが、本発明は、上記の各実施の形態の構成に限られるものではなく、上記の各実施の形態におけるエミッタアップ型のヘテロ接合バイポーラトランジスタ以外に、コレクタアップ型のヘテロ接合バイポーラトランジスタにも適用されるものである。
【0055】
この場合には、例えば、〈0−1−1〉方向にオリエンテーションフラットを設けた(100)面を主面とする半絶縁性InP基板上に、MOVPE法を用いて、n+ 型InGaAsサブエミッタ層、n+ 型InP第2エミッタ層、n型InPエミッタ層、p+ 型InGaAsベース層、i型InGaAsコレクタ層、及び、n+ 型InGaAsサブコレクタ層を順次成長させる。
【0056】
次いで、コレクタ電極となるTi/Pt/Au多層導電体膜を堆積させたのち、エッチングすることによってコレクタ電極を形成し、次いで、HCl:H3 PO4 からなるエッチャントを用いて、コレクタ電極をマスクとしてn+ 型InGaAsサブコレクタ層及びi型InGaAsコレクタ層をエッチングしてコレクタメサを形成する。
【0057】
次いで、ベース引出領域の辺が〈010〉方向及び〈001〉方向となり、且つ、他の辺が〈01−1〉方向、〈0−1−1〉方向、及び、〈0−11〉方向となるとなる5角形の開口部を有するレジストマスクを設けたのち、ベース電極となるPt/Ti/Pt/Au多層導電体膜を蒸着し、レジストマスク及びコレクタ電極を利用したリフトオフ法によって、コレクタ電極に対して自己整合的にベース電極を形成する。
【0058】
次いで、新たなレジストマスクを用いてコレクタ/ベース界面を被覆保護したのち、H3 PO4 :H2 2 :H2 Oからなるエチャントを用いて、ベース電極をマスクとして、p+ 型InGaAsベース層をエッチングしてベースメサを形成する。
【0059】
次いで、HCl:H3 PO4 からなるエチャントを用いて、ベース電極をマスクとして、n型InPエミッタ層及びn+ 型第2エミッタ層をエッチングしてベース引出領域の直下に後退部を形成したのち、新たなレジストパターンを利用したリフトオフ法によってWSiからなるエミッタ電極をn+ 型InGaAsサブエミッタ層上に形成することによってコレクタアップ型HBTの基本構造が完成する。
【0060】
この場合には、後退部を設けることによって、エミッタ/ベース間容量CEBを低減することができ、それによってエミッタ/ベース間容量CEBに起因する遅延を低減して素子の動作速度を大きくすることができる。
【0061】
また、この様なコレクタアップ型の場合には、第1の実施の形態と同様にコレクタ層をi型InGaAs層/i型InP層で構成し、コレクタ電極の形状を〔010〕方向、即ち、〈010〉方向と結晶学的に等価な方向を含む形状に形成して、i型InPコレクタ層に後退部を形成しても良く、この場合には、i型InPコレクタ層を動作に必要な最小限の大きさとすることによって、ベース/コレクタ間容量CBCも低減することができると共に、n+ 型InGaAsサブコレクタ層を大きくして直列抵抗を十分低減することができる。
【0062】
また、上記の各実施の形態においてはエミッタ層としてInPを用いているが、InPの代わりにInAlAsを用いても良いものであり、また、npn型HBTに限られるものではなく、pnp型HBTにも適用されるものである。
【0063】
また、本発明の実施の形態の説明においては、説明を簡単にするために単体のHBTとして説明しているが、実際には、集積化して使用する場合が多く、その場合には、素子間分離のために、メサ分離等の分離手段を設けることが必要になる。
【0064】
【発明の効果】
本発明によれば、InP/InGaAs系HBTにおいて、ベース電極の形状を利用した異方性エッチングによりベース電極直下の一部に後退部を設けているので、イオン注入法を用いることなくベース/コレクタ間容量CBC或いはエミッタ/ベース間容量CEBを低減することができ、InP/InGaAs系HBTの特性向上、信頼性向上に寄与するところが大きい。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の原理的構成の説明図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態の途中までの製造工程の説明図である。
【図3】本発明の第1の実施の形態の図2以降の途中までの製造工程の説明図である。
【図4】本発明の第1の実施の形態の図3以降の製造工程の説明図である。
【図5】本発明の第2の実施の形態の説明図である。
【図6】従来のHBTの説明図である。
【符号の説明】
1 コレクタ層
2 InP層
3 InGaAs層
4 ベース層
5 エミッタ層
6 InP層
7 エミッタ電極
8 ベース電極
9 ベースメサ
10 後退部
11 半絶縁性InP基板
12 n+ 型InGaAsサブコレクタ層
13 i型InPコレクタ層
14 i型InGaAsコレクタ層
15 p+ 型InGaAsベース層
16 n型InPエミッタ層
17 n+ 型InP第2エミッタ層
18 n+ 型InGaAsキャップ層
19 エミッタ電極
20 エミッタメサ
21 ベース電極
22 レジストマスク
23 ベースメサ
24 後退部
25 i型InGaAsP層
26 i型InGaAsP層
31 半絶縁性InP基板
32 n+ 型In0.53Ga0.47Asサブコレクタ層
33 i型In0.53Ga0.47As真性コレクタ層
34 p+ 型In0.53Ga0.47Asベース層
35 n型InPエミッタ層
36 n+ 型InP第2エミッタ層
37 n+ 型In0.53Ga0.47Asキャップ層
38 エミッタ電極
39 ベース電極
40 コレクタ電極

Claims (9)

  1. エミッタアップ型ヘテロ接合バイポーラトランジスタのコレクタ層の少なくとも一部をInP層で構成すると共に、前記InP層上方にベース層及びベース電極を構成し、前記ベース電極は〈010〉方向及び〈001〉方向の辺を有するベース引出領域を有し、前記InP層の一部であって、前記ベース引出領域直下にのみ前記ベース層の形状より後退する後退部を設けるとともに、前記ベース電極の他の辺が〈01−1〉方向、〈0−1−1〉方向、及び、〈0−11〉方向となり、前記ベース電極が5角形であることを特徴とするヘテロ接合バイポーラトランジスタ。
  2. 前記InP層と前記ベース層との間に、少なくともInGaAs層を介在させたことを特徴とする請求項1記載のヘテロ接合バイポーラトランジスタ。
  3. 前記InP層と前記InGaAs層との間に、両者の中間の禁制帯幅を有するInGaAsP層を介在させたことを特徴とする請求項2記載のヘテロ接合バイポーラトランジスタ。
  4. コレクタアップ型ヘテロ接合バイポーラトランジスタのエミッタ層の少なくとも一部をInP層で構成すると共に、前記InP層上方にベース層及びベース電極を構成し、前記ベース電極は〈010〉方向及び〈001〉方向の辺を有するベース引出領域を有し、前記InP層の一部であって、前記ベース引出領域直下にのみ前記ベース層の形状より後退する後退部を設けるとともに、前記ベース電極の他の辺が〈01−1〉方向、〈0−1−1〉方向、及び、〈0−11〉方向となり、前記ベース電極が5角形であることを特徴とするヘテロ接合バイポーラトランジスタ。
  5. エミッタアップ型ヘテロ接合バイポーラトランジスタのコレクタ層の少なくとも一部をInP層で構成すると共に、前記InP層上方にベース層及びベース電極を構成し、前記ベース電極は〈010〉方向及び〈001〉方向の辺を有するベース引出領域を有し、前記InP層の一部であって、前記ベース引出領域直下のみが前記ベース層の形状より後退するようにエッチングして後退部を形成するとともに、前記ベース電極の他の辺が〈01−1〉方向、〈0−1−1〉方向、及び、〈0−11〉方向となり、前記ベース電極が5角形であることを特徴とするヘテロ接合バイポーラトランジスタの製造方法。
  6. 前記InP層と前記ベース層との間に、少なくともInGaAs層を介在させたことを特徴とする請求項記載のヘテロ接合バイポーラトランジスタの製造方法。
  7. 前記InP層と前記InGaAs層との間に、両者の中間の禁制帯幅を有するInGaAsP層を介在させたことを特徴とする請求項記載のヘテロ接合バイポーラトランジスタの製造方法。
  8. コレクタアップ型ヘテロ接合バイポーラトランジスタのエミッタ層の少なくとも一部をInP層で構成すると共に、前記InP層上方にベース層及びベース電極を構成し、前記ベース電極は〈010〉方向及び〈001〉方向の辺を有するベース引出領域を有し、前記InP層の一部であって、前記ベース引出領域直下のみが前記ベース層の形状より後退するようにエッチングして後退部を形成するとともに、前記ベース電極の他の辺が〈01−1〉方向、〈0−1−1〉方向、及び、〈0−11〉方向となり、前記ベース電極が5角形であることを特徴とするヘテロ接合バイポーラトランジスタの製造方法。
  9. 前記後退部は、HCl及びH3 PO4 からなるエッチャントを用いて形成されることを特徴とする請求項乃至のいずれか1項に記載のヘテロ接合バイポーラトランジスタの製造方法。
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