JP4163989B2 - 静電チャック - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、被吸着物を静電気力でもって吸着保持する静電チャックに関するものであり、特にPVD、プラズマCVD、光CVD、スパッタリングなどの成膜工程やプラズマエチング、光エッチングなどのエッチング工程、あるいは露光工程、描画工程、洗浄工程、ダイシング工程、さらには上記各種処理工程へ被吸着物を送るための搬送等に好適なものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、半導体装置の製造において、半導体ウェハへの露光処理や描画処理、さらにはPVD、CVD、スパッタリングなどの成膜処理、洗浄処理、プラズマエッチングや光エッチングなどのエッチング処理、ダイシング処理あるいは各種処理工程への搬送時には、半導体ウェハを静電気力でもって吸着保持するセラミック製の静電チャックが使用されている。
【0003】
図3(a)(b)に一般的な静電チャック11の構造を示すように、被吸着物である半導体ウェハWと略同等の大きさを有する板状セラミック体12をしたもので、この板状セラミック体12の上面を半導体ウェハWの吸着面13とするとともに、その内部に外形状が上記吸着面13と略同形状をした円形の内部電極14を埋設したものがあった。なお、15は板状セラミック体12の下面に接合され、上記内部電極14と電気的に接続された給電端子である。
【0004】
そして、この静電チャック11によって半導体ウェハWを吸着固定するには、吸着面13上に半導体ウェハWを載置し、内部電極14と半導体ウェハWとの間に直流電圧を印加することにより、静電吸着力として誘電分極によるクーロン力や微少な漏れ電流によるジョンソン・ラーベック力を発現させ、吸着面13上に半導体ウェハWを吸着固定するようになっていた。
【0005】
なお、図3(a)(b)では基本的な構造の静電チャック11を示したが、目的に応じて上記板状セラミック体12中に抵抗発熱体を埋設してヒータ機能を持たせたものもあった。また、図3(a)(b)に示す静電チャック11の内部電極14に対して直流電圧以外に高周波電力を加え、内部電極14に静電吸着機能以外にプラズマ発生機能を持たせたものもあった。さらに、図3(a)(b)では単極型の静電チャック11を示したが、この他に板状セラミック体12中に埋設する内部電極14を2つ以上に分割し、それぞれの内部電極14間に直流電圧を印加することで静電吸着力を発現させる双極型の静電チャックもあった。
【0006】
ところで、図3(a)(b)に示す静電チャック11を製作するには、複数枚のセラミックグリーンシート間に内部電極14となる導体膜を内蔵したグリーンシート積層体を焼成するか、あるいはセラミック粉末中に内部電極14をなす金属板を埋設し、ホットプレスにて一体的に成形、焼成して、それぞれ内部電極14を埋設した板状セラミック体12を製作し、このようにして得られた板状セラミック体12の一方の主面に研磨加工を施して吸着面13を形成するとともに、他方の主面に給電端子15を接合して内部電極14と電気的に接続することによって製造されていた。
【0007】
このうち積層技術により静電チャック11を製作する方法は、複数枚のセラミックグリーンシートを積層する際に不可避的に圧力の不均一が生じ易く、静電チャック11にとって重要な吸着面13から内部電極14間に存在するセラミック部の厚みを均一にすることが難しいといった課題があった。しかも、内部電極14にプラズマ発生用の電極としての機能を持たせ、吸着面13上に吸着固定した半導体ウェハWに対して均一な密度のプラズマを発生させようとすると、10μm以上の厚みが必要となるのであるが、積層技術による方法では10μm以上の厚みを持った内部電極14を板状セラミック体12中に埋設することはできなかった。
【0008】
これに対し、ホットプレス技術による静電チャック11は、予め吸着面13から内部電極14間に存在するセラミック部を成形しておくことで、厚みを均一にすることができ、また、10μm以上の厚みをもった内部電極14を埋設することも可能であることから、静電チャック11を比較的容易に製造できるといった利点がある。
【0009】
ただし、ホットプレス技術により静電チャック11を製作する場合、内部電極14として平板状の金属板を用いると、セラミックスと金属との熱膨張差による剥離の恐れがあるため、内部電極14には高融点金属からなるパンチングメタルや金網が用いられていた(特許文献1参照)。
【0010】
また、金網を用いた静電チャックにおいて、金網からなる内部電極の占める割合が半導体ウェハWに対して少ないと残留吸着力が残り易くなり、電極への通電を止めた後でも残留吸着力により半導体ウェハWが吸着面に保持され、直ちに取り外すことができず、各処理工程のスループットを縮めることができなくなるため、金網からなる電極の開口部を規定した物もあった(特許文献2参照)。
【0011】
【特許文献1】
特開平9−134951号公報
【0012】
【特許文献2】
特開平12−158275号公報
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、内部電極14にパンチングメタルを用いた静電チャック11では、内部電極14として用いられる高融点金属の硬度が高いために穴あけ加工が大変であり、加工コストも高くなるため実用的ではなかった。
【0014】
また、内部電極に金網を用いた静電チャックでは、ホットプレスにより板状セラミック体の内部に金網状の電極を埋設する際に、大きな圧縮応力により金網からなる電極の開口部の形状が変形することがあり、前記開口部の個々の面積がバラツキ、部分的に吸着力の発現にもバラツキが生じる虞があった。そこで、半導体ウェハを吸着しての成膜工程やエッチング工程における成膜精度やエッチング精度にバラツキが生じたり、部分的に残留吸着力が大きくなることで、静電チャックに印加した電圧を切って半導体ウェハを取り外そうとしても直ちに取り外すことができずウェハを取り外すまでの離脱時間が大きいとの課題があり、特許文献2の静電チャックはこの離脱時間を小さくなるよう改善しているが不十分であった。
【0015】
特に、金網状の電極は線材を単に格子状に編み込んだものが多く、取り扱いやホットプレスにより容易に開口部の形状が変化すると共に、開口部の面積のバラツキも大きくなり易かった。しかし、開口部の形状を円形や、五角形、六角形等の形状に編み込むことは開口部の面積のバラツキを小さくすることが難しく、さらにコストがかかるため実用的でなかった。
【0016】
また、金網からなる電極が占める面積に対する開口部の割合が大きくなると、ホットプレスによる高い圧縮応力による開口部の変形する割合が大きくなり、開口部の個々の変形量の差が大きくなることで前記吸着力や残留吸着力の発現のバラツキがより大きくなるという課題があった。
【0017】
また、開口部の占める割合が大きくなると、中央部に発生した電荷をすぐさま電極を通じて静電チャック外に逃がすことができないため、残留吸着が残りやすくなり、離脱時間が大きくなるといった課題もあった。
【0018】
【課題を解決するための手段】
そこで、本発明は上記課題に鑑み、被吸着物を保持する吸着面を有する板状セラミック体中に、金網状電極を埋設してなる静電チャックにおいて、上記金網状電極の開口部の形状が台形状であることを特徴とする。
【0019】
また、上記開口部の短辺と長辺の長さの比が1.1〜3.0であることを特徴とする。
【0020】
また、被吸着物を保持する吸着面を有する板状セラミック体中に、金網状電極を埋設してなる静電チャックにおいて、上記金網状電極が占める面積に対する開口部の割合が30〜70%であることを特徴とする。
【0021】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を、半導体装置の製造工程で用いる静電チャックを例にとって説明する。
【0022】
図1(a)は本発明の静電チャック1の一例を示す一部を破断した斜視図、(b)は(a)のX−X線断面図で、被吸着物である半導体ウェハWと略同等の大きさを有する円盤状をした板状セラミック体2からなり、この板状セラミック体2の上面を半導体ウェハWを保持する吸着面3とするとともに、板状セラミック体2の内部に図2に示すような外形状が円形をした格子状の金網状電極4を埋設したもので、この金網状電極4は板状セラミック体2の下面に接合された給電端子5と電気的に接続されている。
【0023】
金網状電極4は、半導体ウェハWを大きな静電吸着力でもって固定する観点から、その大きさを板状セラミック体2中に埋設することができる範囲でできるだけ大きくすることが好ましく、また、均一な静電吸着力や後述するように均一なプラズマを発生させるためには開口部4aの大きさをできる限り揃ったものを用いるとともに、金網状電極4を構成する各線材との交点が離れないように予め電気アーク溶接、スポット溶接、摩擦接合、メッキ法などの方法でもって接合しておくか、あるいは3次元的に絡み合うように織ったものを用いることが良い。そして、この静電チャック1によって半導体ウェハWを吸着固定するには、吸着面3上に半導体ウェハWを載置し、金網状電極4と半導体ウェハWとの間に直流電圧を印加して誘電分極によるクーロン力や微少な漏れ電流を伴ったジョンソン・ラーベック力を発現させることによって、吸着面3上に半導体ウェハWを吸着固定することができる。
【0024】
また、図示していないが、金網状電極4に直流電圧以外に高周波電力を印加することによって、吸着面3上の半導体ウェハWに対してプラズマを発生させる機能を設けることもできる。
【0025】
ところで、静電チャックの静電吸着力を高めかつ残留吸着力を速やかに逃がすためには、金網状電極4が占める面積に対する開口部4aの割合(以下、開口率という)が重要であるが、上記割合を保持しながらホットプレスにより板状セラミック体の内部に金網状電極を埋設することがより重要となる。そのためにはホットプレスによる大きな圧縮応力によっても開口率やその形状が変化しないことが必要である。
【0026】
構造的に最も応力に対し形状変化が小さい形状は蜂の巣状である六角形であるとされるが、これを編み込むことはコストを高くすることになり実用的ではなかった。そこで、最もシンプルで経済的な格子状の形状において、形状変化が少ない方法を検討した。
【0027】
その結果、開口部の形状を台形にすることで、ホットプレスによる成形においても形状を損なうことなく板状セラミック体に埋設できることを見出した。金網状電極4が格子状で開口部4aが正方形ないしは長方形であると、ホットプレス時に充填したセラミックス原料が加圧により流動し周辺部でセラミックス原料の流動が大きく周辺部の開口部4aの大きさが大きくなり中心部と周辺部で残留吸着力が異なったり、充填したセラミック原料の微量な量のバラツキにより開口部4aが大きくなったり小さくなることから残留吸着力がばらつくことがあるが、開口部4aを前もって台形状とすることで、上記のようなセラミック原料の流動が生じても残留吸着力が中心部や周辺部で異なる量が小さく、充填したセラミック原料の量のバラツキによる開口部4aの変形の影響が小さく残留吸着力のバラツキが小さくなり好ましい。
【0028】
一方、開口部4aが長方形の場合は、金網状にした際に編み込んだ線材の縦横で一様な疎密が生じるため、焼成時の収縮に差が生じ板状セラミック体に反りが生じたり、最悪の場合板状セラミック体が割れてしまう恐れがあり好ましくない。
【0029】
これに対し、あらかじめ台形状にした形状であると、圧縮応力を与えても、編みこんである線材の接触部における力が分散するため形状を変化させることが少なく、例え形状の変化が生じても残留吸着力のバラツキが小さく、ウェハの離脱時間を小さくできることを見出した。
【0030】
また、金網状電極4の開口部4aの形状を台形とすることで、格子状の形状に比べ開口部の中心部から線材までの距離が短くなるため、通電を止めたとき、開口部の中央部に発生した電荷を逃がしやすくなるため、残留吸着の発生を抑えることができる。そのため、ウェハの離脱時間が小さくなり半導体ウェハの生産効率を高めることができる。
【0031】
また、正方形、長方形の格子状に比べ、台形状は線材の交点部分に角度を持って交差しているため、交点での線材同士の接触する力(摩擦力)が大きくなり、形状が変化しにくいという効果もある。
【0032】
本発明においては、金網状電極4の開口部4aの形状においては短辺と長辺の長さの比を1.1〜3.0とすることで、残留吸着力を小さくし離脱時間を小さくできることを見出した。
【0033】
短辺と長辺の長さの比が1.1より小さい場合、開口部の形状は正方形に近くなり、前述したように圧縮応力を与えることにより編みこんである線材の接触部における力が同じ方向に加わるため容易に線材が移動し、開口部の形状が変化して残留吸着力がばらつく虞がある。逆に、短辺と長辺の長さの比を3.0より大きくすると、編みこんである線材の接触部における線材の屈曲率が大きくなるため、ホットプレスで圧縮応力を与えた場合接触部に応力がかかり、最悪の場合線材が破断したり板状セラミック体が破損する恐れがある。好ましくは短辺と長辺の長さの比は1.3〜2.0であり、更に好ましくは1.3〜1.8である。
【0034】
尚、開口部4aの短辺と長辺は対辺にあり、短辺と長辺の長さの和は他の2辺の和と同等或いは他の2辺の長さの和が1〜20%程大きいことが好ましい。
【0035】
ところで、静電チャック1の静電吸着力を大きくかつ残留吸着力を小さく/離脱時間を小さくするには、金網状電極4が占める面積に対する開口部4aの割合(以下、開口率という)が重要である。静電チャック1の静電吸着力は一般的に下記式で示される。
【0036】
F=SS/2×ε0×εr×(V/d)2
F :静電吸着力
SS:金網状電極のみの面積
ε0 :真空の誘電率
εr :吸着面から金網状電極間に依存するセラミック部の誘電率
V :印加電圧
d :吸着面から金網状電極間に依存するセラミック部の厚み
従って、この式より静電吸着力を高めるには、
(1)金網状電極4の面積を大きくする
(2)印加電圧を大きくする
(3)吸着面3から金網状電極4間に存在するセラミック部の誘電率を大きくする
(4)吸着面3から金網状電極4間に存在するセラミック部の厚みを薄くする
ようにすれば良いのであるが、(3)は板状セラミック体2を形成する材質固有のものであり、(4)も板状セラミック体2の強度の観点から限界があり、いずれも静電吸着力を大きく向上させ得るものではない。また、(2)についても静電チャック1に使用される高電圧装置の電圧は最大でも1kV程度が通常であり、これ以上大きな高電圧装置を用いると感電等の危険性が高くなるとともに、装置が高額のものとなり、さらには吸着面3から金網状電極4間におけるセラミック部の耐電圧を超え、板状セラミック体2が絶縁破壊する恐れがあるなど、実用に適さない。
【0037】
これに対し、(1)の金網状電極4の面積を大きくすることは設計上可能であり、静電吸着力を高めるのに有効な手段となる。一方、金網状電極4への通電を止めると、金網状電極4上に溜まっていた電荷は瞬時に逃がすことがきるが、開口部4aが位置する無電極部上に溜まった電荷は瞬時に逃がすことができず、残留吸着力として残るものと考えられ、特に、ジョンソン・ラーベック効果を利用する静電チャック1に発生し易い。その為、金網状電極4の占有面積を大きくすることは、残留吸着力の発生を抑えるのにも有効な手段となる。そして、金網状電極4の占有面積を大きくするには、線材の径を大きくしたり、線材間の間隔を狭くすれば良く、いずれにおいても金網状電極4の開口率を調整することによって達成することができる。
【0038】
そして、金網状電極4の開口率が70%を越えると、金網状電極4の面積が小さくなり過ぎるため、十分な大きさの静電吸着力を発現させることができず、また、開口部4aの中心に発生した電荷を金網状電極に速やかに逃がすことができないため残留吸着力が残り易く、半導体ウェハWの離脱応答性が悪くなる。また、線材の線径が細くなるためホットプレスによる圧縮応力により、開口部4aの形状が変形しやすくなり、吸着力や残留吸着力の発現にバラツキが生じやすくなる。更に好ましくは金網状電極4の開口率は60%以下である。
【0039】
また、金網状電極4の開口率が30%よりも小さくなると、金網状電極4の面積が大きくなるとともに、線材の線径も太くなるため、ホットプレスによる板状セラミック体の内部に埋設する際に線材が塑性変形したり、セラミック原料が流動することができず金網状電極4の開口部4aに空孔が生じ、結果として板状セラミック体2の内部の空孔等の欠陥により残留電荷の移動が阻害され、残留吸着力が大きくなる虞があった。更に好ましくは金網状電極4の開口率は40%以上である。
【0040】
従って、静電チャック1の静電吸着力を高めかつ残留吸着力を速やかに逃がすためには、金網状電極4の開口率を30〜70%とすることが重要であり、より好ましくは40〜60%である。
【0041】
なお、本発明において、金網状電極4が占める面積とは、開口部4aを含めた全面積Sのことであり、開口率RはSの中で全ての開口部4aの占める面積SVから次式で示すことができる。
【0042】
R=SV/S×100
金網状電極4の開口率は、それぞれX線透過法によって板状セラミック体2中に埋設されている金網状電極4の形状を観察し、X線透過画像から式2によって求めることができる。
【0043】
一方、このような板状セラミック体2を形成する材質としては、アルミナ、窒化珪素、窒化アルミニウム、炭化硼素等を主成分とするセラミックスを用いることができる。これらの中でも窒化アルミニウムを主成分とするセラミックスは、他のセラミックスと比較して高い熱伝導率を有するとともに、腐食性の高いハロゲンガスやプラズマに対して優れた耐蝕性、耐プラズマ性を有することから板状セラミック体2の材質として好適である。特に、純度が99%以上である高純度の窒化アルミニウムセラミックスは、焼結体中に粒界が殆どなく、耐プラズマ性に優れ、また、Y2O3やErなどの希土類酸化物を1〜9重量%の範囲で含有する窒化アルミニウムセラミックスは、熱伝導率が100W/(m・K)以上、高いものでは150W/(m・K)以上、さらに高いものでは200W/(m・K)以上を有することから吸着面3に保持した半導体ウェハWの均熱化をより一層高めることができる。また、板状セラミック体2中に埋設する内部電極4の材質としては、タングステン(W)やモリブデン(Mo)など周期律表第6a族元素やTiなどの周期律表第4a族元素の高融点金属あるいはこれらの合金、さらにはWC、MoC、TiNなどの導電性セラミックスを用いることができる。これらの金属、合金、導電性セラミックスは板状セラミック体2を構成するセラミックスと同程度の熱膨張係数を有することから、製作時や発熱時における板状セラミック体2の反りや破損を防ぐことができ、高温に発熱させても断線することがない。さらに、板状セラミック体2中の金網状電極4へ通電するための給電端子5としては、タングステン(W)、モリブデン(Mo)、ニッケル(Ni)などの金属や鉄(Fe)−コバルト(Co)−ニッケル(Ni)合金を用いることができ、特に耐酸化性が要求されるような時にはニッケル(Ni)あるいは鉄(Fe)−コバルト(Co)−ニッケル(Ni)合金を用いれば良い。
【0044】
なお、図1では基本的な構造を有する静電チャック1を例にとって説明したが、目的に応じて板状セラミック体2中に抵抗発熱体を埋設してヒータ機能を持たせても良い。また、図1では単極型の静電チャック1を示したが、この他に板状セラミック体2中に埋設する金網状電極4を2つ以上に分割し、各金網状電極4間に直流電圧を印加することで静電吸着力を発現させる双極型の静電チャック1とすることもできる。
【0045】
金網状電極としては、高融点金属をあらかじめ金網状に編みこんだものを板状セラミック体の中に埋設し、ホットプレスにより一体燒結させることで得ることができる。
【0046】
金網状電極4の開口部4aの形状を台形にする方法としては、線材を格子状に張力をかけて編み込み固定した後に、台形状にあらかじめ形成した凸状の金型を用い金網状電極4の開口部4aに合わせてプレスすることで容易に得ることができる。このとき、金型は台形状の相対する平行する線材の間隔より若干小さい寸法とすることで、開口部の面積を均一にした台形状の開口部を得ることができる。しかし、前記の金型が高価であることから、直線に張った多数の線材に横方向から開口部の形状に倣ってジグザグに折り曲げた線材を通して金網状電極4を織り上げ、その後必要に応じ金網状電極4の上下面を加圧処理することで開口部4aが台形の金網状電極4を容易に作製することができる。
【0047】
次に、図1に示す静電チャック1の製造方法について説明する。
【0048】
まず、前述した各種セラミックスの造粒粉を用意し、型内に充填して一軸加圧成型法や等加圧成型法にて板状の成形体を形成する。そして、この成形体上に図2に示す金網状電極4を載せたあと、電極4を覆うように成形体と同一原料からなる造粒粉を充填し、再度一軸加圧成型法又は等加圧成型法にて金網状電極4を埋設した成形体を形成する。この時、必要に応じて切削加工を施しても良い。しかるのち、成形体をホットプレス焼結させることで、金網状電極4を埋設した板状セラミック体2を製作し、この一方の主面に研磨加工を施して吸着面3を形成するとともに、他方の主面に金網状電極4まで連通する穴を穿孔し、その穴に給電端子5をロウ付け等の固定手段でもって固着することによって得ことができる。
【0049】
【実施例】
(実施例1)
ここで、金網状電極の線径を0.3mmとして開口部の割合を50%とし,開口部の形状を異ならせた電極を板状セラミック体の内部にホットプレスにより埋設させた静電チャックを作製し、それぞれ開口部の面積のバラツキと吸着力、残留吸着力を測定した。
【0050】
本実験では、純度99%の窒化アルミニウム粉末のみからなる成形体中に、開口部の割合を50%とし、開口部の形状を正方形と台形としたモリブデンからなる図2に示す金網状電極4を埋設し、この成形体をホットトプレス焼結させて窒化アルミニウムセラミック製の板状セラミック体2を製作した。なお、ホットプレスの条件は、焼成温度を1910℃、圧力を20MPaとした。そして、この板状セラミック体2の上面に研削、研磨加工を施して吸着面3を形成するとともに、板状セラミック体2の下面に金網状電極4が埋設された深さまで穴を穿孔し、金属製端子5を金網状電極4とロウ付けして静電チャック1を製作した。そして、それぞれX線によって板状セラミック体2中に埋設されている金網状電極4の輪郭を観察し、画像解析によって金網状電極の形状と開口部の面積のバラツキを観察した。具体的には、ルーゼックス装置を用い金網状電極の線材と開口部のX線写真による白黒の濃度差により簡単に求めることができる。そして、開口部のバラツキは一定の測定面積の中において、開口部の面積を測定し、その平均値を出すとともに、その平均値に対し面積の最大値と最小値の差を平均値で除して表し、値が小さいほどバラツキが小さいことを表す。
【0051】
また、このようにして製作した各静電チャック1を真空チヤンバー内に設置し、1インチ角のシリコンウェハを静電チャック1の吸着面3に載せ、シリコンウェハと金網状電極4との間に500Vの直流電圧を印加して吸着させた時の吸着力を10点測定し、その平均値を出すとともに、その平均値に対し最大値と最小値の差を平均値で除して表した値を吸着力のバラツキとした。また、金網状電極4への通電を止めてから5秒後の吸着力を10点測定し、その平均値を出すとともに、同様にその平均値に対し最大値と最小値の差を平均値で除して表した値を残留吸着力のバラツキとした。それぞれの結果を表1に示す。
【0052】
【表1】
【0053】
この結果、開口部が正方形である試料番号1は開口部の面積のバラツキが15.7%と大きく吸着力のバラツキや残留吸着力のバラツキが29.9%、17.9%と大きいが、開口部が台形状である試料番号2は開口部の面積のバラツキが8.3%と小さく吸着力のバラツキや残留吸着力のバラツキが夫々9.9%、3.4%と小さいことが分る。そして、開口部の面積のバラツキが小さいことから吸着力、残留吸着力の発現のバラツキも小さく好ましい特性が得られることがわかる。
【0054】
(実施例2)
次に、金網状電極の線径を0.3mmとして開口部の形状を台形状とし、その短辺と長辺の長さの比を異ならせた静電チャックを作製し、実施例1と同様にホットプレス後の開口部の面積のバラツキを測定した。その結果を表2に示す。
【0055】
長辺と短辺の比は、X線で金網状電極の形状を撮影し、板状セラミック体の内外周部の任意の場所を5ヶ所抽出し、工具顕微鏡等で画像を20〜50倍に拡大し、各開口部の長辺と短辺の長さを測定した。このとき、任意の場所1個所につき少なくとも開口部を5ヶ所以上測定し、総合した平均値でもって決定した。
【0056】
【表2】
【0057】
この結果、資料番号21のように短辺と長辺の長さの比が1.0、つまり正方形であると、ホットプレスによる開口部の変形が大きく残留吸着力のバラツキが大きく好ましくない。
【0058】
また、資料番号27、28のように短辺と長辺の比が3.0を越えると、編み込んである線材の曲がりが大きくなるため、部分的に破断している部分もあり残留吸着力のバラツキが5.7%とやや大きくなった。
【0059】
一方、試料番号22〜26のように短辺と長辺の長さの比が1.1〜2であると静電チャックは吸着力のバラツキが4.5〜8.5%と小さく、残留吸着力のバラツキも2.1〜3.4%以下と好ましいことが分った。
【0060】
また、試料番号23〜25のように短辺と長辺の長さの比が1.3から1.8である静電チャックは、吸着力のバラツキが4.5〜7.1%と小さく、残留吸着力のバラツキも2.1〜2.5%と小さく更に好ましいことが分った。
【0061】
(実施例3)
次に、金網状電極の線径を0.3mmとして開口部の形状を台形状とし、開口部の面積の割合を異ならせた静電チャックを作製し、それぞれの吸着力と、残留吸着力の大きさを実施例1と同様に測定した。このとき、吸着力は実施例1と同様にシリコンウェハと金網状電極4との間に500Vの直流電圧を印加して吸着させた時の吸着力を10点測定し、その平均値を吸着力とした。また、金網状電極4への通電を止めてから5秒後の吸着力を10点測定し、その平均値を残留吸着力とした。
【0062】
また、実際に半導体ウエハWを金網状電極4に500Vの直流電圧を印加して吸着させた後、通電を止めてから半導体ウエハWの中央部をウェハ単位面積あたり1kPaの力で持ち上げたとき、半導体ウエハWが吸着面3から離れるまでの時間を測定して離脱時間とした。
【0063】
開口部の割合については、上記と同様に板状セラミック体の内外周部の任意の場所を5ヶ所抽出した各箇所のX線透過写真をルーゼックス画像解析装置にかけ、倍率を10〜30倍に拡大し、開口部4個以上を測定範囲として線材部と開口部の色調(白黒)の濃淡の差で面積計算より決定し、各測定値の平均値から求めた。
【0064】
さらに、電極部の内部欠陥の有無は超音波探傷装置を用いて確認した。
【0065】
【表3】
【0066】
この結果、資料番号38、39のように開口部の面積の割合が70%以上であると、極端に吸着力が小さくなり、また残留吸着力がやや大きいことがわかる。また、半導体ウエハの離脱時間も9.8秒、12.5秒とやや大きくなった。
【0067】
また、資料番号31、32のように開口部の面積の割合が30%以下であると、金網状電極と板状セラミック体の接合面に欠陥が生じていることがわかった。
【0068】
以上の結果より、金網状電極4の形状を台形状とし、開口部の面積の割合を30〜70%とすることで、ホットプレスによる金網状電極の開口部の形状変化を押さえると面積のバラツキも抑えることができることから静電チャック1の吸着力や残留吸着力のバラツキを抑えることができる。
【0069】
【発明の効果】
以上のように、本発明によれば、被吸着物を保持する吸着面を有する板状セラミック体中に金網状電極を埋設してなる静電チャックにおいて、上記金網状電極の開口部の形状を台形状とするとともに、上記開口部の短辺と長辺の長さの比を1.1〜2.0とし、また、上記金網状電極が占める面積に対する開口部の割合を30〜70%とすることで、吸着力の発現のバラツキを小さくすることができるため、被吸着物を吸着しての成膜工程やエッチング工程における成膜精度やエッチング精度のバラツキを抑えることができるとともに、残留吸着力が残り難いことから、通電を止めれば吸着面より直ちに被吸着物を離脱することができる。かくして、本発明の静電チャックを、成膜装置やエッチング装置に用いれば、均一で配向性の高い成膜処理やエッチング処理を施すことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a)は本発明の静電チャックの一例を示す一部を破断した斜視図、(b)は(a)のX−X線断面図である。
【図2】図1の静電チャックに内蔵する金網状電極を示す平面図である。
【図3】(a)は従来の静電チャックの一例を示す一部を破断した斜視図、(b)は(a)のY−Y線断面図である。
【符号の説明】
1,11・・・静電チャック
2,12・・・板状セラミック体
3,13・・・吸着面
4 ・・・金網状電極
5,15・・・給電端子
14 ・・・内部電極
W ・・・半導体ウェハ
Claims (3)
- 被吸着物を保持する吸着面を有する板状セラミック体中に、金網状電極を埋設してなる静電チャックにおいて、上記金網状電極の開口部の形状が台形状であることを特徴とする静電チャック。
- 上記開口部の短辺と長辺の長さの比が1.1〜3.0であることを特徴とする請求項1に記載の静電チャック。
- 上記金網状電極が占める面積に対する開口部の割合が30〜70%であることを特徴とする請求項1または2に記載の静電チャック。
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